(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】チタン系合金及び付加製造法によるチタン系合金コンポーネントの製造のための方法。
(51)【国際特許分類】
C22C 14/00 20060101AFI20230922BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230922BHJP
B22F 3/16 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C22C14/00 Z
B33Y70/00
B22F3/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018194033
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コットン, ジェームズ ディーン
(72)【発明者】
【氏名】クリル, マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガブチ, アラシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミトロポルスカヤ, ナタリア ゲオルギエヴナ
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-014833(JP,A)
【文献】特開2009-030146(JP,A)
【文献】特開平05-001343(JP,A)
【文献】特開平06-306514(JP,A)
【文献】特開平06-064600(JP,A)
【文献】特開平06-065661(JP,A)
【文献】特開2013-047369(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102586647(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 14/00
B33Y 70/00
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001-1.0重量%の
Gd、5.0-7.0%重量%のアルミニウム(Al)、3.0-5.0%重量%のジルコニウム(Zr)、0.01-1.0%重量%のニオブ(Nb)、0.01-1.5%重量%のモリブデン(Mo)、2.0-4.0%重量%のスズ(Sn)、0.01-1.0%重量%のケイ素(Si)を含み、残部がチタン及び不純物からな
るアルファ-ベータチタン系合金。
【請求項2】
Gdの量が0.01-0.5重量%である、請求項1に記載のチタン系合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の分野は、チタン系合金及びチタン系合金コンポーネントの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン系合金から製造されるコンポーネントは、高い対重量強度、優れた耐食性及び高温特性から、航空宇宙用途で広く使用されている。しかし、原材料費が高く、バイ・トゥー・フライ・レシオ(buy-to-fly ratio)が高いため、航空宇宙産業は付加製造法を含むニアネットシェイプ技術の開発を推進している。
【0003】
チタン系合金は、高温のベータ相の結晶が核形成し、付加的堆積プロセス中に成長して長い寸法になる固化挙動を示す。大きな粒子を含む微細構造は、低い静的特性及び疲労特性を有する材料をもたらす。また、細長いベータ粒子は、異方性特性をもたらす結晶学的組織を残す。
【0004】
さらに、粗いベータ粒子サイズの形成をもたらす条件は、粒界におけるα相の形成にも寄与することができ、厳密には、低伸度に寄与する。付加製造プロセス中に現れる別の問題は、遅い固化(冷却速度が遅い)と高い温度勾配との組み合わせであり、この組み合わせは特に、大きな細長い粒子を促進する。よって、このような欠点は、例えばサイクル若しくは熱疲労に従って寸法決めされたり、又は小さな引張特性マージンを有する静的特性に従って寸法決めされるようなより重要な用途においては、付加製造におけるチタン系合金の使用を制限する。したがって当業者は、チタン系合金及び付加製造法によるチタン系合金コンポーネントの製造方法の分野において研究開発を続けている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態において、チタン系合金は、合計で0.001-1.0重量%の、少なくとも1種のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含む。
【0006】
別の実施形態において、チタン系合金コンポーネントを製造するための方法は、合計で0.001-1.0重量%の、少なくとも1種のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含むチタン系合金出発原料を提供すること、並びにチタン系合金出発原料から付加製造法によってチタン系合金コンポーネントを形成することを含む。
【0007】
開示のチタン系合金及びチタン系合金コンポーネントを製造するための方法の他の実施形態は、以下の詳細な説明、付属の図面及び添付の特許請求の範囲から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】チタン系合金コンポーネントを製造するための方法を示すフロー図である。
【
図2A-C】
図2A、2B及び2Cは、キャスト状態の実験合金の微細構造を示す。
【
図3A-I】
図3Aから3Iは、ニール後の実験合金の微細構造を示す。
【
図4A-B】
図4A及び4Bは、ランタナイド系元素に富む金属間粒子を含む微細構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書は、合計で0.001-1.0重量%の少なくとも1種のランタナイド系元素を含むチタン系合金に関する。チタン系合金は、50重量%を超えるチタンを有する任意の合金と定義される。
【0010】
一態様において、チタン系合金は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、酸素(O)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)及びクロム(Cr)のうちの少なくとも1種の元素の付加量を含み、該量は、それらのアルミニウム当量及びモリブデン当量値に基づいて規定され、アルミニウム当量(Al-eq)は0から7.5%の間であり、モリブデン当量(Mo-eq)は2.7から47.5の間であり、Al-eqとMo-eqは次のように定義される。
Al-eq=Al%+Zr%/6+Sn%/3+10*(O%)
Mo-eq==Mo%+0.67*V%+0.33*Nb%+2.9*Fe%+1.6*Cr%
【0011】
ランタナイド系元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Tb)及びルテチウム(Lu)からなる。これらの元素は、ランタナイド系の各元素が化学的に類似しているため、「ランタナイド系元素」と呼ばれる。
【0012】
少量のランタナイド系元素が本明細書のチタン系合金に添加されて、固化中の大きな粒子の発生傾向が低下する。本発明は理論に制限されるものではないが、このランタナイド系元素の添加の効果は、これらの元素の酸素に対する高い親和性、液相中でのクラスター化の傾向、及び固相における低溶解度の結果であると考えられ、これらは全て、固化中に固体/液体前面を摂動させる傾向があり、それによって大きな粒子の成長が妨げられ、固化した微細構造の粒子サイズがより微細になる。固化したチタン系合金のより微細な粒子サイズは、より良好な強度、展延性及び疲労特性を提供する。
【0013】
チタン系合金中の1種以上のランタナイド系元素の最小総量は、0.001重量%、好ましくは0.01重量%である。1種以上のランタナイド系元素の総量が低すぎると、目的の効果が得られない。
【0014】
1種以上のランタナイド系元素の最大総量は、1.0重量%、好ましくは0.5重量%である。1種以上のランタナイド系元素の総量が高すぎると、ランタナイド系元素の添加のコストが非常に大きくなる。
【0015】
したがって、本明細書のチタン系合金は、総量が0.001-1.0重量%の範囲、好ましくは0.01-0.5重量%の範囲の1種以上のランタナイド系元素を含む。
【0016】
一態様では、1種以上のランタナイド系元素は、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)及びエルビウム(Er)から選択され、チタン系合金は、総量が0.001-1.0重量%、好ましくは0.01-0.5重量%のNd、Gd、Dy及びErを含む。
【0017】
特定の例では、ランタナイド系元素は、ガドリニウム(Gd)であり、チタン系合金は、0.001-1.0重量%、好ましくは0.01-0.5重量%のGdを含む。
【0018】
室温で存在する相を使用すると、チタン合金は、3つの主なクラス:アルファ、アルファ-ベータ及びベータに分けられる。各クラスは、特有かつ周知の特徴を有する。アルファ及びベータ安定剤は、チタンの種々の相を安定化させるためにチタン系合金に添加される。
【0019】
本明細書のチタン系合金は、チタン系合金のアルファ、アルファ-ベータ及びベータクラスを含み、1種以上のランタナイド系元素が上記のように添加される。したがって、チタン系合金は、種々のアルファ及び/又はベータ安定剤をさらに含むことができる。
【0020】
特定の態様では、チタン系合金は、アルファ-ベータチタン系合金である。アルファ-ベータチタン系合金は、優れた耐食性及び高温特性を有し、高強度に熱処理可能である。これらの理由及び他の理由から、アルファ-ベータ合金は、付加製造法によって形成されるコンポーネントにとって特に魅力的である。しかし、アルファ-ベータチタン系合金の固化は、高温ベータ相の大きな粒子を核形成させ、付加堆積プロセス中に長い寸法に成長させる可能性がある。こうした大きな粒子寸法は、アルファ-ベータチタン合金の展延性、強度及び他の特性を低下させる。したがって、少量のランタナイド系元素の添加による、固化中の大きな粒子の発生傾向を減少させる効果は、アルファ-ベータチタン系合金に関して特に有用であり得る。例示的な従来のアルファ-ベータチタン系合金には、例えばTi-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-6Al-4Zr-0.5Nb-0.8Mo-3Sn-0.3Si(VT18Y)、及びTi-6Al-4Vが含まれる。
【0021】
一例では、本明細書のアルファ-ベータチタン系合金は、重量パーセントで、5.0-7.0%(好ましくは5.5-6.5%)のアルミニウム(Al)、1.0-3.0%(好ましくは1.5-2.5%)のスズ(Sn)、3.0-5.0%(好ましくは3.5-4.5%)のジルコニウム(Zr)、1.0-3.0%(好ましくは1.5-2.5%)のモリブデン(Mo)及び、合計で0.001-1.0%(好ましくは0.01-0.5%)の、1種以上のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含み得る。したがって、チタン系合金は、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金の変形例といえる。
【0022】
別の例では、本明細書のアルファ-ベータチタン系合金は、重量パーセントで、5.0-7.0%(好ましくは5.5-6.5%)のアルミニウム(Al)、3.0-5.0%(好ましくは3.5-4.5%)ののジルコニウム(Zr)、0.01-1.0%(好ましくは0.25-0.75%)のニオブ(Nb)、0.01-1.5%(好ましくは0.5-1.0%)のモリブデン(Mo)、2.0-4.0%(好ましくは2.5-3.5%)のスズ(Sn)、0.01-1.0%(好ましくは0.1-0.5%)のケイ素(Si)、合計で0.001-1.0%(好ましくは0.01-0.5%)の、1種以上のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含み得る。したがって、チタン系合金は、Ti-6Al-4Zr-0.5Nb-0.8Mo-3Sn-0.3Si(「VT18Y」)の変形例といえる。
【0023】
さらに別の例では、本明細書のアルファ-ベータチタン系合金は、5.0-7.0%(好ましくは5.5-6.5%)のアルミニウム(Al)、3.0-5.0%(好ましくは3.5-4.5%)のバナジウム(V)、合計で0.001-1.0%(好ましくは0.01-0.5%)の1種以上の、ランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含み得る。したがって、チタン系合金は、Ti-6Al-4V合金の変形例といえる。
【0024】
一態様では、チタン系合金は、融解し固化して上記の組成を有するコンポーネントをもたらす出発原料の形態であってもよい。一例では、出発原料は、上記の組成を有するワイヤの形態であってもよい。別の例では、出発原料は、上記の組成を有する粉末微粒子の形態であってもよく、又は出発原料は、上記の組成を有する異なる組成(組み合わせられた場合)の粉末微粒子の形態であってもよい。
【0025】
粉末微粒子の形態の例示的な出発物質は、任意の好適なプロセス(例えばガス噴霧)によって製造することができる。一例では、粉末微粒子は、適切な供給物質から非汚染雰囲気下で製造することができる。供給物質は、第1の溶解が消耗電極、非消耗電極、電子ビームコールドハース又はプラズマアークコールドハース溶解法によってなされ、その次の溶解(単数又は複数)が減圧下で真空アーク再溶解(VAR)法によりなされ、最終のVAR溶解の前に合金が添加される、複数の溶解がされ得る。非消耗性電極溶解のための雰囲気は、1000mm水銀以下の絶対圧力の真空又はアルゴン及び/又はヘリウムであってよい。例示的な粉末微粒子のサイズは限定されない。一例では、粉末微粒子は、35番(500μm)の篩を通るようにサイズ決めしてよく、ASTM B 214に従って決定された325番(45μm)篩を通過する重量は5%以下である。例示的な粉末微粒子の密度は限定されない。一例では、粉末微粒子の密度は、ASTM B 527に従って決定された熱間圧縮密度(hot compacted density)値の60%以上であってよい。
【0026】
ワイヤの形態の例示的な出発原料は、任意の好適なプロセス(例えば引抜)によって製造することができる。
【0027】
別の態様では、チタン系合金は、上記の組成を有するコンポーネントの形態であってもよく、コンポーネントは、最終的なサイズ及び形状を有するネットシェイプコンポーネント又は最終的なサイズ及び形状を有するコンポーネントになるように後処理することができるニアネットシェイプコンポーネントである。コンポーネントの形状及びサイズは限定されない。一例では、コンポーネントは、航空機又は宇宙飛行体のコンポーネントである。
【0028】
チタン系合金から形成される例示的なコンポーネントは、任意の好適な方法によって製造され得る。本明細書のチタン系合金の一つの利点は、固化中の大きな粒子の発生傾向の低下である。したがって、本明細書のチタン系合金は、固化中の大きな粒子を避けることが非常に有益である付加製造法などの製造法に有利に使用することができる。
【0029】
図1に示すように、本発明は、合計で0.001-1.0重量%の、少なくとも1種のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含むチタン系合金出発原料を提供すること12と、チタン系合金出発原料から付加製造法によりチタン系合金コンポーネントを形成すること14とを含む、チタン系合金コンポーネント1を製造するための方法に関する。
【0030】
ある態様では、付加製造法は、チタン系合金をチタン系合金の溶融温度範囲以上又は範囲内まで加熱することを含む。したがって、少なくとも1種のランタナイド系元素のチタン系合金への添加により、チタン系合金の溶融温度範囲以上又は範囲内から溶融温度範囲以下への冷却中の固化の間の大きな粒子の発生傾向が低下する。
【0031】
チタン系合金から形成されるコンポーネントを製造するための付加製造法は、限定されない。付加製造法は、粉末又はワイヤがチタン系合金で形成される、粉体供給法又はワイヤ供給法を含み得る。
【0032】
一例では、粉末ベースの付加製造法は、(i)粉末材料の第1の層を堆積させる工程;(ii)粉末材料の第1の層の第1の部分を少なくとも部分的に溶解・固化する工程であって、第1の部分がコンポーネントの第1の領域に対応している工程;(iii)第1の層の上に粉末材料の第2の層を堆積させる工程;(iv)粉末材料の第2の層の第2の部分を少なくとも部分的に溶解・固化する工程であって、第2の部分がコンポーネントの第2の領域に対応し、第1の領域と第2の領域は互いに接合されている工程;及び(v)粉末材料の連続層を前の層の上に堆積させ、各連続層の一部分を少なくとも部分的に溶解・固化してコンポーネントを製造する工程であって、各連続層部分がコンポーネントの連続領域に対応している工程
を含む。
【0033】
別の例では、ワイヤベースの付加製造法は、(i)ワイヤ材の第1部分を溶解し、堆積させ、固化し、コンポーネントの第1の領域を形成する工程;(ii)ワイヤ材の第2部分を溶解し、堆積させ、固化し、コンポーネントの第2の領域を形成する工程であって、第1の領域と第2の領域が互いにされている工程;及び(iii)ワイヤ材の連続部分を溶解し、堆積させ、固化し、コンポーネントの前の領域の上にコンポーネントの連続領域を形成する工程
を含む。
【0034】
例示的な付加製造法には、電子ビーム溶解(EBM)、選択的レーザー溶解(SLM)、選択的レーザー焼結(SLS)、レーザー金属成形(LMF)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、及び直接金属レーザー溶解(DMLM)が含まれる。
【実施例】
【0035】
表1に示す組成を有する4つの実験的なアルファ-ベータチタン系合金を、ガスタングステンアーク溶接によって製造し、ランタナイド系元素がチタン系合金の固化に及ぼす影響を決定した。
【0036】
得られたアズキャスト構造に対するランタナイド系元素の添加の効果を
図2A、
図2B及び
図2Cに示す。
図2Aは、左から右へ、アズキャスト状態の合金番号1、2、3、4それぞれの溶融部の微細構造を示す。
図2Bは、合金番号1の微細構造の一部の拡大図を示し、
図2Cは、合金番号4の微細構造の一部の拡大図を示す。
図2A、2B及び2Cに示すように、合金番号2、3及び4へのランタナイド系元素の添加は、ベータ20の大きくて細長い粒子が溶融部に見える合金番号1と比較して、溶融部におけるベータ20の粒子サイズの微細化をもたらす。
【0037】
900℃で60分間アニールした後に空冷した構造に対するランタナイド系元素の添加の効果を
図3Aから3Iに示す。
図3A、3B及び3Cは、合金番号1に関して、それぞれ母材の微細構造、熱影響部、及び溶融部を示す。
図3D、3E及び3Fは、合金番号2に関して、それぞれ母材の微細構造、熱影響部、及び溶融部を示す。
図3G、3H及び3Iは、合金番号3に関して、それぞれ母材の微細構造、熱影響部、及び溶融部を示す。
図3Aから3I,に示すように、ベータ粒子サイズは、チタン系合金を含有するランタナイド系元素の溶融部で微細化されている。
【0038】
図4A9及び4Bは、ランタナイド系元素に富む金属間粒子40、42を含有する微細構造を示す。表2は、金属間粒子40、42の化学組成の分析を示す。
【0039】
本発明は理論に制限されないが、これらのランタナイド系元素に富む金属間粒子は、固化中に形を成してクラスター化し、固体/液体固化前面を摂動させ、それによって高温ベータ相の大きな粒子の成長を制限し、固化した微細構造のより微細な粒子サイズをもたらす。
【0040】
チタン系合金及びチタン系合金コンポーネントの製造方法の例は、
図5に示す航空機製造及び保守方法100と、
図6に示す航空機102という文脈において説明され得る。製造前段階では、航空機製造及び保守方法100は、航空機102の仕様及び設計104と、材料の調達106とを含む。製造段階では、航空機102のコンポーネント/サブアセンブリの製造108と、システムインテグレーション110とが行われる。その後、航空機102を就航114させるために、認可及び納品112が行われる。顧客による運航中は、航空機102には、改良、再構成、改修等も含む定期的な整備及び保守116が予定されている。
【0041】
方法100の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行され得る。本明細書においては、システムインテグレータは、任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請業者を含み得るがそれらに限定されず、第三者は、任意の数のベンダー、下請業者及びサプライヤーを含み得るがそれらに限定されず、オペレータは、航空会社、リース会社、軍隊、サービス組織等であり得る。
【0042】
開示のチタン系合金及びチタン系合金コンポーネントの製造方法は、航空機102の仕様及び設計104、材料調達106、コンポーネント/サブアセンブリの製造108、システムインテグレーション110、認可及び納品112、航空機の就航114、並びに定期的な整備及び保守116を含む航空機製造及び保守方法100の一又は複数の段階において用いることができる。
【0043】
図6に示すように、例示的方法100によって製造された航空機102は、複数のシステム120と内装122とを備えた機体118を含み得る。複数のシステム120の例には、推進システム124、電気システム126、油圧システム128、及び環境システム130のうちの一又は複数が含まれ得る。任意の数の他のシステムが含まれることもある。開示のチタン系合金及びチタン系合金コンポーネントの製造方法は、機体118、複数のシステム120及び内装922を含む航空機102のシステムのいずれにも用いることができる。
【0044】
開示のチタン系合金及びチタン系合金コンポーネントを製造するための方法は、航空機という文脈において記載されているが、当業者は、開示のチタン系合金及びチタン系合金コンポーネントを製造するための方法は、様々な輸送体及び非輸送体に利用され得ることを容易に認識するであろう。例えば、本明細書に記載の実施形態の実装は、例えばヘリコプター、客船、自動車等を含む任意の種類の輸送体に実装することができる。
【0045】
開示のチタン系合金及びチタン系合金コンポーネントを製造するための方法の様々な実施形態が示され、説明されてきたが、当業者が本明細書を読めば、変更例も想起可能であろう。本願は、こうした変更例を含み、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0046】
本開示の一態様によれば、合計で0.001-1.0重量%の、少なくとも1種のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含むチタン系合金が提供される。
【0047】
少なくとも1種のランタナイド系元素の総量が0.01-0.5重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0048】
少なくとも1種のランタナイド系元素がNd、Gd、Dy及びErの少なくとも1つを含むチタン系合金が、さらに開示される。
【0049】
Nd、Gd、Dy及びErの総量が0.001-1.0重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0050】
Nd、Gd、Dy及びErの総量が0.01-0.5重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0051】
少なくとも1種のランタナイド系元素がGdを含むチタン系合金が、さらに開示される。
【0052】
Gdの量が0.001-1.0重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0053】
Gdの量が0.01-0.5重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0054】
アルファ-ベータチタン系合金であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0055】
少なくとも1種のランタナイド系元素の総量が0.01-0.5重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0056】
少なくとも1種のランタニド系列元素がNd、Gd、Dy及びErの少なくとも1つを含むチタン系合金が、さらに開示される。
【0057】
Nd、Gd、Dy及びErの総量が0.001-1.0重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0058】
Nd、Gd、Dy及びErの総量が0.01-0.5重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0059】
少なくとも1種のランタナイド系元素がGdを含むチタン系合金が、さらに開示される。
【0060】
Gdの量が0.001-1.0重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0061】
Gdの量が0.01-0.5重量%であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0062】
出発原料の形態であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0063】
出発原料がワイヤ又は粉末微粒子の形態であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0064】
コンポーネントの形態であるチタン系合金が、さらに開示される。
【0065】
合金がアルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、酸素(O)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)及びクロム(Cr)のうちの少なくとも1種の元素の付加量を含み、該量がそれらのアルミニウム当量及びモリブデン当量に基づいて規定され、アルミニウム当量(Al-eq)が0から7.5%の間であり、モリブデン当量(Mo-eq)が2.7から47.5の間であり、Al-eqとMo-eqがAl-eq=Al%+Zr%/6+Sn%/3+10*(O%);Mo-eq==Mo%+0.67*V%+0.33*Nb%+2.9*Fe%+1.6*Cr%と定義されるチタン系合金がさらに開示される。
【0066】
本開示の別の態様によれば、合計で0.001-1.0重量%の、少なくとも1種のランタナイド系元素とチタン及び不純物からなる残部とを含むチタン系合金出発原料を提供することと、チタン系合金出発原料から付加製造法によりチタン系合金コンポーネントを形成することとを含む、チタン系合金コンポーネントを製造するための方法が提供される。