(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】レーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20230922BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20230922BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20230922BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230922BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 Q
B23K26/03
B23K26/082
B23K26/21 A
(21)【出願番号】P 2020039761
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】000161367
【氏名又は名称】株式会社アマダウエルドテック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 淳
(72)【発明者】
【氏名】西崎 雄祐
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-326134(JP,A)
【文献】特開2016-015310(JP,A)
【文献】特開2007-098442(JP,A)
【文献】特開2019-188409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上である
か否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を出力するトリガユニットと、
前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始するレーザ溶接モニタと、
を備えるレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項2】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を出力するトリガユニットと、
前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号を所定時間積分した積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあるか否かに基づく、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始するレーザ溶接モニタと、
を備えるレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項3】
前記レーザビームの波長は900nm~1100nmであり、前記モニタリング光の波長は1300nm~2500nmの近赤外光である請求項1
または2に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項4】
前記加工ヘッドは、前記加工ヘッドが射出する前記レーザビームを変位、振動、または回転させるガルバノスキャナと、前記レーザビームを前記被溶接材料に集束させて照射するfθレンズとを備え、
前記fθレンズの周囲に配置された複数の受光ユニットを備える
請求項1
~3のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項5】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光ユニットで受光し、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、
分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換し、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、
前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上である
か否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を生成し、
前記トリガ信号の入力をトリガとして、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始する
レーザ溶接モニタリング方法。
【請求項6】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光ユニットで受光し、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、
分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換し、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、
前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を生成し、
前記トリガ信号の入力をトリガとして、前記第1の電気信号を所定時間積分した積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあるか否かに基づく、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始する
レーザ溶接モニタリング方法。
【請求項7】
前記レーザビームの波長は900nm~1100nmであり、前記モニタリング光の波長は1300nm~2500nmの近赤外光である請求項
5または6に記載のレーザ溶接モニタリング方法。
【請求項8】
前記加工ヘッドは、前記加工ヘッドが射出する前記レーザビームを変位、振動、または回転させるガルバノスキャナと、前記レーザビームを前記被溶接材料に集束させて照射するfθレンズとを備え、
前記放射光を、前記fθレンズの周囲に配置された複数の受光ユニットで受光する
請求項
5~7のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接が正常に行われているか否かを監視するレーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1または2に記載されているように、レーザ溶接機が被溶接材料を溶接するときに、レーザ溶接モニタリング装置は、レーザ溶接が正常に行われているか否かを監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-110796号公報
【文献】特開2017-24046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ溶接モニタリング装置は、レーザ溶接機が被溶接材料の溶接を開始したタイミングでモニタリングを開始することが望ましい。例えば、レーザ溶接モニタリング装置は、レーザ発振器がレーザビームの射出を開始したタイミングに合わせて、モニタリングを開始すればよい。ところが、レーザ発振器はレーザビームの射出を開始するタイミングでレーザビームの射出の開始を示す信号を出力しないものがある。そこで、レーザ溶接機が被溶接材料の溶接を開始したタイミングを的確に検出し、レーザ溶接モニタリング装置がモニタリングを開始する構成が求められる。
【0005】
本発明は、レーザ溶接機が被溶接材料の溶接を開始したタイミングを的確に検出し、レーザ溶接のモニタリングを開始することができるレーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を出力するトリガユニットと、前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始するレーザ溶接モニタとを備えるレーザ溶接モニタリング装置を提供する。
本発明は、レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を出力するトリガユニットと、前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号を所定時間積分した積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあるか否かに基づく、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始するレーザ溶接モニタとを備えるレーザ溶接モニタリング装置を提供する。
【0007】
本発明は、レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光ユニットで受光し、前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換し、前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を生成し、前記トリガ信号の入力をトリガとして、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始するレーザ溶接モニタリング方法を提供する。
本発明は、レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光ユニットで受光し、前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換し、前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を生成し、前記トリガ信号の入力をトリガとして、前記第1の電気信号を所定時間積分した積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあるか否かに基づく、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始するレーザ溶接モニタリング方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法によれば、レーザ溶接機が被溶接材料の溶接を開始したタイミングを的確に検出し、レーザ溶接のモニタリングを開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態のレーザ溶接モニタリング装置を示す斜視図である。
【
図2】レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドの構成例を示す斜視図である。
【
図3】一実施形態のレーザ溶接モニタリング装置が備える分光ユニットの構成例を示す図である。
【
図4】一実施形態のレーザ溶接モニタリング装置が備えるトリガユニットの構成例を示すブロック図である。
【
図5】レーザ溶接機がレーザビームの照射を開始して終了するときの、レーザビームの照射位置で発生する、レーザビームの反射光と近赤外光の放射光強度の変化を示す特性図である。
【
図6】一実施形態のレーザ溶接モニタリング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態のレーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法について、添付図面を参照して説明する。
図1において、レーザ溶接機50は、NC装置10、レーザ発振器11、加工ヘッド20を備える。レーザ発振器11は、一例として、波長1060nm~1080nmのレーザビームを射出するファイバレーザ発振器である。レーザ発振器11が射出したレーザビームはプロセスファイバ12によって加工ヘッド20に伝送される。
【0011】
図2に示すように、加工ヘッド20は、ガルバノスキャナ21とfθレンズ22とを備える。ガルバノスキャナ21は、ガルバノミラー211及び213と、ガルバノミラー211及び213それぞれを所定の角度となるように回転させる駆動部212及び214を備える。プロセスファイバ12より射出してガルバノミラー211に入射したレーザビームは、ガルバノミラー211で反射してガルバノミラー213に入射し、ガルバノミラー213で反射してfθレンズ22に入射する。fθレンズ22は入射したレーザビームを集束して被溶接材料上に照射する。
【0012】
ガルバノミラー211及び213の各角度を変更することにより、被溶接材料に照射されるレーザビームを変位させることができる。ガルバノミラー211及び213を連続的に動かすことによって、レーザビームを振動させたり、回転させたりすることができる。fθレンズ22は、ガルバノスキャナ21を動作させても、被溶接材料の1つの平面上にレーザビームを集束させることができる。
【0013】
図1に戻り、NC装置10は、レーザ発振器11及びガルバノスキャナ21の駆動部212及び214を制御する。NC装置10は、加工ヘッド20の移動も制御する。加工ヘッド20より射出されたレーザビームは、被溶接材料の一例である板金W1及びW2の突き合わせ面120に照射されて、板金W1と板金W2とが溶接される。
【0014】
加工ヘッド20がガルバノスキャナ21を備えることは必須ではないが、ガルバノスキャナ21を備えることが好ましい。加工ヘッド20がガルバノスキャナ21を備えない場合、レーザビームが板金W1及び板金W2に向かうように反射させるベンドミラーと、fθレンズ22に代えて通常の集束レンズを備えればよい。
【0015】
図1において、レーザ溶接モニタリング装置100は、受光ユニット30a~30cと、加工ヘッド20を挟んで受光ユニット30bと対向する位置にある図示されていない受光ユニットとの4つの受光ユニットを備える。任意の位置の受光ユニットを受光ユニット30と称することとする。加工ヘッド20がガルバノスキャナ21を備える構成においては、受光ユニット30を2つ以上とするのがよく、複数の受光ユニット30をfθレンズ22の周囲に等間隔で配置するのがよい。加工ヘッド20がガルバノスキャナ21を備えない場合、受光ユニット30は1つであってもよい。加工ヘッド20がガルバノスキャナ21を備えない構成であっても、受光ユニット30を2つ以上としてもよい。
【0016】
また、レーザ溶接モニタリング装置100は、分光ユニット40、トリガユニット60、レーザ溶接モニタ80を備える。
【0017】
板金W1及びW2の突き合わせ面120にレーザビームが照射されると、レーザビームの照射位置からレーザビームの反射光と熱放射による近赤外光とを含む放射光が発生する。4つの受光ユニット30は放射光を受光し、4つの受光ユニット30が受光した放射光はバンドルファイバ31によって分光ユニット40へと入射される。
図1において、突き合わせ面120から受光ユニット30に向かう実線の矢印線はレーザビームの反射光を示し、一点鎖線の矢印線は近赤外光を示す。近赤外光の波長は、1300nm~2500nmである。近赤外光は、レーザビームの反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光の好適な一例である。
【0018】
受光ユニット30は、放射光の入射面に保護ガラスを有し、光ファイバのコアの端面に放射光が入射されるように構成されている。受光ユニット30はレーザビームの反射光と熱放射による近赤外光とを含む放射光を受光する構成であればよく、構成は限定されない。
【0019】
図3に示すように、分光ユニット40は、波長1300nm以上の光を透過させ、波長1300nm未満の光を反射させるダイクロイックミラー41と、フォトセンサ42とを備える。実線の矢印線で示すレーザビームの反射光はダイクロイックミラー41で反射し、一点鎖線の矢印線で示す近赤外光はダイクロイックミラー41を透過してフォトセンサ42に入射する。フォトセンサ42は、入射した近赤外光を電気信号(近赤外モニタ信号)に変換して出力する。近赤外モニタ信号は第1の電気信号の一例である。第1の電気信号はデジタル信号であるのがよい。
【0020】
図1において、分光ユニット40より射出されたレーザビームの反射光は、反射光伝送ファイバ51で伝送されて、トリガユニット60に入射される。分光ユニット40より出力された近赤外モニタ信号はモニタ信号伝送ケーブル52で伝送されて、レーザ溶接モニタ80に入力される。
【0021】
図4に示すように、トリガユニット60は、フォトセンサ61、レベル判定部62、トリガ信号発生部63を備える。フォトセンサ61は、入射したレーザビームの反射光を電気信号(第2の電気信号)に変換する。レベル判定部62は、入力された電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。トリガ信号発生部63は、レベル判定部62に入力された電気信号が所定の閾値以上であるとき、トリガ信号を生成して出力する。レベル判定部62及びトリガ信号発生部63は回路で構成することができる。レベル判定部62及びトリガ信号発生部63をプロセッサで構成してもよい。第2の電気信号はアナログ信号であってもデジタル信号であってもよい。トリガ信号はデジタル信号であるのがよい。
【0022】
図1において、トリガ信号はトリガ信号伝送ケーブル71で伝送されて、レーザ溶接モニタ80に入力される。レーザ溶接モニタ80は、トリガ信号が入力されるとトリガ信号の入力をトリガとして、近赤外モニタ信号に基づいて、レーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始する。一例として、レーザ溶接モニタ80は、入力された近赤外モニタ信号を所定時間積分して、積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあればレーザ溶接は正常に行われていると判定する。レーザ溶接モニタ80は、積分値が上限値と下限値との間になければレーザ溶接が正常に行われておらず、異常が発生していると判定する。レーザ溶接モニタ80が、レーザ溶接が正常に行われているか否かをどのように判定するかは限定されない。
【0023】
レーザ溶接モニタ80は、筐体前面に発光ダイオードL1~L4を備えている。レーザ溶接モニタ80は、レーザ溶接は正常に行われていると判定したとき、例えば緑色の発光ダイオードL4を点灯させ、レーザ溶接に異常が発生していると判定したとき、例えば赤色の発光ダイオードL3を点灯させる。例えば緑色の発光ダイオードL1は、レーザ溶接モニタ80の電源が投入されているときに点灯する。例えば緑色の発光ダイオードL2は、トリガ信号が入力されたときに点灯する。
【0024】
図5に示す特性図を用いて、レーザ溶接モニタ80がレーザ溶接のモニタリングを開始するタイミングを説明する。
図5において、加工ヘッド20が、時刻t0で板金W1及びW2の突き合わせ面120に対するレーザビームの照射を開始し、時刻t1でレーザビームの照射を終了したとする。一点鎖線で示す近赤外光の放射光強度は、レーザビームの照射を開始した後、徐々に増大する。一方、実線で示すレーザビームの反射光の放射光強度は、レーザビームの照射を開始した直後に急激に増大して急激に低下し、その後ほぼ一定値となる。
【0025】
トリガユニット60のレベル判定部62に設定されている閾値が、
図5に示す閾値TH1の放射光強度に対応する電気信号のレベルであるとすると、トリガユニット60は、時刻t0の直後にトリガ信号を出力する。よって、レーザ溶接モニタリング装置100は、レーザ溶接機50が板金W1及びW2の溶接を開始したタイミングを的確に検出し、溶接を開始したタイミングからほとんど時間遅れがなく、レーザ溶接のモニタリングを開始することができる。
【0026】
図5において、仮にトリガユニット60が、近赤外光の放射光強度が所定の強度まで増大したタイミングでトリガ信号を出力するように構成すると、近赤外光の放射光強度は徐々にしか増大しないため、同じレーザ溶接の条件で繰り返し加工した場合、閾値TH1を超えるタイミングがばらつく。よって、時刻t0の直後にトリガ信号を出力することはできず、トリガ信号を出力するタイミングに時間遅れが発生したり、ばらつきが発生したりする。それと比較して、反射光は加工開始直後に急激に増大するため、繰り返し加工を行っても閾値TH1を超えるタイミングのばらつきを抑えることができ、レーザ溶接のモニタリングを高い繰り返し精度で開始することができる。
【0027】
図6に示すフローチャートを用いて、レーザ溶接モニタリング装置100で実行されるレーザ溶接モニタリング方法を説明する。
図6はレーザ溶接機50で実行される処理も含む。
図6において、NC装置10は、ステップS1にて、溶接開始の指示がなされたか否かを判定する。溶接開始の指示がなされなければ(NO)、NC装置10はステップS1の処理を繰り返す。溶接開始の指示がなされると(YES)、NC装置10は、ステップS2にて、レーザ発振器11におけるレーザ発振を開始させて、レーザ溶接を開始する。
【0028】
ステップS3にて、4つの受光ユニット30はレーザビームの照射位置からの放射光を受光し、バンドルファイバ31が受光した放射光を分光ユニット40へと伝送する。分光ユニット40は、ステップS4にて、放射光に含まれているレーザビームの反射光と近赤外光とを分光する。分光ユニット40のフォトセンサ42は、ステップS5にて、近赤外光を電気信号に変換して、レーザ溶接モニタ80に供給する。
【0029】
ステップS5と並行して、トリガユニット60は、ステップS6にて、反射光伝送ファイバ51で伝送された反射光を電気信号に変換し、電気信号のレベルが閾値を超えたら、トリガ信号を出力する。
【0030】
レーザ溶接モニタ80は、ステップS7にて、トリガユニット60からトリガ信号を受信したか否かを判定する。トリガ信号を受信しなければ(NO)、レーザ溶接モニタ80はステップS7の処理を繰り返す。トリガ信号を受信すれば(YES)、レーザ溶接モニタ80は、ステップS8にて、レーザ溶接のモニタリングを開始する。
【0031】
レーザ溶接モニタ80は、ステップS9にて、予め設定した測定時間が経過したか否かを判定する。測定時間が経過しなければ(NO)、レーザ溶接モニタ80はステップS9の処理を繰り返す。ステップS9の処理を繰り返している期間、レーザ溶接のモニタリングが継続されている。測定時間が経過していれば(YES)、レーザ溶接モニタ80はレーザ溶接のモニタリングを終了させる。
【0032】
レーザ溶接モニタ80がレーザ溶接のモニタリングを終了したとしても、レーザ溶接機50による溶接は終了していないことがある。レーザ溶接モニタ80がレーザ溶接のモニタリングを終了するまでに、レーザ溶接機50による溶接が終了することがあってもよい。なお、仮に、測定時間内にレーザ溶接モニタ80に再びトリガ信号が入力されたとしても、測定時間内のトリガ信号は無視される。
【0033】
レーザ溶接モニタ80がレーザ溶接のモニタリングを終了するタイミングは、測定時間が経過した時点に限定されない。レーザ溶接モニタ80は、レーザ溶接機50による溶接は終了した時点でレーザ溶接のモニタリングを終了してもよい。
【0034】
以上のようにして本実施形態のレーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法によれば、レーザ溶接機50が被溶接材料の溶接を開始したタイミングを的確に検出し、レーザ溶接のモニタリングを開始することができる。
【0035】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本実施形態においては、レーザ溶接モニタ80は、近赤外光を電気信号に変換した近赤外モニタ信号を用いてレーザ溶接が正常に行われているか否かを判定しているが、プラズマ光または可視光を電気信号に変換してもよい。レーザ発振器11が射出するレーザビームの波長とは異なる波長の光を電気信号に変換すればよい。
【0036】
レーザ発振器11として、ファイバレーザ発振器の代わりにダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)を用いてもよい。DDL発振器は、波長910nm~950nmのレーザビームを射出する。レーザ発振器11より射出されるレーザビームの波長は、波長900nm~1100nmの1μm帯とするのがよい。
【0037】
図1に示すレーザ溶接モニタリング装置100は、分光ユニット40、トリガユニット60、レーザ溶接モニタ80の各筐体を分けているが、レーザ溶接モニタ80の筐体内にトリガユニット60を設けてもよい。分光ユニット40とトリガユニット60とを1つの筐体内に設けてもよい。レーザ溶接モニタ80の筐体内に分光ユニット40とトリガユニット60とを設けてもよい。分光ユニット40またはトリガユニット60を設ける位置は限定されない。
【0038】
以上説明したトリガ信号の入力によってレーザ溶接モニタ80がレーザ溶接のモニタリングを開始する手法を、アーク溶接またはレーザ切断のモニタリングを開始する際に応用してもよい。特に、板金のレーザ切断においては、本実施形態の手法をほぼそのまま用いることができ、レーザ溶接またはレーザ切断を対象とするレーザ加工モニタリング装置及びレーザ加工モニタリング方法とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 NC装置
11 レーザ発振器
12 プロセスファイバ
20 加工ヘッド
21 ガルバノスキャナ
22 fθレンズ
30a,30b,30c 受光ユニット
31 バンドルファイバ
40 分光ユニット
41 ダイクロイックミラー
42,61 フォトセンサ
50 レーザ溶接機
51 反射光伝送ファイバ
52 モニタ信号伝送ケーブル
60 トリガユニット
62 レベル判定部
63 トリガ信号発生部
71 トリガ信号伝送ケーブル
80 レーザ溶接モニタ
100 レーザ溶接モニタリング装置
120 突き合わせ面
W1,W2 板金(被溶接材料)