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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 1/08 20060101AFI20230922BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   E06B 3/82 20060101ALI20230922BHJP
   E06B 3/88 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B27M1/08 G
B27M3/00 N
E06B3/82
E06B3/88
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019112795
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020203447
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩行
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-003733(JP,A)
【文献】特開2004-351855(JP,A)
【文献】特開2006-175769(JP,A)
【文献】特開昭52-148605(JP,A)
【文献】米国特許第05246516(US,A)
【文献】特開平11-300831(JP,A)
【文献】特許第4725303(JP,B2)
【文献】特開2014-009083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/08
B27M 3/00
E06B 3/82
E06B 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面から少なくとも木口にかけて化粧シートを貼着して化粧板を製造する方法であって、
裏面にホットメルト接着剤が塗布された化粧シートを基板の表面に貼着する第一工程と、
基板の表面において木口から前方に突出する化粧シート前方余剰部分を上方から吸引することにより該化粧シート前方余剰部分を浮かせた状態に維持しながら該化粧シート前方余剰部分の裏面に塗布されたホットメルト接着剤を冷却固化させる第二工程と、
該化粧シート前方余剰部分を木口に沿って当接させる第三工程と、
加熱しながらまたは加熱した後に該化粧シート前方余剰部分を木口に押圧することにより、該化粧シート前方余剰部分の裏面において固化しているホットメルト接着剤を再溶融させ、該接着剤により化粧シート前方余剰部分を木口に貼着する第四工程と、
を有してなることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、表面側凸部と該表面側凸部より突出した裏面側凸部とを有する木口形状であることを特徴とする、請求項1記載の化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、凹部を有する木口形状であることを特徴とする、請求項1記載の化粧板の製造方法。
【請求項4】
前記第二工程において、化粧シート前方余剰部分に冷風を送風して該化粧シート前方余剰部分の裏面に塗布されたホットメルト接着剤を冷却固化することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載の化粧板の製造方法。
【請求項5】
前記第四工程において、前記第三工程により木口形状に沿って当接した状態となっている化粧シート前方余剰部分に対して熱風を送風して、該化粧シート前方余剰部分の裏面において固化しているホットメルト接着剤を再溶融させることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか記載の化粧板の製造方法。
【請求項6】
前記基板の木口の表面側に、手指を掛けて引き操作可能な取手が形成されていることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか記載の化粧板の製造方法。
【請求項7】
前記第一工程において、化粧シートを基板の表面および木口の表面側凸部の先端に貼着することを特徴とする、請求項1ないしのいずれか記載の化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧板の製造方法に関し、より詳しくは、表面側より裏面側が突出した木口形状を有する基板の表面から木口の凹凸面にかけて化粧シートを貼着して、クローゼットの折戸などに好適に用いられる化粧板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クローゼットの折戸などの扉体には開閉操作用の取手(把手)を設ける必要があるが、特許文献1に示されるように、比較的小さい突出長の表面側凸部とこれより大きい突出長を有する裏面側凸部との間に凹溝が形成されてなる木口形状が上端から下端にかけて略全高さに亘って延長するものとし、表面側凸部から凹溝に手指を回り込ませて扉体を開くことができるように構成したものが公知である。このような構成によれば、扉体表面の木口端近くに別部材としての取手やこれを取り付けるための金具などを必要としないので、室内側から見たときにシンプルな外観となり、また、上端から下端にかけて略全高さに亘って同じ木口形状となるので、どの高さ位置でも取手として使用することができる利点がある。
【0003】
このような扉体は、一般に、MDFなどからなる基板の戸先側となる木口を加工して上記のような木口形状を形成した後、裏面にホットメルト接着剤が塗布された化粧シートを、基板の全表面から木口の凹凸面を経て裏面側にまで回り込むように貼着して製造される(特許文献1の段落0004,0022,0024)。化粧シートは、基板の全表面から前記凹凸形状に沿った木口全表面および裏面側の一部を覆うだけの面積(幅方向の長さ)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-070326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合の化粧シート貼着方法について、図4を参照して説明すると、まず、図4(a)に示すように、裏面にホットメルト接着剤(図示省略)が塗布された化粧シート17を基板10の表面15に貼着する。この時点では、木口14の表面側凸部11の前方に、凹凸形状を有する木口14の凹凸面および裏面13側の一部を覆うために残された化粧シート部分(化粧シート前方余剰部分17a)が突出した状態となっている。化粧シート17は、水平な状態で基材10の搬送方向(図において紙面鉛直方向)に引っ張られているので、この時点では化粧シート前方余剰部分17aが垂れ落ちることはない。
【0006】
しかしながら、次いで、図4(b)に示すように、ロールRを木口14の表面側凸部11の先端に対して矢印A方向に押し付けて化粧シート前方余剰部分17aの基端部を該表面側凸部先端に接着すると、これによって化粧シート前方余剰部分17aに下方への折り癖ないし曲げ癖が付き、垂れ下った化粧シート前方余剰部分17aの先端部が木口14の裏面側凸部13の上面や先端面あるいはこれら面同士の角部などに接触して、裏面のホットメルト接着剤によって貼着されてしまうことがあった。このようにして先に裏面側凸部13に化粧シート前方余剰部分17aが貼着されてしまうと、その後に凹部12に化粧シート前方余剰部分17aを押し込んで貼着しようとしたときに、化粧シート前方余剰部分17aに破れや皺が生じて外観を損ねることになる。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、表面側凸部と裏面側凸部の間に凹部が形成されてなる木口形状を有する基板の表面から木口の凹凸面にかけて化粧シートを貼着して化粧板を製造するための好適な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、基板の表面から少なくとも木口にかけて化粧シートを貼着して化粧板を製造する方法であって、裏面にホットメルト接着剤が塗布された化粧シートを基板の表面に貼着する第一工程と、基板の表面において木口から前方に突出する化粧シート前方余剰部分を上方から吸引することにより該化粧シート前方余剰部分を浮かせた状態に維持しながら該化粧シート前方余剰部分の裏面に塗布されたホットメルト接着剤を冷却固化させる第二工程と、該化粧シート前方余剰部分を木口に沿って当接させる第三工程と、加熱しながらまたは加熱した後に該化粧シート前方余剰部分を木口に押圧することにより、該化粧シート前方余剰部分の裏面において固化しているホットメルト接着剤を再溶融させ、該接着剤により化粧シート前方余剰部分を木口に貼着する第四工程と、を有してなることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載の化粧板の製造方法において、前記基板は、表面側凸部と該表面側凸部より突出した裏面側凸部とを有する木口形状であることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1記載の化粧板の製造方法において、前記基板は、凹部を有する木口形状であることを特徴とする
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の化粧板の製造方法において、前記第二工程において、化粧シート前方余剰部分に冷風を送風して該化粧シート前方余剰部分の裏面に塗布されたホットメルト接着剤を冷却固化することを特徴とする。
【0013】
本願の請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか記載の化粧板の製造方法において、前記第四工程において、前記第三工程により木口形状に沿って当接した状態となっている化粧シート前方余剰部分に対して熱風を送風して、該化粧シート前方余剰部分の裏面において固化しているホットメルト接着剤を再溶融させることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか記載の化粧板の製造方法において、前記基板の木口の表面側に、手指を掛けて引き操作可能な取手となる凹部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本願の請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか記載の化粧板の製造方法において、前記第一工程において、化粧シートを基板の表面および木口の表面側凸部の先端に貼着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、基板の表面から木口にかけて化粧シートを貼着して化粧板を製造するに当たり、既述したような従来技術の不利欠点を解消することができ、化粧シートに破れや皺を生じさせることがない。本願発明は、クローゼットの折戸などに好適に用いられる化粧板を製造する方法として、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による化粧板の製造方法を工程順に示す説明図である。
図2】本発明の他実施形態(実施例2)による化粧板の製造方法を工程順に示す説明図である。この図において、化粧シートの裏面に塗布されたホットメルト接着剤は図示省略されている。
図3】本発明が好適に適用される木口形状の数例を示す側面図である。
図4】従来技術による化粧板の製造方法を工程順に示す説明図である。この図において、化粧シートの裏面に塗布されたホットメルト接着剤は図示省略されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について以下に実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の一実施形態による化粧板の製造方法を工程順に示す説明図であり、この方法により、表面(室内)側凸部11と凹部12と裏面(収納内部)側凸部13とからなる木口14を有する基板10の表面15から木口14の凹凸面を経て裏面16の一部にかけて化粧シート17を貼着して、クローゼットの折戸として用いる化粧板が製造される。基板10には、MDF(中密度繊維板)などの木質繊維板、パーティクルボード、合板、LVL(単板積層材)などの木質板が用いられる。
【0020】
このような木口14の形状は、クローゼットの折戸の上端から下端にかけて全高さに亘って延長し、室内側から表面側凸部11を掌で包み込むようにして手指を凹部12に掛けて該折戸を開閉することができるように形成されており、いずれの高さであっても指掛け開閉が可能であるため、開閉操作する人の身長の高低にかかわらず容易に開閉することができる利点がある。裏面側凸部13は表面側凸部11より大きい突出長を有するとともに、その先端面13bは表面15および裏面16に対して略直角の平面であり、この折戸を閉めたときに該先端面13bがクローゼット開口部の戸先側縦枠の内側面に面同士で略当接して、あるいは、一対の折戸の裏面側凸部先端面13b同士が略当接して、クローゼットを閉止するように構成されている。
【0021】
図1の方法は、まず、基板10を搬送ロールなどの搬送手段(図示せず)により図において紙面鉛直方向に搬送しながら、その裏面にホットメルト接着剤19が塗布された化粧シート17を基板表面15に押圧して貼着する(図1(a))工程を有する。この工程は、ホットメルト接着剤19が塗布された化粧シート17をロールや押圧プレートなどで上方から基板表面15に押し付けながら、常法によって行うことができる。ホットメルト接着剤としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの熱硬化性樹脂接着剤が用いられる。
【0022】
化粧シート17は、基板10の全表面から木口14の凹凸表面に順次に沿い、さらに裏面16の一部に達する長さ(図1において横方向の長さ)を有しており、その裏面全面にホットメルト接着剤19が塗布されているので、化粧シート17の前方余剰部分18は表面側凸部11の前方に突出し、前方余剰部分18およびその裏面に塗布されたホットメルト接着剤19の自重によって垂れ落ちようとする。ホットメルト接着剤19が溶融したままの状態で化粧シート前方余剰部分18が垂れ落ちると、化粧シート前方余剰部分18が裏面側凸部13(その先端面13bや上面13aなど)に接着してしまい、従来技術に関連して既述したような不利欠点を生ずる。図1の方法では、これを防止すると共に化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤19を冷却固化させて裏面側凸部13に接着させないようにするために、化粧シート前方余剰部分18を上方から吸引して浮かせた状態に保持しながら、冷却装置を用いて下方から冷風を当てる(図1(b))工程を採用する。
【0023】
ホットメルト接着剤19は、ロール(図示せず)から巻き出された化粧シート17の裏面に溶融状態で塗布され、その後徐々に冷えていくが、室温近く(約25℃)になっても冷却固化せずに接着力を保持するので、冷却装置を用いて、化粧シート前方余剰部分18をホットメルト接着剤19の固化温度以下に冷やして、その裏面に塗布されたホットメルト接着剤19を冷却固化させる。
【0024】
また、上方からの吸引は、基板10の搬送ラインに沿って上方に任意数配置した真空吸引装置によって行うことができ、化粧シート17の前方余剰部分18が垂れ落ちることを防いで浮いた状態に維持するが、同時に、冷却装置からの冷風によって化粧シート前方余剰部分18が捲れ上がることを防止する化粧シート位置決め手段としての役割を果たす。真空吸引装置によって化粧シート17を位置決めすることができるのであれば、冷風はいずれの方向から当てても良い。また、下方から冷風を当てる際の風力が大きくて、吸引しなくても化粧シート前方余剰部分18が垂れ落ちることを防いで浮いた状態に維持することが可能な場合は、吸引を割愛しても良いが、この場合には、化粧シート前方余剰部分18の捲り上がりを防ぐための位置決め手段を、基板搬送ラインに沿って化粧シート17の上方に設けておくことが好ましい。
【0025】
次いで、吸引および冷却を止め(または弱め)、化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸形状に沿って入れ込む(図1(c))。このときには、化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤19は、下方からの冷風によって冷却固化しているので、この工程は、前方余剰部分17を木口14の凹凸形状に沿って入れ込む(押し込む)だけであり、木口14の凹凸面に沿って実際に接着するものではないが、木口14の凹凸形状に略対応するように化粧シート前方余剰部分18に折り癖ないし曲げ癖を付けて、後工程(図1(d))において化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸面に沿って破れや皺を生じさせることなく接着させることに寄与する。
【0026】
この工程について詳しく説明すると、化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸面に沿って入れ込むために、たとえば、押圧ロール20a~20eを基板10の搬送ラインに沿って適宜間隔で順次に設置し、押圧ロール20aを矢印A方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の表面側凸部11に貼着すべき領域を該表面側凸部11の先端に当接させ、押圧ロール20bを矢印B方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の凹部12に貼着すべき領域を該凹部12に当接させ、押圧ロール20cを矢印C方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の裏面側凸部上面13aに貼着すべき領域を該裏面側凸部上面13aに当接させ、押圧ロール20dを矢印D方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の裏面側凸部先端面13bに貼着すべき領域を該裏面側凸部先端面13bに当接させ、さらに、押圧ロール20eを矢印E方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18を基板裏面16の木口側端部に回り込ませて貼着すべき領域を該裏面部分に当接させることによって行うことができる。
【0027】
なお、ここで「当接」とは、化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸面に沿って完全に密着させることを必ずしも意味するものではなく、少なくとも木口14の凹凸形状に略合致した折り癖ないし曲げ癖がつく程度に変形させれば良い。また、各押圧ロール20a~20eは、木口14の凹凸形状に応じた折り癖ないし曲げ癖を付与できるように、その位置や移動方向を適宜に設定して必要数設置することが好ましい。
【0028】
次いで、上記工程で木口14の凹凸形状に沿って入れ込まれた化粧シート前方余剰部分18を加温して、その裏面に塗布されたホットメルト接着剤19を再溶融させると共に、化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸面に押し付けて接着する(図1(d))。このときの加温温度は、使用するホットメルト接着剤19の概ね耐熱温度以上とする。耐熱温度とは、ホットメルト接着剤で接着した製品ないし部分を加熱しても接着状態を維持することができる最高温度であり、ホットメルト接着剤の種類や接着状態などによって異なるが、軟化点(溶融温度)は一般に80~150℃であるのに対し、耐熱温度は一般に50~100℃である。この工程では、一旦固化したホットメルト接着剤19の接着力を復帰させる必要があるので、少なくとも耐熱温度以上に加温して溶融状態まではいかなくてもある程度軟化した状態にするか、あるいは軟化点以上に加温して溶融状態にする。
【0029】
この工程では、図1(c)の工程と同様に、たとえば、化粧シート前方余剰部分18を、表面側凸部11の先端に対して矢印A方向に押し付けて再溶融ホットメルト接着剤を介して接着する第一の圧締ロール21aと、凹部12に対して矢印B方向に入れ込んで再溶融ホットメルト接着剤を介して接着する第二の圧締ロール21bと、裏面側凸部13の上面に対して矢印C方向に押し付けて再溶融ホットメルト接着剤を介して接着する第三の圧締ロール21cと、裏面側凸部13の先端面13bに対して矢印D方向に押し付けて再溶融ホットメルト接着剤を介して接着する第四の圧締ロール21dと、基板裏面16の木口側端部に対して矢印E方向に押し付けて再溶融ホットメルト接着剤を介して接着する第五の圧締ロール21eと、を基板10の搬送ラインに沿って設置し、これら圧締ロール21a~21eを用いて行うことができる。各圧締ロール21a~21eについても、木口14の凹凸面に対して良好な貼着ができるように、その位置や移動方向を適宜に設定して必要数設置することが好ましい。
【0030】
化粧シート前方余剰部分18を加温して裏面のホットメルト接着剤19を再溶融するには、熱風装置などの加熱手段を用いて行うことができる。上記したように、複数の圧締ロール21a~21eを用いて順次に木口14の異なる部分に化粧シート前方余剰部分18を貼着させていく際に、その時間差によってホットメルト接着剤19が冷えて固化してしまう恐れがある場合は、これを防止するために、基板10の搬送ラインに沿って複数の加熱手段を設置することが好ましい。この場合、複数の加熱手段は、任意の地点から異なる方向に向けて熱風を送風するように設置しても良く、たとえば、図1(c)の押圧ロール20a~20eや図1(d)の圧締ロール21a~21eと同様に、矢印A~E方向に向けて熱風を送風する5基の加熱手段を設置することができる。
【0031】
以上の工程により、表面側凸部11と凹部12と裏面凸部13とからなる木口14を有する基板10の表面15から木口14の凹凸面を経て裏面16の一部にかけて化粧シート17が貼着されたクローゼット折戸用の化粧板が製造される。なお、クローゼット折戸用の化粧板にあっては、基板裏面16はほとんど観察されることがないので化粧シート17を該裏面の全面に貼着する必要はないが、木口14の裏面側凸部13と基板裏面16との角で化粧シート17が剥がれてしまうことを防止するために、裏面側凸部13から基板裏面16の一部にまで回り込ませて化粧シート17を貼着している。
【実施例2】
【0032】
上記に説明した実施例1では、最初に基板表面15に化粧シート17を貼着し(図1(a))、次いで、化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤(図示省略)を冷却固化させた(図1(b))後に、木口14の凹凸形状に沿って化粧シート前方余剰部分18を押し込む(図1(c))こととしているが、従来技術について図4を参照して既述したように、化粧シート17は常に基板10の搬送方向前方に引っ張られているので、基板表面15に化粧シート17を貼着した時点では、化粧シート前方余剰部分18が下方に垂れ落ちることはなく、矢印A方向に移動する押圧ロールで化粧シート前方余剰部分18の表面側凸部対応領域を表面側凸部11の先端に押し付けて貼着したときにこの問題が懸念される。このことを考慮した本発明の変形実施形態による化粧板の製造方法が図2に示されている。
【0033】
この方法では、実施例1と同様にして化粧シート17を基板表面15に貼着する(図2(a))と共に、圧締ロール22aを矢印A方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の表面側凸部11に貼着すべき領域を該表面側凸部11の先端に押し付けて貼着する(図2(b))。これにより、化粧シート17に折り癖ないし曲げ癖がついて化粧シート前方余剰部分18が下方に垂れ落ちようとするので、表面側凸部11の先端への貼着を行うと同時またはその直後から、化粧シート前方余剰部分18を上方から吸引して浮かせた状態に保持しながら、化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤を冷却固化させる(図2(b))。このときの吸引および冷却は、実施例1の図1(b)の工程に関連して既述したと同様にして行うことができる。
【0034】
この吸引および冷却を継続しながら、化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸形状に沿って入れ込む。たとえば、押圧ロール22bを矢印B方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の凹部12に貼着すべき領域を該凹部12に入れ込み(図2(c))、次いで、押圧ロール22cを矢印C方向に移動させることにより化粧シート前方余剰部分18の凹部12の下面に貼着すべき領域を該凹部下面に押し付ける(図2(d))。このときには、化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤は、下方からの冷風によって冷却固化されているので、この工程は、前方余剰部分18を木口14の凹凸形状に沿って入れ込みまたは押し込んで当接させるだけであり、木口14の凹凸面に沿って実際に接着するものではないが、木口14の凹凸形状に略対応するように化粧シート前方余剰部分18に折り癖ないし曲げ癖を付けて、後工程(図2(e)~(j))において化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸面に沿って破れや皺を生じさせることなく接着させることに寄与する。
【0035】
なお、冷却は、少なくとも、化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤が固化されるまで継続して行う必要がある。図2の方法では、図2(d)の時点でも吸引と共に冷却を継続しているが、化粧シート前方余剰部分18の裏面に塗布されたホットメルト接着剤が十分に固化して接着力を失った時点で、冷却を終了させても良い。
【0036】
次いで、木口14の凹凸形状に沿って入れ込まれた化粧シート前方余剰部分18を加温して、その裏面に塗布されたホットメルト接着剤19を再溶融させると共に、化粧シート前方余剰部分18を木口14の凹凸面に押し付けて接着する。
【0037】
たとえば、木口14に向けて熱風を送風して化粧シート前方余剰部分18の裏面において固化しているホットメルト接着剤を再溶融させ(図2(e))、その直後から、該ホットメルト接着剤の溶融状態が維持されている間に、圧締ロール22dを矢印D方向に押し付けることにより木口14の表面側凸部11の下面から凹部12の内面にかけて化粧シート前方余剰部分18を貼着し(図2(f))、圧締ロール22eを矢印E方向に押し付けることにより木口14の裏面側凸部13の上面13aに化粧シート前方余剰部分18を貼着し(図2(h))、圧締ロール22fを矢印F方向に押し付けることにより木口14の裏面側凸部13の先端面13bに化粧シート前方余剰部分18を貼着し(図2(i))、さらに、圧締ロール22gを矢印G方向に押し付けることにより木口14の裏面16の木口側端部に化粧シート前方余剰部分18を貼着する(図2(j))ことによって、上記貼着工程を行うことができる。
【0038】
化粧シート前方余剰部分18の裏面において固化しているホットメルト接着剤を再溶融させる工程(図2(e))は、実施例1において既述したような加熱手段を用いて、木口14の凹凸形状に応じて熱風を一または複数の方向に送風することによって行うことができる。木口14の各面に順次に化粧シート前方余剰部分18を貼着している間に該ホットメルト接着剤が冷えて固化してしまう懸念がある場合は、各貼着工程の間の任意の時点で、再度熱風を送風して冷却固化を防止する。図2の実施形態では、圧締ロール22dで木口14の表面側凸部11の下面から凹部12の内面にかけて化粧シート前方余剰部分18を貼着する工程(図2(f))と、圧締ロール22eで木口14の裏面側凸部13の上面13aに化粧シート前方余剰部分18を貼着する工程(図2(h))との間に、再度の加熱工程を行っている(図2(g))。あるいは、図2(e)の時点から、貼着工程を順次に行う間継続して熱風を送風して、ホットメルト接着剤を再溶融させても良い。
【0039】
以上の工程によっても、実施例1と同様に、表面側凸部11と凹部12と裏面凸部13とからなる木口14を有する基板10の表面15から木口14の凹凸面を経て裏面16の一部にかけて化粧シート17が貼着されたクローゼット折戸用の化粧板18が製造される。
【0040】
なお、圧締ないし押圧ロール22a~22gは、木口14の凹凸形状に沿った折り癖ないし曲げ癖を化粧シート前方余剰部分18に付与し、さらに木口14の凹凸面に対して良好な貼着ができるように、その位置や移動方向を適宜に設定して必要数設置することが好ましい。たとえば、化粧シート前方余剰部分18を凹部12に入れ込んでその内面に当接させるためには、矢印B方向に移動する押圧ロール22b(図2(c))だけでなく、凹部12の上面に向けて斜め下方から押し付ける押圧ロールなども適宜追加して行うことができる。
【0041】
以上に本発明について実施形態に基づいて詳述したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の記載に基づいて解釈される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。
【0042】
本発明は、図示のように表面側凸部11とこれより突出長の大きい裏面側凸部13との間に凹部12が形成されてなる凹凸形状の木口14を有する基板10だけでなく、表面側より突出した部分を有する木口形状の基板の表面から少なくとも木口にかけて化粧シートを貼着する際に適用可能であり、たとえば、基板10の木口14が、図3(a)に示すように表面側を厚さ方向の途中まで切り欠いて凹部12および裏面側凸部13が形成された木口形状、図3(b)に示すように表面側凸部11および裏面側凸部13の間に中間凸部23(複数であっても良い。また、その突出長は表面側凸部11/裏面側凸部より長くても短くても良い。)を形成してこれら凸部間に凹部12a,12bが形成された木口形状、図3(c)に示すように表面側より裏面側の方が突出した傾斜面とされた木口形状、図3(d)に示すように厚さ方向中間に凹部12が形成された木口形状、図3(e)に示すように中間凸部23が形成された木口形状などを有する基材であっても、本発明により化粧シートを好適に貼着することができる。
【0043】
また、本発明は、基板の表面から少なくとも木口の凹凸面にかけて化粧シートを貼着するものであり、既述実施例のように基板裏面の一部まで回り込ませて化粧シートを貼着することは一実施形態にすぎない。
【符号の説明】
【0044】
10 基板
11 木口の表面側凸部
12,12a,12b 木口の凹部
13 木口の裏面側凸部
14 基板の木口
15 基板の表面
16 基板の裏面
17 化粧シート
18 化粧シート前方余剰部分
19 ホットメルト接着剤
20a~20e 押圧ロール
21a~20g 圧締ロール
22a~22g 押圧/圧締ロール
23 木口の中間凸部
図1
図2
図3
図4