(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/02 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A47L9/02 D
A47L9/02 A
(21)【出願番号】P 2019130257
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】岡 康弘
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03608126(US,A)
【文献】国際公開第2008/114301(WO,A1)
【文献】実開昭57-054346(JP,U)
【文献】特表2004-513696(JP,A)
【文献】特開2002-177173(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01321086(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0270621(US,A1)
【文献】特開平04-197325(JP,A)
【文献】実公昭46-014864(JP,Y1)
【文献】特公昭49-031227(JP,B1)
【文献】国際公開第01/003565(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/067919(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第04413071(DE,A1)
【文献】特公昭50-013588(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0012639(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃面上を走行可能な筐体を備え、
前記筐体は、左右方向の左端部および右端部を有すると共に、前記被清掃面と近接した位置で対向する底部に吸込口を有し、
前記左端部および右端部のうちの少なくとも一方に、前記被清掃面および前記被清掃面上で隣接する2つの立面で囲まれた直角以下の角度を有する隅部に進入可能な角部を有する隅部進入部が設けられており、
前記隅部進入部は、前記2つの立面のうちの一方と対面可能な前端面と、前記2つの立面のうちの他方と対面可能な側面とを有し、前記前端面と前記側面とでなす前記角部の角度が直角より小さくなるように前記側面が移動可能に構成されており、
前記筐体は、前記前端面を有する本体部と、前記側面を有する可動部とを備えてなり、
前記隅部進入部は、前記角部において前記本体部に前記可動部を上下方向の軸心を中心 に揺動可能に連結する軸部と、前記角部の角度を直角に近づける方向に前記可動部を付勢する付勢部材とをさらに有し、
前記前端面が左右方向に真っすぐ延びる面であり、前記吸込口は前記前端面に沿って左右方向に前記側面の近傍位置まで延びて
おり、
前記側面は、前記隅部進入部が前記2つの立面で囲まれた鋭角な隅部に進入すると、前記前端面と前記側面とでなす前記角部の角度が略直角な角度から鋭角な角度となるように移動することを特徴とする電気掃除機の吸込口体。
【請求項2】
前記隅部進入部は、被清掃面と対向する別の吸込口を前記可動部に有する請求項1に記載の吸込口体。
【請求項3】
前記本体部は、前記可動部を収納可能な可動部収納スペースを内部に有する請求項
1または2に記載の吸込口体。
【請求項4】
前記隅部進入部が、前記筐体の前記左端部および前記右端部にそれぞれ設けられている請求項1~3
のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項5】
送風部および集塵部を有する掃除機本体と、前記掃除機本体に直接または接続管を介して接続される請求項1~4のいずれか1つに記載の吸込口体とを備えた電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な電気掃除機の吸込口体は、例えば特許文献1に示すように、平面視形状が略長方形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面視形状が略長方形の従来の吸込口体では、例えば、住宅の階段の廻り踏み板における直角よりも小さい角度を有する隅部(以下、「直角未満の隅部」ということがある)に吸込口体の前端の角部が進入することができず、直角未満の隅部に溜まったダストを吸引除去することができない。
なお、階段以外の床面上の直角未満の隅部の清掃においても同様である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされた電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、被清掃面上を走行可能な筐体を備え、
前記筐体は、左右方向の左端部および右端部を有すると共に、前記被清掃面と対向する底部に吸込口を有し、
前記左端部および右端部のうちの少なくとも一方に、前記被清掃面および前記被清掃面上で隣接する2つの立面で囲まれた直角未満の角度を有する隅部に進入可能な角部を有する隅部進入部が設けられている電気掃除機の吸込口体が提供される。
また、本発明によれば、送風部および集塵部を有する掃除機本体と、前記掃除機本体に直接または接続管を介して接続される前記吸込口体とを備えた電気掃除機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、直角未満の隅部の清掃がしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の吸込口体を備えた電気掃除機を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の吸込口体の前端を階段のけこみ板に当接させた状態を説明する図である。
【
図5】第1実施形態の吸込口体にて階段の廻り踏み板上を清掃する状態を説明する図である。
【
図6】第1実施形態の吸込口体にて階段の廻り踏み板上の約45°の角度を有する隅部を清掃する状態を説明する底面側から視た図である。
【
図7】第2実施形態の吸込口体にて階段の踏み板上の略直角の隅部を清掃する状態を説明する図である。
【
図8】第2実施形態の吸込口体にて階段の踏み板上の略直角の隅部を清掃する状態を説明する図である。
【
図9】第2実施形態の吸込口体にて階段の廻り踏み板上の約45°の角度を有する隅部を清掃する状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
<電気掃除機の全体構成>
図1は本発明の第1実施形態の吸込口体を備えた電気掃除機を示す斜視図である。
図1に示すように、この電気掃除機1は、掃除機本体10と、掃除機本体10に着脱可能に保持されるバッテリー13と、吸込口体30と、吸込口体30と掃除機本体10とを気密的に接続する延長管20とを備える。
なお、
図1ではスティック型のコードレス電気掃除機を例示しているが、本発明の吸込口体30はキャニスター型、アップライト型等の電気掃除機にも適用可能である。
【0010】
掃除機本体10は、駆動装置11と、集塵装置12とを備える。
駆動装置11は、電動送風機(不図示)を収容する電動送風機収容部11aと、バッテリー13を着脱可能に保持するバッテリー保持部11bと、延長管20と着脱可能に接続される前方の接続筒部11cと、バッテリー保持部11bと接続筒部11cとに連設された後方のハンドル11dと、ハンドル11dに設けられた操作スイッチ11eと、バッテリー保持部11bと接続筒部11cとの間のスペースにて集塵装置12を着脱可能に保持する集塵装置保持部11fとを有する。
電動送風機収容部11aは、前方開口部(不図示)を有すると共に、右側面には排気口(不図示)が設けられている。
【0011】
集塵装置12は、内部に溜まったダストを廃棄する開口部を有する集塵容器12aと、集塵容器12aの開口部に着脱可能に装着されるフィルター部12bとを有する。
集塵容器12aは、駆動装置11の接続筒部11cにおける集塵装置保持部11f側に設けられた空気流出口(不図示)と接続可能な空気導入口(不図示)を周囲部に有している。
フィルター部12bは、集塵容器12aの開口部に着脱可能に嵌め込まれる筒状のカップ部(不図示)と、集塵容器12a内に収容されるようにカップ部に接続される筒状のメッシュ部(不図示)と、カップ部内に着脱可能に収納されるフィルター本体(不図示)と、カップ部の周囲を覆う筒状のカバー部12baとを有する。
駆動装置11に集塵装置12が保持された状態において、フィルター部12bのカバー部12baは駆動装置11の電動送風機収容部11aの前方開口部と接続する。
【0012】
このような構成を有する電気掃除機1において、駆動装置11の操作スイッチ11eをONすると、電動送風機が駆動し、塵埃含有空気が吸込口体30から延長管20および駆動装置11の接続筒部11cを介して集塵装置12の集塵容器12a内に流入する。
集塵容器12a内に流入した塵埃含有空気中の比較的大きな第1の塵埃の一部は、集塵容器12a内で遠心分離され、残りの第1の塵埃はメッシュ部にて捕捉される。第1の塵埃よりも小さい第2の塵埃を含む空気は、メッシュ部を通過し、第2の塵埃がフィルター本体にて捕捉される。第2の塵埃が除去された空気は、電動送風機収容部11a内に流入し、電動送風機を通過して排気口から外部へ排気される。
【0013】
<吸込口体の構成>
図2は第1実施形態の吸込口体の平面図であり、
図3は第1実施形態の吸込口体の底面図であり、
図4は第1実施形態の吸込口体の前端を階段のけこみ板に当接させた状態を説明する図である。なお、
図2~
図4において、吸込口体の前後左右方向を矢印にて示している。
【0014】
図2~
図4に示すように、吸込口体30は、吸込口本体31と、関節部38と、接続管部39とを備える。
吸込口本体31は、底部32aと周囲部32bと上部32cとを有する筐体32と、筐体32の底部32aの後部に設けられたローラ形の車輪33とを備える。
底部32aは、吸込口31aを有する吸込部32aaと、吸込部32aaの後端に設けられた車輪保持部32abとを有し、吸込部32aaは被清掃面Fと略平行な対向面を有している。
【0015】
吸込部32aaは、平面的に視て左右方向に延びる略台形に形成されており、略台形の下辺側が吸込部32aaの前端になっている。
この吸込部32aaの前端に沿って吸込口31aが設けられると共に、吸込部32aaにおける吸込口31aの後方の左右位置に一対のシート状部材31bが設けられている。
シート状部材31bは、例えば、基材上に起毛が設けられた起毛布からなる。なお、シート状部材31bは起毛布に限定されず、例えば、所定の厚さを有する不織布、織り布、編み布、発泡樹脂シート等の柔らかいシート素材でもよい。
【0016】
車輪保持部32abは、吸込部32aaの後端(略台形の上辺)の左右方向中間位置から後方へ突出しており、後部に車輪33の上部を収容する凹部31cが設けられている。また、車輪保持部32abにおける凹部31cの左右位置には、車輪33の左右方向の軸33aを回転可能に嵌め入れる嵌合溝が設けられている。
図4に示すように、吸込口体30が被清掃面F(RP1)上に載置された状態において、吸込口本体31は左右一対のシート状部材31bおよび車輪33によって支持されており、被清掃面F(RP1)上を前後方向に走行可能である。
【0017】
周囲部32bは、底部32aの吸込部32aaの全体および車輪保持部32abの左右両端を囲むように底部32aに連設されている。
この周囲部32bは、前端面32baと、左側面32bbと、右側面32bcとを有し、前端面32baと左側面32bbとの間および前端面32baと右側面32bcとの間がそれぞれ角部32dを有する隅部進入部32Dとなっている。
【0018】
左右の隅部進入部32Dにおいて、各角部32dの角度θ1(
図2参照)はそれぞれ90°未満とされ、好ましくは60°以下であり、さらに好ましくは45°以下である。本実施形態では、一対の角部32dの角度がそれぞれ45°の場合を例示している。なお、各角部32dの角度θ1は互いに同一でもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0019】
各角部32dの外面には、シート状のクッション部材31dがそれぞれ設けられている。
クッション部材31dとしては、シート状部材31bと同様に、起毛布、不織布、織り布、編み布、発泡樹脂シート等の柔らかいシート素材を用いることができる。
上部32cは、上方から底部32aの吸込部32aaを覆うように周囲部32bに連設されており、後部の左右方向中間部には後方へ開口する筒状の接続部32caが設けられている。なお、底部32aと周囲部32bとを一体とし、上部32cはこれとは別体とし、これらを組み合わせて筐体としてもよい。あるいは、周囲部32bの一部と上部32cが一体となり、周囲部32bの残り部分と底部32aが一体となり、それらを組み立てて筐体を構成してもよい。
【0020】
関節部38は、吸込口本体31の接続部32caに前後方向の第1軸心P1を中心として回動可能かつ気密的に接続されている。
接続管部39は、関節部38の後端に設けられた嵌合凹部38aに、第1軸心P1と直交する方向の第2軸心P2を中心として回動可能に接続される接続端部39aを有している。
【0021】
<吸込口体による階段の清掃について>
図5は第1実施形態の吸込口体にて階段の廻り踏み板上を清掃する状態を説明する図であり、
図6は第1実施形態の吸込口体にて階段の廻り踏み板上の約45°の角度を有する隅部を清掃する状態を説明する底面側から視た図である。
住宅の階段として、
図5に示すように、複数の廻り踏み板を有する階段がある。本実施形態では、4枚の第1~第4廻り踏み板にRP1~RP4よって矢印A方向に下から上へ上がるにつれて180°方向転換する階段Gを例示している。
【0022】
図5に示した階段Gにおいて、第1廻り踏み板RP1の2個所および第3廻り踏み板RP3の1個所には、従来の平面視略長方形の吸込口体の前端角部では進入できない約45°の角度を有する隅部K1~K3が存在する。
第1廻り踏み板RP1において、階段Gを上がるときの右側の隅部K1は第1廻り踏み板(被清掃面)RP1と外側の側桁(立面)M1とけこみ板(立面)Nとで囲まれた隅部であり、左側の隅部K2は第1廻り踏み板(被清掃面)RP1と内側の側桁(立面)M2とけこみ板(立面)Nとで囲まれた隅部である。
また、第3廻り踏み板RP3において、階段を上がるときの右側の隅部K3は第3廻り踏み板(被清掃面)RP3と外側の側桁(立面)M1とけこみ板(立面)Nとで囲まれた隅部である。
【0023】
図1で示したスティック型電気掃除機1は、
図5で示した階段Gを有する住宅(例えば2階建て住宅)を清掃する場合、1階または2階の床面の清掃から階段Gの清掃に移る際、延長管20から吸込口体30を取り外してアタッチメント(細口ノズル、ブラシノズル等)に付け替える、あるいは掃除機本体10から延長管20を取り外してアタッチメントに付け替えるといった手間が不要となる。つまり、階段Gの清掃において、本発明の吸込口体30を用いれば、従来ではアタッチメントに付け替えて清掃していた鋭角な隅部K1~K3も清掃することができる。
【0024】
詳しく説明すると、
図4~
図6に示すように、延長管20に接続した吸込口体30にて階段Gの第1および第3廻り踏み板RP1、RP3を清掃する際、吸込口体30の右または左の鋭角な隅部進入部32Dを鋭角な隅部K1~K3に進入させて吸込口31aを隅部K1~K3に近接させることができる。この結果、隅部K1~K3に溜まったダストDを吸込口31aから吸引して除去することができる。なお、
図6において、隅部K1は、廻り踏み板(不図示)上における外側の側桁M1とけこみ板Nと点線とで囲まれた領域である。
【0025】
このとき、
図4と
図6に示すように、吸込口本体31の右の隅部進入部32Dのクッション部材31dが外側の側桁M1とけこみ板Nとに当接すると共に、左の隅部進入部32Dのクッション部材31dがけこみ板Nに当接することにより、吸込口本体31の右の角部32dと隅部K1の奧との間に隙間S1が形成され、吸込口本体31の前端面32baとけこみ板Nとの間に隙間S2が形成される。そのため、吸引時に上方から各隙間S1、S2内に空気が流入し、隅部K1のダストおよびけこみ板N際のダストが空気と共に吸込口31aへ吸引される。また、クッション部材31dによりけこみ板Nおよび側桁M1の傷付きが抑制される。
【0026】
このように、吸込口体30によって階段Gの鋭角な隅部K1~K3をきれいに清掃できるため、階段Gにおける他の箇所もきれいに清掃することができ、延長管20にアタッチメントを付け替える手間が不要となる。また、階段以外の床面上における直角未満の隅部の清掃においても同様にアタッチメントの付け替えが不要となる。
これに対し、従来の略長方形の吸込口体を用いる場合、例えば、スティック型電気掃除機にて1階の床面を清掃した後、掃除機本体から吸込口体が接続された延長管を取り外してアタッチメントに付け替えて階段を下から上へ順に掃除し、その後、掃除機本体からアタッチメントを取り外して吸込口体が接続された延長管を再び付け替えて2階の床面を清掃することとなる。あるいは、掃除機本体に延長管を介して吸込口体を接続したスティック型電気掃除機にて2階の床面を清掃した後、延長管から吸込口体を取り外してアタッチメント(細口ノズル、ブラシノズル等)に付け替えて階段を上から下へ順に掃除し、その後、延長管からアタッチメントを取り外して吸込口体を再び付け替えて1階の床面を清掃することとなる。このように、従来の吸込口体を用いた場合、床面の清掃と階段の清掃との間で吸込口体とアタッチメントの付け替えが必要となり手間となっていた。
【0027】
なお、本実施形態では、吸込口本体31の隅部進入部32Dの角度θ1(
図2参照)が45°の場合を例示したが、約45°の角度を有する階段Gの隅部K1~K3に対して、隅部進入部32Dの角度θ1は45°未満(例えば30°程度)でもよい。また、階段Gの隅部の角度が例えば60°程度である場合は、吸込口本体31の隅部進入部32Dの角度θ1は60°程度でもよいが、角度θ1をできるだけ小さく設定しておくことにより様々な角度の隅部に対応することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の吸込口体にて階段の踏み板上の略直角の隅部を清掃する状態を説明する図であり、
図8は第2実施形態の吸込口体にて階段の踏み板上の略直角の隅部を清掃する状態を説明する図であり、
図9は第2実施形態の吸込口体にて階段の廻り踏み板上の約45°の角度を有する隅部を清掃する状態を説明する図である。なお、
図7~
図9において、
図1~
図6中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
第2実施形態の吸込口体130は、左右の隅部進入部132Dの構成が第1実施形態と異なる以外は、第1実施形態と概ね同様に構成されている。以下、第2実施形態における第1実施形態とは異なる点を主に説明する。
【0029】
図7~
図9に示すように、第2実施形態の吸込口体130において、左右の隅部進入部132Dは、前端面132abと、左側面132ba、右側面132caとを有し、前端面132abと左側面132baまたは右側面132caとでなす角部132dの角度θ2が直角より小さくなるように左側面132baまたは右側面132caが移動可能に構成されている。
【0030】
具体的に本実施形態の吸込口体130の構成を説明すると、吸込口本体131の筐体132は、前端面132abを有しかつ平面視台形に形成された本体部132aと、左側面132baを有する左可動部132bと、右側面132caを有する右可動部132cとを有してなる。
また、右の隅部進入部132Dは、右の角部132dにおいて本体部132に右可動部132cを上下方向の軸心を中心に揺動可能に連結する軸部141と、右の角部132dの角度θ2を直角に近づける方向に右可動部132cを付勢する付勢部材142とを有する。
【0031】
また、左の隅部進入部132Dも右の隅部進入部132Dと同様に、左の角部132dにおいて本体部132に左可動部132bを上下方向の軸心を中心に揺動可能に連結する軸部141と、左の角部132dの角度θ2を直角に近づける方向に左可動部132bを付勢する付勢部材(
図8参照)とを有する。
なお、左右の隅部進入部132Dにおいて、付勢部材142としては、例えば、弾性発泡体、圧縮コイルバネ、板バネ等を用いることができ、本実施形態では円弧形の弾性発泡体が用いられている。
【0032】
また、本体部132aの前端面132abの左右両端側にはクッション部材131dがそれぞれ設けられると共に、左可動部132bの左側面132bbと右可動部132cの右側面132bcにはクッション部材131eがそれぞれ設けられている。
【0033】
また、本体部132aは、右可動部132cを内部に収納可能な右可動部収納スペース132aaと、右可動部収納スペース132aaと連通するように本体部132aの右側面に設けられた右開口部132abとを有する。また、本体部132aは、左可動部132bを内部に収納可能な左可動部収納スペース132acと、左可動部収納スペース132acと連通するように本体部132aの左側面に設けられた左開口部132adとを有する。右開口部132abの縁および左開口部132adの縁にそれぞれには、シール部材132aeが設けられている。なお、シール部材132aeは、吸込口本体131の底部に設けられたシート状部材31bと同じ素材で形成することができる。
【0034】
右可動部132cは、平面視扇形に形成されており、その扇形の要部分に軸部141を挿通させるボス部が設けられている。なお、本体部132aの右開口部132abにおける軸部141の両端を枢支する個所にもボス部が設けられている。
また、右可動部132cは、右側面132caとは反対側に開口部132cbを有すると共に、底部に複数の吸込口132ccを有している。
左可動部132bは、右可動部132cと左右対称的な構造を有し、左側面132baとは反対側に開口部(不図示)を有すると共に、底部に複数の吸込口132bcを有している。なお、本体部132aの左開口部132adにおける軸部141の両端を枢支する個所にもボス部が設けられている。
【0035】
また、右可動部132cは開口部132cbの軸部141とは反対側の端部にストッパ片132cdが設けられ、左可動部132bも同様に開口部(不図示)の軸部141とは反対側の端部にストッパ片(不図示)が設けられている。
一方、本体部132aの前端面132abの裏面には、右可動部132cおよび左可動部132bが各軸部141を中心に本体部132a側(内方)へ揺動したときに各ストッパ片132cdと当接するストッパ凸部132afが設けられている。
【0036】
右可動部132cおよび左可動部132bの各ストッパ片132cdが各ストッパ凸部132afに当接することによって、右可動部132cおよび左可動部132bの内方への揺動が規制されている(
図9参照)。このときの左右の隅部進入部132Dの最小の角度θ2としては60°以下が好ましく、45°以下がさらに好ましい。本実施形態の場合、最小の角度θ2は50°程度となっている。
【0037】
右の隅部進入部132Dにおいて、円弧形の付勢部材142は、その一端が本体部132aの前端面132abの裏面に当接し、他端が右可動部132cの右側面132caの裏面に当接している。これにより、右可動部132cは付勢部材142によって外部へ突出する方向に付勢され、ストッパ片132cdがシール部材132aeに当接することによって右可動部132cの外方への揺動が規制される(
図7参照)。
左の隅部進入部132Dにおいても、右の隅部進入部132Dと同様に構成されている。
左右の隅部進入部132Dが最も外方へ突出したときの最大の角度θ2は、本実施形態では90°となっている。
【0038】
<吸込口体による階段の清掃について>
図5で説明した階段Gの長方形の踏み板P上を本実施形態の吸込口体130を用いて清掃する場合、
図7に示すように、けこみ板Nに吸込口本体131の前端面132abを対面させ、かつ、外側の側桁M1に右可動部132cの左側面132caを対面させることができる。そのため、踏み板P上の90°の隅部Kを含むけこみ板N際および側桁M1際に吸込口31a、132ccが近接し、隅部Kを含むけこみ板N際および側桁M1際のダストが吸込口31a、132ccへ吸い込まれる。
【0039】
このとき、本体部132aの右開口部132abには右可動部132cの外面と当接するシール部材132aeが設けられているため、右可動部132cにおいては吸込口132cc以外の隙間からの空気の流入が抑えられており、吸込口31a、132ccの吸引力の低下が抑えられている。
なお、踏み板Pのけこみ板Nに吸込口本体131の前端面132abを対面させ、かつ、内側の側桁M2に左可動部132bの左側面132baを対面させて清掃する場合も同様であり、90°の隅部Kを有する第2および第4廻り踏み板RP2、RP4を清掃する場合も同様である。
【0040】
また、
図5で説明した階段Gの第1廻り踏み板RP1上の鋭角な隅部K1を本実施形態の吸込口体130を用いて清掃する場合、
図9に示すように、右の隅部進入部132Dを隅部K1に進入させることにより、クッション部材131eを介して右可動部132cが外側の側桁M1にて押圧されて内方へ揺動する。これにより、第1廻り踏み板RP1上のけこみ板Nに吸込口本体131の前端面132abを対面させ、かつ、外側の側桁M1に右可動部132cの左側面132caを対面させることができる。そのため、第1廻り踏み板RP1上の鋭角な隅部K1を含むけこみ板N際および側桁M1際に吸込口31a、132ccが近接し、隅部K1を含むけこみ板N際および側桁M1際のダストが吸込口31a、132ccへ吸い込まれる。
【0041】
このときも、右可動部132cにおいてはシール部材132aeによって吸込口132cc以外の隙間からの空気の流入が抑えられており、吸込口31a、132ccの吸引力の低下が抑えられている。
なお、第1廻り踏み板RP1のけこみ板Nに吸込口本体131の前端面132abを対面させ、かつ、内側の側桁M2に左可動部132bの左側面132baを対面させて鋭角な隅部K2を清掃する場合も同様であり、第3廻り踏み板RP3の鋭角な隅部K3を清掃する場合も同様である。
【0042】
(第3実施形態)
第1実施形態では三角形の一角を角部として有する隅部進入部を備えた吸込口体を例示したが、隅部進入部は三角形に限定されず、例えば、左右方向に延びる棒形であってもよい。またこの場合、吸込口が棒形の隅部進入部まで設けられるようにしてもよく、棒形の隅部進入部の先端に三角形の角部を設けてもよい。
【0043】
(第4実施形態)
第1および第2実施形態の吸込口体において、吸込口31aに電動式回転ブラシまたはタービンブラシを設けてもよい。この場合、第2実施形態の吸込口体においては、左右の可動部の揺動に干渉しないように電動式回転ブラシまたはタービンブラシを配置する。
【0044】
(まとめ)
本発明の電気掃除機の吸込口体は、被清掃面上を走行可能な筐体を備え、
前記筐体は、左右方向の左端部および右端部を有すると共に、前記被清掃面と対向する底部に吸込口を有し、
前記左端部および右端部のうちの少なくとも一方に、前記被清掃面および前記被清掃面上で隣接する2つの立面で囲まれた直角未満の角度を有する隅部に進入可能な角部を有する隅部進入部が設けられているものである。
この構成によれば、例えば、住宅の階段の廻り踏み板における直角よりも小さい角度を有する隅部、つまり、階段のけこみ板(立面)と側桁(立面)とが直角未満で交わる個所における廻り踏み板(被清掃面)上の隅部に、吸込口体の隅部進入部の角部を進入させてきれいに清掃することができる。そのため、従来のように床面の清掃と階段の清掃との間で吸込口体とアタッチメントとを付け替えるといった手間が不要となる。
また、階段以外の床面上の直角未満の隅部、つまり、隣接する2つの壁面(立面)が直角未満で交わる個所における床面(被清掃面)上の隅部の清掃においても、アタッチメントに付け替えることなく吸込口体にて清掃することが可能となる。
【0045】
本発明の電気掃除機の吸込口体は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0046】
・前記隅部進入部は、前記2つの立面のうちの一方と対面可能な前端面と、前記2つの立面のうちの他方と対面可能な側面とを有し、
前記前端面と前記側面とでなす前記角部の角度が直角より小さく設定されてもよい。
この構成によれば、被清掃面上の直角未満の隅部の清掃において、吸込口体の吸込口の前部へ一方の立面際のダストを吸い込み、かつ、吸込口体の吸込口の側部へ他方の立面際のダストを吸い込むことができる。
【0047】
・前記隅部進入部は、前記2つの立面のうちの一方と対面可能な前端面と、前記2つの立面のうちの他方と対面可能な側面とを有し、前記前端面と前記側面とでなす前記角部の角度が直角より小さくなるように前記側面が移動可能に構成されてもよい。
この構成によれば、被清掃面上の直角の隅部の清掃において、吸込口体の吸込口の前部へ一方の立面際のダストを吸い込み、かつ、吸込口体の吸込口の側部へ他方の立面際のダストを吸い込むことができる。また、被清掃面上の直角未満の隅部の清掃の際には、吸込口体の隅部進入部の角部を隅部に進入させることにより、隅部進入部の角部の角度が隅部の角度に応じて小さくなるように側面が移動して他方の立面と対面する。これにより、吸込口体の吸込口の前部へ一方の立面際のダストを吸い込み、かつ、吸込口体の吸込口の側部へ他方の立面際のダストを吸い込むことができる。
【0048】
・前記筐体は、前記前端面を有する本体部と、前記側面を有する可動部とを備えてなり、
前記隅部進入部は、前記角部において前記本体部に前記可動部を上下方向の軸心を中心に揺動可能に連結する軸部と、前記角部の角度を直角に近づける方向に前記可動部を付勢する付勢部材とを有し、
前記本体部は、前記可動部を収納可能な可動部収納スペースを内部に有するものであってもよい。
この構成によれば、直角以下の様々な角度を有する隅部に対応可能な隅部進入部を簡素な構造で構成することができる。
【0049】
・前記隅部進入部が、前記筐体の前記左端部および前記右端部にそれぞれ設けられてもよい。
この構成によれば、吸込口体の前進方向の左側にある隅部には左の隅部進入部を進入させ、右側にある隅部には右の隅部進入部を進入させて清掃することができる。そのため、ユーザーが体勢を大きく変えることなく屋内の様々な隅部を容易に清掃することができて便利となる。
【0050】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 電気掃除機
10 掃除機本体
11 駆動装置(送風部)
12 集塵装置(集塵部)
20 延長管(接続管)
30、130 吸込口体
32、132 筐体
31a 吸込口
32a 底部
32ba、132ab 前端面
32bb、132ba 左側面
32bc、132ca 右側面
32D、132D 隅部進入部
32d、132d 角部
132a 本体部
132aa 右可動部収納スペース
132ac 左可動部収納スペース
132b 左可動部
132c 右可動部
141 軸部
142 付勢部材
K、K1~K4 隅部
M1 外側の側桁(立面)
M2 内側の側桁(立面)
N けこみ板(立面)
P 踏み板(被清掃面)
RP1~RP4 第1~第4廻り踏み板(被清掃面)
θ1、θ2 角度