(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】抗L1-CAM抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230928BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230928BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230928BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230928BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230928BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230928BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230928BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230928BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230928BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230928BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230928BHJP
A61K 49/04 20060101ALI20230928BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230928BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230928BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20230928BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20230928BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20230928BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20230928BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230928BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230928BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230928BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230928BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230928BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20230928BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230928BHJP
G01T 1/161 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K45/00
A61K49/04
A61K49/00
A61K38/19
A61K38/43
A61K38/22
A61K38/18
A61K51/00
A61K47/69
A61K48/00
A61K31/7088
A61P35/00
A61P35/02
A61K51/10 200
A61K9/127
G01T1/161 D
(21)【出願番号】P 2019569397
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 US2018037645
(87)【国際公開番号】W WO2018232188
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-09
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン-ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】チュン ナイ-コン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ホン
(72)【発明者】
【氏名】スズキ-ニシジマ マヤ
(72)【発明者】
【氏名】ネミエボカ ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ジェイソン
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0189287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12N
A61K
A61P
G01T 1/161
CAplus/Registry/ Medline/Biosis/EMBASE(STN)
Uniprot/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(V
H)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(V
L)を含む、
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)前記V
Hが、GYTFTSYWMQ(配列番号:53)のV
H-CDR1配列、EINPSNGRTNYNEMFKS(配列番号:54)のV
H-CDR2配列、およびYDGYYAMDY(配列番号:55)のV
H-CDR3配列を含み;および
(b)前記V
Lが、KSSQSLLYSSNQKNYLA(配列番号:56)のV
L-CDR1配列、WASTRES(配列番号:57)のV
L-CDR2配列、およびQQYHSYPFT(配列番号:58)のV
L-CDR3配列を含む、
前記抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
さらにまた、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEから成る群から選択されるアイソタイプのFcドメインを含む、請求項1に記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
Fab、F(ab’)
2、Fab’、scF
v、およびF
vから成る群から選択される、請求項1に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項4】
以下から成る群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む
抗L1-CAM抗体:
配列番号:9および配列番号:13(huE71 H1/L1);
配列番号:9および配列番号:14(huE71 H1/L2);
配列番号:10および配列番号:13(huE71 H2/L1);
配列番号:10および配列番号:14(huE71 H2/L2);
配列番号:17および配列番号:21(huE72 H1/L1);
配列番号:17および配列番号:22(huE72 H1/L2);
配列番号:18および配列番号:21(huE72 H2/L1);
配列番号:18および配列番号:22(huE72 H2/L2);
配列番号:26および配列番号:25(chE71 IgG1);
配列番号:30および配列番号:29(chE72 IgG1);
配列番号:42および配列番号:41(chE71 IgG4);
配列番号:46および配列番号:45(huE71 IgG4);
配列番号:49および配列番号:50(huE71 BsAb);並びに
配列番号:51および配列番号:52(huE72 BsAb)。
【請求項5】
配列番号:9および配列番号:13 (huE71 H1/L1);
配列番号:9および配列番号:14 (huE71 H1/L2);
配列番号:10および配列番号:13 (huE71 H2/L1);
配列番号:10および配列番号:14 (huE71 H2/L2);
配列番号:17および配列番号:21 (huE72 H1/L1);
配列番号:17および配列番号:22 (huE72 H1/L2);
配列番号:18および配列番号:21 (huE72 H2/L1);または
配列番号:18および配列番号:22 (huE72 H2/L2)
に存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列のそれぞれと同一である重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列、を含む
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
以下を含む、請求項1記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント:
(a)配列番号:13、14、25、41、45または50のいずれか1つに存在するLC配列と少なくとも95%同一であるLC配列、および
(b)配列番号: 9、10、26、42、46または49のいずれか1つに存在するHC配列と少なくとも95%同一であるHC配列。
【請求項7】
キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項1-6のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
配列番号:74または配列番号:75の連続する少なくとも5つから8つのアミノ酸残基を含むL1-CAMタンパク質のエピトープと結合し、および/またはα-1,6-フコース改変を欠く、請求項1-7のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
N297AおよびK322Aから成る群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むIgG1定常領域を含む、または、S228P変異を含むIgG4定常領域を含む、請求項1-8のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする組換え核酸。
【請求項11】
配列番号:11および配列番号:15 (huE71 H1/L1);
配列番号:11および配列番号:16 (huE71 H1/L2);
配列番号:12および配列番号:15 (huE71 H2/L1);
配列番号:12および配列番号:16 (huE71 H2/L2);
配列番号:19および配列番号:23 (huE72 H1/L1);
配列番号:19および配列番号:24 (huE72 H1/L2);
配列番号:20および配列番号:23 (huE72 H2/L1);
配列番号:20および配列番号:24 (huE72 H2/L2);
配列番号:28および配列番号:27 (chE71 IgG1);
配列番号:32および 配列番号:31 (chE72 IgG1);
配列番号:44および配列番号:43 (chE71 IgG4);および
配列番号:48および配列番号:47 (huE71 IgG4)、
から成る群から選択される、請求項10記載の組換え核酸。
【請求項12】
請求項10または11に記載の組換え核酸を含む宿主細胞またはベクター。
【請求項13】
請求項1-9のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント、および医薬的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項14】
抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメントが同位体、色素、色原体、造影剤、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、酵素阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、成長因子、放射性核種、金属、リポソーム、ナノ粒子、
RNA、DNAまたは前記の任意の組合せから成る群から選択される薬剤と複合体化される、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
T細胞、B細胞、骨髄性細胞、形質細胞または肥満細胞と結合する、または、CD3、CD4、CD8、CD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA-DR、CD74、CD22、CD14、CD15、CD16、CD123、TCRガンマ/デルタ、NKp46、KIR、または小分子DOTAハプテンと結合する、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
対象動物においてL1-CAM関連癌を治療するための組成物であって、以下から成る群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む
抗L1-CAM抗体の有効量を含み、ここで、当該
抗L1-CAM抗体が、L1-CAMと特異的に結合し、L1-CAM活性を中和する、前記組成物:
配列番号:9および配列番号:13(huE71 H1/L1);
配列番号:9および配列番号:14(huE71 H1/L2);
配列番号:10および配列番号:13(huE71 H2/L1);
配列番号:10および配列番号:14(huE71 H2/L2);
配列番号:17および配列番号:21(huE72 H1/L1);
配列番号:17および配列番号:22(huE72 H1/L2);
配列番号:18および配列番号:21(huE72 H2/L1);
配列番号:18および配列番号:22(huE72 H2/L2);
配列番号:26および配列番号:25(chE71 IgG1);
配列番号:30および配列番号:29(chE72 IgG1);
配列番号:42および配列番号:41(chE71 IgG4);
配列番号:46および配列番号:45(huE71 IgG4);
配列番号:49および配列番号:50(huE71 BsAb);並びに
配列番号:51および配列番号:52(huE72 BsAb)。
【請求項17】
L1-CAM関連癌が、白血病、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、多形性神経膠芽腫、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮癌、三陰性乳癌、メラノーマ、明細胞腎細胞癌、褐色細胞腫および傍神経節腫、中皮腫、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵管癌、結腸癌、膵臓癌、肝細胞癌腫、胃癌、胆管癌腫、カルチノイド、神経内分泌腫瘍、胃腸管間質腫(GIST)、褐色細胞腫、神経膠腫、膵臓の神経外胚葉癌、膵臓の腺癌腫、結腸直腸癌、腎細胞癌腫、血管腫、軟骨肉腫、食道の腺癌腫、乏突起神経膠腫、星状細胞腫、上衣腫、膵臓の神経内分泌癌腫、副腎腺腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、卵巣の顆粒細胞腫瘍、シュワン細胞腫、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)、類上皮肉腫、鼻腔神経芽細胞腫、髄芽腫、毛細血管腫、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、顎下腺の癌、または頭頸部の扁平上皮癌腫である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
抗L1-CAM抗体が、追加の治療薬剤と別々に、逐次的に、または同時に対象動物に投与されるように処方されている、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
追加の治療薬剤が、アルキル化剤、白金剤、タキサン、ビンカ剤、抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、卵巣抑制剤、VEGF/VEGFR阻害剤、EGF/EGFR阻害剤、PARP阻害剤、細胞増殖抑制アルカロイド、細胞傷害性抗生物質、抗代謝剤、内分泌/ホルモン剤、ビスホスホネート療法剤の1つ以上である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1-9のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体を含む、対象動物の腫瘍をin vivoで検出するための組成物であって、前記検出が、
(a)請求項1-9のいずれか1項に記載の
抗L1-CAM抗体の有効量を対象動物に投与する工程(ここで当該
抗L1-CAM抗体はL1-CAMを発現する腫瘍に局在するように構成され、かつ放射性同位体で標識される)、および
(b)
抗L1-CAM抗体によって放射される、参照値よりも高い放射能レベルを検出することによって対象動物で腫瘍の存在を検出する工程、
を含む、前記組成物。
【請求項21】
対象動物が癌と診断されるか、癌を有すると疑われる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
抗L1-CAM抗体によって放射される放射能レベルが、陽電子放射断層撮影法または単光子放射コンピュータ断層撮影法を用いて検出される、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
さらにまた、放射性核種と複合体化させた請求項1-9のいずれか1項に記載の
抗L1-CAMkout抗体を含む免疫複合体を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
放射性核種が、アルファ粒子放射同位体、ベータ粒子放射同位体、オージェ-エミッター、または前記の任意の組合せである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
ベータ粒子放射同位体が、
86Y、
90Y、
89Sr、
165Dy、
186Re、
188Re、
177Lu、および
67Cuから成る群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本出願は、米国仮特許出願No. 62/520,382(2017年6月15日出願)(前記開示は参照によってその全体が本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
(配列表)本出願は配列表を含み、前記配列表はASCII形式で電子提出され、それにより前記は参照によってその全体が本明細書に含まれる。
(技術分野)
本技術は、概して、L1-CAMタンパク質に特異的に結合する、免疫グロブリン関係組成物(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント)および前記の使用に関する。特に、本技術は、L1-CAM中和抗体の調製、並びにL1-CAM関連癌の検出および治療における前記の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術の背景に関する以下の記載は単に本技術の理解を助けるものとして提供され、本技術に対する先行技術を記載することまたは先行技術を構成することを容認するものではない。
キメラ抗原受容体(CAR)技術(Sadelain M et al., Cancer Discov 3:388-98, 2013)の出現は、抗L1-CAM再指向遺伝子改変T細胞の治療薬研究を急速に拡大し、L1-CAM-CAR改変T細胞を用いるいくつかの臨床試験(NCT00889954(いずれもL1-CAM(+)癌)、NCT01935843(L1-CAM(+)固形腫瘍))が存在する。以下を参照されたい:Hong H et al., J Immunother 37:93-104, 2014。T細胞は低レベルのL1-CAMを有する腫瘍を効果的に標的とすることができるが、低レベルL1-CAM発現を有する正常組織内にたまたま存在するものへの潜在的毒性に関する懸念も存在する。
毒性の他に、リンパ球療法のための細胞採集、加工、貯蔵、輸送および製品出荷規制は、特に細胞が遺伝子改変を必要とするときはチャレンジングであり得る。T細胞の消耗、生存および帰巣は、莫大な数のこれら細胞の輸液にもかかわらず最適を下回る。さらにまた、CAR改変T細胞は免疫抑制腫瘍ミクロ環境にとって例外ではなく、当該環境では、腫瘍関連マクロファージおよび骨髄系抑制細胞は、CAR改変T細胞の抗腫瘍特性を回避するために協調して働く。さらにまた、CAR改変T細胞は、古典的T細胞が直面する同じ免疫抑制的制約を受ける(前記制約には腫瘍細胞上のB7によるCTLA4の嵌合またはPD-L1(B7-H1)によるPD-1の嵌合後のアネルギーが含まれる)。癌治療のためにCAR改変T細胞療法に代わる臨床的に有効な選択肢が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
ある特徴では、本開示は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む、抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、(a)VHは、GYTFTSYWMQ(配列番号:53)のVH-CDR1配列、EINPSNGRTNYNEMFKS (配列番号:54)のVH-CDR2配列、およびYDGYYAMDY(配列番号:55)のVH-CDR3配列を含み;および/または(b)VLは、KSSQSLLYSSNQKNYLA(配列番号:56)のVL-CDR1配列、WASTRES(配列番号:57)のVL-CDR2配列、およびQQYHSYPFT(配列番号:58)のVL-CDR3配列を含む。当該抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施態様では、VHは配列番号:1のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号:3のアミノ酸配列を含む。加えて或いはまた別に、抗体はさらにまた、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEから成る群から選択されるアイソタイプのFcドメインを含むことができる。いくつかの実施態様では、抗体は、N297AおよびK322Aから成る群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むIgG1定常領域を含む。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、抗体はS228P変異を含むIgG4定常領域を含む。ある種の実施態様では、抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、およびFvから成る群から選択される。いくつかの実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。ある種の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントはL1-CAMタンパク質のエピトープと結合し、前記エピトープは、L1-CAMの2番目のIg様ドメイン(配列番号:74)の連続する少なくとも5つから8つのアミノ酸残基を含む。いくつかの実施態様では、エピトープは立体構造エピトープである。
【0004】
別の特徴では、本開示は抗体を提供し、前記抗体は、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:26、配列番号:30、配列番号:42、配列番号:46、配列番号:49、配列番号:51の重鎖(HC)アミノ酸配列または1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する前記の変種、および/または配列番号:13、配列番号:14、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:25、配列番号:29、配列番号:41、配列番号:45、配列番号:50、配列番号:52の軽鎖(LC)アミノ酸配列または1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する前記の変種を含む。ある種の実施態様では、抗体は以下から成る群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む:配列番号:9および配列番号:13(huE71 H1/L1);配列番号:9および配列番号:14(huE71 H1/L2);配列番号:10および配列番号:13(huE71 H2/L1);配列番号:10および配列番号:14(huE71 H2/L2);配列番号:17および配列番号:21(huE72 H1/L1);配列番号:17および配列番号:22(huE72 H1/L2);配列番号:18および配列番号:21(huE72 H2/L1);配列番号:18および配列番号:22(huE72 H2/L2);配列番号:26および配列番号:25(chE71 IgG1);配列番号:30および配列番号:29(chE72 IgG1);配列番号:42および配列番号:41(chE71 IgG4);配列番号:46および配列番号:45(huE71 IgG4);配列番号:49および配列番号:50(huE71 BsAb);並びに配列番号:51および配列番号:52(huE72 BsAb)。
【0005】
ある特徴では、本開示は以下を含む抗体を提供する:(a)配列番号:13、14、21、22、25、29、41、45、50または52のいずれか1つに存在する軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列、および/または(b)配列番号: 9、10、17、18、26、30、42、46、49および51のいずれか1つに存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列。
別の特徴では、本開示は以下を含む抗体を提供する:(a)配列番号:13、14、21、22、25、29、41、45、50または52のいずれか1つに存在するLC配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるLC配列、および/または(b)配列番号: 9、10、17、18、26、30、42、46、49および51のいずれか1つに存在するHC配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるHC配列。
【0006】
上記の実施態様のいずれかにおいても、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、抗体は、N297AおよびK322Aから成る群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むIgG1定常領域を含む。ある種の実施態様では、本技術の抗体はS228P変異を含むIgG4定常領域を含む。上記の実施態様のいずれにおいても、抗体はL1-CAMタンパク質のエピトープと結合し、前記エピトープは、L1-CAMの2番目のIg様ドメイン(配列番号:74)またはL1-CAMの6番目のIg様ドメイン(配列番号:75)の連続する少なくとも5つから8つのアミノ酸残基を含む。いくつかの実施態様では、エピトープは立体構造エピトープである。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、本技術の抗体はα-1,6-フコース改変を欠く。
ある特徴では、本開示は、本明細書に記載する抗体のいずれかをコードする組換え核酸配列を提供する。いくつかの実施態様では、組換え核酸配列は、配列番号:11、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、43、44、47および48から成る群から選択される。
別の特徴では、本開示は、本明細書に開示する組換え核酸配列のいずれかを含む宿主細胞またはベクターを提供する。
ある特徴では、本開示は、本技術の抗体または抗原結合フラグメントおよび医薬的に許容できる担体を含む組成物を提供し、ここで、抗体または抗原結合フラグメントは、場合によって以下から成る群から選択される薬剤と複合体化される:同位体、色素、色原体、造影剤、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、酵素阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、成長因子、放射性核種、金属、リポソーム、ナノ粒子、RAN、DNAまたは前記の任意の組合せ。
【0007】
本技術の二重特異性抗体のいくつかの実施態様では、二重特異性抗体は、T細胞、B細胞、骨髄性細胞、形質細胞または肥満細胞と結合する。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、二重特異性抗体は、CD3、CD4、CD8、CD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA-DR、CD74、CD22、CD14、CD15、CD16、CD123、TCRガンマ/デルタ、NKp46、KIR、または小分子DOTAハプテンと結合する。小分子DOTAハプテンは以下から成る群から選択できる:DOTA、DOTA-Bn、DOTA-デスフェリオキサミン、DOTA-Phe-Lys(HSG)-D-Tyr-Lys(HSG)-NH2、Ac-Lys(HSG)D-Tyr-Lys(HSG)-Lys(Tscg-Cys)-NH2、DOTA-D-Asp-D-Lys(HSG)-D-Asp-D-Lys(HSG)-NH2、DOTA-D-Glu-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2、DOTA-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2、DOTA-D-Ala-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2、DOTA-D-Phe-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-NH2、Ac-D-Phe-D-Lys(DOTA)-D-Tyr-D-Lys(DOTA)-NH2、Ac-D-Phe-D-Lys(DTPA)-D-Tyr-D-Lys(DTPA)-NH2、Ac-D-Phe-D-Lys(Bz-DTPA)-D-Tyr-D-Lys(Bz-DTPA)-NH2、Ac-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2、DOTA-D-Phe-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2, (Tscg-Cys)-D-Phe-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Lys(DOTA)-NH2、Tscg-D-Cys-D-Glu-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2、(Tscg-Cys)-D-Glu-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2、Ac-D-Cys-D-Lys(DOTA)-D-Tyr-D-Ala-D-Lys(DOTA)-D-Cys-NH2、Ac-D-Cys-D-Lys(DTPA)-D-Tyr-D-Lys(DTPA)-NH2、Ac-D-Lys(DTPA)-D-Tyr-D-Lys(DTPA)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2、およびAc-D-Lys(DOTA)-D-Tyr-D-Lys(DOTA)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2。
【0008】
別の特徴では、本開示は、L1-CAM関連癌をその必要がある対象動物で治療する方法を提供し、前記方法は、本明細書に開示する抗体のいずれか1つの有効量を当該対象動物に投与する工程を含む。ある種の実施態様では、抗体は以下から成る群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む:(i)配列番号:9および配列番号:13(huE71 H1/L1);(ii)配列番号:9および配列番号:14(huE71 H1/L2);(iii)配列番号:10および配列番号:13(huE71 H2/L1);(iv)配列番号:10および配列番号:14(huE71 H2/L2);(v)配列番号:17および配列番号:21(huE72 H1/L1);(vi)配列番号:17および配列番号:22(huE72 H1/L2);(vii)配列番号:18および配列番号:21(huE72 H2/L1);(viii)配列番号:18および配列番号:22(huE72 H2/L2);(ix)配列番号:26および配列番号:25(chE71 IgG1);(x)配列番号:30および配列番号:29(chE72 IgG1);(xi)配列番号:42および配列番号:41(chE71 IgG4);(xii)配列番号:46および配列番号:45(huE71 IgG4);(xiii)配列番号:49および配列番号:50(huE71 BsAb);並びに(xiv)配列番号:51および配列番号:52(huE72 BsAb)(ここで、抗体はL1-CAMと特異的に結合しその活性を中和する)。
【0009】
いくつかの実施態様では、L1-CAM関連癌は以下である:白血病、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、多形性神経膠芽腫、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮癌、三陰性乳癌、メラノーマ、明細胞腎細胞癌、褐色細胞腫および傍神経節腫、中皮腫、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵管癌、結腸癌、膵臓癌、肝細胞癌腫、胃癌、胆管癌腫、カルチノイド、神経内分泌腫瘍、胃腸管間質腫瘍(GIST)、褐色細胞腫、神経膠腫、膵臓の神経外胚葉癌、膵臓の腺癌腫、結腸直腸癌、腎細胞癌腫、血管腫瘍、軟骨肉腫、食道の腺癌腫、乏突起神経膠腫、星状細胞腫、上衣腫、膵臓の神経内分泌癌腫、副腎腺腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、卵巣の顆粒細胞腫瘍、シュワン細胞腫、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)、類上皮肉腫、鼻腔神経芽細胞腫、髄芽腫、毛細血管腫、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、顎下腺の癌、または頭頸部の扁平上皮癌。
加えて或いはまた別に、本方法のいくつかの実施態様では、抗体は、追加の治療薬剤と別々に、逐次的に、または同時に対象動物に投与される。追加の治療薬剤の例には、以下の1つ以上が含まれる:アルキル化剤、白金剤、タキサン、ビンカ剤、抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、卵巣抑制剤、VEGF/VEGFR阻害剤、EGF/EGFR阻害剤、PARP阻害剤、細胞増殖抑制アルカロイド、細胞傷害性抗生物質、抗代謝剤、内分泌/ホルモン剤、ビスホスホネート療法剤。
【0010】
別の特徴では、本開示は対象動物の腫瘍をin vivoで検出する方法を提供し、前記方法は、(a)本技術の抗体の有効量を対象動物に投与する工程(ここで当該抗体はL1-CAMを発現する腫瘍に局在するように構成され、かつ放射性同位体で標識される)、および(b)抗体によって放射される、参照値よりも高い放射能レベルを検出することによって対象動物で腫瘍の存在を検出する工程を含む。いくつかの実施態様では、対象動物は癌と診断されるか、癌を有すると疑われる。抗体によって放射される放射能レベルは、陽電子放射断層撮影法または単光子放射コンピュータ断層撮影法を用いて検出することができる。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、放射性核種と複合物化させた本技術の抗体を含む免疫複合体の有効量を対象動物に投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、放射性核種は、アルファ粒子放射同位体、ベータ粒子放射同位体、オージェ-エミッター、または前記の任意の組合せである。ベータ粒子放射同位体の例には、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、および67Cuが含まれる。当該方法のいくつかの実施態様では、正常組織における非特異的FcR依存性結合は、(例えばFc領域におけるN297A変異(非グリコシル化をもたらす)により)排除されるかまたは軽減される。
L1-CAM関連癌の検出および/または治療キットもまた開示され、前記キットは、少なくとも1つの本技術の免疫グロブリン関係組成物(例えば本明細書に記載する任意の抗体または抗原結合フラグメント)、またはその機能性変種(例えば置換変種)を含む。ある種の実施態様では、免疫グロブリン関係組成物は、1つ以上の検出可能な標識と連結される。ある実施態様では、1つ以上の検出可能な標識は、放射能標識、蛍光標識、または色原体標識を含む。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、キットはさらにまた、本明細書に記載の抗L1-CAM免疫グロブリン関係組成物と特異的に結合する二次抗体を含む。いくつかの実施態様では、二次抗体は、放射能標識、蛍光標識、または色原体標識から成る群から選択される少なくとも1つの検出可能標識に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】L1-CAMとインテグリンおよび細胞シグナリングとの相互作用を示す(Gavertらの論文(Gavert et al., Expert opinion Biol Therapy 8:1749, 2008)を改変)。
【
図3】正常なヒト組織におけるL1-CAMの発現を示す(Weidleらの論文(Weidle et al., Anticancer Research 29: 4919-4932, 2009)を改変)。
【
図4】ヒトの腫瘍におけるL1-CAMの発現を示す(Rawnaq Tらの論文(Rawnaq T et al., J Surg Res 173:314-9, 2012)を改変)。
【
図5】L1-CAMを指向する種々のマウスおよびキメラ抗体を示す。
【
図6】ネズミ抗体E71およびそれらの相同なヒト配列の重鎖可変ドメイン(V
H)および軽鎖可変ドメイン(V
L)のアミノ酸配列を示す(配列番号:1-4)。マウスE71およびそれらの相同なヒト配列の重軽鎖のCDRは下線を付されている。
【
図7】マウス抗体E72およびそれらの相同なヒト配列のV
HおよびV
Lのアミノ酸配列を示す(配列番号:5-8)。マウスE72およびそれらの相同なヒト配列の重軽鎖のCDRは下線を付されている。E72のV
H CDR1、V
H CDR2、およびV
H CDR3アミノ酸配列は、それぞれGYWMH(配列番号:68)、EINPSNGRTNYNERFKS(配列番号:69)およびDYYGTSYNFDY(配列番号:70)であり、E72のV
L CDR1、V
L CDR2、およびV
L CDR3アミノ酸配列は、それぞれKANEDINNRLA(配列番号:71)、GATNLVT(配列番号:72)、およびQQYWSTPFT(配列番号:73)である。
【
図8】E71のヒト化重鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:9-10)。
【
図9】E71のヒト化重鎖のcDNA酸配列を示す(配列番号:11-12)。
【
図10】E71のヒト化軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:13-14)。
【
図11】E71のヒト化軽鎖のcDNA酸配列を示す(配列番号:15-16)。
【
図12】E72のヒト化重鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:17-18)。
【
図13】E72のヒト化重鎖のcDNA酸配列を示す(配列番号:19-20)。
【
図14】E72のヒト化軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:21-22)。
【
図15】E72のヒト化軽鎖のcDNA酸配列を示す(配列番号:23-24)。
【
図16】キメラchE71の重軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:25-26)。
【
図17】キメラchE71の重軽鎖のcDNA酸配列を示す(配列番号:27-28)。
【
図18】キメラchE72の重軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:29-30)。
【
図19】キメラchE72の重軽鎖のcDNA酸配列を示す(配列番号:31-32)。
【
図20】huE71の重鎖のアミノ酸およびcDNA配列を示す(配列番号:33-34)。
【
図21】huE71の軽鎖のアミノ酸およびcDNA配列を示す(配列番号:35-36)。
【
図22】huE72の重鎖のアミノ酸およびcDNA配列を示す(配列番号:37-38)。
【
図23】huE72の軽鎖のアミノ酸およびcDNA配列を示す(配列番号:39-40)。
【
図24】キメラIgG4、chE71-IgG4の重軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:41-42)。
【
図25】キメラIgG4、chE71-IgG4の重軽鎖のcDNA配列を示す(配列番号:43-44)。
【
図26】ヒト化IgG4、huE71-IgG4の重軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:45-46)。
【
図27】ヒト化IgG4、huE71-IgG4の重軽鎖のcDNA配列を示す(配列番号:47-48)。
【
図28】ヒト化E71またはE72とBsAbとの結合カイネティクスを示す。
【
図29】SPR(Biacore T100)を用いてL1-CAM-Fcでアッセイした、huE71のヒト化IgG変種の結合カイネティクスを示す。
【
図30】SPR(Biacore T100)を用いてL1-CAM-Fcでアッセイした、huE72のヒト化IgG変種の結合カイネティクスを示す。
【
図31】SPR(Biacore T100)を用いてL1-CAM-Hisでアッセイした、huE72のヒト化IgG変種の結合カイネティクスを示す。
【
図32】コントロールとしてマウスE71およびMOPC21を用いた、フローサイトメトリーによる中皮腫細胞株の細胞表面染色を示す。
【
図33】コントロールとしてヒト化huE71-IgGnおよびリツキサンを用いた、フローサイトメトリーによる白血病、乳癌およびユーイング肉腫細胞株の細胞表面染色を示す。
【
図34】コントロールとしてヒト化huE71-IgGnおよびリツキサンを用いた、フローサイトメトリーによるメラノーマ、神経芽細胞腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、小細胞肺癌(SCLC)および頭頸部癌の細胞表面染色を示す。
【
図35】huE71およびhuE72の両方のためのT細胞嵌合二重特異性抗体(BsAb)の構築を示す。
【
図36】T細胞嵌合二重特異性抗体(BsAb)、huE71-BsAbおよびhuE72-BsAbのアミノ酸配列(V
HおよびV
L)を示す(配列番号:49-52)。
【
図37】SPR(Biacore T100)を用いたL1-CAM-Fcでの、ヒト化huE71またはhuE72 IgGとそれらのBsAbとの結合カイネティクスを示す。
【
図38A】ヒト化E71-BsAbおよびヒト化E72-BsAbとL1-CAM(+)腫瘍細胞との結合を示す。
【
図38B】ヒト化E71-BsAbおよびヒト化E72-BsAbとT細胞との結合を示す。
【
図39A】L1-CAM(+)腫瘍細胞株の存在下また非存在下における、本技術の抗体のIL-6サイトカイン放出アッセイの結果を示す。
【
図39B】L1-CAM(+)腫瘍細胞株の存在下また非存在下における、本技術の抗体のIL-10サイトカイン放出アッセイの結果を示す。
【
図39C】L1-CAM(+)腫瘍細胞株の存在下また非存在下における、本技術の抗体のIFN-γサイトカイン放出アッセイの結果を示す。
【
図39D】L1-CAM(+)腫瘍細胞株の存在下また非存在下における、本技術の抗体のIL-2サイトカイン放出アッセイの結果を示す。
【
図39E】L1-CAM(+)腫瘍細胞株の存在下また非存在下における、本技術の抗体のTNF-αサイトカイン放出アッセイの結果を示す。
【
図40】
51クロム放出アッセイの結果を示す。ヒト化E71-BsAbまたはヒト化E72-BsAbをT細胞およびIMR-32ルシフェラーゼ細胞株(E:T比=10:1)とともに4時間インキュベートした。
【
図41】ヒト化E71-BsAbまたはヒト化E72-BsAbの細胞傷害性(EC50)および腫瘍細胞株のL1-CAM発現(平均蛍光強度またはMFI)を示す。
【
図42A】ヒト化E71-BsAbの細胞傷害性(EC50)は、腫瘍細胞株のL1-CAM発現(MFI)と反比例したことを示す。
【
図42B】ヒト化E72-BsAbの細胞傷害性(EC50)は、腫瘍細胞株のL1-CAM発現(MFI)と反比例したことを示す。
【
図43】ヒト化マウスモデルで神経芽細胞腫に対するヒト化E71-BsAbおよびヒト化E72-BsAbの効果を示す。L1-CAM(+)神経芽細胞腫の患者に由来する異種移植片(PDX)をDKOマウスの皮下に移植した。huE71-BsAbまたはhuE72-BsAb処置を15日目(このとき腫瘍は測定可能であった)に開始し、1週間に2回の注射で5週間の投与スケジュールを用いた。PBMC(7.5x10
6)の静脈内投与を16日目に開始し、続いて毎週の注射を3週間実施した。腫瘍サイズを毎週測定した。huE72-BsAbおよびPBMCで処置したマウスはコントロールと同等の腫瘍増殖を示した。huE71-BsAbおよびPBMCは腫瘍増殖を有意に抑制した。
【
図44】ヒト化マウスモデルで神経芽細胞腫に対するhuE71-BsAbおよびhuE72-BsAbの効果を示す。L1-CAM(+)神経芽細胞腫細胞株、IMR32をヒトPBMCと混合し、DKOマウスの皮下に接種した。huE71-BsAbまたはhuE72-BsAb処置を5日目(このとき腫瘍は測定可能であった)に開始し、1週間に2回の注射で5週間の投与スケジュールを用いた。腫瘍サイズを毎週測定した。huE72-BsAbまたはコントロール(非グリコシル化huE71-IgG1+非グリコシル化huOKT3)で処置したマウスは同等の腫瘍増殖を示した。huE71-BsAbまたはhuE71-IgGnは腫瘍増殖を有意に抑制した。
【
図45】
89Zr-HuE71-IgGn(MAGE)の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、高い腫瘍およびリンパ節の活性集中を明らかにした。右肩に異種移植された皮下SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuE71-1 MAGE(尾静脈から注射した150μLのPBS中に192‐197μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。選択的な腫瘍取込みは24時間が初期で、96時間まで持続的に改善した。
【
図46】
89Zr-HuE72-IgGn(MAGE)の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、高い腫瘍およびリンパ節の活性集中を明らかにした。右肩に異種移植された皮下SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuE72-IgGn(MAGE)(尾静脈から注射した150μLのPBS中に~200μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。選択的な腫瘍取込みは24時間では最適未満であり、時間の経過にしたがって改善した。
【
図47】本技術のヒト化抗L1-CAM抗体の特徴を要約した表を示す。
【
図48A-48E】本技術の
89Zr-放射性標識L1-CAM抗体の免疫反応性を示す。放射性免疫複合体を、抗原発現細胞(SKOV-3)との結合および免疫反応性比率の決定について、Lindmoアッセイにより機能的に特徴付けた(Ben QW et al., Ann Surg Oncol 17:2213-21, 2010)。核放射性免疫複合体のアリコット(1μCi/mLのストック溶液の50μL)をチューブ(500μLのPBS、1%BSA中に5.0x10
5-5.0x10
6細胞/mLを含む)に三複製で添加した(最終体積550μL、pH7.4)。細胞結合活性をカウントし、データは二重逆数プロットでグラフにした。免疫反応性比率は三複製サンプル±SEMの平均パーセンテージとして提示される。
【
図49】
89Zr-HuE71-1 WT(野生型)抗体の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、高い腫瘍、肝臓およびリンパ節の活性集中を明らかにした。右肩に異種移植されたL1-CAM陽性皮下SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuE71-1 WT(尾静脈から注射した150μLのPBS中に194-201μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。
【
図50】
89Zr-HuE71-1アグリコ抗体の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、高い腫瘍および非常に低い背景の活性集中を明らかにした。右肩に異種移植されたL1-CAM SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuE71-1アグリコ(尾静脈から注射した150μLのPBS中に207-214μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。
【
図51】
89Zr-HuE71-4 WT抗体の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、高い腫瘍および腎臓の活性集中を明らかにした。右肩に異種移植されたL1-CAM陽性皮下SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuE71-4 WT(尾静脈から注射した150μLのPBS中に198-204μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。
【
図52】
89Zr-HuE71-4変異型(Mutant)抗体の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、高い腫瘍および背景組織の活性を明らかにし、一方、腎臓の活性は最小限のように思われた。右肩に異種移植されたL1-CAM陽性皮下SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuE71-4 変異型(尾静脈から注射した150μLのPBS中に206-212μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。
【
図53】
89Zr-HuCtrl-4 WT(野生型)抗体の連続PET画像診断を示す。皮下卵巣癌腫瘍モデルの小動物PET画像診断は、腫瘍では低いが腎臓では高い活性を明らかにした。右肩に異種移植されたL1-CAM陽性皮下SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおける
89Zr-HuCtrl-4 WT(尾静脈から注射した150μLのPBS中に200-211μCi)の代表的な最大値投影(MIP)PET画像である。
【
図54】トレーサーの注射後96時間のIgG1抗体のex vivo生体分布を示す。SKOV-3腫瘍を有するマウスの放射性免疫複合体の急性生体分布である。尾静脈注射によりIgG1放射性免疫複合体(17-24μCi、3-6μg)を投与した後の無胸腺ヌードマウス(n=4/グループ)の生体分布データである。封鎖グループには50倍過剰を同時注射した。%ID/g値を
図55に記載した。星印はP<0.05を示す。
【
図55】注射後96時間のIgG4抗体のex vivo生体分布値を示す。
【
図56】トレーサーの注射後96時間のIgG4抗体のex vivo生体分布を示す。SKOV-3腫瘍を有するマウスの放射性免疫複合体の急性生体分布である。尾静脈注射によりIgG4放射性免疫複合体(21-26μCi、3-6μg)を投与した後の無胸腺ヌードマウス(n=4/グループ)の生体分布データである。封鎖グループには50倍過剰を同時注射した。%ID/g値を
図57に記載した。星印はP<0.05を示す。
【
図57】注射後96時間のIgG4抗体のex vivo生体分布値を示す。
【
図58】腫瘍およびリンパ節組織のex vivo組織学分析を示す。規定の放射性免疫複合体を注射したマウスの腫瘍およびリンパ節組織を収集し、パラフィン包埋して日常的なH&E染色および分析に付した。
【
図59(A)-59(C)】
177Lu-HuE71-1アグリコ画像診断およびex vivo生体分布の結果を示す。
図59(A):SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスの
177Lu-HuE71-1アグリコ(150μLのPBS中に858μCi)注射後168時間のSPECT-CT画像である。
図59(B):SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスの
177Lu-HuE71-1アグリコ(150μLのPBS中に858μCi)注射後168時間のチェレンコフ画像である。
図59(C):SKOV-3腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスの
177Lu-HuE71-1アグリコ(150μLのPBS中に18-26μCi、n=4)注射後168時間のex vivo生体分布である。
【
図60】
177Lu-HuE71-1アグリコ放射性免疫療法に付した動物の平均腫瘍体積を示す。PRIT試験の最初の80日間の各マウスコホートの平均腫瘍体積の図表が標準偏差を示すエラーバーとともに示される。黒い矢印は規定の処置の最初の注射を示し、灰色の矢印は、分割投与グループの
177Lu-HuE71-1アグリコの第二の投与を示す。腫瘍体積を携帯用TM900スキャナー (Peira, Brussels, BE)を用いて入手した。最初の腫瘍測定後、マウスを複数のグループに任意抽出し(n=8-9/グループ)、全てのコホートがほぼ等しい平均腫瘍体積で開始するように担保した。
【
図61】huE71-IgG1nがLAN-1細胞株でADCCを媒介することを示す。
【
図62】huE71-IgG1nがNB1691細胞株でADCCを媒介することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本技術が実質的に理解されるように、様々に詳細なレベルで、本方法のある種の特徴、様式、実施態様、変型および特色が下記に記載されることは理解されよう。
本開示は概して免疫グロブリン関係組成物(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント)を提供し、前記は、L1-CAMポリペプチドと特異的に結合し、その生物学的活性を中和することができる。本技術の免疫グロブリン関係組成物は、L1-CAM関連癌をその必要がある対象動物で検出または治療する方法で有用である。したがって、本方法の多様な特徴は、抗L1-CAM抗体の調製、特徴付けおよび操作と関係を有する。本技術の免疫グロブリン関係組成物は、単独でまたは癌治療のための追加の治療薬剤との併用で有用である。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン関係組成物はヒト化抗体、キメラ抗体または二重特異性抗体である。
本方法の実施では、分子生物学、タンパク質化学、細胞生物学、免疫学、微生物学および組換えDNAにおける多くの通常的な技術が用いられる。例えば以下を参照されたい:Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition;シリーズ、Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology);シリーズ、Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach;Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition;Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);およびHerzenberg et al. eds (1996) Weir’s Handbook of Experimental Immunology。ポリペプチド遺伝子発現生成物レベル(すなわち遺伝子翻訳レベル)を検出および測定する方法は当業界では周知であり、前記にはポリペプチド検出方法(例えば抗体検出および定量の技術)の使用が含まれる(例えば以下を参照されたい:Strachan & Read, Human Molecular Genetics, Second Edition. (John Wiley and Sons, Inc., NY, 1999))。
【0013】
定義
特段の規定がなければ、本明細書で用いられる技術用語および学術用語はいずれも、本技術が属する分野の業者の誰もが一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかにそうではないことを示していないかぎり複数の対応語を含む。例えば、“a cell(細胞)”と言えば2つ以上の細胞の組合せなどを含む。概して、本明細書で用いられる用語体系、並びに下記に記載する細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学および核酸化学、およびハイブリダイゼーションにおける研究室手順は、周知であり当業界で通常的に用いられるものである。
本明細書で用いられるように、数に関して“約”という用語は、そうでないことが記載されていないかまたは文脈からそうでないことが明白でないかぎり、どちらの方向(多い方または少ない方)でも当該数の1%、5%または10%の範囲内に含まれる数を含むと考えられる(ただしそのような数があり得る値の0%未満または100%を超える場合を除く)。
【0014】
本明細書で用いられるように、対象動物への薬剤または薬物の“投与”には、化合物の意図される機能の発揮のために、前記を対象動物に導入またはデリバリーする任意のルートが含まれる。投与は任意の適切なルートによって実施でき、前記ルートには、経口、鼻内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下)、直腸、髄腔内、腫瘍内、または外用が含まれるが、ただし前記に限定されない。投与は自己投与または他者による投与を含む。
“アジュバント”は、免疫系の刺激を引起す1つ以上の物質を指す。本文脈では、アジュバントは、1つ以上のワクチン抗原または抗体への応答を強化するために用いられる。アジュバントは、ワクチンの投与前、ワクチンと一緒に、または投与後に対象動物に投与できる。アジュバントとして用いられる化学的化合物の例には、アルミニウム化合物、油、ブロックポリマー、免疫刺激複合体、ビタミンおよび鉱物(例えばビタミンE、ビタミンA、セレニウムおよびビタミンB12)、Quil A(サポニン)、細菌および真菌細胞壁成分(例えばリポ多糖類、脂質タンパク質および糖タンパク質)、ホルモン、サイトカイン、および行動刺激因子が含まれる。
本明細書で用いられるように、“抗体”という用語は包括的に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を指す。例示すれば、前記にはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、前記の組合せ、並びに任意の脊椎動物、例えば哺乳動物(例えばヒト、ヤギ、ウサギおよびマウス)とともに非哺乳動物種(例えばサメの免疫グロブリン)で免疫応答時に生成される同様な分子が含まれるが、ただしそれらに限定されない。本明細書で用いられるように、“抗体”(無傷の免疫グロブリンを含む)および“抗原結合フラグメント”は、対象の分子(または高度に類似する対象分子のグループ)と特異的に結合し、他の分子との結合を実質的に排除する。例えば、抗体および抗体フラグメントは、生物学的サンプル中の他の分子に対する結合定数よりも高い、少なくとも103 M-1、少なくとも104 M-1または少なくとも105 M-1の結合定数を対象分子に対して有する。“抗体”という用語はまた、遺伝的に操作された形態、例えばキメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)、ヘテロ複合体抗体(例えば二重特異性抗体)を含む。以下の文献もまた参照されたい:Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995(Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.);Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997。
【0015】
より具体的には、抗体は、特異的に抗原のエピトープを認識し結合する、少なくとも1つの軽鎖免疫グロブリン可変領域または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを指す。抗体は重軽鎖で構成され、その各々は可変領域を含み、前記は可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域と呼ばれる。VH領域およびVL領域はともに、抗体によって認識される抗原と結合するために応答することができる。典型的には、免疫グロブリンはジスルフィド結合によって相互に接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。2つのタイプの軽鎖、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)が存在する。抗体分子の機能的な活性を決定する、5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。各重鎖および軽鎖は定常領域および可変領域を含む(領域はまたドメインとしても知られている)。組み合わせられて、重軽鎖可変領域は特異的に抗原と結合する。軽重鎖可変領域は、3つの超可変領域(“相補性決定領域”または“CDR”とも呼ばれる)によって中断される“フレームワーク”領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は明確にされている(以下を参照されたい:Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991(前記は参照によって本明細書に含まれる))。Kabatデータベースは今ではオンラインで維持されている。種々の軽重鎖のフレームワーク領域の配列は種の中で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域(すなわち構成要素の軽鎖および重鎖と一体化されたフレームワーク領域)は大部分がβシート構造を取り入れ、CDRはβシート構造を接続するループを形成し、さらにいくつかの事例ではCDRはβシート構造の部分を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合的相互作用によってCDRを正しい向きで配置する足場を形成するために機能する。
【0016】
CDRは主として抗原のエピトープと結合するために必要である。各鎖のCDRは、典型的にはCDR1、CDR2およびCDR3と称され、N-末端から始まって連続的に番号が振られ、典型的には個々の鎖が位置する鎖によってもまた識別される。したがって、VH CDR3は、前記が見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方、VL CDR1は、前記が見出される抗体の軽鎖可変ドメインに由来するCDR1である。L1-CAMタンパク質と結合する抗体は、特異的なVH領域およびVL領域配列、したがって特異的なCDR配列を有するであろう。異なる特異性(すなわち異なる抗原のための異なる合体部位)を有する抗体は異なるCDRを有する。抗体毎に変動するのはCDRであるが、CDR内のほんの限られた数のアミノ酸の位置が抗原結合に直接必要とされる。CDR内のこれらの位置は特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。本明細書で用いられる“免疫グロブリン関係組成物”は、抗体とともに抗体フラグメントを指し、前記抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、マルチ特異性抗体、二重特異性抗体などが含まれる。抗体またはその抗原結合フラグメントは抗原と特異的に結合する。
【0017】
本明細書で用いられるように、“抗体関係ポリペプチド”という用語は抗原結合抗体フラグメントを意味し、前記には単鎖抗体が含まれる。単鎖抗体は、可変領域のみを含むか、または下記のポリペプチド成分の全てまたは部分と組み合わされている:抗体分子のヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。可変領域並びにヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの任意の組合せもまた本技術に含まれる。本方法で有用な抗体関係分子は、例えばFab、Fab′およびF(ab′)2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、並びにVLまたはVHドメインのどちらかを含むフラグメントであるが、ただし前記に限定されない。例には以下が含まれる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る一価フラグメント;(ii)F(ab′)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の単アームのVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(v)dAbフラグメント(Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989)、前記はVHドメインから成る;および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)。したがって、“抗体フラグメント”または“抗原結合フラグメント”は、完全長抗体の部分、一般的にはその抗原結合または可変領域を含むことができる。抗体フラグメントまたは抗原結合フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント;ジアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成されたマルチ特異性抗体が含まれる。
【0018】
本明細書で用いられる、“二重特異性抗体”または“BsAb”は、別個の構造を有する2つの標的、例えば2つの異なる標的抗原、同じ標的抗原の2つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび標的抗原もしくは標的抗原のエピトープに同時に結合できる抗体を指す。種々の異なる二重特異性抗体構造は当業界で公知である。いくつかの実施態様では、二重特異性抗体の各抗原結合部分はVHおよび/またはVL領域を含み、そのような実施態様のいくつかでは、VHおよび/またはVL領域は、個々のモノクローナル抗体で見出されるものである。いくつかの実施態様では、二重特異性抗体は2つの抗原結合部分を含み、各々は異なるモノクローナル抗体に由来するVHおよび/またはVL領域を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗体は2つの抗原結合部分を含み、ここで、当該2つの抗原結合部分の1つは、第一のモノクローナル抗体由来のCDRを含むVHおよび/またはVL領域を有する免疫グロブリン分子を含み、他方の抗原結合部分は、第二のモノクローナル抗体由来のCDRを含むVHおよび/またはVL領域を有する抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab')、F(ab')2、Fd、Fv、dAB、scFv)を含む。
本明細書で用いられるように、“複合体化される”という用語は、当業者に公知の任意の方法による2つの分子の連合を指す。適切なタイプの連合は化学的結合および物理的結合を含む。化学的結合には、例えば共有結合および配位結合が含まれる。物理的結合には、例えば水素結合、二極性相互作用、ファンデルワールス力、静電気的相互作用、疎水性相互作用、および芳香環スタッキング相互作用が含まれる。
【0019】
本明細書で用いられるように、“ジアボディ”という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、当該フラグメントは、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を同じポリペプチド鎖(VHVL)に含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成するには短すぎるリンカーを用いることによって、ドメインは別の鎖の相補性ドメインと対を形成することを強要され、2つの抗原結合部位を作出する。ジアボディはより完全に下記文献に記載される:EP 404,097;WO 93/11161;および30 Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448, 1993。
本明細書で用いられるように、“単鎖抗体”または“単鎖Fv(scFv)”は、Fvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)の抗体融合分子を指す。単鎖抗体分子は、多数の個々の分子を含むポリマー、例えばダイマー、トリマーまたは他のポリマーを含むことができる。さらにまた、Fvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は別々の遺伝子によってコードされるが、それらは組換え方法を用いるか、合成リンカーによって結合させることができる。合成リンカーは、それら2つのドメインを単一タンパク質鎖として生成することを可能にし、単一タンパク質鎖ではVLおよびVH領域対は一価分子(単鎖Fv(scFv)として知られている)を形成する(Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad Sci. USA 85:5879-5883)。そのような単鎖抗体は、組換え技術または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって調製できる。
上記に記載のいずれの抗体フラグメントも、当業者に公知の通常的な技術を用いて入手でき、フラグメントは、無傷の抗体と同じ態様で、結合特異性および中和活性についてスクリーニングされる。
【0020】
本明細書で用いられるように、“抗原”は、抗体(またはその抗原結合フラグメント)が選択的に結合する分子を指す。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するかもしくは合成の化合物であり得る。いくつかの実施態様では、標的抗原はポリペプチド(例えばL1-CAMポリペプチド)であり得る。抗原はまた動物に投与されて、当該動物で免疫応答を発生させることができる。
“抗原結合フラグメント”という用語は、抗原に結合するために必要なポリペプチドの部分を保有する、全免疫グロブリン構造物のフラグメントを指す。本技術で有用な抗原結合フラグメントの例にはscFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab′およびF(ab′)2が含まれるが、ただし前記に限定されない。
“結合親和性”とは、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原または抗原性ペプチド)との間の合計された非共有結合性相互作用力を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般的に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は当業界で公知の標準的な方法(本明細書に記載する方法を含む)によって測定できる。低親和性複合体は、概して抗原から容易に解離する傾向がある抗体を含み、一方、高親和性複合体は、概してより長い期間抗原との結合を維持する傾向がある抗体を含む。
【0021】
本明細書で用いられるように、“生物学的サンプル”という用語は生細胞に由来するサンプル材料を意味する。生物学的サンプルには、組織、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、および対象動物から単離された生物学的な液体(例えば腹水または脳脊髄液(CSF))とともに対象動物内に存在する組織、細胞および液体が含まれ得る。本技術の生物学的サンプルには、乳房組織、腎臓組織、子宮頸、子宮内膜、頭頸部、胆嚢、耳下腺組織、前立腺、脳、脳下垂体、腎臓組織、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺組織、心筋、肺臓組織、膀胱、脂肪組織、リンパ節組織、子宮、卵巣組織、副腎組織、精巣組織、扁桃腺、胸腺、血液、毛、頬、皮膚、血清、血漿、CSF、精液、前立腺液、精漿(seminal fluid)、尿、糞便、汗、唾液、粘液、骨髄、リンパ、および涙液から採取されたサンプルが含まれるが、ただし前記に限定されない。生物学的サンプルはまた、内部器官の生検標本または癌から入手できる。生物学的サンプルは、診断または研究のために対象動物から入手でき、または病気ではない個体からコントロールとしてまたは基礎研究のために入手できる。サンプルは、例えば静脈穿刺および外科的生検を含む標準的方法によって入手できる。ある種の実施態様では、生物学的サンプルは、針生検によって入手される乳房、肺臓、結腸、または前立腺組織である。
【0022】
本明細書で用いられるように、“CDR移植抗体”という用語は、“アクセプター”抗体の少なくとも1つのCDRが、所望の抗原特異性を保有する“ドナー”抗体のCDR“移植”によって取替えられる抗体を意味する。
本明細書で用いられるように、“キメラ抗体”という用語は、1つの種のモノクローナル抗体のFc定常領域(例えばマウスFc定常領域)が、組換えDNA技術を用いて別の種の抗体のFc定常領域(例えばヒトFc定常領域)で取替えられる抗体を意味する。全般的には以下を参照されたい:Robinson et al., PCT/US86/02269;Akira et al., 欧州特許公開184,187;Taniguchi, 欧州特許公開171,496;Morrison et al., 欧州特許公開173,494;Neuberger et al., WO 86/01533;Cabilly et al. 米国特許4,816,567号;Cabilly et al., 欧州特許公開0125,023;Better et al., Science 240: 1041-1043, 1988;Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443, 1987;Liu et al., J. Immunol 139: 3521-3526, 1987;Sun et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 214-218, 1987;Nishimura et al., Cancer Res 47: 999-1005, 1987;Wood et al., Nature 314: 446-449, 1885;およびShaw et al., J. Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559, 1988。
本明細書で用いられるように、“コンセンサスFR”という用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク(FR)抗体領域を意味する。抗体のFR領域は抗原と接触しない。
【0023】
本明細書で用いられるように、“コントロール”は、比較の目的で実験に用いられる代替サンプルである。コントロールは“陽性”または“陰性”であり得る。例えば、実験の目的が特定の疾患タイプの治療のための治療薬剤の有効性の相関性を決定する場合、典型的には、陽性コントロール(所望の治療効果示すことが判明している化合物または組成物)および陰性コントロール(治療を受けないまたはプラセボを投与される対象動物またはサンプル)が用いられる。
本明細書で用いられるように、“有効量”という用語は、所望の治療効果および/または予防効果を達成するために十分な量を指す。前記は、例えば、本明細書に記載する疾患もしくは症状、または本明細書に記載する疾患もしくは症状に関連する1つ以上の徴候もしくは症候の予防もしくは軽減をもたらす量である。治療的または予防的適用の関係では、対象動物に投与される組成物の量は、組成物、疾患の範囲、タイプおよび重篤度、並びに個体の特徴(例えば一般的な健康状態、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性)に応じて変動するであろう。当業者は、これらの要件および他の要件に応じて適切な投薬量を決定できるであろう。組成物はまた1つ以上の追加の治療化合物と組合わせて投与され得る。本明細書に記載する方法では、治療組成物は、本明細書に記載する疾患または症状の1つ以上の徴候または症候を有する対象動物に投与できる。本明細書で用いられるように、組成物の“治療的に有効な量”は、疾患または症状の生理学的影響を緩和または除去する組成物レベルを指す。治療的に有効な量は1回以上の投与でもたらされ得る。
【0024】
本明細書で用いられるように、“エフェクター細胞”という用語は、免疫応答の認識および活性化相とは対照的に免疫応答のエフェクター相で必要とされる免疫細胞を意味する。例示的免疫細胞には、骨髄系またはリンパ系起原の細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞、および傷害性T細胞を含むT細胞(CTL))、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、肥満細胞、および好塩基球が含まれる。エフェクター細胞は特異的なFc受容体を発現し、特異的な免疫機能を遂行する。エフェクター細胞は、抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を誘発することができ、例えば好中球はADCCを誘発することができる。例えば、FcαRを発現する単球、マクロファージ、好中球、好酸球、およびリンパ球は、標的細胞の特異的な殺滅、および他の免疫系成分への抗原提示、または抗原を提示する細胞との結合に必要である。
【0025】
本明細書で用いられるように、“エピトープ”という用語は、抗体と特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、分子の化学的に活性な表面グループ(例えばアミノ酸または糖側鎖)から成り、通常は三次元的な構造性特徴を特異的な荷電性特徴とともに有する。立体構造性および非立体構造性エピトープは、変性溶媒の存在下で前者との結合は失われるが後者との結合は失われないという点で区別される。いくつかの実施態様では、L1-CAMタンパク質の“エピトープ”は、本技術の抗L1-CAM抗体が特異的に結合するタンパク質領域である。いくつかの実施態様では、エピトープは立体構造性エピトープである。エピトープと結合する抗L1-CAMをスクリーニングするために、日常的な交差封鎖アッセイ(例えば下記文献に記載されているもの)を実施することができる:Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane, 1988。前記アッセイを用いて、抗L1-CAM抗体が、本技術の抗L1-CAM抗体と同じ部位またはエピトープと結合するか否かを決定できる。また別には或いは付け加えて、エピトープマッピングを当業界で公知の方法によって実施できる。例えば、抗体配列を例えばアラニンスキャンによって変異させ、接触残基を識別することができる。別の方法では、L1-CAMタンパク質の異なる領域に対応するペプチドを、被検抗体との競合アッセイ、または被検抗体およびすでに特徴付けられたもしくは公知のエピトープを有する抗体との競合アッセイで用いることができる。
本明細書で用いられるように、“発現”は以下の1つ以上を含む:遺伝子の前駆体mRNAへの転写;前駆体mRNAのスプライシングおよび他のプロセッシングによる成熟mRNAの生成;mRNAの安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン利用およびtRNA利用可能性を含む);および翻訳生成物のグリコシル化および/または他の改変(適切な発現および機能が要求される場合)。
本明細書で用いられるように、“遺伝子”という用語は、RNA生成物の規制された生合成のための全情報を含むDNAのセグメントを意味し、プロモーター、エクソン、イントロン、および発現を制御する他の非翻訳領域を含む。
【0026】
“相同性”、または“同一性”、または“類似性”は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間における配列類似性を指す。相同性は、各配列における位置を比較することによって決定でき、前記配列は比較の目的のためにアラインメントすることができる。比較される配列の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占められるとき、当該分子は当該位置で相同である。配列間の相同性の程度は、当該配列によって共有される、適合するかまたは相同である位置の数の関数である。ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(或いはポリペプチドまたはポリペプチド領域)が、別の配列に対して一定のパーセンテージ(例えば少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の“配列同一性”を有するということは、アラインメントされたとき、当該パーセンテージの塩基(或いはアミノ酸)が、2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。このアラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当業界で公知のソフトウェアプログラムを用いて決定できる。いくつかの実施態様では、既定値パラメーターがアラインメントに用いられる。1つのアラインメントプログラムはBLASTであり、既定値パラメーターを用いる。特に、プログラムはBLASTおよびBLASTNであり、以下の既定値パラメーターを用いる:遺伝暗号=標準;フィルター=無し;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記載=50配列;分別基準=HIGH SCORE;データベース=ノンリダンダント、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は国立生物工学情報センターで見出すことができる。生物学的に同等なポリヌクレオチドは、指定のパーセント相同性を有しかつ同じまたは類似の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチドである。2つの配列は、それらが互いに40%未満または25%未満の同一性を共有する場合には“無関係”または“非相同性”とみなされる。
【0027】
本明細書で用いられるように、非ヒト(例えばマウス)抗体の“ヒト化”型という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むキメラ抗体である。大半の部分について、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリンであり、前記では、レシピエントの超可変領域残基は、非ヒトの種(ドナー抗体)(例えばマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長動物)の超可変領域残基(所望の特異性、親和性および性能を有する)によって取替えられる。いくつかの実施態様では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は対応する非ヒト残基によって取替えられる。さらにまた、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体では見出されない残基を含むことができる。これらの改変は、抗体の性能(例えば結合親和性)をさらに精錬するために実施される。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(例えばFab、Fab′、F(ab′)2、またはFv)の実質的に全てを含むであろう。前記では、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサスFR配列のそれであるが、ただしFR領域は、結合親和性を改善する1つ以上のアミノ酸置換を含むことができる。FRにおけるこれらアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖では6つを超えず、L鎖では3つを超えない。ヒト化抗体はまた、場合によって免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも部分を含むことができる。更なる詳細については、以下を参照されたい:Jones et al., Nature 321:522-525, 1986;Reichmann et al., Nature 332:323-329, 1988;およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596, 1992。例えば以下を参照されたい:Ahmed & Cheung, FEBS Letters 588(2):288-297, 2014。
【0028】
本明細書で用いられるように、“超可変領域”という用語は、抗原結合に必要な抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的には、“相補性決定領域”または“CDR”に由来するアミノ酸残基(例えば、VLでは残基約24‐34(L1)、50‐56(L2)および89‐97(L3)辺り、並びにVHでは残基約31‐35B(H1)、50-65(H2)および95-102(H3)辺りである(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD., 1991))、および/または“超可変ループ”由来の残基(例えば、VLでは残基約26‐32(L1)、50-52(L2)および91-96(L3)、並びにVHでは残基約26-32(H1)、52A-55(H2)および96-101(H3)(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917, 1987))を含む。
本明細書で用いられるように、“同一である”またはパーセント“同一性”という用語は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列という文脈で用いられるときは、2つ以上の配列または部分配列が同じであるか、或いは同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定のパーセンテージを有する(すなわち、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または前記より高い同一性を指定の領域(例えば本明細書に記載する抗体をコードする核酸配列または本明細書に記載する抗体のアミノ酸配列)にわたって有する)2つ以上の配列または部分配列を指し、このとき、2つ以上の配列は、BLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用い下記に記載の既定値パラメーターで測定されるか、または手動アラインメントおよび目視精査(例えばNCBIウェブサイト)によって、比較ウインドウまたは指定領域における最大一致のために比較およびアラインメントを実施される。そのような配列は、したがって“実質的に同一”と呼ばれる。この用語はまた、被検配列の相補配列を指し、または被検配列の相補配列に適用できる。この用語はまた、欠失および/または付加を有する配列とともに、置換を有する配列を含む。いくつかの実施態様では、同一性は、長さが少なくとも25アミノ酸またはヌクレオチド、または長さが50-100アミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0029】
本明細書で用いられるように、“無傷の抗体”または“無傷の免疫グロブリン”は、ジスルフィド結合によって相互接続される、少なくとも2つの重(H)鎖ポリペプチドおよび2つの軽(L)鎖ポリペプチドを有する抗体を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域はさらに超可変性の領域に細分割され得る。前記は相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、より保存された(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)領域内に散在する。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRを含み、前記はアミノ末端からカルボキシ末端に向けて以下の順序で並ぶ:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主の組織または因子(免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む)との結合を媒介することができる。
本明細書で用いられるように、“個体”、“患者”または“対象動物”は、個々の器官、脊椎動物、哺乳動物、または人間であり得る。いくつかの実施態様では、個体、患者または対象動物は人間である。
【0030】
本明細書で用いられる“モノクローナル抗体”という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指す。すなわち、個々の抗体は、微量で存在し得る天然に存在する可能な変異を除いて同一である集団を含む。例えば、モノクローナル抗体は、任意の真核細胞、原核細胞またはファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体であり、それが生成される方法を含まない。モノクローナル抗体組成物は、個々のエピトープに対し単一結合特異性および親和性を提示する。モノクローナル抗体は高度に特異性であり、ただ1つの抗原部位に向かう。さらにまた、典型的には種々の決定基(エピトープ)に向かう種々の抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上のただ1つの決定基に向かう。修飾語句の“モノクローナル”は、実質的には同種の抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、いずれか特定の方法によって抗体が生成されることが要求されると解されてはならない。モノクローナル抗体は、当業界で公知の極めて多様な技術(例えばハイブリドーマ、組換え体およびファージディスプレー技術を含むが、ただし前記に限定されない)を用いて調製することができる。例えば、本方法で用いられるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら(Kohler et al., Nature 256:495, 1975)によって記載されたハイブリドーマ方法によって作製するか、または組換えDNAの方法(例えば米国特許4,816,567号を参照)によって作製することができる。“モノクローナル抗体”はまた、ファージ抗体ライブラリーから単離することができ、前記では、例えば下記文献に記載の技術が用いられる:Clackson et al., Nature 352:624-628, 1991;およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597, 1991。
【0031】
本明細書で用いられるように、“医薬的に許容できる担体”という用語は、任意のかつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌化合物、等張および吸収遅延化合物など(前記は医薬投与に適合する)を含むことが意図される。医薬的に許容できる担体およびそれらの処方は当業者には公知であり、例えば以下に記載される:Remington's Pharmaceutical Sciences(20th edition, ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)。
本明細書で用いられるように、“ポリクローナル抗体”という用語は、少なくとも2つの異なる抗体産生細胞株に由来する抗体調製物を意味する。この用語の使用は、異なるエピトープまたは抗原領域と特異的に結合する抗体を含む、少なくとも2つの抗体の調製物を含む。
【0032】
本明細書で用いられるように、“ポリヌクレオチド”または“核酸”という用語はRNAまたはDNAを意味し、前記は非改変または改変RNAもしくはDNAであり得る。ポリヌクレオチドには、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、並びにDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖、より典型的には二本鎖、または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得る)が含まれるが、ただし前記に限定されない。加えて、ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの双方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語はまた、1つ以上の改変塩基を有するDNAまたはRNA、および安定または他の目的のために改変された基本骨格を有するDNAまたはRNAを含む。
本明細書で用いられるように、“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語は本明細書では互換的に用いられ、前記は、ペプチド結合または改変ペプチド結合(すなわちペプチド同配体)によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、短い鎖(通常ペプチド、糖ペプチドまたはオリゴマーと称される)およびより長い鎖(一般的にタンパク質と称される)の両方を指す。ポリペプチドは、20遺伝子によってコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができる。ポリペプチドには、天然のプロセス(例えば翻訳後プロセッシング)によって、または化学的改変技術(当業界で周知である)によって改変されたアミノ酸配列が含まれる。そのような改変は、基礎的な教本およびより詳細にはモノグラフとともに膨大な研究論文に良く記載されている。
【0033】
本明細書で用いられるように、“組換え体”という用語は、例えば細胞または核酸、タンパク質もしくはベクターに関係して用いられるとき、当該細胞、核酸またはベクターは、異種核酸もしくはタンパク質の導入によって、または自然のままの核酸もしくはタンパク質の変異によって改変されていること、または当該材料がそのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、当該細胞の自然のままの形態(非組換え形)では見出されない遺伝子を発現するか、または組換え細胞は、そうででなければ異常発現されるか、下方発現されるかまたは全く発現されない自然のままの遺伝子を発現するであろう。
本明細書で用いられるように、“別々”の治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性な成分を異なるルートで同じ時にまたは実質的に同じ時に投与することを指す。
本明細書で用いられるように、“逐次的な”治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を異なる時に投与することを指し、投与ルートは同一または相違する。より具体的には、逐次的使用は、当該複数の活性成分の1つの完全な投与が、1つまたは複数の他方の投与の開始前であることを指す。したがって、当該複数の活性成分の1つを、他方の1つまたは複数の活性成分を投与する前に、数分、数時間または数日にわたって投与することが可能である。この事例では、同時治療は存在しない。
本明細書で用いられるように、“特異的に結合する”とは、もう1つの分子(例えば抗原)を認識および結合するが、他の分子を実質的に認識および結合しない分子(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント)を指す。本明細書で用いられるように、“特異的結合”、“~と特異的に結合する”または個々の分子(例えばポリペプチドまたはポリペプチド上のエピトープ)に対して“特異的”であるという用語は、例えば、それが結合する分子に対して約10-4 M、10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、または10-12 MのKdを有する分子によって提示され得る。“特異的に結合する”という用語はまた、分子(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント)が、個々のポリペプチド(例えばL1-CAMポリペプチド)または個々のポリペプチド上のエピトープと結合し、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープとは実質的に結合しない結合を指すことができる。
【0034】
本明細書で用いられるように、治療薬の“同時”使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を同じルートで同じ時にまたは実質的に同じ時に投与することを指す。
本明細書で用いられるように、“治療薬剤”という用語は、有効量で存在するとき、所望の治療効果をその必要がある対象動物で生じる化合物を意味することが意図される。
本明細書で用いられる“治療する”または“治療”は、本明細書に記載する疾患または異常の対象動物(例えば人間)における治療をカバーし、治療は以下を含む:(i)疾患または異常の防止、すなわちその発生の停止;(ii)疾患または異常の緩和、すなわち当該異常の沈静を引起す;(iii)異常の進行の速度低下;および/または(iv)疾患または異常の1つ以上の症候の防止、緩和、または進行の速度低下。いくつかの実施態様では、治療は、当該疾患に関連する症候が、例えば緩和され、軽減され、治癒され、または緩解状態に置かれることを意味する。
本明細書に記載する異常の多様な治療態様が“実質的”を意味することを意図することは理解されよう。前記は完全な治療を含むが完全に満たない治療もまた含み、その場合には、いくつかの生物学的にまたは医学的に関連する成果が達成される。治療は、慢性的疾患に対する持続的な長期治療であっても、または急性症状の治療のための1回または数回の実施であってもよい。
【0035】
本明細書に記載する抗L1-CAM抗体のアミノ酸配列の改変が意図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが所望され得る。抗L1-CAM抗体のアミノ酸配列変種が、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。そのような改変には、例えば当該抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換が含まれる。得られる抗体が所望の特性を有するかぎり、欠失、挿入および置換の任意の組合せを実施して着目される抗体を入手する。改変にはまた、タンパク質のグリコシル化パターンの変化が含まれる。置換変異誘導のためにもっとも着目される部位には超可変領域が含まれるが、FR変異もまた意図される。“保存的置換”を下記の表に示す。
【0036】
【0037】
置換変種の1つのタイプは、親抗体の1つ以上の超可変領域残基を置換することを必要とする。そのような置換変種を作出するための便利な方法は、ファージディスプレーを用いる親和性成熟を必要とする。具体的には、いくつかの超可変領域部位(例えば6-7部位)を成熟させて、各部位で全ての可能なアミノ酸置換を作出する。このようにして作出された抗体変種は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III生成物との融合物として一価態様でディスプレーされる。ファージディスプレー変種は続いて、本明細書に開示するように、それらの生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。改変のための超可変領域部位候補を識別するために、アラニンスキャン変異誘導を実施して、抗原結合に有意に貢献する超可変領域残基を識別する。また別に或いは追加して、抗原抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原の接触点を識別することは有益であり得る。そのような接触残基および近傍残基は、本明細書の精巧な技術による置換の候補である。いったんそのような変種が作出されたら、変種パネルを本明細書に記載するスクリーニングに付し、1つ以上の関連アッセイで同様なまたは優れた特性を有する抗体を更なる開発のために選別することができる。
【0038】
L1-CAM
L1-CAMは、粘着分子、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF CAM)の一部分のL1ファミリーのメンバーであり、軸索誘導、神経細胞遊走および分化に必要とされる。L1ファミリーには、L1-CAM(CD171)、L1-CAM(CHL1)の近縁ホモログ、ニューロファシンおよびNgCAM関係細胞粘着分子(NR-CAM)が含まれる。これらのタンパク質は、ニューロン(特にそれらの軸索上で)および神経膠細胞(例えばシュワン細胞)で発現される。L1-CAMは神経細胞粘着分子であり、中枢神経系の発達に必要とされる。L1-CAMは28個のエクソンおよび27個のイントロンから構成されており、その遺伝子生成物の分子量は200から220kDaの範囲である(Coutelle O et al., Gene 208:7-15, 1998)。細胞外ドメイン(ECM、エクソン1からエクソン24)は6つのIg様ドメイン(
図1)および5つのフィブロネクチン様ドメインを有し、第一のフィブロネクチンドメインにN-グリコシル化を有する。RGDモチーフが6番目のIg様ドメインに存在する。ECMは同種親和性結合に関与し(
図2)、FGFRと相同領域を共有する。細胞質ドメインは、5つの潜在的なホスホセリン残基を含み、細胞骨格、第二のメッセンジャー経路およびキナーゼと相互作用することができる。2つのエクソン(2および27)はまた別にスプライシングされる(Coutelle O et al., Gene 208:7-15, 1998)。
【0039】
L1-CAM変異は、CRASHと呼ばれるX連鎖神経学的異常を引き起こす(CRASH:脳梁形成不全(Corpus callosum hypoplasia)、発育遅延(Retardation)、拇指内転(Adducted thumb)、痙性対麻痺(Spastic paralegia)、および水頭症(Hydrocephalus))。L1-CAM変異により生じる臨床症候は多様性であり、70を超えるL1-CAM変異が、L1-CAM分子の全ての部分においてCRASH患者で報告されている。L1-CAMノックアウトマウスは、皮質脊髄路の過形成および脳室系の異常を示す。L1-CAMは、コンテキスト依存態様で種々の基質への接着を媒介する。同種親和性結合によって、L1-CAMは他の接着分子、例えばアキソニン-1/TAX-1、コンタクチン、ニューロカン、ニューロフィリン1およびインテグリン(例えばαvβ3、α5β1、αvβ1およびαvβ5)と相互作用する。シス(同じ細胞の膜上の分子間における)およびトランス(向き合う膜上の分子間における)相互作用が報告されている。ECMのN-連結炭水化物はL1-CAMの分子量の25%を占める。ECMは2つのタンパク質分解切断部位を有し、遠位部位はメタロプロテアーゼADAM10によって切断されて200および32kDaのフラグメントを生じる。L1-CAMは、多段増殖、抗アポトーシスおよび血管形成に関係する経路に必要とされることが示された。
L1-CAMは通常は神経組織で見出され(
図3)、一方、癌細胞を含む非神経細胞はもっぱらエクソン2および27を欠く変種を発現する。エクソン2(YEGHHV、N-末端Ig1ドメインをコードする)は、in vitroでの同種親和性L1-L1結合のために重要であり、異種親和性リガンドとの最適な結合に要求される。エクソン27(細胞質テール)によってコードされるRSLE含有L1-CAMは、L1Δ(RSLE)よりも2-3倍速く内在化される。RSLE依存エンドサイトーシスは、L1-CAMの表面密度調節のためのメカニズムであり、前記は順に神経突起および細胞接着を制御する。卵巣癌腫細胞株はもっぱらL1-CAMΔをin vitroで発現する。L1-CAMによるERK活性化は、エクソン27によって媒介されるL1-CAMのエンドサイトーシスを要求する。これらの異なるスプライス変種は、癌の細胞学において異なるまたは対立的ですらある機能を有するかもしれない。
【0040】
ヒト癌におけるL1-CAMシグナリング:L1-CAMおよびその切断酵素(ADAM10)は、侵襲前線で見出されるときには結腸直腸癌の転移潜在性と密接に関係する。β-カテニンWntは、L1-CAMを介するシグナリングによって、線維芽細胞および結腸癌細胞において細胞運動性、侵襲および腫瘍形成を付与することが知られている。同種親和性または異種親和性結合によるか否かにかかわらず、L1-CAMは細胞運動性を促進し、侵襲表現型を維持する。血清または血小板由来増殖因子の存在下で、L1-CAMは細胞外シグナル関係キナーゼ(ERK)経路を刺激し、運動性および侵襲関係遺伝子生成物(例えば、β3インテグリンサブユニット、小GTPaseおよびシステインプロテアーゼ、カテプシン-Lおよびカテプシン-B)の発現をもたらす。IGF2RおよびSCL31A1と一緒にL1-CAMは、腫瘍細胞をアポトーシスから保護する生存因子として識別された。
卵巣癌腫上のL1-CAMは、腹膜の内壁を形成する中皮細胞上のニューロピリン-1と結合し、中皮細胞と腫瘍との間の相互シグナリングによって腫瘍増殖を誘発する。L1-CAMの非神経アイソフォームの発現は、異なる腫瘍タイプを起原とする17腫瘍細胞株のうち16で見出される(Shtutman M et al., Cancer Res 66:11370-80, 2006)。非神経L1-CAMのノックダウンは、乳癌細胞株MCF-7で接着結合を破壊し、β-カテニン転写活性を増加させる。完全長L1-CAMは、ADAM10およびプレセニリン/γ-セクレターゼによる連続切断を受け、前記事象はL1-CAMのC-末端フラグメントが遺伝子調節のために核へ移動する前に生じる。L1-CAMの6番目のIgドメインに位置するRGD結合部位は核内シグナリングのために重要であるように思われる。
L1-CAMのその可溶形(sL1-CAM)へのメタロプロテイナーゼ媒介エクトドメイン切離しは生理学的な結果を有する。sL1-CAMは血管形成を媒介し、これはおそらくRGDモチーフを介してインテグリンを繋ぐことによる。sL1-CAMは、分裂増殖、マトリゲル侵襲、ウシ大動脈内皮細胞の管形成、および血管形成促進活性を誘発する。sL1-CAMはいくつかのインテグリンのためのリガンドであり、細胞外マトリックスに沈積され得る。L1-CAMの細胞質ドメインは、基部切離しおよびアンキリン結合部位を介する細胞骨格との連合を調節する。卵巣癌腫細胞株のL1-CAMのエキソソーム保持構成的切断生成物が、卵巣癌患者の腹水および血清で見出され得る。L1-CAMはまた血管の吸収および転移性成長を脳転移モデルで媒介することができる。組織プラスミンはL1-CAMを破壊し、それによって転移プロセスを停止させる。腫瘍由来抗プラスミノーゲン、ニューロセルピンは、L1-CAMのプラスミン媒介破壊または膜結合星状細胞性FasL(癌細胞のためのパラクリン死シグナル)の放出を防ぐことができる。
L1-CAMはまた化学物質耐性に必要とされる。例えば、L1-CAMを発現する卵巣癌腫細胞は、アポトーシスに対しより耐性であり、前記は部分的には抗アポトーシス分子Bcl-2を介する。L1-CAM(+) HEK-293細胞では、L1-CAMはERK、FAKおよびPAKリン酸化を媒介する。シスプラチン耐性のために選別された細胞株はL1-CAM発現をアップレギュレートし、そのノックダウンは感受性を回復させる。
【0041】
ヒトの組織および腫瘍におけるL1-CAM:正常なヒトの組織では、L1-CAMは、神経組織および末梢神経、皮膚基底細胞および小血管、並びにもっとも際立つのは成熟胎盤で検出された(
図3)。L1-CAMを発現する腫瘍には、神経外胚葉および神経冠起原のもの(神経芽細胞腫、GIST、褐色細胞腫、傍神経節腫、神経膠腫、膵臓の神経外胚葉癌などを含む)、膵臓の腺癌腫、卵巣および子宮の癌、結腸直腸癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、腎細胞の癌腫、三重陰性乳癌、並びに腫瘍血管が含まれる(
図4)。マウスのモノクローナルIgG抗体(UJ127)を用い、128の異なる腫瘍タイプ(異なる約5500のサンプル)の組織マイクロアッセイで実施したIHCは、神経および神経冠起原の腫瘍におけるL1-CAM発現を明示したが、上皮起原のものでは同様ではなかった(
図4参照;陰性(非特異的バックグラウンド染色と比較して評価したとき染色が検出されない)、弱(腫瘍細胞の30%未満で1+染色または2+染色)、または強(腫瘍細胞の30%を超える細胞において3+染色または2+染色))。25%を超える陽性(弱+強)が、神経芽細胞腫、卵巣の顆粒細胞腫瘍、シュワン細胞腫、褐色細胞腫、GIST、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)、類上皮肉腫、鼻腔神経芽細胞腫、髄芽腫、傍神経節腫、毛細血管腫、カポジ肉腫で見出された。10%から25%が、悪性メラノーマ、軟骨肉腫、食道の腺癌腫、結腸直腸の癌、および乏突起神経膠腫で見出された。5-10%が、上衣腫、膵臓の神経内分泌癌腫、小細胞肺癌、副腎の腺腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、星状細胞腫、および子宮内膜癌で見出された。5%未満は、良性母斑、悪性中皮腫、子宮頸癌、食道の扁平上皮癌腫、髄膜腫、粘膜結合リンパ系組織、神経線維腫並びに膵臓の腺癌腫および前立腺癌で見出された。一般的には、L1-CAMは、分化程度の低い進行病期(しばしば転移を伴う)と密接に関係する。抗L1-CAM抗体、例えばCE7(E72)は単球と反応しない(単球はL1-CAM転写物を発現する)。このことは、L1-CAMは、正常組織(抗L1-CAM抗体の優先的結合を許容する)と対比して、腫瘍で異なる翻訳後改変を受ける可能性を示唆する。
L1-CAMを指向する既存抗体:chCE7は、腎臓の癌腫細胞上のヒトL1-CAMの6番目のIg様ドメイン(RGDモチーフを有する)と結合し(
図1)、ヒト神経芽細胞腫の細胞によって内在化される(Meli ML et al., Int J Cancer 83:401-8, 1999;Novak-Hofer I et al., Int J Cancer 57:427-432, 1994)。他のモノクローナル抗体もまた報告されている:5G3、A10-A3、UJ127、L1-14.10、MAB777(R&D systems Inc., Minneapolis, MN)、および0.N.378 (U.S Biological Life Sciences, Salem, MA)、前記は多様なエピトープ域および親和性を示す(
図5)。しかしながら、種々のエピトープを指向するこれらのL1-CAM抗体の各々のin vitroおよびin vivo特性の系統的な評価は未だ実施されず、それらの臨床的影響は不明のままである。多くの抗L1-CAM抗体(例えばchCE7)が、抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)の惹起に関して有効ではない。いくつかの抗L1-CAM抗体は、患者の内部で望ましくない免疫原性応答を潜在的に誘発し得る。
【0042】
本技術の免疫グロブリン関係組成物
本技術は、抗L1-CAM免疫グロブリン関係組成物(例えば抗L1-CAM抗体またはその抗原結合フラグメント)の作出および使用のための方法および組成物を記載する。本開示の抗L1-CAM免疫グロブリン関係組成物は、L1-CAM陽性癌の診断または治療で有用であり得る。本技術の範囲内の抗L1-CAM免疫グロブリン関係組成物には、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびジアボディ(ただしそれらに限定されない)が含まれ、前記は、標的ポリペプチド、ホモローグ、誘導体またはそのフラグメントに特異的に結合する。本開示はまた、本明細書に開示する抗L1-CAM抗体のいずれかの抗原結合フラグメントを提供し、ここで当該抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab)'2、Fab’、scFvおよびFvから成る群から選択される。
ある特徴では、本技術は抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記は重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、ここで、(a)VHは、GYTFTSYWMQのVH-CDR1配列(配列番号:53)、EINPSNGRTNYNEMFKSのVH-CDR2配列(配列番号:54)、およびYDGYYAMDYのVH-CDR3配列(配列番号:55)を含み、および/または(b)VLは、KSSQSLLYSSNQKNYLAのVL-CDR1配列(配列番号:56)、WASTRESのVL-CDR2配列(配列番号:57)、およびQQYHSYPFTのVL-CDR3配列(配列番号:58)を含む。抗体または抗原結合フラグメントのいくつかの実施態様では、VHは配列番号:1のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号:3のアミノ酸配列を含む。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、抗体はさらにまた任意のアイソタイプのFcドメインを含み、前記アイソタイプは、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgEまたはIgMおよびIgYである(ただしこれらに限定されない)。定常領域配列の非限定的な例に以下が含まれる:
【0043】
ヒトIgD定常領域、Uniprot:P01880(配列番号:59)
APTKAPDVFPIISGCRHPKDNSPVVLACLITGYHPTSVTVTWYMGTQSQPQRTFPEIQRRDSYYMTSSQLSTPLQQWRQGEYKCVVQHTASKSKKEIFRWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDHGPMK
ヒトIgG1定常領域、Uniprot:P01857(配列番号:60)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
ヒトIgG2定常領域、Uniprot:P01859(配列番号:61)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
ヒトIgG3定常領域、Uniprot:P01860(配列番号:62)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYTCNVNHKPSNTKVDKRVELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFKWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK
ヒトIgM定常領域、Uniprot:P01871(配列番号:63)
GSASAPTLFPLVSCENSPSDTSSVAVGCLAQDFLPDSITLSWKYKNNSDISSTRGFPSVLRGGKYAATSQVLLPSKDVMQGTDEHVVCKVQHPNGNKEKNVPLPVIAELPPKVSVFVPPRDGFFGNPRKSKLICQATGFSPRQIQVSWLREGKQVGSGVTTDQVQAEAKESGPTTYKVTSTLTIKESDWLGQSMFTCRVDHRGLTFQQNASSMCVPDQDTAIRVFAIPPSFASIFLTKSTKLTCLVTDLTTYDSVTISWTRQNGEAVKTHTNISESHPNATFSAVGEASICEDDWNSGERFTCTVTHTDLPSPLKQTISRPKGVALHRPDVYLLPPAREQLNLRESATITCLVTGFSPADVFVQWMQRGQPLSPEKYVTSAPMPEPQAPGRYFAHSILTVSEEEWNTGETYTCVAHEALPNRVTERTVDKSTGKPTLYNVSLVMSDTAGTCY
ヒトIgG4定常領域、Uniprot:P01861(配列番号:64)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
ヒトIgA1定常領域、Uniprot:P01876(配列番号:65)
ASPTSPKVFPLSLCSTQPDGNVVIACLVQGFFPQEPLSVTWSESGQGVTARNFPPSQDASGDLYTTSSQLTLPATQCLAGKSVTCHVKHYTNPSQDVTVPCPVPSTPPTPSPSTPPTPSPSCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGVTFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAEPWNHGKTFTCTAAYPESKTPLTATLSKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY
ひとIgA2定常領域、Uniprot:P01877(配列番号:66)
ASPTSPKVFPLSLDSTPQDGNVVVACLVQGFFPQEPLSVTWSESGQNVTARNFPPSQDASGDLYTTSSQLTLPATQCPDGKSVTCHVKHYTNPSQDVTVPCPVPPPPPCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGATFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAQPWNHGETFTCTAAHPELKTPLTANITKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRMAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY
ヒトIgカッパ定常領域、Uniprot:P01834(配列番号:67)
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0044】
いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、配列番号:59-66と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%同一の重鎖定常領域を含む。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、配列番号:67と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%同一の軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、L1-CAMポリペプチドのエピトープと結合し、前記エピトープは、L1-CAMの2番目のIg様ドメイン(配列番号:74)の連続する少なくとも5から8アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、エピトープは立体構造エピトープである。
別の特徴では、本開示は、単離された免疫グロブリン関係組成物(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント)を提供し、前記は、以下の重鎖(HC)アミノ酸配列またはその変種(1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する)を含む:
QVQLVQPGDELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSKAVLSVDKSVSTAYMQLSSLTAEDTAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:9)(huE71-H1);
QVQLVQSGSELKKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVRQAPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSRAVLSVDTSVSTAYMQLCSLKAEDTAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:10)(huE71-H2);
QVQLVQPGAEVVKPGASVKLSCKASGYTFTGYWMHWVKQAPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNERFKSKATLTVDKSITTAFMELSRLRSDDTAVYFCARDYYGTSYNFDYWGQGTLLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:17)(huE72-H1);
QVQLVQPGAEVKKPGASVKLSCKASGYTFTGYWMHWVRQAPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNERFKSRATLTVDKSISTAYMELSRLRSDDTAVYFCARDYYGTSYNFDYWGQGTLLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:18)(huE72-H2);
QVQLQQPGDELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:26)(chE71-IgG1);
QVQLQQPGDELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:30)(chE72-IgG1);
QVQLQQPGDELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号:42)(chE71-IgG4);
QVQLVQPGDELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSKAVLSVDKSVSTAYMQLSSLTAEDTAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号:46)(huE71-IgG4);
QVQLVQPGDELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNEMFKSKAVLSVDKSVSTAYMQLSSLTAEDTAVYYCALYDGYYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:49)(huE71-BsAb);
QVQLVQPGAEVVKPGASVKLSCKASGYTFTGYWMHWVKQAPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNERFKSKATLTVDKSITTAFMELSRLRSDDTAVYFCARDYYGTSYNFDYWGQGTLLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:51)(huE72-BsAb)。
【0045】
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、下記の軽鎖(LC)アミノ酸配列またはその変種(1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する)を含む:
DIVMTQSPSSLAVSVGERVTMSCKSSQSLLYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVKAEDVALYYCQQYHSYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:13)(huE71-L1)、
DIVMTQSPDSLAVSLGERVTMNCKSSQSLLYSSNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVALYYCQQYHSYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:14)(huE71-L2)、
DIQMTQSSSSFSVSVGDRVTITCKANEDINNRLAWYQQKPGKSPRLLISGATNLVTGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQAEDFATYYCQQYWSTPFTFGQGTELEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:21)(huE72-L1)、
DIQMTQSPSSLSVSVGDRVTITCKANEDINNRLAWYQQKPGKAPKLLISGATNLVTGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQYWSTPFTFGQGTELEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:22)(huE72-L2)、
DIVMSQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVKAEDLALYYCQQYHSYPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:25)(chE71-IgG1軽鎖)、
DIQMTQSSSSFSVSLGDRVTITCKANEDINNRLAWYQQTPGNSPRLLISGATNLVTGVPSRFSGSGSGKDYTLTITSLQAEDFATYYCQQYWSTPFTFGSGTELEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:29)(chE72 IgG1-軽鎖)、
DIVMSQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVKAEDLALYYCQQYHSYPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:41)(chE71-IgG4軽鎖)、
DIVMTQSPSSLAVSVGERVTMSCKSSQSLLYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVKAEDVALYYCQQYHSYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:45)(huE71-IgG4軽鎖)
DIVMTQSPSSLAVSVGERVTMSCKSSQSLLYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVKAEDVALYYCQQYHSYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECTSGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVQSGGGVVQPGRSLRLSCKASGYTFTRYTMHWVRQAPGKCLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDRFTISRDNSKNTAFLQMDSLRPEDTGVYFCARYYDDHYSLDYWGQGTPVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVSYMNWYQQTPGKAPKRWIYDTSKLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSNPFTFGCGTKLQITR(配列番号:50)(huE71-BsAb軽鎖-huOKT3scFv)、
DIQMTQSPSSLSVSVGDRVTITCKANEDINNRLAWYQQKPGKAPKLLISGATNLVTGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQYWSTPFTFGQGTELEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECTSGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVQSGGGVVQPGRSLRLSCKASGYTFTRYTMHWVRQAPGKCLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDRFTISRDNSKNTAFLQMDSLRPEDTGVYFCARYYDDHYSLDYWGQGTPVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVSYMNWYQQTPGKAPKRWIYDTSKLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSNPFTFGCGTKLQITR(配列番号:52)(huE72-BsAb軽鎖-huOKT3scFv)、
【0046】
いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、以下から成る群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列をそれぞれ含む:配列番号:9および配列番号:13(huE71 H1/L1);配列番号:9および配列番号:14(huE71 H1/L2);配列番号:10および配列番号:13(huE71 H2/L1);配列番号:10および配列番号:14(huE71 H2/L2);配列番号:17および配列番号:21(huE72 H1/L1);配列番号:17および配列番号:22(huE72 H1/L2);配列番号:18および配列番号:21(huE72 H2/L1);配列番号:18および配列番号:22(huE72 H2/L2);配列番号:26および配列番号:25(chE71 IgG1);配列番号:30および配列番号:29(chE72 IgG1);配列番号:42および配列番号:41(chE71 IgG4);配列番号:46および配列番号:45(huE71 IgG4);配列番号:49および配列番号:50(huE71 BsAb);並びに配列番号:51および配列番号:52(huE72 BsAb)。
免疫グロブリン関係組成物の上記実施態様のいずれでも、HCおよびLC免疫グロブリン可変ドメイン配列は、L1-CAMポリペプチドのエピトープと結合する抗原結合部位を形成し、前記エピトープは、L1-CAMの2番目のIg様ドメイン(配列番号:74)またはL1-CAMの6番目のIg様ドメイン(配列番号:75)の連続する少なくとも5から8アミノ酸残基を含む。いくつかの実施態様では、エピトープは立体構造エピトープである。
いくつかの実施態様では、HCおよびLC免疫グロブリン可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の成分である。他の実施態様では、HCおよびLC免疫グロブリン可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の成分である。ある種の実施態様では、抗体は完全長抗体である。
【0047】
いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、少なくとも1つのL1-CAMポリペプチドと特異的に結合する。いくつかの実施態様では、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、約10-3 M、10-4 M、10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、または10-12 Mの解離定数(Kd)で少なくとも1つのL1-CAMポリペプチドと結合する。ある種の実施態様では、免疫グロブリン関係組成物は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はヒト抗体フレームワーク領域を含む。
ある種の実施態様では、免疫グロブリン関係組成物は以下の特徴の1つ以上を含む:(a)軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、配列番号:13、14、21、22、25、29、41、45、50または52のいずれか1つに存在する軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である;および/または(b)重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、配列番号: 9、10、17、18、26、30、42、46、49および51のいずれか1つに存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である。別の特徴では、本明細書で提供する免疫グロブリン関係組成物の1つ以上のアミノ酸残基は、別のアミノ酸で置換される。置換は、本明細書で定義する“保存的置換”であり得る。
いくつかの実施態様では、免疫グロブリン関係組成物は以下を含む:(a)配列番号:13、14、21、22、25、29、41、45、50または52のいずれか1つに存在するLC配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるLC配列、および/または(b)配列番号: 9、10、17、18、26、30、42、46、49および51のいずれか1つに存在するHC配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるHC配列。
ある種の実施態様では、免疫グロブリン関係組成物はIgG1定常領域を含み、前記領域は、N297AおよびK322Aから成る群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、免疫グロブリン関係組成物は、S228P変異を含むIgG4定常領域を含む。
【0048】
いくつかの特徴では、本明細書に記載する抗L1-CAM免疫グロブリン関係組成物は、迅速な結合および細胞取込みおよび/または緩徐放出を促進するために構造的改変を含む。いくつかの特徴では、本技術の抗L1-CAM免疫グロブリン関係組成物(例えば抗体)は、CH2定常重鎖領域に欠失を含み、迅速な結合および細胞取込みおよび/または緩徐放出を促進することができる。いくつかの特徴では、Fabフラグメントを用いて、迅速な結合および細胞取込みおよび/または緩徐放出を促進する。いくつかの特徴では、F(ab)'2フラグメントを用いて、迅速な結合および細胞取込みおよび/または緩徐放出を促進する。
ある特徴では、本技術は、本明細書に記載する免疫グロブリン関係組成物の重鎖または軽鎖をコードする核酸配列を提供する。本明細書に記載する抗体のいずれかをコードする組換え核酸配列もまた開示される。いくつかの実施態様では、核酸配列は、配列番号:11、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、43、44、47および48から成る群から選択される。別の特徴では、本技術は、本明細書に記載する免疫グロブリン関係組成物の重鎖または軽鎖をコードする任意の核酸配列を発現する宿主細胞を提供する。
【0049】
本技術の免疫グロブリン関係組成物(例えば抗L1-CAM抗体)は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはより高次のマルチ特異性であることができる。マルチ特異性抗体は、1つ以上のL1-CAMポリペプチドの異なるエピトープに特異性であることができ、或いはL1-CAMポリペプチドとともに異種組成物(例えば異種ポリペプチドまたは固体支持物質)の両方に特異性であることができる。例えば以下を参照されたい:WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tutt et al., J. Immunol. 147: 60-69, 1991;U.S. Pat. Nos. 5,573,920、4,474,893、5,601,819、4,714,681、4,925,648、6,106,835;Kostelny et al., J. Immunol. 148: 1547-1553, 1992。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン関係組成物はキメラである。ある種の実施態様では、免疫グロブリン関係組成物はヒト化される。
本技術の免疫グロブリン関係組成物はさらにまた、異種ポリペプチドとN-またはC-末端で組換えにより融合されるか、或いは化学的にポリペプチドまたは他の組成物と複合体化される(共有結合および非共有結合による複合体化を含む)。例えば、本技術の免疫グロブリン関係組成物は、検出アッセイの標識として有用な分子、およびエフェクター分子(例えば異種ポリペプチド、薬物、または毒素)と組換えにより融合または複合体化され得る。例えば以下を参照されたい:WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;U.S. Pat. No. 5,314,995;およびEP0 396 387。
【0050】
本技術の免疫グロブリン関係組成物の上記の実施態様のいずれかにおいて、抗体または抗原結合フラグメントは、以下から成る群から選択される薬剤と場合によって複合体化することができる:放射性同位体、色素、色原体、造影剤、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、酵素阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、成長因子、放射性核種、金属、リポソーム、ナノ粒子、RAN、DNAまたは前記の任意の組合せ。化学結合または物理的結合のためには、典型的には、免疫グロブリン関係組成物上の官能基が薬剤上の官能基と結び付けられる。また別には、薬剤上の官能基が免疫グロブリン関係組成物上の官能基と結び付けられる。
薬剤および免疫グロブリン関係組成物上の官能基は直接的に結合させることができる。例えば、薬剤上の官能基(例えばスルフヒドリル基)を免疫グロブリン関係組成物上の官能基(例えばスルフヒドリル基)と結び付けて、ジスルフィドを形成することができる。また別に、官能基は架橋(すなわちリンカー)を介して結合させることができる。架橋剤のいくつかの例は下記に記載される。架橋を薬剤または免疫グロブリン関係組成物のどちらかに結合させることができる。複合体中の薬剤または免疫グロブリン関係組成物の数はまた、他方に存在する官能基の数によって制限される。例えば、複合体に結び付けられる薬剤の最大数は、免疫グロブリン関係組成物に存在する官能基の数に左右される。また別に、薬剤に結び付けられる免疫グロブリン関係組成物の最大数は、薬剤に存在する官能基数に左右される。
さらに別の実施態様では、複合体は、1つの薬剤に結び付けられた1つの免疫グロブリン関係組成物を含む。ある実施態様では、複合体は、少なくとも1つの免疫グロブリン関係組成物に化学的に結合された(例えば複合体化された)少なくとも1つの薬剤を含む。薬剤は、当業者に公知の任意の方法によって免疫グロブリン関係組成物に化学的に結合され得る。例えば、薬剤上の官能基を免疫グロブリン関係組成物上の官能基に直接的に結合させることができる。適切な官能基のいくつかの例には、例えばアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、マレイミド、イソシアネート、イソチオシアネートおよびヒドロキシルが含まれる。
【0051】
薬剤はまた、架橋剤の手段(例えばジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミドなど)によって、免疫グロブリン関係組成物と化学的に結合させることができる。架橋剤は、例えばピアースバイオテクノロジー社(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, Ill)から入手することができる。前記企業のウェブサイトは助力を提供することができる。追加の架橋剤には下記特許に記載されている白金架橋剤が含まれる:米国特許5,580,990号、5,985,566号、および6,133,038号(Kreatech Biotechnology, B.V., Amsterdam, The Netherlands)。
また別には、薬剤および免疫グロブリン関係組成物上の官能基は同じものであり得る。同種二官能性架橋剤は、典型的には同一官能基を架橋するために用いられる。同種二官能性架橋剤の例には以下が含まれる:EGS(すなわちエチレングリコビス[スクシンイミジルスクシネート])、DSS(すなわちジスクシンイミジルスベレート)、DMA(すなわちアジプイミド酸ジメチル2HCl)、DTSSP(すなわち3,3'-ジチオビス[スルホスクシンイミジルプロピオネート])、DPDPB(すなわち1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン)およびBMH(すなわちビス-マレイミドヘキサン)。そのような同種二官能性架橋剤もまたピアースバイオテクノロジー社から入手できる。
【0052】
他の例では、薬剤を免疫グロブリン関係組成物から切断することが有益であり得る。上記に記載のピアースバイオテクノロジー社のウェブサイトは、例えば細胞内の酵素によって切断することができる適切な架橋剤の選択で当業者に助力を提供するであろう。したがって、薬剤を免疫グロブリン関係組成物から分離させることができる。切断可能リンカーの例には以下が含まれる:SMPT(すなわち4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-[2-ピリジルジチオ]トルエン)、スルホ-LC-SPDP(すなわちスルホスクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、LC-SPDP(すなわちスクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、スルホ-LC-SPDP(すなわちスルホスクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、SPDP(すなわちN-スクシンイミジル3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミドヘキサノエート)、およびAEDP(すなわち3-[(2-アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸HCl)。
別の実施態様では、複合体は、少なくとも1つの免疫グロブリン関係組成物に物理的に結合された少なくとも1つの薬剤を含む。当業者に公知の任意の方法を利用して、免疫グロブリン関係組成物に薬剤を物理的に結合させることができる。例えば、当業者に公知の任意の方法によって、免疫グロブリン関係組成物および薬剤を一緒に混合することができる。混合の順番は重要ではない。例えば、当業者に公知の任意の方法によって、薬剤を免疫グロブリン関係組成物と物理的に混合することができる。例えば、免疫グロブリン関係組成物および薬剤を容器に入れ、例えば容器を振盪することによって攪拌し、免疫グロブリン関係組成物および薬剤を混合することができる。
免疫グロブリン関係組成物は、当業者に公知の任意の方法によって改変され得る。例えば、上記に記載の架橋剤または官能基の手段によって免疫グロブリン関係組成物を改変することができる。
【0053】
A.本技術の抗L1-CAM抗体を調製する方法
概論:先ず初めに、本技術の抗体を惹起する標的ポリペプチドが選択される。例えば、抗体は、完全長のL1-CAMに対して、または6つのIg様ドメインおよび5つのフィブロネクチンドメインを含むL1-CAMタンパク質の細胞外ドメイン(
図1参照)の部分に対して惹起することができる。そのような標的ポリペプチドに対する抗体を作出する技術は当業者には周知である。そのような技術の例には、例えば、ディスプレーライブラリー(異種またはヒト)、マウスハイブリドーマなどを必要とするものが含まれるが、ただし前記に限定されない。本技術の範囲内の標的ポリペプチドには、免疫応答を誘発することができる、細胞外ドメインを含むL1-CAMタンパク質に由来する任意のポリペプチドが含まれる。L1-CAMタンパク質に特異的な抗体の調製は実施例1、2および5に例示される。
組換え操作された抗体および抗体フラグメント、例えば抗体関係ポリペプチド(前記はL1-CAMタンパク質およびそのフラグメントを指向する)が、本開示にしたがって使用されるために適切であることは理解されよう。
本明細書に示す技術に付すことができる抗L1-CAM抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、並びに抗体フラグメント、例えばFab、Fab′、F(ab′)
2、Fd、scFv、ジアボディ、抗体軽鎖、抗体重鎖、および/または抗体フラグメントが含まれる。抗体Fv含有ポリペプチド(例えばFab′ and F(ab′)
2抗体フラグメント)の高収量生成に有用な方法が報告されている。米国特許5,648,237号を参照されたい。
一般的には、抗体を元の種から入手する。より具体的には、標的ポリペプチドに対して特異性を有する、元の種の抗体の軽鎖、重鎖または両鎖の可変部分の核酸またはアミノ酸配列を入手する。元の種は、本技術の抗体または抗体ライブラリーを作出するために有用な任意の種(例えばラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、サル、ヒトなど)である。
ファージまたはファージミドディスプレー技術が、本技術の抗体の誘導のために有用な技術である。モノクローナル抗体の作出およびクローニングのための技術は当業者には周知である。本技術の抗体をコードする配列の発現は大腸菌(
E. coli)で実施できる。
【0054】
核酸コード配列の縮重のために、天然に存在するアミノ酸配列と実質的に同じ配列をコードする他の配列を本技術の実施に用いることができる。これらには、上記のポリペプチドをコードする核酸配列の全てまたは部分が含まれ(ただし前記に限定されない)、それらは、配列内で機能的に等価のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって改変される(したがってサイレント変化を生じる)。本技術の免疫グロブリンのヌクレオチド配列は、標準的方法で計算して25%までの配列相同性変動を許容することは理解されるであろう(“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,” Macromolecule Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applications, pp. 127-149, 1998, Alan R. Liss, Inc.)。ただしそのような変種が、L1-CAMタンパク質を認識する機能性抗体を形成する場合に限られる。例えば、ポリペプチド配列内の1つ以上のアミノ酸残基を機能的な等価物として作用する同様な極性の別のアミノ酸によって置換し、サイレント変異をもたらすことができる。配列内のアミノ酸における置換は、当該アミノ酸が属するクラスの他のアミノ酸から選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。極性の中性アミン酸にはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。陽性荷電(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれる。陰性荷電(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。タンパク質、そのフラグメントまたは誘導体もまた本技術の範囲内に含まれ、それらは、翻訳中または翻訳後に、例えばグリコシル化、タンパク質切断、抗体分子もしくは他の細胞性リガンドとの連結などによって種々に改変される。加えて、免疫グロブリンコード核酸配列をin vitroまたはin vivoで変異させて、翻訳開始および/または終了配列を作出または破壊し、或いはコード領域に変動を作出し、および/または新規な制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するかまたは既存の部位を破壊し、更なるin vitro改変を促進することができる。当業界で公知の変異誘導のための任意の技術を用いることができる。前記にはin vitro部位指定変異誘導(J. Biol. Chem. 253:6551)、Tabリンカーの使用(Pharmacia)などが含まれるが、ただし前記に限定されない。
【0055】
ポリクローナル抗血清および免疫原の調製:本技術の抗体または抗体フラグメントを作出する方法は、典型的には、対象動物(一般的には非ヒト対象動物(例えばマウスまたはウサギ))を精製L1-CAMタンパク質もしくはそのフラグメントで、またはL1-CAMタンパク質もしくはそのフラグメントを発現する細胞で免疫する工程を含む。適切な免疫原性調製物は、例えば組換え発現L1-CAMタンパク質または化学合成L1-CAMペプチドを含む。L1-CAMタンパク質のECMまたはその部分もしくはフラグメントを免疫原として用い、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製のための標準的な技術によって、L1-CAMタンパク質またはその部分もしくはフラグメントと結合する抗L1-CAM抗体を作出することができる。
完全長L1-CAMタンパク質またはそのフラグメントは、フラグメントとして免疫原として有用である。いくつかの実施態様では、L1-CAMフラグメントは、アミノ酸配列
PKETVKPVEVEEGESVVLPCNPPPSAEPLRIYWMNSKILHIKQDERVTMGQNGNLYFANVLTSDNHSDYICHAHFPGTRTIIQKEPID(配列番号:74)(L1-CAMのIg様C2型2ドメイン)、または
TQITQGPRSTIEKKGSRVTFTCQASFDPSLQPSITWRGDGRDLQELGDSDKYFIEDGRLVIHSLDYSDQGNYSCVASTELDVVESRAQLL(配列番号:75)(L1-CAMのIg様C2型6ドメイン)の連続する5から8つのアミノ酸残基を含み、さらに、当該ペプチドに対して生じる抗体が、L1-CAMとの特異的な免疫複合体を形成するようにL1-CAMタンパク質のエピトープを包含する。
いくつかの実施態様では、2番目または6番目のIg様ドメインとオーバーラップする抗原性L1-CAMペプチドは、少なくとも5、8、10、15、20、または30アミノ酸残基を含む。より長い抗原性ペプチドが、短い抗原性ペプチドよりも時には所望され、用途および当業界で周知の方法次第である。時には与えられるエピトープのマルチマーがモノマーよりも有効である。
必要な場合には、L1-CAMタンパク質(またはそのフラグメント)の免疫原性が、ハプテン(例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または卵白アルブミン(OVA))との融合または複合体化によって増強される。多くのそのようなハプテンが当業界で公知である。さらにまた、L1-CAMタンパク質を通常のアジュバント(例えばフロイントの完全または不完全アジュバント)と組合わせて、当該ポリペプチドに対する対象動物の免疫反応を増強することができる。免疫学的応答を増強するために用いられる多様なアジュバントには、フロイントのアジュバント(完全および不完全)、鉱物ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、多価陰イオン、ペプチド、油乳剤、ジニトロフェノールなど)、ヒトアジュバント(例えばカルメット-ゲラン桿菌およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum))、または類似の免疫刺激化合物が含まれるが、ただし前記に限定されない。
【0056】
本開示の説明では、免疫応答は“一次”または“二次”免疫応答と記載され得る。一次免疫応答(“防御”免疫応答とも記載される)は、個々の抗原(例えばL1-CAMタンパク質)に対する何らかの初期暴露(例えば初期“免疫”)の結果として、個体で生じる免疫応答を指す。いくつかの実施態様では、免疫は、抗原を含むワクチンによる個体のワクチン接種の結果として生じ得る。例えば、ワクチンは、1つ以上のL1-CAMタンパク質由来抗原を含むL1-CAMワクチンであり得る。一次免疫応答は、時間の経過で弱体化または減弱し、消失することさえあり、または検出できないほど減弱され得る。したがって、本技術はまた“二次”免疫応答に関する(本明細書では“メモリー免疫応答”とも記載される)。二次免疫応答という用語は、一次免疫応答が既に生じた後に個体で惹起される免疫応答を指す。
したがって、二次免疫応答は、例えば弱体化または減弱した既存の免疫応答を強化するために、或いは消失してしまったかまたはもはや検出できない以前の免疫応答を再現するために惹起され得る。二次またはメモリー免疫応答は、液性(抗体)応答または細胞性応答であり得る。二次またはメモリー液性応答は、抗原の最初の提示で生じたメモリーB細胞の刺激に際して発生する。遅延型過敏(DTH)反応は、細胞性二次またはメモリー免疫応答であり、CD4+ T細胞によって媒介される。抗原への最初の暴露は免疫系を始動させ、更なる暴露はDTHをもたらす。
適切な免疫に続いて、抗L1-CAM抗体を対象動物の血清から調製できる。所望される場合には、L1-CAMタンパク質に対する抗体分子を哺乳動物から(例えば血液から)単離し、IgG分画を得るために周知の技術(例えばポリペプチドAクロマトグラフィー)によってさらに精製できる。
【0057】
モノクローナル抗体:本技術のある実施態様では、抗体は抗L1-CAMモノクローナル抗体である。例えば、いくつかの実施態様では、抗L1-CAMモノクローナル抗体は、ヒトまたはマウス抗L1-CAMモノクローナル抗体である。L1-CAMタンパク質を指向するモノクローナル抗体、またはその誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログの調製のためには、連続細胞株培養による抗体分子の製造を提供する任意の技術を利用することができる。そのような技術には以下が含まれる:ハイブリドーマ技術(例えば以下を参照されたい:Kohler & Milstein, 1975. Nature 256: 495-497);トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば以下を参照されたい:Kozbor, et al., 1983. Immunol. Today 4: 72);およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBVハイブリドーマ技術(例えば以下を参照されたい:Cole, et al., 1985. In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)(ただし前記に限定されない)。ヒトモノクローナル抗体を本技術の実施に利用することができ、前記抗体は、ヒトハイブリドーマを用いることによって(例えば以下を参照されたい:Cote, et al., 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030)、またはヒトB細胞をエプスタイン-バーウイルスでin vitroで形質転換することによって(例えば以下を参照されたい:Cole, et al., 1985. In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)生成することができる。例えば、抗体の領域をコードする核酸集団を単離することができる。抗体の保存された領域をコードする配列に由来するプライマーを利用するPCRを用いて、当該集団由来抗体の部分をコードする配列を増幅し、続いて抗体またはそのフラグメント(例えば可変ドメイン)をコードするDNAを当該増幅配列から再構築する。そのような増幅配列はまた他のタンパク質(例えばバクテリオファージの外皮または細菌細胞表面タンパク質)と融合させて、ファージまたは細菌上で当該融合ポリペプチドを発現およびディスプレーさせることができる。増幅配列を発現させ、続いて、例えばL1-CAMタンパク質上に存在する抗原またはエピトープに対する当該発現抗体またはそのフラグメントの親和性に基づいて選別または単離することができる。また別には、対象動物を免疫し、続いて対象動物の脾臓からハイブリドーマを単離することによって、抗L1-CAMモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを日常的方法を用いて調製することができる。例えばMilsteinらの論文を参照されたい(Galfre and Milstein, Methods Enzymol (1981) 73: 3-46)。標準的方法を用いるハイブリドーマのスクリーニングは、様々な特異性の(すなわち異なるエピトープに対する)モノクローナル抗体を生じるであろう。ハイブリドーマによって発現された所望の特性(例えばL1-CAM結合)を有する選別モノクローナル抗体を用いることができ、前記を分子(例えばポリエチレングリコール(PEG))と結合させてその特性を改変するか、それをコードするcDNAを単離し配列決定し、さらに多様な方法で操作することができる。合成デンドリマーツリーを反応性アミノ酸側鎖(例えばリジン)に付加し、L1-CAMタンパク質の免疫原性特性を強化することができる。さらにまた、CPGジヌクレオチド技術を用いて、L1-CAMタンパク質の免疫原性特性を強化することができる。他の操作には以下が含まれる:保存中または対象動物への投与後の抗体の不安定性に関与する特定のアミノ酸残基の置換または欠失、L1-CAMタンパク質の抗体に対する親和性を改善する親和性成熟。
【0058】
ハイブリドーマ技術:いくつかの実施態様では、本技術の抗体は、ハイブリドーマによって生成される抗L1-CAMモノクローナル抗体である。前記ハイブリドーマは、ヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えばトランスジェニックマウス)から得られ、不死化細胞に融合されたB細胞を含む。ハイブリドーマ技術には当業界で公知の方法が含まれ、前記は以下で教示されている:Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 349, 1988;Hammerling et al., Monoclonal Antibodies And T-Cell Hybridomas, 563-681, 1981。ハイブリドーマおよびモノクローナル抗体を生成する他の方法は当業者には周知である。
【0059】
ファージディスプレー技術:上記に記したように、本技術の抗体は、組換えDNAおよびファージディスプレー技術の応用により生成することができる。例えば、抗L1-CAM抗体は、当業界で公知の多様なファージディスプレーの方法を用いて調製することができる。ファージディスプレーの方法では、機能的な抗体ドメインは、当該ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面でディスプレーされる。所望の結合特性を有するファージは、抗原、典型的には固体表面またはビーズに結合または捕捉された抗原を用いて直接選別することによって、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒトまたはマウス)から選別される。これらの方法で用いられるファージは、典型的には繊維状ファージ(fdおよびM13を含む)であり、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のどちらかに組換えにより融合されたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有する。加えて、これら方法は、Fab発現ライブラリーの構築のために改造されて(例えば以下を参照されたい:Huse, et al.,. Science 246: 1275-1281, 1989)、L1-CAMポリペプチド(例えばポリペプチドまたはその誘導体、フラグメント、アナログまたはホモログ)に対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速で効率的な識別を可能にする。本技術の抗体の作製に用いることができる他のファージディスプレー方法の例には、以下に開示されるものが含まれる:Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 85: 5879-5883, 1988;Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 87: 1066-1070, 1990;Brinkman et al., J. Immunol. Methods 182: 41-50, 1995;Ames et al., J. Immunol. Methods 184: 177-186, 1995;Kettleborough et al., Eur. J. Immunol. 24: 952-958, 1994;Persic et al., Gene 187: 9-18, 1997;Burton et al., Advances in Immunology 57: 191-280, 1994;PCT/GB91/01134;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;WO96/06213;WO92/01047(Medical Research Council et al.);WO97/08320(Morphosys);WO92/01047(CAT/MRC);WO91/17271(Affymax);および米国特許5,698,426号、5,223,409号、5,403,484号、5,580,717号、5,427,908号、5,750,753号、5,821,047号、5,571,698号、5,427,908号、5,516,637号、5,780,225号、5,658,727号および5,733,743号。ジスルフィド結合を介してポリペプチドを接着させることによって当該ポリペプチドをバクテリオファージ粒子の表面でディスプレーするために有用な方法は、米国特許6,753,136号(Lohning)によって記載されている。上記参考文献に記載されているように、ファージ選別の後で、ファージの抗体コード領域を単離し、抗体全体(ヒト抗体を含む)または所望される他の任意の抗原結合フラグメントを作出し、さらに所望される任意の宿主細胞(哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む)で発現させることができる。例えば、Fab、Fab′およびF(ab′)2フラグメントを組換え生成する技術もまた、当業界で公知の例えば以下に開示された方法を用いて利用することができる:WO92/22324;Mullinax et al., BioTechniques 12: 864-869, 1992;およびSawai et al., AJRI 34: 26-34, 1995;およびBetter et al., Science 240: 1041-1043, 1988。
一般的に、ディスプレーベクターでクローニングされるハイブリッド抗体またはハイブリッド抗体フラグメントは、良好な結合活性を維持する変種を識別するために適切な抗原に対して選別できる。なぜならば、抗体または抗体フラグメントは、ファージまたはファージ粒子の表面に存在するからである(例えば以下を参照されたい:Barbas III et al., Phage Display, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2001)。しかしながら、他のベクターフォーマットもこのプロセスに用いることができよう。例えば、選別および/またはスクリーニングのための溶解ファージベクター(改変T7またはラムダZap系)での抗体フラグメントライブラリーのクローニングである。
【0060】
組換え抗L1-CAM抗体の発現:上記に記したように、本技術の抗体は組換えDNA技術を応用して生成できる。本技術の抗L1-CAM抗体をコードする組換えポリヌクレオチド構築物は、典型的には抗L1-CAM抗体鎖のコード配列に作動できるように連結された発現制御配列を含む。前記制御配列には、天然に結びついてあるかまたは異種のプロモーター領域が含まれる。したがって、本技術の別の特徴は、本技術の抗L1-CAM抗体をコードする1つ以上の核酸配列を含有するベクターを含む。本技術のポリペプチドの1つ以上の組換え発現のために、抗L1-CAM抗体をコードするヌクレオチド配列の全てまたは部分を含有する核酸が、適切なクローニングベクターまたは発現ベクター(すなわち、挿入されるポリペプチドコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクター)に挿入され、前記は、当業界で周知であり下記で詳述される組換えDNA技術による。多岐にわたるベクター集団を生成する方法は、米国特許6,291,160号および6,680,192号(Lerner et al.)に記載されている。
【0061】
一般的に言えば、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形態である。本開示では、“プラスミド”および“ベクター”は、プラスミドがベクターのもっとも一般的に用いられる形態であるので互換的に用いられる。しかしながら、本技術は、技術的にはプラスミドではない他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)(前記は等価の機能を供する)を含むことが意図される。そのようなウイルスベクターは、対象動物の感染および当該対象動物での構築物の発現を可能にする。いくつかの実施態様では、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることができるベクターで真核細胞プロモーター系である。いったんベクターが適切な宿主に取り込まれたら、当該宿主は、抗L1-CAM抗体をコードするヌクレオチド配列の高レベル発現、抗L1-CAM抗体(例えば交差反応性抗体)の収集および精製のために適切な状態下で維持される。全般的にU.S. 2002/0199213を参照されたい。これらの発現ベクターは、典型的には、宿主生物でエピソームとしてまたは宿主染色体DNAの必須部分として複製することができる。通常は、発現ベクターは選別マーカー(例えばアンピシリン耐性またはヒグロマイシン耐性)を含有して、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にする。ベクターはまたシグナルペプチド(ペクチン酸リアーゼ)をコードし、前記は細胞外抗体フラグメントの分泌を指令するために有用である。米国特許5,576,195号を参照されたい。
【0062】
本技術の組換え発現ベクターは、L1-CAM結合特性を有するタンパク質をコードする核酸を、宿主細胞における核酸の発現に適切な形態で含む。適切な形態とは、組換え発現ベクターが、発現に用いられる宿主細胞を基準にして選択された1つ以上の調節配列を含むことを意味し、当該調節配列は発現される核酸に作動できるように連結される。組換え発現ベクター内で“作動できるように連結される”とは、対象のヌクレオチド配列が、(例えばin vitro転写/翻訳系で、またはベクターが宿主細胞に導入されるとき宿主細胞において)当該ヌクレオチド配列の発現を可能にする態様で調節配列と連結されることを意味する。“調節配列”という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は例えば以下に記載される:Goeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif., 1990。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指令するもの、および一定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば組織特異的調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、例えば、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるポリペプチドの発現のレベルなどの要件に左右され得ることは当業者には理解されよう。組換えポリヌクレオチド発現(例えば抗L1-CAM抗体)のプロモーターとして有用な典型的な調節配列には、3-ホスホグリセレートキナーゼおよび他の解糖系酵素のプロモーターが含まれるが、ただし前記に限定されない。誘導性酵母プロモーターには、とりわけアルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロームC、並びにマルトースおよびガラクトース利用に必要な酵素のプロモーターが含まれる。ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体をコードするポリヌクレオチドは、ara Bプロモーターに作動できるように連結され、さらに宿主細胞において発現性である。米国特許5,028,530号を参照されたい。本技術の発現ベクターは宿主細胞に導入され、それによって、本明細書に記載の核酸によってコードされるポリペプチドまたはペプチド(例えば抗L1-CAMなど)(融合ポリペプチドを含む)を生成することができる。
【0063】
本技術の別の特徴は抗L1-CAM抗体発現宿主細胞に関し、前記細胞は、1つ以上の抗L1-CAM抗体をコードする核酸を含む。本技術の組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞における抗L1-CAM抗体の発現のために設計され得る。例えば、抗L1-CAM抗体は、細菌細胞(例えば大腸菌(Escherichia coli))、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、真菌細胞(例えば酵母)、酵母細胞または哺乳動物細胞で発現され得る。適切な宿主細胞は以下で更なる考察に付される:Goeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif., 1990。また別には、組換え発現ベクターは、in vitroで例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて転写および翻訳され得る。確率論的に作製したポリヌクレオチドの発現による、所定の特性を有するポリペプチド(例えば抗L1-CAM抗体)の調製およびスクリーニングに有用な方法は既に記載されている。米国特許5,763,192号、5,723,323号、5,814,476号、5,817,483号、5,824,514号、5,976,862号、6,492,107号、6,569,641号を参照されたい。
原核細胞におけるポリペプチドの発現はもっともしばしば大腸菌で実施され、融合または非融合ポリペプチドの発現を指令する構成的または誘導性プロモーターを含むベクターが用いられる。融合ベクターは、その中でコードされるポリペプチドに多数のアミノ酸を通常は当該組換えポリペプチドのアミノ末端に付加する。そのような融合ベクターは典型的には3つの目的のために働く:(i)組換えポリペプチドの発現を高める;(ii)組換えポリペプチドの溶解性を高める;および(iii)親和性精製のリガンドとして作用することによって、組換えポリペプチドの精製を助ける。融合発現ベクターでは、しばしばタンパク分解性切断部位が融合部分と組換えポリペプチドとの接点に導入されて、融合ポリペプチドの精製後に当該融合部分から組換えポリペプチドの分離を可能にする。そのような酵素およびそれらの同族認識配列には、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson, 1988. Gene 67: 31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass.)、およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, N.J.)が含まれ、前記では、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合ポリペプチド、またはポリペプチドAが標的組換えポリペプチドと融合する。
【0064】
適切な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrc(Amrann et al., (1988) Gene 69: 301-315)およびpET 11d(Studier et al., GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif., 1990, 60-89)が含まれる。ポリペプチド融合を介してマルチ機能性ポリペプチドを得るために、別個の活性ペプチドまたはタンパク質ドメインを標的誘導アッセンブリーする方法は、米国特許6,294,353号、6,692,935号(Pack et al.)に記載されている。大腸菌で組換えポリペプチド(例えば抗L1-CAM抗体)発現を最大化する1つの手法は、組換えポリペプチドのタンパク分解性切断性能が傷害された宿主細菌で当該ポリペプチドを発現することである。例えば以下を参照されたい:Gottesman, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990) 119-128。別の手法は、各アミノ酸の個々のコドンが発現宿主(例えば大腸菌)で優先的に利用されるように、発現ベクターに挿入されるべき核酸の核酸配列を改変することである(例えば以下を参照されたい:Wada, et al., 1992. Nucl. Acids Res. 20: 2111-2118)。本技術の核酸配列のそのような改変は、標準的なDNA合成技術によって実施できる。
別の実施態様では、抗L1-CAM抗体発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用ベクターの例には、pYepSec1(Baldari, et al., 1987. EMBO J. 6: 229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz, Cell 30: 933-943, 1982)、pJRY88(Schultz et al., Gene 54: 113-123, 1987)、pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)、およびpicZ(Invitrogen Corp, San Diego, Calif.)が含まれる。また別には、抗L1-CAM抗体は、バキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞で発現できる。昆虫細胞(例えばSF9細胞)でのポリペプチド(例えば抗L1-CAM抗体)の発現に利用できるバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith, et al., Mol. Cell. Biol. 3: 2156-2165, 1983)およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers, 1989. Virology 170: 31-39)が含まれる。
【0065】
さらに別の実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体をコードする核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、例えばpCDM8(Seed, Nature 329: 840, 1987)およびpMT2PC(Kaufman, et al., EMBO J. 6: 187-195, 1987)が含まれるが、ただし前記に限定されない。哺乳動物細胞で用いられるとき、発現ベクターの制御機能は、しばしばウイルスの調節エレメントによって提供される。例えば、通常的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。本技術の抗L1-CAM抗体の発現に有用である、原核細胞および真核細胞の両方で適切な他の発現系については、例えば以下の文献の16および17章を参照されたい:Sambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989。
別の実施態様では、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプで核酸の発現を指令する能力を有する(例えば組織特異的調節エレメント)。組織特異的調節エレメントは当業界で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert, et al., Genes Dev. 1: 268-277, 1987)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton, Adv. Immunol. 43: 235-275, 1988)、T細胞受容体(Winoto and Baltimore, EMBO J. 8: 729-733, 1989)および免疫グロブリン(Banerji, et al., 1983. Cell 33: 729-740;Queen and Baltimore, Cell 33: 741-748, 1983)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば神経フィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 5473-5477, 1989)、膵臓特異的プロモーター(Edlund, et al., 1985. Science 230: 912-916)、並びに乳腺特異的プロモーター(例えば乳清プロモーター;米国特許4,873,316号および欧州特許公開No.264,166)が含まれる。発生に関して調節されるプロモーター、例えば、マウスHoxプロモーター(Kessel and Gruss, Science 249: 374-379, 1990)およびα-フェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman, Genes Dev. 3: 537-546, 1989)もまた包含される。
【0066】
本発明の別の特徴は、本技術の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。“宿主細胞”および“組換え宿主細胞”という用語は本明細書では互換的に用いられる。そのような用語は、個々の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も指すことは理解されよう。変異または環境的影響のために一定の改変が継承世代で発生し得るので、実際のところそのような子孫は親細胞と同一ではないことがあるが、それらはなお本明細書で用いられる用語の範囲内に含まれる。
宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、抗L1-CAM抗体は、細菌細胞(例えば大腸菌)、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞で発現され得る。哺乳動物細胞は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチドセグメントを発現するために適切な宿主である。以下を参照されたい:Winnacker, From Genes To Clones(VCH Publishers, NY, 1987)。無傷の異種タンパク質を分泌する能力を有する適切な多数の宿主細胞株が当業界で開発されてきた。前記には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、多様なCOS細胞株、HeLa細胞、L細胞およびミエローマ細胞株が含まれる。いくつかの実施態様では、細胞は非ヒト細胞である。これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製起点、プロモーター、エンハンサー、必要なプロセッシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終了配列を含むことができる(Queen et al., Immunol. Rev. 89: 49, 1986)。例示的な発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターである(Co et al., J Immunol. 148: 1149, 1992)。他の適切な宿主細胞は当業者には公知である。
【0067】
ベクターDNAは、通常の形質転換またはトランスフェクション技術により原核細胞または真菌細胞に導入することができる。本明細書で用いられるように、“形質転換”または“トランスフェクション”という用語は、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入する当業界で認識されている多様な技術を指すことが意図され、前記技術には、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共同沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレーション、バイオリスティクス、またはウイルスによるトランスフェクションが含まれる。哺乳動物細胞を形質転換するために用いられる他の方法には、ポリブレンの使用、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクションが含まれる(概説にはSambrookら(Molecular Cloning)を参照されたい)。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのための適切な方法は、Sambrookらの文献(Sambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)および他の実験室マニュアルで見出すことができる。対象のDNAセグメントを含むベクターは、宿主細胞のタイプに応じ周知の方法によって宿主細胞に移される。
哺乳動物細胞の安定的トランスフェクションの場合、用いられる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、小部分の細胞のみが外来DNAをそれらのゲノムに組み込むことができる。これら組込み体を識別および選別するために、一般的には選別可能なマーカー(例えば抗生物質耐性)をコードする遺伝子が、対象の遺伝子とともに宿主細胞に導入される。多様な選別可能マーカーには、薬物(例えばG418、ヒグロマイシンおよびメトトレキサート)に対する耐性を付与するものが含まれる。選別可能マーカーをコードする核酸は、抗L1-CAM抗体をコードするベクターと同じベクターで宿主細胞に導入されるか、または別々のベクターで導入され得る。導入核酸で安定的にトランスフェクトされた細胞は、薬物選別によって識別できる(例えば、選別可能マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存し、一方、他の細胞は死滅する)。
【0068】
本技術の抗L1-CAM抗体を含む宿主細胞(例えば原核または真核宿主細胞培養)を用いて、組換え抗L1-CAM抗体を生成(すなわち発現)することができる。ある実施態様では、当該方法は、抗L1-CAM抗体が生成されるように適切な培地で宿主細胞(抗L1-CAM抗体をコードする組換え発現ベクターがその中に導入されてある)を培養する工程を含む。別の実施態様では、当該方法はさらにまた、培地または宿主細胞から抗L1-CAM抗体を単離する工程を含む。いったん発現されたら、抗L1-CAM抗体(例えば抗L1-CAM抗体または抗L1-CAM抗体関係ポリペプチド)は培養培地および宿主細胞から精製される。抗L1-CAM抗体は、当業界の標準的な手順にしたがって精製でき、前記手順にはHPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などが含まれる。ある実施態様では、抗L1-CAM抗体は、Bossら(米国特許4,816,397号(Boss et al.))の方法によって生成される。通常は、抗L1-CAM抗体鎖はシグナル配列とともに発現され、したがって培養培地に放出される。しかしながら、抗L1-CAM抗体鎖が宿主細胞によって自然に分泌されない場合、抗L1-CAM抗体鎖は穏やかな洗剤による処理で放出させることができる。組換えポリペプチドの精製は当業界で周知であり、前記精製には、硫酸アンモニウム沈殿、親和性クロマトグラフィー精製技術、カラムクロマトグラフィー、イオン交換精製技術、ゲル電気泳動などが含まれる(概説には下記を参照されたい:Scopes, Protein Purification(Springer-Verlag, N.Y., 1982))。
抗L1-CAM抗体をコードするポリヌクレオチド(例えば抗L1-CAM抗体コード配列)をトランスジーンに取り込み、トランスジェニック動物のゲノムへ導入し、続いてトランスジェニック動物の乳中で発現させることができる。例えば、米国特許5,741,957号、5,304,489号、および5,849,992号を参照されたい。適切なトランスジーンには、軽および/または重鎖のためのコード配列が含まれ、前記コード配列は、乳腺特異的遺伝子(例えばカゼインまたはβ-ラクトグロビン)由来のプロモーターおよびエンハンサーに作動できるように連結される。トランスジェニック動物の作製のためには、トランスジーンを受精卵母細胞にマイクロインジェクトするか、または胚性幹細胞のゲノムにトランスジーンを取り込ませ、そのような細胞の核を脱核卵母細胞に移すことができる。
【0069】
単鎖抗体:ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は単鎖抗L1-CAM抗体である。本技術にしたがえば、L1-CAMタンパク質に特異的な単鎖抗体の生成のために複数の技術を適合させることができる(例えば米国特許4,946,778号を参照されたい)。単鎖Fvおよび本技術の抗体の生成のために用いることができる技術の例には、以下に記載された技術が含まれる:米国特許4,946,778号および5,258,498号;Huston et al., Methods in Enzymology, 203: 46-88, 1991;Shu, L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7995-7999, 1993;およびSkerra et al., Science 240: 1038-1040, 1988。
【0070】
キメラおよびヒト化抗体:ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体はキメラ抗L1-CAM抗体である。ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体はヒト化抗L1-CAM抗体である。本技術のある実施態様では、ドナーおよびアクセプター抗体は種々の種に由来するモノクローナル抗体である。例えば、アクセプター抗体はヒト抗体であり(ヒトでのその抗原性を最小限にする)、前記事例では、得られたCDR移植抗体は“ヒト化”抗体と称される。
組換え抗L1-CAM抗体(例えばキメラおよびヒト化モノクローナル抗体)は、ヒトおよび非ヒトの両方の部分を含み、前記は標準的な組換えDNA技術を用いて作製でき、本技術の範囲内である。いくつかの使用のために(本技術の抗L1-CAM抗体の人間でのin vitro使用とともにin vitro検出アッセイでのこれら薬剤の使用を含む)、キメラまたはヒト化抗L1-CAM抗体を使用することができる。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当業界で公知の組換えDNA技術によって生成することができる。そのような有用な方法には例えば以下に記載される方法が含まれる(ただしそれらに限定されない):国際出願No. PCT/US86/02269;米国特許5,225,539号;欧州特許184187号;欧州特許171496号;欧州特許173494号;PCT国際公開WO86/01533;米国特許4,816,567号、5,225,539号;欧州特許125023号;Better, et al., 1988. Science 240: 1041-1043;Liu, et al., 1987. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443;Liu, et al., 1987. J. Immunol. 139: 3521-3526;Sun, et al., 1987. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 214-218;Nishimura, et al., 1987. Cancer Res. 47: 999-1005;Wood, et al., 1985. Nature 314: 446-449;Shaw, et al., 1988. J. Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559;Morrison (1985) Science 229: 1202-1207;Oi, et al. (1986) BioTechniques 4: 214;Jones, et al., 1986. Nature 321: 552-525;Verhoeyan, et al., 1988. Science 239: 1534;Morrison, Science 229: 1202, 1985;Oi et al., BioTechniques 4: 214, 1986;Gillies et al., J. Immunol. Methods, 125: 191-202, 1989;米国特許5,807,715号;およびBeidler, et al., 1988. J. Immunol. 141: 4053-4060。例えば、抗体は以下を含む多様な技術を用いてヒト化され得る:CDR移植(EP0 239 400;WO91/09967;米国特許5,530,101号、5,585,089号、5,859,205号、6,248,516号;EP460167)、上張りまたは表面付け替え(EP0 592 106;EP0 519 596;Padlan E. A., Molecular Immunology, 28: 489-498, 1991;Studnicka et al., Protein Engineering 7: 805-814, 1994;Roguska et al., PNAS 91: 969-973, 1994)、および鎖のシャッフリング(米国特許5,565,332号)。ある実施態様では、Fc定常領域をコードする配列を特異的に除去するために選択した制限酵素を用いて、マウス抗L1-CAMモノクローナル抗体をコードするcDNAを消化し、ヒトFcをコードするcDNAの等価部分で置換する(以下を参照されたい:Robinson et al., PCT/US86/02269;Akira et al.,欧州特許出願184,187;Taniguchi, 欧州特許出願171,496;Morrison et al., 欧州特許出願173,494;Neuberger et al., WO86/01533;Cabilly et al.米国特許4,816,567号;Cabilly et al., 欧州特許出願125,023;Better et al. (1988) Science 240: 1041-1043;Liu et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443;Liu et al. (1987) J Immunol 139: 3521-3526;Sun et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 214-218;Nishimura et al. (1987) Cancer Res 47: 999-1005;Wood et al. (1985) Nature 314: 446-449;およびShaw et al. (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559;米国特許6,180,370号;米国特許6,300,064号、6,696,248号、6,706,484号、6,828,422号。
ある実施態様では、本技術は、ヒト抗マウス抗体(本明細書では“HAMA”と称する)応答を誘発する可能性が低いがなお効率的な抗体エフェクター機能を有するヒト化抗L1-CAM抗体の構築を提供する。本明細書で用いられるように、抗体に関連して“ヒト”および“ヒト化”という用語は、治療的に耐え得る弱い免疫原性応答をヒト対象動物で誘発すると予想される任意の抗体に関する。ある実施態様では、本技術は、ヒト化された抗L1-CAM抗体、重軽鎖免疫グロブリンを提供する。
【0071】
CDR抗体:いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は抗L1-CAM CDR抗体である。一般的には、抗L1-CAM CDR抗体を作出するために用いられるドナーおよびアクセプター抗体は、異なる種に由来するモノクローナル抗体である。典型的には、アクセプター抗体はヒト抗体であり(ヒトでのその抗原性を最小限にする)、前記事例では、得られたCDR移植抗体は“ヒト化”抗体と称される。移植物は、アクセプター抗体のただ1つのVHまたはVL内部でただ1つのCDR(またはただ1つのCDRの部分)であり得るか、またはVHおよびVLの一方または両方の内部で複数のCDR(またはその部分)であり得る。しばしば、アクセプター抗体の全ての可変ドメインの3つ全てのCDRが、対応するドナーCDRで取替えられる。ただし、得られたCDR移植抗体とL1-CAMタンパク質との適切な結合を可能にする数に限って取替える必要がある。CDR移植およびヒト化抗体を作出する方法は以下によって教示される:Queen et al. U.S. Pat. No. 5,585,089;米国特許5,693,761号;米国特許5,693,762号;および米国特許5,225,539号(Winter);並びにEP0682040。VHおよびVLポリペプチドを調製する有用な方法は以下によって教示される:米国特許(Winter et al.)4,816,397号、6,291,158号、6,291,159号、6,291,161号、6,545,142;EP0368684;EP0451216;およびEP0120694。
【0072】
同じファミリーおよび/または同じファミリーメンバーから適切なフレームワーク領域候補を選択した後、元の種に由来するCDRをハイブリッドフレームワーク領域に移植することによって重鎖および軽鎖可変領域の一方または両方を生成する。上記特徴のどちらかのハイブリッド可変鎖を有するハイブリッド抗体またはハイブリッド抗体フラグメントのアッセンブリーは、当業界で公知の通常的な方法を用いて達成され得る。例えば、本明細書に記載のハイブリッド可変ドメインをコードするDNA配列(すなわち、標的種を土台とするフレームワークおよび元の種に由来するCDR)は、オリゴヌクレオチド合成および/またはPCRによって生成できる。CDR領域をコードする核酸もまた元の種の抗体から適切な制限酵素を用いて単離し、さらに適切な連結酵素で連結することによって標的種のフレームワークに繋ぐことができる。また別には、元の種の抗体の可変鎖のフレームワーク領域を部位指定変異誘導によって変化させることができる。
ハイブリッドは各フレームワーク領域に対応する複数の候補から選択して構築されるので多くの配列組合せが存在し、それら配列を本明細書に記載する原則にしたがって構築することは容易である。したがって、個々のフレームワーク領域の種々の組合せを有するメンバーを含むハイブリッドライブラリーを組み立てることができる。そのようなライブラリーは、配列コレクションの電子データベースであってもハイブリッドの物理的コレクションであってもよい。
【0073】
このプロセスは、典型的には移植されたCDRにフランキングするアクセプター抗体のFRを変化させない。しかしながら、当業者は、与えられたFRの一定の残基を取り替えてドナー抗体の対応するFRにより類似させることによって、得られた抗L1-CAM CDR移植抗体の抗原結合親和性をときに改善することができる。適切な置換の配置はCDRに隣接するアミノ酸残基を含み、またはそれらはCDRと相互作用する能力を有する(例えばUS 5,585,089、特に12-16段を参照されたい)。或いは、当業者はドナーFRから初めて、前記をアクセプターFRまたはヒトコンセンサスFRにより類似するように改変することができる。これらの改変を実施するための技術は当業界で公知である。特に、得られたFRが当該位置についてヒトコンセンサスFRと適合するか、またはそのようなコンセンサスFRと少なくとも90%以上同一である場合、そのように改変することは、完全にヒトのFRを有する同じ抗体と比較して、当該得られた改変抗L1-CAM CDR移植抗体の抗原性を有意には増強させ得ない。
【0074】
二重特異性抗体(BsAb):二重特異性抗体は、別個の構造を有する2つの標的、例えば2つの異なる標的抗原、同じ標的抗原の2つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび標的抗原もしくは標的抗原のエピトープと同時に結合できる抗体である。BsAbは、例えば同じまたは異なる抗原の異なるエピソームを認識する重鎖および/または軽鎖を組合わせることによって作製できる。いくつかの実施態様では、分子機能によって、二重特異性結合薬剤は、その2つの結合アームの1つ(一方のVH/VL対)で1つの抗原(またはエピトープ)と結合し、その第二のアーム(別のVH/VL対)で異なる抗原(またはエピトープ)と結合する。この定義によれば、二重特異性結合薬剤は、(特異性およびCDR配列の両方で)2つの別個の抗原結合アームを有し、それと結合する各抗原に対して一価である。
本技術の二重特異性抗体(BsAb)および二重特異性抗体フラグメント(BsFab)は、例えばL1-CAMと特異的に結合する少なくとも1つのアーム、および第二の標的抗原と特異的に結合する少なくとも1つの他のアームを有する。いくつかの実施態様では、第二の標的抗原は、B細胞、T細胞、骨髄系細胞、形質細胞もしくは肥満細胞の抗原またはエピトープである。加えて或いはまた別に、ある種の実施態様では、第二の標的抗原は、CD3、CD4、CD8、CD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA-DR、CD74、CD22、CD14、CD15、CD16、CD123、TCRガンマ/デルタ、NKp46およびKIRから成る群から選択される。ある種の実施態様では、BsAbは、細胞表面でL1-CAM抗原を発現する腫瘍細胞と結合する能力を有する。いくつかの実施態様では、BsAbは操作されて、細胞傷害性T細胞を腫瘍部位に向かわせる(動員する)ことによって腫瘍細胞の殺滅を促進する。他の例示的なBsAbには、L1-CAMに特異的な第一の抗原結合部位および小分子ハプテンに特異的な第二の抗原結合部位を有するものが含まれ、前記ハプテンは、例えばDTP A、IMP288、DOTA、DOTA-Bn、DOTA-デスフェリオキサミン、本明細書に記載する他のDOTA-キレート、ビオチン、フルオレセイン、または文献に記載されたもの(Goodwin, D A. et al, 1994, Cancer Res. 54(22):5937-5946)である。
【0075】
多様な二重特異性融合タンパク質を分子操作を用いて作製できる。例えば、完全な免疫グロブリンフレームワーク(例えばIgG)、単鎖可変フラグメント(scFv)または前記の組合せを利用するBsAbが構築されている。いくつかの実施態様では、二重特異性融合タンパク質は二価であり、前記は、例えば1つの抗原のためにただ1つの結合部位を有するscFvおよび第二の抗原のためにただ1つの結合部位を有するFabを含む。他の実施態様では、二重特異性融合タンパク質は四価であり、例えば、1つの抗原に対して2つの結合部位を有する免疫グロブリン(例えばIgG)および第二の抗原のために2つの同一scFvを含む。タンデムに2つのscFvユニットを含むBsAbは、臨床的に上首尾の二重特異性抗体フォーマットであることが示されている。いくつかの実施態様では、BsAbはタンデムに2つの単鎖可変フラグメント(scFv)を含み、前記は、腫瘍抗原(例えばL1-CAM)と結合するscFvが、T細胞と(例えばCD3との結合によって)嵌合するscFvに連結されるように設計されている。この態様では、T細胞は、腫瘍細胞の細胞傷害性殺滅を媒介できるように腫瘍部位に動員される。例えば以下を参照されたい:Dreier et al., J. Immunol., 170:4397-4402, 2003;Bargou et al., Science 321:974-977, 2008。
BsAbを作製する最近の方法は追加のシステイン残基を含む操作された組換えモノクローナル抗体を含み、したがってそれらはより通常的な免疫グロブリンアイソタイプよりも強力に架橋する。例えば以下を参照されたい:FitzGerald et al., Protein Eng. 10(10):1221-1225, 1997。別のアプローチは、要求される二重特異性を有する2つ以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントが連結された組換え融合タンパク質を操作することである。例えば以下を参照されたい:Coloma et al., Nature Biotech. 15:159-163, 1997。分子操作を用い、多様な二重特異性融合タンパク質を作製することができる。
【0076】
2つ以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントを連結する二重特異性タンパク質は同様な態様で作製される。組換え方法を用い、多様な融合タンパク質を作製することができる。ある種のいくつかの実施態様では、本技術のBsAbは免疫グロブリンを含み、当該免疫グロブリンは重鎖および軽鎖並びにscFvを含む。ある種のいくつかの実施態様では、scFvは、本明細書に開示する任意のL1-CAM免疫グロブリンの重鎖のC-末端に連結される。いくつかのある種の実施態様では、scFvは、本明細書に開示する任意のL1-CAM免疫グロブリンの軽鎖のC-末端に連結される。多様な実施態様では、scFvはリンカー配列を介して重鎖または軽鎖に連結される。重鎖FdとscFvとのインフレーム接続に必要な適切なリンカー配列は、PCR反応でVLおよびVkappaドメインに導入される。続いて、scFvをコードするDNAフラグメントは、CH1ドメインをコードするDNA配列を含むステージングベクターに連結される。得られたscFv-CH1構築物を切り出し、L1-CAM抗体のVH領域をコードするDNA配列を含むベクターに連結する。得られたベクターを用いて、二重特異性融合タンパク質の発現のために適切な宿主細胞(例えば哺乳動物細胞)をトランスフェクトする。
いくつかの実施態様では、リンカーは、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100または100を超えるアミノ酸である。いくつかの実施態様では、リンカーは、剛性の三次元構造を選択せず、むしろポリペプチド(例えば第一および/または第二の抗原結合部位)に可撓性を提供する傾向があるという特徴を有する。いくつかの実施態様では、リンカーは、BsAbに付与される特定の特性(例えば安定性の増強)を基準にして本明細書に記載するBsAbで用いられる。いくつかの実施態様では、本技術のBsAbはG4Sリンカー(配列番号:76)を含む。ある種のいくつかの実施態様では、本技術のBsAbは(G4S)nリンカーを含み、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または15を超える(配列番号:78)。
【0077】
Fc改変:いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は多様なFc領域を含み、この場合、多様なFc領域は、野生型Fc領域と対比して少なくとも1つのアミノ酸改変(または親Fc領域)を含み、したがって前記分子はFc受容体(例えばFcγR)に対して変化した親和性を有するが、ただし前記多様なFc領域が、Fc-Fc受容体相互作用の結晶学および構造的分析に基づいて、Fc受容体と直接的接触を生じる場所で置換を有しないことを条件とする(例えばSondermannらが開示したもの:Sondermann et al., Nature, 406:267-273, 2000)。Fc受容体(例えばFcγR)と直接的接触を生じるFc領域内の場所の例には、アミノ酸234-239(ヒンジ領域)、アミノ酸265-269(B/Cループ)、アミノ酸297-299(C7Eループ)、およびアミノ酸327-332(F/G)ループが含まれる。
いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、活性化および/または阻害性受容体に対して改変された親和性を有し、1つ以上のアミノ酸改変を含むFc領域を有する。この場合、前記1つ以上のアミノ酸改変は、アラニンによるN297の置換またはアラニンによるK322の置換である。
【0078】
グリコシル化改変:いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、親Fc領域と比較して多様なグリコシル化を含むFc領域を有する。いくつかの実施態様では、多様なグリコシル化はフコースの欠如を含み、いくつかの実施態様では、多様なグリコシル化はGnT1欠損CHO細胞における発現により生じる。
いくつかの実施態様では、本技術の抗体は、対象の抗原(例えばL1-CAM)と結合する適切な参照抗体と対比して改変されたグリコシル化部位を有することができ、ただし抗体の機能性(例えば抗原との結合活性)に変化はない。本明細書で用いられるように、“グリコシル化部位”には、オリゴ糖(一緒に結合した1つ以上の単糖類を含む炭水化物)が特異的にかつ共有結合により結合する、抗体の任意の特異的なアミノ酸配列が含まれる。
オリゴ糖側鎖は、典型的には、N-またはO-結合を介して抗体の基本骨格に連結される。N-結合グリコシル化は、オリゴ糖部分とアスパラギン残基の側鎖との結合を指す。O-結合グリコシル化は、オリゴ糖部分とヒドロキシアミノ酸(例えばセリン、スレオニン)との結合を指す。例えば、ある種のオリゴ糖(フコースを含む)および末端のN-アセチルグルコサミンを欠くFc-糖型(huL1-CAM-IgGln)は特定のCHO細胞で生成され、強化されたADCCエフェクター機能を示すことができる。
いくつかの実施態様では、本明細書で開示する免疫グロブリン関係組成物の炭水化物含有量は、グリコシル化部位を付加または欠失させることによって改変される。抗体の炭水化物含有量を改変する方法は当業界で周知であり、本技術内に含まれる。例えば以下を参照されたい:米国特許6,218,149号;EP 0359096B1;米国特許公開US 2002/0028486;国際特許出願公開WO 03/035835;米国特許公開2003/0115614;米国特許6,218,149号;米国特許6,472,511号(前記のいずれも参照によってその全体が本明細書に含まれる)。いくつかの実施態様では、抗体(またはその該当部分もしくは成分)の炭水化物含有量は、抗体の1つ以上の内因性炭水化物部分を欠失させることによって改変される。ある種のいくつかの実施態様では、本技術は、297位をアスパラギンからアラニンに改変することによって、抗体のFc領域のグリコシル化部位を欠失させる工程を含む。
【0079】
操作された糖型は、多様な目的(エフェクター機能の強化または低下が含まれるが、ただしこれらに限定されない)のために有用であり得る。操作された糖型は、当業者に公知の任意の方法によって作製できる。前記方法は、例えば、操作されたまたは変種の発現株の使用、1つ以上の酵素(例えばDIN-アセチルグルコサミントランスフェラーゼIII(GnTIII))との共同発現、多様な生物または多様な生物に由来する細胞株でのFc領域を含む分子の発現、またはFc領域含有分子発現後の炭水化物の改変によって実施される。操作された糖型を生成する方法は当業界で公知であり、下記文献に記載された方法が含まれる(ただしそれらに限定されない):Umana et al., 1999, Nat. Biotechnol. 17: 176-180;Davies et al., 2001, Biotechnol. Bioeng. 74:288-294;Shields et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:26733-26740;Shinkawa et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:3466-3473;米国特許6,602,684号;米国特許出願No. 10/277,370;米国特許出願No. 10/113,929;国際特許出願公開WO 00/61739A1、WO 01/292246A1、WO 02/311140A1、WO 02/30954A1;POTILLEGENTTM技術(Biowa, Inc. Princeton, N.J.);GLYCOMABTMグリコシル化操作技術(GLYCART biotechnology AG, Zurich, Switzerland)(前記の各々は参照によってその全体が本明細書に含まれる)。例えば以下を参照されたい:国際特許出願公開WO 00/061739;米国特許出願公開No. 2003/0115614;Okazaki et al., 2004, JMB, 336: 1239-49。
【0080】
融合タンパク質:ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は融合タンパク質である。本技術の抗L1-CAM抗体は、第二のタンパク質と融合されるとき抗原性タグとして用いることができる。ポリペプチドと融合できるドメインの例には、異種シグナル配列だけでなく他の機能性異種領域もまた含まれる。融合は必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して生じることができる。さらにまた、本技術の融合タンパク質はまた操作して、抗L1-CAM抗体の特徴を改善することができる。例えば、追加のアミノ酸(特に荷電アミノ酸)の領域を抗L1-CAM抗体のN-末端に付加して、宿主細胞から精製している間、またはその後の操作および保存時の安定性および耐久性を改善することができる。さらにまた、ペプチド部分を抗L1-CAM抗体に付加して精製を促進することができる。そのような領域は抗L1-CAM抗体の最終調製の前に除去することができる。ポリペプチドの取扱い促進のためのペプチド部分の付加は周知であり、当業界では日常的技術である。本技術の抗L1-CAM抗体をマーカー配列(例えば融合ポリペプチドの精製を促進するペプチド)と融合させることができる。精選された実施態様では、マーカーアミノ酸配列は、とりわけヘキサヒスチジンペプチド(配列番号:79)、例えばpQEベクター(QIAGEN, Inc., Chatsworth, Calif)で提供されるタグであり、これらの多くは市場で入手できる。例えば以下に記載されているように(Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821-824, 1989)、ヘキサヒスチジン(配列番号:79)は、融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な別のペプチドタグ、“HA”タグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープと一致する(Wilson et al., Cell 37: 767, 1984)。
【0081】
したがって、上記に記載のこれら融合タンパク質のいずれも、本技術のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを用いて操作できる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する融合タンパク質はまたin vivoで半減期の延長を示す。
(IgGに起因する)ジスルフィド結合のダイマー構造を有する融合タンパク質は、モノマー型の分泌タンパク質またはタンパク質フラグメント単独と比較して、他の分子との結合および中和でより効率的であり得る(Fountoulakis et al., J. Biochem. 270: 3958-3964, 1995)。
同様に、EP-A-O 464 533(カナダの対応する特許公開2045869)は、免疫グロブリン分子定常領域の多様な部分を別のヒトタンパク質またはそのフラグメントとともに含む融合タンパク質を開示する。多くの事例で、融合タンパク質のFc部分は治療および診断で有益であり、したがって、例えば薬物動態学特性の改善をもたらすことができる(EP-A 0232 262参照)。また別に、融合タンパク質を発現、検出および精製した後で、Fc部分の欠失または改変を所望することが可能である。例えば、Fc部分は、融合タンパク質を免疫用抗原として用いる場合は治療および診断を妨害し得る。薬物発見では、高処理スクリーニングアッセイの目的で、ヒトタンパク質(例えばhIL-5)がFc部分と融合されて、hIL-5のアンタゴニストが識別された(Bennett et al., J. Molecular Recognition 8: 52-58, 1995;Johanson et al., J. Biol. Chem., 270: 9459-9471, 1995)。
【0082】
標識抗L1-CAM抗体:ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、標識部分(すなわち検出基)と合体される。抗L1-CAM抗体と複合体化される個々の標識または検出基は、前記が本技術の抗L1-CAM抗体とL1-CAMタンパク質との特異的結合に有意に干渉しないかぎり本技術の重大な特徴ではない。検出基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質であり得る。そのような検出可能標識は、免疫アッセイおよび画像診断の分野ではよく発達している。一般的には、そのような方法で有用なほぼ全ての標識を本技術に適用することができる。したがって、標識は分光的、光化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。本技術の実施で有用な標識には、磁性ビーズ(例えばDynabeadsTM)、蛍光色素(例えばフルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば3H、14C、35S、125I、121I、131I、112In、99mTc)、他の画像化剤、例えばミクロバブル(超音波画像用)、18F、11C、15O(陽電子放射断層撮影用)、99mTC、111In(単一光子放射断層撮影用)、酵素(セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAで通常的に用いられる他の酵素)、比色標識、例えばコロイド金または着色ガラスもしくはプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなどの)ビーズが含まれる。そのような標識の使用を記載する特許には、米国特許3,817,837号、3,850,752号、3,939,350号、3,996,345号、4,277,437号、4,275,149号、および4,366,241号が含まれる(各々は参照によってその全体が全ての目的のために本明細書に含まれる)。さらに以下もまた参照されたい:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene OR.)。
標識は、当業界で公知の方法にしたがい所望のアッセイ成分に直接的または間接的に合体させることができる。上記に示したように、多種多様な標識を用いることができ、標識の選択は、複数の要因(例えば要求される感受性、化合物との複合体化の容易さ、安定性要求、利用可能な装置、および処分規定)に左右される。
非放射性標識はしばしば間接的手段によって付加される。一般的には、リガンド分子(例えばビオチン)は分子に共有結合される。続いてリガンドはアンチリガンド(例えばストレプトアビジン)分子と結合し、前記は、本来的に検出可能であるか、またはシグナル系(例えば検出可能酵素、蛍光化合物または化学発光化合物)と共有結合される。多数のリガンドおよびアンチリガンドを用いることができる。リガンドが天然のアンチリガンド(例えばビオチン、チロキシンおよびコルチゾール)を有する場合、前記リガンドを標識された天然に存在するアンチリガンドと一緒に用いることができる。また別には、任意のハプテン系または抗原性化合物を抗体(例えば抗L1-CAM抗体)と組合わせて用いることができる。
【0083】
分子はまた、例えば酵素またはフルオロフォアとの複合体化によって、シグナル発生化合物と直接的に複合体化することができる。標識として着目される酵素は、主としてヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼであろう。標識部分として有用な蛍光化合物には、フルオレセイン化合物およびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれるが、ただし前記に限定されない。標識部分として有用な化学発光化合物には、例えばルシフェリンおよび2,3-ジヒドロフタラジンジオン、例えばルミノールが含まれるが、ただし前記に限定されない。用いることができる多様な標識またはシグナル生成系の概説には米国特許4,391,904号を参照されたい。
標識を検出する手段は当業者には周知である。したがって、例えば標識が放射性標識である場合、検出手段には、オートラジオグラフィーの場合のようなシンチレーション計数装置または写真撮影フィルムが含まれる。標識が蛍光標識の場合は、蛍光色素を適切な波長の光で励起し生じた蛍光を検出することによって標識を検出できる。蛍光は、写真撮影フィルムによって、電子的検出装置(電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管など)によって視覚的に検出できる。同様に、酵素標識は、酵素に適切な基質を提供し生じた反応生成物を検出することによって検出できる。最後に、簡単な比色標識は、標識に付随する色を観察することによって簡単に検出できる。したがって、多様なディップスティックアッセイで、複合体化された金はしばしば桃色に見え、一方、多様な複合体化されたビーズはビーズの色に見える。
いくつかのアッセイフォーマットは標識成分の使用を必要としない。例えば、凝集アッセイを用いて標的抗体(例えば抗L1-CAM抗体)の存在を検出できる。この事例では、抗原被覆粒子が標的抗体を含むサンプルによって凝集される。このフォーマットでは、成分のいずれも標識する必要が無く、標識抗体の存在は簡単な目視精査によって検出される。
【0084】
B.本技術の抗L1-CAM抗体の識別および特徴付け
本技術の抗L1-CAM抗体を識別およびスクリーニングする方法:L1-CAMポリペプチドに対する抗体を、L1-CAMタンパク質に対する所望の特異性を保有するものについて識別およびスクリーニングするために有用な方法には、当業界で公知の任意の免疫学的媒介技術が含まれる。免疫応答成分は、当業者に周知の多様な方法によってin vitroで検出できる。例えば、(1)細胞傷害性Tリンパ球を放射能標識標的細胞とともにインキュベートし、これら標的細胞の溶解を放射能の放出によって検出することができる;(2)ヘルパーT細胞を抗原および抗原提示細胞とともにインキュベートし、サイトカインの合成および分泌を標準的な方法によって測定することができる(Windhagen A et al., Immunity, 2: 373-80, 1995);(3)抗原提示細胞をタンパク質抗原全体とともにインキュベートし、MHCでの当該抗原の提示をTリンパ球活性化アッセイまたは生物物理的方法によって検出することができる(Harding et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 86: 4230-4, 1989);(4)肥満細胞をそれらのFc-イプシロン受容体と架橋する試薬とともにインキュベートし、ヒスタミン放出を酵素免疫アッセイによって測定することができる(Siraganian et al., TIPS, 4: 432-437, 1983);および(5)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)。
【0085】
同様に、モデル生物(例えばマウス)またはヒト対象動物の免疫応答生成物もまた、当業者に周知の多様な方法によって検出できる。例えば(1)ワクチン接種に応答する抗体産生は、臨床検査室で現在用いられている標準的方法(例えばELISA)によって容易に検出できる;(2)炎症部位への免疫細胞の遊走は、皮膚表面を引掻いて剥がし無菌容器に入れて引掻き部位を遊走する細胞を捕捉することによって検出できる(Peters et al., Blood, 72: 1310-5, 1988);(3)マイトジェンまたは混合リンパ球反応に応答する末梢血単核細胞(PBMC)の分裂増殖は3H-チミジンを用いて測定できる;(4)PBMCの顆粒球、マクロファージおよび他の食細胞の食細胞性能は、PBMCを標識粒子とともにウェルに入れることによって測定できる(Peters et al., Blood, 72: 1310-5, 1988);および(5)免疫系細胞の分化は、PBMCをCD分子(例えばCD4およびCD8)に対する抗体で標識してこれらマーカーを発現するPBMCの比を測定することによって決定できる。
【0086】
ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、複製可能遺伝子パッケージの表面でL1-CAMペプチドをディスプレーして選別される。例えば以下を参照されたい:米国特許5,514,548号、5,837,500号、5,871,907号、5,885,793号、5,969,108号、6,225,447号、6,291,650号、6,492,160号;EP585287;EP605522;EP616640;EP1024191;EP589877;EP774511;EP844306。所望の特異性を有する結合分子をコードするファージミドゲノムを含む繊維状バクテリオファージ粒子を生成/選別する有用な方法は記載されている。例えば、EP774511;US5871907;US5969108;US6225447;US6291650;US6492160を参照されたい。
いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、酵母宿主細胞表面のL1-CAMペプチドディスプレーを用いて選別される。酵母表面ディスプレーによるscFvポリペプチドの単離に有用な方法はKiekeらによって記載されている(Kieke et al., Protein Eng. 1997 Nov; 10(11): 1303-10)。
いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体はリボソームディスプレーを用いて選別される。リボソームディスプレーを用いるペプチドライブラリーでリガンドを識別するために有用な方法は文献に記載されている(Mattheakis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 9022-26, 1994;およびHanes et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 4937-42, 1997)。
ある種の実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、L1-CAMペプチドのtRNAディスプレーを用いて選別される。tRNAディスプレーを用いるリガンドのin vitro選別に有用な方法は、Merrymanらによって記載されている(Merryman et al., Chem. Biol., 9: 741-46, 2002)。
【0087】
ある実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体はRNAディスプレーを用いて選別される。RNAディスプレーライブラリーを用いてペプチドおよびタンパク質を選別するために有用な方法は、文献に記載されている(Roberts et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 12297-302, 1997;およびNemoto et al., FEBS Lett., 414: 405-8, 1997)。非天然RNAディスプレーライブラリーを用いてペプチドおよびタンパク質を選別するために有用な方法は、Frankelらによって記載されている(Frankel et al., Curr. Opin. Struct. Biol., 13: 506-12, 2003)。
いくつかの実施態様では、本技術の抗L1-CAM抗体は、グラム陰性細菌のペリプラズムで発現され、標識L1-CAMタンパク質と混合される(WO02/34886を参照されたい)。L1-CAMタンパク質に親和性を有する組換えポリペプチドを発現するクローンで、抗L1-CAM抗体と結合する標識L1-CAMタンパク質の濃度は増加し、Harveyら(Proc. Natl. Acad. Sci. 22: 9193-98 2004)および米国特許公開No. 2004/0058403に記載されるように当該細胞がライブラリーの残りの細胞から単離されるのを可能にする。
所望の抗L1-CAM抗体の選別後、当業者に公知の任意の技術(例えば原核または真核細胞発現など)によって前記抗体を大量に生成することができる。抗L1-CAM抗体(例えば抗L1-CAMハイブリッド抗体またはフラグメントであるがそれらに限定されない)は、抗体重鎖をコードする発現ベクターを構築する通常的な技術を用いることによって生成することができる。前記抗体重鎖では、CDRおよび必要な場合には可変領域フレームワークの最小限部分(前記最小限部分は元の種の抗体結合特異性の維持に必要であり、本明細書に記載の技術にしたがって操作される)は元の種の抗体に由来し、抗体の残余部は標的種の免疫グロブリンに由来し、前記は本明細書に記載するように操作することができ、それによってハイブリッド抗体重鎖発現のためのベクターを作製することができる。
【0088】
L1-CAM結合の測定:いくつかの実施態様では、L1-CAM結合アッセイは、L1-CAMタンパク質および抗L1-CAM抗体が当該タンパク質および当該抗体間で結合するために適切な条件下で混合され、当該タンパク質および当該抗体間の結合量が評価されるアッセイフォーマットを指す。結合量は適切なコントロールと比較される。前記コントロールは、L1-CAMタンパク質の非存在下での結合量、非特異的免疫グロブリン組成物の存在下での結合量、または両方であり得る。結合量は任意の適切な方法によって評価され得る。結合アッセイの方法には、例えばELISA、放射性免疫アッセイ、シンチレーション近接アッセイ、蛍光エネルギー移転アッセイ、液体クロマトグラフィー、膜ろ過アッセイなどが含まれる。抗L1-CAM抗体とのL1-CAMタンパク質の結合の直接測定のための生物物理アッセイは、例えば核磁気共鳴、蛍光、蛍光分極、表面プラズモン共鳴(BIACOREチップ)などである。特異的結合は、当業界で公知の標準アッセイ、例えば放射性リガンド結合アッセイ、ELISA、FRET、免疫沈澱、SPR、NMR(2D-NMR)、質量分析などによって決定される。候補の抗L1-CAM抗体の特異的結合が、抗L1-CAM抗体候補の非存在下で観察される結合より少なくとも1%大きい場合、当該抗L1-CAM抗体候補は本技術の抗L1-CAM抗体として有用である。
L1-CAM中和の測定:本明細書で用いられるように、“L1-CAM中和”は、抗L1-CAM抗体の結合によるL1-CAMタンパク質の活性および/または発現の減少を指す。L1-CAM活性/発現を中和する本技術の抗L1-CAM抗体の能力は、当業界で公知の方法を用いてin vitroまたはin vivoで評価され得る。
【0089】
本技術の抗L1-CAM抗体の使用
概説:本技術の抗L1-CAM抗体は、L1-CAMタンパク質の局在および/または定量に関して当業界で公知の方法で有用である(例えば適切な生理学的サンプル中のL1-CAMタンパク質のレベルの測定における使用、診断方法における使用、当該ポリペプチドの画像化における使用など)。本技術の抗体は、標準的技術(例えば親和性クロマトグラフィーまたは免疫沈澱)によってL1-CAMタンパク質を単離するために有用である。本技術の抗L1-CAM抗体は、宿主系で発現された組換え生成免疫反応性L1-CAMタンパク質と同様に、天然の免疫反応性L1-CAMタンパク質の生物学的サンプル(例えば哺乳動物の血清または細胞)からの精製を促進する。さらにまた、抗L1-CAM抗体を(例えば血漿、細胞溶解物または細胞懸濁物で)免疫反応性L1-CAMタンパク質を検出するために用いて、免疫反応性ポリペプチドの豊富さおよび発現パターンを評価することができる。本技術の抗L1-CAM抗体を診断に用いて、臨床検査手順の部分として組織の免疫反応性L1-CAMタンパク質レベルをモニターし、例えば施された治療レジメンの有効性を決定することができる。上記に特筆したように、検出は、本技術の抗L1-CAM抗体を検出可能な物質と合体させる(すなわち物理的に連結する)ことによって促進できる。
【0090】
L1-CAMタンパク質の検出:生物学的サンプル中の免疫反応性L1-CAMタンパク質の有無を検出する例示的な方法は、試験対象動物から生物学的サンプルを入手する工程および、当該生物学的サンプルを免疫反応性L1-CAMタンパク質を検出できる本技術の抗L1-CAM抗体と接触させて当該生物学的サンプルで免疫反応性L1-CAMタンパク質を検出する工程を必要とする。検出は、抗体に結合させた検出可能標識の手段によって達成され得る。
抗L1-CAM抗体に関して“標識される”という用語は、検出可能物質を抗体と合体させる(物理的に連結する)ことによる抗体の直接標識とともに、直接標識されるもう1つの化合物(例えば二次抗体)との反応性による抗体の間接標識を包含することが意図される。間接標識の例には、蛍光標識二次抗体を用いる一次抗体の検出、DNAプローブが蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようにビオチンによるDNAプローブの末端標識が含まれる。
いくつかの実施態様では、本明細書で開示される抗L1-CAM抗体は1つ以上の検出可能標識と複合体化される。そのような使用のために、抗L1-CAM抗体は、発色性、酵素性、放射性同位体、同位体性、蛍光性、毒性、化学発光性薬剤、核磁気共鳴造影剤または他の標識の共有結合または非共有結合によって検出できるように標識される。
適切な発色性標識の例には、ジアミノベンジジンおよび4-ヒドロキシアゾ-ベンゼン-2-カルボン酸が含まれる。適切な酵素標識の例には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、Δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
【0091】
適切な放射性同位体標識の例には、3H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pdなどが含まれる。111Inは、in vivo画像診断が用いられる場合の例示的同位体である。なぜならば、前記は、125Iまたは131I-標識L1-CAM結合抗体の肝臓による脱ハロゲン化の問題を回避するからである。加えて、この同位体は、画像診断のためにより好ましいガンマ放射エネルギーを有する(Perkins et al, Eur. J. Nucl. Med. 70:296-301, 1985;Carasquillo et al., J. Nucl. Med. 25:281-287, 1987)。例えば、1-(P-イソチオシアナトベンジル)-DPTAによりモノクローナル抗体と結合させた111Inは、非腫瘍性組織(特に肝臓)でほとんど取り込みを示さず、腫瘍局在の特異性を強化する(Esteban et al., J. Nucl. Med. 28:861-870, 1987)。適切な非放射性同位体標識の例には157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、および56Feが含まれる。
適切な蛍光標識の例には、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o-フタルアルデヒド標識、およびフルオレサミン標識が含まれる。適切な毒素標識にはジフテリア毒素、リシン、およびコレラ毒素が含まれる。
化学発光標識の例には、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびイクオリン標識が含まれる。核磁気共鳴造影剤の例には重金属核、例えばGd、Mnおよび鉄が含まれる。
本技術の検出方法を用いて、免疫反応性L1-CAMタンパク質をin vivoと同様に生物学的サンプルでin vitroで検出することができる。免疫反応性L1-CAMタンパク質のin vitro検出技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈澱、放射性免疫アッセイ、および免疫蛍光が含まれる。さらにまた、免疫反応性L1-CAMタンパク質のin vivo検出技術には、標識抗L1-CAM抗体の対象動物への導入が含まれる。例えば、抗L1-CAM抗体を放射能マーカーで標識し、対象動物におけるその存在および場所を標準的技術によって検出することができる。ある実施態様では、生物学的サンプルは試験対象動物由来のL1-CAMタンパク質を含む。
【0092】
免疫アッセイおよび画像診断:本技術の抗L1-CAM抗体を用い、生物学的サンプル(例えばヒト血漿)の免疫反応性L1-CAMタンパク質レベルを抗体系技術を用いてアッセイすることができる。例えば、組織のタンパク質発現は、古典的免疫組織化学的方法を用いて調べることができる(Jalkanen, M. et al., J. Cell. Biol. 101: 976-985, 1985;Jalkanen, M. et al., J. Cell. Biol. 105: 3087-3096, 1987)。タンパク質遺伝子の発現を検出するために有用な他の抗体系技術には、免疫アッセイ、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射性免疫アッセイ(RIA)が含まれる。適切な抗体アッセイの標識は当業界で公知であり、酵素標識(例えばグルコースオキシダーゼ)、および放射性同位体または他の放射能薬剤(例えばヨウ素(125I、121I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)およびテクネチウム(99mTc))、および緑色蛍光タンパク質(GFP)がビオチンとともに含まれる。
生物学的サンプルにおける免疫反応性L1-CAMタンパク質レベルのアッセイに加えて、本技術の抗L1-CAM抗体は、L1-CAMのin vivo画像診断のために用いることができる。この方法に有用な抗体には、X線撮影法、NMRまたはESRによって検出できるものが含まれる。X線撮影法の場合、適切な標識には放射性同位体、例えばバリウムまたはセシウムが含まれ、前記は検出可能な放射線を放射するが、対象動物に対して明白には有害ではない。NMRおよびESRのための適切なマーカーには、検出可能な特徴的スピンを有するもの(例えばデューテリウム)が含まれ、前記は対応するscFvクローンのための栄養素の標識によって抗L1-CAM抗体に取り込まれ得る。
適切な検出可能画像化部分で標識した抗L1-CAM抗体を、対象動物に(例えば経口的、皮下または腹腔内に)導入する。前記画像化部分は、例えば放射性同位体(例えば131I、112In、99mTc)、放射性不透明物質、または核磁気共鳴によって検出できる材料である。対象動物のサイズおよび用いられる画像化系が、診断画像の作製に必要とされる画像化部分の量を決定することは当業者には理解されるであろう。放射性同位体の事例では、ヒト対象動物の場合、注入される放射能の量は通常5から20ミリキューリーの範囲の99mTcである。続いて標識抗L1-CAM抗体が、特異的な標的ポリペプチドを含む細胞の場所に蓄積されるであろう。例えば、本技術の標識抗L1-CAM抗体は、対象動物内でL1-CAMタンパク質が限局している細胞および組織に蓄積されるであろう。
したがって、本技術は症状の診断方法を提供し、前記方法は以下の工程を必要とする:(a)個体の細胞または体液において本技術の抗L1-CAM抗体の結合を測定することによって、免疫反応性L1-CAMタンパク質の発現をアッセイする工程;(b)サンプルに存在する免疫反応性L1-CAMタンパク質の量を標準参照と比較する工程、ここで、標準物と比較して免疫反応性L1-CAMタンパク質レベルの増減が症状の指標である。
【0093】
親和性精製;本技術の抗L1-CAM抗体を用いて、サンプルの免疫反応性L1-CAMタンパク質を精製できる。いくつかの実施態様では、抗体は固体支持体に固定される。そのような固体支持体の例には、プラスチック(例えばポリカーボネート)、複合糖質(例えばアガロースおよびセファロース)、アクリル樹脂(例えばポリアクリルアミド)、およびラッテクスビーズが含まれる。抗体とそのような固体支持体を合体させる技術は当業界では周知である(Weir et al., “Handbook of Experimental Immunology” 4th Ed., Blackwell Scientific Publications, Oxford, England, Chapter 10, 1986;Jacoby et al., Meth. Enzym. 34 Academic Press, N.Y., 1974)。
抗原を抗体支持マトリックスに結合させるもっとも簡単な方法は、カラムにビーズを収集し抗原溶液をカラムに通すことである。この方法の有効性は、固定された抗体と抗原との間の接触時間に左右され、前記時間は低流速を用いることによって延長することができる。固定された抗体は、抗原が通過するときに抗原を捕捉する。また別には、抗原溶液を支持体(例えばビーズ)と混合し当該スラリーを回転させるかまたは揺らして抗原と固定抗体間の最大接触を可能にすることによって、抗原を抗体-支持体マトリックスと接触させることができる。結合反応が完了した後、ビーズの収集のためにスラリーをカラムに通す。適切な洗浄緩衝液を用いてビーズを洗浄し、続いて純粋なまたは実質的に純粋な抗原を溶出させる。
対象の抗体またはポリペプチドは固体支持体(例えばビーズ)と複合体化させることができる。加えて、第一の固体支持体(例えばビーズ)はまた、所望の場合には第二の固体支持体(第二のビーズまたは他の支持体であり得る)と複合体化させることができる。前記複合体化は、任意の適切な手段(ポリペプチドと支持体との複合体化について本明細書で開示する手段を含む)によって実施される。したがって、ポリペプチドと固体支持体の複合体化に関して本明細書で開示する複合体化の方法および手段のいずれも、第一および第二の固体支持体が同じであれ異なるものであれ、第一の支持体と第二の支持体との複合体化のためにも適用できる。
【0094】
ポリペプチドを固体支持体と複合体化させるために用いられる適切なリンカー(架橋剤であり得る)には、支持体の表面に存在する官能基、またはポリペプチドまたは両方と反応できる多様な薬剤が含まれる。架橋剤として有用な試薬には、ホモ二官能性および特にヘテロ二官能性試薬が含まれる。有用な二官能性架橋剤には、N-SIAB、ジマレイミド、DTNB、N-SATA、N-SPDP、SMCCおよび6-HYNICが含まれるが、ただし前記に限定されない。架橋剤は、ポリペプチドと固体支持体との間の結合の選択的切断を提供するために精選され得る。例えば、ポリペプチドを固体支持体から切断するための手段として、感光性架橋剤、例えば3-アミノ-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸を利用することができる(Brown et al., Mol. Divers, pp, 4-12, 1995;Rothschild et al., Nucl. Acids Res., 24:351-66, 1996;および米国特許5,643,722号)。他の架橋剤も当業者には周知である(例えば以下を参照されたい:Wong, 1991(上掲書);およびHermanson, 1996(上掲書))。
抗体またはポリペプチドは固体支持体(例えばビーズ)上に固定され得る。前記固定は、カルボキシル基官能化ビーズとポリペプチドのアミノ末端との間で形成される共有アミド結合を介するか、または反対にアミノ基官能化ビーズとポリペプチドのカルボキシル末端との間で形成される共有アミド結合を介する。加えて、二官能性トリチルリンカーが、支持体に、例えば樹脂(例えば(Wang樹脂))上の4-ニトロフェニル活性エステルに当該樹脂上のアミノ基またはカルボキシル基によりアミノ樹脂を介して結合され得る。二官能性トリチルによるアプローチを用いるとき、固体支持体は揮発酸(例えばギ酸またはトリフルオロ酢酸)による処理を要求し、ポリペプチドが切断され除去され得ることを担保することができる。そのような事例では、ポリペプチドは、固体支持体のウェルの底にまたは固体支持体の平らな表面に無ビーズパッチとして沈積され得る。マトリックス溶液の添加後、ポリペプチドはMS中に放出され得る。
【0095】
疎水性トリチルリンカーはまた、揮発酸または適切なマトリックス溶液(例えば3-HPAを含むマトリックス溶液)を用いることによって、酸感受性リンカーとして利用してポリペプチドからアミノ結合トリチル基を切断することができる。酸感受性もまた変化させることができる。例えば、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチルまたはトリメトキシトリチルは、当該ポリペプチドの適切なp-置換誘導体またはより酸感受性トリチルアミン誘導体に変化され得る。すなわちトリチルエーテルおよびトリチルアミン結合をポリペプチドに生じさせることができる。したがって、ポリペプチドを疎水性リンカーから、例えば疎水性引力の破壊によってまたは酸性条件下(所望の場合は典型的なMS条件を含み、この場合マトリックス(例えば3-HPA)は酸として働く)でトリチルエーテルまたはトリチルアミン結合を切断することによって取り出すことができる。
直交切断可能なリンカーもまた、第一の固体支持体(例えばビーズ)を第二の固体支持体に結合するために、または対象のポリペプチドを固体支持体に結合するために有用であり得る。そのようなリンカーを用いて、ポリペプチドを支持体から切断することなく、第一の固体支持体(例えばビーズ)を選択的に第二の固体支持体から切断できる。その後でポリペプチドを続いてビーズから切断することができる。例えば、ジスルフィドリンカー(還元剤(例えばDTT)を用いて切断できる)を利用して、ビーズを第二の固体支持体に結合することができ、さらに酸切断可能な二官能性トリチル基を用いポリペプチドを支持体に固定できよう。所望の場合、例えば第一の支持体と第二の支持体との間の結合を無傷にしたままで、ポリペプチドと固体支持体との結合を最初に切断することができる。トリチルリンカーは、複合体化の性質にかかわりなく、共有結合性または疎水性複合体化を提供することができ、トリチル基は酸性条件下で容易に切断される。
例えば、ビーズは連結基を介して第二の支持体と結合させることができ、前記連結基は、固体支持体とビーズの高密度結合またはビーズとポリペプチドの高密度結合が促進される長さおよび化学的性質を有するように選択できる。そのような連結基は、例えば“樹木様”構造を有し、それによって固体支持体上の一結合部位につき複数の官能基を提供することができる。そのような連結基の例には、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ペンタエリスロールおよびtris-ヒドロキシ-アミノメタンが含まれる。
【0096】
非共有結合性会合:非共有結合性相互作用を介して、抗体またはポリペプチドは固体支持体と複合体化でき、または第一の支持体もまた第二の支持体と複合体化できる。例えば、強磁性材料で製造された磁性ビーズ(前記は磁化され得る)は磁性固体支持体と引き合うことができ、磁場の除去によって支持体から解き放つことができる。また別には、固体支持体にイオン性部分または疎水性部分を提供し、イオン性部分または疎水性部分とポリペプチド(例えば結合されたトリチル基を含むポリペプチド)または疎水性の特徴を有する第二の固体支持体とそれぞれ相互作用することを可能にすることができる。
固体支持体にはまた特異的結合対のメンバーを提供することができ、したがって、相補的結合部分を含むポリペプチドまたは第二の固体支持体と複合体化することができる。例えば、アビジンまたはストレプトアビジンで被覆したビーズは、その中にビオチン部分を取り込ませたポリペプチドまたはビオチンもしくはビオチン誘導体(例えばイミノビオチン)で被覆した第二の固体支持体と結合することができる。
本明細書に開示のまたは当業界で公知の結合メンバーのいずれも逆にできることは理解されるべきである。したがって、例えばビオチンをポリペプチドまたは固体支持体に取り込むことができ、反対にアビジンまたは他のビオチン結合部分を支持体またはポリペプチドにそれぞれ取り込むことができよう。本明細書での使用に意図される他の特異的結合対には、ホルモンおよびそれらの受容体、酵素およびそれらの基質、ヌクレオチド配列およびその相補配列、抗体およびそれが特異的に相互作用する抗原、並びに当業者に公知の他の対が含まれるが、ただし前記に限定されない。
【0097】
A.本技術の抗L1-CAM抗体の診断的使用
概説:本技術の抗L1-CAM抗体は診断方法で有用である。したがって、本技術は、対象動物のL1-CAM活性の診断で当該抗体を用いる方法を提供する。本技術の抗L1-CAM抗体は、L1-CAMタンパク質に対して任意のレベルのエピトープ結合特異性および非常に高い結合親和性をもつものを選択することができる。一般的には、抗体の結合親和性が高ければ高いほど、より厳しい洗浄条件を免疫アッセイで実施して、標的ポリペプチドを除去することなく非特異的に結合した物質を除去することができる。したがって、診断アッセイで有用な本技術の抗L1-CAM抗体は、通常約108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1または1012 M-1の結合親和性を有する。さらにまた、診断試薬として使用される抗L1-CAM抗体は、標準的条件下で少なくとも12時間、少なくとも5時間、または少なくとも1時間で平衡に達する十分なカイネティック-オン速度を有する。
抗L1-CAM抗体を用い、多様な標準的アッセイフォーマットで免疫反応性L1-CAMタンパク質を検出することができる。そのようなフォーマットには、免疫沈澱、ウェスタンブロット形成、ELISA、放射性免疫アッセイ、および免疫測定アッセイが含まれる。以下を参照されたい:Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Publications, New York, 1988);米国特許3,791,932号、3,839,153号、3,850,752号、3,879,262号、4,034,074号、3,791,932号、3,817,837号、3,839,153号、3,850,752号、3,850,578号、3,853,987号、3,867,517号、3,879,262号、3,901,654号、3,935,074号、3,984,533号、3,996,345号、4,034,074号、および4,098,876号。生物学的サンプルは、対象動物の任意の組織または体液から入手できる。ある種の実施態様では、対象動物は癌病期の初期である。ある実施態様では、癌病期の初期は、対象動物から得られるサンプルのL1-CAMタンパク質のレベルまたは発現パターンによって決定される。ある種の実施態様では、サンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、羊水、脳脊髄液(CSF)、および生検体組織から成る群から選択される。
【0098】
免疫測定またはサンドイッチアッセイは本技術の診断方法の1つのフォーマットである。米国特許4,376,110号、4,486,530号、5,914,241号、および5,965,375号を参照されたい。そのようなアッセイは、固相に固定された1つの抗体(例えば抗L1-CAM抗体)または抗L1-CAM抗体の集団、および溶液中の別の抗L1-CAM抗体または抗L1-CAM抗体の集団を用いる。典型的には、溶液中の抗L1-CAM抗体または抗L1-CAM抗体の集団は標識される。抗体集団が用いられる場合、当該集団は、標的ポリペプチド内の種々のエピトープ特異性と結合する抗体を含むことができる。したがって、同じ集団を固相抗体および溶液抗体の両方に用いることができる。抗L1-CAMモノクローナル抗体が用いられる場合は、異なる結合特異性を有する第一および第二のL1-CAMモノクローナル抗体が固相および液相に用いられる。固相(“捕捉”とも称される)および溶液(“検出”とも称される)抗体を順番にまたは同時に標的抗原と接触させることができる。固相抗体を最初に接触させる場合、アッセイはフォワードアッセイであると称する。反対に、溶液抗体を最初に接触させる場合、アッセイはリバースアッセイであると称する。標的を両抗体と同時に接触させる場合、アッセイは同時アッセイと称される。L1-CAMタンパク質を抗L1-CAM抗体と接触させた後、サンプルをある期間インキュベートする。前記期間は通常約10分から約24時間まで変動し、通常は約1時間である。続いて、洗浄工程を実施して、診断試薬として用いられた抗L1-CAM抗体と非特異的に結合したサンプル成分を除去する。固相および溶液抗体が別々の工程で結合されるとき、洗浄は一方または両方の結合工程の後で実施できる。洗浄後、結合は、典型的には標識された溶液抗体の結合を介して固相に連結される標識を検出することによって定量される。通常は、与えられた抗体または抗体集団対および与えられた反応条件について、検量線が標的抗原の既知濃度を含むサンプルで調製される。続いて、検量線(すなわち標準曲線)から、被検サンプルの免疫反応性L1-CAMタンパク質の濃度を内挿によって読み取る。分析物は、平衡状態で結合している標識溶液抗体の量から、または平衡が達成される前の一連の時点で結合した標識溶液抗体のカイネティック測定によって決定され得る。そのような曲線のスロープはサンプル中のL1-CAMタンパク質の濃度の測定値である。
【0099】
上記の方法で用いられる適切な支持体には、例えばニトロセルロース膜、ナイロン膜、および誘導ナイロン膜、並びに粒子、例えばアガロース、デキストラン系ゲル、ディップスティック、顆粒、微小球、磁性粒子、試験管、マイクロタイターウェル、SEPHADEXTM(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway N.J.)などが含まれる。固定は吸着または共有結合性接着による。場合によって、抗L1-CAM抗体をリンカー分子(例えばビオチン)と結合させ、表面結合リンカー(例えばアビジン)に接着させることができる。
いくつかの実施態様では、本開示は、診断用薬剤と複合体化された本技術の抗L1-CAM抗体を提供する。診断用薬剤は、放射性または非放射性標識、造影剤(例えば磁性共鳴画像診断、コンピュータ支援断層撮影または超音波用)を含むことができ、放射性標識は、ガンマ-、ベータ-、アルファ-、オージェ電子-、または陽電子-放射同位体であり得る。診断用薬剤は、抗体部分(すなわち抗体または抗体フラグメントまたは準フラグメント)と複合体化されて投与される分子であり、前記は、抗原を含む細胞に局在することによって疾患の診断または検出で有用である。
【0100】
有用な診断用薬剤には、放射性同位体、色素(例えばビオチン-ストレプトアビジン複合体を伴う)、造影剤、蛍光化合物または分子、磁性共鳴画像診断(MRI)用強化剤(例えば常磁性イオン)が含まれるが、ただし前記に限定されない。米国特許6,331,175号は、MRI技術およびMRI強化剤と複合体化された抗体の調製を記載している(前記特許は参照によってその全体が本明細書に含まれる)。いくつかの実施態様では、診断用薬剤は、放射性同位体、磁性共鳴画像診断で使用される強化剤、および蛍光化合物から成る群から選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを付加するためには、抗体を長いテールを有する試薬と反応させねばならないことがある。当該長いテールに複数のキレート基がイオンを結合させるために接着される。そのようなテールは、ポリマー(例えばポリリジン、多糖類)、またはペンダント基を有する他の誘導鎖もしくは誘導可能鎖であり得る。前記ペンダント基に、キレート基、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシム、およびこの目的のために有用であることが判明している類似の基が結合される。キレートを本技術の抗体と標準的な技術を用いて合体させることができる。キレートは通常的に基によって抗体と連結され、前記基は、免疫反応性の損失を最小限にし、かつ凝集および/または内部架橋を最小限にしつつ分子との結合形成を可能する。キレートと抗体を複合体化させる他の方法および試薬は、米国特許4,824,659号に開示される。特に有用な金属-キレート組合せには2-ベンジル-DTPA並びにそのモノメチルおよびシクロヘキシルアナログが含まれ、前記は放射画像診断のための診断用同位体で用いられる。同じキレートは、非放射性金属(例えばマグネシウム、鉄およびガドリニウム)と複合体化される場合、本技術のL1-CAM抗体と一緒に用いられるときにMRIで有用である。大環状キレート、例えばNOTA(1,4,7-トリアザ-シクロノナン-N,N′,N″-三酢酸)、DOTA、およびTETA(p-ブロモアセトアミド-ベンジル-テトラエチルアミン四酢酸)は、それぞれ多様な金属および放射性金属(例えばガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種)とともに有用である。そのような金属-キレート複合体は、対象の金属に対して環のサイズを調整することによって安定化させることができる。他のDOTAキレートの例には以下が含まれる:(i)DOTA-Phe-Lys(HSG)-D-Tyr-Lys(HSG)-NH2;(ii)Ac-Lys(HSG)D-Tyr-Lys(HSG)-Lys(Tscg-Cys)-NH2;(iii)DOTA-D-Asp-D-Lys(HSG)-D-Asp-D-Lys(HSG)-NH2;(iv)DOTA-D-Glu-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2;(v)DOTA-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2;(vi)DOTA-D-Ala-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2;(vii)DOTA-D-Phe-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-NH2;(viii)Ac-D-Phe-D-Lys(DOTA)-D-Tyr-D-Lys(DOTA)-NH2;(ix)Ac-D-Phe-D-Lys(DTPA)-D-Tyr-D-Lys(DTPA)-NH2;(x)Ac-D-Phe-D-Lys(Bz-DTPA)-D-Tyr-D-Lys(Bz-DTPA)-NH2;(xi)Ac-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2;(xii)DOTA-D-Phe-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2;(xiii)(Tscg-Cys)-D-Phe-D-Lys(HSG)-D-Tyr-D-Lys(HSG)-D-Lys(DOTA)-NH2;(xiv)Tscg-D-Cys-D-Glu-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2;(xv)(Tscg-Cys)-D-Glu-D-Lys(HSG)-D-Glu-D-Lys(HSG)-NH2;(xvi)Ac-D-Cys-D-Lys(DOTA)-D-Tyr-D-Ala-D-Lys(DOTA)-D-Cys-NH2;(xvii)Ac-D-Cys-D-Lys(DTPA)-D-Tyr-D-Lys(DTPA)-NH2;(xviii)Ac-D-Lys(DTPA)-D-Tyr-D-Lys(DTPA)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2;および(xix)Ac-D-Lys(DOTA)-D-Tyr-D-Lys(DOTA)-D-Lys(Tscg-Cys)-NH2。
他の環型キレート、例えば大環状ポリエーテルもまた意図され、前記は核種(例えばRAITのための223Ra)を安定的に結合させるために有益である。
【0101】
B.本技術の抗L1-CAM抗体の治療的使用
本技術の免疫グロブリン関係組成物(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント)は、L1-CAM関連癌の治療に有用である。そのような治療は、病理学的に高レベルのL1-CAMを有すると識別された患者(例えば本明細書に記載の方法によって診断された患者)またはそのような病理学的的レベルと関連することが知られている疾患を有すると診断された患者で用いることができる。ある特徴では、本開示は、L1-CAM関連癌をその必要がある対象動物で治療する方法を提供し、前記方法は、本技術の抗体(またはその抗原結合フラグメント)の有効量を対象動物に投与する工程を含む。本技術の抗体によって治療できる癌の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):白血病、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、多形性神経膠芽腫、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮癌、三陰性乳癌、メラノーマ、明細胞腎細胞癌、褐色細胞腫および傍神経節腫、中皮腫、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵管癌、結腸癌、膵臓癌、肝細胞癌腫、胃癌、胆管癌腫、カルチノイド、神経内分泌腫瘍、胃腸管間質腫(GIST)、褐色細胞腫、神経膠腫、膵臓の神経外胚葉癌、膵臓の腺癌腫、結腸直腸癌、腎細胞癌腫、血管腫、軟骨肉腫、食道の腺癌腫、乏突起神経膠腫、星状細胞腫、上衣腫、膵臓の神経内分泌癌腫、副腎腺腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、卵巣の顆粒細胞腫瘍、シュワン細胞腫、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)、類上皮肉腫、鼻腔神経芽細胞腫、髄芽腫、毛細血管腫、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、顎下腺の癌、および頭頸部の扁平上皮癌。
【0102】
本技術の組成物を、L1-CAM関連癌の治療で有用な他の治療薬剤と一緒に用いることができる。例えば、本技術の抗体を以下から成る群から選択される少なくとも1つの追加の治療薬剤と別々に、逐次的にまたは同時に投与することができる:アルキル化剤、白金剤、タキサン、ビンカ剤、抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、卵巣抑制剤、VEGF/VEGFR阻害剤、EGF/EGFR阻害剤、PARP阻害剤、細胞増殖抑制アルカロイド、細胞傷害性抗生物質、抗代謝剤、内分泌/ホルモン剤、ビスホスホネート療法剤および標的誘導生物学的治療剤(例えばUS 6306832、WO 2012007137、WO 2005000889、WO 2010096603などに記載の治療用ペプチド)。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの追加の治療薬剤は化学療法剤である。具体的な化学療法剤には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):シクロホスファミド、フルオロウラシル(または5-フルオロウラシルもしくは5-FU)、メトトレキセート、エダトレキセート(10-エチル-10-デアザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾルミド、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、リュープロリド、アバレリクス、ブセルリン、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブ、アントラサイクリン(例えばダウノルビシンおよびドキソルビシン)、ベバシズマブ、オキサリプラチン、メルファラン、エトポシド、メクロレタミン、ブレオマイシン、微小管毒、バンレイシ科アセトゲニン、またはそれらの組合せ。
【0103】
本技術の組成物は、場合によってただ1回のボーラスとしてその必要がある対象動物に投与される。また別に、投与レジメンは、腫瘍の出現後多様な時期に実施される複数の投与を含む。
投与は任意の適切なルートによって実施でき、前記ルートには、経口、鼻内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、直腸、頭蓋内、髄腔内、または局所投与が含まれる。投与には自己投与および別人による投与が含まれる。さらに理解されるべきことは、記載の症状の治療における多様な態様は“実質的”を意味することが意図されることである。“実質的”は完全治療を含むが、完全治療未満を含み、その場合にはいくらかの生物学的または臨床的に対応する成果が達成される。
いくつかの実施態様では、本技術の抗体は、その必要がある対象動物に1用量以上で投与することができる医薬処方物を含む。投薬レジメンは、所望の応答(例えば治療的応答)を提供するために調整することができる。
【0104】
典型的には、本技術の抗体組成物の有効量(治療効果の達成に十分である)は、1日当たり体重1キログラムにつき約0.000001mgから1日当たり体重1キログラムにつき約10,000mgの範囲である。典型的には、投薬量範囲は、1日当たり体重1キログラムにつき約0.0001mgから1日当たり体重1キログラムにつき約100mgである。抗L1-CAM抗体の投与のためには、投薬量は、毎週、2週間毎または3週間毎に対象動物の体重1kgにつき約0.0001から100mg、より通常的には0.01から5mgの範囲である。例えば、投薬量は、毎週、2週間毎または3週間毎に1mg/kg体重または10mg/kg体重であるか、または毎週、2週間毎または3週間毎に1-10mg/kgの範囲内であり得る。ある実施態様では、抗体の単一投薬量は体重1kgにつき0.1-10,000マイクログラムの範囲である。ある実施態様では、担体中の抗体濃度はデリバリーされる1ミリリットルにつき0.2から2000マイクログラムの範囲である。例示的な治療レジメンは、2週間毎に1回または1ヶ月に1回または3から6ヵ月毎に1回の投与を必要とする。抗L1-CAM抗体は複数回投与され得る。単一投薬間の間隔は、時間単位、日にち単位、週単位、月単位または年単位であり得る。間隔はまた、対象動物での抗体の血液レベルを測定することによって指示されるように不規則であることができる。いくつかの方法では、投薬量は、対象動物で約75μg/mLから約125μg/mL、100μg/mLから約150μg/mL、約125μg/mLから約175μg/mL、または約150μg/mLから約200μg/mLの血清抗体濃度を達成するために調整される。また別には、抗L1-CAM抗体は持続放出組成物として投与でき、この事例では、より少ない投与頻度が要求される。投薬量および頻度は、対象動物における抗体の半減期にしたがって変動する。投薬量および投与頻度は、治療が予防的であるかまたは治療的であるかにより変動する。予防的適用では、比較的低い投薬量が比較的低頻度の間隔で長期間にわたって投与される。治療的適用では、比較的短い間隔で比較的高い投薬量が、疾患の進行が減速するかもしくは停止するまで、または対象動物が疾患の症候の部分的もしくは完全な緩和を示すまで往々にして要求される。その後、患者は予防的レジメンを施され得る。
【0105】
別の特徴では、本開示は、対象動物の腫瘍をin vivoで検出する方法を提供し、前記方法は以下の工程を含む:(a)本技術の抗体(またはその抗原結合フラグメント)の有効量を対象動物に投与する工程(ここで、当該抗体はL1-CAMを発現する腫瘍に局在するように設計され、放射性同位体で標識される);および(b)抗体によって放射される、参照値より高い放射能レベルを検出することによって対象動物で腫瘍の存在を検出する工程。いくつかの実施態様では、参照値は1グラム当たりの注射線量(%ID/g)として表現される。参照値は、非腫瘍(正常)組織に存在する放射能レベルを測定し、非腫瘍(正常)組織に存在する平均放射能レベル±標準偏差をコンピュータで計算することによって計算できる。いくつかの実施態様では、腫瘍と正常組織間の放射能レベルの比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、または100:1である。
いくつかの実施態様では、対象動物は、癌を有すると診断されるか。または癌を有すると疑われる。抗体によって放射される放射能レベルは、陽電子放射断層撮影法または単光子放射コンピュータ断層撮影法を用いて検出できる。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、放射性核種と複合体化された本技術の抗体を含む免疫複合体の有効量を対象動物に投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、放射性核種は、アルファ粒子放射同位体、ベータ粒子放射同位体、オージェ-エミッター、またはそれらの任意の組合せである。ベータ粒子放射同位体の例には、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、および67Cuが含まれる。アルファ粒子放射同位体の例には、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、および255Fmが含まれる。オージェ-エミッターの例には、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、および203Pbが含まれる。当該方法のいくつかの実施態様では、正常組織の非特異的FcR依存結合は排除または軽減される(例えばFc領域のN297A変異を介する(前記変異は非グリコシル化をもたらす))。そのような免疫複合体の治療有効性は、腫瘍曲線下面積(AUC):正常組織AUC比をコンピュータで計算することによって決定できる。いくつかの実施態様では、免疫複合体は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、または100:1の腫瘍AUC:正常組織AUC比を有する。
【0106】
毒性:最適には、本明細書に記載する抗L1-CAM抗体の有効量は、実質的な毒性を対象動物に引き起こすことなく治療的恩恵を提供するであろう。本明細書に記載する抗L1-CAM抗体の毒性は、細胞培養または実験動物での標準的な製薬手順によって、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)またはLD100(集団の100%に致死的な用量)の測定によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療インデックスである。これらの細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを、ヒトで使用するために有害でない投薬範囲の公式化に用いることができる。本明細書に記載する抗L1-CAM抗体の投薬量は、ほとんどまたは全く毒性がない有効用量を含む循環濃度の範囲内に存在する。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与ルートに応じて前記範囲内で変動し得る。的確な処方、投与ルートおよび投薬量は、対象動物の状態に照らして個々の医師が選択できる。例えば以下を参照されたい:Fingl et al., In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, 1975。
【0107】
医薬組成物の処方:本技術の方法にしたがえば、抗L1-CAM抗体を投与に適した医薬組成物に取り込むことができる。医薬組成物は、一般的には、組換え体または実質的に精製された抗体、および対象動物への投与に適切な形態の医薬的に許容できる担体を含む。医薬的に許容できる担体は、部分的には、投与される具体的な組成物とともに組成物を投与するために用いられる具体的な方法によって決定される。したがって、抗体組成物の投与のために適切である種々多様な医薬組成物の処方が存在する(例えば以下を参照されたい:Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA 18th ed., 1990)。一般的には、医薬組成物は、無菌的な実質的に等張であり、かつ完全に法令(Good Manufacturing Practice (GMP) regulations of the U.S. Food and Drug Administration)を遵守するように処方される。
“医薬的に許容できる”、“生理学的に耐え得る”、およびその文法的変形である用語は、それらが組成物、担体、希釈剤および試薬に関するときには互換的に用いられ、望ましくない生理学的作用を当該組成物の投与を禁止するほどに生じることなく、対象動物に投与できる物質を表す。例えば、“医薬的に許容できる賦形剤”は、医薬組成物の調製で有用であり、一般的には安全で非毒性で望ましい賦形剤を意味し、人間用医薬の使用と同様に獣医の使用にも許容し得る賦形剤を含む。そのような賦形剤は固体、液体、半固体で、エーロゾル組成物の事例では気体であり得る。“医薬的に許容できる塩およびエステル”は、医薬的に許容でき、かつ望ましい薬理学特性を有する塩およびエステルを意味する。そのような塩には、組成物に存在する酸性陽子が無機または有機塩基と反応する能力を有する場合に形成される塩が含まれる。適切な無機塩には、アルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムとともに形成されるものが含まれる。適切な有機塩には、有機塩基、例えばアミン塩基(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなど)とともに形成されるものが含まれる。そのような塩にはまた、無機酸(例えば塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びにアルカン-およびアレーン-スルホン酸(例えばメタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸))とともに形成される酸付加塩が含まれる。医薬的に許容できるエステルには、抗L1-CAM抗体に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ、およびホスホノキシ基から形成されるエステル、例えばC1-6アルキルエステルが含まれる。2つの酸性基が存在する場合、医薬的に許容できる塩またはエステルは一酸-一塩もしくはエステルまたは二塩もしくはエステルであることができ、同様に3つ以上の酸性基が存在する場合には、そのような基のいくつかまたは全てが塩化またはエステル化され得る。本技術で示す抗L1-CAM抗体は、非塩化もしくは非エステル化形で、または塩化および/またはエステル化形で存在することができ、抗L1-CAM抗体の呼称は、本来の(非塩化および非エステル化)の化合物およびその医薬的に許容できる塩およびエステルを含むことが意図される。さらにまた、本技術のある種の実施態様は、2つ以上の立体異性体形で存在することができ、抗L1-CAM抗体の呼称は、全ての単独立体異性体およびそのような立体異性体の全ての混合物(ラセミであれそれ以外であれ)を含むことが意図される。本技術の具体的な薬物および組成物の投与のための適切なタイミング、順序および投薬量の決定に、当業者は何ら困難を有しないであろう。
【0108】
そのような担体または希釈剤の例には、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、ただし前記に限定されない。リポソームおよび非水性ビヒクル(例えば不揮発性油)もまた用いることができる。医薬的に活性な物質のためにそのような媒体および化合物を使用することは当業界で周知である。通常的な媒体または化合物が抗L1-CAM抗体に適合しない場合を除いて、組成物でそれらを使用することは意図される。補助的活性化合物もまた組成物に取り入れることができる。
本技術の医薬組成物は、その意図される投与ルートに適合するように処方される。本技術の抗L1-CAM抗体組成物は、非経口、外用、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、鼻内、もしくは筋肉内ルートによって投与されるか、または吸入薬である。抗L1-CAM抗体は、場合によって、多様なL1-CAM関連癌の治療で少なくとも部分的に有効な他の薬剤と併用して投与することができる。
経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁物は、以下の成分を含むことができる:無菌的希釈剤、例えば注射水、食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌化合物、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば酢酸、クエン酸、またはリン酸;および張度を調整する化合物、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基(例えば塩酸または水酸化ナトリウム)で調整することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラス製もしくはプラスチック製マルチ用量バイアルに封入できる。
【0109】
注射が可能な使用に適した医薬組成物は、無菌的水性溶液(水溶性の場合)または懸濁液、および無菌的注射用溶液もしくは懸濁液の即席調製のための無菌的粉末を含む。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理学的食塩水、制菌水、Cremophor ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。全ての事例で、組成物は無菌的でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、微生物(例えば細菌および真菌)の夾雑作用から保存される必要がある。担体は溶媒または分散媒体であり、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および流動ポリエチレングリコールなど)および適切な前記の混合物を含むことができる。適切な流動性は、例えばコーティング(例えばレシチン)の使用によって、分散液の事例では必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。微生物作用の防止は、多様な抗菌および抗真菌化合物、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多くの事例で、等張化合物、例えば砂糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含むことが所望されるであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる化合物(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物に含むことによって生じ得る。
無菌的な注射可能溶液は、本技術の抗L1-CAM抗体を必要な場合には上記に列挙した成分の1つとともに適切な溶媒に必要とされる量で取り込み、続いてろ過滅菌することによって調製できる。一般的には、分散液は無菌的ビヒクルに抗L1-CAM抗体を取り込むことによって調製され、前記ビヒクルは、基本的分散媒体および上記に列挙したもののうち必要とされる他の成分を含む。無菌的注射可能溶液を調製するための無菌的粉末の事例では、調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、前記によって、活性成分プラス以前にろ過滅菌された当該溶液に由来する任意の所望される追加成分が得られる。本技術の抗体は、デポー注射または移植調製物(活性成分の持続性または拍動性放出を可能にする態様で処方され得る)の形態で投与することができる。
【0110】
経口組成物は不活性希釈剤または可食担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入されるか、または打錠される。経口治療薬投与のために、抗L1-CAM抗体は賦形剤とともに取り込まれ、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で用いられる。経口組成物はまた、口内洗浄として用いるために液性担体を用いて調製でき、この場合、液性担体中の化合物は口内に適用されてサッと口内を一巡し、吐き出されるかまたは嚥下される。医薬的に適合する化合物および/またはアジュバント物質を組成物の部分として取り込むことができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分または同様な性質の化合物のいずれかを含むことができる:結合剤、例えば微晶質セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトース;崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲルもしくはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterotes);滑剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味化合物、例えばシュクロースもしくはサッカリン;または香味化合物、例えばペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料。
吸入による投与の場合、抗L1-CAM抗体は、加圧容器もしくはディスペンサー(推進剤、例えば気体(例えば二酸化炭素)を含む)またはネブライザーからエーロゾルスプレーの形態でデリバリーされる。
【0111】
全身投与はまた経粘膜または経皮手段を介することができる。経粘膜または経皮投与のためには、障壁を浸透するために適切な浸透剤が処方物で用いられる。一般的にはそのような浸透剤は当業界で公知であり、例えば、洗剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は鼻内スプレーまたは座薬の使用によって達成できる。経皮投与のためには、抗L1-CAM抗体は、当業界で一般的に知られているように軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームで処方される。
抗L1-CAM抗体はまた、座薬(例えば通常的な座薬基剤(例えばカカオ脂および他のグリセリド)を用いる)または直腸デリバリーのための保持浣腸剤の形態で医薬組成物として調製できる。
ある実施態様では、抗L1-CAM抗体は、身体からの急速な排除に対して抗L1-CAM抗体を保護する担体を用いて調製され、前記は例えば制御放出処方物であり、埋込み物およびマイクロカプセル化デリバリー系が含まれる。生物分解性、生体適合性ポリマーを用いることができ、前記は、例えば、酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸である。そのような処方物の調製方法は当業者には明白であろう。当該材料はまた市場でアルザ社およびノバ社(Alza Corporation;およびNova Pharmaceuticals, Inc)から入手できる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に標的誘導されるリポソームを含む)もまた、医薬的に許容できる担体として用いることができる。これらは、当業者に公知の方法にしたがって調製でき、当該方法は米国特許4,522,811号に記載されている。
【0112】
C.キット
本技術はL1-CAM関連癌を検出および/または治療するキットを提供し、前記は、本技術の少なくとも1つの免疫グロブリン関係組成物(本明細書に記載する任意の抗体または抗原結合フラグメント)、またはその機能的変種(例えば置換変種)を含む。場合によって、本技術のキットの上記記載成分は適切な容器に詰められ、L1-CAM関連癌の診断および/または治療のためのラベルが付される。上述の成分は、一ユニット容器またはマルチ用量容器(例えば封入アンプル、バイアル、ボトル、注射器、および試験管)に、水性(好ましくは無菌的)溶液として、または再構成のための凍結乾燥(好ましくは無菌的)処方物として保存され得る。キットはさらにまた第二の容器を含むことができ、前記容器は、医薬組成物をより大きな体積に希釈するために適切な希釈剤を保持する。適切な希釈剤には、当該医薬組成物の医薬的に許容できる賦形剤および食塩水溶液が含まれるが、ただし前記に限定されない。さらにまた、キットは、医薬組成物の希釈の指示および/または医薬組成物の投与の指示(希釈するか否かにかかわらず)を含むことができる。容器は、多様な材料(例えばガラスまたはプラスチック)から形成でき、無菌的なアクセス口を有することができる(例えば、容器は静脈内溶液用バッグまたはストッパー付きバイアル(ストッパーは皮下注射針によって穿刺できる)であり得る。キットはさらにまたより多くの容器を含むことができ、それらは、医薬的に許容できる緩衝液(例えばリン酸緩衝食塩水)、リンゲル液およびデキストロース溶液を含む。キットは、さらにまた市場および使用者の見地から所望される他の物質を含むことができ、それらには、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、1つ以上の適切な宿主のための培養液が含まれる。キットは、場合によって、治療用または診断用製品の市販パッケージに慣例的に含まれる指示を含むことができ、前記指示は、例えば適応症、用法、投薬量、製造、投与、禁忌についての情報および/またはそのような治療用または診断用製品の使用に関する警告を含む。
【0113】
キットは、免疫反応性L1-CAMタンパク質の存在を生物学的サンプルで検出するために有用であり、前記生物学的サンプルには、例えば任意の体液(例えば血清、血漿、リンパ、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水または血液が含まれるが、ただし前記に限定されない)および身体組織の生検サンプルが含まれる。例えば、キットは以下を含む:生物学的サンプル中のL1-CAMタンパク質と結合できる、本技術の1つ以上のヒト化、キメラ、または二重特異性抗L1-CAM抗体(またはその抗原結合フラグメント);サンプル中のL1-CAMタンパク質の量を決定するための手段;およびサンプル中の免疫反応性L1-CAMタンパク質の量を標準物と比較するための手段。抗L1-CAM抗体の1つ以上は標識され得る。キットの成分(例えば試薬)は適切な容器に詰めることができる。キットはさらにまた、免疫反応性L1-CAMタンパク質の検出のためにキットを使用する指示を含むことができる。
抗体系キットの場合、キットは例えば以下を含む:1)固体支持体に結合されている第一の抗体、例えば本技術のヒト化、キメラまたは二重特異性L1-CAM抗体(またはその抗原結合フラグメント)、前記はL1-CAMタンパク質と結合する;2)L1-CAMタンパク質または第一の抗体と結合する第二の異なる抗体、前記は検出可能標識と複合体化される。
キットはまた、例えば緩衝剤、保存料またはタンパク質安定化剤を含む。キットはさらにまた、検出可能標識を検出するために必要な成分(例えば酵素または基質)を含むことができる。キットはまた、コントロールサンプルまたはコントロールサンプルシリーズを含むことができ、それらをアッセイして試験サンプルと比較することができる。キットの各成分は個々の容器に封入され、多様な容器のいずれも単一のパッケージ内に、キットを用いて実施されるアッセイの結果を解釈するための指示と一緒に存在する。前記記述物は、例えばL1-CAMタンパク質のin vitroまたはin vivoの検出のために、またはその必要がある対象動物でのL1-CAM関連癌の治療のために、キットに収められた試薬をどのように使用するかを説明する。ある種の実施態様では、試薬の使用は本技術の方法にしたがうことができる。
実施例
本技術をさらにまた以下の実施例によって例証するが、これらの実施例は、如何なる態様においても制限と解されるべきではない。以下の実施例は、本技術の例示的L1-CAM抗体の調製、特徴付けおよび使用を示す。実施例1-11は本技術のキメラ抗体、ヒト化抗体および二重特異性抗体の生成、並びにそれらの結合特異性およびin vivoの生物学的活性の特徴付けを示す。
【実施例1】
【0114】
本技術の抗L1-CAM抗体の作出および特徴付けのための材料と方法
免疫組織化学(IHC):IHCのためのヒト腫瘍および正常組織の使用は、スローンケタリング癌センター研究所内監査委員会(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center institutional review board)によって承認された。瞬間凍結組織の5から7ミクロンメートル切片をアセトンで30分間-20℃で固定した。内因性ビオチン結合活性を、アビジンおよびビオチン(ベクターアビジン-ビオチン封鎖キット(Invitrogen, Carlsbad, CA))の連続処理(各々20分間)とそれに続く室温で1時間の10%ウマ血清ブロッキングによってブロッキングした。続いて、切片を逐次的に一次抗体、ビオチン化ウマ抗マウスIgG(H+L)(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA)およびアビジン-ビオチン複合体(ベクタスタチンABCキット(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA))でそれぞれ60分間室温で反応させ、各反応の間で洗浄した。その後、切片を色素(DABペルオキシダーゼ基質キット(Vector Laboratories, Burlingame, CA))で2分間染色して洗浄し、マイヤーのヘマトキシリンで対比染色して洗浄し、95%エチルアルコールで脱水した。
E71およびE72のキメラおよびヒト化フォーマットの構築:ヒトホモログを基にして、E71およびE72の重鎖および軽鎖の両方のCDR配列をヒトIgG1フレームワークに移植し最適化した。huE71およびhuE72遺伝子を合成し(Blue Heron Biotechnology, Bothhell, WA or Genscript, Piscataway, NY)、哺乳動物発現ベクター(Eureka, CA)に取り込み、安定的生成のためにDG44細胞またはCHO-S細胞にトランスフェクトした。同様に、ヒトVHおよびVL配列をヒトIgG4フレームワークに移植してIgG4組換え抗体を作製した。最後に、GnT1酵素を欠くDG44細胞にこれらの遺伝子をトランスフェクトして、固有のIgG1糖型を作製した。
【0115】
キメラ化またはヒト化E71およびE72の精製:huE71およびhuE72産生株をOpticho無血清培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)またはPowerCHO-2(Lonza, Basel, Switzerland)で培養し、成熟上清を採集した。プロテインA親和性カラムを25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(0.15M NaCl、pH8.2)で予備平衡化した。結合したhuE71およびhuE72を0.1Mクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.9)で溶出し、25mMクエン酸ナトリウム(pH8.5)中でアルカリ化した(1:10 v/v比)。前記をSartobind-Q膜に通し、25mMクエン酸ナトリウム(0.15M NaCl, pH 8.2)中で5‐10mg/mLに濃縮した。各々2μgのタンパク質をSDS-PAGEで、4-15%のトリス-グリシンレディゲル系(Bio-Rad, Hercules, CA)を用い非還元または還元条件下で分析した。インビトロゲンのSeeBlue Plus2前染色標準物(Invitrogen, Carlsbad, CA)をタンパク質分子量マーカーとして用いた。電気泳動後、GelCodeブルー染色試薬(Pierce Biotechnology, Waltham, MA)を用いてゲルを染色した。Bio-Rad Fluor-Sマルチイメージャー(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて前記ゲルをスキャンし、Quantity Oneソフトウェア(Bio-Rad, Hercules, CA)でバンドを定量した。
Biacore T-100バイオセンサー(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)によるin vitro結合カイネティクス:CM5センサーチップ(研究グレード)および関連試薬はBiacore USA(Piscataway, NJ)から購入した。抗原L1-CAM-FcまたはL1-CAM-Hisは、製造業者の指示にしたがってCM5センサーチップに直接固定した。精製モノクローナル抗体(MoAb)(マウス、キメラIgG1およびIgG4、並びにE71およびE72のヒト化OgG1およびIgG4バージョン、並びにそれらのIgG1n糖型)を変動濃度(41.7~666.7nM)でHBS-EP緩衝液で分析前に希釈した。サンプルはセンサー表面に30μL/分の流速で1分かけて注いだ。結合時間は1分に設定し、解離時間は5分から15分に設定した。各サイクルの終了時に、表面を50mMのNaOHを50μL/分の流速で用い1分かけて再生した。データを二価アナライトモデルおよびBiacore T-100評価ソフトウェアによる規定パラメータ設定を用いて分析し、速度一定での見かけの結合(kon)、速度一定での解離(koff)および平衡解離定数(Kd=koff/kon)を計算した。
【0116】
51
クロム放出アッセイ:ADCCアッセイの場合、エフェクター細胞は健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)とした。エフェクター細胞:標的細胞(E:T)比は50:1であった。T細胞傷害性アッセイの場合、エフェクターT細胞を抗CD3および抗CD28の存在下で約14日間in vitroで培養し、10:1のE:T比で用いた。PBSに2mMのEDTAを用いて全ての標的腫瘍細胞を採集し、51Cr(Amersham, Arlington Height, IL)を用いて100μCi/106細胞で37℃、1時間標識したウェル当たり5000標的細胞を96ウェルのポリスチレン丸底プレート(BD Biosciences, Bedford, MA)に最終体積250μL/ウェルで抗体と一緒に添加した。10単位/mLのIL2をADCCアッセイのために添加した。プレートを37℃で4時間インキュベートした。上清の51Cr放出をγ-カウンター(Packed Instrument, Downers Grove, IL)で計数した。特異的放出パーセンテージを以下の式で計算した:
(実験cpm-バックグラウンドcpm)/(全cpm-バックグラウンドcpm)x100%
式中、cpmは51Cr放出の毎分の計数である。全放出は10%SDS(Sigma(St Louis, Mo))による溶解によって評価し、バックグラウンド放出はエフェクター細胞の非存在下で測定した。EC50は、シグマプロット(Sigmaplot)またはグラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを用いて計算した。
異種移植マウスのMoAb生体分布:雌無胸腺ヌードマウスを業者から購入した(Harlan Sprague Dawley, Inc(Indianapolis, IN))。全ての手順は、当研究所(スローンケタリング記念癌センター)の動物管理使用委員会が承認したプロトコルおよび当研究所の実験動物の適切な人道的使用のためのガイドラインにしたがって実施された。腫瘍細胞を採集し、マトリゲル(Matrigel(BD Biosciences, Bedford, MA))に再懸濁した。細胞(2-10x106)をマウスの脇腹の皮下に22ゲージ針を用い0.1mLの体積で移植した。処置を開始する前に腫瘍を~200mm3のサイズに増殖させた。樹立腫瘍を有するマウスをランダムに複数の治療グループに分けた。マウス当たり100μCiの放射性ヨウ素化抗体を静脈内に注射し、通常48時間で動物を犠牲にし、それらの器官を取り出し、ガンマカウンター(Packard Instruments, Perkin Elmer, Waltham, MA)で計数した。これらの器官には皮膚、肝臓、脾臓、腎臓、副腎、胃、小腸、大腸、膀胱、大腿骨、筋肉、腫瘍、心臓、肺臓、脊椎および脳が含まれていた。器官に蓄積されたμCiおよび器官重量を基準にして、マウス1グラム当たりの%注射線量(%ID)を計算した。%ID/gの腫瘍対非腫瘍比もまた計算した。
【0117】
huE71-BsAbの設計、産生および精製分析:huE71-BsAbフォーマットは、15アミノ酸リンカー(G4S)3(配列番号:77)を用い、huE71-IgG1の軽鎖C-末端とのhuOKT3 scFv融合物(huE71-huOKT3)として設計した。IgG1 Fc領域にN297AおよびK322A変異を導入した。適切なフランキング制限酵素部位を用い、GenScript(Piscataway, NY)によってヌクレオチド配列を合成し、標準的な哺乳動物発現ベクターでサブクローニングした。線状化プラスミドDNAを用い、BsAbの安定的生産のためにCHO-S細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)にトランスフェクトした。2x106細胞に5μgのプラスミドDNAをヌクレオフェクション(Nucleofection(Lonza, Basel, Switzerland))によってトランスフェクトし、続いて6ウェル培養プレートで、8mM L-グルタミン補充CD OptiCHO培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)にて37℃で2日間回復させた。500μg/mLのヒグロマイシンを約2週間用いて安定なプールを選別し、続いて制限希釈により単一クローンを選別した。huE71-BsAb力価をそれぞれL1-CAM(+)腫瘍細胞およびCD3(+)Jurkat細胞ELISAによって決定し、最高の発現を示す安定なクローンを選別した。BsAb生産株をPowerCHO-2培地で培養し、成熟上清を採集した。プロテインA親和性カラム(GE Healthcare, Chicago, IL)を25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(0.15M NaCl、pH8.2)で予備平衡化した。結合したBsAbを0.1Mクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.9)で溶出し、25mMクエン酸ナトリウム(pH8.5)で中和した(1:10 v/v比)。貯蔵のために、BsAbを25mMクエン酸ナトリウム(0.15M NaCl、pH8.2)に透析し、アリコットを-80℃で凍結した。2マイクログラムのタンパク質を、SDS-PAGEで4-15%のトリス-グリシンレディゲル系(Bio-Rad, Hercules, CA)を用い還元条件下で分析した。huE71-BsAbの純度もまたサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価した。約20μgのタンパク質をTSK-GEL G3000SWXL 7.8mmx30cm、5μmカラム(TOSOH Bioscience, Tokyo, Japan)に、0.4M NaClO4、0.05M NaH2PO4(pH 6.0)緩衝液を0.5mL/分の流速で用いて注入し、280nmでUV検出した。MWマーカーのために10μLのゲルろ過標準物(Bio-Rad, Hercules, CA)を並行して分析した。
【0118】
FACS分析:細胞を種々の濃度の一次抗体(キメラまたはヒト化E71およびE72並びにそれらのIgG4サブクラス並びにIgG1n変種とともにBsAb型)とともに4℃で30分間PBS中でインキュベートし、ヒトFcに特異的なフィコエリスリン標識二次抗体を過剰な一次抗体の洗浄後に用いた。FACSカリバーサイトメーター(FACS Calibur cytometer(BD Biosciences, Bedford, MA))で分析する前に、細胞を1%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。コントロールはリツキシマブまたはパリビズマブとともにインキュベートした細胞であり、前記に対して平均蛍光強度(MFI)を5に設定した。
定量のために、クォンタムシンプリーセルラー(Quantum Simply Cellular)抗マウスIgGキット(Bangs Laboratories, Fishers, IN)を用いた。簡単に記せば、当該キットは、5つの微小球集団を含む(1つはブランクであり、4つは量が増していく抗マウスIgGで標識されている)。続いてビーズおよび腫瘍細胞(37℃で5分間)を同じ蛍光複合体化マウスE71で30分間氷上にて標識した。続いて、細胞をPBSで洗浄し、BD FACSカリバー(BD Biosciences, Bedford, MA)で標識ビーズと一緒に分析した。各キットとともに提供されたエクセルベースのQuickCal分析テンプレートは、蛍光強度を腫瘍細胞上の抗原と相関させるために役立つ。各データ点は二つ組の平均である。
in vivo抗腫瘍アッセイ:in vivo試験のために、BALB-Rag2-KO-IL-2R-γc-KO(DKO)マウス(Dr. Mamoru Ito(CIEA, Kawasaki)のコロニーに由来する)を用いた(以下を参照されたい:Koo GC et al., Expert Rev Vaccines 8:113-20, 2009)。新鮮培地/BDマトリゲル(BD Biosciences, Bedford, MA)の1:1混合物の腫瘍細胞を皮下に移植した。腫瘍体積の測定のために、携帯用TM900スキャナー(Peira, Brussels, BE)を用いて全腫瘍を測定した。
【0119】
放射性標識抗体試験のための全般的実験室手順:特段の記載がなければ、全ての化学物質は業者(Sigma-Aldrich(St. Louis, MO))から入手してそのまま使用し、全ての装置は検査し標準的手順にしたがって維持した。89Zrは、TR19/9サイクロン(Ebco Industries Inc., Richmond, BC, Canada)で89Y(p,n) 89Zr反応により当センター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)で製造して精製し、196-496 MBq/mgの比活性を有する89Zrを得た。活性の測定は、CRC-15R線量カリブレーター(Capintec, Inc., Florham Park, NJ)を用いて実施した。活性定量のために、サンプルを自動ウィザードガンマカウンター(Automatic Wizard gamma counter(Perkin Elmer, Waltham, MA))で計数した。リガンドの放射性標識は、インスタント薄層クロマトグラフィーペーパー(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いてモニターし、Bioscan AR-2000放射線ITLCプレートリーダーでWinscan Radio-TLCソフトウェア(Bioscan Inc., Washington, DC)を用いて分析した。全てのin vivo実験は、スローンケタリング記念研究所の動物管理使用委員会が承認したプロトコル(Protocol 08-07-013)にしたがって実施された。
細胞培養:細胞を含むT-75フラスコ(Corning, Corning NY)は、37℃にて5%CO2濃度で維持した細胞インキュベーターで保存した。SKOV3(ヒト上皮卵巣癌種細胞株(ATCC, Manassas, VA))は、RPMIマッコイ5A培地(RPMI McCoy's 5A Medium(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA))(改変されて1.5mM L-グルタミンを含む)で培養し、いずれも100ユニット/mLペニシリンGおよび100μg/mLストレプトマイシン並びに10%ウシ胎児血清とともに増殖させた。SKOV3細胞株は1週間に1回、ハンクス緩衝食塩水溶液中の0.25%トリプシン/53mM EDTA(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)を用いてサブ培養し、標準的細胞株継代のために1:5で継代した。
【0120】
異種移植マウスモデル:8から10週齢の雌無胸腺nu/nuマウスを業者(Charles River Laboratories(Kingston, NY))から購入した。動物を換気付きケージに収容し、飼料と水を自由に摂取させ、接種前の約1週間環境に順応させた。新鮮培地/BDマトリゲル(BD Biosciences, Bedford, MA)1:1混合物の細胞懸濁物150μL中の5.0x106細胞を皮下注射することによって、SKOV3腫瘍を右肩に誘発した。実験は、癌細胞の注射後約2-3週間で実施した。腫瘍体積の測定のため、全ての腫瘍を携帯用TM900スキャナー (Peira, Brussels, BE)を用いて測定した。最初の腫瘍測定後、マウスを複数のグループに任意抽出し(n=8-9/グループ)、全てのコホートが開始時にほぼ等しい平均腫瘍体積を有することを担保した。
抗体のバイオコンジュゲーション:抗体は、4-5mg/mLの平均濃度で酢酸緩衝液(25mM酢酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)中で得られた。50,000分子量カットオフを有する遠心分離用フィルターユニット(Amicon Ultra 4 Centrifugal Filtration Units, Millipore Corp., Billerica, MA)を用いて、抗体を最終濃度12-15mg/mLに濃縮した。濃縮した後、DMSOに溶解した10当量のp-SCN-Bn-DFOまたはp-SCN-Bn-DOTA(Macrocyclics, Inc. Dallas, TX)を添加する前に、0.1 M Na2CO3を用いて抗体のpHを8.5-9.0に調整した。反応物を37℃で1時間、定常的に500rpmで振盪させながらインキュベートした。50,000分子量カットオフを有する遠心分離用フィルターユニット(Amicon Ultra 4 Centrifugal Filtration Units, Millipore Corp., Billerica, MA)を用いて、リガンド-抗体複合体を精製した。この最終的バイオ複合体をアリコットに分け、PBS(pH7.4)中で-80℃で保存した。
放射性標識:89Zrは、1.0Mシュウ酸中のシュウ酸-89Zrとしてターゲットプロセッシング後に受けとった。溶液を1.0M炭酸ナトリウムで中和してpH~7にした。DFO-抗体を中和89Zrとともにインキュベートし、37℃で60分間PBS(pH7.4)中で標識した。177LuCl(比活性170MBq/mg(Perkin Elmer, Waltham, MA))を入手し、アンモニア酢酸緩衝液(200 mmol/L, pH 5.4)で希釈し、DOTA-抗体と42℃で1時間インキュベートした。反応の進行は、シリカゲル含浸ミクロガラス繊維紙片の放射性-ITLC(ITLC-SG, Varian, Lake Forest, CA)により、移動相として50mM EDTA(pH5)を用いてモニターした(AR-2000(Bioscan Inc., Washington, DC)によって分析)。抗体複合体は起点に留まり、一方、遊離放射性核種は移動相中のEDTAによって捕捉され、溶媒前端と一緒に泳動した。粗雑な放射性化学物質収量は放射-ITLCデータを用いて計算した。続いて放射性標識抗体をサイズ排除クロマトグラフィー(PD10)を用いて精製し、続いて、処方のために遠心分離ろかにより最終体積に濃縮した。最終精製放射性標識抗体の放射性化学物質純度は、使用前放射-ITLCによって99%を超えることが確認された。
【0121】
血清安定性:各89Zr-抗体複合体のアリコット(100μL)を900μLのヒト血清とインキュベートし、サーモミキサー上で37℃にて定常的に攪拌した。各マイクロ遠心管からサンプルを採取し、0、1、3、5および7日目に放射-ITLCを用いて三つ組で分析した。複合体の安定性は、放射-ITLC片の起点に留まった89Zrのパーセンテージとして測定し、無傷の%として示した。
免疫反応性:89Zr-DFO-抗体の免疫反応部分をLindmo細胞結合アッセイを用いて決定した(Ben QW et al., Ann Surg Oncol 17:2213-21, 2010)。この目的のために、500μLのPBS、1% BSA(pH7.4)中に5.0x105-5.0x106細胞/mLの範囲の濃度でSKOV3細胞をマイクロ遠心管に懸濁した。89Zr-DFO-抗体のアリコット(1μCi/mLストックの50μL)を各遠心管に500μL最終体積で加えた。サンプルをサーモミキサー上で37℃にて60分間インキュベートした。続いて処理細胞を遠心分離によりペレットにし(1400RPMで4分間)、上清を吸引し、細胞結合放射能活性を計数する前に冷PBSで3回洗浄した。活性データをバックグラウンド修正し、適切なコントロールサンプルの計数総数と比較した。免疫反応部分は、(1/[正規化細胞濃度])に対する(全体/結合)活性のプロットの線形回帰分析によって決定した。
【0122】
PET画像診断:PET画像診断実験は、Inveon PET/CTスキャナー(Siemens Healthcare Global, Malvern, PA)で実施した。右肩にSKOV3異種移植を有する雌無胸腺マウスに、89Zr-抗体(150μLのPBS中に192-214μCi)を尾静脈内注射により投与した。2%イソフルラン(Baxter Healthcare, Deerfield, IL)および医療用空気の気体混合物によって動物を麻酔し、前記動物を2%イソフルランおよび医療用空気の気体混合物で麻酔を維持しながらスキャナー中に配置した。注射後24、48、72および96時間後に、各マウスのPETデータを静止スキャンによって記録した。350-700keVのエネルギー幅および6nsの同時計測時間幅を用いた。データをフーリエリビニング(Fourier rebinning)によって2Dヒストグラムに分類し、横断画像をフィルター補正逆投影によって128x128x63(0.72x0.72x1.3mm3)マトリックスに再構築した。89Zrを含むマウスサイズ含水等価ファントムから導いたシステム較正係数を使用することによって、再構築画像の計数率を活性濃度(組織1グラム当たりのパーセント注射線量、%ID/g)に変換した。ASIPro VMソフトウェア(Concorde Microsystems, Knoxville, TN)を用いて画像を分析した。
生体分布:89Zr-抗体SKOV3腫瘍を有する雌無胸腺ヌードマウスを用いて生体分布試験を実施した。動物に150μLのPBS中の89Zr-抗体の各々を尾静脈内注射により投与した(192-214μCi)。注射後96時間でCO2窒息によって動物(n=4/グループ)を安楽死させた。安楽死に続いて、17の器官(血液、腫瘍、心臓、肝臓、脾臓、胃、大腸、小腸、膵臓、卵巣、腎臓、骨、筋肉、リンパ、皮膚、尾)を収集し、重量を測定し、ガンマカウンター(89Zrについて較正)で放射能をアッセイした。既知標準物から作製した較正曲線を用いて計数を活性に変換した。計数データはバックグラウンドおよび注射時間に対する崩壊について修正し、注射総活性に対して正規化することによって、各組織サンプルについて1グラム当たりのパーセント注射線量(%ID/g)を計算した。この試験で示されるデータは平均±標準偏差として表される。統計的相違は、グラフパッドプリズム7ソフトウェア(GraphPad Prism 7 software)を用い独立両側スチューデントのt検定によって分析した。0.05より小さいP値を統計的に有意とみなし、星印によって示した。
【実施例2】
【0123】
本技術のヒト化抗L1-CAM抗体の構造
ヒト化E71およびE72抗L1-CAM抗体を作製した。配列設計は、重要なマウスアミノ酸残基を保存しながら、ヒトIgG相同性計算を基準にした。
図6および7は、それぞれ、マウスE71のV
HおよびV
L(配列番号:1および3として表される)およびマウスE72のV
HおよびV
L(配列番号:5および7として表される)を示す。マウスE71(
図6参照)およびE72(
図7参照)の軽重鎖のCDRを、ヒトIgG1フレームワークにヒトフレームワークとのそれらの相同性に基づいて移植した。E71では、用いた相同なヒト配列は、重鎖についてはIGHV7-4-1(配列番号:2)および軽鎖についてはIGKV-58(配列番号:4)であった(
図6)。E72では、それらは、それぞれ、重鎖についてはIGHV1-2
*02|66.3|IGHJ4
*01|85.7(配列番号:6)および軽鎖についてはIGKV1-NL1
*01|73.7|IGKJ2
*02|81.8(配列番号:8)であった(
図7)。
2つの異なる重鎖配列(huE71ではH1およびH2(対応するアミノ酸配列については
図8、およびcDNA配列については
図9参照))および2つの異なる軽鎖配列(L1およびL2(対応するアミノ酸については
図10、およびcDNA配列については
図11参照))をhuE71のために完全なIgGとして発現させ、構築および安定性について試験した。2つの異なる重鎖配列(huE72ではH1およびH2(対応するアミノ酸配列については
図12、およびcDNA配列については
図13参照))および2つの異なる軽鎖配列(L1およびL2(対応するアミノ酸配列については
図14、およびcDNA配列については
図15を参照))をhuE72のために完全なIgGとして発現させ、構築および安定性について試験した。
E71(対応するアミノ酸配列については
図16、cDNA配列については
図17)およびE72(対応するアミノ酸配列については
図18、cDNA配列については
図19)のキメラ型もまた比較のために作製した。もっとも安定な、E71のためのH1およびL1組合せ(それぞれ
図20および
図21)並びにE72のためのH1およびL2組合せ(それぞれ
図22および
図23)を、huE71およびhuE72の最終型について実験の残りのために選択した。追加の構築物は、chE71の重鎖配列をヒトIgG4フレームワークで取り替え(
図24にアミノ酸配列および
図25にcDNA配列)、さらにhuE71のそれをヒトIgG4フレームワークで取り替えて(それぞれ
図26にアミノ酸および
図27にcDNA)作製した。huE71を単一ベクターにパッケージングし(バランスのとれた重鎖および軽鎖分泌のため)、DG44細胞に形質導入した。huE71-IgG1nは別のhuE71-IgG1糖型であり、前記は、GnT1欠損由来変種グリコシル化を有するCHO細胞において発現される(Jefferis R, Nat Rev Drug Discov 8:226-34, 2009)。標準的なプロテインA親和性クロマトグラフィーを用いて、HuE71-IgG1、huE71-IgG4およびhuE71-IgG1nを精製した。糖分析は、huE71-IgG1nが71.1%(Mol%)マンノース、26.3%(Mol%)N-アセチルグルコサミン、および2.6%(Mol%)グルコースを有することを確認した。SDSゲルでは、huE71およびhuE72は適切なサイズの重軽鎖を有するIgGとして泳動し、HPLCでは、それらはいずれも完全なIgGとして溶出し、5%未満の凝集を形成した。
【実施例3】
【0124】
huE71およびhuE72並びにその誘導体の抗原結合
抗原(L1-CAM-FcおよびL1-CAM-His)をCM5チップに固定し、抗体結合カイネティクス(k
on、k
offおよびK
d)を、Biacore T-100を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によって比較した(L1-CAM-Fcについては
図28)。キメラおよびヒト化抗体のL1-CAM-Fcにおける結合カイネティクスは
図29および
図30で要約し、他のL1-CAMマウス抗体と比較した。キメラおよびヒト化抗体のL1-CAM-Hisにおける結合カイネティクスは
図31で要約されている。
抗原結合はまた、L1-CAM(+)腫瘍細胞を用いてFACS分析によって分析された。データは、フローサイトメトリーによって決定し、使用抗体の最高濃度の結合パーセンテージとして正規化した平均蛍光強度として表した(1μg/10
6細胞):中皮腫(
図32)、白血病、乳癌およびユーイング腫瘍ファミリー(
図33)、並びにメラノーマ、神経芽細胞腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、小細胞肺癌(
図34)。
HuE71-IgG1は安定であり、5回の凍結融解プロセスに付した後でもその抗原結合のEC50は0.03μg/百万細胞に留まった。抗原としてプラスチックプレート被覆腫瘍細胞を用いたELISA方法もまたhuマウス-IgG1およびhuE71-IgG1n結合アッセイに用いられ、huE71-IgG1およびhuE72-IgG1の両方が腫瘍細胞に対し相応の結合を示した。huE71-IgG1nの腫瘍細胞に対する結合は5回繰返した凍結融解の後でも変化がなかった。
これらの結果は、本技術の抗体またはその抗原結合フラグメントは、高い結合親和性でL1-CAMと特異的に結合することを示している。したがって、本明細書に開示する免疫グロブリン関係組成物は、サンプル中のL1-CAMタンパク質の検出に有用である。
【実施例4】
【0125】
huE71-IgG1nおよびhuE72-IgG1nによって媒介されるADCC
ADCC(抗体依存細胞媒介細胞傷害)をエフェクターとして正常ボランティア由来PBMCを用いて評価した。特定の糖型とは対照的に、chE71、huE71、chE72およびhuE72の全ての野生型ヒトIgG1型はADCCを媒介できない。2つの標的細胞株LAN-1およびNB1691を試験した。huE71-IgG1nのみがADCCを媒介できた(LAN-1細胞に対するEC50は0.06μg/mL、NB1691細胞に対するEC50は0.1μg/mLであった)。
図61および62参照。
これらの結果は、本技術の抗体またはその抗原結合フラグメントはしたがってADCCを引き出すことができることを示している。したがって、本明細書に開示する免疫グロブリン関係組成物は、L1-CAM陽性癌の治療に有用である。
【実施例5】
【0126】
huE71-BsAbおよびhuE72-BsAbの設計並びにCHO-S細胞における発現
IgG-scFvフォーマット(
図35)を用いて、
図36に示すアミノ酸配列を有するBsAbを設計した。huE71-huOKT3フォーマットの場合、重鎖はhuE71 IgG1のそれと同一であり、軽鎖は、huE71軽鎖をC-末端(G
4S)
3リンカー(配列番号:77)で延長することによって構築され、その後にhuOKT3 scFVが続いた。huE72-huOKT3は同様に設計された。両抗体のために、N297AおよびK322A変異がhIgG1 Fc領域に導入され、グリコシル化および補体活性化が除去された。BsAbの重鎖および軽鎖の両方をコードするDNAを哺乳動物発現ベクターに挿入してCHO-S細胞にトランスフェクトし、高発現を示す安定的なクローンを選別した。上清を振盪フラスコから収集し、プロテインA親和性クロマトグラフィーで精製した。サイズ排除クロマトグラフィーによって、90%を超えるモノマーまでタンパク質をさらに精製した。
還元SDS-PAGE条件下では、両BsAbは50KDa辺りに2本のバンドを生じた。なぜならば、軽鎖とのhuOKT3 scFv融合はMWを~50KDaに増加させたからでである。SEC-HPLCは、両抗体について約210KDaのMWを有する主要ピーク(UV分析で97%)を、マルチマーの小さなピーク(ゲルろ過で除去できる)とともに示した。SPRによってL1-CAMでアッセイしたとき、BsAbのL1-CAMに対する親和性は、親のIgGのそれに匹敵した(
図37)。
これらの結果は、本技術の抗体またはその抗原結合フラグメントは、高い結合親和性でL1-CAMと特異的に結合することを示している。したがって、本明細書に開示する免疫グロブリン関係組成物はサンプルのL1-CAMタンパク質の検出に有用である。
【実施例6】
【0127】
本技術の抗L1-CAM BsAbの腫瘍細胞およびT細胞の双方との結合
両BsAbのL1-CAM-FcにおけるSPRによる結合カイネティクスが
図28および37に示される。huE71-BsAbおよびhuE72-BsAbの標的細胞およびエフェクター細胞の双方との結合をFACS免疫染色によって試験した。huE71-BsAbは、L1-CAM(+)神経芽細胞腫BE(2)Cとの結合で親のhuE71と等しく有効であったが、huE72-BsAbとBE(2)Cとの結合はhuE71-BsAbで観察されたものの半分であった(
図38(A))。CD3(+)T細胞との結合については、huE71-BsAbおよびhuE72-BsAbの両方がhuOKT3 IgG1と比較して有効性は低く、huOKT3よりおよそ20倍低かった(
図38(B))。BsAbの軽鎖に係留したscFvのT細胞に対するアビディティーの低下は、部分的にはこのフォーマットの空間的拘束に起因するが、特に標的細胞が存在しないときにはサイトカイン放出を最小限するために有益である。
これらのデータは、CD3との結合は機能的に一価であったことを示唆し、これは腫瘍標的の非存在下ではT細胞の自発的活性化を阻む。
【実施例7】
【0128】
HuE71-BsAbまたはHuE72-BsAbはTh1サイトカイン放出を誘発した
huE71-BsAbおよびhuE72-BsAbの両方が、細胞株IMR32-ルシフェラーゼを用いた活性化の24時間後に、PBMCからTh1サイトカイン(例えばTNFα)の遊離を誘発した。IFNγおよびIL2レベルは比較的低かった。huE71-BsAbおよびhuE72-BsAbの両方はまた、Th2サイトカイン(IL6およびIL10)遊離を誘発した。しかしながら、これらのサイトカインレベルはコントロールhu3F8-BsAbによって誘発されたレベルよりも低かった(
図39(A)-(E))。
【実施例8】
【0129】
HuE71-BsAbおよびHuE72-BsAbはヒト腫瘍細胞株のT細胞による殺滅をリダイレクトする
huE71-BsAbまたはhuE72-BsAbは、L1-CAM陽性癌細胞においてT細胞による細胞傷害を媒介した(前記癌細胞株は、活性化T細胞を用いて(E:T比=10:1)標準的な4時間
51Cr放出アッセイで試験された)。両BsAbが腫瘍細胞に対してT細胞細胞傷害を誘発し、huE72-BsAbはhuE71-BsAbよりも強力であった(IMR32-ルシフェラーゼ細胞株を用いたEC50はそれぞれ50.0pMおよび62.9pM)(
図40)。ヒト腫瘍細胞株の拡大パネル(神経芽細胞腫、メラノーマ、卵巣癌、乳癌、子宮頸腺癌腫を含む)を試験したとき、huE71-BsAbまたはhuE72-BsAb媒介T細胞細胞傷害は、FACSで評価した場合、L1-CAM発現腫瘍と相関性を有した(
図41および
図42(A)-42(B))。
【実施例9】
【0130】
ヒト化マウスの異種移植に対するHuE71-BsAbおよびHuE72-BsAbの有効性
in vivo治療試験のために、BALB-Rag2-KO-IL-2R-γc-KO(DKO)マウス(Koo GC et al., Expert Rev Vaccines 8:113-20, 2009;Andrade D et al., Arthritis Rheum 63:2764-73, 2011)を用いた。別々のヒト化マウス異種移植モデルで(皮下腫瘍+皮下エフェクター細胞、皮下腫瘍+静注エフェクター細胞)、静注L1-CAM-BsAbは、健常ドナーのPBMCの存在下で樹立腫瘍に対して高い活性を示した。
in vivo試験のために、L1-CAM(+)神経芽細胞腫患者由来異種移植片(PDX)(
図3)をDKOマウスの皮下に移植した。HuE71-BsAbまたはhuE72-BsAb治療は、15日目(腫瘍が測定可能な時)に、5週間の間毎週2回注射の投与スケジュールを用いて開始した。PBMC(7.5x10
6)は、16日目に開始してその後3週間毎週静脈内に投与された。毎週腫瘍サイズを測定した。huE72-BsAbおよびPBMCで処置されたマウスはコントロールと等価の腫瘍増殖を有した。したがって、huE72-BsAbのin vivo抗腫瘍応答は、その高い結合親和性および優れたin vitro腫瘍殺滅能力にもかかわらず目覚ましいものではなかった。対照的に、huE71-BsAbはPBMCとともに腫瘍増殖を顕著に抑制した。
図44では、PDXの代わりに、IMR32神経芽細胞腫細胞株を用い、等しい数のPBMCと混合して皮下に植え付けた。huE71-BsAbまたはhuE71-IgGnは腫瘍増殖を顕著に抑制したが、一方、huE72-BsAbは腫瘍体積に影響を与えなかった。
【実施例10】
【0131】
89
Zr-huE71-IgG1nおよび
89
Zr-huE72-IgG1nを用いた腫瘍の画像化
SKOV3ヒト卵巣異種移植片を植え付けたヌードマウスを
89Zr-huE71-IgG1nおよび
89Zr-huE72-IgG1nを用いて画像化した(それぞれ
図45および46)。huE72と比較してhuE71は親和性が低いにもかかわらず、
89Zr-huE71-IgG1nのin vivo標的への誘導有効性は優れていた。
【実施例11】
【0132】
L1-CAM抗体Fc変種
以下の試験は、ヒト化抗体Fc領域内の改変のin vivo生体分布における影響を評価する。ヒトでは4つのIgG抗体サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)が存在し、それらはさらにサブタイプに分けられる。加えて、IgG抗体と結合する数タイプのFc受容体が存在する(すなわちFcガンマ受容体)。
Fcガンマ受容体はさらにまた複数のクラスに細分割され、それらは免疫細胞上で弁別的に発現され、Fcガンマ受容体IはIgG抗体に対して最高の親和性を有する(Nimmerjahn F, Ravetch JV. Nat Rev Immunol 8:34-47, 2008)。IgG1抗体はヒトでもっとも豊富であり、活性化Fcガンマ受容体に対して最高の親和性を有する(Bruhns P et al., Blood 113:3716-25, 2009)。加えて、IgGの糖部分またはグリコシル化状態は、Fcガンマ受容体との結合で大きな役割を果たす。具体的には、IgG1抗体の場合、定常領域のN297残基に付着している糖部分は抗体と相互作用し、そのFc結合特徴を変化させる(Sazinsky SL et al., Proc Natl Acad Sci U S A 105:20167-72, 2008)。この残基に付着する複合糖部分は、マンノースおよびN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を他の分枝糖(フコース、ガラクトースおよびシアル酸を含む)とともに含み、このグリコシル化部位の変更は結合に劇的な影響を与えることができる(Maverakis E et al., J Autoimmun 57:1-13, 2015;Arnold JN et al., Annu Rev Immunol 25:21-50, 2007)。これらの糖が完全に欠失したIgG抗体は、それらのFcR(n)親和性に影響を与えることなく顕著に低下したFcガンマ受容体結合を示す。他方、当該グリコシル部位からフコース残基を除去することは、Fcガンマ受容体に対するIgGの親和性を大いに増加させる(Maverakis E et al., J Autoimmun 57:1-13, 2015)。IgG1抗体はFcガンマ受容体に対して最高の親和性を有するが、IgG4抗体(ヒトではもっとも少ないIgGである)は、Fcガンマ受容体に対する親和性が顕著に低く、一般的には、調節性メカニズムとして免疫応答を弱める抗炎症性IgGと考えられている。理論に拘束されないが、この現象は、部分的には、ダイナミックなFabアーム交換として知られているIg4抗体の固有の特性によるものである(Van der Neut Kolfschoten M et al., Science 317:1554-7, 2007)。
【0133】
IgG抗体のサブクラス全てが2つの重鎖-軽鎖対を含み、それらは、当該抗体のヒンジ領域に位置する重鎖上のシステイン残基によって形成されるジスルフィド結合によって一緒に束ねられる。このヒンジ領域は、IgGのサブクラスに応じたジスルフィド結合の数にしたがって長さが変動し得る。これらの特徴はヒンジ領域の可撓性に影響し、Fcガンマ受容体に対する結合親和性で役割を果たす(Rispens T, et al., J Biol Chem 289:6098-109, 2014)。IgG4抗体について、2つの半分分子(重鎖-軽鎖対)はヒンジ領域で互いに解離することが可能で、他の半分分子と自発的に再結合して二重特異性の一価抗体をin vitroおよびin vivoで形成する(Rispens T, et al., J Biol Chem 289:6098-109, 2014;Vidarsson G et al., Front Immunol 5:520, 2014)。このダイナミックなFabアーム交換特性は、抗体のヒンジ領域内にセリンからプロリンへの変異を(S228P)導入することによってIgG4抗体で無効化できる(Silva JP et al., J Biol Chem 290:5462-9, 2015)。この試験で実施する実験は、Fcガンマ受容体を発現するマウスでヒト化抗体を利用する。人間およびマウスのFcガンマ受容体は相同性が60-70%にすぎないが、最近の研究は、ヒトIgGは、非常に類似する親和性でオーソロガスなマウスFcガンマ受容体と結合することを示し、類似する生物学的活性が提唱されている(Overdijk MB et al., J Immunol 189:3430-8, 2012)。
【0134】
L1-CAM抗体の改変:放射性免疫複合体のin vivo生体分布におけるFc領域の影響を解明するために、ヒト化IgG1およびIgG4抗体パネルを開発した。これらの抗体はいずれも厳密に同じ抗原結合部位を有するが、Fc領域に改変を有し、したがってFcガンマ受容体に対するそれらの親和性が変化している(
図47)。HuE71-1 MAGEは、CHO細胞で産生された、α-1,6-フコースを欠くグリカンを有する抗L1-CAM IgG1抗体である。前記CHO細胞は、酵素、UDP-N-アセチルグルコサミン:α-3-d-マンノシド-β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnT1)に欠損を有し、したがってFc領域を増強する(Xu H et al., Cancer Immunol Res 4:631-8, 2016)。HuE71-1 WTは野生型CHO細胞で産生された、L1-CAMに対する野生型IgG1抗体であり、一方、HuE71-1 Aglycoは、そのFcガンマ受容体結合を低下させるN297A変異を含む非グリコシル化変種である。HuE71-4 WTはこの抗体のIgG4変種であり、一方、HuE71-4 変異型(Mutant)は、ダイナミックFabアーム交換の発生を妨げるS228P変異を含む。最後に、HuCtrl-4は、この試験に用いられる動物モデルで非特異的抗原であるGD2を標的とするIgG4野生型抗体である。
【0135】
複合体化および放射性標識:本明細書開示のL1-CAM抗体を官能化イソチオシアネートデスフェリオキサミンキレーター(p-SCN-Bn-DFO)と複合体化するために、PBSに溶解した各抗体の濃縮溶液のpHを8.5-9に調整し、DMSOに溶解したキレーターと10:1モル過剰で1時間、37℃でインキュベートした。抗体の遠心分離フィルター精製の後(Amicon Ultra 50 kDa)、アリコットを凍結し、出発材料(非複合体化抗体)のサンプルおよび複合体化抗体を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(MALDI-ToF MS)を用いて評価し、各抗体のキレート数を決定した。非特異的な複合体化方法を用いたので、DFO部分が、抗体上でランダムに分布するリジン残基で複数のチオウレア結合を形成することが可能であった。複合体化前および複合体化後抗体のMALDI-ToF MS分析は、89Zr-HuE71-1 MAGE当たり2.38キレート、89Zr-HuE71-1 WT当たり1.41キレート、89Zr-HuE71-1 Aglyco当たり1.07キレート、89Zr-HuE71-4 WT当たり1.30キレート、89Zr-HuE71-4変異型当たり0.63キレート、および89Zr-HuCtrl-4 WT当たり1.12キレートを明示した。これらの数は、抗体分子当たりのキレートの平均数を表す。例えば、89Zr-HuE71-1 WT当たり1.41 DFOキレート分子という値は、各抗体分子は1または2個のキレートの結合を有することを示す。続いて、抗体の各々をPBS中の89Zrで37℃にて60分間放射能標識した。
放射性化学物質収量および比活性は、インスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)を用いEDTA(pH5.0、50mM)移動相で計算した。ここで、遊離89Zrは溶媒前端とともに泳動し、キレート化89Zrは基準線に留まった。抗体の全てについて放射性化学物質収量は95%より高く、抗体の全てについて放射性化学物質純度は、サイズ排除クロマトグラフィー(PD-10カラム)精製後に99%より高かった。全ての抗体について(89Zr-HuE71-4 変異型を除く)比活性は、放射能標識後6.18-6.89μCi/μgであった。89Zr-HuE71-4 変異型の最適な放射能標識の多くの試みにかかわらず、2.14μCi/μgを超える比活性は達成できず、これはMALDI-ToF MSデータと一致した(MALDI-ToF MSデータは89Zr-HuE71-4 変異型は最低の平均キレート数(0.63)を有することを示した)。
【0136】
in vitro特徴付け:トレーサーの放射性化学物質安定性を評価するために、血清安定性チャレンジを実施した。各放射性免疫複合体の小さなアリコット(100μL)をヒト血清(900μL)中で7日間37℃でインキュベートした。サンプルを0、1、3、5および7日目に採取し、放射インスタント薄層クロマトグラフィーにより評価して、抗体との結合を維持する活性のパーセンテージを決定した。この試験は、トレーサーの全てが7日間安定であり、以下の値を有することを明らかにした:
89Zr-HuE71-1 MAGEについては97.3±0.8%、
89Zr-HuE71-1 WTについては97.7±0.7%、
89Zr-HuE71-1 Aglycoについては96.6±0.8%、
89Zr-HuE71-4 WTについては96.9±0.3%、
89Zr-HuE71-4 変異型については97.5±0.3%、
89Zr-HuCtrl-4 WTについては96.7±1.1%。これらの値(いずれも7日間を通して95%を超える完全性)は、
89Zr-DFO放射能標識抗体について期待された値と一致する。
放射能標識後にこれらの抗体が標的と結合する能力の程度を決定するために、免疫反応性アッセイを実施した。簡単に記せば、
89Zr-標識抗体を標的陽性卵巣癌細胞(SKOV3)と濃度を増加させながらインキュベートし続いて洗浄し、細胞結合活性を計数して免疫反応性画分の計算に用いた。これらの実験で、全ての抗体について85%を超える免疫反応性が得られ、具体的には以下のとおりであった:
89Zr-HuE71-1 MAGEについては89.5±1.5%、
89Zr-HuE71-1 WTについては93.1±2.2%、
89Zr-HuE71-1 Aglycoについては85.8±2.9%、
89Zr-HuE71-4 WTについては86.7±1.9%、
89Zr-HuE71-4 変異型については88.6±2.8%(
図48(A)-48(E))。トレーサーの全ての免疫反応性が互いの範囲内にあるので、放射性免疫複合体の画像化パターンおよび分布で観察され得るいずれの相違も、標的抗原(L1-CAM)とのそれらの結合能力における相違によるものではないと推定することができる。
【0137】
連続PET画像診断:右肩に皮下SKOV3腫瘍を有する雌無胸腺マウスで連続PET画像診断試験を実施して、本技術の抗体のFcに対するどのような改変が、これらの放射性免疫複合体の生体分布パターンを変化させるかを決定した。放射能標識免疫複合体を尾静脈から注射し、PET画像を注射後4つの時点(24、48、72および96時間)で得た。腫瘍組織を貫くマウスの冠状面スライス(いずれも0-30%注入線量/g)および全身像を表す最大値投影画像(MIP)が画像の全てで提示さる。
89Zr-HuE71-1 MAGEについては(
図45)、腫瘍組織におけるトレーサーの高い放射能濃度が、非標的器官における最小限の放射能とともに注射後24時間に観察された。心臓または大血管は観察できないので、トレーサーは迅速に血液プールから消失した。興味深いことに、動物の上方部分の4つの両側性構造物(灰色の矢印)が同様に高い放射能濃度を有するように見える。これらのPET陽性組織を採集し、それらは顎下および腋窩リンパ節と分かった。さらにまた、リンパ節の
89Zr-HuE71-1 MAGE取込みは放射性トレーサーの注射後96時間まで持続した。
89Zr-HuE71-1 WTを注射したSKOV-3異種移植片のPET画像は、24時間で腫瘍組織内の高いトレーサー取込みを示し、これは96時間まで蓄積し続けた(
図49)。24時間で非常に強い高放射能濃度が肝臓に存在し、前記はその後96時間を通してわずかながら徐々に消失した。もう一度言えば、マウスの上方部分の4つのリンパ節は24時間にPETで明るく照らされ、下方リンパ節も同様であったが、それらは96時間を通してわずかに薄れたように見えた。
89Zr-HuE71-1 Aglyco画像では(
図50)、24時間の腫瘍組織内にトレーサーの高い放射能濃度が観察され、それは96時間まで蓄積し続けた。血液プールのこのトレーサーによる活性は極めて高く、24時間では心臓、下降大動脈、および左右の総頸動脈で明瞭に可視化され得るが、この活性は注射後72時間までに迅速に消失した。IgG1放射能標識抗体のPET画像化データを基にして、
89Zr-HuE71-1 Aglycoは、注射後24時間から96時間まで腫瘍組織が最高の放射能濃度を有し非標的組織は最小量の活性を有するという点でもっともすっきりした生体分布プロフィールを有する。
【0138】
89Zr-HuE71-4 WT(野生型)の場合(
図51)、活性の大半は24時間で腫瘍組織内に存在し、最大値投影法では、血液プールの活性は極めて明瞭に可視化され得た。動物の中央部の2つの両側性構造物(灰色矢印)もまた認めることができ、腎臓であることが確認された。腫瘍組織内の高活性は、腎臓の活性と同様に注射後96時間まで持続した。
89Zr-HuE71-4 Mutant(変異型)の画像では(
図52)、24時間でわずかな腫瘍の取り込みが観察され、前記は96時間にわたって徐々に蓄積され続けた。血液プールの活性が存在し、この事例では、前記は96時間を通して部分的に減少するように見えた。しかしながら、きわめて注目すべきことに、
89Zr-HuE71-4 WTでは明瞭に観察された腎臓取込みが、
89Zr-HuE71-4 変異型では存在しなかった。
この試験で画像化された最後のトレーサーは、非特異的コントロール抗体
89Zr-HuCtrl-4 WTであった(
図53)。全ての時点で、腫瘍組織内の活性は非常に小さく、抗体の標的(GD2)はSKOV-3細胞株で高度には発現されないという事実と一致する。肝臓の活性は、全ての時点を通して強い腎臓の活性と同様に観察できた。
【0139】
コントロール抗体(89Zr-HuCtrl-4 WT)を除いて、他のトレーサーの全てが、L1-CAMを標的とする厳密に同じ抗原結合部位を有した。5つのL1-CAMトレーサー間の唯一の相違はFc領域内に存在し、そのことがin vivo生体分布で顕著な影響を有した。PET画像にしたがえば、より低いFc受容体結合を有する抗体変種(89Zr-HuE71-1 Aglyco、89Zr-HuE71-4 WT、89Zr-HuE71-4 変異型)は、リンパ節取り込みを示さなかった。逆に、正常なまたは強化されたFcガンマ受容体結合を有する抗体(89Zr-HuE71-1 WT、89Zr-HuE71-1 MAGE)は、強いリンパ節取り込みを有する。総合すれば、これらのデータは、全てのL1-CAMトレーサーの抗原結合領域は同じであるので、抗原の局所発現はリンパ節取込みにおいて役割を果たしていないことを示唆している。さらにまた、L1-CAM放射性免疫複合体は、免疫反応性アッセイで85%を超える免疫反応性部分をもたらし、これは弁別的なリンパ節取込みの原因として抗原結合の相違を排除する。正常なおよび強化されたFcガンマ受容体結合抗体(89Zr-HuE71-1 MAGEおよび89Zr-HuE71-1 WT)は、低いFcガンマ受容体結合抗体(89Zr-HuE71-1 Aglyco、89Zr-HuE71-4 WT、89Zr-HuE71-4 変異型)と比較して、統計的に有意な強いリンパ節取込みを示したので、観察された高いリンパ節取込みはFc結合における相違に起因する可能性が高い。
IgG4トレーサーに関しては、高い腎臓取込みが野生型変種で観察された。このトレーサーのS228P変異は、いずれの時点でもそれがPETで可視化されない点まで腎臓取込みを減少させることができた。IgG4抗体は、以前に記載したように、ダイナミックなFab交換を受けてヒンジ領域で自発的に分解され(~75kDa構築物を形成する)、続いて他の半分分子と再結合され得る。理論に拘束されないが、野生型IgG4 L1-CAM抗体で観察される腎臓取込みはダイナミックFabアーム交換特性の二次作用であるかもしれない。なぜならば、S228P変異はこの腎臓蓄積が生じるのを妨害するからである。さらにまた、75kDaの半抗体は、25と50kDaフラグメントへの更なる縮小を受けて、腎臓内の糸球体の通過を可能にするかもしれない。非特異的89Zr-HuCtrl-4 WT IgG4抗体は腎組織内での高い蓄積を示し、このことは、IgG4腎取込み理論と一致する。
【0140】
ex vivo生体分布:PET画像診断の結果を確認し、当該トレーサーの特異性を立証するために、ex vivo生体分布試験を実施した(
図55)。SKOV3腫瘍を有する雌無胸腺ヌードマウスに放射能標識免疫複合体を尾静脈から注射し、注射後96時間に多様な組織を収集し、ガンマカウンターで分析し、さらに重量を正規化した。これらの試験の結果は、PET画像診断実験によって示された傾向と適合した。正常なまたは強化されたFcガンマ受容体結合を有することが判明している抗体(
89Zr-HuE71-1 WT、
89Zr-HuE71-1 MAGE)は、高いリンパ節取込みを示した(16.85±1.39%ID/グラム、17.16±0.41%ID/グラム)。逆に、非グリコシル化変種抗体(
89Zr-HuE71-1 Aglyco)は、基準レベルのリンパ節取込み(5.59±0.49%ID/グラム)を示した。ex vivo生体分布により得られた値はPET画像診断データと相関性を示し、さらにまた、リンパ節取込みの増加は、可変領域とは反対に抗体のFc領域の結合に起因するという仮説を裏付けた。
IgG4抗体については、
89Zr-HuE71-4 WTは3.98±0.969%ID/グラムのリンパ節取込みを示し、一方、
89Zr-HuE71-4 変異型は3.70±0.975%ID/グラムのリンパ節取込みを示した(
図56および57)。リンパ節内のこれら2つの抗体に関して有意な相違は認められなかった。
89Zr-HuE71-4 WTは12.06±1.23%ID/グラムという値で腎臓に蓄積し、一方、
89Zr-HuE71-4 変異型は5.83±0.537%ID/グラムで有意に低かった。これらのデータはPET画像診断データで観察されたものを概括し、さらにまたIgG4のダイナミックなFabアーム交換特性はトレーサーの腎臓取込みで役割を果たすと提唱している。
標的に対するこれらトレーサーの特異性を評価するために、ex vivo生体分布試験で封鎖群を用いた。50倍過剰のコールドトレーサーを放射能標識トレーサーとともに尾静脈から共同注射した。理論では、コールドトレーサーの添加はホットトレーサーの特異性を劇的に低下させ、ホットトレーサーの取り込みに有意な減少が観察されよう。これは、5つのL1-CAM標的抗体の全てについて観察された。腫瘍組織の取込み値は、
89Zr-HuE71-1 MAGEについては16.15±0.85%ID/グラムから5.87±0.76%ID/グラムに、
89Zr-HuE71-1 WTについては19.67±1.23%ID/グラムから6.82±0.809%ID/グラムに、
89Zr-HuE71-1 Aglycoについては32.02±2.99%ID/グラムから10.58±1.52%ID/グラムに、
89Zr-HuE71-4 WTについては27.29±1.55%ID/グラムから10.65±0.472%ID/グラムに、
89Zr-HuE71-4 変異型については16.90±1.21%ID/グラムから9.04±1.42%ID/グラムに減少した。
89Zr-HuCtrl-4 WT(このモデルの非特異的抗体)の場合、腫瘍取込みは6.02±0.90%ID/グラムで極めて低かった。腫瘍組織におけるこの取込みは、透過性亢進および保持(EPR)効果に起因し得る。以下を参照されたい:Heneweer C et al., J Nucl Med 52:625-33, 2011。
【0141】
ex vivo組織学:リンパ節および腫瘍を収集して組織学的に分析し、PET画像診断試験でIgG1トレーサーを用いて観察されたリンパ節取込みが実際に転移性疾患を示しているか否かを決定した(
図58)。腫瘍組織のヘマトキシリン・エオシン染色は塊が退形成性癌腫であることを確認した。腫瘍組織は、境界が明瞭であり被包化されていない密な細胞性結節性腫瘍性の塊と記載され、前記塊は、細い線維血管性隔壁に支えられた、しっかり詰まった小葉および腫瘍性上皮細胞群から成る。腫瘍性細胞は多角形から類紡錘形であり、様々な程度に認識される細胞境界、豊富なエオシン好性細胞質(場合によって空胞化される)、並びに、微細顆粒から小胞性のクロマチンおよび1-2個の明瞭な赤紫色の核小体を有する丸い核を有していた。重篤な赤血球大小不同および核大小不同があった。有糸分裂は、一高倍率視野(40x)に平均4-6個である。凝固壊死の多病巣領域があった。左右の腋窩リンパ節および腸間膜リンパ節のヘマトキシリンエオシン染色は、髄洞内の組織球症および形質細胞症、ドレナージ反応の一般的所見を示し、腫瘍性細胞の証拠は存在しなかった。
177
Lu放射性免疫療法試験:上記で提示したように、
89Zr-HuE71-1 Aglycoは、低いバックグラウンド組織(特に腎臓および血液)取り込みとともに、注射後96時間で32.02±2.99%ID/グラムという高い腫瘍活性濃度を示した。
89Zr-HuE71-1 Aglycoを金属性核種
177Luで標識した(理由は、その放射性化学特性(半減期、6.7日;平均飛程、0.2mm;%β=100)、並びに画像診断および放射性免疫療法応用における
177Luの広範囲使用である)。HuE71-1 Aglyco抗体をDOTAと複合体化し、3.94 mCi/mgの比活性の
177Lu(放射性化学純度>99%)で標識し、SKOV3皮下腫瘍を有する雌無胸腺ヌードマウスでの画像診断試験およびex vivo生体分布試験に付した(
図59(A)-59(C))。これらの試験は、
89Zr-HuE71-1 Aglycoで観察された生体分布プロフィールと類似のプロフィールを確認し(活性の大半は、SPECT/CT画像およびチェレンコフ画像で観察されるように腫瘍組織に局在する)、注射後168時間のex vivo生体分布を確認した。
放射性免疫療法剤としての
177Lu-HuE71-1 Aglycoの有効性を、3用量(800μCi、800μCi分割(14日ずらして2用量)、および400μCi)で評価し、同じ動物モデル(n=8-9/グループ)でコールド抗体(800μCiの非特異性抗体コントロール)および食塩水と比較した(
図60)。80日間(最初の処置後60日間)を通して平均腫瘍体積を追跡して、有意な弁別的応答がコントロールグループと放射性標識治療グループとの間で観察された。とりわけ、コントロールグループのいずれも出発体積を超える腫瘍退縮の形跡を示さなかった。
177Lu-HuE71-1 Aglycoの3グループは、接種後80日間を通して有意な増殖遅延効果を示した。しかしながら、試験の後期時点の間の腫瘍体積に関しては、
177Lu-HuE71-1 Aglycoグループ内で有意な相違は存在せず、3つのグループの平均腫瘍体積は80日目で誤差範囲内で等価であった。加えて、毒性徴候(80%を超える体重低下および点状出血)が、最高処置グループ(800μCi、
177Lu-HuE71-1 Aglyco)のマウスで処置から最初の2週間以内に4/8で観察された。毒性は、800μCiの非特異的コントロール抗体を注射したマウスでは全く観察されず、これはおそらくトレーサーの除去/排除における相違のためであろう。これらのデータは、400μCi
177Lu-HuE71-1 Aglycoの単一線量が、毒性の問題を回避しながらこのモデルでは腫瘍増殖を遅延させるために十分であることを提唱している。
総合すれば、これらの結果は、本技術の抗体または抗原結合フラグメントは、腫瘍を検出できること、および腫瘍増殖の進行および/または転移を阻害できることを示す。したがって、本明細書で開示する免疫グロブリン関係組成物は、その必要がある対象動物でL1-CAM陽性癌を検出および治療するために有用である。
【0142】
等価物
本技術は、本明細書で記載した特定の実施態様の言葉に限定されるべきではなく、それら実施態様は、本技術の個々の特徴の単一の例示として意図される。当業者には明白であるように、本技術の趣旨および範囲を外れることなく、本技術の多くの改変および変型が実施され得る。本明細書に列挙したものの他に、本技術の範囲内の機能的に等価の方法および装置は前述の記載から当業者には明白であろう。そのような改変および変型は本技術の範囲内であることが意図される。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的な系に制限されず、当然それらは変動し得ることは理解されるべきである。本明細書で用いられる用語は特定の実施態様を説明する目的のためであり、制限することを意図しないこともまた理解されるべきである。
加えて、本開示の特色または特徴がマーカッシュグループに関して記載されている場合、当該開示はまた、それによってマーカッシュグループのメンバーの個々のメンバーまたはサブグループに関して記載されていることは当業者には理解されよう。
当業者には理解されるように、任意の目的および全ての目的のために、特に書面による説明を提供する場合には、本明細書に開示される全ての範囲はまた、任意のおよび全ての可能な部分範囲およびその部分範囲の組合せを包含する。列挙されたいずれの範囲も、十分に記載され、同じ範囲を少なくとも同じ半分、1/3、1/4、1/5、1/10などに分解することが可能であることは容易に理解されよう。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下方の3/1、真ん中の1/3、上方の1/3などに容易に分解することができる。当業者にはまた理解されるように、例えば、“まで”、“少なくとも”、“を超える”、“未満”などの言葉はいずれも列挙された数を含み、さらに上記で考察したように続いて部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は個々のメンバーの各々を含む。したがって、例えば1-3つの細胞を含むグループは、1、2または3つの細胞を含むグループを指す。同様に、1-5つの細胞を含むグループは、1、2、3、4または5つの細胞を含むグループを指し、以下同様である。
本明細書で参照または引用した全ての特許、特許出願、仮特許出願、および公開物は、参照によってその全体(全ての図および表を含む)が本明細書に、本出願の明快な教示と一致する範囲まで含まれる。
【配列表】