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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61M25/09 516
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019036467
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137854
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 訓
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-292729(JP,A)
【文献】特開2010-259624(JP,A)
【文献】特開2011-177392(JP,A)
【文献】特開2015-013005(JP,A)
【文献】特開2010-252938(JP,A)
【文献】米国特許第06761696(US,B1)
【文献】特開平03-090166(JP,A)
【文献】特表2006-519068(JP,A)
【文献】国際公開第2009/119386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端から先端に亘って横断面が略円形状である第1シャフトと、
前記第1シャフトの先端部に並設され、前記第1シャフトの長軸方向に沿って延びる第2シャフトと、
前記第1シャフトの先端部に併設され、基端が前記第1シャフトに接合しかつ前記第1シャフトの先端部と前記第2シャフトとを覆うように巻回したコイル体と、
先端固着部と、を備えているガイドワイヤであって、
前記コイル体の先端と、前記第1シャフトの先端とは前記先端固着部にて一体的に接合されており、
前記第2シャフトは、横断面が扁平形状の第2シャフト先端部と、この第2シャフト先端部の基端から基端方向に向かって連続しかつ横断面が略円形状の第2シャフト基端部とを有し
前記第2シャフト先端部の扁平方向が、前記第1シャフトの中心軸と前記第2シャフトの中心軸とを通る平面に平行であることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
基端から先端に亘って横断面が略円形状である第1シャフトと、
前記第1シャフトの先端部に並設され、前記第1シャフトの長軸方向に沿って延びる第2シャフトと、
前記第1シャフトの先端部に併設され、基端が前記第1シャフトに接合しかつ前記第1シャフトの先端部と前記第2シャフトとを覆うように巻回したコイル体と、
先端固着部と、を備えているガイドワイヤであって、
前記コイル体の先端と、前記第1シャフトの先端とは前記先端固着部にて一体的に接合されており、
前記第2シャフトは、横断面が扁平形状の第2シャフト先端部と、この第2シャフト先端部の基端から基端方向に向かって連続しかつ横断面が略円形状の第2シャフト基端部とを有し
前記第2シャフトは、基端、および前記第2シャフト先端部と前記第2シャフト基端部との境界にて、前記第1シャフトに接合されていることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第2シャフトの先端が、前記第1シャフト、前記コイル体、および前記先端固着部のうちの少なくともいずれか1つに接続されている請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記コイル体は、長軸方向に隣り合う素線どうしが面接触可能なコイル体先端部と、このコイル体先端部の基端から基端方向に向かって連続しかつ長軸方向に隣り合う素線どうしが線接触可能なコイル体基端部とを有し、
前記第2シャフト先端部が前記コイル体先端部で覆われている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記コイル体先端部の長軸方向に隣り合う素線どうしが面接触したとき、前記コイル体先端部の外周形状が略円筒面状である請求項に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
長軸方向において、前記コイル体先端部と前記コイル体基端部との境界が、前記第2シャフト先端部と前記第2シャフト基端部との境界よりも基端方向に位置する請求項または請求項に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記コイル体の先端と、前記第1シャフトの先端と、前記第2シャフトの先端とは前記先端固着部にて一体的に接合されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血管内にカテーテルなどの医療器具を挿入する際、医療器具を処置する部位まで案内するため、ガイドワイヤが先行して挿入される。
【0003】
このようなガイドワイヤには、湾曲した血管内を円滑に進行できるように先端部に柔軟性が求められる一方で、この柔軟性に伴い生じ得る先端部の過度な屈曲を防止するため、コアシャフトの先端部に並行してワイヤまたはリボンを配置する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述の技術によれば、ガイドワイヤの先端部において強度や可撓性等の所望の特性を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-519072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ガイドワイヤは、血管内に挿入する前に通常その先端部をあらかじめ屈曲させておき、血管の分岐部であっても所望の経路を選択できるように、ガイドワイヤ自体を適宜回転させることで先端部を特定の方向へ差し向けて押し進める。
【0007】
しかしながら、上述したような従来のガイドワイヤでは、血管内を進行中に先端部が意図しない方向に屈曲してしまうことがあり、その結果、進路の選択が不能となって処置部位まで届かない虞がある。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、先端部を特定方向に確実かつ容易に曲げることが可能なガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のいくつかの態様は、
(1)基端から先端に亘って横断面が略円形状である第1シャフトと、
前記第1シャフトの先端部に並設され、前記第1シャフトの長軸方向に沿って延びる第2シャフトと、
前記第1シャフトの先端部に併設され、基端が前記第1シャフトに接合しかつ前記第1シャフトの先端部と前記第2シャフトとを覆うように巻回したコイル体と、
前記コイル体の先端に固着した先端固着部と、を備えているガイドワイヤであって、
前記第2シャフトは、横断面が扁平形状の第2シャフト先端部と、この第2シャフト先端部の基端から基端方向に向かって連続しかつ横断面が略円形状の第2シャフト基端部とを有していることを特徴とするガイドワイヤ、
(2)前記第2シャフト先端部の扁平方向が、前記第1シャフトの中心軸と前記第2シャフトの中心軸とを通る平面に平行である前記(1)に記載のガイドワイヤ、
(3)前記第2シャフトの先端が、前記第1シャフト、前記コイル体、および前記先端固着部のうちの少なくともいずれか1つに接続されている前記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ、
(4)前記第2シャフトは、基端、および前記第2シャフト先端部と前記第2シャフト基端部との境界にて前記第1シャフトと接合されている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載のガイドワイヤ、
(5)前記コイル体は、長軸方向に隣り合う素線どうしが面接触可能なコイル体先端部と、このコイル体先端部の基端から基端方向に向かって連続しかつ長軸方向に隣り合う素線どうしが線接触可能なコイル体基端部とを有し、
前記第2シャフト先端部が前記コイル体先端部で覆われている前記(1)から(4)のいずれか1項に記載のガイドワイヤ、
(6)前記コイル体先端部の長軸方向に隣り合う素線どうしが面接触したとき、前記コイル体先端部の外周形状が略円筒面状である前記(5)に記載のガイドワイヤ、並びに
(7)長軸方向において、前記コイル体先端部と前記コイル体基端部との境界が、前記第2シャフト先端部と前記第2シャフト基端部との境界よりも基端方向に位置する前記(5)または(6)に記載のガイドワイヤ、
である。
【0010】
なお、本明細書において、「先端方向」とは、ガイドワイヤの長軸方向に沿う方向であって、コイル体に対して先端固着部が位置する方向を意味する。「基端方向」とは、ガイドワイヤの長軸方向に沿う方向であって、先端方向と反対側の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端方向の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端方向の端部をそれぞれ示す。また、「先端部」とは、対象となる部材においてその部材の先端を含みかつ基端方向の中途まで延びる特定の領域を意味する。「基端部」とは、対象となる部材においてその部材の基端を含みかつ先端方向の中途まで延びる特定の領域を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、先端部を特定方向に確実かつ容易に曲げることが可能なガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の第1の実施形態を示す概略的側面図である。
図1B図1AのIB-IB線で切断した概略的断面図である。
図2A図1の変形例を示す概略的側面図である。
図2B図1の変形例を示す概略的側面図である。
図2C図1の変形例を示す概略的側面図である。
図3A】本発明の第2の実施形態を示す概略的側面図である。
図3B図3Aのコイル体先端部を拡大して示す概略的側面図である。
図4A】コイル体先端部の他の例を拡大して示す概略的側面図である。
図4B】コイル体先端部の他の例を拡大して示す概略的側面図である。
図5A】コイル体基端部における素線の横断面形状の一例を示す概略的側面図である。
図5B】コイル体基端部における素線の横断面形状の一例を示す概略的側面図である。
図6A】本発明の第1シャフトの変形例を示す概略的側面図である。
図6B】本発明の第1シャフトの変形例を示す概略的側面図である。
図7A】本発明の第2シャフトの変形例を示す概略的側面図である。
図7B】本発明の第2シャフトの変形例を示す概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
当該ガイドワイヤは、基端から先端に亘って横断面が略円形状である第1シャフトと、上記第1シャフトの先端部に並設され、上記第1シャフトの長軸方向に沿って延びる第2シャフトと、上記第1シャフトの先端部に併設され、基端が上記第1シャフトに接合しかつ上記第1シャフトの先端部と上記第2シャフトとを覆うように巻回したコイル体と、上記コイル体の先端に固着した先端固着部と、を備えているガイドワイヤであって、上記第2シャフトは、横断面が扁平形状の第2シャフト先端部と、この第2シャフト先端部の基端から基端方向に向かって連続しかつ横断面が略円形状の第2シャフト基端部とを有していることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の第1および第2の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。なお、各図面に示したガイドワイヤの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。また、各概略的側面図において、コイル体はその横断面のみが記載されている。
【0015】
[第1の実施形態]
図1および図2は、本発明の第1の実施形態を示す概略図である。当該ガイドワイヤ1は、図1図2に示すように、概略的に、第1シャフト11と、第2シャフト21と、コイル体31と、先端固着部41とにより構成されている。
【0016】
第1シャフト11は、基端から先端に亘って横断面が略円形状のシャフトである。この第1シャフト11は、例えば、最も先端方向に位置し一定の外径を有する円柱状の小径部11aと、この小径部11aよりも基端方向に位置し小径部11aよりも大きな外径を有する円柱状の大径部11cと、先端が小径部11aに連続しかつ基端が大径部11cに連続すると共に基端方向に向かって漸次拡径する円錐台状のテーパ部11bとを有するように構成することができる。
【0017】
第1シャフト11の長軸方向の寸法は、全長が通常1,800~3,000mm、小径部11aが通常5mm~100mm、テーパ部11bが通常10mm~100mmである。第1シャフト11の外径は、大径部11cが通常0.25mm~0.46mm、小径部11aが通常0.03mm~0.1mmである。
【0018】
第2シャフト21は、第1シャフト11の先端部(第1シャフトにおける小径部の先端からテーパ部の基端までの部位、以下同じ)に並設され、第1シャフト11の長軸方向に沿って延びるシャフトである。第2シャフト21は、横断面が扁平形状の第2シャフト先端部21aと、この第2シャフト先端部21aの基端から基端方向に向かって連続しかつ横断面が略円形状の第2シャフト基端部21bとを有している。第2シャフト先端部21aと第2シャフト基端部21bとは、一体であってもよく、別体どうしを接合したものであってもよい。
【0019】
第2シャフト先端部21aの扁平方向は、ガイドワイヤ1の先端部(ガイドワイヤの長軸方向における先端固着部の先端からテーパ部の基端までの部位、以下同じ)が特定の方向に屈曲できれば特に限定されないが、第1シャフト11の中心軸と第2シャフト21の中心軸とを通る平面Mに平行であることが好ましい。ガイドワイヤ1の先端部は構造的に上記平面Mに直交する方向に曲がり易く、更に上記扁平方向が上記平面Mに平行であることで、これらが相俟ってガイドワイヤ1の先端部を特定方向により確実かつ容易に曲げることができる。なお、第2シャフト先端部21aの横断面の形状は、第2シャフト基端部21bの横断面の略円形状よりも扁平であれば、その度合いは特に限定されない。
【0020】
第2シャフト21の外径は、例えば、先端部21aの長径および基端部21bの外径が同一であるもの(図1参照)等を採用することができる。第2シャフト21の長軸方向における先端部21aと基端部21bとの長さ比率は、ガイドワイヤ1先端部の屈曲長さにより適宜決定することができ、例えば、上記先端部21aと基端部21bとの境界21kを第2シャフト21の長軸方向の中間に配置(不図示)したり、上記中間よりも先端方向に配置(図1参照)したり、上記中間よりも基端方向に配置(不図示)することができる。
【0021】
第2シャフト21の長軸方向の寸法は、全長が通常7~105mmであり、先端部21aが通常1mm~10mmである。第2シャフト21の外径は、通常、先端部21aの長径と基端部21bの直径とが同一であり、0.03mm~0.1mmである。
【0022】
第2シャフト21は、第1シャフト11に接合されている。第2シャフト21と第1シャフト11との接合部位は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、第2シャフト21は、基端、および第2シャフト先端部21aと第2シャフト基端部21bとの境界21kにて第1シャフト11と接合されていることが好ましい(図1Aの接合部B1、B2参照)。これにより、ガイドワイヤ基端部の回転操作に伴うその先端部へのトルク伝達性を高めることができる。
【0023】
また、第2シャフト21の先端が、第1シャフト11、コイル体31(後述)、および先端固着部41(後述)のうちの少なくともいずれか1つに接続されていることも好ましい。これにより、ガイドワイヤ1の先端部全体を特定方向により確実かつ容易に曲げることができる。
【0024】
当該ガイドワイヤ1は、第2シャフト21の先端が後述する先端固着部41に、第2シャフト21の境界21kが第1シャフト11の小径部11aに、第2シャフト21の基端が第1シャフト11のテーパ部11bに、それぞれ接合されている。
【0025】
上述した第1シャフト11および第2シャフト21を構成する材料としては、ガイドワイヤ1の柔軟性を確保すると共に、抗血栓性および生体適合性を付与する観点から、例えば、SUS304などのステンレス鋼、Ni-Ti合金などの超弾性合金等を採用することができる。
【0026】
コイル体31は、第1シャフト11の先端部に併設され、基端が第1シャフト11に接合しかつ第1シャフト1の先端部と第2シャフト21とを覆うように巻回した螺旋状の部材である。このコイル体31は、螺旋を形成する素線31sとして、1本若しくは複数本の単線それぞれ、または1本若しくは複数本の撚線それぞれを用いることができる。但し、単線とは1本の単一線を意味し、撚線とは複数本の単一線を予め互いに撚り合って形成した一束の線群を意味する。コイル体31は、長軸方向全体に亘って隣り合う素線どうしが線接触または点接触するように、素線31sの横断面の形状が略円形となるように形成されている。
【0027】
コイル体31を構成する素線31s(単線または撚線)の直径は、通常0.01~0.10mmである。
【0028】
コイル体31を構成する線材としては、ガイドワイヤ1の柔軟性を確保すると共に、抗血栓性および生体適合性を付与する観点から、例えば、SUS316などのステンレス鋼;Ni-Ti合金などの超弾性合金;白金、タングステンなどの放射線不透過性の金属等を採用することができる。
【0029】
コイル体31の基端は、例えば、第1シャフト11のテーパ部11bに接合することができる。コイル体31の先端は、例えば、後述する先端固着部41に接合することができる。
【0030】
先端固着部41は、コイル体31の先端に固着した部位である。この先端固着部31は、具体的には、例えば、先端部が先端方向に向かって凸状に湾曲した半球形状となるように形成することができる。先端固着部41の基端は、コイル体31の先端の他、第1シャフト11の先端および/または第2シャフト21の先端が一体的に接合されてもよい。
【0031】
ここで、上述した各部材どうし(第1シャフト11と第2シャフト21、コイル体31と第1シャフト11、先端固着部41と第1シャフト11、第2シャフト21およびコイル体31)の接合方法としては、例えば、ロウ材を用いた蝋付け法等を採用することができる。また、先端固着部41の形成方法としても、ロウ材を用いた形成法等を採用することができる。上記ロウ材としては、例えば、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金、Sn-Ag合金、Au-Sn合金などの金属ロウ等が挙げられる。なお、境界21kにおける第2シャフト21と第1シャフト11の接合方法は、ロウ材以外の接合方法(例えば、金属板などの連結部材を用いて架橋する方法など)であってもよい。
【0032】
次に、当該ガイドワイヤ1の使用態様について説明する。まず境界21kの前後でガイドワイヤ1を屈曲させ、ガイドワイヤ1をその先端から血管内に挿入して押し進める。この際、血管の分岐部等ではガイドワイヤ1基端を回転操作することで先端を特定の方向に差し向けながら所望の血管に導入する。次に、ガイドワイヤ1の先端部が処置する部位まで到達した後、ガイドワイヤ1に沿ってバルーンカテーテルやダイレータなどの医療器具(不図示)を搬送させ、上記処置する部位にて各種処置を実行する。上記処置が完了した後、医療器具やガイドワイヤ1を血管から引き抜くことで一連の手技が終了する。
【0033】
以上のように、当該ガイドワイヤ1は、第2シャフト21が扁平形状の第2シャフト先端部21aと略円形状の第2シャフト基端部21bとを有しているので、構造的に扁平方向と直交する特定の方向にのみ第2シャフト先端部21aが屈曲し易くなり、ガイドワイヤ1の先端部を特定方向に確実かつ容易に曲げることができる。その結果、たとえ分岐部等があっても所望の血管内を円滑に進行させることができ、処置を確実に行うことができる。
【0034】
なお、上述した第1の実施形態では、第1シャフト11の先端および第2シャフト21の先端がいずれも先端固着部41に接合しているガイドワイヤ1について説明したが、第1シャフト11の先端が先端固着部41m1に接合されかつ第2シャフト21m1の先端が先端固着部41m1に接合されていないガイドワイヤ1m1(図2A参照)であってもよく、第1シャフト11m2の先端が先端固着部41m2に接合されておらずかつ第2シャフト21の先端が先端固着部41m2に接合されているガイドワイヤ1m2(図2B参照)であってもよく、第1シャフト11m3および第2シャフト21m3の先端のいずれもが先端固着部41m3に接合していないガイドワイヤ1m3(図2C参照)であってもよい。第2シャフトの先端が先端固着部に接合していない場合(図2A図2C参照)、例えば、第2シャフト先端部21am1、21am3の外周がコイル体31の内壁wを押圧することでガイドワイヤ1m1、1m3の先端部を特定の方向に屈曲させることができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図3A図3Bは、本発明の第2の実施形態を示す概略的側面図である。当該ガイドワイヤ2は、図3A図3Bに示すように、概略的に、第1シャフト11と、第2シャフト21と、コイル体32と、先端固着部41とにより構成されている。当該ガイドワイヤ2は、コイル体32を備えている点で、第1の実施形態と異なっている。なお、第1シャフト11、第2シャフト21および先端固着部41の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、当該ガイドワイヤ2の使用態様は、第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0036】
コイル体32は、第1シャフト11の先端部11aに併設され、基端が第1シャフト11に接合しかつ第1シャフト11の先端部と第2シャフト21とを覆うように巻回した螺旋状の部材である。当該ガイドワイヤ2のコイル体32は、長軸方向に隣り合う素線32s1どうしが面接触可能なコイル体先端部32aと、このコイル体先端部32aの基端から基端方向に向かって連続しかつ長軸方向に隣り合う素線どうしが線接触可能なコイル体基端部32bとを有し、第2シャフト先端部21aがコイル体先端部32aで覆われている。コイル体先端部32aを構成する素線32s1とコイル体基端部32bを構成する素線32s2とは、一体であってもよく、別体どうしを接合部B4で接合したもの(図3A参照)であってもよい。
【0037】
コイル体先端部32aは、長軸方向に沿って隣り合う素線32s1どうしが少なくとも一部で面接触すればよい。このようなコイル体先端部32aとしては、例えば、横断面形状が方形の素線32s11や台形の素線32s12のような、多角形の横断面形状を有する素線32s1の一平面を隣り合う素線32s1の他平面に接触可能にするもの(図3B図4A参照)、横断面形状が湾曲した素線32s13のような、湾曲した横断面形状を有する素線32s1の一湾曲面を隣り合う素線32s1の他湾曲面(上記一湾曲面に合致する湾曲面)に接触可能にするもの(図4B参照)等が挙げられる。
【0038】
コイル体基端部32bは、長軸方向に沿って隣り合う素線32s2どうしが面接触ではなく線接触可能であればよい。このようなコイル体基端部32bとしては、例えば、横断面形状が円形の素線32s21または楕円形の素線(不図示)のような、略円形の横断面形状を有する素線32s2を隣り合う素線に接触可能にするもの(図5A参照)、横断面形状が三角形の素線32s22のような、多角形の横断面形状を有する素線32s2の頂部を隣り合う素線32s2の頂部や平面部に接触可能にするもの(図5B参照)等が挙げられる。
【0039】
なお、コイル体先端部32aの外周形状は、コイル体先端部32aの長軸方向に隣り合う素線32s1どうしが面接触したとき、略円筒面状となることが好ましい(図3B図4B参照)。上記略円筒形状は、完全な円筒形状であってもよく、一部(例えば、隣り合う素線どうしが当接する境界部)に微細な凹部を有するような実質的な円筒形状であってもよい。これにより、長軸方向に隣り合う素線32s1の間に実質的に段差がない分、ガイドワイヤ2を体腔内へ円滑に挿入することができる。
【0040】
また、コイル体32は、その先端部32aが第2シャフト先端部21aの径外側方向を覆っていればよいが、長軸方向において、コイル体先端部32aとコイル体基端部32bとの境界32kが、第2シャフト先端部21aと第2シャフト基端部21bとの境界21kよりも基端方向に位置することが好ましい(図3A参照)。これにより、第2シャフト先端部21aと第2シャフト基端部21bとの境界21kと、コイル体先端部32aとコイル体基端部32bとの境界32kとが長軸方向に離間する分、上記境界21kにて生じるガイドワイヤの剛性が急激に変化するのを抑制することができ、ガイドワイヤ屈曲時の応力集中に伴うガイドワイヤの破損等を防止することができる。
【0041】
以上のように、当該ガイドワイヤ2は、コイル体先端部21aにおいて長軸方向に隣り合う素線32s1どうしが面接触可能であり、かつ第2シャフト先端部21aがコイル体先端部32aで覆われていることで、扁平形状な第2シャフト先端部21aの比較的小さい剛性をコイル体先端部32aの高い剛性で補完することができ、ガイドワイヤ2全体としてのプッシャビリティ(長軸方向に沿ったガイドワイヤ基端部から先端部への力の伝達する度合い)を高めることができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、第1シャフト11と第2シャフト21とが境界21kおよびテーパ部11bにて接合されているガイドワイヤ1、2について説明したが、境界21k以外の部位(例えば、第2シャフト基端部21bの中途など)やテーパ部11b以外の部位(例えば、第1シャフト11の大径部11cなど)にて接合されているガイドワイヤ(不図示)であってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、小径部11a(一定の外径を有する円柱状の部位)、テーパ部11bおよび大径部11cを有する第1シャフト11を備えたガイドワイヤ1、2について説明したが、テーパ部を有さず小径部11am4と大径部11cm4とが階段状に形成された第1シャフト11m4を備えたガイドワイヤ3m4(図6A参照)、小径部11am5が先細るテーパ形状に形成された第1シャフト11m5を備えたガイドワイヤ3m5(図6B参照)であってもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、第2シャフト21が長軸方向全体に亘って一定の外径を有するガイドワイヤ1、2について説明したが、第2シャフト先端部23am6の長径が第2シャフト基端部23bm6よりも小さくなるように階段状に形成された第2シャフト23m6を備えたガイドワイヤ3m6(図7A参照)、第2シャフト先端部23am7および第2シャフト基端部23bm7が先端方向に向かうにつれて先細るようにテーパ状に形成された第2シャフト23m7を備えたガイドワイヤ3m7(図7B参照)であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1、2、3、1m1~1m3、3m4~3m7 ガイドワイヤ
11、11m1~11m5、 第1シャフト
21、21m1、21m3、21m4、23m6、23m7 第2シャフト
21a 第2シャフト先端部
21b 第2シャフト基端部
31 コイル体
31s、32s1、32s2 素線
32a コイル体先端部
32b コイル体基端部
41、41m1~41m3 先端固着部
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B