(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】溶接要素及び溶接要素を加工物に接続するための溶接方法
(51)【国際特許分類】
F16B 35/04 20060101AFI20230922BHJP
B23K 9/20 20060101ALI20230922BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F16B35/04 G
B23K9/20 B
F16B35/06 Z
(21)【出願番号】P 2019541266
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2018051916
(87)【国際公開番号】W WO2018138239
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】エイッサラ バー
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】久島 弘太郎
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-26160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0111932(US,A1)
【文献】特開平5-23857(JP,A)
【文献】特開2015-30038(JP,A)
【文献】特開2012-179646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/04
B23K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接面(22)及び前記溶接面(22)から離れた停止面(24)を有するヘッド(14)と、
長手方向軸(Xa)に沿って、第1の端部領域(18)と第2の端部領域(20)との間に延び、前記第1の端部領域(18)が前記停止面(24)に接続された、シャフト状のアンカー部分(12)と、
を含む、溶接方法を用いて加工物に接続されるのに適した溶接要素(10)において、
前記溶接面(22)は、前記溶接面(22)全体にわたり均一かつ一様に分布された複数の尖った突出部(26)を含み、
前記突出部(26)の各々は、正方形の基部を含むピラミッド状の形状を有する
ことを特徴とする、溶接要素(10)。
【請求項2】
前記複数の突出部(26)は、前記溶接面にわたり一様に分布された複数の直線に沿って配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の溶接要素(10)。
【請求項3】
前記突出部(26)は、平行な列に配置され、2つの交差する溝(34a、34b)の群に分けられ、第1の群の溝(34a)は互いに平行に延び、第2の群の溝(34b)は互いに平行に延び、前記第1の群の溝(34a)は前記第2の群の溝(34b)に対して直角であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の溶接要素(10)。
【請求項4】
前記溶接面(22)には膨出部(36)が形成されており、前記突出部(26)は前記膨出部(36)上に配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の溶接要素(10)。
【請求項5】
前記膨出部(36)は円形横断面を有し、前記膨出部(36)は、前記長手方向軸(Xa)に同軸に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の溶接要素(10)。
【請求項6】
前記突出部(26)の各々は、前記突出部(26)の先端部(28)を形成する4つの平坦な外側面を含み、対向する2つの外側面(32)は、75度と85度との間の角度(α)を囲むように形成されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の溶接要素(10)。
【請求項7】
前記突出部(26)は0.3ミリメートル(mm)と1.0ミリメートル(mm)との間の突出部高さ(Hv)を有することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載の溶接要素(10)。
【請求項8】
2つの隣接する前記突出部(26)の前記先端部は、0.5ミリメートルと2.0ミリメートルの間だけ互いに距離をおいて配置されることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかに記載の溶接要素(10)。
【請求項9】
溶接要素(10)を加工物(38)に接続するための溶接方法であって、
請求項1~請求項8のいずれかに記載の溶接要素(10)を準備するステップと、
第1及び第2の表面(40、42)を含み、シート厚(Tb)を有する加工物(38)を準備するステップと、
溶接装置(46)を準備するステップと、
前記加工物(38)の前記第1の表面(40)上に前記溶接要素(10)の前記溶接面(22)を配置するステップと、
前記シート厚(Tb)に応じて前記溶接装置(46)を作動させるステップと、
前記突出部(26)の少なくとも幾つかを溶融し、前記溶接要素を前記加工物に押し付けることによって、前記溶接要素(10)を前記加工物(38)に溶接するステップと、
を含むことを特徴とする溶接方法。
【請求項10】
前記突出部(26)は、前記長手方向軸(Xa)に沿って特定の突出部高さ(Hv)を有し、溶融される前記突出部高さ(Hv)は、前記シート厚(Tb)に基づいて決められることを特徴とする、請求項9に記載の溶接
方法。
【請求項11】
前記加工物(38)は、前記第2の表面(42)上に亜鉛層が設けられることを特徴とする、請求項9~請求項10のいずれかに記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接要素に関し、特定的には、溶接方法を用いて加工物に接続されるのに適し、かつ、溶接面及び該溶接面から離れた停止面(又は当接面)を有するヘッドと、長手方向軸に沿って、第1の端部領域と第2の端部領域との間に延び、第1の端部領域が停止面に接続された、シャフト状のアンカー部分とを含む、溶接スタッドに関する。
【0002】
本発明は、対応する溶接要素を加工物に接続するための溶接方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
構成部品を取り付けるために溶接要素を用いることが、特に車両の車体構造において知られている。この目的のためには、例えばスタッド溶接による方法等の既知の方法で構造体に締結される溶接スタッドが、主として用いられる。この種の溶接要素を取り付けるために、アーク・スタッド溶接など、様々な溶接技術が利用可能である。アーク・スタッド溶接方法は、アーク圧接方法の1つであり、溶接スタッド、ピン、ブシュ、フック又はアイ部品などの要素を、車体シート、ハウジング、加工物、又は同様なものなどの、対応するより大きい構成部品に恒久的に接続するために用いられる。溶接要素のヘッドが、加工物又は構成部品上に配置され、その後溶接される。
【0004】
溶接要素又は溶接スタッドを加工物表面に接続する場合、溶融が、従って、同様に溶接が、均一であることを確実にする必要がある。
【0005】
特許文献1は、ヘッドと、該ヘッドに接続されたシャフト状のアンカー部分とを含む締結要素を開示する。この締結要素は、構成部品に接続される表面上に、該表面の中心の周りに対称的に配置され、そこから星状に外向きに突出する複数の隆起部分を有する。特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5は、フランジと、該フランジ上に設けられた複数の突出部とを有する要素を開示する。しかしながら、これらの文献に開示される突出部は、溶接面にわたり均一かつ一様に分布されていない。従って、これらは、加工物上の溶接面の均一かつ一様な溶接を提供することができない。
【0006】
スペースを節約する考慮の結果、多くの技術分野において、例えば、軽量車両の車体においては、1500MPaまでの引張強度及び種々のシート厚(厚い及び薄いシート厚)を有するアルミニウム合金及び/又は高強度又は最大強度の車体シートが材料として普及してきているが、他の産業分野においても同様である。シートの強度及び種々のシート厚は、車体の構成部品の機能によって決まる。シート厚の異なる各々のシートに対して同じ溶接要素を用いることはできないため、様々に強度が異なることになり、問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第2227384A1号明細書
【文献】特開平0523857号公報
【文献】米国特許出願公開第200511932号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013225048号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1060822号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が対処する問題は、溶接要素における上述の欠点を、少なくとも部分的に克服することである。特に、本発明が対処する問題は、簡単かつ経済的な方法で、溶接要素を加工物に恒久的に接続することが可能になり、融通性が改善され、溶接に際してシートの貫通を生じるリスクが低くなり、溶接接続部の強度が、周知の溶接要素及び溶接方法によるものと同等であり、好ましくは、増大させることさえ可能である、という利点をもたらす溶接要素及び溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の問題は、請求項1の特徴を有する溶接スタッドにより解決される。
【0010】
溶接方法を用いて加工物に接続されるのに適したこの種の溶接要素は、溶接面及び該溶接面から離れた停止面を有するヘッドと、長手方向軸に沿って第1の端部領域と第2の端部領域との間に延びるシャフト状のアンカー部分とを含み、該第1の端部が停止面に接続された構成であって、該溶接面が、溶接面全体にわたり均一かつ一様に分布された複数の尖った突出部を含むことを特徴とする。従って、溶接面全体に突出部が存在する。
【0011】
「尖った」という用語は、鋭利な若しくは丸みのある頂部、又は、鋭利な若しくは丸みのあるコーナー部を有する形状を意味するように意図される。
【0012】
この溶接面の幾何学的形状により、溶接特性曲線を、薄いシート厚及び厚いシート厚の両方に適合させることができる。この幾何学的形状は、薄いシートへの溶接に際してシートの貫通を生じるリスクを防止するという利点を提供する。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、複数の突出部は、溶接面上に一様に分布された複数の直線に沿って延びる。最終的に、突出部は、平行な列に配置され、2つの交差する溝の群に分離される。2つの突出部は明確に境界が定められ、この種の分離は、大きな労力を費やすことなく形成することができる。より特定的には、突出部は、複数の直線に沿って配置される。第1の群の溝は、互いに平行に延びる。第2の群の溝は、互いに平行に延びる。第1の群の溝は、第2に群の溝に対して直角である。
【0014】
1つの実施形態において、溶接面は膨出部を形成し、突出部は膨出部上に配置される。突出部は、限定された領域にわたって延びるようになり、これにより溶接要素の溶接が簡単になる。
【0015】
さらに別の実施形態において、膨出部は円形断面を有する。この膨出部は、長手方向軸上に中心が置かれる。
【0016】
1つの実施形態において、各突出部は正方形の基部を含むピラミッド状の形状を有する。突出部の形状は、効果的で目標を定めた溶融を可能にする。さらに、突出部の形状は、特にエンボス加工により、容易に生成される。別の実施形態において、突起部又は円錐形の隆起部分を設けることができる。
【0017】
1つの実施形態において、各突出部は、4つの平坦な外側面を含み、対向する2つの外側面は、75度と85度との間の角度(α)を囲むように配置される。こうした角度は、効果的で目標を定めた溶融を可能にする。
【0018】
さらに別の実施形態において、2つの隣接する突出部(26)の先端部(頂部)は、0.5ミリメートルと2.0ミリメートルとの間だけ互いに間隔をおいて配置される。この間隔は、全ての先端部での効果的な点火、及び、溶接面全体にわたる均一な溶融を可能にする。
【0019】
1つの実施形態において、突出部は、溶接要素が形成されるとき、好適な冷間成形方法により生成される。突出部を生成するために、さらなる段階は必要ない。突出部は、ヘッドと一体である。
【0020】
さらに、上述の問題は、
上述のような溶接要素を準備するステップと、
第1及び第2の表面を含み、あるシート厚を有する加工物を準備するステップと、
溶接装置を準備するステップと、
加工物の第1の表面上に溶接要素の溶接面を配置するステップと、
シート厚に応じて溶接装置を作動させるステップと、
突出部の少なくとも幾つかを溶融し、溶接要素を加工物に押し付けることによって、溶接要素を加工物に溶接するステップと、
を含む、溶接要素を加工物に接続するための溶接方法により解決される。
【0021】
1つの実施形態において、突出部は、シート厚によって決まる、長手方向軸に沿った突出部高さを有する。
【0022】
1つの実施形態において、加工物の第2の表面に、亜鉛層が設けられる。この種の方法は、基部材料の後面にある亜鉛層に対して最小の影響しか及ぼさない。
【0023】
上述される特徴及び以下でさらに説明される特徴は、関連して述べられる組み合わせで用い得るのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせでも又は単独でも用い得ることは言うまでもない。
【0024】
本発明の実施形態は、図面に示され、以下の説明により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の表面構造を有するヘッドとアンカー部分とを含む、本発明による溶接要素の概略斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態による溶接要素が加工物表面の上方に配置された状態における長手方向断面図であり、概略的な溶接装置を示す。
【
図5】さらに別の実施形態による溶接要素の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、シャフト状のアンカー部分12とヘッド14(又はスタッドヘッド)とを含む、溶接スタッドとして設計された溶接要素10を示す。
【0027】
シャフト状のアンカー部分12は、主本体16と、第1及び第2の端部領域18、20とを有する。
【0028】
主本体16は、長手方向軸Xaに沿って、第1の端部領域18と第2の端部領域20との間に延びる。アンカー部分12の主本体16は、いずれの場合にも、所望のシャフト形状を呈することができる。
図1、
図2及び
図4に示されるように、主本体16は、その長さにわたり実質的に一定の円形断面を有することができる。他の実施形態においては、アンカー部分は、矩形断面、三角形断面、又はトライロビュラー(trilobular)形状(すなわち、3突部形状)の断面を有するものとすることもできる。同様に、他の実施形態においては、主本体16の断面は、その長さにわたり一定でないこともある。
【0029】
図1に示される溶接要素10は、有利な形態では、実質的に円筒形の接続要素であり、そのアンカー部分12は、ねじ山を含む。
図1及び
図2による溶接要素10に関しては、本明細書に示される溶接スタッドには、それぞれ、そのアンカー部分12にねじ山が設けられているが、これは、溶接後、付加的な構成部品をねじ留めするため又は他の目的のために、当然、当該溶接スタッドにねじ付きアセンブリを設け得ることを示すことを意図するに過ぎないことも留意すべきである。種々のねじ山形状及びねじ山サイズを与えることができる。
【0030】
アンカー部分12の第2の端部領域20は丸みを有することが好ましいが、他の形状を有する端部領域を設けることもできる。例えば、第2の端部領域に切削端を設けてもよい。
【0031】
ヘッド14は、第1の端部領域18から延びる。ヘッド14は、例えば円形であり、ヘッド軸Xkに対して同軸に配向される。例えば、ヘッド軸Xk及び長手方向軸Xaは一致する。ヘッド14は、ディスク(又はフランジ)形状であることが好ましく、溶接面22と、溶接面22から離れた停止面24とを含む。溶接面22と停止面24との間の、長手方向軸Xaに沿った距離が、ヘッド14の厚さを形成する。この距離が大きいほど、ヘッドは厚くなる。アンカー部分12の第1の端部領域18は、停止面24に接続される。ヘッド14は、アンカー部分12から離れた側に溶接面22を有する。
【0032】
溶接面22は、例えば、平面内に延びる(すなわち、適度に平坦である)。別の実施形態において(図示せず)、溶接面22は、互いに7度又は9度の角度を形成する2つの溶接部分を有することができる。
【0033】
図2に示されるように、停止面24は、例えば、アンカー部分のものより大きいヘッド直径Dkを有する。溶接面は、円形とすることもでき、溶接直径Dsを有するものとすることができる。
図2に示されるように、ヘッド直径Dk及び溶接直径Dsは一致することがある。
【0034】
別の実施形態においては、
図4に示されるように、ヘッド直径Dkは、溶接直径Dsより大きいことがある。この場合、溶接面22は、停止面24と同軸に設けることができる。
【0035】
図5に示されるように、別の実施形態において、停止面がヘッド軸Xkに対して同軸に配向された凹部48を含むように、溶接面22は、環状とし、カラーを形成することができる。
【0036】
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5に見ることができるように、ヘッド14の溶接面22は平らではなく、複数の突出部26が設けられている。
【0037】
特に、用語「突出部」は、隆起部分、こぶ等の、溶接面22から突出するヘッドの部分又はヘッドの一部を意味するものと意図される。
【0038】
突出部26は、尖っている。ここで、用語「尖っている」とは、縁部、頂部、又はコーナー部を形成する形状を意味するものと意図される。突出部26の先端部28は、鋭利であっても又は丸みがあってもよい。突出部26の先端部28は、保管及び輸送を簡単にするために、丸みがあることが好ましい。特に、丸みのある先端部を有する溶接要素は、それを輸送する際に包装に損傷を与えることがない。先端部は、突出部の自由端を形成する。突出部は、長手方向軸Xaに沿って、先端部から、ヘッドの支持体上にある基部30まで延びる。支持体は、先端部より幅広である。
【0039】
突出部26は、電気アークで溶融できる材料で作られる。
【0040】
突出部26は、溶接面22にわたり均一に分布されるように配置される。各突出部26は、正方形の基部30と、先端部28を形成する実質的に平坦な4つの外側面32とを含む、例えば実質的にピラミッド状の形状を有する。4つの外側面32が収束して先端部28を形成する。
【0041】
好ましくは、2つの対向する外側面32は、70度と90度との間、特に75度と85度との間の角度αを囲むように形成される。2つの対向する外側面32は、およそ80度の角度αを囲むように形成することができる。こうした角度は、突出部の効果的な分布を可能にする一方で、同時に、溶接要素(又は溶接面)を簡単な方法で生成できることを保証する。
【0042】
突出部26の2つの対向する外側面32の間の角度αは、他方の2つの対向する外側面32の間の角度αと同じにすることもでき、或るいは異なるようにすることもできる。2つの隣接する突出部26の間(特に、2つの隣接する突出部26の2つの先端部28の間)の距離は、0.5ミリメートル(mm)と2.0ミリメートル(mm)との間とすることができる。
【0043】
別の実施形態において(図示せず)は、各突出部は、突起部又は円錐形の隆起部分を含む。
【0044】
各突出部26は、長手方向軸Xaに沿って、突出部高さHvを有する。全ての突出部26の突出部高さHvは、同じとすることができる。別の実施形態においては、突出部26は、異なる突出部高さHvを有するものとすることができる。例えば、該突出部高さHvは、0.2ミリメートル(mm)と1.1ミリメートル(mm)との間、特に、0.3ミリメートル(mm)と1.0ミリメートル(mm)との間とすることができる。突出部高さHvは、好ましくは、0.3ミリメートルとすることができる。
【0045】
図3に示されるように、突出部26は、平行な列に配置される。好ましくは、突出部26は、2つの交差する溝34a、34b(又は線)の群により分離される。第1の溝34a(又は線)の群は、例えば、第2の溝34b(又は線)の群に対して直交するようにすることができる。別の実施形態において、第1の溝34a(又は線)の群は、第2の溝34b(又は線)の群と共に90度より大きいか、又は小さい角度βを形成するように形成することができる。
【0046】
突出部26は、実質的に「ワッフル形状のパターン」を形成する。突出部26は、異なる勾配、深さ、及び延長部を有するように形成することができる。
【0047】
溶接面22は、例えば、膨出部36を形成し、突出部26は、膨出部36上に配置することができる。例えば、膨出部36は、円形の横断面を有する。膨出部36は、長手方向軸Xa上に同軸に配置することができる。
【0048】
別の実施形態においては、溶接要素10は、膨出部を含まず、溶接面22は、停止面とは反対側に平坦な面を形成する。
【0049】
さらに別の実施形態においては、溶接面22は環状であり、突出部26はヘッド軸Xkの周りにカラーを形成する。
【0050】
溶接要素10は、例えば、単一の材料で作られる。他の実施形態においては、溶接要素10は、例えば、複数の材料で構成することができる。溶接要素10は、鋼又はステンレス鋼で作られることが好ましい。アルミニウム等の他の金属又は他の材料を用いることもできる。溶接要素10は、例えば冷間成形により生成され、突出部26は、冷間成形中に生成される。突出部は、例えば、エンボス加工によって形成することができる。
【0051】
溶接要素は、幾つかのステップで生成することができる。例えば、表面は、第1のステップで押し出し成形される。第2のステップにおいて、加圧成形により溶接直径部分を形成することができる。第3のステップにおいて、例えばエンボス加工ツールを用いて「ワッフル形状パターン」(又は突出部26)をプレス加工することができる。
【0052】
溶接要素10は、一体構造又は一体部品であるように設計され、従って、特に、アンカー部分12、さらに、対応する突出部26を含むヘッド14が、1つの構成部品(又は加工物)から生成されて溶接要素10を形成することができる。
【0053】
他の実施形態においては、溶接要素10は、複数の部品を有する構成とすることができる。
【0054】
溶接要素10は、溶接方法により(特に、アーク溶接により)、加工物38に接続されるのに適している。加工物38は、例えば車体シートであり、第1の表面40と第2の表面42とを含み、シート厚Tbを有する。加工物38は、金属又は合金などの様々な溶接可能材料、又は他の材料で作ることができる。
【0055】
第1の表面40は、接続部分44を含む。例えば加工物38の第2の表面42上に、亜鉛層(又は、塗料の被膜、腐食防止層等の別の表面層)を設けることができる。
【0056】
第1のステップにおいて、溶接要素10は、接続部分44の領域内に配置される。このプロセスにおいて、突出部26、特に、突出部26の(遠位)先端部28は、少なくとも部分的に又は一部に、加工物38の接続部分44と接触する。しかしながら、先端部28のために生じる加工物と溶接要素との間の接触ゾーンは、複数の先端部の接点に対応するように分布され、連続的なものではない。このことは、溶接要素10が加工物38上に置かれたとき、溶接面全体にわたる圧縮力の分散の改善を可能にする。アンカー部分12は、溶接要素10のヘッド14の停止面24から離れるように延びる。
【0057】
溶接要素10及び加工物38の各々は、電気を供給されるように、電力線を介して電源に接続される。突出部26が加工物38の接続部分44と接触して又は接触するように配置されることにより、閉電流回路がもたらされ、これによってアークを形成することができる。この種の溶接方法においては、バイアス電流及び主電流が用いられる。溶接プロセスに必要とされる電圧は、溶接要素及び加工物38の材料、及び要素のサイズによって決まる。
【0058】
最初に、溶接要素10を加工物38上に配置する。配置時に(又はその後)、バイアス電流が生成される。溶接要素10と加工物38との間の直接接触ゾーン(すなわち、先端部28と加工物38との間の接触ゾーン)は、電流の流れの結果として加熱される。次に、溶接段階を開始するために、主電流が生成される。これは、最初に接合ゾーンにおいて生じる。溶接要素を加工物38に対して押し付ける。溶融部の結晶化により、接続が生じる。
【0059】
溶接領域は、溶接面22の幾何学的形状によって(すなわち、突出部によって)拡張される。突出部は、溶接面全体にわたり溶接エネルギーが効果的に分散するのを可能にする。この形状は、溶融が、突出部の先端部から基部まで広がることを可能にする。突出部の形状は、溶融が溶接面全体にわたり均一に分布されること、及びヘッドの適度に一定の溶融深さの実現を可能にする。先端部は、特に、溶接プロセスの初めに溶融する。次に、溶接エネルギーは、突出部において、長手方向軸Xaに沿って停止面に向かって分散される。溶融は、長手方向軸Xaに沿って、溶接面全体にわたり、突出部の基部が配置された平坦な面まで広がる。均一に分散された尖った突出部は、アークが溶接面上で安定して燃焼することを保証する。このようにして、制御されていない、外向きのアーク移動を回避することができる。
【0060】
溶接方法(特に、必要なエネルギー及びプロセスの長さなどの溶接方法のパラメータ)は、突出部26の先端部28(又は特定の突出部高さHv)だけが溶融するように選択することができる。これは、溶接による貫通を生じないで、溶接要素10(又は溶接スタッド)と薄いシート厚を有する加工物38との間に接合接続部を生成するのに十分なものとすることができる。全ての突出部26と支持体の一部が溶融するように、溶接方法(特に、必要なエネルギー及びプロセスの長さなどの溶接方法のパラメータ)を選択することもできる。特に、溶融する支持体の深さは、シート厚によって決まる。
【0061】
シートの厚さは、例えば、0.5ミリメートルと3ミリメートルとの間とすることができる。例えば、シートの厚さは、0.5ミリメートルと2ミリメートルとの間とすることができる。薄いシートは、0.5ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有するものであることが好ましい。厚いシートは、0.8ミリメートルと2ミリメートルとの間の厚さを有するものであることが好ましい。厚い材料(シート)を溶接する場合、接合される部分の十分な溶融を達成するために、処理エネルギーを増大させ、及び/又は、溶接時間を長くし、それにより、満足のいく接続部を生成する。
【0062】
制御装置は、加工物38の厚さに応じて、溶接方法のパラメータを自動的に制御する手段が設けられる。特に、加工物の溶接時貫通を回避し、溶接を最適化するように、加工物38の厚さをセンサによって測定し、溶接装置46の電圧を制御装置により制御する。
【符号の説明】
【0063】
10:溶接要素
12:アンカー部分
14:ヘッド
16:主本体
18:第1の端部領域
20:第2の端部領域
22:溶接面
24:停止面
26:突出部
28:先端部
30:基部
32:外側面
34:溝
36:膨出部
38:加工物
40:第1の表面
42:第2の表面
44:接続部分
46:溶接装置
48:凹部