(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ゴム組成物用カップリング剤及びこれを含むタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230922BHJP
C08K 5/1535 20060101ALI20230922BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230922BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230922BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/1535
C08K3/04
C08L9/00
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2019175638
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115197
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】イ・チェソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ソクキョン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-158293(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031847(WO,A1)
【文献】特開2012-117012(JP,A)
【文献】特開2004-209696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で表されるゴム組成物用カップリング剤:
[化1]
ここで、
X
1~X
3は、それぞれ独立に下記の化2で表される連結基であり、
[化2]
(nは、1~10の間の常数である。)
R
1~R
3は、それぞれ独立に炭素数6個以上の脂肪酸である。
【請求項2】
前記R
1~R
3は、少なくとも一つの不飽和結合を含む不飽和脂肪酸である、
請求項1に記載のゴム組成物用カップリング剤。
【請求項3】
前記R
1~R
3は、それぞれ独立にミリストレイン酸(myristoleic
acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、サピエン酸(sapienic acid)、オレイン酸(oleic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、バクセン酸(vaccenic
acid)、リノール酸(linoleic
acid)、リノレライド酸(linoeladidic
acid)、アラキドン酸(arachidonic
acid)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic
acid)、エルカ酸(erucic acid)又はソルビン酸(sorbic acid)から選ばれる脂肪酸である、
請求項2に記載のゴム組成物用カップリング剤。
【請求項4】
原料ゴム;
カーボンブラック;及び、
下記の化1で表されるカップリング剤;
を含む、
タイヤ用ゴム組成物:
[化1]
ここで、
X
1~X
3は、それぞれ独立に下記の化2で表される連結基であり、
[化2]
(nは、1~10の間の常数である。)
R
1~R
3は、それぞれ独立に炭素数6個以上の脂肪酸である。
【請求項5】
前記原料ゴムは、イソプレン系ゴム及びダイエン系ゴムから選ばれる少なくとも一つを含む、
請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記R
1~R
3は、少なくとも一つの不飽和結合を含む不飽和脂肪酸である、
請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記R
1~R
3は、それぞれ独立にミリストレイン酸(myristoleic
acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、サピエン酸(sapienic acid)、オレイン酸(oleic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、バクセン酸(vaccenic
acid)、リノール酸(linoleic
acid)、リノレライド酸(linoeladidic
acid)、アラキドン酸(arachidonic
acid)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic
acid)、エルカ酸(erucic acid)又はソルビン酸(sorbic acid)から選ばれる脂肪酸である、
請求項6に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物用カップリング剤及びこれを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境に対する関心が高まるにつれ、自動車に対する燃費節減への要請が高まっている。自動車の燃費節減にはタイヤの物性が大きく影響を及ぼすため、このような目的に適したタイヤ用ゴム組成物が強く求められている。
【0003】
例えば、タイヤトレッドの転がり抵抗(rolling resistance)の特性は、地面と接するトレッド表面層の性質によって定まるが、走行時に必ず伴う摩擦力に起因して、転がり抵抗が低いほど車の燃費が高くなり得る。
【0004】
このようなタイヤトレッドを形成するためのゴム組成物には、補強性及び耐磨耗性を向上させるためにカーボンブラック又はシリカが使用されている。
【0005】
充填剤としてカーボンブラックを用いる場合、一般にゴム組成物内のカーボンブラックの分散性が良くないため、直径の大きいカーボンブラックを用いるか、ゴム組成物のうちカーボンブラックの含量を相対的に少なく用いているが、この場合、タイヤトレッドの耐磨耗性が足りないという問題がある。一方、充填剤としてシリカを用いる場合、一般にカーボンブラックに比べて耐磨耗性の向上する効果が足りないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タイヤ用、特に、タイヤトレッドを製造するためのゴム組成物のうち、充填剤としてカーボンブラックの分散性を向上させるためのカップリング剤を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、ゴム組成物のうち原料ゴムとカーボンブラックの間の相互作用を誘導できるカップリング剤を含ませることにより、ゴム組成物のうちカーボンブラックの分散性を向上させ、本発明によるゴム組成物を用いて製造されたタイヤが、低い転がり抵抗の特性及び優れた耐磨耗性を有するようにすることができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を解決するために本発明の一側面によれば、下記の化1で表されるゴム組成物用カップリング剤が提供される。
【0009】
【0010】
ここで、
X1~X3は、それぞれ独立に下記の化2で表される連結基であり、
【0011】
【0012】
R1~R3は、それぞれ独立に炭素数6個以上の脂肪酸である。
【0013】
また、本発明の他の側面によれば、原料ゴム、カーボンブラック及び上記の化1で表されるカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【0014】
また、本発明のさらに他の側面によれば、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるゴム組成物用カップリング剤は、原料ゴム及びカーボンブラックとそれぞれ相互作用が可能な官能基を含むことにより、原料ゴム及びカーボンブラックの間のカップリングを促進することができ、ゴム組成物内のカーボンブラックの分散性を向上させることができる。
【0016】
本発明によるゴム組成物は、原料ゴム及びカーボンブラックの間のカップリングを促進するカップリング剤によって、低い転がり抵抗の特性及び優れた耐磨耗性を有するタイヤを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0018】
以下では、本発明によるゴム組成物用カップリング剤について詳説する。
【0019】
本発明の一側面によれば、下記の化1で表されるゴム組成物用カップリング剤が提供される。
【0020】
【0021】
ここで、X1~X3は、それぞれ独立に下記の化2で表されるエチレングリコール系連結基であり、nは、1~10の間の常数である。
【0022】
【0023】
R1~R3は、それぞれ独立に炭素数6個以上の脂肪酸である。ここで、脂肪酸は、カルボキシル基に連結された脂肪族官能基に不飽和結合がない飽和脂肪酸(CH3(CH2)nCO2H)であるか、カルボキシル基に連結された脂肪族官能基に少なくとも一つ以上の不飽和結合が存在する不飽和脂肪酸であってもよい。
【0024】
飽和脂肪酸は例えば、カプリル酸(caprylic acid)、カプリン酸(capric
acid)、ラウリン酸(lauric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)、パルミチン酸(palmitic
acid)、ステアリン酸(stearic acid)、アラキジン酸(arachidic acid)、ベヘン酸(behenic
acid)、リグノセリン酸(lignoceric acid)又はセロチン酸(cerotic acid)であってもよい。
【0025】
不飽和脂肪酸は例えば、ミリストレイン酸(myristoleic
acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、サピエン酸(sapienic acid)、オレイン酸(oleic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、バクセン酸(vaccenic
acid)、リノール酸(linoleic
acid)、リノレライド酸(linoeladidic
acid)、アラキドン酸(arachidonic
acid)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic
acid)、エルカ酸(erucic acid)又はソルビン酸(sorbic acid)であってもよい。
【0026】
上記に列挙した飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は、それぞれ独立にR1~R3の位置へ来られる脂肪酸作用基であって、本願に例示として記載しなかったとしても、他の構造及び形態の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が脂肪酸作用基としてR1~R3の位置に存在し得る。
【0027】
また、不飽和脂肪酸の場合、別途言及していない限り、cis又はtrans異性質体も含むものと理解しなければならない。例えば、9番及び12番炭素の二重結合がcis-配列であるリノール酸の場合、9番炭素の二重結合がtrans-配列である不飽和脂肪酸と、12番炭素の二重結合がtrans-配列である不飽和脂肪酸として存在し得る。(9番及び12番炭素の二重結合がいずれもtrans-配列である不飽和脂肪酸は、リノレライド酸である。)
【0028】
また、化学式には別途示していないが、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のアルキル又はアルケニル鎖のうち任意の炭素は、水素(H)ではない他の作用基に置換されてもよい。
【0029】
このとき、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のアルキル又はアルケニル鎖のうち、任意の炭素に置換可能な作用基は、化1で表されるカップリング剤とカーボンブラックの間の疎水性相互作用を促進するために疎水性作用基であることが好ましい。
【0030】
飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のアルキル又はアルケニル鎖のうち、任意の炭素に置換可能な疎水性作用基としては、例えば、C1-C10アルキル、C6-C12シクロアルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C6-C12アリール又はアルアルキルが用いられてもよい。
【0031】
疎水性作用基がアルケニル又はアルキニルであるとき、アルケニルのsp2-混成炭素又はアルキニルのsp-混成炭素が直接に結合するか、アルケニルのsp2-混成炭素又はアルキニルのsp-混成炭素に結合したアルキルのsp3-混成炭素によって間接に結合した形態であってもよい。
【0032】
本願におけるCa-Cb作用基は、a~b個の炭素原子を有する作用基を意味する。例えば、Ca-Cbアルキルは、a~b個の炭素原子を有する、直鎖アルキル及び分鎖アルキル等を含む飽和脂肪族基を意味する。直鎖又は分鎖アルキルは、その主鎖に10個以下(例えば、C1-C10の直鎖、C3-C10の分鎖)、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。
【0033】
具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペント-1-イル、ペント-2-イル、ペント-3-イル、3-メチルブト-1-イル、3-メチルブト-2-イル、2-メチルブト-2-イル、2,2,2-トリメチルエト-1-イル、n-ヘキシル、n-ヘプチル及びn-オキチルであってもよい。
【0034】
本願におけるシクロアルキル(cycloalkyl)は、他に定義されない限り、アルキルの環状構造と理解されてもよい。
【0035】
シクロアルキルの非制限的な例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル及びシクロヘプチル等がある。
【0036】
本願におけるアリールは、他に定義されない限り、単一環又は互いに接合又は共有結合で連結された多重環(好ましくは、1~4個の環)を含む不飽和芳香族性環を意味する。アリールの非制限的な例としては、フェニル、ビフェニル、o-テルフェニル(terphenyl)、m-テルフェニル、p-テルフェニル、1-ナプチル、2-ナプチル、1-アントリル(anthryl)、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントレニル(phenanthrenyl)、2-フェナントレニル、3-フェナントレニル、4-フェナントレニル、9-フェナントレニル、1-ピレニル、2-ピレニル、及び4-ピレニル等がある。
【0037】
本願におけるアラルキルは、アリールがアルキルの炭素に置換された形態の作用基であって、-(CH2)nArの総称である。アラルキルの例として、ベンジル(-CH2C6H5)又はフェネチル(-CH2CH2C6H5)等がある。
【0038】
化2で表されるエチレングリコール系連結基であるX2又はX3と脂肪酸は、酸触媒下で、下記の反応式1によって結合してカップリング剤を形成することができる。
【0039】
【0040】
ここで、脂肪酸のRは、脂肪酸のカルボキシル基の炭素に結合したアルキル又はアルケニル鎖であって、カップリング剤は、脂肪酸のアルキル又はアルケニル鎖を介してカーボンブラックの疎水性表面と疎水性相互作用を行い得る。
【0041】
一方、カップリング剤のエチレングリコールの繰り返し単位は、親水性連結基であって、原料ゴムの表面の親水性作用基との親水性相互作用を行うだけでなく、カーボンブラックの表面の親水性作用基との親水性相互作用を行うことにより、原料ゴムとカーボンブラックの間のカップリングを誘導することが可能である。
【0042】
本発明の他の側面によれば、原料ゴム、カーボンブラック及び下記の化1で表されるカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【0043】
【0044】
ここで、X1~X3は、それぞれ独立に下記の化2で表されるエチレングリコール系連結基であり、nは、1~10の間の常数である。
【0045】
【0046】
ゴム組成物100重量部に対し、カップリング剤は、0.5~5重量部含まれることが好ましい。
【0047】
カップリング剤の含量が、ゴム組成物100重量部に対し、0.5重量部未満である場合、カップリング剤による原料ゴム及びカーボンブラックの間のカップリング促進効果が少なく、ゴム組成物のうちカーボンブラックの足りる分散性を達成し難い可能性がある。
【0048】
一方、カップリング剤の含量が、ゴム組成物100重量部に対し、5重量部を超える場合、過量のカップリング剤による副産物の発生が増加するか、ゴム組成物のうちカーボンブラック、カーボンブラック及び原料ゴムの間の分散性が低下するおそれがある。
【0049】
ここで、原料ゴムは、イソプレン系ゴム及びダイエン系ゴムから選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0050】
イソプレン系ゴムは例えば、脱タンパク質天然ゴム及び高純度天然ゴムのような天然ゴム又はエポキシ化天然ゴム、水素添加天然ゴム及びグラフト化天然ゴムのような改質天然ゴムを含んでいてもよい。
【0051】
ダイエン系ゴムは例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン含有スチレンブタジエンゴム又はニトリル含有スチレンブタジエンゴムを含んでいてもよい。
【0052】
上述した原料ゴムのほか、ネオプレンゴム、クロロブチルゴム又はブロモブチルゴム等も用いることができる。また、原料ゴムとして1種の原料ゴムを単独に用いることができるが、上述した原料ゴムのうち少なくとも2種を併用して用いることができる。
【0053】
ゴム組成物100重量部に対し、原料ゴムは、20~60重量部含まれることが好ましい。
【0054】
ゴム組成物100重量部に対し、原料ゴムの含量が20重量部未満である場合、引張強度を含む機械的物性が落ちるおそれがある。一方、ゴム組成物100重量部に対し、原料ゴムの含量が60重量部を超える場合、補強性及びゴム組成物の機械的性能において不利であるおそれがある。
【0055】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック(furnace black)、アセチレンブラック、サーマルブラック(thermal black)、チャンネルブラック等を用いることができる。
【0056】
ゴム組成物100重量部に対し、カーボンブラックは、20~50重量部含まれることが好ましい。
【0057】
ゴム組成物100重量部に対し、カーボンブラックの含量が20重量部未満である場合、補強性を含む機械的物性において不利であるおそれがある。
【0058】
一方、ゴム組成物100重量部に対し、カーボンブラックの含量が50重量部を超える場合、ゴム組成物内のムーニー粘度(Mooney viscosity)、発熱性能及び粘弾性物性等において不利であるおそれがある。
【0059】
また、本発明によるゴム組成物は、シリカ、クレイ(clay)又はタルク(talc)等のような補強剤をさらに含んでいてもよい。
【0060】
のみならず、本発明によるゴム組成物は、カップリング剤による原料ゴム及びカーボンブラックの間のカップリング相互作用に影響を与えない範囲内で、スルフェンアミド(sulfenamide)のような加硫促進剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等のような加硫促進助剤、ナフテンオイル(naphthenic
oil)、アロマオイル等のプロセスオイル、ステアリン酸等のような分散剤(ワックス)、老化予防剤、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、解膠剤(peptizing agent)、粘着樹脂、加硫遅延剤等のような添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0061】
また、本発明のさらに他の側面によれば、上述したタイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤが提供される。
【0062】
例えば、バンバリーミキサー(Banbury mixer)又はオープンロ-ル(open roll)等のような混練機を用いてカーカス、ベルト、ビッド又はトレッド等のようなタイヤ用ゴム部材として製造されてもよい。
【0063】
タイヤ用ゴム組成物の組成
実施例1
天然ゴム30重量部、ブタジエンゴム2種40重量部、カーボンブラック40、酸化亜鉛4重量部、ステアリン酸1重量部、老化防止剤1重量部、及びカップリング剤として、下記の化1で表される化合物0.8重量部を160℃で1分間配合して、165℃で放出した後、2次配合において105℃で硫黄4.5重量部、加硫促進剤1.2重量部を加えてタイヤ用ゴム組成物を製造した。
【0064】
【0065】
ここで、X1~X3は、それぞれ独立に下記の化2で表される連結基であり、nは、1である。
【0066】
【0067】
R1~R3は、それぞれ独立に下記の化4で表されるソルビン酸である。
【0068】
【0069】
実施例2
化1で表されるカップリング剤のR1~R3が、それぞれ独立に下記の化5で表されるオレイン酸であることを除いては、実施例1と同様にゴム組成物を製造した。
【0070】
【0071】
比較例1
カップリング剤を用いていないことを除いては、実施例1と同様にゴム組成物を製造した。
【0072】
比較例2
カップリング剤としてBis[(3-thiethoxysilyl)propyl]tetrasulfide(TESPTS)を用いたことを除いては、実施例1と同様にゴム組成物を製造した。
【0073】
実験例1.ゴム組成物の物性評価
各実施例及び比較例に従って製造されたゴム組成物の物性を次のような方法で評価した。
【0074】
1)ムーニー粘度(ML1+4,100℃):ムーニー粘度は、ASTM D 1646 RUBBER
FROM NATURAL OR SYNTHETIC SOURCES-VISCOSITY AND VULCANIZATION CHARACTERISTICS(MOONEY VISCOMETER)によって各実施例及び比較例において製造された第1のマスター配置及びゴム組成物に対してそれぞれ測定した。
【0075】
50-ML1+4(100℃)ここで、50-Mは、粘度数であり、Lは、LARGE
ROTORを用いたことを示し、1は、モーターを作動する前に約1分間予熱させたことを意味し、4は、規定した測定時間、100℃は、測定温度を意味する。
【0076】
ムーニー粘度が高いほど、第1のマスター配置及びゴム組成物内の構成成分の分散性が落ちることを意味する。
【0077】
2)ムーニースコーチタイム(MST):ムーニースコーチタイム(MST)は、ASTM
D 1646:Rubber-Viscosity,Stress Relaxation,and Pre-Vulcanization characteristics(Mooney Viscometer)によって各実施例及び比較例において製造されたゴム組成物に対してそれぞれ測定した。
【0078】
MSTが短い場合、scorchが早く発生し得て、タイヤ製造工程中にゴムの加工性が低下するおそれがある。
【0079】
3)Rheometer(MDR):Rheometer(MDR)は、ASTM
D1349、ASTM D1556、ASTM D2084、ASTM D4483、ISO 6502、ASTM D 5289によって各実施例及び比較例において製造されたゴム組成物に対してそれぞれ測定した。
【0080】
Rheometerのt90時間が長いほど、タイヤ製造工程中に、特に加硫工程における生産性が低下する問題がある。
【0081】
【0082】
上記表1の結果を参照すれば、実施例1及び実施例2の場合、比較例1及び比較例2に比べて、ゴム組成物で測定されたムーニー粘度値が小さいことを確認することができる。通常、ゴム組成物のうちカーボンブラックの分散性が高くなる場合、ムーニー粘度値は、低くなる傾向がある。
【0083】
また、実施例1及び実施例2に比べて、比較例1及び比較例2のRheometer値が多少早くなったことを確認することができる。これは、ゴム組成物のうちカーボンブラックの分散性が足りないことによるものと理解することができる。
【0084】
実験例2.ゴムシートの物性評価
ASTM D 3182
RUBBER-PREPARING STANDARD VULCANIZED SHEETによって、各実施例及び比較例に従って製造されたゴム組成物を用いてゴムシートを製造しており、各実施例及び比較例に従って製造されたゴム組成物を用いて製造されたゴムシートの物性を次のような方法で評価した。
【0085】
1)硬度(Hardness):ゴムの硬度測定は、ASTM D2240 SHORE
A2-TYPEゴム硬度測定機を測定法によって測定した。ゴムシートの硬度は、ゴムシートの表面に標準サイズの針(Indentor)に規定の圧力下に入る程度の性質と見なされる。
【0086】
2)引張応力(M300%)及び伸長(ELONGATION)は、ASTM
412-98a:STANDARD TEST METHODS FOR VULCANIZED RUBBER AND THERMOPLASTIC ELASTOMERS-TENSIONによって測定した。
【0087】
3)Heat buildup(HBU):HBUは、ASTM
D623及びASTM D3182によって測定した。HBU値が大きいほど、発熱が相対的に少ないことを意味する。
【0088】
4)Rebound:ASTM
D 2632:RUBBER PROPERTY-RESILIENCE VERTICAL REBOUND、ASTM D 1054:RUBBER PROPERTY-RESILIENCE
USING A REBOUND PENDULUMによって測定した。Rebound値が大きいほど、弾性項が大きく、熱損失が少ない。
【0089】
5)DMA:ASTM
D4065、D4440、D5279によって測定した。tanδ@60℃は、転がり抵抗の代用数値であって、小さいほど性能に優れることを意味する。
【0090】
6)Lambourn
abrasion loss:JIS K6264-93、JIS R6211、JIS R6210、JIS R6111によって測定した。Lambourn値が小さいほど、損失が少ないことを意味する。
【0091】
【0092】
上記表2の結果を参考すれば、実施例1及び実施例2によるゴム組成物を用いて製造されたゴムシートは、カーボンブラックカップリング剤を用いていない比較例1、及び従来に通用するカップリング剤を用いた比較例2に比べて、tanδ60℃値が低いことを確認することができる。ゴム組成物のうちカーボンブラックの分散性が向上することにより、向上によってカーボンブラックとカーボンブラックの間から出られるHysteresisの減少による熱エネルギー損失の減少が影響を与えたと判断される。
【0093】
また、実施例1及び実施例2の場合、比較例1及び比較例2に比べて、高い300%Modulus値を有していることを確認することができる。これは、ゴム組成物のうちカーボンブラックの高い分散性に起因したゴムの仮橋密度の向上によると判断することができる。
【0094】
すなわち、カーボンブラックカップリング剤を用いる場合、ゴム組成物のうち原料ゴムとカーボンブラックの分散性を高めて、ゴムに破砕して分散されない破砕ゴム量が減るため、これは、ゴムの仮橋密度の改善にも影響を及ぼしたと判断される。
【0095】
ただし、実施例1及び実施例2の場合、比較例1及び比較例2に比べてModulusが高いため、Elongationは、低い値を有する傾向があるが、 Elongation数値が500%以上であり、ゴムシートの物性に大きく影響を与えない範囲内であると確認することができる。
【0096】
以上、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加等によって本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれる。