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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】蓄電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230922BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230922BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/00 180
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019137877
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021023024
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】町田 祐規
(72)【発明者】
【氏名】河内 功
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213389(JP,A)
【文献】特開2012-222860(JP,A)
【文献】特開2016-208801(JP,A)
【文献】特開2018-038238(JP,A)
【文献】特開2016-187254(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を利用して発電する発電装置、前記発電装置および外部の商用電力系統からの電力を蓄える蓄電装置ならびに前記発電装置、前記商用電力系統および前記蓄電装置からの電力で動作する1以上の機器を含む電力制御システムにおいて前記蓄電装置への蓄電を制御する装置であって、
前記発電装置の所定時間毎の発電量の予測値である予測発電量および前記機器の所定時間毎の消費電力量の予測値である予測消費電力量から予測余剰発電量を取得する予測値取得部と、
前記蓄電装置への蓄電を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、深夜電力時間帯外の買電量を削減するために深夜電力時間帯に行う商用電力系統から前記蓄電装置への蓄電に係る蓄電量を前記予測余剰発電量に基づいて抑制するか否かを判断し、かつ、前記発電装置の過去の発電量の実績値および前記機器の過去の消費電力量の実績値に基づき予測値と実績値の誤差に起因して経済的不利益が発生する可能性の大小を判断し、その可能性が予め定められた基準を超える場合は蓄電量の抑制を行わないように制御する蓄電制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、予測余剰発電量の有無を日毎に予測し、前記経済的不利益発生の可能性に係る判断を所定の集計期間毎に行い、現集計期間において、発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数が予め定められた基準日数を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないように制御する請求項に記載の蓄電制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、実績余剰電力量が予測に基づいて抑制された蓄電量を上回ったか否かの直近の推移に基づいて前記基準日数を更新する請求項に記載の蓄電制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、予測余剰発電量の発生の有無を日毎に予測し、前記経済的不利益発生の可能性に係る判断を集計期間毎に行い、現集計期間における予測値と実績値の誤差の平均を算出し、算出された平均誤差が予め定められた閾値を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないようにする請求項1に記載の蓄電制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、予測値と実績値の誤差の直近の推移に基づいて前記閾値を更新する請求項に記載の蓄電制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、予測余剰発電量の有無を日毎に予測し、前記経済的不利益発生の可能性に係る判断を集計期間毎に行い、現集計期間において、発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数が予め定められた基準日数を超える場合、かつ、現集計期間における予測値と実績値の誤差の平均が予め定められた閾値を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないようにする請求項に記載の蓄電制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基準日数を超えたために予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないと決めた後、前記基準日数を超えない集計期間が所定数連続した場合、その次の集計期間から予測余剰発電量が発生すると予測される日について蓄電量の抑制を行うようにする請求項に記載の蓄電制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記閾値を超えたために予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないと決めた後、前記閾値を超えない集計期間が所定数連続した場合、その次の集計期間から予測余剰発電量が発生すると予測される日について蓄電量の抑制を行うようにする請求項4に記載の蓄電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光発電装置、蓄電装置ならびに1以上の電力消費機器を含むシステムにおいて前記蓄電装置への蓄電を制御する蓄電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの買取り価格を法律で定める現行のFIT(Feed-in Tariff)制度が終了すると、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーによる自家発電の電力買取り価格の下落が予測される。従って、自家発電電力を売電することなく自家需給することが求められる。しかし、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーによる発電は、自然環境の影響で発電量が変動し易い特性を有する。
【0003】
このような状況に対応すべく、自家発電装置と共に蓄電装置を有する家庭や事業者の増加が見込まれる。
各家庭や各事業者にとって、電力負荷による消費量を適切に管理するだけでなく、自家発電された電力を賢く管理して経済的なエネルギー運用を実現することが重要である。
【0004】
これに関連して、太陽光発電装置の予測発電量と各機器による予測負荷量に基づいて各機器の稼働スケジュールを生成し、各機器を制御する装置について以下のような技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
即ち、機器の稼働スケジュールを生成する際に、予測発電量が前記予測負荷量を下回る時間帯に特定機器の稼働時刻が設定されている場合、その機器の稼働時刻を予測発電量が前記予測負荷量を上回る時間帯に変更し、太陽光発電の余剰電力を削減する。そして、予測電力負荷と蓄電装置内の残存電力量から充電すべき深夜電力量を算出し、蓄電装置の充電量を制御する。このようにして、太陽光発電装置による余剰電力が多い時間帯があれば余剰電力をなるべく機器に消費させて余剰電力による充電で蓄電装置が満充電にならないようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-92002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経済的なエネルギー運用を実現するためには、太陽光発電装置による発電量および機器により消費される電力量を予測する必要がある。
しかし、自然環境や機器の使用状況によって予測値と実績値との間に誤差が生じることは避け難い。
もっとも、発電量や消費電力量の予測に基づき、蓄電装置に対してより精緻な充放電制御を行った結果、予測誤差のために経済的な損失が生じては本末転倒である。
そこで、過去の実績に基づいてユーザの傾向を分析し、どの程度精緻なエネルギー管理を行うのが好適かを判断して負の経済効果が生じないようにできれば便宜である。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、予測値と実績値の誤差に起因してユーザに経済的な不利益が生じないように考慮されたエネルギー管理を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、太陽光を利用して発電する発電装置、前記発電装置および外部の商用電力系統からの電力を蓄える蓄電装置ならびに前記発電装置、前記商用電力系統および前記蓄電装置からの電力で動作する1以上の機器を含むシステムにおいて前記蓄電装置への蓄電を制御する装置であって、前記発電装置の所定時間毎の発電量の予測値である予測発電量および前記機器の所定時間毎の消費電力量の予測値である予測消費電力量から予測余剰発電量を取得する予測値取得部と、前記蓄電装置への蓄電を制御する制御部とを備え、前記制御部は、深夜電力時間帯外の買電量を削減するために深夜電力時間帯に行う商用電力系統から前記蓄電装置への蓄電に係る蓄電量を前記予測余剰発電量に基づいて抑制するか否かを判断し、かつ、前記発電装置の過去の発電量の実績値および前記機器の過去の消費電力量の実績値に基づき予測値と実績値の誤差に起因して経済的不利益が発生する可能性の大小を判断し、その可能性が予め定められた基準を超える場合は蓄電量の抑制を行わないように制御する蓄電制御装置を提供する。
【0008】
また、異なる観点からこの発明は、太陽光を利用して発電する発電装置、前記発電装置および外部の商用電力系統からの電力を蓄える蓄電装置ならびに前記発電装置、前記商用電力系統および前記蓄電装置からの電力で動作する1以上の機器を含む電力制御システムにおいて前記蓄電装置への蓄電を制御するために制御部が実行するプログラムであって、前記発電装置の所定時間毎の発電量の予測値である予測発電量および前記機器の所定時間毎の消費電力量の予測値である予測消費電力量から予測余剰発電量を取得する処理と、深夜電力時間帯外の買電量を削減するために深夜電力時間帯に行う商用電力系統から前記蓄電装置への蓄電に係る蓄電量を前記予測余剰発電量に基づいて抑制するか否かを判断する処理と、前記発電装置の過去の発電量の実績値および前記機器の過去の消費電力量の実績値に基づき予測値と実績値の誤差に起因して経済的不利益が発生する可能性の大小を判断する処理と、前記可能性が予め定められた基準を超える場合は蓄電量の抑制を行わないように制御する処理とを実行する蓄電制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
この発明による蓄電制御装置において、制御部は、発電装置の過去の発電量の実績値および前記機器の過去の消費電力量の実績値に基づき予測値と実績値の誤差に起因して経済的不利益が発生する可能性の大小を判断し、その可能性が予め定められた基準を超える場合は蓄電量の抑制を行わないように制御するので、予測値と実績値の誤差に起因してユーザに経済的な不利益が生じないように考慮されたエネルギー管理を実現できる。
前述の蓄電盛業ログラムについても同様の効果がいえる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る電力制御システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1に示すコントローラの詳細を示すブロック図である。
図3A図1の電力制御システムにおいて、電力の流れに関する要素を抽出して示す説明図である。
図3B図1の電力制御システムの経済効果の基準となるモードにおいて、深夜電力時間帯の電力の流れを示す説明図である。
図3C図1の電力制御システムの経済効果の基準となるモードにおいて、日中に余剰電力がある状態での電力の流れを示す説明図である。
図3D図1の電力制御システムの経済効果の基準となるモードにおいて、日中に余剰電力がない状態での電力の流れを示す説明図である。
図3E図1の電力制御システムの蓄電量を抑制するモードにおいて、深夜電力時間帯の電力の流れを示す説明図である。
図3F図1の電力制御システムの蓄電量を抑制するモードにおいて、日中に余剰電力がある状態での電力の流れを示す説明図である。
図3G図1の電力制御システムの蓄電量を抑制するモードにおいて、日中に余剰電力がない状態での電力の流れを示す説明図である。
図4】実施の形態1において、深夜電力時間帯における蓄電量や沸き上げの抑制可否を判断する基礎として参照するデータの例を示すグラフである。
図5】実施の形態1において、制御可否判定部による深夜電力時間帯の蓄電量等抑制の可否切替の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
≪電力制御システムの構成例≫
まず、この実施の形態におけるシステム構成の一例として、商用電力系統に接続され、太陽電池モジュール、蓄電池および貯湯式給湯器を含むある家庭の電力制御システムについて説明する。なお、対象は家庭に限らず、事業所や工場の設備装置など等であってもよい。
【0012】
図1は、実施の形態1における電力制御システム100の構成例を示すブロック図である。電力制御システム100は、太陽電池モジュール91および蓄電池94を有する発電システムであって、太陽光を電力に変換する発電方式で電力供給を行う分散型電源である。電力制御システム100は、伝送線路Pおよび受電点Rを介して商用電力系統96と接続されている。また、伝送線路Pには、電力消費機器92も接続されている。電力消費機器92は、たとえば家庭内の電化製品であり、電力制御システム100において伝送線路Pに供給される電力を消費する。なお、後述する図2のように電力消費機器92に貯湯式給湯器が含まれていてもよいし、そうでなくてもよい。
図1に示すように、太陽電池モジュール91と、蓄電池94と、パワーコンディショナ93と、コントローラ10と、を備えている。
【0013】
太陽電池モジュール91は、複数の太陽電池セルを含む発電装置であり、太陽光を受けて発電し、直流の電力を出力する。
蓄電池94は、繰り返し蓄放電可能な二次電池を含む蓄電装置である。蓄電池94は、パワーコンディショナ93から供給される直流の電力を用いて蓄電すること、および、蓄電された電力に応じた直流の電力を放電し、双方向インバータ32を介して貯湯式給湯器を含む電力消費機器92への電力供給、ならびに外部の商用電力系統96への電力供給(売電)を行う。なお、蓄電池94には、固定的に設置される蓄電池のみではなく、電気自動車(EVのバッテリが含まれてもよい。
【0014】
パワーコンディショナ93は、太陽電池モジュール91および蓄電池94と接続されるとともに、伝送線路Pを介して商用電力系統96と接続され、蓄電池94の蓄電と放電を制御する。
パワーコンディショナ93は、太陽電池モジュール91、および蓄電池94から供給される直流の電力を交流へと変換する。また、商用電力系統96から供給される交流の電力を直流へと変換して蓄電池94へ提供する。また、パワーコンディショナ93は、太陽電池モジュール91および蓄電池94から商用電力系統96への売電を制御する。
【0015】
電力量計37は、伝送線路Pおよび受電点Rを介して電力制御システム100および商用電力系統96間を伝送する電力値を検出する。商用電力系統96に対して買電または売電される電力を検出する。電力量計37の検出結果はIC39に出力される。
この電力量計37は、売電力量計371と買電力量計372とを含んで構成されている。
売電力量計371は、受電点Rにおいて電力制御システム100から商用電力系統96に電力が伝送される場合、売電される電力値を売電量として検出し、該売電量を積算する。そして、売電力量計371はこれらの結果をIC39に出力する。
【0016】
買電力量計372は、受電点Rにおいて商用電力系統96から電力制御システム100に電力が伝送される場合、買電される電力値を買電量として検出し、該買電量を積算する。そして、買電力量計372はこれらの結果をIC39に出力する。
電圧計38は、パワーコンディショナ93の出力端子93aにおける電圧を検出する電圧検出手段である。電圧計38の検出結果はIC39に出力される。また、電圧計38が検出する電圧は、伝送線路Pを伝送する電力の電圧を示している。
【0017】
IC39は、メモリ36に格納された情報およびプログラムなどを用いて、パワーコンディショナ93の各構成要素を制御する。また、IC39は、太陽電池モジュール91で発電される発電電力で蓄電池94を蓄電する蓄電制御を行う。
IC39は、機能的な構成要素として、変換制御部392を含んでいる。
変換制御部392は、電力量計37および電圧計38の検出結果などに基づいて、双方向インバータ32を制御し、特に、その電力変換方向及び電力変換量を制御する。
【0018】
コントローラ10は、蓄電池94および双方向DC/DCコンバータ34の制御、およびユーザ入力の受け付けなど行う。コントローラ10は、入力部51と、コントローラ通信部52と、コントローラ用メモリ53と、コントローラIC54と、を有している。
入力部51は、ユーザによる入力を受け付け、入力に応じた入力信号をコントローラIC54に出力する。
【0019】
コントローラ通信部52は、パワーコンディショナ93の通信部35と無線または有線で通信する通信インターフェースである。コントローラ通信部52は、通信部35から電力量計37の検出結果や太陽電池モジュール91、蓄電池94の情報を受信する。即ち、電力系37が検出した商用電力系統96からの買電電力、商用電力系統96への売電電力、太陽電池モジュール91による発電電力の実績値、蓄電池94の蓄電電力/放電電力の実績値の時系列データを受信する。
コントローラ用メモリ53は、電源が供給されなくても格納された情報を非一時的に保持する不揮発性の記憶媒体である。コントローラ用メモリ53は、コントローラ10の各機能要素(特にコントローラIC54)で用いられる制御情報およびプログラムなどを格納している。また、コントローラ通信部52を介して受信した買電電力、売電電力、発電電力の実績値、蓄電電力/放電電力の実績値を履歴として格納する。
【0020】
コントローラIC54は、コントローラ用メモリ53に格納された情報およびプログラムなどを用いて、コントローラ10の各構成要素を制御する制御部である。コントローラIC54は、機能的な構成要素として、蓄電量監視部541と、エネルギー管理部542と、を有している。
蓄電量監視部541は、蓄電池94の蓄電量を監視し、蓄電池94が満充電の蓄電容量に達しているか否かなどを判定する。
エネルギー管理部542は、エネルギー管理部542は、電力量計37の検出結果および、蓄電量監視部541の監視結果に基づいて、双方向DC/DCコンバータ34の電力変換方向および電力変換動作などを制御する。
【0021】
蓄電池94の蓄電量が満充電の状態に達することを蓄電量監視部541の監視結果が示す場合に、蓄電池94をさらに蓄電させると過充電になる。この場合、エネルギー管理部542は、蓄電方向Aに電力を変換しないように双方向DC/DCコンバータ34を制御する。たとえば、双方向DC/DCコンバータ34の電力変換方向を放電方向Bに設定したり、双方向DC/DCコンバータ34での電力変換量を0に設定し双方向DC/DCコンバータ34での電力変換動作を停止させたりする。このようにしてエネルギー管理部542は、蓄電池94の過充電を防止してその破損、蓄電能力の劣化および寿命の低下を抑制する。
【0022】
図2は、図1に示すコントローラ10の詳細を示すブロック図である。
図2に示すように、コントローラ10は、発電量予測部110、消費電力量予測部120、残存量取得部150、予測値取得部130を備える。さらに、エネルギー管理部542、蓄電池制御部170、給湯器制御部180、発電・消費履歴101、および蓄電(沸き上げ)スケジュール103、を備える。
太陽電池モジュール91の発電履歴、は、スマートメータ、計測機能付き分電盤81(図1参照)を介して、または別途センサーを用いて所定時間毎(例えば、30分あるいは1時間毎)に記録され、発電・消費履歴101に記憶される。
電力消費機器92の電力消費履歴(貯湯式給湯器95が沸き上げに使用した電力量の履歴を含む)、および貯湯式給湯器95の貯湯量の履歴についても同様である。
コントローラ10は、発電・消費履歴101の読出しや分析を行うことができる。
なお、発電・消費履歴101は、図1に示すコントローラ用メモリ53に含まれる。
【0023】
電力消費機器92は、(交流)電力を消費する機器である。具体的には、エアコン、電子レンジ、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電が挙げられる。貯湯式給湯器95は、電力消費機器92の一つであるが、電力エネルギーを熱エネルギーに変換してエネルギーを蓄積する機能を有するため、図2においては、電力を消費するだけの他の電力消費機器92と区別して示している。電力消費機器92は、分電盤81と接続され、分電盤81から供給された電力を消費する。
【0024】
コントローラ10は、図示しない通信線を用いて少なくとも一部の電力消費機器92と家庭内ネットワークで接続され、それらの機器を総合的に制御できる。図2において、電力消費機器92の一つである貯湯式給湯器95を少なくとも制御できる。これを家庭エネルギー管理システム(HEMS)と呼んでもよい。HEMSが機器(装置)同士の通信に用いるプロトコルは、例えばEchonetLiteである。
情報収集サーバ97は、ウェブネットワーク98を介してコントローラ10と通信し、発電・消費履歴101の読出しや分析を行うことができる。また、情報収集サーバ97は、電力制御システム100が設置されている場所の郵便番号を記憶しており、その郵便番号の情報に基づいて気象情報会社から気象条件を取得する。
【0025】
貯湯式給湯器95は、分電盤81と接続される。貯湯式給湯器95は、分電盤81を介して供給される電力を用いて、沸き上げを行う。沸き上げは原則として、電力が安価な深夜電力時間帯に行われる。
深夜電力時間帯は、典型的には夜23時から朝7時であるが、電力会社によって、または電力会社と電力使用者とが契約した契約内容(料金プラン)によって異なる。深夜電力時間帯は、電力が安価な時間帯であればよい。
【0026】
外部の商用電力系統96は、前記の通りパワーコンディショナ93の制御に応じ、前記電力制御システムへの電力供給(電力制御システム側からみた買電)、および前記電力制御システムからの電力買い取り(電力制御システム側からみた売電)を行う。
気象情報会社は、ウェブネットワーク98を介して翌日の発電量予測に必要な気象情報をコントローラ10へ提供する。また、必要であればその他の日における気象情報を提供してもよい。
【0027】
図2に示す発電・消費履歴101は、電力制御システムが設置される家庭の発電、および消費の履歴データである。
〔発電量予測部110〕
発電量予測部110は、ウェブネットワーク98を経由して気象情報を取得する。また、発電量予測部110は、発電・消費履歴101から発電履歴、即ち発電量の実績値を取得する。発電量予測部110は、取得した気象情報および発電履歴に基づき、翌1日分の発電量予測を行う。なお、この明細書における1日の始期と終期は、午前零時から始まるとは限らない。例えば、深夜電力時間帯が開始される時刻である23時から翌日の23時までの期間における発電量を予測する。また、1日の始期と終期が、深夜電力時間帯の終了時刻から深夜電力時間帯の開始時刻までとしてもよい。
【0028】
発電量の予測の開始時刻は、典型的には、深夜電力時間帯が開始される時刻(一般的には夜23時)の1時間前であるが、それに限られず、23時であってもよい。また、発電量の予測後、後述する処理により深夜電力時間帯の終了時に目標とする状態(沸き上げ可能空き容量、蓄電可能空き容量、蓄電(沸き上げ)スケジュール等の設定状態)が確保できる場合、23時以降であってもよい。これにより、より広い時間帯に渡って処理が可能であり、電力料金や契約内容ごとに適切な時間帯での処理が可能になる。
【0029】
前記発電量の予測の方法は、具体的には、下記の通りである。まず、発電量予測部110は、気象情報に含まれる翌日のその地域の日射量予測データを用いて、特定の係数をかけて発電量を予測する。前記係数は、過去の日射量情報と発電量の相関から導き出す。過去の発電履歴データを用いることで、設置場所や向き、周囲環境(影など)、装置の性能や劣化状況などが加味された値となる。過去の発電履歴データは典型的には1週間程度の期間のデータを用いるが、使用者の使用状況により最適な期間は変動し得る。そのため、最適な期間を別途導出してもよい。季節、天候、気温、または太陽電池モジュール91の劣化に基づいた発電履歴を用いることで、精度が高い予測をすることができる。
【0030】
発電量予測部110は、予測発電量(太陽電池モジュール91による1日の発電量の予測値)の時系列データ、を、予測値取得部130へ送信する。なお、自然エネルギーにより発電可能な時刻は季節により変動するため、発電量の時系列は前述の時刻に限られるものではない。
〔消費電力量予測部120〕
消費電力量予測部120は、発電量予測部110と同様に、気象情報および消費履歴、即ち各電力消費機器92および貯湯式給湯器95の合計の消費電力量の実績値を取得し、消費電力量を予測する。消費電力量予測部120は、得られた予測消費電力量の時系列を予測値取得部130へ送信する。
【0031】
〔予測値取得部130〕
予測値取得部130は、受信した予測発電量の時系列および予測消費電力量の時系列に基づき、余剰電力量の時系列を算出する。予測値取得部130は、算出される余剰電力量の時系列を、後述するエネルギー管理部542へ送信する。また、算出された余剰電力量をコントローラ用メモリ53に格納する。
〔残存量取得部150〕
残存量取得部150は、蓄電割当部164からの要求に応答して、深夜電力時間帯の開始時刻における蓄電池94の残存量を蓄電割当部164へ送信する。また、蓄電池94に蓄えられた蓄電量の時系列をコントローラ用メモリ53に格納する。この部分は、図1に示す蓄電量監視部541に対応する。
また、残存量取得部150は、沸き上げ割当部163からの要求に応答して、深夜電力時間帯の開始時刻における貯湯式給湯器95の残存量を沸き上げ割当部163へ送信する。
【0032】
〔エネルギー管理部542〕
エネルギー管理部542は、余剰有無判定部161、沸き上げ割当部163、および蓄電割当部164、を備える。
エネルギー管理部542は、予測値取得部130から受信した予測余剰電力量の時系列を、余剰有無判定部161へと送信する。なお、予測余剰電力量がない場合、エネルギー管理部542は深夜電力時間帯に蓄電池94が満蓄電量になるまで蓄電するように制御する。ただし、翌日の予測消費電力量が蓄電池94の蓄電容量よりも小さい場合、満蓄電量までは蓄電せず予測消費電力量に応じた蓄電量まで充電する。また、予測余剰電力量がない場合はその深夜電力時間帯に、可能であれば、貯湯式給湯器95の貯湯量が満杯になるまで沸き上げる。
一方、予測余剰電力がある場合の制御については、以下の余剰有無判定部161で述べる。
【0033】
〔余剰有無判定部161〕
余剰有無判定部161は、前記受信した予測余剰電力量を用いて、予測余剰電力量の有無すなわち、余剰電力量の時系列に、予測余剰電力量>0である時間帯があるかどうかを判定する。予測余剰電力量があると判断される場合、余剰有無判定部161は、蓄電割当部164へ予測余剰電力量の時系列を送信する。
【0034】
〔沸き上げ割当部163〕
沸き上げ割当部163は、現在の貯湯式給湯器95の貯湯量を送信するように残存量取得部150へ要求を発信し、取得する。その後、前記受信した予測余剰電力量の時系列を用いて、沸き上げを行う時間および沸き上げ量に対応する貯湯式給湯器95への給電量(給電期間)を沸き上げ予定電力量として決定する。換言すれば、発電・消費履歴101から受信した、いつどれだけの貯湯量が必要かを示すデータと、予測値取得部130から受信した、いつどれだけの余剰電力が生じるかの予測データに基づいて、いつ、どれだけの沸き上げを行うかを決定する。予測余剰電力量がない場合は、貯湯式給湯器95の貯湯量が満杯になるまで沸き上げるのに対して、予測余剰電力量がある場合はそれに応じて貯湯式給湯器95の、沸き上げ量、言い換えれば貯湯式給湯器95への給電量を抑制する。
ただし、実際に貯湯式給湯器95への給電量を抑制するか否かについては、後述する制御可否判定部165の判定に従う。
そして、沸き上げ割当部163は、抑制した貯湯式給湯器95への給電量を、コントローラ用メモリ53に格納して履歴を残す。
深夜電力時間帯における買電スケジュール、および余剰電力期間における沸き上げスケジュールを設定することにより、コントローラ10は、深夜電力時間帯の終了時における貯湯式給湯器95の空き容量を確保することができる。
【0035】
〔蓄電割当部164〕
蓄電割当部164は、予測余剰電力量の時系列から沸き上げ予定電力量を差し引いた電力量を蓄電池94の充電予定分である蓄電予定電力量として決定する。即ち、第1に貯湯式給湯器95への給電量を割り当て、余った場合に蓄電池94への蓄電量を割り当て、蓄電池94の蓄電量を調整する。
予測余剰電力量から沸き上げ予定電力量を差し引いた差引電力量がない場合は蓄電池94が満蓄電量になるまで蓄電する(ただし、差引電力量が蓄電容量より小さい場合はそれに応じた蓄電量まで蓄電する)のに対して、差引電力量がある場合はそれに応じて蓄電池94への蓄電を抑制する調整量を決定する。
ただし、実際に蓄電を抑制するか否かについては、後述する制御可否判定部165の判定に従う。
そして、蓄電割当部164は、抑制した蓄電の調整量をコントローラ用メモリ53に格納して履歴を残す。
【0036】
蓄電(沸き上げ)スケジュール103は、蓄電割当部164および沸き上げ割当部163によって設定される、電力制御システム100の発電、消費、買電、蓄電、放電および沸き上げの将来のスケジュールである。
なお、蓄電(沸き上げ)スケジュール103は、図1に示すコントローラ用メモリ53に含まれる。
深夜電力時間帯における買電スケジュール、および余剰電力期間における蓄電スケジュールを設定することにより、コントローラ10は、深夜電力時間帯の終了時における蓄電池94の空き容量を確保することができる。
〔制御可否判定部165〕
制御可否判定部165は、発電・消費履歴101を参照して、電力制御システム100の状態が、余剰電力があると予測される場合に蓄電池94への蓄電量や貯湯式給湯器95への給電量を抑制するとかえってユーザが経済的不利益を被る可能性の大小を判定する。即ち、負の経済効果が生じる可能性の大小を判定する。その可能性が大きいと判断した場合は、深夜電力時間帯において蓄電割当部164が蓄電池94への蓄電量の抑制を行わないようにし、同様に沸き上げ割当部163が貯湯式給湯器95への給電量の抑制を行わないようにする。
【0037】
〔蓄電池制御部170〕
蓄電池制御部170は、設定された、蓄電(沸き上げ)スケジュール103に従い、蓄電池94の制御を行う。
蓄電池制御部170は、深夜電力時間帯においてはスケジュール通りに蓄電池94を蓄電する。深夜電力時間帯の終了後は、太陽電池モジュール91の発電量が電力消費機器92の消費電力量の合計(貯湯式給湯器95の沸き上げに係る消費電力量を含む)を下回れば放電させて商用電力系統96からの買電量を抑制する。逆に、太陽電池モジュール91の発電量が電力消費機器92の合計の消費電力量を上回れば余剰電力で蓄電池94を蓄電する。なお、太陽電池モジュール91の発電量は自然環境の変動、具体的には日照量の変動に起因し、発電・消費履歴101の時間刻みよりも短いスケールで、例えば秒単位で変動する。蓄電池制御部170が上記のように深夜電力時間帯後の蓄電池94の充放電を制御する結果、短い時間スケールでの変動を蓄電池94が吸収する。
【0038】
発電量が少ない側に予測が外れた場合、蓄電池制御部170は、蓄電池94に放電動作をさせてもよい。例えば、貯湯式給湯器95が沸き上げを行っている最中に発電量が少ない側に予測が外れた場合、不足する電力を、蓄電池94からの放電により補う。これにより、自然エネルギーによる電力量を充当して商用電力系統96からの買電量を抑制することができる。
〔給湯器制御部180〕
給湯器制御部180は、設定された、蓄電(沸き上げ)スケジュール103に従い、貯湯式給湯器95の制御を行う。すなわち、貯湯式給湯器への給電量を抑制する。
【0039】
≪エネルギー管理の基準モード≫
続いて、電力制御システム100におけるエネルギー管理の基準モードについて述べる。
制御可否判定部165は、余剰電力があると予測される場合に蓄電池94への蓄電量や貯湯式給湯器95への給電量を抑制するとかえってユーザが経済的不利益を被る可能性の大小を判定する。即ち、負の経済効果が生じる可能性の大小を判定する。ここで、経済効果の正負に係る判定は、何らかの基準に対して行われることころ、その基準となるエネルギー管理のモードをこの明細書で基準モードと呼んでいる。
基準モードによるエネルギー管理は、以下のように行われる。
【0040】
基準モードの場合、エネルギー管理部542は深夜電力時間帯に蓄電池94が満充電の状態になるまで蓄電する。また、給湯器制御部180は、貯湯式給湯器95が満杯の状態になるまで沸き上げを行う。
即ち、基準モードによるエネルギー管理は、翌日に発生すると予測される余剰電力量に基づいて深夜電力時間帯における蓄電および沸き上げの抑制を行うことはしない。
深夜電力時間帯が終了した後の日中において、電力消費機器92による合計の消費電力が太陽電池モジュール91の発電電力より大きい時間帯は、蓄電池94から放電を行って買電量を抑制する。
日中において発電電力が合計の消費電力より大きい時間帯、即ち余剰電力が発生する時間帯は、その余剰電力で蓄電池94を蓄電する。蓄電した電力は、太陽光による発電電力が得られない夜間の消費電力に充当されて買電量を抑制する。
【0041】
≪予測余剰電力量に基づくエネルギー管理とその経済効果≫
上述の基準モードに対し、この実施形態では予測余剰電力量に基づいて深夜電力時間帯における蓄電池94の蓄電量を抑制し、貯湯式給湯器95の沸き上げを抑制する。
詳細には、発電量予測部110により提供される予測発電量の時系列および消費電力量予測部120により提供される予測消費電力量の時系列に基づき、予測値取得部130が余剰電力量の時系列を算出する。
翌日は余剰電力量の発生がないと予測される場合、基準モードと同様の蓄電および沸き上げを行う。
一方、翌日は余剰電力量の発生があると予測される場合、エネルギー管理部542は、算出された余剰電力量の時系列に基づいて、深夜電力時間帯における蓄電池94の蓄電量を抑制する。予測余剰電力量に余裕があれば、貯湯式給湯器95の沸き上げも抑制する。
【0042】
図3Aは、図1の電力制御システムにおいて、電力の流れに関する要素を抽出して示す説明図である。図3Aの矢印は、電力の基準方向の方向の流れを示している。即ち、矢印の方向の電力の流れを正の値と定めている。蓄電池94については、放電が正の電力の流れであり、蓄電時は負の電力の流れになる。商用電力系統96については、買電が正の電力の流れであり、売電が負の電力の流れになる。
図3Bは、上述の基準モードにおいて、深夜電力時間帯の電力の流れの典型例を示す。図3Aと電力の流れの大きさおよび方向が異なる部分については、電力の記号を枠で囲んでいる。図3Bに示すように、深夜電力時間帯において、太陽電池モジュール91の発電は行われない可能性が高い。また、深夜電力時間帯においては商用電力系統96からの安価な電力で蓄電池94が満充電の状態になるように蓄電する。貯湯式給湯器95についても満杯になるように沸き上げを行う。
【0043】
図3Cは、基準モードにおいて、日中に余剰電力がある状態での電力の流れの典型例を示す。日中は太陽電池モジュール91の発電が行われる。蓄電池94は深夜電力時間帯に蓄えられた電力で基本的に満充電の状態まで蓄電されており余剰電力による蓄電を行う余地がない。余った電力は商用電力系統96へ売電される。ただし、余剰電力量が少ない場合は売電されない。
図3Dは、基準モードにおいて、日中に余剰電力がない状態での電力の流れの典型例を示す。日中は太陽電池モジュール91の発電が行われ、蓄電池94は、電力消費機器92の消費電力を賄うために放電する。それでも電力消費機器92の消費電力が上回るため、商用電力系統96から買電を行う。
【0044】
図3E図3Gは、図3B図3Dにそれぞれ対応し、この実施形態によるエネルギー管理のモード(以下、エネルギー・マネージメント・モードともいう)における典型的な電力の流れを示す。
即ち、図3Eは、エネルギー・マネージメント・モードにおいて、深夜電力時間帯における電力の流れの典型例を示す。図3Eに示す電力の流れは、図3Bと同一である。ただし、予測余剰発電量に基づいて、蓄電池94への蓄電量および貯湯式給湯器95の沸き上げを抑制することがある点で図3Bと異なる。
【0045】
図3Fは、エネルギー・マネージメント・モードにおいて、日中に余剰電力がある状態での電力の流れの典型例を示す。図3Cと異なるのは、商用電力系統96への売電に代えて蓄電池94への蓄電を行う点である。余剰電力の発生を予測して深夜電力時間帯の蓄電量を抑制しているので、蓄電池94は日中に蓄電を行う余地を有している。ただし、余剰電力量が多くて蓄電池94に蓄電しきれない分については売電される。
図3Gは、エネルギー・マネージメント・モードにおいて、日中に余剰電力がない状態での電力の流れの典型例を示す。余剰電力がない場合の電力の流れは図3Dと同一である。
以上、基準モードとこの実施形態によるエネルギー・マネージメント・モードで、典型的な電力の流れの違いを述べた。
【0046】
しかし、予測発電量と発電量の実績値との間には予測誤差が生じる。予測消費電力量と消費電力量の実績値との間にも予測誤差が生じる。
負の経済効果が生じるのは、例えば気象情報に基づき晴れと予測したにもかかわらず雨になった場合である。
晴れと予測した場合、エネルギー・マネージメント・モードでは深夜電力時間帯に蓄電池94への蓄電をほとんど行わない。一方、基準モードでは深夜電力時間帯に蓄電池94が満充電の状態になるように蓄電する。
この状態で雨を迎えると、エネルギー・マネージメント・モードでは、蓄電池94の蓄電量がすぐに空になり、不足分は買電で補うことになる。この場合、買電量は明らかに基準モードよりも大きくなる。
言い換えると、エネルギー・マネージメント・モードによるエネルギー管理は、基準モードによるエネルギー管理に対して負の経済性効果を生じさせる。
【0047】
これに対して、正の経済効果が生じるのは、例えば気象情報に基づき晴れと予測し、予測した通りに晴れた場合である。
晴れと予測した場合、上述のようにエネルギー・マネージメント・モードでは深夜電力時間帯に蓄電池94への蓄電を抑制する。例えば、蓄電をほとんど行わない。一方、基準モードでは深夜電力時間帯に蓄電池94が満充電の状態になるように蓄電する。
この状態で晴れを迎えると、エネルギー・マネージメント・モードでは余剰電力を蓄電池94へ蓄電できるが、基準モードでは余剰電力を蓄電池94へ蓄電する余地がなく売電を行うが、その売電単価は蓄電池94への蓄電を行う深夜電力時間帯の買電単価よりも安いと想定される。
言い換えると、基準モードでは深夜電力時間帯に蓄電池94を充電したために日中の余剰電力を蓄電できなくなり、単価の安い売電を行うが、エネルギー・マネージメント・モードでは日中の余剰電力を蓄電池94に蓄電できるようにする。エネルギー・マネージメント・モードによるエネルギー管理は、基準モードによるエネルギー管理に対して電力料金の収支を改善し、正の経済性効果を生じさせる。
【0048】
≪負の経済効果が発生する可能性の判定≫
この実施形態では、単に予測余剰発電量に基づいて深夜電力時間帯の蓄電や沸き上げを抑制するだけでなく、抑制制御を行った結果、ユーザに負の経済効果が生じる可能性の大小を判定し、可能性が大きい場合は抑制制御を行わないようにする。
負の経済効果が生じる可能性の判定は、過去の実績に基づいて行う。過去の実績は、商用電力系統96の全体の実績であってもよいが、電力制御システム毎の実績に基づいて行ってもよく、特に実績の直近の推移を考慮する場合にはその方が好ましい。
なお、この明細書では、電力制御システム毎にユーザが異なるものとしている。即ち、ユーザ毎は、電力制御システム毎を意味する。
【0049】
図4は、この実施の形態において、深夜電力時間帯における蓄電量や沸き上げの抑制可否を決定する基礎として、制御可否判定部165が参照するデータの例を示すグラフである。グラフは、発電・消費履歴101に格納されたデータに基づくものである。複数のユーザについて、月毎の消費電力量の実績値と発電量の実績値とに基づいてグラフをプロットしている。各ユーザの複数月に渡る実績値に基づいている。1箇月を単位とするのは便宜上であって、集計期間はこれに限るものでない。例えば、集計期間が半月でもよいし、それ以外の所定期間であってもよい。
なお、判断指標が複数のユーザに対して有効であることを示すために、図4は複数のユーザの実績値に基づいて相関関係をもとめている。しかし、実際の判断はユーザ毎の相関関係に基づいて行ってもよい。
【0050】
図4で、横軸は各月において「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数である。縦軸はその月の経済効果の大きさ(正負両方あり)を表す。ここで、各月の経済効果は、次のように算出する。
制御可否判定部165は、コントローラ用メモリ53を参照し、翌日の予測余剰電力量に基づいて深夜電力時間帯に蓄電池94へ蓄電した蓄電量の履歴および貯湯式給湯器95への給電量の履歴を取得する。また、発電・消費履歴101に格納された日毎の発電量の実績値および消費電力量の実績値を取得する。
【0051】
そして、翌日の予測余剰電力量に基づいて前記蓄電量および前記給電量を抑制した日について、深夜電力時間帯における蓄電池94への蓄電および貯湯式給湯器95への給電に必要な電気代を算出する。即ち、エネルギー・マネージメント・モードでの深夜電力時間帯における前記蓄電および前記給電に要した電気代を算出する。
また、同じ深夜電力時間帯において蓄電池94を満充電の状態まで蓄電し、貯湯式給湯器95が満杯の状態になるまで沸き上げを行った場合の電気代を算出する。即ち、基準モードでの深夜電力時間帯における前記蓄電および前記給電に要した電気代を算出する。
さらに、その後の日中における消費電力量に対応する電気代算出する。即ち、エネルギー・マネージメント・モードでの消費電力の実績に基づく電気代を算出する。さらに、基準モードであるとした場合の日中における消費電力量と、それに基づく電気代を算出する。蓄電池94が満充電の状態となり蓄電できない余剰電力は売電とし、売電により得られた電気代を算出する。
【0052】
経済効果は、
経済効果=基準モードでの電気代 - エネルギー・マネージメント・モードでの電気代
で算出される。
【0053】
抑制電力量と買電電力量が等しい場合、即ち、深夜電力時間帯に抑制した電力量をその後の日中に丸ごと買電した場合、経済効果はゼロになる。この場合は、基準モードに等しい。
基準モードは、深夜電力時間帯に満充電の状態まで蓄電するので抑制電力量がゼロである。エネルギー・マネージメント・モードで深夜電力時間帯に満充電した場合は、上式の経済効果は常にゼロである。
一方、買電電力量が抑制電力量を上回る場合は、負の経済効果が生じる。負の経済効果が生じる場合は結果的に、予測余剰発電量に基づく蓄電池94への蓄電量の抑制および貯湯式給湯器95への給電量の抑制を行わない方が経済的であったといえる。
【0054】
図4によると、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数が15日を超えるユーザ、例えばユーザ1およびユーザ2は、ゼロまたは負の経済効果になる可能性が高い。これに対して、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数が15日以下のユーザ、例えばユーザ5およびユーザ6は、正の経済効果になる可能性が高い。
ユーザ4については、前記日数が15日を超える場合が一部にあるものの、大半が15日以下であって正の経済効果になる可能性が高い。
ユーザ3については、前記日数が15日を超える場合と15日以下の場合とがほぼ拮抗しており、それに対応して正の経済効果になる場合と負の経済効果になる場合とがある。
このことから、所定の集計期間(図4の場合は1箇月)毎に「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数と、各集計期間における経済効果との相関関係を求めることで、負の経済効果が生じる可能性の大小を判定できる。
なお、「15日」は、図4に示す実績値のグラフに基づいて選択される基準日数の一例に過ぎない。
【0055】
なお、図4は、異なるユーザの月間実績に基づいて相関関係を示すものであるが、例えばユーザ3のように同一ユーザであっても、例えば自然環境や電力消費機器の使用状況によって正負いずれの経済効果にもなる可能性がある。よって、ユーザ毎に相関関係を求めて負の経済効果になる可能性の大小を判断してもよい。
また、負の経済効果が生じる可能性が高いため、深夜時間帯に蓄電池94への蓄電量抑制や貯湯式給湯器95への給電量抑制を行わないとする基準についても、実績値の相関関係に基づいて好適な基準を設定すればよい。
【0056】
≪経済効果に係る判定に基づくエネルギー管理≫
続いて、制御可否判定部165が実行する処理について述べる。
図5は、制御可否判定部165による深夜電力時間帯の蓄電量等抑制可否の切り替え例を示す図である。
図5に示す例において、集計期間は1箇月であり、基準の日数は15日である。図5の最上行は、ある年の8月から翌年の3月までの各月を示し、中央の行は各月の中で「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数、即ち各月の集計日数を示す。最下行は、中段の行に示す集計結果に基づいて、翌月の深夜電力時間帯の蓄電量等を予測余剰電力量にもとづいて抑制するか否かの判定結果を示す。
【0057】
制御可否判定部165は、集計期間の終了毎、即ち毎月末に、翌月の制御可否について判定を行う。
例えば図5に示すように、8月は集計日数が基準日数(図5における具体例は15日)以下である。その実績に基づき、翌9月は抑制制御可の判定結果となる。つまり、9月については負の経済効果が生じる可能性が小さいと判断する。よって、予測余剰電力量に基づいて、深夜電力時間帯の蓄電量等を抑制する。最下行の9月の「〇」はそれを表す。
【0058】
9月の集計日数についても基準日数以下である。その実績に基づき、9月と同様に10月も抑制制御可の判定結果となる(最下行の10月の「〇」参照)。
10月の集計日数は16日で、基準日数の15日を超える。その実績に基づき、翌11月からは負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断する。よって、11月からは、予測余剰電力量に基づいて、深夜電力時間帯の蓄電量等の抑制を休止する(最下行の11月の「休」参照)。
【0059】
一旦、深夜電力時間帯の蓄電量等抑制を行わないと判断した後は、集計日が基準日数以下の月が3か月続くまでは、深夜電力時間帯の蓄電量等抑制を再開しない。
なお、3か月は一例である。集計日数に基づく制御可否の判定の推移が安定か不安定かに応じて、抑制制御を再開すると判断する月数を適宜設定すればよい。安定した推移であればより小さな月数に、不安定な推移であればより大きな月数に設定する。また、月数の設定はユーザ毎に異なってもよい。
【0060】
図5で、11月~1月の3か月に渡って、集計日が基準日数以下の月が続く。よって、1月の翌月の2月に、蓄電量等抑制を再開する(最下行の2月の「〇」参照)。
それまでの11月~1月については、蓄電量等抑制を行わない期間が続く(最下行の11月~1月の「〇」参照)。
抑制制御再開の基準を、抑制制御休止の基準より厳しく設定することで、制御可否の判断が不安定になるのを防いでいる。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態1では、集計期間の1箇月を通して、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数、言い換えると発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数をカウントしたが、それに代えて集計期間のうち直近の所定の期間を対象に「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数をカウントしてもよい。
そうすることによって、集計期間のうち直近の状況に基づいて判定を行うことができる。
例えば、集計期間が「1箇月」で、所定日数が月の半分の日数とする。制御可否判定部165部は今月の後半を対象に、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数をカウントし、基準日数を超えたか否かの判断を行う。
【0062】
(実施の形態3)
また、負の経済効果が生じる可能性が高いと判断する基準日数は、実施の形態1では固定値を前提として説明したが、直近の状況に基づいて制御可否判定部165が基準日数を変更してもよい。
この態様によれば、判断に係る基準日数を直近の状況に基づいて更新し、妥当な値に補正することができる。
【0063】
例えば、負の経済効果が生じる可能性が小さいと判断して蓄電量の抑制を実施しなかったにもかかわらず、不利益が生じた日が直近において増加していると制御可否判定部165が判断した場合、制御可否判定部165は基準日数を減らして蓄電量の抑制がより実施され易いようにする。逆に、不の経済効果が生じる可能性が大きいと判断して蓄電量の抑制を実施したにもかかわらず、不利益が生じなかった日が直近において増加していると判断した場合、制御可否判定部165は基準日数を増やして蓄電量の抑制がより実施され難いようにする。
【0064】
(実施の形態4)
以上の実施の形態においては、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数と経済効果の相関関係に基づいて、負の経済効果が生じる可能性の大小を判断している。
それに対してこの実施形態は、予測誤差の大きさに応じて負の経済効果が生じる可能性の大小を判断する。ここで、予測誤差は、予測値と実績値との差であるから、過去の実績基づいて負の経済効果が生じる可能性を判断する点においては実施の形態1の手法と共通する。
【0065】
この実施形態において、制御可否判定部165は日毎の発電電力の予測値と実績値、日毎の消費電力量の予測値と実績値をそれぞれ取得する。そして、集計期間中の予測誤差の平均を算出する。算出された平均誤差が予め定められた閾値を超える場合、深夜電力時間帯に蓄電量の抑制を行わないようにする。
この実施形態によれば、予測誤差に基づいて負の経済効果が生じる可能性の大小を判断する。
例えば、集計期間が「1箇月」の場合、今月の発電電力と消費電力の予測誤差の合計の平均が予め定められた閾値を超えている場合、制御可否判定部165は次月から蓄電量等の抑制を休止する。
【0066】
(実施の形態5)
実施の形態4では、集計期間の1箇月を通じた予測誤差の平均に基づいて負の経済効果が生じる可能性の大小を判断したが、それに代えて集計期間のうち直近の所定の期間を対象に予測誤差の平均を算出してもよい。
この態様によれば、集計期間のうちの直近の所定日数における予測誤差の平均に基づいて、負の経済効果が生じる可能性の大小を判定できる。即ち、直近の平均誤差の状況に基づいて判定を行うことができる。
例えば、集計期間が「1箇月」で、所定日数が月の半分の日数であるとする。その場合、制御部は今月の後半を対象に、予測値と実績値の平均誤差を算出し、算出された平均誤差が閾値を超えたか否かの判断を行う。
【0067】
(実施の形態6)
また、負の経済効果が生じる可能性が高いと判断する閾値は、実施の形態4では固定値を前提として説明したが、直近の状況に基づいて制御可否判定部165が閾値を変更してもよい。
このようにすれば、判断に係る閾値を直近の状況に基づいて更新し、妥当な値に補正することができる。
【0068】
例えば、負の経済効果が生じる可能性が小さいと判断して蓄電量等の抑制を実施しなかったにもかかわらず、不利益が生じた日が直近において増加していると判断した場合、制御部は閾値を小さくして蓄電量の抑制がより実施され易いようにする。逆に、ユーザに経済的な不利益が生じる可能性が大きいと判断して蓄電量等の抑制を実施したにもかかわらず、不利益が生じなかった日が直近において増加していると判断した場合、制御部は閾値を大きくして蓄電量の抑制がより実施され難いようにする。
【0069】
(実施の形態7)
この実施形態において制御可否判定部165は、実施の形態1で述べた「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数と、実施の形態4で述べた予測誤差の平均とを組み合わせて、負の経済効果が生じる可能性の大小を判断する。
このようにすれば、集計期間において発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数、即ち、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数と、予測誤差の平均との両方に基づいて、予測値と実績値の誤差に起因して負の経済効果が生じる可能の大小を判断できる。
例えば、集計期間が「1箇月」とする。集計期間を通して、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1を超える日数が基準日数を上回り、かつ、集計期間を通した予測誤差の平均が閾値を超えている場合、制御可否判定部165は次月から蓄電量等の抑制を休止する。
【0070】
(実施の形態8)
実施の形態1では、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の集計日数が基準日数を超えると、次の集計期間から深夜電力時間帯に蓄電量等の抑制を休止する。その後、集計日数が基準日数を超えない集計期間が所定の数だけ続くと、次の集計期間から深夜電力時間帯に蓄電量等の抑制の実施を再開する。
実施の形態4で述べた予測誤差に基づく判断についても、同様の手法を適用する。即ち、集計期間の予測誤差の平均が閾値を超えると、次の集計期間から深夜電力時間帯に蓄電量等の抑制を休止する。その後、予測誤差の平均が閾値を超えない集計期間が所定の数だけ続くと、次の集計期間から深夜電力時間帯に蓄電量等の抑制の実施を再開する。
このようにすれば、予測値と実績値の平均誤差に基づいて負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断し、次の集計期間から蓄電量等の抑制を休止した後、所定数の集計期間に渡る状況の推移に基づいて蓄電量等の抑制の実施を再開することができる。
【0071】
(実施の形態9)
実施の形態1において、深夜電力時間帯に蓄電量等の抑制を休止した後、集計日数が基準日数を超えない集計期間が所定の数だけ続くと、蓄電量等の抑制を再開する。
実施の形態8も同様に、深夜電力時間帯に蓄電量等の抑制を休止した後、予測誤差の平均が閾値を超えない集計期間が所定の数だけ続くと、蓄電量等の抑制を再開する。
再開の判断に係る集計期間の数は、固定値を前提としている。
それに対してこの実施形態では、制御可否判定部165が直近の推移に基づいて再開の判断に係る集計期間の数を更新する。
この態様によれば、再開の判断に係る集計期間の数を直近の推移に基づいて更新し、妥当な値に補正できる。
【0072】
以上に述べたように、
(i)この発明による蓄電制御装置は、太陽光を利用して発電する発電装置、前記発電装置および外部の商用電力系統からの電力を蓄える蓄電装置ならびに前記発電装置、前記商用電力系統および前記蓄電装置からの電力で動作する1以上の機器を含むシステムにおいて前記蓄電装置への蓄電を制御する装置であって、前記発電装置の所定時間毎の発電量の予測値である予測発電量および前記機器の所定時間毎の消費電力量の予測値である予測消費電力量から予測余剰発電量を取得する予測値取得部と、前記蓄電装置への蓄電を制御する制御部とを備え、前記制御部は、深夜電力時間帯外の買電量を削減するために深夜電力時間帯に行う商用電力系統から前記蓄電装置への蓄電に係る蓄電量を前記予測余剰発電量に基づいて抑制するか否かを判断し、かつ、前記発電装置の過去の発電量の実績値および前記機器の過去の消費電力量の実績値に基づき予測値と実績値の誤差に起因して経済的不利益が発生する可能性の大小を判断し、その可能性が予め定められた基準を超える場合は蓄電量の抑制を行わないように制御することを特徴とする。
【0073】
この発明において、予測値取得部および制御部を備える蓄電制御装置は、ハードウェア資源として典型的にはCPUを中心としてメモリおよび入出力回路等から構成されるものである。即ち、メモリに格納された制御プログラムをCPUが実行することによって蓄電制御装置の機能が実現される。ただし、ハードウェア資源の具体的な態様はこれに限るものでなく、同等の機能を実現するものであればその態様は問わない。
具体的には、上述の実施形態におけるコントローラ10が、この発明における蓄電制御装置に該当する。また、実施形態における予測値取得部130が、この発明における予測値取得部に該当する。さらに、実施形態におけるエネルギー管理部542が、この発明における制御部に該当する。
【0074】
また、買電は、外部の商用電力系統から電力制御システムへ電力供給を受けることである。商用電力系統から供給された電力は、電力制御システム内の電力消費機器で消費されたり、蓄電池に蓄電されたりする。
これに対して売電は、電力制御システムから外部の商用電力系統へ電力を送ることである。通常、電力制御システム内の発電装置で発電されたが電力消費機器で消費されない余剰電力は蓄電池へ充電され、蓄電池へ蓄電しきれない電力は売電される。
【0075】
電力制御システムに係るユーザ(電力使用者)と商用電力系統を運用する電力会社との間の契約で、買電および売電の単価が決まる。一般に、買電の単価は一日のうち時間帯により異なる。即ち、電力需要の少ない深夜電力時間帯は、電力需要の多い深夜電力時間帯外に比べて買電単価が安価に設定される。このような料金体系により電力会社は電力需要の平準化を図っている。深夜電力時間帯は、典型的には夜23時から朝7時である。しかし、電力会社によって、また契約によって異なる時刻に深夜電力時間帯の始期と終期が定められることもある。
【0076】
また、この明細書では、売電単価は深夜電力時間帯の買電単価よりも安価に設定されることを前提としている。よって、買電量を削減することがユーザの経済的な利益となる。
太陽光発電は、自然環境により発電量が時々刻々変動する。また、電力消費機器による消費電力量も時々刻々変動する。買電量を削減するには、これらの変動を予測し、それに基づいて蓄電のタイミングと蓄電量を事前に制御する必要がある。
事前の制御は、余剰電力が発生する際には蓄電装置への蓄電が可能な空き容量が確保されており、一方で余剰電力がなく買電が発生しようとする際は蓄電池に蓄えられた電力を充当して買電を削減できるようにすることを理想とするものである。
しかし、予測値と実績値との間に誤差が発生することは避けられない。また、その誤差の大きさを予め算出することもできない。仮に誤差が予め算出できるとすれば、その誤差をゼロにでき、従って誤差が発生するのを避けられることになるからである。
しかし、過去の実績に基づいて、誤差の大小の程度を統計的に予測することは可能である。
【0077】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記制御部は、過去の複数の集計期間において、(1)何れかの集計期間中に予測余剰発電量が発生すると予測した日について、その日の発電量の実績値から消費電力量の実績値を差し引いた実績余剰発電量とその日の予測に基づいて抑制された蓄電量との差、(2)各集計期間中に発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数、の相関関係に基づいて経済的不利益が発生する可能性の大小を判断してもよい。
このようにすれば、上記(1)と(2)との相関関係に基づいて経済的不利益(負の経済効果)が生じる可能性の大小を判断できる。
【0078】
(iii)前記制御部は、予測余剰発電量の有無を日毎に予測し、経済的不利益発生の可能性に係る判断を所定の集計期間毎に行い、現集計期間において、発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数が予め定められた基準日数を超えるか否かに基づいて前記判断を行い、基準日数を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないように制御してもよい。
このようにすれば、現集計期間において発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数、即ち、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数が基準日数を超えていた場合、予測値と実績値の誤差に起因して負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断し、次の集計期間から蓄電量の抑制を休止できる。
集計期間の一例は「1箇月」である。その場合、制御部は今月の「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数が基準日数を超えていた場合、次月から蓄電量の抑制を実施しない。
【0079】
(iv)前記制御部は、発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日が基準日数を超えるか否かの判断を、現集計期間のうち直近の所定日数を対象に行ってもよい。
このようにすれば、現集計期間のうちの直近の所定日数における実績に基づいて、負の経済効果が生じる可能性の大小を判定できる。即ち、直近の状況に基づいて判定を行うことができる。
【0080】
(v)前記制御部は、実績余剰電力量が予測に基づいて抑制された蓄電量を上回ったか否かの直近の推移に基づいて基準日数を更新してもよい。
このようにすれば、判断に係る基準日数を直近の状況に基づいて更新し、妥当な値に補正することができる。
【0081】
(vi)前記制御部は、予測余剰発電量の発生の有無を日毎に予測し、経済的不利益発生の可能性に係る判断を集計期間毎に行い、現集計期間における予測値と実績値の誤差の平均を算出し、算出された平均誤差が予め定められた閾値を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないようにしてもよい。
このようにすれば、予測値と実績値の誤差の平均が閾値を超える場合はその平均誤差に起因して負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断し、次の集計期間から蓄電量の抑制を休止できる。
【0082】
(vii)前記制御部は、予測余剰発電量の発生の有無を日毎に予測し、経済的不利益発生の可能性に係る判断を集計期間毎に行い、現集計期間のうち直近の所定日数における予測値と実績値の誤差の平均を算出し、算出された平均誤差が予め定められた閾値を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないようにしてもよい。
このようにすれば、現集計期間のうちの直近の所定日数における平均誤差に基づいて、負の経済効果が生じる可能性の大小を判定できる。即ち、直近の平均誤差の状況に基づいて判定を行うことができる。
【0083】
(viii)前記制御部は、予測値と実績値の誤差の直近の推移に基づいて前記閾値を更新してもよい。
このようにすれば、判断に係る閾値を直近の状況に基づいて更新し、妥当な値に補正することができる。
この態様によれば、例えば、負の経済効果が生じる可能性が小さいと判断して蓄電量の抑制を実施しなかったにもかかわらず、不利益が生じた日が直近において増加していると判断した場合、制御部は閾値を小さくして蓄電量の抑制がより実施され易いようにする。逆に、ユーザに経済的な不利益が生じる可能性が大きいと判断して蓄電量の抑制を実施したにもかかわらず、不利益が生じなかった日が直近において増加していると判断した場合、制御部は閾値を大きくして蓄電量の抑制がより実施され難いようにする。
【0084】
(ix)前記制御部は、予測余剰発電量の有無を日毎に予測し、経済的不利益発生の可能性に係る判断を集計期間毎に行い、現集計期間において、発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数が予め定められた基準日数を超える場合、かつ、現集計期間における予測値と実績値の誤差の平均が予め定められた閾値を超える場合、次の集計期間は予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないようにしてもよい。
このようにすれば、現集計期間において発電量の実績値が消費電力量の実績値を下回った日数、即ち、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数と、予測値と実績値の平均誤差との両方に基づいて、予測値と実績値の誤差に起因して負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断し、次の集計期間から蓄電量の抑制を休止できる。
【0085】
(x)前記制御部は、基準日数を超えたために予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないと決めた後、基準日数を超えない集計期間が所定数連続した場合、その次の集計期間から予測余剰発電量が発生すると予測される日について蓄電量の抑制を行うようにしてもよい。
このようにすれば、「消費電力量の実績値」/「発電量の実績値」が1以上の日数に基づいて負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断し、次の集計期間から蓄電量の抑制を休止した後、所定数の集計期間に渡る状況の推移に基づいて蓄電量の抑制の実施を再開することができる。
【0086】
(xi)前記制御部は、前記閾値を超えたために予測余剰発電量が発生すると予測される日についても蓄電量の抑制を行わないと決めた後、前記閾値を超えない集計期間が所定数連続した場合、その次の集計期間から予測余剰発電量が発生すると予測される日について蓄電量の抑制を行うようにしてもよい。
このようにすれば、予測値と実績値の平均誤差に基づいて負の経済効果が生じる可能性が大きいと判断し、次の集計期間から蓄電量の抑制を休止した後、所定数の集計期間に渡る状況の推移に基づいて蓄電量の抑制の実施を再開することができる。
【0087】
(xii)前記制御部は、前記判断の直近の推移に基づいて前記所定数を更新してもよい。
このようにすれば、再開の判断に係る集計期間の長さを直近の推移に基づいて更新し、妥当な値に補正できる。
【0088】
(xiii)前記制御部は、前記電力制御システム毎の発電量の実績値および前記電力制御システム毎の消費電力量の実績値に基づき、その電力制御システムについて経済的不利益発生の可能性に係る判断を行ってもよい。
このようにすれば、商用電力系統全体の実績でなく、電力制御システム毎の実績に基づいてその電力制御システムに係る負の経済効果が生じる可能性の大小を判断することができる。
【0089】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0090】
93a:出力端子、 10:コントローラ、34:双方向DC/DCコンバータ、 35:通信部、 36:メモリ、 37:電力量計、 38:電圧計、 39:IC、 51:入力部、 52:コントローラ通信部、 53:コントローラ用メモリ、 54:コントローラIC
81:分電盤、 91:太陽電池モジュール、 92:電力消費機器、 94:蓄電池、 93:パワーコンディショナ、 95:貯湯式給湯器、 96:商用電力系統、 98:ウェブネットワーク、 100:電力制御システム、 101:発電・消費履歴、 、103:蓄電(沸き上げ)スケジュール、 110:発電量予測部、 120:消費電力量予測部、 130:予測値取得部、 150:残存量取得部、 161:余剰有無判定部、 163:沸き上げ割当部、 164:蓄電割当部、 165:制御可否判定部、 170:蓄電池制御部、 180:給湯器制御部
371:売電力量計、 372:買電力量計、 541:蓄電量監視部、 542:エネルギー管理部
Efc1,Efc2,Efc:予測差分電力量、Erc1,Erc2,Erc:実績差分電力量、 Pfg:予測発電電力、 Pfc:予測消費電力、 Prg:実績発電電力、 Prc:実績消費電力
P:伝送線路、 R:受電点
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5