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特許7353154ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/14 301
B41J2/14 607
B41J2/14 605
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019215364
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084348
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藍 知季
(72)【発明者】
【氏名】山村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研治
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120297(JP,A)
【文献】特開2015-024629(JP,A)
【文献】特開2011-178055(JP,A)
【文献】特開2015-100947(JP,A)
【文献】特開2010-234539(JP,A)
【文献】特開2017-144699(JP,A)
【文献】特開2019-089221(JP,A)
【文献】特開2019-089222(JP,A)
【文献】米国特許第06010208(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッドチップであって、
複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと
前記吐出溝内に前記液体を流入させるための第1貫通孔と、前記吐出溝内から前記液体を流出させるための第2貫通孔と、前記吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと
を備え、
前記複数の吐出溝が、それらの少なくとも一部が所定方向に沿って互いに重なるようにして、並んで配置されており、
前記複数のノズル孔のうちの前記所定方向に沿って隣接するノズル孔同士が、前記ノズルプレート内における前記吐出溝の延在方向に沿って、互いにずれて配置されており、
前記吐出溝ごとの前記第1貫通孔および前記第2貫通孔からなる貫通孔対が、前記吐出溝の延在方向に沿って並んで配置されており、
前記貫通孔対における前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間の距離に対応する、前記吐出溝の延在方向に沿った前記壁部の長さが、全ての前記貫通孔対において同一になっている共に、
前記第1貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第1開口長と、前記第2貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第2開口長と、の間の大小関係が、前記所定方向に沿って隣接する前記貫通孔対同士で、交互に入れ替わっている
ヘッドチップ。
【請求項2】
前記複数の吐出溝の全体が、前記所定方向に沿って互いに重なるようにして配置されており、
前記複数の吐出溝全体が、前記所定方向に沿って1列に配置されている
請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記カバープレートは、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第1貫通孔の各々と連通している第1共通流路と、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第2貫通孔の各々と連通している第2共通流路と
を更に有しており、
前記第1共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第1流路幅が、前記所定方向に沿って一定になっていると共に、
前記第2共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第2流路幅が、前記所定方向に沿って一定になっている
請求項1または請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記カバープレートは、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第1貫通孔の各々と連通している第1共通流路と、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第2貫通孔の各々と連通している第2共通流路と
を更に有しており、
前記第1共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第1流路幅が、前記所定方向に沿って隣接する前記貫通孔対同士における前記第1開口長の交互の変化に応じて、前記所定方向に沿って変化していると共に、
前記第2共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第2流路幅が、前記所定方向に沿って隣接する前記貫通孔対同士における前記第2開口長の交互の変化に応じて、前記所定方向に沿って変化している
請求項1または請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
液体を噴射するヘッドチップであって、
複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、
前記吐出溝内に前記液体を流入させるための第1貫通孔と、前記吐出溝内から前記液体を流出させるための第2貫通孔と、前記吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと
を備え、
前記複数の吐出溝が、それらの少なくとも一部が所定方向に沿って互いに重なるようにして、並んで配置されており、
前記複数のノズル孔のうちの前記所定方向に沿って隣接するノズル孔同士が、前記ノズルプレート内における前記吐出溝の延在方向に沿って、互いにずれて配置されており、
前記吐出溝ごとの前記第1貫通孔および前記第2貫通孔からなる貫通孔対が、前記吐出溝の延在方向に沿って並んで配置されており、
前記貫通孔対における前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間の距離に対応する、前記吐出溝の延在方向に沿った前記壁部の長さが、全ての前記貫通孔対において同一になっている共に、
前記第1貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第1開口長と、前記第2貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第2開口長とが、互いに同一になっており、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔がそれぞれ、前記所定方向に沿って、千鳥配置となっている
ヘッドチップ。
【請求項6】
前記複数の吐出溝における一部が、前記所定方向に沿って互いに重なるようにして配置されており、
前記複数の吐出溝全体が、前記所定方向に沿って千鳥配置となっている
請求項に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
前記アクチュエータプレートが、前記所定方向に沿って並設された複数の非吐出溝を更に有していると共に、
前記吐出溝と前記非吐出溝とが、前記所定方向に沿って交互に配置されており、
前記非吐出溝における前記非吐出溝の延在方向に沿った一方側は、前記ノズルプレート側へ向けて前記非吐出溝の断面積が徐々に小さくなる、曲面状の側面になっていると共に、
前記非吐出溝における前記非吐出溝の延在方向に沿った他方側は、前記アクチュエータプレートにおける前記非吐出溝の延在方向に沿った端部に至るまで、開口している
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のヘッドチップを備えた
液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような液体噴射ヘッドには、インク(液体)を噴射するヘッドチップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-174857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヘッドチップ等では一般に、印刷画質を向上させることが求められている。印刷画質を向上させることが可能な、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る第1のヘッドチップは、複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、吐出溝内に液体を流入させるための第1貫通孔と、吐出溝内から液体を流出させるための第2貫通孔と、吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと、を備えたものである。上記複数の吐出溝は、それらの少なくとも一部が所定方向に沿って互いに重なるようにして、並んで配置されている。また、上記複数のノズル孔のうちの上記所定方向に沿って隣接するノズル孔同士は、ノズルプレート内における吐出溝の延在方向に沿って、互いにずれて配置されている。また、吐出溝ごとの第1貫通孔および第2貫通孔からなる貫通孔対が、吐出溝の延在方向に沿って並んで配置されており、貫通孔対における第1貫通孔と第2貫通孔との間の距離に対応する、吐出溝の延在方向に沿った壁部の長さが、全ての貫通孔対において同一になっている共に、第1貫通孔における吐出溝の延在方向に沿った長さである第1開口長と、第2貫通孔における吐出溝の延在方向に沿った長さである第2開口長と、の間の大小関係が、上記所定方向に沿って隣接する貫通孔対同士で、交互に入れ替わっている。
本開示の一実施の形態に係る第2のヘッドチップは、複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、吐出溝内に液体を流入させるための第1貫通孔と、吐出溝内から液体を流出させるための第2貫通孔と、吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと、を備えたものである。上記複数の吐出溝は、それらの少なくとも一部が所定方向に沿って互いに重なるようにして、並んで配置されている。また、上記複数のノズル孔のうちの上記所定方向に沿って隣接するノズル孔同士は、ノズルプレート内における吐出溝の延在方向に沿って、互いにずれて配置されている。また、吐出溝ごとの第1貫通孔および第2貫通孔からなる貫通孔対が、吐出溝の延在方向に沿って並んで配置されており、貫通孔対における第1貫通孔と第2貫通孔との間の距離に対応する、吐出溝の延在方向に沿った壁部の長さが、全ての貫通孔対において同一になっている共に、第1貫通孔における吐出溝の延在方向に沿った長さである第1開口長と、第2貫通孔における吐出溝の延在方向に沿った長さである第2開口長とが、互いに同一になっており、第1貫通孔および第2貫通孔がそれぞれ、上記所定方向に沿って、千鳥配置となっている。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、本開示の一実施の形態に係る第1または第2のヘッドチップを備えたものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係る第1および第2のヘッドチップ、液体噴射ヘッドならびに液体噴射記録装置によれば、印刷画質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
図2】ノズルプレートを取り外した状態における液体噴射ヘッドの構成例を表す模式底面図である。
図3図2に示したIII-III線に沿った断面構成例を表す模式図である。
図4図2に示したIV-IV線に沿った断面構成例を表す模式図である。
図5図3図4に示したカバープレートの上面側における液体噴射ヘッドの平面構成例を表す模式図である。
図6図3図4に示したアクチュエータプレートの端部付近の平面構成例を表す模式図である。
図7】比較例に係る液体噴射ヘッドにおいてノズルプレートを取り外した状態の構成例を表す模式底面図である。
図8図7に示したVIII-VIII線に沿った断面構成例を表す模式図である。
図9】変形例1に係る液体噴射ヘッドにおけるカバープレートの上面側の平面構成例を表す模式図である。
図10】変形例1に係る液体噴射ヘッドにおける断面構成例を表す模式図である。
図11】変形例1に係る液体噴射ヘッドにおける他の断面構成例を表す模式図である。
図12】変形例2に係る液体噴射ヘッドにおけるカバープレートの上面側の平面構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(ノズル孔:千鳥配置,吐出溝:一列配置となっている構成の例)
2.変形例
変形例1(共通流路の流路幅が貫通孔の開口長に応じて変化する構成の例)
変形例2(ノズル孔および吐出溝ともに千鳥配置となっている構成の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[A.プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。プリンタ1は、後述するインク9を利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。なお、この被記録媒体としては、紙には限定されず、例えばセラミックやガラス等の、被記録可能な材質を含むものである。
【0012】
プリンタ1は、図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、循環流路50と、走査機構6とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4(後述するインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4K)は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。この駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z-X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0015】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のインク9を個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインク9を収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインク9を収容するインクタンク3Mと、シアンのインク9を収容するインクタンク3Cと、ブラックのインク9を収容するインクタンク3Kとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Kは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、収容するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクタンク3と総称して説明する。
【0017】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル(ノズル孔H1,H2)から記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録(印刷)を行うヘッドである。このインクジェットヘッド4としても、この例では図1に示したように、上記したインクタンク3Y,3M,3C,3Kにそれぞれ収容されている4色のインク9を個別に噴射する、4種類のヘッドが設けられている。すなわち、イエローのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Yと、マゼンダのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Mと、シアンのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Cと、ブラックのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Kとが設けられている。これらのインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kは、筺体10内において、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0018】
なお、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kはそれぞれ、利用するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクジェットヘッド4と総称して説明する。また、このインクジェットヘッド4の詳細構成例については、後述する(図2図6)。
【0019】
(循環流路50)
循環流路50は、図1に示したように、流路50a,50bを有している。流路50aは、インクタンク3から送液ポンプ(不図示)を介して、インクジェットヘッド4へと至る部分の流路である。流路50bは、インクジェットヘッド4から送液ポンプ(不図示)を介して、インクタンク3へと至る部分の流路である。言い換えると、流路50aは、インクタンク3からインクジェットヘッド4へと向かって、インク9が流れる流路である。また、流路50bは、インクジェットヘッド4からインクタンク3へと向かって、インク9が流れる流路である。
【0020】
このようにして本実施の形態では、インクタンク3内とインクジェットヘッド4内との間で、インク9が循環するようになっている。なお、これらの流路50a,50b(インク9の供給チューブ)はそれぞれ、例えば、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0021】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール61a,61bと、これらのガイドレール61a,61bに移動可能に支持されたキャリッジ62と、このキャリッジ62をY軸方向に沿って移動させる駆動機構63と、を有している。
【0022】
駆動機構63は、ガイドレール61a,61bの間に配置された一対のプーリ631a,631bと、これらのプーリ631a,631b間に巻回された無端ベルト632と、プーリ631aを回転駆動させる駆動モータ633と、を有している。また、キャリッジ62上には、前述した4種類のインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kが、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0023】
このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。なお、このような方式の移動機構には限られず、例えば、インクジェットヘッド4を固定しつつ被記録媒体(記録紙P)のみを移動させることで、インクジェットヘッド4と被記録媒体とを相違的に移動させる方式(いわゆる「シングルパス方式」)であってもよい。
【0024】
[B.インクジェットヘッド4の詳細構成]
続いて、図1に加えて図2図6を参照して、インクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)の詳細構成例について説明する。
【0025】
図2は、ノズルプレート411(後出)を取り外した状態におけるインクジェットヘッド4の構成例を、模式的に底面図(X-Y底面図)で表したものである。図3は、図2に示したIII-III線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。同様に、図4は、図2に示したIV-IV線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。また、図5は、図3図4に示したカバープレート413(後出)の上面側におけるインクジェットヘッド4の平面構成例(X-Y平面構成例)を、模式的に表したものである。図6は、図3図4に示したアクチュエータプレート412(後出)におけるY軸方向に沿った端部付近の平面構成例(X-Y平面構成例)を、模式的に表したものである。
【0026】
なお、図3図6においては、後述する吐出チャネルC1e,C2eおよび後述するノズル孔H1,H2のうち、後述するノズル列An1に対応して配置された、吐出チャネルC1eおよびノズル孔H1について、便宜上、代表して図示している。つまり、後述するノズル列An2に対応して配置された、吐出チャネルC2eおよびノズル孔H2についても、同様の構成となっているため、図示を省略する。
【0027】
本実施の形態のインクジェットヘッド4は、後述するヘッドチップ41における複数のチャネル(複数のチャネルC1および複数のチャネルC2)の延在方向(Y軸方向)の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドである。また、このインクジェットヘッド4は、前述した循環流路50を用いることで、インクタンク3との間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドである。
【0028】
図3図4に示したように、インクジェットヘッド4は、ヘッドチップ41を備えている。また、このインクジェットヘッド4には、図示しない制御機構(ヘッドチップ41の動作を制御する機構)として、回路基板およびフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)が設けられている。
【0029】
回路基板は、ヘッドチップ41を駆動するための駆動回路(電気回路)を搭載する基板である。フレキシブルプリント基板は、この回路基板上の駆動回路と、ヘッドチップ41における後述する駆動電極Edとの間を、電気的に接続するための基板である。なお、このようなフレキシブルプリント基板には、複数の引き出し電極がプリント配線されるようになっている。
【0030】
ヘッドチップ41は、図3図4に示したように、インク9をZ軸方向に沿って噴射する部材であり、各種のプレートを用いて構成されている。具体的には図3図4に示したように、ヘッドチップ41は、ノズルプレート(噴射孔プレート)411、アクチュエータプレート412およびカバープレート413を、主に備えている。これらのノズルプレート411、アクチュエータプレート412およびカバープレート413はそれぞれ、例えば接着剤等を用いて互いに貼り合わされており、Z軸方向に沿ってこの順に積層されている。なお、以下では、Z軸方向に沿ってカバープレート413側を上方と称すると共に、ノズルプレート411側を下方と称して説明する。
【0031】
(ノズルプレート411)
ノズルプレート411は、例えば50μm程度の厚みを有する、ポリイミド等のフィルム材からなり、図3図4に示したように、アクチュエータプレート412の下面に接着されている。ただし、ノズルプレート411の構成材料は、ポリイミド等の樹脂材料には限られず、例えば金属材料であってもよい。
【0032】
また、図2に示したように、このノズルプレート411には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のノズル列(ノズル列An1,An2)が設けられている。これらのノズル列An1,An2同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。このように、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)は、2列タイプのインクジェットヘッド(ヘッドチップ)となっている。
【0033】
ノズル列An1は、詳細は後述するが、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて並んで形成された、複数のノズル孔H1を有している。これらのノズル孔H1はそれぞれ、ノズルプレート411をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通しており、例えば図3図4に示したように、後述するアクチュエータプレート412における吐出チャネルC1e内に個別に連通している。また、ノズル孔H1におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC1eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一(同一ピッチ)となっている。このようなノズル列An1内のノズル孔H1からは、詳細は後述するが、吐出チャネルC1e内から供給されるインク9が吐出(噴射)されるようになっている。
【0034】
ノズル列An2も同様に、詳細は後述するが、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて並んで形成された、複数のノズル孔H2を有している。これらのノズル孔H2もそれぞれ、ノズルプレート411をその厚み方向に沿って貫通しており、後述するアクチュエータプレート412における吐出チャネルC2e内に個別に連通している。また、ノズル孔H2におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC2eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一となっている。このようなノズル列An2内のノズル孔H2からも、詳細は後述するが、吐出チャネルC2e内から供給されるインク9が吐出されるようになっている。
【0035】
また、図2に示したように、ノズル列An1における各ノズル孔H1と、ノズル列An2における各ノズル孔H2とは、X軸方向に沿って互い違いとなるように配置されている。したがって、本実施の形態のインクジェットヘッド4では、ノズル列An1におけるノズル孔H1と、ノズル列An2におけるノズル孔H2とが、千鳥状に配置(千鳥配置)されている。なお、このようなノズル孔H1,H2はそれぞれ、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ状の貫通孔となっている(図3図4参照)。
【0036】
ここで、本実施の形態のノズルプレート411では、図2に示したように、ノズル列An1における複数のノズル孔H1のうち、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士が、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿って、互いにずれて配置されている。つまり、このノズル列An1における複数のノズル孔H1全体が、X軸方向に沿って千鳥配置されている。具体的には、図2に示したように、ノズル列An1における複数のノズル孔H1が、X軸方向に沿って延在するノズル列An11に属する複数のノズル孔H11と、X軸方向に沿って延在するノズル列An12に属する複数のノズル孔H12と、を含むようになっている。また、各ノズル孔H11は、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の正側(後述する第1供給スリットSin1側)に、ずれて配置されている。一方、各ノズル孔H12は、吐出チャネルC1eの延在方向に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の負側(後述する第1排出スリットSout1側)に、ずれて配置されている。
【0037】
同様にして、このノズルプレート411では、図2に示したように、ノズル列An2における複数のノズル孔H2のうち、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H2同士が、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、互いにずれて配置されている。つまり、このノズル列An2における複数のノズル孔H2全体が、X軸方向に沿って千鳥配置されている。具体的には、図2に示したように、ノズル列An2における複数のノズル孔H2が、X軸方向に沿って延在するノズル列An21に属する複数のノズル孔H21と、X軸方向に沿って延在するノズル列An22に属する複数のノズル孔H22と、を含むようになっている。また、各ノズル孔H21は、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の負側(後述する第2供給スリット側)に、ずれて配置されている。一方、各ノズル孔H22は、吐出チャネルC2eの延在方向に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の正側(後述する第2排出スリット側)に、ずれて配置されている。
【0038】
なお、このようなノズル孔H1(H11,H12),H2(H21,H22)の配置構成の詳細については、後述する。
【0039】
(アクチュエータプレート412)
アクチュエータプレート412は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート412は、図3図4に示したように、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板を、厚み方向(Z軸方向)に沿って積層して構成されている(いわゆる、シェブロンタイプ)。ただし、アクチュエータプレート412の構成としては、このシェブロンタイプには限られない。すなわち、例えば、分極方向が厚み方向(Z軸方向)に沿って一方向に設定されている1つ(単一)の圧電基板によって、アクチュエータプレート412を構成するようにしてもよい(いわゆる、カンチレバータイプ)。
【0040】
また、図2に示したように、アクチュエータプレート412には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のチャネル列(チャネル列421,422)が設けられている。これらのチャネル列421,422同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。
【0041】
このようなアクチュエータプレート412では、図2に示したように、X軸方向に沿った中央部(チャネル列421,422の形成領域)に、インク9の吐出領域(噴射領域)が設けられている。一方、アクチュエータプレート412において、X軸方向に沿った両端部(チャネル列421,422の非形成領域)には、インク9の非吐出領域(非噴射領域)が設けられている。この非吐出領域は、上記した吐出領域に対して、X軸方向に沿った外側に位置している。なお、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った両端部はそれぞれ、図2に示したように、尾部420を構成している。
【0042】
上記したチャネル列421は、図2に示したように、複数のチャネルC1を有している。これらのチャネルC1は、図2に示したように、アクチュエータプレート412内において、Y軸方向に沿って延在している。また、これらのチャネルC1は、図2に示したように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC1は、圧電体(アクチュエータプレート412)からなる駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、Z-X断面の断面視にて、凹状の溝部となっている。
【0043】
チャネル列422も同様に、図2に示したように、Y軸方向に沿って延在する複数のチャネルC2を有している。これらのチャネルC2は、図2に示したように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC2もまた、上記した駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、Z-X断面の断面視にて、凹状の溝部となっている。
【0044】
ここで、図2図6に示したように、チャネルC1には、インク9を吐出させるための吐出チャネルC1e(吐出溝)と、インク9を吐出させないダミーチャネルC1d(非吐出溝)とが存在している。各吐出チャネルC1eは、ノズルプレート411におけるノズル孔H1と連通している一方(図3図4参照)、各ダミーチャネルC1dはノズル孔H1には連通しておらず、ノズルプレート411の上面によって下方から覆われている。
【0045】
複数の吐出チャネルC1eは、それらの少なくとも一部が所定方向(X軸方向)に沿って互いに重なるようにして並設されており、特に図2の例では、複数の吐出チャネルC1e全体が、X軸方向に沿って互いに重なるようにして配置されている。これにより図2に示したように、複数の吐出チャネルC1e全体が、X軸方向に沿って1列に配置されるようになっている。同様にして、複数のダミーチャネルC1dは、X軸方向に沿って並設されており、図2の例では、複数のダミーチャネルC1d全体が、X軸方向に沿って1列に配置されている。また、このチャネル列421では、このような吐出チャネルC1eとダミーチャネルC1dとが、X軸方向に沿って交互に配置されている(図2参照)。
【0046】
また、図2図4に示したように、チャネルC2には、インク9を吐出させるための吐出チャネルC2e(吐出溝)と、インク9を吐出させないダミーチャネルC2d(非吐出溝)とが存在している。各吐出チャネルC2eは、ノズルプレート411におけるノズル孔H2と連通している一方、各ダミーチャネルC2dはノズル孔H2には連通しておらず、ノズルプレート411の上面によって下方から覆われている(図3図4参照)。
【0047】
複数の吐出チャネルC2eは、それらの少なくとも一部が所定方向(X軸方向)に沿って互いに重なるようにして並設されており、特に図2の例では、複数の吐出チャネルC2e全体が、X軸方向に沿って互いに重なるようにして配置されている。これにより図2に示したように、複数の吐出チャネルC2e全体が、X軸方向に沿って1列に配置されるようになっている。同様にして、複数のダミーチャネルC2dは、X軸方向に沿って並設されており、図2の例では、複数のダミーチャネルC2d全体が、X軸方向に沿って1列に配置されている。また、このチャネル列422では、このような吐出チャネルC2eとダミーチャネルC2dとが、X軸方向に沿って交互に配置されている(図2参照)。
【0048】
なお、このような吐出チャネルC1e,C2eはそれぞれ、本開示における「吐出溝」の一具体例に対応しており、ダミーチャネルC1d,C2dはそれぞれ、本開示における「非吐出溝」の一具体例に対応している。また、X軸方向は、本開示における「所定方向」の一具体例に対応しており、Y軸方向は、本開示における「吐出溝の延在方向」の一具体例に対応している。
【0049】
ここで、図2図4に示したように、チャネル列421における吐出チャネルC1eと、チャネル列422におけるダミーチャネルC2dとは、これらの吐出チャネルC1eおよびダミーチャネルC2dの延在方向(Y軸方向)に沿って、一直線上に配置されている。また、図2に示したように、チャネル列421におけるダミーチャネルC1dと、チャネル列422における吐出チャネルC2eとは、これらのダミーチャネルC1dおよび吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、一直線上に配置されている。
【0050】
また、例えば図4に示したように、各吐出チャネルC1eは、カバープレート413側(上方)からノズルプレート411側(下方)へ向けて各吐出チャネルC1eの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面を有している。同様に、各吐出チャネルC2eは、カバープレート413側からノズルプレート411側へ向けて各吐出チャネルC2eの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面を有している。なお、このような吐出チャネルC1e,C2eにおける円弧状の側面はそれぞれ、例えば、ダイサーによる切削加工によって形成されるようになっている。
【0051】
なお、図3図4に示した吐出チャネルC1e付近(および吐出チャネルC2e付近)の詳細構成については、後述する。
【0052】
また、図3図4図6に示したように、前述した駆動壁WdにおいてX軸方向に沿って対向する内側面にはそれぞれ、Y軸方向に沿って延在する、駆動電極Edが設けられている。この駆動電極Edには、吐出チャネルC1e,C2eに面する内側面に設けられた共通電極(コモン電極)Edcと、ダミーチャネルC1d,C2dに面する内側面に設けられた個別電極(アクティブ電極)Edaと、が存在している。なお、このような駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)は、駆動壁Wdの内側面上において、深さ方向(Z軸方向)の全体に亘って形成されている(図3図4参照)。
【0053】
同一の吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)内で対向する一対の共通電極Edc同士は、図示しない共通端子(共通配線)において互いに電気的に接続されている。また、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対の個別電極Eda同士は、互いに電気的に分離されている。一方、吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)を介して対向する一対の個別電極Eda同士は、図示しない個別端子(個別配線)において、互いに電気的に接続されている。
【0054】
ここで、前述した尾部420(アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った端部付近)においては、駆動電極Edと前述した回路基板との間を電気的に接続するための、前述したフレキシブルプリント基板が実装されている。このフレキシブルプリント基板に形成された配線パターン(不図示)は、上記した共通配線および個別配線に対して電気的に接続されている。これにより、フレキシブルプリント基板を介して、上記した回路基板上の駆動回路から各駆動電極Edに対して、駆動電圧が印加されるようになっている。
【0055】
また、アクチュエータプレート412における尾部420では、各ダミーチャネルC1d,C2dにおいて、それらの延在方向(Y軸方向)に沿った端部が、以下のような構成となっている。
【0056】
すなわち、まず、各ダミーチャネルC1d,C2dでは、それらの延在方向に沿った一方側は、ノズルプレート411側へ向けて各ダミーチャネルC1d,C2dの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面になっている(図3図4参照)。なお、このようなダミーチャネルC1d,C2dにおける円弧状の側面もそれぞれ、前述した吐出チャネルC1e,C2eにおける円弧状の側面と同様に、例えば、ダイサーによる切削加工によって形成されるようになっている。これに対して、各ダミーチャネルC1d,C2dにおいて、それらの延在方向に沿った他方側(尾部420側)は、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った端部に至るまで、開口している(図3図4図6中の破線で示した符号P2参照)。また、例えば図3図4図6に示したように、各ダミーチャネルC1d,C2d内におけるX軸方向に沿った両側面に対向配置された各個別電極Edaもまた、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った端部に至るまで、延在するようになっている。
【0057】
なお、詳細は後述するが、図6中に示した加工スリットSLはそれぞれ、アクチュエータプレート412の表面上の個別電極Edaおよび共通電極Edc同士を離隔するように、Y軸方向に沿って形成されたスリットであり、例えば以下のようにして形成される。すなわち、これらの加工スリットSLはそれぞれ、アクチュエータプレート412の形成の際に、例えば、所定のレーザ加工によって形成されたものとなっている。また、個別電極Edaおよび共通電極Edcはそれぞれ、これらの電極とそれぞれ電気的に接続されていると共に前述したフレキシブルプリント基板と電気的に接続されるパッド部分である、個別電極パッドPdaおよび共通電極パッドPdcを含んでいる(図6参照)。また、これらの共通電極パッドPdcおよび個別電極パッドPdaの間においてこれらのパッドを隔離する溝D(図6参照)は、上記した所定のレーザ加工後に、ダイサーによって切削加工されることで、形成されるようになっている。
【0058】
(カバープレート413)
カバープレート413は、図3図5に示したように、アクチュエータプレート412における各チャネルC1,C2(各チャネル列421,422)を閉塞するように配置されている。具体的には、このカバープレート413は、アクチュエータプレート412の上面に接着されており、板状構造となっている。
【0059】
カバープレート413には、図3図5に示したように、一対の入口側共通流路Rin1,Rin2と、一対の出口側共通流路Rout1,Rout2と、壁部W1,W2とが、それぞれ形成されている。
【0060】
壁部W1は、吐出チャネルC1eおよびダミーチャネルC1dの上方を覆うように配置されており、壁部W2は、吐出チャネルC2eおよびダミーチャネルC2dの上方を覆うように配置されている(図3図4参照)。
【0061】
入口側共通流路Rin1,Rin2および出口側共通流路Rout1,Rout2はそれぞれ、例えば図5に示したように、X軸方向に沿って延在していると共に、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。このうち、入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1はそれぞれ、アクチュエータプレート412におけるチャネル列421(複数のチャネルC1)に対応する領域に、形成されている(図3図5参照)。一方、入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2はそれぞれ、アクチュエータプレート412におけるチャネル列422(複数のチャネルC2)に対応する領域に、形成されている(図3図4参照)。
【0062】
なお、このような入口側共通流路Rin1,Rin2はそれぞれ、本開示における「第1共通流路」の一具体例に対応している。また、出口側共通流路Rout1,Rout2はそれぞれ、本開示における「第2共通流路」の一具体例に対応している。
【0063】
入口側共通流路Rin1は、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図3図5参照)。この入口側共通流路Rin1において、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート413をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通する、第1供給スリットSin1が形成されている(図3図5参照)。同様に、入口側共通流路Rin2は、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図3図4参照)。この入口側共通流路Rin2において、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、第2供給スリット(不図示)が形成されている。
【0064】
なお、これらの第1供給スリットSin1および第2供給スリットはそれぞれ、本開示における「第1貫通孔」の一具体例に対応している。
【0065】
出口側共通流路Rout1は、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図3図5参照)。この出口側共通流路Rout1において、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、第1排出スリットSout1が形成されている(図3図5参照)。同様に、出口側共通流路Rout2は、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図3図4参照)。この出口側共通流路Rout2において、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、第2排出スリット(不図示)が形成されている。
【0066】
なお、これらの第1排出スリットSout1および第2排出スリットはそれぞれ、本開示における「第2貫通孔」の一具体例に対応している。
【0067】
ここで、例えば図5に示したように、このような吐出チャネルC1eごとの第1供給スリットSin1と第1排出スリットSout1とによって、第1スリット対Sp1が構成されている。この第1スリット対Sp1では、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿って、第1供給スリットSin1と第1排出スリットSout1とが、並んで配置されている。同様に、吐出チャネルC2eごとの第2供給スリットと第2排出スリットとによって、第2スリット対(不図示)が構成されている。この第2スリット対では、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、第2供給スリットと第2排出スリットとが、並んで配置されている。
【0068】
なお、このような第1スリット対Sp1および第2スリット対はそれぞれ、本開示における「貫通孔対」の一具体例に対応している。
【0069】
このようにして、入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1はそれぞれ、第1供給スリットSin1および第1排出スリットSout1を介して、各吐出チャネルC1eに連通するようになっている(図3図5参照)。すなわち、入口側共通流路Rin1は、上記した第1スリット対Sp1ごとの第1供給スリットSin1の各々と連通している共通流路であり、出口側共通流路Rout1は、第1スリット対Sp1ごとの第1排出スリットSout1の各々と連通している共通流路となっている(図5参照)。そして、第1供給スリットSin1および第1排出スリットSout1はそれぞれ、吐出チャネルC1eとの間でインク9が流れる貫通孔となっている。詳細には、図3図4中の破線の矢印で示したように、第1供給スリットSin1は、吐出チャネルC1e内にインク9を流入させるための貫通孔であり、第1排出スリットSout1は、吐出チャネルC1e内からインク9を流出させるための貫通孔となっている。一方、各ダミーチャネルC1dには、入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1はいずれも、連通していない。具体的には、各ダミーチャネルC1dは、これらの入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1における底部によって、閉塞されるようになっている。
【0070】
同様に、入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2はそれぞれ、第2供給スリットおよび第2排出スリットを介して、各吐出チャネルC2eに連通するようになっている。すなわち、入口側共通流路Rin2は、上記した第2スリット対ごとの第2供給スリットの各々と連通している共通流路であり、出口側共通流路Rout2は、第2スリット対ごとの第2排出スリットの各々と連通している共通流路となっている。そして、第2供給スリットおよび第2排出スリットはそれぞれ、吐出チャネルC2eとの間でインク9が流れる貫通孔となっている。詳細には、第2供給スリットは、吐出チャネルC2e内にインク9を流入させるための貫通孔であり、第2排出スリットは、吐出チャネルC2e内からインク9を流出させるための貫通孔となっている。一方、各ダミーチャネルC2dには、入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2はいずれも、連通していない(図3図4参照)。具体的には、各ダミーチャネルC2dは、これらの入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2における底部によって、閉塞されるようになっている(図3図4参照)。
【0071】
[C.吐出チャネルC1e,C2e付近の詳細構成]
次に、図2図5を参照して、吐出チャネルC1e,C2e付近における、ノズル孔H1,H2およびカバープレート413の詳細構成について、説明する。
【0072】
まず、本実施の形態のヘッドチップ41では、前述したように、複数のノズル孔H1が、2種類のノズル孔H11,H12を含んでいると共に、複数のノズル孔H2も、2種類のノズル孔H21,H22を含んでいる(図2参照)。
【0073】
ここで、各ノズル孔H11の中心位置Pn11は、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置Pc1(=壁部W1のY軸方向に沿った中心位置)を基準として、Y軸方向の正側(第1供給スリットSin1側)に、ずれて配置されている(図3図5参照)。同様に、各ノズル孔H21の中心位置は、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置(=壁部W2のY軸方向に沿った中心位置)を基準として、Y軸方向の負側(第2供給スリット側)に、ずれて配置されている(図2参照)。
【0074】
一方、各ノズル孔H12の中心位置Pn12は、吐出チャネルC1eの延在方向に沿った中心位置Pc1を基準として、Y軸方向の負側(第1排出スリットSout1側)に、ずれて配置されている(図4図5参照)。同様に、各ノズル孔H22の中心位置は、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の正側(第2排出スリット側)に、ずれて配置されている(図2参照)。
【0075】
したがって、各ノズル孔H11と連通する吐出チャネルC1e(C1e1)においては、第1供給スリットSin1と連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第1入口側流路断面積Sfin1)が、第1排出スリットSout1と連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第1出口側流路断面積Sfout1)よりも、小さくなっている(Sfin1<Sfout1:図3参照)。同様に、各ノズル孔H21と連通する吐出チャネルC2eにおいては、第2供給スリットと連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第2入口側流路断面積)が、第2排出スリットと連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第2出口側流路断面積)よりも、小さくなっている(Sfin2<Sfout2)。
【0076】
一方、各ノズル孔H12と連通する吐出チャネルC1e(C1e1)においては、逆に、上記した第1出口側流路断面積Sfout1が、上記した第1入口側流路断面積Sfin1よりも、小さくなっている(Sfout1<Sfin1:図4参照)。同様に、各ノズル孔H22と連通する吐出チャネルC2eにおいても、逆に、上記した第2出口側流路断面積Sfout2が、上記した第2入口側流路断面積Sfin2よりも、小さくなっている(Sfout2<Sfin2)。
【0077】
また、このヘッドチップ41では、前述した第1スリット対Sp1における第1供給スリットSin1と第1排出スリットSout1との間の距離に対応する、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)の長さ(第1ポンプ長Lw1:図3図4参照)が、全ての第1スリット対Sp1において同一になっている(図5参照)。同様に、前述した第2スリット対における第2供給スリットと第2排出スリットとの間の距離に対応する、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)の長さ(第2ポンプ長)も、全ての第2スリット対において同一になっている。
【0078】
そして、このヘッドチップ41では、第1供給スリットSin1におけるY軸方向の長さ(第1供給スリット長Lin1)と、第1排出スリットSout1におけるY軸方向の長さ(第1排出スリット長Lout1)との間の大小関係が、X軸方向に沿って隣接する第1スリット対Sp1同士で、交互に入れ替わっている(図5参照)。すなわち、例えば、ある第1スリット対Sp1において、(Lin1>Lout1)という大小関係である場合、その第1スリット対Sp1の両隣に位置する第1スリット対Sp1ではそれぞれ、逆に、(Lin1<Lout1)という大小関係になっている。また、例えば、ある第1スリット対Sp1において、(Lin1<Lout1)という大小関係である場合、その第1スリット対Sp1の両隣に位置する第1スリット対Sp1ではそれぞれ、逆に、(Lin1>Lout1)という大小関係になっている。
【0079】
同様に、第2供給スリットにおけるY軸方向の長さ(第2供給スリット長)と、第2排出スリットにおけるY軸方向の長さ(第2排出スリット長)との間の大小関係も、X軸方向に沿って隣接する第2スリット対同士で、上記したようにして、交互に入れ替わっている。
【0080】
更に、このヘッドチップ41では、入口側共通流路Rin1におけるY軸方向の長さ(第1入口側流路幅Win1)が、この入口側共通流路Rin1の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている(図5参照)。また、出口側共通流路Rout1におけるY軸方向の長さ(第1出口側流路幅Wout1)も、この出口側共通流路Rout1の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている(図5参照)。
【0081】
同様に、入口側共通流路Rin2におけるY軸方向の長さ(第2入口側流路幅)も、この入口側共通流路Rin2の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている。また、出口側共通流路Rout2におけるY軸方向の長さ(第2出口側流路幅)も、この出口側共通流路Rout2の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている。
【0082】
なお、上記した第1ポンプ長Lw1および第2ポンプ長はそれぞれ、本開示における「壁部の長さ」の一具体例に対応している。また、上記した第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長はそれぞれ、本開示における「第1開口長」の一具体例に対応し、上記した第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長はそれぞれ、本開示における「第2開口長」の一具体例に対応している。また、上記した第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅はそれぞれ、本開示における「第1流路幅」の一具体例に対応し、上記した第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅はそれぞれ、本開示における「第2流路幅」の一具体例に対応している。
【0083】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、図1に示した4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)にはそれぞれ、対応する色(4色)のインク9が十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインク9は、循環流路50を介してインクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。
【0084】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22との間に、記録紙Pが搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構63における駆動モータ633が、プーリ631a,631bをそれぞれ回転させることで、無端ベルト632を動作させる。これにより、キャリッジ62がガイドレール61a,61bにガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)によって、4色のインク9を記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0085】
(B.インクジェットヘッド4における詳細動作)
続いて、インクジェットヘッド4における詳細動作(インク9の噴射動作)について説明する。すなわち、このインクジェットヘッド4(サイドシュートタイプ)では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0086】
まず、上記したキャリッジ62(図1参照)の往復移動が開始されると、前述した回路基板上の駆動回路は、前述したフレキシブルプリント基板を介して、インクジェットヘッド4内の駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)に対し、駆動電圧を印加する。具体的には、この駆動回路は、吐出チャネルC1e,C2eを画成する一対の駆動壁Wdに配置された各駆動電極Edに対し、駆動電圧を印加する。これにより、これら一対の駆動壁Wdがそれぞれ、その吐出チャネルC1e,C2eに隣接するダミーチャネルC1d,C2d側へ、突出するように変形する。
【0087】
ここで、アクチュエータプレート412の構成が、前述したシェブロンタイプになっていることから、上記した駆動回路によって駆動電圧を印加することで、駆動壁Wdにおける深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁WdがV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁Wdの屈曲変形により、吐出チャネルC1e,C2eがあたかも膨らむように変形する。
【0088】
ちなみに、アクチュエータプレート412の構成が、このようなシェブロンタイプではなく、前述したカンチレバータイプである場合には、以下のようにして、駆動壁WdがV字状に屈曲変形する。すなわち、このカンチレバータイプの場合、駆動電極Edが深さ方向の上半分まで斜め蒸着によって取り付けられることになるため、この駆動電極Edが形成されている部分のみに駆動力が及ぶことによって、駆動壁Wdが(駆動電極Edの深さ方向端部において)屈曲変形する。その結果、この場合においても、駆動壁WdがV字状に屈曲変形するため、吐出チャネルC1e,C2eがあたかも膨らむように変形することになる。
【0089】
このように、一対の駆動壁Wdでの圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルC1e,C2eの容積が増大する。そして、吐出チャネルC1e,C2eの容積が増大することにより、入口側共通流路Rin1,Rin2内に貯留されたインク9が、吐出チャネルC1e,C2e内へ誘導されることになる。
【0090】
次いで、このようにして吐出チャネルC1e,C2e内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルC1e,C2eの内部に伝播する。そして、ノズルプレート411のノズル孔H1,H2にこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極Edに印加される駆動電圧が、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁Wdが復元する結果、一旦増大した吐出チャネルC1e,C2eの容積が、再び元に戻ることになる。
【0091】
このようにして、吐出チャネルC1e,C2eの容積が元に戻る過程で、吐出チャネルC1e,C2e内部の圧力が増加し、吐出チャネルC1e,C2e内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔H1,H2を通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(図3図4参照)。このようにしてインクジェットヘッド4におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0092】
(C.インク9の循環動作)
続いて、図1図3図4を参照して、循環流路50を介したインク9の循環動作について、詳細に説明する。
【0093】
このプリンタ1では、前述した送液ポンプによって、インクタンク3内から流路50a内へと、インク9が送液される。また、流路50b内を流れるインク9が、前述した送液ポンプによって、インクタンク3内へと送液される。
【0094】
この際に、インクジェットヘッド4内では、インクタンク3内から流路50aを介して流れるインク9が、入口側共通流路Rin1,Rin2へと流入する。これらの入口側共通流路Rin1,Rin2へと供給されたインク9は、第1供給スリットSin1または第2供給スリットを介して、アクチュエータプレート412における各吐出チャネルC1e,C2e内へと供給される(図3図4参照)。
【0095】
また、各吐出チャネルC1e,C2e内のインク9は、第1排出スリットSout1または第2排出スリットを介して、出口側共通流路Rout1,Rout2内へと流入する(図3図4参照)。これらの出口側共通流路Rout1,Rout2へ供給されたインク9は、流路50bへと排出されることで、インクジェットヘッド4内から流出される。そして、流路50bへと排出されたインク9は、インクタンク3内へと戻されることになる。このようにして、循環流路50を介したインク9の循環動作がなされる。
【0096】
ここで、循環式ではないインクジェットヘッドでは、乾燥性の高いインクを使用した場合、ノズル孔の近傍でのインクの乾燥に起因して、インクの局所的な高粘度化や固化が生じる結果、インク不吐出の不良が発生するおそれがある。これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド4(循環式のインクジェットヘッド)では、ノズル孔H1,H2の近傍に常に新鮮なインク9が供給されることから、上記したようなインク不吐出の不良が回避されることになる。
【0097】
(D.作用・効果)
次に、本実施の形態のインクジェットヘッド4における作用および効果について、比較例と比較しつつ、詳細に説明する。
【0098】
(D-1.比較例)
図7は、比較例に係るインクジェットヘッド104において、比較例に係るノズルプレート101(後出)を取り外した状態の構成例を、模式的に底面図(X-Y底面図)で表したものである。図8は、図7に示したVIII-VIII線に沿った、比較例に係るインクジェットヘッド104の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。
【0099】
図7図8に示したように、この比較例のインクジェットヘッド104(ヘッドチップ100)は、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)において、各ノズル孔H1,H2の配置構成を異ならせたものに対応している。
【0100】
具体的には、この比較例のノズルプレート101では、本実施の形態のノズルプレート411とは異なり、各ノズル列An101,102内のノズル孔H1,H2がそれぞれ、各ノズル列An101,102の延在方向(X軸方向)に沿って、1列に並んで配置されている(図7参照)。つまり、前述した本実施の形態の場合とは異なり、この比較例では、各ノズル孔H1の中心位置Pn1が、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置Pc1(=壁部W1のY軸方向に沿った中心位置)と、一致するようになっている(図8参照)。同様に、この比較例では、各ノズル孔H2の中心位置が、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置(=壁部W2のY軸方向に沿った中心位置)と、一致するようになっている
【0101】
このような比較例では、上記したように、ノズル孔H1,H2がそれぞれ、X軸方向に沿って1列に並んで配置されていることから、例えば印刷画素の高解像度化等に伴い、隣接するノズル孔H1間の距離や、隣接するノズル孔H2間の距離が、小さくなった場合に、例えば以下のようなおそれがある。すなわち、このような場合、同時期に噴射されて被記録媒体(記録紙P等)へ向けて飛翔している液滴間の距離が減少することから、ノズル孔H1,H2から被記録媒体の間にて飛翔中の液滴が、局所的に集中するケースがある。これにより、飛翔した各液滴に及ぼす影響(気流の発生)が増大する結果、被記録媒体上において木目調の濃度むらが発生し、印刷画質が低下してしまうおそれがある。
【0102】
(D-2.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)では、複数のノズル孔H1,H2のうち、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(およびX軸方向に沿って隣接するノズル孔H2同士)が、吐出チャネルC1e,C2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、互いにずれて配置されている。
【0103】
これにより本実施の形態では、隣接するノズル孔H1間の距離(および隣接するノズル孔H2間の距離)が、例えば、ノズル孔H1,H2がそれぞれX軸方向に沿って1列に並んで配置されている場合(上記比較例)と比べ、大きくなる。このため、同時期に噴射されて被記録媒体(記録紙P等)へ向けて飛翔している液滴間の距離が増加することから、ノズル孔H1,H2から被記録媒体の間にて飛翔中の液滴が局所的に集中することを、緩和させることができる。これにより本実施の形態では、飛翔した各液滴に及ぼす影響(気流の発生)が抑えられる結果、上記比較例と比べ、上記したような被記録媒体(記録紙P等)上での木目調の濃度むらの発生が、抑えられる。以上のことから、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)では、例えば上記比較例のインクジェットヘッド104(ヘッドチップ100)と比べ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0104】
また、特に本実施の形態では、複数の吐出チャネルC1eの全体(および複数の吐出チャネルC2eの全体)が、アクチュエータプレート412内でX軸方向に沿って1列に配置されていることから、以下のようになる。すなわち、これら複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)で、既存の構造が維持されることになる。よって、ヘッドチップ41全体のサイズ(チップサイズ)を維持しつつ(増大させることなく)、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0105】
更に、本実施の形態では、上記したようにして、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)で既存の構造を維持しつつ、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(および隣接するノズル孔H2同士)が、Y軸方向に沿って互いにずれて配置されている構造においても、既存の構造と同様にして、以下のようにすることができる。すなわち、前述した第1ポンプ長Lw1および第2ポンプ長をそれぞれ、全ての第1スリット対Sp1および全ての第2スリット対において、同一にする(共通化する)ことができる。これにより本実施の形態では、隣接するノズル孔H1同士(および隣接するノズル孔H2同士)での、吐出特性のばらつきが抑えられる結果、印刷画質を更に向上させることが可能となる。また、本実施の形態では、後述する変形例2の場合(第1供給スリットSin1および第2供給スリットと、第1排出スリットSout1および第2排出スリットとをそれぞれ、X軸方向に沿って千鳥配置とした場合:後述する図12参照)と比べ、以下のようになる。すなわち、まず、この変形例2の場合には、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)も、X軸方向に沿って千鳥配置となる(図12参照)。一方、本実施の形態では、既存の構造と同様にして、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)を、千鳥配置せずに形成(加工)できることから(図5参照)、ヘッドチップ41の加工性が良好となる(既存の製造プロセスを維持したまま、加工できるようになる)。これにより本実施の形態では、ヘッドチップ41の製造プロセスの容易化を実現することも、可能となる。
【0106】
加えて、本実施の形態では、入口側共通流路Rin1,Rin2における流路幅(第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅)と、出口側共通流路Rout1,Rout2における流路幅(第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅)とがそれぞれ、各共通流路の延在方向(X軸方向)に沿って一定になっていることから、以下のようになる。すなわち、これらの入口側共通流路Rin1,Rin2および出口側共通流路Rout1,Rout2の各構造についても、既存の構造を維持することが可能となる。
【0107】
また、本実施の形態では、各ダミーチャネルC1d,C2dにおける延在方向(Y軸方向)に沿った一方側は、前述した側面になっていると共に、この延在方向に沿った他方側は、アクチュエータプレート412のY軸方向に沿った端部に至るまで、開口していることから、以下のようになる。すなわち、上記したように、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(および隣接するノズル孔H2同士)が、Y軸方向に沿って互いにずれて配置されている構造において、ヘッドチップ41全体のサイズ(チップサイズ)を変えることなく、ノズルプレート411内でのノズル孔H1,H2の高密度配置が可能となる。また、各ダミーチャネルC1d,C2dにおける上記した他方側が、上記した端部に至るまで開口していることから、各ダミーチャネルC1d,C2d内に個別に配置される個別電極Edaが、各吐出チャネルC1e,C2d内に配置される共通電極Edcとは別個に(電気的に絶縁した状態で)、形成できるようになる(図6参照)。これらのことから本実施の形態では、ヘッドチップ41におけるチップサイズの小型化を図りつつ、ヘッドチップ41の製造プロセスの容易化を実現することが可能となる。
【0108】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0109】
[変形例1]
(構成)
図9は、変形例1に係るインクジェットヘッド4aにおける、変形例1に係るカバープレート413aの上面側の平面構成例(X-Y平面構成例)を、模式的に表したものである。また、図10図11はそれぞれ、この変形例1のインクジェットヘッド4aにおける断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。具体的には、図10は、実施の形態における図3に対応する断面構成例であり、図11は、実施の形態における図4に対応する断面構成例となっている。
【0110】
図10図11に示したように、この変形例1のインクジェットヘッド4aは、実施の形態のインクジェットヘッド4(図3図4参照)において、ヘッドチップ41の代わりに、ヘッドチップ41aを設けるようにしたものに対応している。また、この変形例1のヘッドチップ41aは、ヘッドチップ41において、カバープレート413の代わりに、以下説明するカバープレート413aを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている(図10図11参照)。なお、このようなインクジェットヘッド4aは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0111】
例えば図9に示したように、この変形例1のカバープレート413aでは、実施の形態のカバープレート413(図5参照)とは異なり、入口側共通流路Rin1,Rin2における流路幅(第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅)が、X軸方向に沿って、第1スリット対Sp1および第2スリット対ごとに変化するようになっている。具体的には、これらの第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅がそれぞれ、X軸方向に沿って隣接する第1スリット対Sp1同士(および隣接する第2スリット対同士)における、第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長の交互の変化(第1スリット対Sp1および第2スリット対ごとの大小変化)に応じて、X軸方向に沿って変化している(図9参照)。
【0112】
同様に、このカバープレート413aでは、出口側共通流路Rout1,Rout2における流路幅(第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅)が、X軸方向に沿って、第1スリット対Sp1および第2スリット対ごとに変化するようになっている(図9参照)。具体的には、これらの第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅がそれぞれ、X軸方向に沿って隣接する第1スリット対Sp1同士(および隣接する第2スリット対同士)における、第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長の交互の変化(第1スリット対Sp1および第2スリット対ごとの大小変化)に応じて、X軸方向に沿って変化している(図9参照)。
【0113】
このような構成に伴い、例えば図10図11中の破線の矢印で示したように、このカバープレート413aでは、実施の形態のカバープレート413(図3図4参照)と比べ、壁部W1,W2における一方の側面部分の厚みが、大きくなっている。具体的には、例えば図10に示したように、ノズル孔H11,H21と連通する吐出チャネルC1e,C2e付近では、壁部W1,W2における第1供給スリットSin1および第2供給スリット側の側面部分の厚みが、実施の形態(図3参照)と比べて大きくなっている。一方、例えば図11に示したように、ノズル孔H12,H22と連通する吐出チャネルC1e,C2e付近では、壁部W1,W2における第1排出スリットSout1および第2排出スリット側の側面部分の厚みが、実施の形態(図4参照)と比べて大きくなっている。
【0114】
(作用・効果)
このような構成の変形例1のインクジェットヘッド4a(ヘッドチップ41a)においても、基本的には、実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0115】
また、特にこの変形例1では、上記したように、第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅がそれぞれ、第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長の交互の変化に応じて、X軸方向に沿って変化していると共に、第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅がそれぞれ、第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長の交互の変化に応じて、X軸方向に沿って変化している。これにより変形例1では、例えば実施の形態(図5参照)のように、これらの第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅および第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅がそれぞれ、X軸方向に沿って一定となっている場合と比べ、以下のようになる。すなわち、入口側共通流路Rin1,Rin2や出口側共通流路Rout1,Rout2の形成に伴って、カバープレート413a内での厚みの薄くなる部分(上記したような、壁部W1,W2における一方の側面部分)の発生が、最小限に抑えられることになる。その結果、この変形例1では、実施の形態の場合(図3図4に示したカバープレート413参照)と比べ、入口側共通流路Rin1,Rin2や出口側共通流路Rout1,Rout2における機械的な強度が向上し、クラックの発生を抑制することができる。よって、この変形例1では、上記実施の形態と比べ、ヘッドチップ41aの信頼性を向上させることが可能となる。
【0116】
[変形例2]
(構成)
図12は、変形例2に係るインクジェットヘッド4bにおける、変形例2に係るカバープレート413bの上面側の平面構成例(X-Y平面構成例)を、模式的に表したものである。
【0117】
図12に示したように、この変形例2のインクジェットヘッド4bは、実施の形態のインクジェットヘッド4(図3図4参照)において、ヘッドチップ41の代わりに、ヘッドチップ41bを設けるようにしたものに対応している。また、この変形例2のヘッドチップ41bは、ヘッドチップ41において、アクチュエータプレート412およびカバープレート413の代わりに、以下説明するアクチュエータプレート412bおよびカバープレート413bをそれぞれ設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている(図12参照)。なお、このようなインクジェットヘッド4bは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0118】
例えば図12に示したように、この変形例2のアクチュエータプレート412bでは、実施の形態および変形例1のアクチュエータプレート412(図5図9参照)とは異なり、吐出チャネルC1e,C2eの配置構成がそれぞれ、以下のようになっている。すなわち、このアクチュエータプレート412bでは、アクチュエータプレート412とは異なり、複数の吐出チャネルC1e,C2eにおける(全体ではなく)一部が、Y軸方向に沿って互いに重なるようにして配置されている。これによりアクチュエータプレート412bでは、これら複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)が、X軸方向に沿って千鳥配置(Y軸方向に沿って交互にずれた配置)となっている(図12参照)。
【0119】
また、この変形例2のカバープレート413bでは、実施の形態および変形例1のカバープレート413a,413b(図5図9参照)と同様に、前述した第1ポンプ長Lw1および第2ポンプ長がそれぞれ、全ての第1スリット対Sp1および第2スリット対において、同一になっている(図12参照)。
【0120】
一方、このカバープレート413bでは、カバープレート413,413aとは異なり、前述した第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長と、前述した第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長とが、互いに同一になっている(Lin1=Lout1,第2供給スリット長=第2排出スリット長)。そして、このカバープレート413bでは、カバープレート413,413aとは異なり、第1供給スリットSin1および第2供給スリットと、第1排出スリットSout1および第2排出スリットとがそれぞれ、入口側共通流路Rin1,Rin2および出口側共通流路Rout1,Rout2の延在方向(X軸方向)に沿って、千鳥配置となっている(図12参照)。
【0121】
(作用・効果)
このような構成の変形例2のインクジェットヘッド4b(ヘッドチップ41b)においても、基本的には、実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0122】
また、特にこの変形例2では、上記したように、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(隣接するノズル孔H2同士)が、Y軸方向に沿って互いにずれて配置されていると共に、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)も、X軸方向に沿って千鳥配置になっていることから、以下のようになる。すなわち、例えば実施の形態および変形例1のように、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)が、X軸方向に沿って1列に配置されている場合と比べ、各吐出チャネルC1e,C2eと対応する各ノズル孔H1,H2との間における、各吐出チャネルC1e,C2eの延在方向(Y軸方向)に沿った相対位置のずれが、小さくなる。つまり、図12に示した吐出チャネルC1e(C1e1,C1e2)の例で説明すると、吐出チャネルC1e1に対するノズル孔H11のY軸方向の位置と、吐出チャネルC1e2に対するノズル孔H12のY軸方向の位置とが、X軸方向に沿って隣接する吐出チャネルC1e同士で、ずれにくくなる。言い換えると、各吐出チャネルC1e(C1e1,C1e2)における延在方向(Y軸方向)の中央付近に、各ノズル孔H1(H11,H12)の位置を寄せることができ、各ノズル孔H1での吐出特性を近づけることができる。なお、この点は、吐出チャネルC2eおよびノズル孔H2においても、同様である。これにより変形例2では、例えば実施の形態および変形例1の場合と比べ、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(隣接するノズル孔H2同士)での、吐出特性のばらつきが抑えられる結果、印刷画質を更に向上させることが可能となる。
【0123】
更に、この変形例2では、上記したように、第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長と第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長とが、互いに同一になっていることから、例えば実施の形態および変形例1の場合と比べ、以下のようになる。すなわち、まず、これらの実施の形態および変形例1の場合(図5図9参照)には、前述したように、第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長と第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長との間の大小関係が、X軸方向に沿って隣接する第1スリット対Sp1および第2スリット対同士で交互に入れ替わっている。これに対して変形例2では、これらの第1供給スリット長Lin1および第2供給スリット長と第1排出スリット長Lout1および第2排出スリット長とが、互いに同一になっていることから、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1間(隣接するノズル孔H2間)での圧力差が生じにくくなり、インク9の吐出速度の不均一性が低減する。その結果、この変形例2では、印刷画質の更なる向上を図ることが可能となる。
【0124】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0125】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0126】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、2列タイプの(2列のノズル列An1,An2を有する)インクジェットヘッド4を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、1列タイプ(1列のノズル列を有する)のインクジェットヘッドや、3列以上(例えば3列や4列など)の複数例タイプ(3列以上のノズル列を有する)インクジェットヘッドであってもよい。
【0127】
また、上記実施の形態等では、ノズル孔H1(H11,H12),H2(H21,H22)のずらし配置の例(千鳥配置の例)や、カバープレートの構成例(供給スリットや排出スリット、入口側共通流路、出口側共通流路等の構成例)等について、具体的に説明したが、これらの例には限られない。すなわち、各ノズル孔のずらし配置や、カバープレートの構成については、他の構成例であってもよい。
【0128】
また、上記実施の形態等では、各吐出チャネル(吐出溝)および各ダミーチャネル(非吐出溝)がそれぞれ、アクチュエータプレート412内でY軸方向(各チャネルの並設方向に対する直交方向)に沿って延在している場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、各吐出チャネルおよび各ダミーチャネルがそれぞれ、アクチュエータプレート412内で、斜め方向(X軸方向,Y軸方向の各々と角度を成す方向)に沿って延在しているようにしてもよい。
【0129】
更に、例えば、ノズル孔H1,H2の断面形状については、上記実施の形態等で説明したような円形状には限られず、例えば、楕円形状や、三角形状等の多角形状、星型形状などであってもよい。また、吐出チャネルC1e,C2eおよびダミーチャネルC1d,C2dの各断面形状についても、上記実施の形態等では、ダイサーによる切削加工によって形成されることで、円弧状(曲面状)の側面となっている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、そのようなダイサーによる切削加工以外の加工方法(エッチングやブラスト加工など)を用いて形成することで、吐出チャネルC1e,C2eおよびダミーチャネルC1d,C2dの各断面形状が、円弧状以外の各種の側面形状となるようにしてもよい。
【0130】
加えて、上記実施の形態等では、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば場合によっては、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドにおいて、本開示を適用するようにしてもよい。
【0131】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば上記実施の形態等では、アクチュエータプレートにおける各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドを例に挙げて説明した。ただし、この例には限られず、他のタイプのインクジェットヘッドにおいて、本開示を適用するようにしてもよい。
【0132】
更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0133】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0134】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0135】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0136】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0137】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射するヘッドチップであって、
複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記複数の吐出溝が、それらの少なくとも一部が所定方向に沿って互いに重なるようにして、並んで配置されており、
前記複数のノズル孔のうちの前記所定方向に沿って隣接するノズル孔同士が、前記ノズルプレート内における前記吐出溝の延在方向に沿って、互いにずれて配置されている
ヘッドチップ。
(2)
前記複数の吐出溝の全体が、前記所定方向に沿って互いに重なるようにして配置されており、
前記複数の吐出溝全体が、前記所定方向に沿って1列に配置されている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(3)
前記吐出溝内に前記液体を流入させるための第1貫通孔と、前記吐出溝内から前記液体を流出させるための第2貫通孔と、前記吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートを更に備え、
前記吐出溝ごとの前記第1貫通孔および前記第2貫通孔からなる貫通孔対が、前記吐出溝の延在方向に沿って並んで配置されており、
前記貫通孔対における前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間の距離に対応する、前記吐出溝の延在方向に沿った前記壁部の長さが、全ての前記貫通孔対において同一になっている共に、
前記第1貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第1開口長と、前記第2貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第2開口長と、の間の大小関係が、前記所定方向に沿って隣接する前記貫通孔対同士で、交互に入れ替わっている
上記(2)に記載のヘッドチップ。
(4)
前記カバープレートは、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第1貫通孔の各々と連通している第1共通流路と、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第2貫通孔の各々と連通している第2共通流路と
を更に有しており、
前記第1共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第1流路幅が、前記所定方向に沿って一定になっていると共に、
前記第2共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第2流路幅が、前記所定方向に沿って一定になっている
上記(3)に記載のヘッドチップ。
(5)
前記カバープレートは、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第1貫通孔の各々と連通している第1共通流路と、
前記所定方向に沿って延在しつつ、前記貫通孔対ごとの前記第2貫通孔の各々と連通している第2共通流路と
を更に有しており、
前記第1共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第1流路幅が、前記所定方向に沿って隣接する前記貫通孔対同士における前記第1開口長の交互の変化に応じて、前記所定方向に沿って変化していると共に、
前記第2共通流路における前記所定方向の直交方向に沿った長さである第2流路幅が、前記所定方向に沿って隣接する前記貫通孔対同士における前記第2開口長の交互の変化に応じて、前記所定方向に沿って変化している
上記(3)に記載のヘッドチップ。
(6)
前記複数の吐出溝における一部が、前記所定方向に沿って互いに重なるようにして配置されており、
前記複数の吐出溝全体が、前記所定方向に沿って千鳥配置となっている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(7)
前記吐出溝内に前記液体を流入させるための第1貫通孔と、前記吐出溝内から前記液体を流出させるための第2貫通孔と、前記吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートを更に備え、
前記吐出溝ごとの前記第1貫通孔および前記第2貫通孔からなる貫通孔対が、前記吐出溝の延在方向に沿って並んで配置されており、
前記貫通孔対における前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間の距離に対応する、前記吐出溝の延在方向に沿った前記壁部の長さが、全ての前記貫通孔対において同一になっている共に、
前記第1貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第1開口長と、前記第2貫通孔における前記吐出溝の延在方向に沿った長さである第2開口長とが、互いに同一になっており、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔がそれぞれ、前記所定方向に沿って、千鳥配置となっている
上記(6)に記載のヘッドチップ。
(8)
前記アクチュエータプレートが、前記所定方向に沿って並設された複数の非吐出溝を更に有していると共に、
前記吐出溝と前記非吐出溝とが、前記所定方向に沿って交互に配置されており、
前記非吐出溝における前記非吐出溝の延在方向に沿った一方側は、前記ノズルプレート側へ向けて前記非吐出溝の断面積が徐々に小さくなる、曲面状の側面になっていると共に、
前記非吐出溝における前記非吐出溝の延在方向に沿った他方側は、前記アクチュエータプレートにおける前記非吐出溝の延在方向に沿った端部に至るまで、開口している
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(9)
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のヘッドチップを備えた
液体噴射ヘッド。
(10)
上記(9)に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0138】
1…プリンタ、10…筺体、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3(3Y,3M,3C,3K)…インクタンク、4(4Y,4M,4C,4K),4a,4b…インクジェットヘッド、41,41a,41b…ヘッドチップ、411…ノズルプレート、412,412b…アクチュエータプレート、413,413a,413b…カバープレート、420…尾部、421,422…チャネル列、50…循環流路、50a,50b…流路(供給チューブ)、6…走査機構、61a,61b…ガイドレール、62…キャリッジ、63…駆動機構、631a,631b…プーリ、632…無端ベルト、633…駆動モータ、9…インク、P…記録紙、d…搬送方向、H1,H11,H12,H2,H21,H22…ノズル孔、An1,An11,An12,An2,An21,An22…ノズル列、C1,C2…チャネル、C1e(C1e1,C1e2),C2e…吐出チャネル、C1d,C2d…ダミーチャネル(非吐出チャネル)、Wd…駆動壁、Ed…駆動電極、Eda…個別電極(アクティブ電極)、Edc…共通電極(コモン電極)、Pda…個別電極パッド、Pdc…共通電極パッド、D…溝、Rin1,Rin2…入口側共通流路、Rout1,Rout2…出口側共通流路、Sin1…第1供給スリット、Sout1…第1排出スリット、Sp1…第1スリット対、W1,W2…壁部、Lw1…第1ポンプ長、Lin1…第1供給スリット長、Lout1…第1排出スリット長、Win1…第1入口側流路幅、Wout1…第1出口側流路幅、Sfin1…第1入口側流路断面積、Sfout1…第1出口側流路断面積、Pc1,Pn11,Pn12…中心位置、SL…加工スリット。
図1
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