(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】決定装置、決定方法および決定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2019133765
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 崇史
(72)【発明者】
【氏名】田平 章人
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021682(JP,A)
【文献】特開2005-135208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行エリアを走行する各車両
から、当該車両の走行環境を示す環境情報として、
自動車の走行状態に関する情報と、走行環境に関する情報とを示す環境情報を取得する取得部と、
前記車両ごとに取得された環境情報を、環境情報ごとにあらかじめ定められた自由確率を示す行列であって、テンソル積に基づく期待値が交通態様を示す値となるようにあらかじめ定められた行列に変換し、変換後の各行列のテンソル積に基づいて、前記所定の走行エリアにおける交通態様を示す期待値を算出し、算出した期待値に基づいて、当該所定の走行エリアにおける交通態様を動的に決定する決定部と
を備えることを特徴とする決定装置。
【請求項2】
前記決定部は、
第1車両に対応する環境情報に基づく第1行列と、
第2車両に対応する環境情報に基づく第2行列との前記テンソル積に
所定の第1単位ベクトルを積算したものと、
所定の第2単位ベクトルとの内積を、前記第1単位ベクトルと、前記第2単位ベクトルとの内積とする内積空間に基づいて、前記交通態様を決定すること
を特徴とする請求項
1に記載の決定装置。
【請求項3】
前記決定部は、
前記行列に対応するランダム行列に基づいて、前記交通態様を決定すること
を特徴とする請求項
1または2に記載の決定装置。
【請求項4】
コンピュータが実行する決定方法であって、
所定の走行エリアを走行する各車両
から、当該車両の走行環境を示す環境情報として、
自動車の走行状態に関する情報と、走行環境に関する情報とを示す環境情報を取得する取得工程と、
前記車両ごとに取得された環境情報を、環境情報ごとにあらかじめ定められた自由確率を示す行列であって、テンソル積に基づく期待値が交通態様を示す値となるようにあらかじめ定められた行列に変換し、変換後の各行列のテンソル積に基づいて、前記所定の走行エリアにおける交通態様を示す期待値を算出し、算出した期待値に基づいて、当該所定の走行エリアにおける交通態様を動的に決定する決定工程と
を含むことを特徴とする決定方法。
【請求項5】
所定の走行エリアを走行する各車両
から、当該車両の走行環境を示す環境情報として、
自動車の走行状態に関する情報と、走行環境に関する情報とを示す環境情報を取得する取得手順と、
前記車両ごとに取得された環境情報を、環境情報ごとにあらかじめ定められた自由確率を示す行列であって、テンソル積に基づく期待値が交通態様を示す値となるようにあらかじめ定められた行列に変換し、変換後の各行列のテンソル積に基づいて、前記所定の走行エリアにおける交通態様を示す期待値を算出し、算出した期待値に基づいて、当該所定の走行エリアにおける交通態様を動的に決定する決定手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決定装置、決定方法および決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、路側帯に設置されたセンサによって障害物が検出された場合に、障害物と衝突しないように自動運転車両を制御する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した技術は、センサが設置された一部の区間でしか、自動運転車両を制御できず、交通態様を適切に制御する点において改善の余地があった。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、交通態様を適切に制御することができる決定装置、決定方法および決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る決定装置は、取得部と、決定部とを備える。前記取得部は、各車両の走行環境を示す環境情報を取得する。前記決定部は、前記取得部によって取得された前記環境情報をそれぞれ関数と見做し、複数の前記関数に基づいて、所定地域における交通態様を動的に決定する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、交通態様を適切に制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る決定装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る環境情報データベースの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、自由確率論の表現する自由群を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、自由確率とランダム行列との関係性を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る決定装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、決定装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る決定装置、決定方法および決定プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る決定装置、決定方法および決定プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。なお、以下では、説明を分かりやすくする観点から、決定装置10が、「交通態様」として制限速度を決定する場合を例に挙げて説明する。
【0010】
〔1.情報処理〕
まず、
図1を用いて、実施形態に係る決定装置が行う情報処理の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
図1には、実施形態に係る決定装置10を含む情報処理システムを示している。
図1の例において、情報処理システムは、決定装置10と、複数の車載装置50とを含む。なお、
図1に示す例では、各車両が異なる走行エリアA1~A3を走行していることを示す。なお、以下では、走行エリアA1~A3を区別しない場合に、単に走行エリアAと記載する。走行エリアAの範囲は、設定により任意の範囲とすることができる。
【0011】
車載装置50は、自動運転車両(以下、単に車両とも記載する)に搭載された通信端末である。車載装置50は、自動運転車両の現在の走行速度、舵角、などといった走行情報を決定装置10へ送信する。また、車載装置50は、決定装置10によって決定された制限速度を車両の制御装置へ通知する。これにより、各車両は、決定装置10によって決定された制限速度に沿って走行することとなる。
【0012】
決定装置10は、各自動運転車両の交通態様を決定するサーバ装置である。決定装置10は、各車両の走行環境を示す環境情報を取得するとともに、かかる環境情報を関数と見做し、所定地域における交通態様を動的に決定する。
【0013】
つまり、決定装置10は、制限速度などといった道路標識などを動的に決定する。具体的には、
図1に示すように、まず、決定装置10は、各車載装置50から走行情報を取得する(ステップS1)。ここで、走行情報は、車両の現在の走行状態に関する情報であり、上述のように、車速や舵角、車間距離などが含まれる。
【0014】
また、走行情報は、環境情報の一例であり、環境情報には、その他、天候情報や、カーブのR値など、走行環境に関するあらゆる情報が含まれる。なお、決定装置10は、環境情報について、図示しないサーバ装置や、インフラに設置された各種センサなどから取得することも可能である。
【0015】
続いて、決定装置10は、走行情報を含む環境情報に基づいて、所定地域における交通態様を決定する(ステップS2)。具体的には、決定装置10は、各環境情報を関数と見做し、関数に基づいて交通態様を決定する。
【0016】
決定装置10は、各環境情報(関数)を対応する行列の一つの要素と見做し、交通態様を決定する。具体的には、環境情報ごとに対応する行列を準備しておく。
図1に示す行列F1や、行列F2は、それぞれ走行速度、舵角などといった各環境情報に対応し、それぞれ自由確率を示す行列である。
【0017】
また、各車載装置50から送信される走行情報は、位置情報を含み、決定装置10は、位置情報に基づいて、関数を行列の各要素に入力する。つまり、行列の各要素には、位置に対応する関数が入力されることになる。
【0018】
続いて、決定装置10は、行列F1と行列F2とのテンソル積Tを算出する。決定装置10は、それぞれの環境情報に対応する複数の行列を組み合わせることで、交通態様に対応する新たな枠組みを自在に構築することが可能となる。
【0019】
続いて、決定装置10は、テンソル積Tに基づいて、内積空間を設定する。例えば、決定装置10は、第1単位ベクトルe1と、テンソル積Tと第2単位ベクトルe2との内積φを第1単位ベクトルe1と、第2単位ベクトルe2との内積とする内積空間を設定する。
【0020】
そして、決定装置10は、上記の内積空間に基づいて、所定の走行エリアAにおける期待値を算出する。具体的には、汎関数を下記(式1)とした場合、(式2)によって期待値を導出することができる。なお、(式1)において、Ftは内積演算を示し、()内のfはベクトルを示す。
【数1】
【0021】
(式2)において導出される期待値(固有値)は、所定の走行エリアAにおける期待値であり、行列F1と、行列F2とのそれぞれに対応する環境情報を考慮した値となる。
【0022】
なお、決定装置10は、3種類以上の環境情報を示す行列を適宜、組み合わせて、期待値を算出することも可能である。つまり、環境情報を適宜組み合わせることで、外乱情報を任意に変更することが可能である。
【0023】
そして、決定装置10は、かかる走行エリアAの期待値に応じて、かかる走行エリアAにおける制限速度を決定する。また、決定装置10は、(式2)に基づき、異なる走行エリアAの期待値を随時算出することで、各走行エリアAにおける制限速度を決定することができる。
【0024】
なお、決定装置10が決定する交通態様は、制限速度に限られず、交通規則全般とすることにしてもよいし、各走行エリアAにおける走行ルートなどを含むようにしてもよい。交通規則には、例えば、制限速度に加え、一時停止の設定または解除、片側の車線数の変更、信号機の点灯タイミングなどが含まれる。
【0025】
そして、決定装置10は、各走行エリアAにおいて決定した制限速度に関する情報を各車載装置50へ配信する(ステップS3)。これにより、各車両は、決定装置10によって決定された交通態様に沿って走行することが可能となるので、各車両の走行態様を適切に制御することができる。
【0026】
そして、決定装置10は、上述したステップS1~ステップS3の処理を繰り返し行うことで、各走行エリアAの交通態様を動的に決定することができる。つまり、決定装置10は、ある走行エリアAについて、40km/hとした制限速度を、環境情報を考慮して、5分後に60Km/hへ変更することができる。
【0027】
このように、決定装置10は、自由確率に基づいて期待値を導出することで、1つの走行エリアAの環境情報のみならず、その他の走行エリアAの環境情報を考慮して、1つの走行エリアAにおける期待値を算出する。
【0028】
また、決定装置10は、あらゆる種別のデータ(環境情報)の組み合わせによって、期待値を算出することが可能となるので、走行エリアAにおける期待値を適切に算出することが可能となる。
【0029】
したがって、決定装置10によれば、交通態様を適切に制御することが可能となる。
【0030】
〔2.決定装置の構成〕
次に、
図2を用いて、実施形態に係る決定装置10の構成例について説明する。
図2は、実施形態に係る決定装置10のブロック図である。
【0031】
図2に示すように、決定装置10は、通信部20と、記憶部30と、制御部40とを備える。通信部20は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部20は、ネットワークNと有線または無線で接続され、各車載装置50との間で情報の送受信を行う。
【0032】
記憶部30は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。また、記憶部30は、環境情報データベース31および態様情報データベース32を記憶する。
【0033】
環境情報データベース31は、各走行エリアAの走行環境を示す情報が登録されたデータベースである。
図3は、実施形態に係る環境情報データベース31の一例を示す図である。
【0034】
図3に示すように、環境情報データベース31には、「車両ID」、「位置情報」、「車速」、「舵角」などが互いに関連付けられて登録される。車両IDは、車両、つまり、車載装置50を識別する識別子であり、位置情報は、対応する車両の現在の位置を示す。なお、位置情報は、走行エリアAであってもよいし、緯度経度などであってもよい。
【0035】
車速は、車両の現在の走行速度を示し、舵角は、車両の現在の舵角を示す。車速を「S♯1」、舵角を「A♯1」などといった概念的に示したが、実際には、対応する関数が登録されることになる。なお、
図3に示した環境情報データベースは、一例であり、環境情報データベース31には、その他、地図情報や、天候情報、歩行者に関する情報などが登録される。
【0036】
図2の説明に戻り、態様情報データベース32について説明する。態様情報データベース32には、走行エリアAごとに決定した交通態様に関する情報が登録される。なお、態様情報データベース32には、車両ごとに決定した交通態様に関する情報が登録することにしてもよい。
【0037】
制御部40について説明する。制御部40は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサによって、決定装置10内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部40は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0038】
図2に示すように、制御部40は、取得部41と、決定部42と、配信部43とを備える。取得部41は、各車両の走行環境を示す環境情報を取得し、環境情報データベース31へ登録する。
【0039】
上述のように、環境情報には、車両の走行状態を示す走行情報や、天候やカーブのR値などといった情報が含まれる。取得部41は、各車載装置50から走行情報を取得し、天候情報などを図示しないサーバ装置から取得する。なお、取得部41は、インフラに設置された各種センサから環境情報を取得することにしてもよい。
【0040】
また、取得部41は、環境情報として、歩行者に関する情報などを含むようにしてもよく、各走行エリアAの店舗に関する情報(例えば、混雑具合など)などを含むようにしてもよい。
【0041】
決定部42は、取得部41によって取得された環境情報をそれぞれ関数と見做し、複数の関数に基づいて、所定地域(走行エリアA)における交通態様を動的に決定する。具体的には、まず、決定部42は、それぞれ環境情報に対応し、それぞれ自由確率を示す行列をランダム行列で表現する。
【0042】
ここで、
図4および
図5を用いて、自由確率論について説明する。
図4は、自由確率論の表現する自由群を説明する説明図である。
図5は、自由確率とランダム行列との関係性を説明する説明図である。
【0043】
図4に示すように、自由確率論に基づく演算空間である自由群は、要素i(ただし、i=1,2,・・・,N(自然数)。)に関する生成作用素g
iと、要素iに関する消滅作用素g
i
-1とを用いて、言語をg
iやg
i
-1等の積で表現し、言語の無い状態を示す空語をg
i
-1g
i=g
ig
i
-1=e(ただし、eは真空状態。)で表現することができる。
【0044】
ここで、生成作用素g
iや消滅作用素g
i
-1は、それぞれ
図1に示した行列F1や行列F2、または、各行列F1、F2に対応するランダム行列に対応する。
【0045】
続いて、ランダム行列について説明する。ランダム行列は、行列要素がなんらかの確率法則あるいは確率分布に従う確率変数(乱数)として与えられると仮定する行列モデルである。
【0046】
ランダム行列Sは、具体的には、
図5に示すように、測度論的確率論である古典確率論における確率空間(Ω,F,P)(ただし、Ωは標本空間、Fは事象の集合、Pは確率測度)において、N×N複素行列全体のなす対合環M
N(C)(ただし、Cは複素数空間)に値を取り、なおかつ、Ωから対合環M
N(C)への写像である可測関数として表現される。ここで、対合環は、*環と記載されることもあり、環構造と両立する対合(共軛演算、随伴)を備える代数系である。
【0047】
ランダム行列Sの各要素Sijは、古典確率変数である。このため、このランダム行列Sは、全体として、自由確率論における確率空間(A,φ)(ただし、Aは作用素環、対合環及び確率変数等、φは状態、線形演算子及び期待値等)における自由確率変数となっている。なお、自由確率論における確率空間は、代数的確率空間であり、非可換確率空間である。
【0048】
このように、ランダム行列は、全体として自由確率変数になっているので、自由確率論に基づく演算空間である自由群を好適に表現することができる。決定部42は、このランダム行列と自由確率との関係性を活用して、所定の自由確率を示す行列をランダム行列で表現する。なお、自由確率を示す行列やランダム行列について、例えば、等質樹木などのグラフ理論を適用することにしてもよい。
【0049】
特に、行列の各要素は、確率変数であり、行列の次元が無限大となる。このため、行列をランダム行列で表現することで、グラフ理論への適用が容易となる。
【0050】
その後、決定部42は、自由確率を示すランダム行列に基づき、テンソル積Tを導出し、
図1に示す内積φを導出する。そして、決定装置10は、導出した内積φに基づいて、上記した(式1)および(式2)を用いて期待値を算出する。
【0051】
なお、決定部42は、ランダム行列をさらに対応するモナドで表現し、かかるモナドに基づいて、期待値を算出することにしてもよい。決定部42は、ランダム行列を構成する生成作用素gi及び消滅作用素gi
-1にそれぞれ対応する関手に変換することで、対応するモナドで表現することが可能である。
【0052】
その後、決定部42は、期待値に基づいて、走行エリアAの制限速度を決定し、態様情報データベース32に格納する。このように、決定部42は、自由確率によって基底変換を行うことによって、大量データにおける座標空間を構築することが可能となる。
【0053】
配信部43は、決定部42によって決定された交通態様を各車載装置50へ配信する。例えば、配信部43は、態様情報データベース32から各走行エリアAの制限速度に関数情報を抽出し、かかる制限速度に基づくマップを生成する。かかるマップには、例えば、各走行エリアAにおける制限速度に関する情報が含まれる。
【0054】
配信部43は、かかるマップを各車載装置50へ配信することで、各車両に対して制限速度を通知することができる。なお、配信部43は、マップに代えて、車両の現在の位置情報に応じた制限速度に関する情報のみを各車載装置50へ通知することにしてもよい。
【0055】
また、配信部43は、制限速度が変更された場合にのみ、制限速度に関する情報を配信することにしてもよい。
【0056】
〔3.情報処理のフロー〕
次に、
図6を用いて、実施形態に係る決定装置10が実行する処理手順について説明する。
図6は、実施形態に係る決定装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、
図6には、1サイクルの処理手順を示すが、実際には、制御部40によって繰り返し実行される。
【0057】
図6に示すように、決定装置10は、環境情報を取得すると(ステップS101)、テンソル積Tを算出する(ステップS102)。続いて、決定装置10は、テンソル積Tに基づいて、内積空間を設定し(ステップS103)、内積空間に基づいて期待値を算出する(ステップS104)。
【0058】
続いて、決定装置10は、期待値に基づいて交通態様を決定し(ステップS105)、各車載装置50へ交通態様を配信して(ステップS106)、処理を終了する。
【0059】
〔4.ハードウェア構成〕
上述してきた実施形態に係る決定装置10は、例えば
図4に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図4は、決定装置10の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0060】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に記憶されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を記憶する。
【0061】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を記憶する。通信インターフェイス1500は、通信網500を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、通信網500を介して他の機器へ送信する。
【0062】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して生成したデータを出力装置へ出力する。
【0063】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に記憶されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0064】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る決定装置10として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部40の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部30内のデータが記憶される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から通信網500を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0065】
〔5.効果〕
上述したように、実施形態に係る決定装置10は、取得部41と、決定部42とを備える。取得部41は、各車両の走行環境を示す環境情報を取得する。決定部42は、取得部41によって取得された環境情報をそれぞれ関数と見做し、複数の関数に基づいて、所定地域における交通態様を動的に決定する。
【0066】
したがって、実施形態に係る決定装置10によれば、交通態様を適切に制御することができる。
【0067】
また、実施形態に係る決定装置10において、決定部42は、自由確率を示す行列に基づいて交通態様を決定し、関数それぞれを行列内の1つの成分と見做して、交通態様を決定する。
【0068】
したがって、実施形態に係る決定装置10によれば、自由確率に基づいて、期待値を算出することができるので、膨大なデータを取り扱うことができる。
【0069】
また、実施形態に係る決定装置10において、環境情報は、位置情報を含み、決定部42は、位置情報に基づいて行列の各要素に関数を入力する。
【0070】
したがって、実施形態に係る決定装置10によれば、位置を考慮した期待値を算出することができるので、期待値の精度を向上させることができる。
【0071】
また、実施形態に係る決定装置10において、決定部42は、環境情報にそれぞれ対応する複数の行列のテンソル積に基づいて、交通態様を決定する。
【0072】
したがって、実施形態に係る決定装置10によれば、多様な外乱情報を考慮して、期待値を算出することができる。
【0073】
また、実施形態に係る決定装置10において、決定部42は、第1行列と第2行列とのテンソル積に第1単位ベクトルを積算したものと、第2単位ベクトルとの内積を、第1単位ベクトルと、第2単位ベクトルとの内積とする内積空間に基づいて、交通態様を決定する。
【0074】
したがって、実施形態に係る決定装置10によれば、適切な内積空間を設定することができる。
【0075】
また、実施形態に係る決定装置10において、決定部42は、行列に対応するランダム行列に基づいて、交通態様を決定する。
【0076】
したがって、実施形態に係る決定装置10によれば、多次元の行列を適切に処理することが可能となる。
【0077】
〔6.その他〕
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0078】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0079】
また、上述してきた実施形態に記載した各処理は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0080】
また、上記してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、取得部41は、取得手段や取得回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0081】
10 決定装置
20 通信部
30 記憶部
31 環境情報データベース
32 態様情報データベース
40 制御部
41 取得部
42 決定部
43 配信部
50 車載装置