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特許7353072リスト管理システム、リスト管理方法、およびリスト管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】リスト管理システム、リスト管理方法、およびリスト管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/018 20230101AFI20230922BHJP
【FI】
G06Q30/018 342
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019113977
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2021002083
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501382487
【氏名又は名称】株式会社セブン銀行
(73)【特許権者】
【識別番号】397073201
【氏名又は名称】株式会社電通国際情報サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】安田 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】小田 淳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】里中 裕輔
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-160029(JP,A)
【文献】特開2000-285135(JP,A)
【文献】特開2018-063728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理するリスト管理システムであって、
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいて前記リストデータベース間で前記データ項目を移動させるステップを実行し、
前記リストデータベースの集合が、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含み、
前記データ項目を移動させるステップが、
前記上位データベースと前記下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、
前記移動元データベースから前記移動先データベースに、前記1以上のデータ項目のうち少なくとも一つの前記データ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、
取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、
前記移動先データベースに基づく前記不正検知を前記取引情報に対して実行することで前記精度を算出する算出サブステップと、
前記精度が所与の基準を満たす場合に、前記少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップと
を含む、
リスト管理システム。
【請求項2】
前記仮移動サブステップでは、
前記移動元データベースに基づく前記不正検知を前記取引情報に対して実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、前記移動元データベースの前記1以上のデータ項目のそれぞれについて該不正検知への寄与度を算出し、
前記寄与度に基づいて前記移動元データベースから前記移動先データベースに前記少なくとも一つのデータ項目を仮移動させる、
請求項1に記載のリスト管理システム。
【請求項3】
前記選択サブステップでは、前記1以上の下位データベースのすべてを移動元データベースとして選択し、前記上位データベースを移動先データベースとして選択する、
請求項1または2に記載のリスト管理システム。
【請求項4】
前記仮移動サブステップでは、
前記移動元データベースに基づく前記不正検知を前記取引情報に対して実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、前記1以上のデータ項目のうち、該不正検知への寄与度が最も高い前記データ項目を選択し、
前記移動元データベースから前記移動先データベースに前記選択されたデータ項目を仮移動させる、
請求項3に記載のリスト管理システム。
【請求項5】
前記選択サブステップでは、前記上位データベースを移動元データベースとして選択し、前記1以上の下位データベースの少なくとも一つを移動先データベースとして選択する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のリスト管理システム。
【請求項6】
前記仮移動サブステップでは、
前記移動元データベースに基づく前記不正検知を前記取引情報に対して実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、前記1以上のデータ項目のうち、該不正検知への寄与度が最も低い前記データ項目を選択し、
前記移動元データベースから前記移動先データベースに前記選択されたデータ項目を仮移動させる、
請求項5に記載のリスト管理システム。
【請求項7】
前記上位管理主体が業界であり、前記上位データベースが業界リストであり、
前記下位管理主体が、前記業界に属する企業であり、前記下位データベースが個別リストである、
請求項1~6のいずれか一項に記載のリスト管理システム。
【請求項8】
前記上位管理主体が、管理対象の1以上の業界の全体であり、前記上位データベースが全体リストであり、
前記下位管理主体が前記業界であり、前記下位データベースが業界リストである、
請求項1~6のいずれか一項に記載のリスト管理システム。
【請求項9】
前記リストデータベースの集合が、管理対象の1以上の業界の全体に対応する全体リストと、1以上の前記業界に対応する1以上の業界リストと、前記業界に属する1以上の企業に対応する1以上の個別リストとを含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記全体リストを前記上位データベースとして設定し且つ前記1以上の業界リストを前記1以上の下位データベースとして設定した上で、前記データ項目を移動させるステップを実行し、
前記業界リストを前記上位データベースとして設定し且つ前記1以上の個別リストを前記1以上の下位データベースとして設定した上で、前記データ項目を移動させるステップを実行する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のリスト管理システム。
【請求項10】
不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理する少なくとも一つのプロセッサを備えるリスト管理システムによって実行されるリスト管理方法であって、
前記リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいて前記リストデータベース間で前記データ項目を移動させるステップを含み、
前記リストデータベースの集合が、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含み、
前記データ項目を移動させるステップが、
前記上位データベースと前記下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、
前記移動元データベースから前記移動先データベースに、前記1以上のデータ項目のうち少なくとも一つの前記データ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、
取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、
前記移動先データベースに基づく前記不正検知を前記取引情報に対して実行することで前記精度を算出する算出サブステップと、
前記精度が所与の基準を満たす場合に、前記少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップと
を含む、
リスト管理方法。
【請求項11】
不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理するリスト管理システムとしてコンピュータを機能させるリスト管理プログラムであって、
前記リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいて前記リストデータベース間で前記データ項目を移動させるステップを前記コンピュータに実行させ、
前記リストデータベースの集合が、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含み、
前記データ項目を移動させるステップが、
前記上位データベースと前記下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、
前記移動元データベースから前記移動先データベースに、前記1以上のデータ項目のうち少なくとも一つの前記データ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、
取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、
前記移動先データベースに基づく前記不正検知を前記取引情報に対して実行することで前記精度を算出する算出サブステップと、
前記精度が所与の基準を満たす場合に、前記少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップと
を含む、
リスト管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面はリスト管理システム、リスト管理方法、およびリスト管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
不正な取引を検知するための仕組みが知られている。例えば、特許文献1には、ブラックリストを用いる生体認証システムが記載されている。この生体認証システムは、生体認証が失敗した生体データのうち所定の基準を満たす生体データを登録するブラックリストと、認証を行うための生体データを格納する生体データデータベースとを格納する記憶部と、生体データのみの認証に基づく取引が行われた際に、認証がされた生体データとブラックリストに登録されている生体データとを照合する照合部と、照合部により照合一致する場合には所定の本人確認手続を行わせる制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-120483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラックリストのような事故情報は個々の管理者または個々の管理グループによって管理されているので、これらの管理主体を跨いで事故情報を用いることが困難である。そこで、複数の管理主体を跨いで事故情報を横断的に且つ効率的に管理できる仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るリスト管理システムは、不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理する。リスト管理システムは少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいてリストデータベース間でデータ項目を移動させるステップを実行する。リストデータベースの集合は、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含む。データ項目を移動させるステップは、上位データベースと下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、移動元データベースから移動先データベースに少なくとも一つのデータ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、移動先データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行することで精度を算出する算出サブステップと、精度が所与の基準を満たす場合に、少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップとを含む。
【0006】
このような側面においては、上位管理主体に対応するリストデータベース(すなわち、上位データベース)と、その上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上のリストデータベース(すなわち、下位データベース)との間で、リストデータのデータ項目が不正検知の精度に基づいて移動される。その精度が所与の基準を満たすようにリストデータベースのデータ項目を移動させることで、複数の管理主体を跨いで事故情報を横断的に且つ効率的に管理することができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、複数の管理主体を跨いで事故情報を横断的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リストデータベース間でのデータ項目の移動の例を模式的に示す図である。
図2】データ項目の管理の一例を説明するための図である。
図3】実施形態に係るリスト管理システムの機能構成の一例を示す図である。
図4】実施形態に係るリスト管理システムを構成するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】リストデータベース間でデータ項目を移動させる処理の一例を示すフローチャートである。
図6】リストデータベース間でデータ項目を移動させる処理の別の例を示すフローチャートである。
図7図6に示す処理の具体例を示す図である。
図8】データ項目の移動の処理をリストデータベースの集合の全体に対して実行する一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[システムの概要]
実施形態に係るリスト管理システム10は、不正な取引を検知するために用いられるリストデータベースの集合(すなわち、複数のリストデータベース)を管理するコンピュータシステムである。取引とは、人または組織が商品を何らかの手段で入手することをいう。取引は有償で行われてもよいし無償で行われてもよい。取引は、インターネットを介して行われてもよいし、インターネットを介することなく行われてもよい。例えば、取引は商品の購入でもよい。商品は有体物でも無体物でもよく、したがってサービスでもよい。「不正な取引」とは、人または組織が何らかの不正行為によって商品を入手することをいう。不正な取引の例として、なりすまし、未払い、転売目的の購入、架空取引などが挙げられるが、不正な取引の種類は限定されない。「不正な取引の検知」とは、取引が不正であることを特定または推定する処理のことをいう。本開示では、不正な取引の検知のことを「不正検知」ともいう。
【0011】
個々のリストデータベースは、不正な取引を検知するために用いられるリストデータを記憶するデータベースである。一例では、このリストデータは、過去の不正な取引に関連する情報を示すネガティブリスト(ブラックリスト)である。あるいは、リストデータは、該当する不正な取引から除外する情報を示すホワイトリストでもよい。複数のリストデータベースのそれぞれは、対応する管理主体による不正検知で用いられる。管理主体とはリストデータベースを所有、管理、または利用する人または組織のことをいう。
【0012】
複数のリストデータベースは、2以上の層によって示される階層関係を有する。本実施形態では、複数のリストデータベースは最上位層、中間層、および最下位層の3階層に分けられる。本実施形態では、最下位層は複数の企業に対応する複数のリストデータベースで構成され、中間層は複数の業界に対応する複数のリストデータベースで構成され、最上位層は管理対象の業界のすべて(以下ではこれを便宜的に「全業界」という)に共通の一つのリストデータベースで構成される。最上位層は管理対象の企業のすべて(以下ではこれを便宜的に「全企業」という)に共通の一つのリストデータベースで構成される、ともいうことができる。企業、業界、全業界(または全企業)はいずれも管理主体の一例である。本実施形態では、最下位層に位置するリストデータベースを「個別リスト」といい、中間層に位置するリストデータベースを「業界リスト」といい、最上位層に位置するリストデータベースを「共通リスト」という。一つの個別リストは一つの企業で用いられる。一つの業界リストは一つの業界で(すなわち、該業界内の全企業によって)共用される。唯一の共通リストは全業界(全企業)で共用される。
【0013】
個々のリストデータベースに記憶されるリストデータの個々のレコードは、不正検知のために用いられる1以上のデータ項目に対応する1以上の値を含む。個々のデータ項目は、個々の取引を示す取引情報を構成するデータ項目から選択される。データ項目の例として、取引者(例えば、商品の購入者または販売者)が取引で用いた端末のIPアドレス、取引者の住所、取引者がアクセスしたインターネットサービスプロバイダ(ISP)、取引者によって指定された配送先、取引者の端末情報、および商品名が挙げられる。例えば、リストデータベースがIPアドレスおよび住所という二つのデータ項目で構成される場合には、リストデータの個々のレコードは、取引に関連するIPアドレスおよび住所の組合せを示す。リストデータベースを構成するデータ項目はこれらに限定されず、リストデータベースは任意のデータ項目を含んでよい。データ項目は個々のリストデータベースの間で異なり得る。
【0014】
リスト管理システム10は、リストデータベース間でデータ項目を移動させることができる。本開示において、データ項目の移動とは、データ項目と該データ項目の値とを或るリストデータベースから別のリストデータベースに移す処理のことをいう。例えば、リスト管理システム10は、或るリストデータベースに含まれるデータ項目「ISP」と、具体的なISPの1以上の値(例えば、ISPの名称または識別子)とを別のリストデータベースに移動させる。リスト管理システム10は、或る一つの層に位置するリストデータベースのデータ項目を1階層上または1階層下に位置するリストデータベースに移動させることができる。例えば、リスト管理システム10は共通リストのデータ項目を業界リストに移動させてもよいし、業界リストのデータ項目を共通リストに移動させてもよい。あるいは、リスト管理システム10は業界リストのデータ項目を個別リストに移動させてもよいし、個別リストのデータ項目を業界リストに移動させてもよい。
【0015】
図1はリストデータベース間でのデータ項目の移動の例を模式的に示す図である。この例では、リスト管理システム10は唯一の共通リスト21、3個の業界リスト22、および9個の個別リスト23を管理する。
【0016】
リスト管理システム10は共通リスト21と業界リスト22との間でデータ項目を移動させることができる。一例では、リスト管理システム10は共通リスト21内の或る特定のデータ項目31を特定の業界リスト22に移動させる。例えば、リスト管理システム10は、全業界を跨いで統括的に実行される不正検知には適さないが、少なくとも一つの特定の業界での不正検知には適すると期待されるデータ項目31を、該特定の業界に対応する業界リスト22に移動させる。別の例では、リスト管理システム10は、複数の業界リスト22に共通のデータ項目32を共通リスト21に移動させる。例えば、リスト管理システム10は、全業界を跨いで統括的に実行される不正検知に適すると期待されるデータ項目32を共通リスト21に移動させる。
【0017】
リスト管理システム10は業界リスト22と個別リスト23との間でデータ項目を移動させることもできる。一例では、リスト管理システム10は業界リスト22内の或る特定のデータ項目33を特定の個別リスト23に移動させる。例えば、リスト管理システム10は、特定の業界で統括的に実行される不正検知には適さないが、少なくとも一つの企業での不正検知には適すると期待されるデータ項目33を、該特定の企業に対応する個別リスト23に移動させる。別の例では、リスト管理システム10は、複数の個別リスト23に共通のデータ項目34を業界リスト22に移動させる。例えば、リスト管理システム10は、特定の業界で統括的に実行される不正検知に適すると期待されるデータ項目34をその業界の業界リスト22に移動させる。
【0018】
図2はデータ項目の管理の一例を説明するための図である。データ項目は、IPアドレス、購入者の住所、購入者が用いるISP、商品の配送先、購入者の端末情報、および購入された商品の名称であるとする。図2は、ISPが共通リストのデータ項目として設定され、配送先および商品名が電子商取引(EC)の業界リストのデータ項目として設定され、IPアドレス、住所、および端末情報が個別リストのデータ項目として設定されることを示す。企業Dの個別リストは商品名をデータ項目として含む。個々のデータ項目がどの層のリストデータベースに設定されるかは、特定の商品名、特定のISPなどのような個々の値に依存し得る。例えば、取引される商品の種類にかかわらず、特定のISPを介した取引で不正の割合が相対的に高い場合には、図2に示すようにISPが共通リストのデータ項目として設定され得る。図2の例で、もし不正な取引に関連する端末情報が特定の業界内の取引(例えば、特定の種類の商品の取引)で共通するようであれば、リスト管理システム10は端末情報をその業界の業界リストのデータ項目として設定し得る。もし不正な取引に関連する端末情報が複数の業界を跨いで共通するようであれば、リスト管理システム10は端末情報を共通リストのデータ項目として設定し得る。
【0019】
[システムの構成]
図3はリスト管理システム10の機能構成の一例を示す図である。一例では、リスト管理システム10は機能要素としてリスト管理部11を備える。リスト管理部11はリストデータベースの集合を管理する機能要素である。リスト管理部11は、上位層に位置する上位データベースと、該上位層の1階層下の下位層に位置する1以上の下位データベースとの間でデータ項目を仮に移動させる。上位データベースは上位管理主体に対応し、下位データベースは、その上位管理主体に属する下位管理主体に対応する。続いて、リスト管理部11は、データ項目を仮に移動させたリストデータベースに基づく不正検知を検証用データに対して実行する。リスト管理部11は、個々の取引が不正であるか正常であるかを示す取引情報を検証用データとして用いる。リスト管理部11は、不正検知の精度が所与の基準を満たす場合に、データ項目の仮の移動を確定させる。
【0020】
一例では、リスト管理システム10は、個々のリストデータベースに通信ネットワークを介してアクセスする。通信ネットワークの構成は限定されず、例えばインターネットまたはイントラネットを含んで構成されてもよい。図3に示すように、本実施形態では、リストデータベースの集合20は、最上位層に位置する唯一の共通リスト21と、中間層に位置する1以上の業界リスト22と、最下位層に位置する1以上の個別リスト23とを含む。図3ではリストデータベースの集合20を便宜的に木構造のように表すが、これは、リストデータベースの集合20を木構造として構築することが必須であることを意味しない。リストデータベース間を結ぶネットワークのトポロジーは任意の方針で設計されてよい。個々のリストデータベースの設置場所も限定されない。例えば、個々のリストデータベースは個々のコンピュータシステム内に構築されてもよいし、2以上のリストデータベースが一つのコンピュータシステム内に構築されてもよい。
【0021】
一例では、リスト管理システム10は、取引情報を記憶する取引データベース40に通信ネットワークを介してアクセスする。取引情報の各レコードは取引詳細情報および不正フラグを含む。取引詳細情報とは取引の詳細を示す情報のことをいい、例えば、取引ID、取引日、購入者情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど)、販売者情報(店舗名など)、配送先、商品名、数量、購入金額、決済方法、配送方法、ISP、購入者の端末のIPアドレス、購入者の端末情報などのデータ項目を含む。不正フラグとは、取引が不正であるか否かを示す情報のことをいう。不正フラグは事実確認によって得られた結果を示す。不正フラグの表現方法は限定されず、例えば、「正常」および「不正」を示す二値で表現されてもよい。取引データベース40は、個々の企業または個々の業界によって管理される複数の取引データベースの集合でもよいし、個々の企業または個々の業界での取引データが集約された論理的に一つのデータベースでもよい。あるいは、取引データベース40は、リストデータベースの集合20を管理するために用意された、オリジナルの取引データのコピーを記憶してもよい。
【0022】
図4はリスト管理システム10を構成するコンピュータ100の一般的なハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、コンピュータ100はプロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、および出力装置106を備える。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーション・プログラムを実行する。主記憶部102は例えばROMおよびRAMで構成される。補助記憶部103は例えばハードディスクまたはフラッシュメモリで構成され、一般に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。通信制御部104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールで構成される。入力装置105は例えばキーボード、マウス、などで構成される。出力装置106は例えばモニタおよびスピーカで構成される。
【0023】
リスト管理システム10の各機能要素は、補助記憶部103に予め記憶されるリスト管理プログラム110により実現される。具体的には、各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102がリスト管理プログラム110を読み込み、プロセッサ101がそのリスト管理プログラム110を実行することで実現される。プロセッサ101はそのリスト管理プログラム110に従って、通信制御部104、入力装置105、または出力装置106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。処理に必要なデータまたはデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納される。
【0024】
リスト管理プログラム110は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、リスト管理プログラム110は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0025】
リスト管理システム10は1台のコンピュータ100で構成されてもよいし、複数台のコンピュータ100で構成されてもよい。複数台のコンピュータ100を用いる場合には、これらのコンピュータ100がインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つのリスト管理システム10が構築される。
【0026】
[システムの動作]
図5は、リストデータベース間でデータ項目を移動させる処理の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。具体的には、図5は、上位管理主体に対応する上位データベースと、その上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとの間でデータ項目を移動させる処理を示す。
【0027】
ステップS11では、リスト管理部11が移動元データベースおよび移動先データベースを選択する。移動元データベースとは、データ項目が移動先データベースに移る可能性があるデータベースのことをいう。移動先データベースとは、移動元データベースから移されたデータ項目が追加される可能性があるデータベースのことをいう。すなわち、移動元データベースはデータ項目の移動元であり、移動先データベースは該データ項目の移動先である。
【0028】
リスト管理部11は、上位データベースと1以上の下位データベースのうちの少なくとも一つとのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する。上位データベースが共通リスト21であれば下位データベースは業界リスト22であり、上位データベースが業界リスト22であれば下位データベースは個別リスト23である。下位層から上位層にデータ項目を移す場合、すなわち1以上の下位データベースのデータ項目を上位データベースに統合させる場合には、リスト管理部11は1以上の下位データベースを移動元データベースとして選択し、上位データベースを移動先データベースとして選択する。上位層から下位層にデータ項目を移す場合、すなわち上位データベースのデータ項目を少なくとも一つの下位データベースに分散させる場合には、リスト管理部11は上位データベースを移動元データベースとして選択し、少なくとも一つの下位データベースを移動先データベースとして選択する。
【0029】
ステップS12では、リスト管理部11が移動元データベースから移動先データベースにデータ項目を仮に移動させる。この処理によって、移動先データベースにはそのデータ項目と、該データ項目の値とが追加される。仮移動させるデータ項目の選択方法は限定されない。一例では、リスト管理部11は、取引情報を検証用データとして用いて、移動元データベースに基づく不正検知を実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、移動元データベースの1以上のデータ項目のそれぞれについて該不正検知への寄与度を算出する。そして、リスト管理部11は、その寄与度に基づいて移動元データベースから移動先データベースに少なくとも一つのデータ項目を仮移動させる。
【0030】
リスト管理部11はリストデータベースに基づく不正検知を所与のルールに基づいて実行する。不正検知の手法は限定されず、したがってルールの構成も限定されない。例えば、リスト管理部11は機械学習によって不正検知を実行してもよいし、他のアルゴリズムを用いて不正検知を実行してもよい。ルールは、機械学習モデル、アルゴリズム、データベース、設定ファイルなどの様々な手法によって表現することができ、リスト管理システム10内に予め実装される。
【0031】
リスト管理部11は不正検知の判定結果を統計的手法によって分析することで寄与度を求めることができる。例えば、リスト管理部11は重回帰分析を実行して標準化偏回帰係数を寄与度として求めてもよい。移動元データベースが下位データベースである場合には、リスト管理部11は寄与度が最も高いデータ項目を選択してもよい。移動元データベースが上位データベースである場合には、リスト管理部11は寄与度が最も低いデータ項目を選択してもよい。リスト管理部11は選択したデータ項目を移動先データベースに仮に移動させる。
【0032】
ステップS13では、リスト管理部11が、取引データベース40内の取引情報を検証用データとして用いて、データ項目およびその値が追加された移動先データベースに基づく不正検知を実行し、その不正検知の精度を検証する。リスト管理部11は上述したルール(例えば機械学習)に基づいてその不正検知を実行する。本開示ではこの不正検知を「試行」ともいう。リスト管理部11はその不正検知の判定結果を得る。この判定結果は不正フラグと同様に表現され、例えば、「正常」および「不正」を示す二値で表現できる。さらに、リスト管理部11は、データ項目が追加される前の移動先データベースに基づく不正検知を実行することでその判定結果を得る。本開示ではこの不正検知を「現在の不正検知」ともいう。
【0033】
リスト管理部11は、取引情報で示される不正フラグを不正検知の正解として用いることで、判定結果の精度を求めることができる。リスト管理部11は、試行での判定結果の精度Daと現在の不正検知の精度Dbとを比較して、試行の精度Daが所与の基準を満たすか否かを判定する。不正検知の精度は任意の指標で表現されてよく、例えば、正しい判定結果の個数(すなわち、正解数)と誤検知の個数(すなわち、不正解数)とのうちの少なくとも一つに基づいて表現されてもよい。不正検知の精度に関する基準は任意に設定されてよい。例えば、その基準は、精度Daが精度Dbより大きいことでもよいし、精度Dbから精度Daへの上昇の度合いが閾値以上であることでもよい。
【0034】
ステップS14において、試行の精度が所与の基準を満たす場合には処理はステップS15に進む。ステップS15では、リスト管理部11は移動元データベースから移動先データベースへのデータ項目の仮移動を確定させる。仮移動の確定は、移動先データベースに移動させたデータ項目と該データ項目の値とをそのまま維持し、移動元データベースから該データ項目と該データ項目の値とを削除することで実現できる。この処理によって、そのデータ項目が移動元データベースから削除されて移動先データベースに追加される。移動元データベースが下位データベースであり移動先データベースが上位データベースであれば、1以上の下位データベースに共通のデータ項目が上位データベースに移動する。移動元データベースが上位データベースであり移動先データベースが下位データベースであれば、上位データベースのデータ項目が少なくとも一つの移動先データベースに移動する。
【0035】
ステップS14において、試行の精度が所与の基準を満たさない場合には処理はステップS16に進む。ステップS16では、リスト管理部11は移動元データベースから移動先データベースへのデータ項目の仮移動をキャンセルする。仮移動のキャンセルは、移動先データベースに仮に移動させたデータ項目と該データ項目の値とを移動先データベースから削除することで実現できる。この処理によって、移動元データベースおよび移動先データベースの構成は、処理フローS1が実行される前の状態を維持する。
【0036】
図6は、リストデータベース間でデータ項目を移動させる処理の別の例を処理フローS2として示すフローチャートである。図6も、上位管理主体に対応する上位データベースと、その上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとの間でデータ項目を移動させる処理を示す。処理フローS2は処理フローS1の変形であるともいえる。
【0037】
ステップS21では、リスト管理部11が移動元データベースおよび移動先データベースを選択する。この処理はステップS11と同じである。
【0038】
ステップS22では、リスト管理部11が移動元データベースから移動先データベースに一つのデータ項目を仮に移動させる。この処理はステップS12と同じである。
【0039】
ステップS23では、リスト管理部11が、取引データベース40内の取引情報を検証用データとして用いて、データ項目およびその値が追加された移動先データベースに基づく不正検知を実行し、その不正検知の精度を検証する。この処理はステップS13と同じである。
【0040】
ステップS24において、試行の精度が所与の基準を満たす場合には処理はステップS25に進む。
【0041】
ステップS25では、リスト管理部11が移動元データベースから移動先データベースにさらに一つのデータ項目を仮に移動する。移動元データベースが下位データベースである場合には、リスト管理部11は、前回選択されたデータ項目の次に不正検知への寄与度が高いデータ項目を選択してもよい。移動元データベースが上位データベースである場合には、リスト管理部11は、前回選択されたデータ項目の次に不正検知への寄与度が低いデータ項目を選択してもよい。
【0042】
ステップS26では、リスト管理部11が、取引データベース40内の取引情報を検証用データとして用いて、さらなるデータ項目およびその値が追加された移動先データベースに基づく不正検知を実行し、その不正検知の精度を検証する。ステップS23との違いは、移動先データベースにさらにデータ項目およびその値が追加された点のみである。
【0043】
ステップS27では、リスト管理部11が、不正検知の精度の上昇の度合いが閾値以上であるか否かを判定する。その度合いが閾値以上である場合には処理はステップS25に進み、さらに一つのデータ項目の仮移動を伴うステップS25,S26の処理が実行される。
【0044】
その度合いが閾値未満である場合には処理はステップS28に進む。ステップS28では、リスト管理部11が移動元データベースから移動先データベースへのデータ項目の仮の移動を確定させる。最後に追加されたデータ項目によって不正検知の精度の度合いが上がった場合には、リスト管理部11はステップS22,S25において仮に移動したデータ項目のすべてについてその仮移動を確定させる。最後に追加されたデータ項目によって不正検知の精度の度合いが変わらないかまたは下がった場合には、リスト管理部11はそのデータ項目の追加をキャンセルした後に、残りのデータ項目についての仮の移動を確定させる。
【0045】
ステップS24において、試行の精度が所与の基準を満たさない場合には処理はステップS29に進む。ステップS29では、リスト管理部11はステップS22における仮の移動をキャンセルする。この処理によって、移動元データベースおよび移動先データベースの構成は、処理フローS2が実行される前の状態を維持する。
【0046】
図7は処理フローS2の具体例を示す図である。図7は以下の4種類の判定結果を示す。
・1以上のデータ項目を仮に移動する前の判定結果(現在の不正検知による判定結果)
・最初の試行による判定結果(ステップS22,S23)
・2回目の試行による判定結果(ステップS25,S26)
・取引情報の不正フラグによって示される正解
【0047】
この例では、1番目のデータ項目を移動先データベースに追加することで、取引が正常または不正であることを正確に判定した結果の個数が8(=3+5)増えている。リスト管理部11はステップS24において精度が基準を満たすと判定して、さらに一つのデータ項目を移動先データベースに仮に移動させて2回目の試行を実行する。この試行では、正確な判定結果の個数は1しか増えていないので、リスト管理部11はステップS27において、精度の上昇の度合いが閾値未満であると判定して仮の移動を確定する。この例では精度が上がっているので、リスト管理部11は二つのデータ項目のすべてについて仮移動を確定させる。
【0048】
図8は、データ項目の移動の処理をリストデータベースの集合20の全体に対して実行する一例を処理フローS3として示すフローチャートである。
【0049】
ステップS31では、リスト管理部11が個別リスト23から業界リスト22へのデータ項目の移動に関する処理を実行する。この処理では、リスト管理部11は業界リスト22を上位データベースとして設定し、1以上の個別リスト23を1以上の下位データベースとして設定した上で、データ項目を移動させる。リスト管理部11は、1以上の業界のそれぞれについて、業界リスト22を移動先データベースとして設定し、1以上の個別リスト23を移動元データベースとして設定する。リスト管理部11はそれぞれの業界について処理フローS1またはS2を実行する。
【0050】
ステップS32では、リスト管理部11が業界リスト22から共通リスト21へのデータ項目の移動に関する処理を実行する。この処理では、リスト管理部11は共通リスト21を上位データベースとして設定し、1以上の業界リスト22を1以上の下位データベースとして設定した上で、データ項目を移動させる。リスト管理部11は、共通リスト21を移動先データベースとして設定し、1以上の業界リスト22を移動元データベースとして設定して、処理フローS1またはS2を実行する。
【0051】
ステップS33では、リスト管理部11が共通リスト21から業界リスト22へのデータ項目の移動に関する処理を実行する。この処理では、リスト管理部11は共通リスト21を上位データベースとして設定し、1以上の業界リスト22を1以上の下位データベースとして設定した上で、データ項目を移動させる。リスト管理部11は、共通リスト21を移動元データベースとして設定し、1以上の業界リスト22の少なくとも一つを移動先データベースとして設定して、処理フローS1またはS2を実行する。
【0052】
ステップS34では、リスト管理部11が業界リスト22から個別リスト23へのデータ項目の移動に関する処理を実行する。この処理では、リスト管理部11は業界リスト22を上位データベースとして設定し、1以上の個別リスト23を1以上の下位データベースとして設定した上で、データ項目を移動させる。リスト管理部11は、1以上の業界のそれぞれについて、業界リスト22を移動元データベースとして設定し、1以上の個別リスト23の少なくとも一つを移動先データベースとして設定する。リスト管理部11はそれぞれの業界について処理フローS1またはS2を実行する。
【0053】
このように、ステップS31~S34のそれぞれにおいて処理フローS1またはS2が実行され、これにより、集合20内の個々のリストデータベースにおいてデータ項目が適切に設定される。処理フローS3の実行タイミングは限定されず、例えば、処理フローS3は定期的に実行されるバッチ処理によって実現されてもよい。
【0054】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係るリスト管理システムは、不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理する。リスト管理システムは少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいてリストデータベース間でデータ項目を移動させるステップを実行する。リストデータベースの集合は、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含む。データ項目を移動させるステップは、上位データベースと下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、移動元データベースから移動先データベースに少なくとも一つのデータ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、移動先データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行することで精度を算出する算出サブステップと、精度が所与の基準を満たす場合に、少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップとを含む。
【0055】
本開示の一側面に係るリスト管理方法は、不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理する少なくとも一つのプロセッサを備えるリスト管理システムによって実行される。リスト管理方法は、リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいてリストデータベース間でデータ項目を移動させるステップを含む。リストデータベースの集合は、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含む。データ項目を移動させるステップは、上位データベースと下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、移動元データベースから移動先データベースに少なくとも一つのデータ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、移動先データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行することで精度を算出する算出サブステップと、精度が所与の基準を満たす場合に、少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップとを含む。
【0056】
本開示の一側面に係るリスト管理プログラムは、不正な取引を検知するために用いられる1以上のデータ項目を含むリストデータを記憶するリストデータベースの集合を管理するリスト管理システムとしてコンピュータを機能させる。リスト管理プログラムは、リストデータベースを用いた不正検知の精度に基づいてリストデータベース間でデータ項目を移動させるステップをコンピュータに実行させる。リストデータベースの集合は、上位管理主体に対応する上位データベースと、該上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上の下位データベースとを含む。データ項目を移動させるステップは、上位データベースと下位データベースのうちの一方を移動元データベースとして選択し、他方を移動先データベースとして選択する選択サブステップと、移動元データベースから移動先データベースに少なくとも一つのデータ項目を仮移動させる仮移動サブステップと、取引詳細情報と該取引が不正であるか否かを示す不正フラグとを含む取引情報を取引データベースから取得する取得サブステップと、移動先データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行することで精度を算出する算出サブステップと、精度が所与の基準を満たす場合に、少なくとも一つのデータ項目の仮移動を確定させる確定サブステップとを含む。
【0057】
このような側面においては、上位管理主体に対応するリストデータベース(すなわち、上位データベース)と、その上位管理主体に属する1以上の下位管理主体に対応する1以上のリストデータベース(すなわち、下位データベース)との間で、リストデータのデータ項目が不正検知の精度に基づいて移動される。その精度が所与の基準を満たすようにリストデータベースのデータ項目を移動させることで、複数の管理主体を跨いで事故情報を横断的に且つ効率的に管理することができる。
【0058】
他の側面に係るリスト管理システムでは、仮移動サブステップにおいて、移動元データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、移動元データベースの1以上のデータ項目のそれぞれについて該不正検知への寄与度を算出し、寄与度に基づいて移動元データベースから移動先データベースに少なくとも一つのデータ項目を仮移動させてもよい。移動させるデータ項目を不正検知への寄与度に基づいて決めることで、それぞれのリストデータベースのデータ項目を適切に設定することができる。
【0059】
他の側面に係るリスト管理システムでは、選択サブステップにおいて、1以上の下位データベースのすべてを移動元データベースとして選択し、上位データベースを移動先データベースとして選択してもよい。1以上の下位データベースのデータ項目を上位データベースに統合させることで、複数の管理主体の全体として、事故情報を横断的にかつ効率的に管理することができる。
【0060】
他の側面に係るリスト管理システムでは、仮移動サブステップにおいて、移動元データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、該不正検知への寄与度が最も高いデータ項目を選択し、移動元データベースから移動先データベースに選択されたデータ項目を仮移動させてもよい。寄与度が最も高いデータ項目を上位データベースに移動させることで、それぞれのリストデータベースのデータ項目を適切に設定することができる。
【0061】
他の側面に係るリスト管理システムでは、選択サブステップにおいて、上位データベースを移動元データベースとして選択し、1以上の下位データベースの少なくとも一つを移動先データベースとして選択してもよい。この場合には、上位データベースのデータ項目を少なくとも一つの下位データベースに分散させることで、複数の管理主体の全体として、事故情報を横断的にかつ効率的に管理することができる。
【0062】
他の側面に係るリスト管理システムでは、仮移動サブステップにおいて、移動元データベースに基づく不正検知を取引情報に対して実行し、該不正検知の判定結果を分析することで、該不正検知への寄与度が最も低いデータ項目を選択し、移動元データベースから移動先データベースに選択されたデータ項目を仮移動させてもよい。上位データベースでの寄与度が最も低いデータ項目を少なくとも一つの下位データベースに移動させることで、それぞれのリストデータベースのデータ項目を適切に設定することができる。
【0063】
他の側面に係るリスト管理システムでは、上位管理主体が業界であり、上位データベースが業界リストであり、下位管理主体が、業界に属する企業であり、下位データベースが個別リストであってもよい。この場合には、企業と業界とを跨いで事故情報を横断的に且つ効率的に管理することができる。
【0064】
他の側面に係るリスト管理システムでは、上位管理主体が、管理対象の1以上の業界の全体であり、上位データベースが全体リストであり、下位管理主体が業界であり、下位データベースが業界リストであってもよい。この場合には、個々の業界とその全体とを跨いで事故情報を横断的に且つ効率的に管理することができる。
【0065】
他の側面に係るリスト管理システムでは、リストデータベースの集合が、管理対象の1以上の業界の全体に対応する全体リストと、1以上の業界に対応する1以上の業界リストと、業界に属する1以上の企業に対応する1以上の個別リストとを含んでもよい。少なくとも一つのプロセッサは、全体リストを上位データベースとして設定し且つ1以上の業界リストを1以上の下位データベースとして設定した上で、データ項目を移動させるステップを実行し、業界リストを上位データベースとして設定し且つ1以上の個別リストを1以上の下位データベースとして設定した上で、データ項目を移動させるステップを実行してもよい。企業、業界、および全体という3階層でリストデータベースの集合を構築することで、取引の実情に応じた不正検知を実行することができるが、3階層のリストデータベースを人手で管理することは容易ではない。本側面に係るリスト管理システムを用いてその管理を自動化することで、事故情報を横断的に且つ効率的に管理することができる。
【0066】
[変形例]
以上、本開示での実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0067】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
【0068】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップの一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0069】
リスト管理システムが二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらが用いられてもよく、「以下」および「未満」という二つの基準のうちのどちらが用いられてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【符号の説明】
【0070】
10…リスト管理システム、11…リスト管理部、20…リストデータベースの集合、21…共通リスト、22…業界リスト、23…個別リスト、40…取引データベース、110…リスト管理プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8