(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】端子ユニットおよび電気部品
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20230922BHJP
H02G 3/08 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
H01R4/48 A
H02G3/08
(21)【出願番号】P 2019079063
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長江 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】境井 貴行
(72)【発明者】
【氏名】石見 崇
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127969(JP,A)
【文献】特開2017-216049(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062163(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 9/00
H01R 9/22-9/24
H02G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線が挿入される挿入口を有するケースと、
前記ケースに収納され、前記配線を固定する固定部材と、
前記ケースに収納され、前記配線に電気的に接続される端子と、
前記ケースの前記挿入口側に配置されるカバーと、
を備えた端子ユニットであって、
前記固定部材のうち前記挿入口側に配置される一部は、
前記ケースの内壁に対向して配置され、前記挿入口側に沿って前記配線に引張力を加えた場合、前記ケースの前記内壁に押し当てられる、
端子ユニット。
【請求項2】
前記固定部材は、板バネであり、
前記ケースの内壁に対向し
ている前記固定部材のうち前記挿入口側に配置される一部が、前記板バネの頂点部であり、
前記配線は、前記板バネにより前記端子に押し当てられる、
請求項1に記載の端子ユニット。
【請求項3】
前記端子のうち前記挿入口側に配置される一部が前記ケースの内壁に対向し
ている、
請求項1
または請求項2に記載の端子ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の端子ユニットと、
前記端子に電気的に接続され、前記配線に印加される電圧よりも低い電圧で駆動する負荷と、
前記負荷を収納し、前記ケースに接続されるヘッド部と、
を備えた電気部品であって、
前記挿入口側の方向に沿って所定の引張力が生じた場合に、前記ケースが前記ヘッド部から外れる、
電気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線が接続される端子ユニットおよび該端子ユニットを備えた電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表示灯等の各種の電気部品に電線(配線)を接続するために、端子台(端子ユニット)が知られている。端子ユニットは、高電圧の電源から電力の供給を受ける配線を接続し、低電圧で駆動する表示灯等の負荷に電力を供給する。
【0003】
端子ユニットの構造の一例として、例えば、特許文献1には、バネの復元力による押圧によって電線と端子とを接続状態に維持する端子台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたバネのような部材で配線を固定する場合、配線を引っ張った場合に、該部材も配線とともに引っ張られる可能性がある。この際、当該部材がケースのカバーに当たり、カバーが外れて高電圧の配線等の部品が露出する可能性がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、配線を引っ張っても高電圧の配線等の部品が露出しないようにする端子ユニットおよび電気部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る端子ユニットは、ケースと、固定部材と、端子と、カバーと、を備えている。ケースは、配線が挿入される挿入口を有する。固定部材は、前記ケースに収納され、前記配線を固定する。端子は、前記ケースに収納され、前記配線に電気的に接続される。カバーは、前記ケースの前記挿入口側に配置される。そして、端子ユニットは、前記固定部材のうち前記挿入口側に配置される一部が前記ケースの内壁に対向する。
【0008】
本発明は、固定部材のうち一部が挿入口側に配置される一部がケースの内壁に当接しているため、配線を引っ張った場合に、固定部材が配線とともに引っ張られても、固定部材の一部がケースの内壁に当接する。したがって、配線を引っ張った場合に生じる力は、カバーには伝わらない。よって、カバーが外れて高電圧の配線等が露出するおそれはない。
【0009】
なお、固定部材は、座金でネジ止めする構成であってもよいし、板バネで端子を押し当てる構成であってもよい。
【0010】
また、固定部材に加えて、端子のうち挿入口側に配置される一部がケースの内壁に対向していてもよい。この場合、仮に配線を引っ張った場合に、端子が配線とともに引っ張られても、端子の一部がケースの内壁に当接する。よって、端子が引っ張られても、カバーが外れて高電圧の配線等が露出するおそれはない。
【0011】
また、本発明の電気部品は、上記端子ユニットと、前記端子に電気的に接続され、前記配線に印加される電圧よりも低い電圧で駆動する負荷と、前記負荷を収納し、前記ケースに接続されるヘッド部と、を備える。そして、電気部品は、挿入口側の方向に沿って所定の引張力が生じた場合に、ケースがヘッド部から外れる。
【0012】
これにより、配線に過度な力がかかっても、ケースごとヘッド部から外れるため、高電圧の配線等が露出するおそれはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配線を引っ張っても高電圧の配線等が露出しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、電気部品1をパネル5に取り付けた場合の正面斜視図であり、
図1(B)は、電気部品1をパネル5に取り付けた場合の背面斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、電気部品1の正面斜視図であり、
図2(B)は、端子ユニット10の正面斜視図であり、
図2(C)は、カバー102を外した場合の端子ユニット10正面斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、端子ユニット10の背面斜視図であり、
図3(B)は、カバー102を外した場合の端子ユニット10背面斜視図である。
【
図4】
図4(A)および
図4(B)は、端子ユニット10の断面図である。
【
図5】座金をネジ止めする構成である場合の端子ユニット10の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)は、電気部品1をパネル5に取り付けた場合の正面斜視図であり、
図1(B)は、電気部品1をパネル5に取り付けた場合の背面斜視図である。
【0016】
電気部品1は、端子ユニット10およびヘッド部11からなる。ヘッド部11は、パネル5を挟み込むようにして、パネル5に取り付けられる。パネル5には、円形状の孔が開いている。ヘッド部11は、当該孔の径よりも大きい径を有する部分で、孔を挟み込む。これにより、ヘッド部11の一部は、パネル5の前面に露出する。ヘッド部11は、例えば表示灯を備える。ヘッド部11のうち表示灯を収納するための透光性カバーが、パネル5の前面に配置される。
【0017】
端子ユニット10は、表示灯用の給電ユニットである。端子ユニット10は、ヘッド部11の背面側に接続され、パネル5の背面に配置される。端子ユニット10は、背面側の下部に、配線70(
図4(B)を参照)を挿入するための挿入口151を有する。この実施形態では、端子ユニット10は、4つの挿入口151を備えているが、挿入口の数は、この例に限らない。端子ユニット10は、挿入口151に挿入された配線70に印加される電圧(例えば100Vまたは200V)を降圧して、ヘッド部11における表示灯等の負荷に対して、低電圧(例えば5V)の電力を供給する。
【0018】
図2(A)および
図2(B)に示す様に、端子ユニット10は、ヘッド部11から取り外すことができる。
図2(B)、
図2(C)、
図3(A)および
図3(B)に示す様に、端子ユニット10は、ケース101と、カバー102と、を有する。
【0019】
ケース101は、直方体形状の筐体である。カバー102は、ケース101の背面側に配置される。カバー102は、ケース101の側面の下部、底面、および背面を覆う形状である。カバー102は、背面に挿入口151を有する。ケース101は、板バネ172と、板バネ172を保持するためのホルダー171と、を収納する。また、ケース101は、挿入口151に挿入された配線70に電気的に接続される端子173を収納する。端子173も、ホルダー171により保持される。さらに、ケース101は、端子173に電気的に接続され、高電圧の電力を降圧する電圧変換回路(不図示)を備える。ただし、当該電圧変換回路はケース101に収納することは必須ではない。例えば、電圧変換回路は、ヘッド部11側に収納されていてもよい。
【0020】
図4(A)および
図4(B)は、端子ユニット10の横断面図である。本実施形態では、端子ユニット10は、4つの挿入口151を備える。板バネ172は、4つの挿入口151のそれぞれに配置されている。板バネ172は、本発明の固定部材の一例である。板バネ172は、一部がU字型に湾曲した形状である。板バネ172は、湾曲した頂点の部分(頂点部172A)が背面側に向いている。板バネ172は、ホルダー171を2つの平板部分で挟み込むように配置されている。ホルダー171は、板バネ172が配置される箇所に沿って側方に張り出した部分を有する。板バネ172の2つの平板部分は、ホルダー171の側方に張り出した部分を挟み込むように配置されている。
【0021】
また、板バネ172の2つの平板部分は、ケース101の正面方向に向かって、かつ斜め下方に向かって延びている。板バネ172の2つの平板部分のうち下方に配置される平板部分の先端は、端子173に対向する。端子173は、薄い板状の金属部材であり、ケース101の内壁のうち、上方および下方の内壁に沿って配置されている。また、端子173は、
図3(B)に示す様にケース101の内壁のうち側面側の内壁にも沿って配置されている。
【0022】
挿入口151のうち2つの隣接している挿入口には、それぞれ1つずつのホルダー171が配置されている。つまり、1つのホルダー171には、2つの板バネ172が配置されている。端子173は、それぞれのホルダー171を覆う様に、1つずつ配置されている。
【0023】
板バネ172の2つの平板部分のうち下方に配置される平板部分の背面側は、挿入口151に対向する。
図4(B)に示す様に、挿入口151に配線70を挿入すると、配線70の先端は、板バネ172を上方に押し上げる。板バネ172の先端は、弾性力により配線70の側面を下方に押しつける。これにより、配線70は、ケース101の下方に向かって押しつけられる。よって、配線70は、端子173に電気的に接続され、ケース101に固定される。配線70に対し、挿入口151側に沿って引張力を加えた場合、板バネ172の先端にも、挿入口151側に向かう引張力が働く。すると、板バネ172の先端は、ケース101の下方に向かう力が働き、配線70をより強く押し当てる。したがって、配線70は、引張力が働いたとしても、抜けにくくなり、ケース101に対して強固に固定されることになる。
【0024】
挿入口151の上方には、挿入口151に沿った孔が開いている。当該孔には、棒状の固定解除部材152が配置されている。固定解除部材152は、配線70の挿入方向に沿って配置されている。固定解除部材152の背面をドライバー等の工具で押し込むと、固定解除部材152が前方に移動する。すると、固定解除部材152の前方の先端が板バネ172に接触する。板バネ172の直線部分は、前方および下方に向かって斜めに配置されているため、固定解除部材152を押し込むと、板バネ172の下方の直線部分は上方に向かって移動する。これにより、配線70の押し込みが解除され、配線70を引き抜くことができる。なお、固定解除部材152は必須ではない。固定解除部材152がなくても、孔にドライバー等の工具を挿入し、工具の先端で板バネ172を押し込むこともできる。ただし、固定解除部材152を備えることで、ドライバー等の工具の先端で押し込むよりも板バネ172を傷つけるおそれはない。
【0025】
ケース101の内壁の一部は、上下方向に沿って延在した延在部を有する。具体的には、ホルダー171の上下を挟む内壁のうち上方の内壁は、挿入口151側において、下方に向かう延在部111を有する。また、ホルダー171の上下を挟む内壁のうち下方の内壁は、挿入口151側において、上方に向かう延在部112を有する。
【0026】
板バネ172の湾曲している頂点の頂点部172Aは、ケース101の内壁のうち延在部111に対向する。配線70に対し、挿入口151側に沿って引張力を加えた場合、板バネ172が挿入口151側に引っ張られて移動するため、板バネ172の頂点部172Aは、延在部111に当接する。したがって、カバー102には、引張力が伝わることがなく、配線70を引っ張ったとしても、カバー102が外れない。よって、カバー102が外れて高電圧の部品が露出するおそれはない。なお、板バネ172のうち、ケースの内壁に当接する部分は、頂点部172Aに限らない。配線70に引張力が働いた場合に板バネ172をケースの内壁に当接させることができれば、どの部分がケースの内壁に対向していてもよい。
【0027】
また、この例では、端子173のうち、挿入口151側の頂点部173Aも、ケース101の内壁のうち延在部112に対向する。配線70に対し、挿入口151側に沿って引張力を加えた場合、配線70とともに端子173も挿入口151側に移動する可能性がある。この場合、端子173の頂点部173Aは、延在部112に当接する。したがって、この場合も、カバー102には、引張力が伝わることがなく、配線70を引っ張ったとしても、カバー102が外れることがない。よって、カバー102が外れて高電圧の部品が露出するおそれはない。ただし、端子173側の延在部112は、本発明に必須の構成ではない。
【0028】
また、上述した様に、端子ユニット10は、ヘッド部11から取り外すことができる。配線70に過度な引張力が生じたと場合、端子ユニット10自体がケース101ごとヘッド部11から外れる。したがって、過度な引張力が生じたとしても、ケース101が破壊するおそれもなく、高電圧の部品が露出するおそれはない。
【0029】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0030】
例えば、上記実施形態では、配線70を板バネ172で固定する例を示した。しかし、端子ユニットは、例えば、
図5の断面図に示す様に、ネジ190を閉めて座金192で配線70を固定しても良い。この場合、座金192が本発明の固定部材の一例である。この場合も、座金192のうち一部は、ケース101の挿入口151の内壁(延在部112)に対向する。配線70に対し、挿入口151側に沿って引張力を加えた場合、座金192は挿入口151側に引っ張られて移動するが、ケース101の延在部115に当接する。したがって、配線70を引っ張ったとしても、カバーが外れることがない。よって、カバーが外れて高電圧の部品が露出するおそれはない。また、端子173側もケース101の内壁に対向させることで、さらにカバーが外れるおそれがなくなる。
【符号の説明】
【0031】
1…電気部品
5…パネル
10…端子ユニット
11…ヘッド部
70…配線
101…ケース
102…カバー
111,112,115…延在部
151…挿入口
152…固定解除部材
171…ホルダー
172…板バネ
172A,173A…頂点部
173…端子
190…ネジ
192…座金