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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】A/D変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/38 20060101AFI20230922BHJP
   G06F 1/06 20060101ALI20230922BHJP
   G06F 3/05 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H03M1/38
G06F1/06
G06F3/05 311A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018162671
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020036255
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【合議体】
【審判長】猪瀬 隆広
【審判官】千葉 輝久
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033123(JP,A)
【文献】国際公開第2010/010660(WO,A1)
【文献】特開昭50-159661(JP,A)
【文献】特開2010-166298(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ電位をサンプリング・ホールドするサンプリング・ホールド回路(以下、SH回路)、前記SH回路のサンプリング電位に対して予測したアナログの予測電位をデジタル値に基づいて作成する比較電位作成動作を行う比較電位作成回路、前記サンプリング電位と前記予測電位を比較する電位比較動作を行い前記サンプリング電位を前記デジタル値に変換する比較器、前記比較器で変換された前記デジタル値を記憶するとともに記憶された前記デジタル値を前記比較電位作成回路に出力する逐次型比較データ生成器を備える複数のA/D変換器(以下、ADC)を備え、
前記複数のADCにおけるホールド動作は、システムクロックの立ち上がりに同期するタイミングで、少なくとも前記比較電位作成動作が実行されない期間に実行され、
前記複数のADCのそれぞれにおいて、前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とは、前記システムクロックの1周期の間に複数回実行され
前記システムクロックの周期よりも短く、前記システムクロックに同期したADCクロックを生成するクロック生成器を備え、
前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とは、前記ADCクロックに同期して実行され、
前記クロック生成器は、前記システムクロックの1周期の間に前記ADCクロックをn発(nは2以上の自然数)生成させ、
前記各々のADCは、前記ADCクロックによって前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とをn回行なった後に変換動作を停止し、前記システムクロックの次の立ち上がりで次の変換動作を再開し、各々任意の前記システムクロック立ち上がり時刻でサンプリングをホールドして変換動作を開始し、他のADCの干渉を受けないことを特徴とするA/D変換回路。
【請求項2】
前記ホールド動作は、前記システムクロックと同期するタイミングに同期して実行されることを特徴とする請求項に記載のA/D変換回路。
【請求項3】
前記ADCクロックの周期は、前記比較電位作成動作の時間と前記電位比較動作の時間との合計時間よりも長いことを特徴とする請求項に記載のA/D変換回路。
【請求項4】
システムクロックの周期は、前記ADCクロックのn発の合計時間よりも長いことを特徴とする請求項に記載のA/D変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ値をデジタル値に変換する変換器を備えたA/D変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電位のサンプリング機構を持つ複数の逐次比較型デジタル・アナログ変換器(以下、ADC)を有し、複数のADCに対して共通の電源で電力を供給したA/D変換回路が知られている。このA/D変換回路は、ADCの変換動作が電源に対してノイズを発生させる場合がある。ADCが入力電位のサンプリングを終了しホールドする時刻が、他のADC動作によりノイズが電源に重畳さている状態である時、サンプリングホールド結果は誤った値に確定してしまう。このため、正しい変換結果を得ることができない。このため、他のADCの変換動作中にサンプリング電位をホールドすることは回避しなければならない。
【0003】
特許文献1では、その回避方法として、サンプリング電位をホールドする時刻に、他の変換動作中の全てのADCの動作を一旦、停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5035997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、複数のADCが並行して動作している場合に、あるADCが変換動作中である時に、複数のADCが次々にホールドするリクエストを出した場合に、変換動作中であるADCは、他の全てのADCのホールドが完了するまでその動作を停止しなければならない。
【0006】
すなわち、ADCの変換動作終了時刻は、他のADCの動作に影響され、変換終了時刻を予定することができず、期待したスケジュールで動作を完了することができない。これは間隔の定められたスケジュールで処理を行なわなければならないようなアプリケーションで致命的な問題となりうる。
【0007】
本発明の課題は、各ADCが任意のタイミングでサンプリング・ホールドできるA/D変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施態様に係るA/D変換回路は、アナログ電位をサンプリング・ホールドするサンプリング・ホールド回路(以下、SH回路)、前記SH回路のサンプリング電位に対して予測したアナログの予測電位をデジタル値に基づいて作成する比較電位作成動作を行う比較電位作成回路、前記サンプリング電位と前記予測電位を比較する電位比較動作を行い前記サンプリング電位を前記デジタル値に変換する比較器、前記比較器で変換された前記デジタル値を記憶するとともに記憶された前記デジタル値を前記比較電位作成回路に出力する逐次型比較データ生成器を備える複数のA/D変換器(以下、ADC)を備え、前記複数のADCにおけるホールド動作は、システムクロックの立ち上がりに同期するタイミングで、少なくとも前記比較電位作成動作が実行されない期間に実行され、前記複数のADCのそれぞれにおいて、前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とは、前記システムクロックの1周期の間に複数回実行され、前記システムクロックの周期よりも短く、前記システムクロックに同期したADCクロックを生成するクロック生成器を備え、前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とは、前記ADCクロックに同期して実行され、前記クロック生成器は、前記システムクロックの1周期の間に前記ADCクロックをn発(nは2以上の自然数)生成させ、前記各々のADCは、前記ADCクロックによって前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とをn回行なった後に変換動作を停止し、前記システムクロックの次の立ち上がりで次の変換動作を再開し、各々任意の前記システムクロック立ち上がり時刻でサンプリングをホールドして変換動作を開始し、他のADCの干渉を受けないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のA/D変換回路によれば、各ADCが任意のタイミングでサンプリング・ホールドできるA/D変換回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係るA/D変換回路の構成ブロック図である。
図2】実施例1に係るA/D変換回路のADCの比較電位作成動作と電位比較動作の様子を示す(a)図とノイズ発生するタイミングを示す(b)図である。
図3】実施例1に係るA/D変換回路のADCの比較電位作成動作による電源ノイズにより誤った電位でホールドした様子を示す(a)図とノイズの影響がない場合にホールドした様子を示す(b)図である。
図4】実施例1に係るA/D変換回路の複数のADCが同期して同じタイミングで動作したときの様子を示す図である。
図5】実施例1に係るA/D変換回路のADCクロック生成器において比較電位作成動作の時間と電位比較動作の時間を制御する複数のADC用クロックを示す図である。
図6】実施例1に係るA/D変換回路のADCクロック生成器において比較電位作成動作の時間+電位比較動作の時間<ディレイ回路の遅延時間の関係を満足するクロックを示す図である。
図7】実施例1に係るA/D変換回路においてシステムクロックが1周期の間に3ビットの変換動作を行う様子を示す図である。
図8】実施例1に係るA/D変換回路においてシステムクロックに同期してホールド動作をADCに実行させる様子を示す図である。
図9】実施例1に係るA/D変換回路の各部の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態のA/D変換回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施例1に係るA/D変換回路の構成ブロック図である。
【0013】
A/D変換回路は、ADCクロック生成器1と、入力電位をサンプリングするADC2a,2b(以下、ADC)と、ADCクロック生成器1と、フリップフロップ(FF)3a,3bを備える。この例では、ADCを2つとしたが、3つ以上のADCを設けてもよい。
【0014】
ADC2a,2bは、スイッチ21a,21b、サンプリング容量22a,22b、比較器23a,23b、デジタル/アナログ変換器(DAC)24a,24b、逐次型比較データ生成器25a,25bを備える。電源Vccは、ADC2a,2bに電力を供給する。
【0015】
ADC2a,2bは、入力されるアナログ電位をサンプリング容量22a,22bに蓄えた(サンプリング)後に、入力とサンプリング容量22a,22bをスイッチ21a,21bで切り離し(ホールド)、サンプリング容量22a,22bに蓄えた電位を比較器23a,23bでデジタル値に変換(変換動作)する。スイッチ21a,21bとサンプリング容量22a,22bとは、本発明のサンプリング・ホールド回路(SH回路)に対応する。ADC2a,2bにおけるホールド動作は、後述されるシステムクロックに同期するタイミングで実行される。
【0016】
デジタル/アナログ変換器(DAC)24a,24bは、本発明の比較電位作成回路に対応し、SH回路のサンプリング電位に対して予測したアナログの予測電位をデジタル値に基づいて作成する比較電位作成動作を行う。
【0017】
比較器23a,23bは、SH回路のサンプリング電位と予測電位を比較する電位比較動作を行い、サンプリング電位をデジタル値に変換する。逐次型比較データ生成器25a,25bは、逐次型比較レジスタで構成され、比較器23a,23bのデジタル値を各ビット毎に記憶するとともに、記憶されたデジタル値をデジタル/アナログ変換器(DAC)24a,24bに出力する。
【0018】
ADC2a,2bは、一般に分解能ビット数回の比較動作を行なうことでアナログ電位をデジタル数値に変換する。例えば、12ビット分解能のADCの場合、12回の比較動作が必要である。この比較動作をクロックで制御すれば、12ビット分解能のADCの変換動作は12サイクルのクロックが必要である。
【0019】
ここで、システムクロックよりもADC2a,2bの比較動作時間が十分に速い場合、例えばシステムクロックの2倍の周波数のクロックをADC2a,2bに適用することで、ADC2a,2bをシステムクロックで動作させた時と比較して1/2の時間で変換値を得ることができる。
【0020】
ADCクロック生成器1は、ADCクロックを生成する。ADC2a,2bは、ADCクロック生成器1で生成されたADCクロックで動作する。ADCクロックは、LSI全体を制御するシステムクロックよりも高周波である。即ち、ADCクロックの周期は、システムクロックの周期よりも短い。
【0021】
ADCクロックは、例えば、システムクロックの立ち上がりエッジタイミングと、それをディレイ回路により遅らせたタイミングにより生成する。ADCクロックは、システムクロック1サイクルごとに固定された複数サイクルのクロックパルスを生成する。
【0022】
ADCクロック生成器1は、システムクロックを遅延させるディレイ回路11(第1ディレイ回路に対応)と、ディレイ回路11で遅延されたシステムクロックを反転させる反転回路12と、反転回路12の出力とシステムクロックとの論理積をディレイ回路14aに出力する論理積回路13と、複数のディレイ回路14a~14fの内の奇数番目のディレイ回路14a,14c,14eの出力の論理和をDAC24a,24bに出力する第1論理和回路16と、複数のディレイ回路14a~14fの内の偶数番目のディレイ回路14b,14d,14fの出力の論理和を比較器23a,23bに出力する第2論理和回路15を備える。ADCクロック生成器1は、システムクロックよりも周波数が高く、システムクロックに同期したADCクロックを生成する。
【0023】
フリップフロップ(FF)3a,3bは、システムクロックに同期して変換開始信号CS1,CS2を生成し、変換開始信号CS1,CS2をスイッチ21a,21b、逐次型比較データ生成器25a,25bに出力し、サンプリング、ホールド、変換動作を開始する時刻をシステムクロックに同期して制御する。
【0024】
次に、ADC2a,2bは変換動作の過程でノイズを発生させるが、ノイズを発生させる動作について説明する。ADC2a,2bは、サンプリング容量22a,22bに蓄えた電位をデジタル値に変換する「変換動作」を行う。「変換動作」は、図2(a)に示すように、サンプリングされたサンプリング電位に対して予測した予測電位を作成する比較電位作成動作と、予測電位とサンプリング電位との比較を行なう電位比較動作の2つの動作に分けられる。
【0025】
ADC2a,2bは、比較電位作成動作と電位比較動作を分解能ビット数繰り返す。電源Vccへのノイズは、図2(b)に示すように、比較電位作成動作の時に発生する。
【0026】
次に、ホールド時刻について説明する。図3(a)に示すように、あるADCが比較電位作成動作中に、他のADCがホールドを行なうと、他のADCは、比較電位作成動作による電源ノイズにより誤ったサンプリング電位でホールドし、ADCは正しい変換結果を得ることができない。
【0027】
図3(b)に示すように、あるADCが比較電位作成動作以外の場合に、すなわち、停止中、サンプリング中、または、電位比較動作中に、他のADCがホールドを行なった場合、電源ノイズレベルが低いので、ADCは正しい変換結果を得ることができる。また、図4に示すように、複数のADCが同期して同じタイミングで動作する場合も、ADCは正しい変換結果を得ることができる。
【0028】
次に、ADCクロック生成器1で生成されるADCクロックについて説明する。ADCクロック生成器1は、図5に示すように、例えば、直列に接続された複数のディレイ回路14a~14fを有し、複数のディレイ回路14a~14fでシステムクロックを順次遅延させて複数のADCクロックを生成し、DAC動作クロックと比較動作クロックにより比較電位作成動作(DAC動作)と電位比較動作のタイミングを制御する。このクロックの周期は、比較電位作成動作の時間、電位比較動作の時間の和を満足する限りにおいて、高速であることが望ましい。
【0029】
比較電位作成動作の時間+電位比較動作の時間<ADC用クロックの周期に設定する必要がある。
【0030】
ADCクロック生成器1を設け、ADCの高速クロックを作成すれば、LSIのシステムクロックの周波数が遅い場合でも高速なADC回路が実現できる。ADCクロック生成器1は例えば図1に示すディレイ回路11,14a~14fと簡単な論理回路12,13,15,16で実現できる。なお、ADCクロック生成器1は、システムクロックのタイミングに同期して、前記の特徴を持つADCクロックが得られるならば、他のクロック生成回路方式を用いてもかまわない。
【0031】
比較電位作成動作の時間、電位比較動作の時間は、LSIのデバイスのばらつきにより、また、LSIの使用条件(電源電圧、温度)により変動する。安定した動作を得るためには、比較電位作成動作の時間と、電位比較動作の時間と、ディレイ回路の遅延時間は、条件に対して等しくなるように設計することが望ましい。
【0032】
図6に示すように、比較電位作成動作の時間、電位比較動作の時間と、例えばディレイ回路14aの遅延時間の依存性が正確に合わせられない場合は、比較電位作成動作の時間+電位比較動作の時間<ディレイ回路の遅延時間の関係を満足するようにクロックを設計する必要がある。
【0033】
ディレイ回路の遅延時間は、例えば、ディレイ回路14bとディレイ回路14cとの合計遅延時間であり、ADCクロックの周期である。ADCクロックの周期は、DAC動作クロックの周期又は比較動作クロックの周期である。
【0034】
次に、ADCクロックがシステムクロックに対して非同期である場合の問題点について説明する。ADCクロックは、システムクロックに対して非同期である。 システムはシステムクロックで動作しており、ADCはADCクロックで動作している。システムクロックとADCクロックとが非同期であれば、システムは変換動作中のADCの動作状態(比較電位作成動作中なのか/電位比較動作中なのか)を知ることができない。
【0035】
システムから任意の時刻にADCがホールドできることが望ましい。しかし、システムが他のADCの動作状態を知ることができない場合、正しいタイミングでADCがホールドできない。
【0036】
この問題を解決するために、システムがADCにホールド動作を行なわせる時に他のADCが比較電位作成動作中ではないことを保証するために、ADCクロックに対する規則を以下のように設ける。
【0037】
比較電位作成動作の時間+電位比較動作の時間<ディレイ回路の遅延時間であり、ディレイ回路の遅延時間×n<システムクロックの周期を満足する2以上の整数をnとするディレイ回路を備えるADCクロック生成器1は、システムクロック1周期の間にn発のADCクロックを生成する。
【0038】
ADC2a,2bは、n発のADCクロックに同期するタイミングでてn回の比較電位作成動作と電位比較動作を行なう。即ち、比較電位作成動作と電位比較動作とは、システムクロックの1周期の間に複数回路実行される。従って、ADC2a,2bは、システムクロックが1周期の間にnビット分の変換動作を行なって停止する。
【0039】
この変換動作を図7に示す。図7ではシステムクロックが1周期の間に3ビット分の変換動作を行なう例を示した。ADC2a,2bの変換動作は、システムクロックの立ち上がりによって開始し、3ビット分の変換動作を行なって停止する。システムクロックの次の立ち上がりによって、次の3ビット分の変換動作を再開する。
【0040】
A/D変換回路によれば、図8に示すように、システムクロックが立ち上がる瞬間では、ADCの変換動作が必ず停止しており、この時刻ではノイズが発生していないことが担保される。よって、システムクロックで動作しているシステムは、任意のシステムクロックが立ち上がった時刻にホールド動作をADCに実行させることができる。即ち、他のADCの動作状態を考慮する必要がなく、また、他のADCを制御する必要もない。
【0041】
また、従来では、ADCがホールドするにあたって変換動作中の他のADCの動作を停止する処理を行なう必要があったが、本発明では、システムクロックで動作しているシステムから見て任意のサイクルでADCがホールドすることができる。
【0042】
また、本発明によれば、あるADCがホールドする行為に対して、他のADCの動作状態を考慮する必要がなく、また他のADCを制御する必要もないので、ADC制御の仕組みが簡単である。
【0043】
また、他のADC動作によってADC動作が途中停止することがないので、ADCの変換動作時間は動作開始時刻から期待できる決まった時刻に終了することができ、処理のスケジュールが狂うことがない。
【0044】
図9に実施例1に係るA/D変換回路の各部の動作図を示した。図9に参照しながら図1に示すADC2a,2bの変換動作を説明する。まず、時刻t0に、システムクロックが立ち上がると、フリップフロップ3a,3bは、システムクロックに同期して変換開始信号CS1,CS2をスイッチ21a,21bと逐次型比較データ生成器25a,25bに出力する。
【0045】
端子Tm1,Tm2にアナログ入力1,2が入力され、スイッチ21a,21bとサンプリング容量22a,22bとでサンプリングが行われる。
【0046】
時刻t10に、ADC2aは、サンプリング電位をホールドし、変換動作を開始する。時刻t11に、システムクロックをディレイ回路14aで遅延させて論理和回路16を介した比較電位作成動作クロック(DAC動作クロック)がDAC24aに出力される。DAC24aは、DAC動作(比較電位作成動作)を行う。このとき、電源ノイズが発生する。
【0047】
次に、時刻t12~時刻t13に、システムクロックをディレイ回路14bで遅延させて論理和回路15を介した電位比較動作クロック(比較動作クロック)が比較器23に出力される。比較器23は、比較動作を行う。このとき、電源ノイズは発生しない。
【0048】
時刻t14に、システムクロックをディレイ回路14cで遅延させて論理和回路16を介したDAC動作クロックがDAC24aに出力される。DAC24aは、DAC動作を行う。このとき、電源ノイズが発生する。
【0049】
次に、時刻t15~時刻t16に、システムクロックをディレイ回路14dで遅延させて論理和回路15を介した比較動作クロックが比較器23に出力される。比較器23は、比較動作を行う。このとき、電源ノイズは発生しない。
【0050】
時刻t17に、システムクロックをディレイ回路14eで遅延させて論理和回路16を介したDAC動作クロックがDAC24aに出力される。DAC24aは、DAC動作を行う。このとき、電源ノイズが発生する。
【0051】
次に、時刻t18~時刻t19に、システムクロックをディレイ回路14fで遅延させて論理和回路15を介した比較動作クロックが比較器23に出力される。比較器23は、比較動作を行う。このとき、電源ノイズは発生しない。
【0052】
ここで、DAC動作の時間と比較動作の合計時間よりもディレイ回路の遅延時間(例えば時刻t11-t14)が大きい。また、ディレイ回路の遅延時間×3<システムクロックの周期(例えば時刻t10-t20)を満足する。
【0053】
さらに、システムクロックの立ち上がりのタイミング(時刻t20)で、ADC2bのサンプリング電位をホールドしている。
【0054】
このように実施例1のA/D変換回路によれば、ADCクロックの周期は、比較電位作成動作の時間と電位比較動作の時間との合計時間よりも長く、システムクロックの1周期に対してn発(n≧2)のADCクロックが生成され、SH回路21a,21b,22a,22bは、システムクロックの立ち上がりでアナログ電位をサンプリング・ホールドするので、各ADCが任意のタイミングでサンプリング・ホールドできる。また、ADCのサンプリング・ホールド時にADC変換動作による電源ノイズの影響を受けず正確な値を確定できる。
【0055】
LSIのデバイスのばらつきや使用条件により、比較電位作成動作(DAC動作)速度は変動する。DAC動作が速いと、それに伴う電流の大きさと立ち上がり速度が増し、電源へのノイズ重畳が増す。DAC動作が遅いと、電流の大きさと立ち上がりスピードも遅くなるので、ノイズの重畳は減少する。本発明では、DAC動作が速い時、ADCクロックも速くなり、DAC動作が遅くなると、ADCクロックも遅くなる。
【0056】
言い換えれば、ADCクロックの周波数は、DAC動作時にDACに流れる電流に比例する。したがって、DAC動作が速くなりノイズが大きくなる場合は、ADCクロックもシステムクロックの周期内においては、少ない場合に比べて、時間的に早いタイミングで発生する。
【0057】
このため、ノイズが制定する時間に余裕ができ、ノイズの影響が受けにくい動作原理となる。また、逆にDAC動作が遅い場合は、電流も減り、ノイズも減るので、システムクロックに対しADCクロックの生成条件を満たせば、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0058】
なお、本実施例では、動作説明をわかりやすくするために、ADCクロックは、前記比較電位作成動作を制御する比較電位作成動作クロック(DAC動作クロック)と、前記電位比較動作を制御する電位比較動作クロック(比較動作クロック)という2つのクロック信号である例を説明しているが、ADCクロックは、個々の動作それぞれのために用意した複数のクロック信号でもかまわないし、1つのクロック信号で前記比較電位作成動作と前記電位比較動作とを制御してもかまわない。
【符号の説明】
【0059】
1 ADCクロック生成器
2a,2b ADC
3a,3b フリップフロップ回路(FF)
11,14a~14f ディレイ回路
12 反転回路
13 論理積回路
15,16 論理和回路
21a,21b スイッチ
22a,22b サンプリング容量
23a,23b 比較器
24a,24b デジタル/アナログ変換器(DAC)
25a,25b 逐次型比較データ生成器
Vcc 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9