(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】包装袋形成用積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230922BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019125339
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 光
(72)【発明者】
【氏名】渕田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 誠悟
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-080988(JP,A)
【文献】特開2005-289399(JP,A)
【文献】特開2010-143624(JP,A)
【文献】特開2008-056248(JP,A)
【文献】特開2020-049837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0361722(US,A1)
【文献】米国特許第4888249(US,A)
【文献】株式会社クラレ 製品情報<エバール>(樹脂、フィルム),日本,2023年03月06日,https://www.kuraray.co.jp/products/eval
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/32
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、接着剤層、及びバリア性積層シーラントフィルムをこの順に有する包装袋形成用積層体であって、
前記バリア性積層シーラントフィルムは、前記基材層側から順に、第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層を有し、共押出法によって形成されており、かつ、
前記第1のシーラント層が、密度
0.915g/cm
3以上0.930g/cm
3以下のポリエチレン系樹脂
から成る層であ
り、
前記第1のシーラント層の厚みが、20μm以上50μm以下であり、
前記第2のシーラント層が、チーグラー-ナッタ系直鎖状低密度ポリエチレンを含む層である、
内容量3L以上の重量袋に適用するための包装袋形成用積層体。
【請求項2】
前記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層である、請求項
1に記載の包装袋形成用積層体。
【請求項3】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体におけるエチレン含量が、30モル%以上50モル%以下である、請求項
2に記載の包装袋形成用積層体。
【請求項4】
前記基材層が、ナイロンを含む層である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体。
【請求項5】
前記第1のシーラント層を構成する前記ポリエチレン系樹脂の密度が、
0.920g/cm
3以上
0.930g/cm
3以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体。
【請求項6】
前記第2のシーラント層が、
チーグラー-ナッタ系直鎖状低密度ポリエチレンから成る層であるか、又は
前記チーグラー-ナッタ系直鎖状低密度ポリエチレンと、変性ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタンから選択される樹脂との混合物から成る層である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体のバリア性積層シーラントフィルムが、互いにヒートシールされることによって構成されている、
内容量3L以上の重量袋である包装袋。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体のバリア性積層シーラントフィルムが、包装袋の他の構成要素とヒートシールされることによって構成されている、
内容量3L以上の重量袋である包装袋。
【請求項9】
請求項7
又は8に記載の包装袋と、前記包装袋中の内容物と、を含む、内容物入り包装袋。
【請求項10】
前記内容物が、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、及び塗料から選択される、請求項
9に記載の内容物入り包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋形成用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品等を収納して、保管、運搬し、使用に供するための包装袋形成用積層体として、異なる機能を有する複数の層から成る積層体が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、包装袋材料として、ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを、各フィルム間に接着剤層を介してドライラミネート法によって貼り合わされた積層シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
包装袋を、内容量の大きな「重量袋」として適用する場合、内容物の質量に応じた高い負荷がシール部分にかかるため、シール部分の強度を高くする必要がある。従来技術の包装袋形成用積層体でも、例えばヒートシール条件の変更等によって、シール強度を高くすること自体は可能であった。しかしながら、従来技術の包装袋形成用積層体を用い、ヒートシール条件の変更によってシール強度を高くして、重量袋に適用すると、重量袋に落下衝撃等が加わったときに、包装袋形成用積層体に剥離が生じる場合があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
【0007】
本発明の目的は、バリア層によって高いバリア性を具備しつつ、高いヒートシール強度、及び高い耐衝撃剥離性を具備し、好ましくは更に、高い耐薬品性を具備している、包装袋形成用積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
【0009】
《態様1》
基材層、接着剤層、及びバリア性積層シーラントフィルムをこの順に有する包装袋形成用積層体であって、
上記バリア性積層シーラントフィルムは、上記基材層側から順に、第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層を有し、共押出法によって形成されており、かつ、
上記第1のシーラント層が、密度0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含む層である、
包装袋形成用積層体。
《態様2》
上記第2のシーラント層が、チーグラー-ナッタ系直鎖状低密度ポリエチレンを含む層である、態様1に記載の包装袋形成用積層体。
《態様3》
上記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層である、態様1又は2に記載の包装袋形成用積層体。
《態様4》
上記エチレン-ビニルアルコール共重合体におけるエチレン含量が、30モル%以上50モル%以下である、態様3に記載の包装袋形成用積層体。
《態様5》
上記基材層が、ナイロンを含む層である、態様1~4のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体。
《態様6》
上記第1のシーラント層を構成する上記ポリエチレン系樹脂の密度が、0.915g/cm3以上0.920g/cm3以下である、態様1~5のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体。
《態様7》
態様1~6のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体のバリア性積層シーラントフィルムが、互いにヒートシールされることによって構成されている、包装袋。
《態様8》
態様1~6のいずれか一項に記載の包装袋形成用積層体のバリア性積層シーラントフィルムが、包装袋の他の構成要素とヒートシールされることによって構成されている、包装袋。
《態様9》
内容量が、1L以上である、態様7又は8に記載の包装袋。
《態様10》
態様7~9のいずれか一項に記載の包装袋と、上記包装袋中の内容物と、を含む、内容物入り包装袋。
《態様11》
上記内容物が、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、及び塗料から選択される、態様10に記載の内容物入り包装袋。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装袋形成用積層体は、バリア層によって高いバリア性を具備しつつ、高いヒートシール強度、及び高い耐衝撃剥離性を具備している。本発明の好ましい態様では、本発明の包装袋形成用積層体は、更に、高い耐薬品性を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の包装袋形成用積層体の構成の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《包装袋形成用積層体》
本発明の包装袋形成用積層体は、
基材層、接着剤層、及びバリア性積層シーラントフィルムをこの順に有する包装袋形成用積層体であって、
バリア性積層シーラントフィルムが、基材層側から順に、第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層を有し、共押出法によって形成されており、かつ、
第1のシーラント層が、密度0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含む層である。
【0013】
本発明の包装袋形成用積層体は、上記の構成を有することにより、良好なバリア性、高いヒートシール強度、及び高い耐剥離性を具備している。
【0014】
本発明者らは、従来技術の包装袋に落下衝撃等が加えられたときに、包装袋形成用積層体に剥離が生じていることを見出し、その詳細について検討した。その結果、この剥離は、シーラント層の柔軟性が不足しているために、落下衝撃のシーラント層による吸収が不十分となって、シーラント層と他の層との間の密着性が損なわれたことによると推察された。
【0015】
本発明者らは、上記の知見に基づいて、更に検討を重ね、本発明に到達した。
【0016】
本発明におけるバリア性積層シーラントフィルムでは、接着剤によって他の層に貼り付けられる側のシーラント層(第1のシーラント層)が、密度0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含む層である。この密度範囲のポリエチレン系樹脂は、適度の柔軟性を有し、落下等による衝撃の吸収性が高い。このようなポリエチレン系樹脂を含む第1のシーラント層を用いると、落下等の衝撃が加えられた場合でも、密着性を維持して剥離が抑制された、包装袋形成用積層体が提供されるのである。
【0017】
本発明では、バリア性積層シーラントフィルムを構成する各層、すなわち第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層は、共押出法によって一体形成されている。
【0018】
なお、本発明の包装袋形成用積層体における第2のシーラント層は、包装袋を形成する際に、互いに、又は包装袋の他の構成要素と、ヒートシールされることが予定されている。
【0019】
本発明におけるバリア性積層シーラントフィルムは、バリア層を有し、それによって、バリア性に優れ、例えば環境中の酸素、水分等から内容物を保護することができ、かつ、内容物に含まれる揮発成分等が包装袋から散逸することが抑制されている。
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明の包装袋形成用積層体の構成について説明する。
【0021】
図1に、本発明の包装袋形成用積層体の構成の一例を説明するための概略断面図を示す。
【0022】
図1の包装袋形成用積層体(100)は、
基材層(110)、接着剤層(120)、及びバリア性積層シーラントフィルム(130)をこの順に有する包装袋形成用積層体(100)であって、
バリア性積層シーラントフィルム(130)は、基材層(110)側から順に、第1のシーラント層(131)、第1の接着性樹脂層(132)、バリア層(133)、第2の接着性樹脂層(134)、及び第2のシーラント層(135)を有する。
【0023】
包装袋形成用積層体(100)中のバリア性積層シーラントフィルム(130)は、共押出法によって製造されたものである。
【0024】
バリア性積層シーラントフィルム(130)中の第1のシーラント層(131)は、密度0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含む層である。
【0025】
以下、本発明の包装袋形成用積層体中の各層について、順に説明する。
【0026】
〈基材層〉
基材層は、本発明の包装袋形成用積層体に、包装袋としたときの保形性を確保することの他、包装袋外部からの衝撃に対する防御層として機能する。また、基材層は、所望により、印刷可能な材料から成っていてもよく、内容物の明示、内容物の説明、消費意欲向上のための意匠等が印刷されていてもよい。
【0027】
基材層は、ポリアミドを含む層であってよく、例えば、ナイロンを含む層であってよく、具体的には、例えば、6-ナイロン、6,6-ナイロン等を含む層であってよい。
【0028】
基材層は、延伸フィルム及び無延伸フィルムのどちらであってもよい。延伸は、1軸延伸及び2軸延伸のどちらであってもよい。2軸延伸の場合の延伸方法は任意であり、例えば、チューブラー2軸延伸、同時2軸延伸、逐次2軸延伸等によって延伸されたフィルムを使用してよい。
【0029】
基材層は、単層であっても多層であってもよい。多層は、ナイロンから成る複数層のフィルムによって構成されていてもよいし、ナイロンから成る単層又は多層のフィルムと、他のフィルムとの組み合わせであってもよい。他のフィルムは例えば、ポリオレフィン、ポリエステル等から成るフィルムであってよい。本発明における基材層は、典型的には、上記の好ましいナイロンから成るフィルムの単層、このようなナイロンフィルムが2層以上積層された多層、又は単層若しくは多層のナイロンフィルムの最表面側(バリア性積層シーラントフィルムとは反対の面側)に、ポリオレフィンフィルム又はポリエステルの層を有するものであってよい。
【0030】
包装体としたときの強度を付与するために、基材層の厚みは、例えば、5μm以上、8μm以上、10μm以上、12μm以上、15μm以上、又は20μm以上であってよい。一方、袋形成用積層体が適当な柔軟性を維持し、積層体の総厚みを過度に大きくしないとの観点から、基材層の厚みは、例えば、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0031】
〈バリア性積層シーラントフィルム〉
バリア性積層シーラントフィルムは、基材層側から順に、第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層をこの順に有する。
【0032】
バリア性積層シーラントフィルムは、共押出法によって製造されたものであり、ドライラミネート接着剤層を含まない。
【0033】
以下、バリア性積層シーラントフィルムを構成する各層について、第1のシーラント層、バイア層、第2のシーラント層、並びに第1の接着性樹脂層及び第2の接着性樹脂層の順に説明する。
【0034】
(第1のシーラント層)
第1のシーラント層は、密度0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含む層である。
【0035】
上記したとおり、第1のシーラント層における、ポリエチレン系樹脂の密度は、当該ポリエチレン系樹脂の柔軟性の程度を示す指標であり、ポリエチレン系樹脂の密度が小さいことは、柔軟性が高いことを意味している。
【0036】
第1のシーラント層中のポリエチレン系樹脂の柔軟性を確保して、耐衝撃剥離性を十分に高くする観点から、第1のシーラント層中のポリエチレン系樹脂の密度は、0.930g/cm3以下であり、0.925g/cm3以下、又は0.920g/cm3以下であってよい。一方で、第1のシーラント層中のポリエチレン系樹脂の密度が過度に低いと、本発明を包装袋に成形するために第2のヒートシール層をヒートシールする際に、第1のシーラント層が流動して積層体外に流れ出す懸念がある。これを回避する観点から、第1のシーラント層中のポリエチレン系樹脂の密度は、0.900g/cm3以上であり、0.905g/cm3以上、0.910g/cm3以上、又は0.915g/cm3以上であってよい。第1のシーラント層中のポリエチレン系樹脂の密度は、例えば、0.915g/cm3以上0.920g/cm3以下の範囲であってよい。
【0037】
本明細書において、第1のシーラント層の密度は、JIS K7112に準拠して、25℃において測定された値である。
【0038】
第1のシーラント層における、上記の範囲の密度を有するポリエチレン系樹脂を、以下、「特定ポリエチレン系樹脂」と称することがある。
【0039】
第1のシーラント層における特定ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと他のオレフィンとの共重合体であってもよい。第1のシーラント層における特定ポリエチレン系樹脂として、具体的には例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)等が挙げられ、これらから選択される1種以上を使用してよい。適度の密度を示し、好適な範囲の柔軟性を示すためには、特定ポリエチレン系樹脂は、LDPE及びLLDPEから選択されてよく、特にLDPEであってよい。
【0040】
第1のシーラント層における特定ポリエチレン系樹脂としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0041】
第1のシーラント層は、単層であってもよいし、多層であってもよいが、特定ポリエチレン系樹脂の層が最外層であることが必要である。特定ポリエチレン系樹脂の層以外の層は、特定ポリエチレン系樹脂を含まず、かつ、特定ポリエチレン系樹脂以外のポリエチレン系樹脂、変性ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等から選択される樹脂を含んでいる層であってもよい。
【0042】
高度の耐衝撃剥離性を確保する観点から、第1のシーラント層の厚みは、例えば、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、又は30μm以上であってよい。一方、包装袋形成用積層フィルムの総厚みを過度に厚くしないとの観点から、第1のシーラント層の厚みは、例えば、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0043】
第1のシーラント層が多層である場合、上記の第1のシーラント層の厚みは、第1のシーラント層を構成する全部の層の合計の厚みである。
【0044】
(バリア層)
バリア層は、本発明の包装袋形成用積層体に、例えば、酸素遮断機能を与えて、包装袋に収納された内容物を酸化から保護するとともに、包装袋に収納された内容物が袋の外部に漏れ出ることを抑制する機能を有する。このような機能を効果的に発現するため、バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含んでいてよい。
【0045】
バリア層におけるEVOHのエチレン含量は、包装袋形成用積層体のバリア性、特に酸素遮断性を確保する観点から、例えば、50モル%以下、48モル%以下、46モル%以下、45モル%以下、44モル%以下、43モル%以下、42モル%以下、又は40%以下であってよく、一方で、得られる包装袋の耐衝撃性、特に耐落下衝撃剥離性を確保する観点から、例えば、30モル%以上、33モル%以上、34モル%以上、35モル%以上、又は36モル%以上であってよい。エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含量は、典型的には例えば、30モル%以上50モル%以下、33モル%以上46モル%以下、又は35モル%以上42モル%以下であってよい。
【0046】
バリア層の厚みは、十分に高い酸素遮断性を確保する観点から、例えば、5μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、又は10μm以上であってよく、包装袋としての柔軟性を確保する観点から、例えば、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、又は10μm以下であってよい。
【0047】
(第2のシーラント層)
第2のシーラント層は、本発明の包装袋形成用積層体を包装袋に成形するためのシール層として機能する。第2のシーラント層は、例えば、ヒートシール機能を有する樹脂を含んでいてよく、ヒートシール機能を有する樹脂から構成されていてよい。
【0048】
また、第2のシーラント層は、本発明の包装袋形成用積層体を包装袋に成形したときに、最内層となり、内容物に直接触れることとなる。したがって、第2のシーラント層に含まれる樹脂は、収納が想定される内容物に応じた耐薬品性を有することが望まれる。
【0049】
ヒートシール機能を有し、かつ、耐薬品性の高い樹脂としては、例えば、ポリオレフィンが例示できる。したがって、第2のシーラント層は、ポリオレフィンを含んでいてよい。
【0050】
第2のシーラント層に含まれるポリオレフィンは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等であってよく、特にポリエチレンが好ましい。第2のシーラント層に含まれるポリエチレンとして、具体的には例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられ、第2のシーラント層は、これらから選択される1種以上を含んでいてよい。第2のシーラント層は、良好なヒートシール性、及び高い耐薬品性の他、高度の加工性が付与される観点から、LLDPEを含む層であることが好ましく、LLDPEから構成される層であることがより好ましい。
【0051】
第2のシーラント層に含まれるLLDPEは、メタロセン触媒によって製造されたメタロセン系LLDPE(M-LLDPE)であってもよいし、チーグラー-ナッタ触媒によって製造されたチーグラー-ナッタ系LLDPE(ZN-LLDPE)であってもよい。
【0052】
しかしながら、近年の高速ヒートシールへの適用を考慮すると、ZN-LLDPEを用いてよい。すなわち、ZN-LLDPEは、DSCにおいて複数の融点ピークを有するから、例えば高速ヒートシール工程でシール部分がポリエチレンの代表融点(約120℃)に至らなかった場合でも、適当なヒートシール強度を示すと考えられる。すなわち、シール部分の温度が、ポリエチレンの代表融点に至らなかった場合でも、比較的低温のピークに対応するメチレン連鎖結晶は溶融することができ、この部分がヒートシールに寄与すると考えられる。
【0053】
第2のシーラント層は、上記のようなポリオレフィンのみから構成されていてもよいし、ポリオレフィンと他の樹脂との混合物から構成されていてもよい。他の樹脂は、例えば、変性ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等から選択されてよい。
【0054】
第2のシーラント層は、単層であってもよいし、多層であってもよい。多層である第2のシーラント層は、ポリオレフィンを含む層を1層以上有していればよく、ポリオレフィンを含む層のみから成っていてもよいし、ポリオレフィンを含む層と他の層とから成っていてもよい。他の層は、ポリオレフィンを含まず、かつ、変性ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等から選択される樹脂を含んでいてよい。
【0055】
第2のシーラント層が多層である場合、ポリオレフィンを含む層を最外層とし、最外層であるポリオレフィンを含む層が、基材層とは反対側に配置されてよい。
【0056】
高いヒートシール性を確保する観点から、第2のシーラント層の厚みは、例えば、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、又は80μm以上であってよい。一方、包装袋形成用積層フィルムの総厚みを過度に厚くしないとの観点から、第2のシーラント層の厚みは、例えば、120μm以下、110μm以下、100μm以下、90μm以下、又は80μm以下であってよい。
【0057】
第2のシーラント層が多層である場合、上記の第2のシーラント層の厚みは、第2のシーラント層を構成する全部の層の合計の厚みである。
【0058】
(第1の接着性樹脂層及び第2の接着性樹脂層)
第1の接着性樹脂層及び第2の接着性樹脂層は、バリア性積層シーラントフィルムにおけるバリア層と、第1のシーラント層及び第2のシーラント層との間を接着し、これらの層を積層させる機能を有する。第1の接着性樹脂層は、第1のシーラント層とバリア層との間に配置され、第2の接着性樹脂層は、バリア層と第2のシーラント層との間に配置される。
【0059】
第1の接着性樹脂層及び第2の接着性樹脂層は、それぞれ、バリア層の構造との親和性が高い極性部位と、第1及び第2のシーラント層の構造との親和性が高い例えばポリオレフィン骨格とを有していてよい。また、第1の接着性樹脂層及び第2の接着性樹脂層は、バリア層を挟み込んで、積層体外部からの衝撃を緩和させてバリア層を保護する機能を更に有していてもよい。したがって、これらの接着性樹脂層は、比較的軟質の樹脂から構成されていてもよい。
【0060】
第1及び第2の接着性樹脂層を構成する材料は、熱可塑性樹脂であってよい。この熱可塑性樹脂は、例えば、酸変性ポリオレフィン等であってよい。酸変性ポリオレフィンは、例えば、カルボン酸変性ポリオレフィン等であってよく、特に不飽和ジカルボン酸変性ポリオレフィン等であってよく、好ましくはα,β-不飽和ジカルボン酸変性ポリオレフィンであってよい。ここで、ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等であってよい。ポリオレフィンの修飾に好ましく用いられるα,β-不飽和ジカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等であってよい。第1及び第2の接着性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、カルボン酸変性ポリエチレン、又はカルボン酸変性ポリプロピレンを含み、好ましくはカルボン酸変性ポリエチレンを含み、典型的にはカルボン酸変性ポリエチレンから構成されてよい。
【0061】
第1及び第2の接着性樹脂層がカルボン酸変性ポリオレフィンを含む場合、これらのポリオレフィンの酸変性度は任意である。
【0062】
第1及び第2の接着性樹脂層の厚みは、それぞれ、例えば、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、又は7μm以上であってよく、例えば、10μm以下、8μm以下、6μm以下、又は5μm以下であってよい。
【0063】
〈接着剤層〉
本発明の包装袋形成用積層体における接着剤層は、基材層と、バリア性積層シーラントフィルムとの間を接着し、これらを積層させる機能を有する。このような接着剤層は、例えば、ドライラミネート接着剤から構成される層、アンカーコート剤から構成される層等であってよい。
【0064】
ドライラミネート接着剤は、例えば、ポリオールとイソシアネートから成る2液系の接着剤であってよい。ポリオールは、例えば、ポリエステル系、ポリエステルポリウレタン系等の骨格を有するものであってよい。イソシアネートは、芳香族系及び脂肪族系のどちらであってもよい。芳香族系イソシアネートを用いると、接着力に優れる接着性樹脂層が得られる。脂肪族系イソシアネートを用いると、臭気等の問題のない接着性樹脂層が得られる。食品、医薬品等を収納する袋に用いる場合には、ポリエステル系又はポリエステルポリウレタン系ポリオールと、脂肪族イソシアネートとの組み合わせから構成されるドライラミネート用接着剤を使用してよい。
【0065】
ドライラミネート接着剤から構成される接着剤層の厚みは、例えば、2μm以上、3μm以上、又は4μm以上であってよく、例えば、7μm以下、5μm以下、又は4μm以下であってよい。
【0066】
アンカーコート剤は、例えば、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリウレタン系等の適宜の2液系アンカーコート剤であってよい。
【0067】
アンカーコート剤から構成される接着剤層の厚みは、例えば、0.1μm以上3μm以下の範囲であってよい。
【0068】
〈各層の任意添加剤〉
本発明の包装袋形成用積層体中の各層は、樹脂材料に通常含有される添加剤を、任意的に含んでいてもよい。添加剤は、例えば、滑材、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等から選択されてよい。
【0069】
《包装袋形成用積層体の製造方法》
本発明の包装袋形成用積層体は、任意の方法によって製造されてよい。
【0070】
本発明の包装袋形成用積層体は、接着剤層の構成に応じて、適宜の方法で製造されてよい。
【0071】
接着剤層がドライラミネート接着剤から構成される包装袋形成用積層体は、例えば、
基材層を準備すること(基材層準備工程)、
第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層を有するバリア性積層シーラントフィルムを作製すること(バリア性積層シーラントフィルム作製工程)、並びに
基材層と、バリア性積層シーラントフィルムとを、接着剤層を介して接着して積層させること(積層工程)
を含む方法によって製造されてよい。
【0072】
基材層準備工程では、基材層を準備する。基材層は、所望の包装袋形成用積層体における基材層と同じものを、適宜に選択して準備する。基材層としては、例えば、公知の方法によって作製されたものを用いてもよく、市販品を用いてもよく、又は市販品に適宜の加工(例えば表面処理等)を施したものを用いてもよい。
【0073】
バリア性積層シーラントフィルム作製工程では、所望の包装袋形成用積層体におけるバリア性積層シーラントフィルムの構成に応じて、例えば5層構成のバリア性積層シーラントフィルムを作製する。本発明の包装袋形成用積層体におけるバリア性積層シーラントイルムは、共押出法によって作製されており、ドライラミネート接着剤層を含まない。
【0074】
そして、積層工程において、基材層と、バリア性積層シーラントフィルムとを、所定のドライラミネート接着剤から構成される接着剤層を介して接着して積層させることにより、接着剤層がドライラミネート接着剤から構成される包装袋形成用積層体を得ることができる。
【0075】
一方、接着剤層がアンカーコート剤から構成される包装袋形成用積層体は、例えば、
基材層を準備すること(基材層準備工程)、
基材層上に、アンカーコート剤から構成される接着剤層を形成すること(接着剤層形成工程)、並びに
接着剤層上に、第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層を有するバリア性積層シーラントフィルムを、第1のシーラント層が接着剤層に接するように、多層押出しすること(バリア性積層シーラントフィルム積層工程)
を含む方法によって製造されてよい。
【0076】
基材層準備工程については、接着剤層がドライラミネート接着剤から構成される包装袋形成用積層体の製造方法における基材層準備工程に関する説明を、そのまま援用できる。
【0077】
接着剤層形成工程では、基材層上に、所定のアンカーコート剤から構成される接着剤層を形成する。
【0078】
そして、バリア性積層シーラントフィルム積層工程において、上記で形成された接着剤層上に、第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層を有するバリア性積層シーラントフィルムを、第1のシーラント層が接着剤層に接するように、多層押出しすることにより、接着剤層がアンカーコート剤から構成される包装袋形成用積層体を得ることができる。
【0079】
《包装袋》
本発明の別の観点によると、本発明の包装袋形成用積層体から構成されている包装袋が提供される。
【0080】
本発明の包装袋は、以下のいずれかの構成を有していてよい:
(1)本発明の包装袋形成用積層体のバリア性積層シーラントフィルムが、互いにヒートシールされることによって構成されている、包装袋(第1の包装袋)、又は、
(2)本発明の包装袋形成用積層体のバリア性積層シーラントフィルムが、包装袋の他の構成要素とヒートシールされることによって構成されている、包装袋(第2の包装袋)。
【0081】
本発明の第1の包装袋は、例えば、包装袋形成用積層体が、当該積層体のうちの第2のシーラント層が内側を向くように対向配置され、第2のシーラント層の端部が互いにヒートシールされることによって、袋状に形成されて成る。
【0082】
本発明の第2の包装袋は、例えば、包装袋形成用積層体が、当該積層体のうちの第2のシーラント層が内側を向くように対向配置され、かつ、対向配置された第2のシーラント層の間隙に、包装袋の他の構成要素を配置し、これらが互いにヒートシールされることによって、袋状に形成されてなる。包装袋の他の構成要素は、例えば、スパウト等であってよい。
【0083】
包装袋は、例えば、ボトムシール袋状、サイドシール袋状、三方シール袋状、ピロー袋状、角底袋状、パウチ状、スタンディングパウチ状、ガセット袋状等の任意の形状を有していてよい。
【0084】
本発明の包装袋の内容量は、任意であり、例えば、10mL以上100L以下程度とすることができる。本発明の包装袋を、内容量1L以上、2L以上、3L以上、5L以上、又は10L以上の「重量袋」とすると、本発明の所期する効果が最大限に発揮され、好ましい。重量袋である本発明の包装袋の内容量は、例えば、80L以下、50L以下、30L以下、40L以下、30L以下、25L以下、20L以下、15L以下、10L以下、8L以下、5L以下、4L以下、3L以下、又は2L以下であってよい。
【0085】
《内容物入り包装袋》
本発明の更に別の観点によると、本発明の包装袋と、包装袋中の内容物と、を含む、内容物入り包装袋が提供される。
【0086】
本発明の内容物入り包装袋の内容物は、液状の物品であってよい。液状の物品は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、塗料等であってよい。医薬品及び医薬部外品は、それぞれ例えば、注射薬、点滴薬、輸液薬、灌流薬、煎剤等を含む。化粧品は、例えば、シャンプー、コンディショナー、整髪料(例えば、ヘアウォーター、ヘアリキッド、グリース等)等を含む。食品は、例えば、飲料、食用油、スープ、クリーム、液体調味料(例えば、醤油、酢、麺つゆ、割下、みりん、ウスターソース、ケチャップ、タバスコ、甘味料等)等を含む。洗剤は、中性洗剤、アルカリ性洗剤、及び酸性洗剤を含む。塗料は、例えば、ペンキ、ニス、オイルステイン等を含む。
【実施例】
【0087】
以下の実施例及び比較例において、第1のシーラント層の密度は、JIS K7112に準拠して、25℃において測定して得られた値である。
【0088】
《実施例1》
(1)包装袋形成用積層体の作製
上記の第1のシーラント層、第1の接着性樹脂層、バリア層、第2の接着性樹脂層、及び第2のシーラント層が、この順に積層されたバリア性積層シーラントフィルムを、共押出インフレーション成形によって作製した。
【0089】
得られたバリア性積層シーラントフィルムの第1のシーラント層側の面上に、厚み3μmのポリエステル系ドライラミネート接着剤層を介して基材層をドライラミネートにて積層することにより、袋形成用積層体を作製した。
【0090】
各層の構成材料及び厚みは、それぞれ以下のとおりである。
【0091】
第1のシーラント層:密度0.915g/cm3のLDPE、厚み30μm
第1の接着性樹脂層:マレイン酸変性PE(Mal-PE)、厚み5μm
バリア層:エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(エチレン含量38モル%)、厚み10μm
第2の接着性樹脂層:マレイン酸変性PE(Mal-PE)、厚み5μm
第2のシーラント層:チーグラーナッタ系LLDPE(ZN-LLDPE)、厚み80μm
基材層:二軸延伸ナイロンフィルム、厚み25μm
【0092】
(2)評価
(2-1)落下耐性(落下衝撃に対する耐衝撃剥離性)の評価
得られた包装袋形成用積層体を用い、第2のシーラント層を内側に向けてヒートシールすることにより、容量5Lのピロー袋を作製した。このピロー袋に水5kgを充填して、内容物入り包装袋を得た。
【0093】
上記の内容物入り包装袋について、市販の落下試験機を用いて、落下高さを1mとして、以下のように落下試験を行って、落下耐性を評価した。
【0094】
内容物入り包装袋の、背貼りがない方の面が下になるようにして、合計9回の落下を行った。9回落下させた後の内容物入り包装袋を、目視で観察して、以下の基準により評価した。評価結果を表1に示す。
A:異常が見られなかった場合
B:破袋はしなかったが、ヒートシール部に基材層の浮きが観察された場合
C:破袋した場合
【0095】
(2-2)引裂き性の評価
袋形成用積層体を用い、「(2-1)包装袋の落下耐性の評価」と同様にして、ピロー袋を作製した。このピロー袋のヒートシール部に、長さ5mmのIノッチを入れ、このIノッチを引裂き開始部として、手動により引裂き開封の官能評価を行い、以下の基準で評価した。
A:引裂きが容易に行えた場合
C:5層シーラントフィルムが伸びて、引裂きが不可能又は困難であった場合
【0096】
(2-3)包装袋形成用積層体のラミネート強度の評価
袋形成用積層体のラミネート強度(バリア性積層シーラントフィルムと基材層と間の剥離強度)を、JIS K-6854に準拠して、25℃、剥離速度300mm/分におけるT型剥離試験によって測定し、以下の基準により評価した。評価結果を表1に示す。
A:ラミネート強度が、15N/15mm以上であった場合
B:ラミネート強度が、7N/15mm以上15N/15mm未満であった場合
C:ラミネート強度が、7N/15mm未満であった場合
【0097】
(2-4)耐薬品性の評価(促進試験)
得られた包装袋形成用積層体を用い、基材層側を外側にしてヒートシールすることにより、内寸100mm×100mmのパウチを作製した。このパウチに濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH≧12.5)30gを充填して、内容物入り包装袋を得た。
【0098】
得られた内容物入り包装袋を、40℃において30日間保存した。30日経過後、パウチを開封して内容物を除去し、蒸留水で洗浄した後、「(2-3)包装袋形成用積層体のラミネート強度の評価」と同様にして、耐薬品性促進試験後の袋形成用積層体のラミネート強度を測定した。評価結果を表1に示す。
【0099】
また、耐薬品性促進試験後の包装袋形成用積層体の外観を目視で観察し、以下の基準により評価した。評価結果を表1に示す。
A:包装袋形成用積層体の外観に異常が観察されなかった場合
B:包装袋形成用積層体の層間に、浮き(部分的な剥離)が観察された場合
C:包装袋形成用積層体に層間剥離が観察された場合
【0100】
《実施例2及び3、並びに比較例1~3》
第1のシーラント層として、表1に記載のLDPE((実施例2及び3)、メタロセン系LLDPE(M-LLDPE)(比較例1及び2)、又は超低密度PE(ULDPE)(比較例3)をそれぞれ用いた他は、実施例1と同様にして、包装袋形成用積層体を作製し、各種の評価を行った。評価結果を、第1のシーラント層として用いたメタロセン系LLDPEのDSC測定結果とともに、表1に示す。
【0101】
なお、第1のシーラント層として密度0.897g/cm3のULDPEを用いた比較例3では、バリア性積層シーラントフィルムの滑り性が悪く、ハンドリングが困難であったため、包装袋形成用積層体の作製及び評価を行えなかった。
【0102】
【0103】
表1において、各層の樹脂種類欄の略称は、それぞれ以下の意味である。
Ny:二軸延伸ナイロンフィルム
LDPE:低密度ポリエチレン
M-LLDPE:メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン
ZN-LLDPE:チーグラー-ナッタ系直鎖状低密度ポリエチレン
ULDPE:超低密度ポリエチレン
M-PE:マレイン酸変性ポリエチレン
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体
【0104】
表1を参照すると、第1のシーラント層の密度が0.935である比較例1、及び0.940である比較例2では、落下耐性、引裂き性、ラミネート強度、及び耐薬品性が不十分であった。また、第1のシーラント層の密度が0.897である比較例3では、5層シーラントフィルムの滑り性が悪く、ハンドリングが困難なため、包装袋形成用積層体の作製及び評価を行うことができなかった。
【0105】
これらに対して、第1のシーラント層の密度が0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下の範囲の実施例1~3では、落下耐性及び引裂き性に優れ、かつ、ラミネート強度及び耐薬品性も、良好な結果を示した。特に、第1のシーラント層の密度が0.915g/cm3以上0.920g/cm3以下の実施例1及び2では、落下耐性及び引裂き性に優れるとともに、優れたラミネート強度及び耐薬品性を示した。
【符号の説明】
【0106】
100 包装袋形成用積層体
110 基材層
120 接着剤層
130 バリア性積層シーラントフィルム
131 第1のシーラント層
132 第1の接着性樹脂層
133 バリア層
134 第2の接着性樹脂層
135 第2のシーラント層