(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】自動車駐車支援方法及び自動車駐車支援システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20230922BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20230922BHJP
B60W 30/188 20120101ALI20230922BHJP
B60W 50/035 20120101ALI20230922BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230922BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W30/09
B60W30/188
B60W50/035
G08G1/16 C
B60T7/12 Z
(21)【出願番号】P 2019548644
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 FR2018050531
(87)【国際公開番号】W WO2018162852
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マルタン, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】セーヌ, パペ アブドゥライ
(72)【発明者】
【氏名】サリウ, セバスチャン
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088333(JP,A)
【文献】特開2005-170295(JP,A)
【文献】特開2005-343249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0136043(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013215432(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/022413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
F02D 29/00 - 29/06
B62D 6/00 - 6/10
B60R 25/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のための、前記自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、前記自動車を前記駐車スペースから退出させて前記走行レーン上に移動可能にする駐車支援システムであって、前記自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、自動制御機能を起動する手段と、を含み、前記駐車支援システムは、前記自動車の速度(V)及び障害物への距離(D)に基づいて、前記自動車の加速を判定し、加速設定値(A)を送ることが可能な加速判定モジュール(12)と、前記加速設定値(A)と、前記自動車の前記速度(V)と、道路の勾配(P)と、に基づいて、最終制動トルク設定値(C
FF)及び最終エンジントルク設定値(C
MF)を算出することが可能なトルク制御モジュール(14)と、を含み、
前記トルク制御モジュール(14)は、前記加速判定モジュール(12)により算出される前記加速設定値(A)に基づいて、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)を算出する初期トルク算出モジュール(16)と、駐車操作の中断が検出された場合
のみに、制動トルク設定値(C
F)を算出することができる減速制御モジュール(26)と、を含み、
前記初期トルク算出モジュール(16)は、前記自動車の前記加速度計により提供される情報を用いて推定される前記自動車の前記速度(V)及び前記道路の前記勾配(P)に基づいて、前記加速設定値(A)の値を、ホイール(Cr)でのトルク設定値に変換するコンバータ(18)を含むことを特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
自動車のための、前記自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、前記自動車を前記駐車スペースから退出させて前記走行レーン上に移動可能にする駐車支援システムであって、前記自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、自動制御機能を起動する手段と、を含み、前記駐車支援システムは、前記自動車の速度(V)及び障害物への距離(D)に基づいて、前記自動車の加速を判定し、加速設定値(A)を送ることが可能な加速判定モジュール(12)と、前記加速設定値(A)と、前記自動車の前記速度(V)と、道路の勾配(P)と、に基づいて、最終制動トルク設定値(C
FF)及び最終エンジントルク設定値(C
MF)を算出することが可能なトルク制御モジュール(14)と、を含み、
前記トルク制御モジュール(14)は、前記加速判定モジュール(12)により算出される前記加速設定値(A)に基づいて、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)を算出する初期トルク算出モジュール(16)を含み、
前記初期トルク算出モジュール(16)は、前記自動車の前記加速度計により提供される情報を用いて推定される前記自動車の前記速度(V)及び前記道路の前記勾配(P)に基づいて、前記加速設定値(A)の値を、ホイール(Cr)でのトルク設定値に変換するコンバータ(18)を含み、
4つの作動状態、すなわち、前記駐車スペース検出システムを通して駐車スペースを検索するフェーズに相当する初期状態(E0)と、前記加速判定モジュール(12)が、前記道路を考慮して、前記自動車が停止状態に確実に維持されるように、ネガティブ加速設定値を算出する、操作の開始を待機するフェーズに相当する第1の状態(E1)と、前記加速判定モジュール(12)が、急速に減少する傾斜にしたがう第1の加速設定値と、ゆっくりと減少する傾斜にしたがう第2の加速設定値と、を算出する加速解除フェーズに相当する第2の状態(E2)と、前記加速判定モジュール(12)が、フィードフォワードフィルタ及び比例積分コントローラに基づいて、加速設定値を算出する第3の状態(E3)と、前記加速判定モジュール(12)が、制動傾斜のゲインに基づいて、加速設定値を算出する制動起動フェーズに相当する第4の状態(E4)と、を含む、駐車支援システム。
【請求項3】
前記初期トルク算出モジュール(16)は、各状態(E1、E2、E3)において、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)を算出する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
自動車のための、前記自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、前記自動車を前記駐車スペースから退出させて前記走行レーン上に移動可能にする駐車支援システムであって、前記自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、自動制御機能を起動する手段と、を含み、前記駐車支援システムは、前記自動車の速度(V)及び障害物への距離(D)に基づいて、前記自動車の加速を判定し、加速設定値(A)を送ることが可能な加速判定モジュール(12)と、前記加速設定値(A)と、前記自動車の前記速度(V)と、道路の勾配(P)と、に基づいて、最終制動トルク設定値(C
FF)及び最終エンジントルク設定値(C
MF)を算出することが可能なトルク制御モジュール(14)と、を含み、
前記トルク制御モジュール(14)は、前記加速判定モジュール(12)により算出される前記加速設定値(A)に基づいて、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)を算出する初期トルク算出モジュール(16)を含み、
前記初期トルク算出モジュール(16)は、前記自動車の前記加速度計により提供される情報を用いて推定される前記自動車の前記速度(V)及び前記道路の前記勾配(P)に基づいて、前記加速設定値(A)の値を、ホイール(Cr)でのトルク設定値に変換するコンバータ(18)を含み、
前記初期トルク算出モジュール(16)は、出力にて、初期エンジントルク設定値に相当するポジティブ成分(C
MI)を送る飽和器(20)と、初期制動トルク設定値(C
FI)を取得するために、前記ホイール(Cr)での前記トルク設定値から、前記ポジティブ成分(C
MI)を減算することが可能な減算器(22)と、をさらに含む、駐車支援システム。
【請求項5】
自動車のための、前記自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、前記自動車を前記駐車スペースから退出させて前記走行レーン上に移動可能にする駐車支援システムであって、前記自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、自動制御機能を起動する手段と、を含み、前記駐車支援システムは、前記自動車の速度(V)及び障害物への距離(D)に基づいて、前記自動車の加速を判定し、加速設定値(A)を送ることが可能な加速判定モジュール(12)と、前記加速設定値(A)と、前記自動車の前記速度(V)と、道路の勾配(P)と、に基づいて、最終制動トルク設定値(C
FF)及び最終エンジントルク設定値(C
MF)を算出することが可能なトルク制御モジュール(14)と、を含み、
前記トルク制御モジュール(14)は、前記加速判定モジュール(12)により算出される前記加速設定値(A)に基づいて、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)を算出する初期トルク算出モジュール(16)を含み、
前記初期トルク算出モジュール(16)は、前記自動車の前記加速度計により提供される情報を用いて推定される前記自動車の前記速度(V)及び前記道路の前記勾配(P)に基づいて、前記加速設定値(A)の値を、ホイール(Cr)でのトルク設定値に変換するコンバータ(18)を含み、
前記トルク制御モジュール(14)は、駐車操作の中断フェーズ中、例えば、軌跡上に障害物が存在する場合、運転者が前記操作を解除した場合、又は、前記制動システム以外のアクチュエータの故障の場合、にのみ起動する減速制御モジュール(26)を含み、前記減速制御モジュール(26)は、中断が検出された場合に、バイパス命令を送り、制動トルク設定値(C
F)を算出することができる、駐車支援システム。
【請求項6】
前記トルク制御モジュール(14)は、入力にて受け取る様々なトルク設定値(C
FI、C
MI、C
F)の間を仲裁することにより、前記最終エンジントルク設定値(C
MF)を前記ホイールに送り、前記最終制動トルク設定値(C
FF)を前記ホイールに送るようにすることが可能な最終トルクセットポイント算出モジュール(28)を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
自動車のための、前記自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、前記自動車を前記駐車スペースから退出させて前記走行レーン上に移動可能にする駐車支援方法であって、前記自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、視聴覚インターフェースと、自動制御機能を起動する手段と、を含み、加速設定値(A)は、前記自動車の速度(V)及び障害物への距離(D)に基づいて算出され、最終制動トルク設定値(C
FF)及び最終エンジントルク設定値(C
MF)は、前記加速設定値(A)と、前記自動車の前記速度(V)と、道路の勾配(P)と、に基づいて算出され、
前記加速設定値(A)に基づいて、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)が算出され、
前記自動車の前記加速度計により提供される情報を用いて推定される前記自動車の前記速度(V)及び前記道路の前記勾配(P)に基づいて、前記加速設定値(A)の値を、ホイール(Cr)でのトルク設定値に変換し、
駐車操作の中断があるか否かがチェックされ、前記最終エンジントルク設定値(C
MF)及び前記最終制動トルク設定値(C
FF)が、前記初期エンジントルク設定値(C
MI)及び前記初期制動トルク設定値(C
FI)、並びに前記中断の検出に基づいて算出されることを特徴とする、駐車支援方法。
【請求項8】
前記最終制動トルク設定値(C
FF)及び前記最終エンジントルク設定値(C
MF)を算出するために、初期エンジントルク設定値(C
MI)及び初期制動トルク設定値(C
FI)が、前記加速設定値(A)及び前記道路の前記勾配(P)に基づいて算出される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転支援の分野、特に、駐車支援の分野に関する。
【0002】
とりわけ、本発明は、縦列駐車操作などの駐車操作を行うために、完全自動駐車を支援する方法及び完全自動駐車を支援するシステムに関する。
【0003】
そのような駐車支援方法及び駐車支援システムは、駐車スペースを検出し、駐車操作を行うよう、車両の電動式パワーステアリングから制御を引き継ぐことを可能にする。駐車操作の目的のための、ホイールを操舵する操作はしたがって、完全に自動で行われる。
【0004】
車両の運転者は、車両のギヤの切り替え、加速、及び制動に依然として義務を負う。
【0005】
WO2014/167255-A1(ルノー)の文書は、自動車のために自動駐車操作を行う軌跡計画方法を開示する。しかし、そのような方法は、車両の縦方向の速度を考慮しない。
【0006】
車両の駐車操作を自動システムに委任する方法が記載されている、WO2014/191209-A1(ルノー)の文書も参照する。
【0007】
そのような方法では、運転者は加速にのみ義務を負う。したがって、車両が過大な速度にて走行するリスクがある。これにより、車両の近位に位置する固定障害物又は移動する障害物と衝突するおそれがある。加えて、障害物の検出及び車両の制動並びに停止もまた、運転者の排他的な制御の下にある。
【0008】
最も安全と思われる駐車支援を運転者に提示するために、運転支援方法及び運転支援システムを改善する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的はしたがって、アクチュエータ、特に、制動システムの分散を考慮することが可能で、同時に、制御の精度に影響を与えることなく、傾斜した道路上に車両を確実に維持することが可能な駐車支援システム及び駐車支援方法を提供することである。
【0010】
本発明の対象の1つは、自動車のための、自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、自動車を駐車スペースから退出させて走行レーン上に移動可能にする駐車支援システムである。自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、視聴覚インターフェースと、自動制御機能を起動する手段と、を含む。
【0011】
駐車支援システムは、車両の速度セットポイント(「設定値」ともいう)及び障害物への距離に基づいて、車両の加速を判定又は算出し、加速セットポイントを送ることが可能なモジュールと、加速セットポイントと、車両の速度と、道路の勾配と、に基づいて、制動トルクセットポイント及びエンジントルクセットポイントを算出することが可能なトルク制御モジュールと、を含む。
【0012】
システムは、低い速度での車両の移動を制御することができる。この目的のために、低速度用の速度推定器と、加速推定器と、を有する。
【0013】
そのような駐車支援システムは、運転者がいつでも駐車操作をできるようにしながらも、電動式パワーステアリングなどの横方向のアクチュエータを通しての制御だけでなく、車両のエンジン、変速機、及び制動システムなどの縦方向のアクチュエータを通しての制御をも考慮して、運転者がより容易に駐車できるようにする。
【0014】
1つの実施形態によると、システムは、4つの作動状態を含む、すなわち:
-駐車スペース検出システムを通して駐車スペースを検索するフェーズに相当する初期状態、
-加速判定モジュールが、道路を考慮して、車両が停止状態に確実に維持されるように、ネガティブ加速セットポイントを算出する、操作の開始を待機するフェーズに相当する第1の状態、
-加速判定モジュールが、急速に減少する傾斜にしたがう第1の加速セットポイントと、ゆっくりと減少する傾斜にしたがう第2の加速セットポイントと、を算出する加速解除フェーズに相当する第2の状態、
-加速判定モジュールが、フィードフォワードフィルタ及び比例積分コントローラに基づいて、加速セットポイントを算出する第3の状態、及び
-加速判定モジュールが、制動傾斜のゲインに基づいて、加速セットポイントを算出する制動起動フェーズに相当する第4の状態。
【0015】
したがって、駐車操作の各状態において、加速判定モジュールは、加速セットポイントを算出する。
【0016】
好都合には、トルク制御モジュールは、駐車操作の各状態において、加速判定モジュールにより算出される加速セットポイントに基づいて、初期トルクを算出するモジュールを含む。
【0017】
例えば、初期トルク算出モジュールは、車両の加速度計により供給される情報を用いて推定される車両の速度及び道路の勾配に基づいて、加速セットポイントの値を、ホイールでのトルクセットポイントに変換するコンバータを含む。
【0018】
初期トルク算出モジュールはまた、出力にて、初期エンジントルクセットポイントに相当するポジティブ成分を送る飽和器と、初期制動トルクセットポイントを取得するために、ホイールでのトルクセットポイントからポジティブ成分を減算することが可能な減算器と、をさらに含む。
【0019】
好都合には、トルク制御モジュールは、駐車操作の中断フェーズ中、例えば、軌跡上に障害物が存在する場合、運転者が操作を解除した場合、又は制動システム以外のアクチュエータの故障の場合、にのみ起動する減速制御モジュールを含む。減速制御モジュールは、中断が検出された場合に、バイパス命令を送り、制動トルクセットポイントを算出することができる。
【0020】
例えば、トルク制御モジュールは、入力にて受け取る様々なトルクセットポイントの間を仲裁し、最終エンジントルクセットポイントをホイールに送り、最終制動トルクセットポイントをホイールに送るようにすることが可能な最終トルクセットポイント算出モジュールを含む。
【0021】
第2の態様によると、本発明は、自動車のための、自動車を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、自動車を駐車スペースから退出させて走行レーン上に移動可能にする駐車支援方法に関する。自動車は、障害物検出システムと、駐車スペース検出システムと、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリングと、トルクを制御可能なエンジン・制動システムと、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステムと、少なくとも1つの走行距離計測センサと、加速度計と、視聴覚インターフェースと、自動制御機能を起動する手段と、を含む。
【0022】
この方法では、加速セットポイントは、車両の速度及び障害物への距離に基づいて算出され、制動トルクセットポイント及びエンジントルクセットポイントは、加速セットポイントと、車両の速度と、道路の勾配と、に基づいて算出される。
【0023】
例えば、制動トルクセットポイント及びエンジントルクセットポイントを算出するために、初期エンジントルクセットポイント及び初期制動トルクセットポイントが、加速セットポイント及び道路の勾配に基づいて算出され、駐車操作の中断があるか否かがチェックされ、最終エンジントルクセットポイント及び最終制動トルクセットポイントが、初期トルクセットポイント及び中断の検出に基づいて算出される。
【0024】
本発明の他の目的、特徴、及び利点が、添付の図面を参照して、非限定例を通してのみ与えられる、以下の説明を読むことにより明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明に係る、自動車のための駐車支援システムを模式的に示す。
【
図3】
図3は、
図1の駐車支援システムのトルク制御モジュールを詳細に示す。
【
図4】
図4は、駐車支援システムにより実施される、本発明に係る駐車支援方法の各ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、運転支援システム10、特に、自動車(図示せず)のための駐車支援システムを高度に模式的に示す。自動車は、明確さを改善するために図示しない、以下の要素を含む:2m未満の距離などの、車両の近位に位置する障害物を検出するシステム、駐車スペース検出システム、操舵角を制御可能な電動式パワーステアリング、トルクを制御可能なエンジン・制動システム、自動変速機又は「シフトバイワイヤ」システムとして知られるシステム、少なくとも1つの走行距離計測センサ、加速度計、視聴覚インターフェース、及び自動制御機能を起動する手段又は「デッドマン装置」。
【0027】
システム10は、低速度での車両の速度を制御することができる。この目的のために、低速度用の速度推定器と、加速推定器と、を有する(共に図示せず)。
【0028】
システム10は、車両Vの速度及び障害物への距離Dに基づいて、車両の加速を算出又は判定し、加速セットポイントAを送ることが可能なモジュール12と、加速セットポイントAと、車両Vの速度と、道路の勾配Pと、に基づいて、制動トルクセットポイントCFF及びエンジントルクセットポイントCMFを算出することが可能なトルク制御モジュール14と、を含む。
【0029】
加速判定モジュール12は、駐車操作のステージ及び車両の近位における環境に基づいて、車両のアクチュエータの制御を連続して調整するよう、駐車支援システム10の各状態Eにおける、トルク制御モジュール14に送られる加速セットポイントAを算出する。
【0030】
【0031】
駐車支援システムの初期状態E0は、駐車スペースを検索するフェーズに相当する。この状態E0では、駐車支援システム10は起動していない。つまり、アクチュエータの制御は行われない。車両の運転者は、車両に対する義務を完全に負う。駐車支援システム10を起動させるには、運転者は、車両のダッシュボード上にある、自動制御機能又は「デッドマン」を起動するための起動手段(図示せず)を押し、縦列駐車操作などの駐車操作の種類及び運転者が車両を駐車したい車両の側面を選択する。車両のヒューマンマシンインターフェース(図示せず)がその後運転者に、駐車スペースが検出されるまで車両を前進させるよう求め、その後、車両を停止するよう求める。
【0032】
運転者が駐車スペースを確定すると、駐車支援システム10は、操作の開始を待機するフェーズに相当する状態E1に変わる。この待機フェーズE1では、加速判定モジュール12は、ネガティブ加速セットポイントを算出する。算出には、以下の式を用いる:
AE1(k)=C (式1)
ここで:
AE1は、m/s2にて表される、状態E1にて算出される加速セットポイントである。
kは、サンプリング時間である。
Cは、m/s2にて表される定数である。これは、道路の勾配及び車両の質量に関する不確実性など、道路及び車両を考慮して、車両が停止状態に確実に維持されるように、加速判定モジュールにより算出される加速目標に相当する。
【0033】
縦列駐車の場合、運転者は、リバースギヤに入れる必要がある。リバースギヤに入り、運転者が駐車操作を開始する命令を駐車支援システムに送ると、加速を解除するフェーズに相当する状態E2となる(車両が停止状態に確実に維持されるようにするために、初期的に定義されている)。加速判定モジュールはここでは、急速に減少する傾斜にしたがう第1の加速セットポイントと、ゆっくりと減少する傾斜にしたがう第2の加速セットポイントと、を算出する。算出には、以下の式を用いる:
AE2(k)=AE2(k-1).K.Te.KF、AE2(k-1)<S (式2)
AE2(k)=AE2(k-1).K.Te.KS (式3)
ここで:
AE2は、m/s2にて表される、状態E2にて算出される加速セットポイントである。
Kは、離散積分器のゲインである。
Teは、サンプリング期間である。
KFは、急速な傾斜のゲインである。
KSは、ゆっくりと減少する傾斜のゲインである。
Sは、減速傾斜変化の閾値である。
【0034】
加速セットポイントの完全解除の終わりにて、又は、駐車支援システムが車両の移動を検出すると、状態E3となる。
【0035】
車両の移動を検出するために、駐車支援システムは、駐車支援システムの内部推定器を用いての「トップホイール」に基づく移動検出モジュールを含む。「トップホイール」という名称は、車両のホイールに位置するエンコーダの出力を意味する。この出力は、ホイールのX度の回転毎にインクリメントする。値Xは、車両及びホイールのサイズに依存する。このエンコーダは、車両の走行距離計測システムの一部を形成する。各ホイールには1つのエンコーダがある。X度の回転毎に、1つ以上の「トップ」が出現する。
【0036】
状態E1及び状態E2では、車両は静止している。状態E3にて、加速判定モジュール12は、加速セットポイントA
E3を算出する。算出には、以下の式を用いる:
A
E3(k)=K
PID.A
PID(k).+K
FF.A
FF(k) (式4)
ここで、
ここで:
A
E3は、m/s
2にて表される、状態E3にて算出される加速セットポイントである。
K
PIDは、比例積分導関数コントローラの重み付けゲインである。
A
PIDは、m/s
2にて表される、比例積分導関数コントローラの加速セットポイントである。
K
FFは、フィードフォワードフィルタの重み付けゲインである。
A
FFは、m/s
2にて表される、フィードフォワードフィルタの加速セットポイントである。
V
reqは、m/sにて表される、超えてはならない閾値に相当する、駐車支援システムの速度セットポイントである。
【0037】
障害物を検出するか、運転者が車両を自ら制御しようとするか、車両の横方向のアクチュエータ又は縦方向のアクチュエータの1つに不具合があると、駐車支援システムは状態E1に変わる。
【0038】
移動の終わりにて、状態E3の中断がなければ、駐車支援システムは、制動起動フェーズに相当する状態E4に変わる。ここでは、加速判定モジュールが、加速セットポイントAE4を算出する。算出には、以下の式を用いる:
AE4(k)=AE4(k-1).K.Te.Ksb (式6)
ここで:
AE4は、m/s2にて表される、状態E4にて算出される加速セットポイントである。
KSBは、制動傾斜のゲインである。
【0039】
車両が停止し、制動傾斜が終了すると、駐車支援システムは、次の移動を待機するフェーズに相当する状態E1に変わる。この状態にて、車両は、ネガティブ加速セットポイントAE1を適用することにより、停止状態に維持される。
【0040】
これら加速セットポイントAE0、加速セットポイントAE1、加速セットポイントAE2、加速セットポイントAE3、及び加速セットポイントAE4のすべてが、単一の加速セットポイントAに合成される。これは、システム10の状態Exに基づく以下のロジックに基づいて決定される:
A(k)=AE0(k). E(システムの状態)=E0の場合;又は
A(k)=AE1(k). E(システムの状態)=E1の場合;又は
A(k)=AE2(k). E(システムの状態)=E2の場合;又は
A(k)=AE3(k). E(システムの状態)=E3の場合;又は
A(k)=AE4(k). E(システムの状態)=E4の場合。
【0041】
この単一の加速セットポイントAは続いて、車両のアクチュエータ(エンジン及びブレーキ)の制御に必要なトルクセットポイントを算出するよう、トルク制御モジュール14に送られる。
【0042】
トルク制御モジュール14は、加速制御モジュール12により算出される加速セットポイントAに基づいて、初期エンジントルクセットポイントCMI及び初期制動トルクセットポイントCFIを算出するモジュール16を含む。
【0043】
初期トルク算出モジュール16は、車両が停止している際の操作の開始時に、車両の加速度計(図示せず)により供給される情報を用いて推定される車両Vの速度及び道路の勾配Pに基づいて、加速セットポイントAの値を、ホイールCrでのトルクセットポイントに変換するコンバータ18を含む。道路の勾配Pによっては、この勾配により車両に印加される力と、ひいては、ホイールにてトルクセットポイントに加えられる、対応するトルクCPと、が決定される。
【0044】
ホイールCrでのトルクセットポイントは、以下の式を用いて表される:
Cr=CP.+A.m.R (式7)
ここで:
Crは、N.mにて表される、ホイールでのトルクセットポイントである。
CPは、N.mにて表される、道路の勾配により車両に印加される力に相当するトルクである。
mは、kgにて表される、車両の質量である。
Rは、mにて表される、ホイールの半径である。
【0045】
制動システムの初期エンジントルクセットポイントCMI及び初期制動トルクセットポイントCFIを算出するモジュール16は、出力にて、エンジンに対する初期トルクセットポイントに相当するポジティブ成分CMIを送る飽和器20と、第2の飽和器24を用いて、制動システムの初期トルクセットポイントを取得するために、先に決定されたエンジントルク成分CMIを、ホイールCrでのトルクセットポイントから減算することが可能な減算器22と、をさらに含む。
【0046】
トルク制御モジュール14は、駐車操作の中断フェーズ中、例えば、軌跡上に障害物が存在する場合、運転者が操作を解除した場合、又は制動システム以外のアクチュエータの故障の場合、にのみ起動する減速制御モジュール26をさらに含む。
【0047】
減速制御モジュール26は、バイパス命令を送り、車両の速度を微分することにより取得した、車両の加速AEstの推定値に基づいて、制動トルクセットポイントCFを算出する。このモジュール26は、フィルタされた導関数を伴う比例積分コントローラに基づいている。
【0048】
トルク制御モジュール14は、入力にて受け取る様々なトルクセットポイントの間を仲裁し、最終エンジントルクセットポイントCMFをホイールに送り、最終制動トルクセットポイントCFFをホイールに送るようにすることが可能な最終トルクセットポイント算出モジュール28をさらに含む。算出には、以下の式を用いる:
CMF(k)=CMI(k) バイパスのない場合 (式8)
又は、CMF(k)=0 (式9)
CFF(k)=CFI(k) バイパスのない場合 (式10)
又は、CFF(k)=CF (式11)
ここで:
CMFは、N.mにて表される、ホイールでの最終エンジントルクセットポイントである。
CFFは、N.mにて表される、ホイールでの最終制動トルクセットポイントである。
CFは、N.mにて表される、モジュール26により算出される、ホイールでの制動トルクセットポイントである。
【0049】
制動トルクセットポイントはしたがって、駐車支援システムの状態E1、状態E2、及び状態E4にて取得される。エンジントルクセットポイント及び/又は制動トルクセットポイントは、駐車支援システムの状態E3にて、環境に基づいて取得される。
【0050】
図4は、自動車のための駐車支援方法30の実施のためのフローチャートを示す。
【0051】
方法30は、車両を走行レーンから利用可能な駐車スペースへ駐車可能にし、車両を駐車スペースから退出させて走行レーン上に移動可能にする。
【0052】
方法30は、駐車支援システムの状態E、つまり、先に定義する状態E0~状態E4の1つを判定するステップ31を含む。
【0053】
方法は、初期状態E0にて、駐車スペースを検索するステップ32を含む。
【0054】
方法は、運転者が駐車スペースを確定すると、操作の開始を待機する状態E1に相当するステップ33を含む。
【0055】
方法は、操作を行う条件が満たされると、つまり、縦列駐車の場合では、運転者がリバースギヤにし、駐車操作を開始する命令を送ると、加速判定モジュールが、駐車支援システムに対する、減少する傾斜にしたがって第1の加速セットポイントを算出する、加速を解除する状態E2に相当するステップ34を含む。
【0056】
加速セットポイントの完全解除の終わりにて、又は、駐車支援システム10が車両の移動を検出すると、方法は、状態E3に相当するステップ35に変わる。
【0057】
移動の終わりにて、状態E3の中断がなければ、方法は、制動起動の状態E4に相当するステップ36に変わる。ここでは、加速判定モジュールが、加速セットポイントAE4を算出する。
【0058】
方法30は、式1~式6の1つを用いて判定される各状態Eにおいて、加速ポイントAを算出するステップ37と、加速セットポイントAをトルクセットポイント算出モジュール14に送るステップ38と、をさらに含む。
【0059】
方法30は、加速セットポイント及び道路の勾配Pに基づいて、初期エンジントルクセットポイントCMI及び初期制動トルクセットポイントCFIを算出するステップ39を含む。
【0060】
方法30は、例えば、軌跡上に障害物が存在する場合、運転者が操作を解除した場合、又はアクチュエータの故障の場合など、中断をチェックするステップ40を含む。中断を検出すると、検出ステップはポジティブバイパス値を送り、車両の速度を微分することにより取得した車両の加速の推定値に基づき、フィルタされた導関数を伴う比例積分コントローラに基づいて、制動トルクセットポイントを算出する。
【0061】
方法は、入力にて受け取る様々なトルクセットポイントの間を仲裁し、最終エンジントルクセットポイントCMFをホイールに送り、最終制動トルクセットポイントCFFをホイールに送るようにすることが可能な、最終トルクセットポイントを算出するステップ41を含む。算出には、式8~式11を用いる。
【0062】
本発明に係る駐車支援システム及び駐車支援方法に基づくと、操作をしていない静止フェーズ中に、車両が確実に維持されるように、道路の勾配を依然として考慮しつつ、支援された駐車操作において、縦方向の車両の移動を制御することができる。