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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】CO2回収装置及びCO2回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20230922BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20230922BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230922BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230922BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/18 130
B01D53/78
C01B32/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020066881
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021159892
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕士
(72)【発明者】
【氏名】平田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】上條 孝
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 晋平
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/066042(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/104744(WO,A1)
【文献】特開昭54-120280(JP,A)
【文献】米国特許第02878099(US,A)
【文献】特開2019-130463(JP,A)
【文献】特開2015-199007(JP,A)
【文献】特開2015-151319(JP,A)
【文献】特開2013-059726(JP,A)
【文献】特開2014-036942(JP,A)
【文献】特開2016-112497(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-18、34-80
C01B 32/50
F23J 15/00-04
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度のCO2を含有するガスとCO2吸収液とを向流接触させてCO2を除去するCO2吸収塔と、
CO2を吸収したリッチ溶液をリボイラからの蒸気で熱交換し、CO2吸収液として再生する吸収液再生塔と、
前記CO2吸収塔の塔底部からCO2を吸収したリッチ溶液を抜出し、前記吸収液再生塔の上部側に供給するリッチ溶液供給ラインと、
前記吸収液再生塔の塔底部からCO2を放出したリーン溶液を抜出し、前記CO2吸収塔の上部側に供給するリーン溶液供給ラインと、を備えるCO2回収装置であって、
前記CO2吸収塔が、
少なくとも二段以上のCO2吸収部を有し、
各段のCO2吸収部の下部側から抜出したCO2吸収液を、抜出段と同じ段の各段のCO2吸収部の上部側に、循環液として供給する吸収液循環ラインと、
前記吸収液循環ラインから循環液の一部を抜出し、抜出段よりも一つ下の段に抜出液として供給する吸収液抜出ラインと、を有するCO2回収装置。
【請求項2】
前記ガス中のCO2濃度が10容量%以下である請求項1に記載のCO2回収装置。
【請求項3】
循環液と抜出液との分割割合の流量比を、1対1~60対1とする請求項1又は請求項2に記載のCO2回収装置。
【請求項4】
最上段のCO2吸収部のガス流れ後流側に、水洗部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のCO2回収装置。
【請求項5】
上段側の前記CO2吸収部の吸収液循環ラインに冷却部を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のCO2回収装置。
【請求項6】
低濃度のCO2を含有するガスとCO2吸収液とを向流接触させてCO2を除去するCO2吸収工程と、CO2を吸収したリッチ溶液を蒸気で熱交換し、CO2吸収液として再生する吸収液再生工程と、前記CO2吸収工程でCO2を吸収したリッチ溶液を抜出し、前記吸収液再生工程に供給し、前記吸収液再生工程で塔底部からO2を放出したリーン溶液を抜出し、前記CO2吸収工程に供給し、ガス中のCO2を回収するCO2回収方法であって、
前記CO2吸収工程が、
少なくとも二段以上のCO2吸収部を有し、
各段のCO2吸収部の下部側から抜出したCO2吸収液を、抜出段と同じ段の各段のCO2吸収部の上部側に、循環液として供給する吸収液循環工程と、
吸収液循環工程から循環液の一部を抜出し、抜出段よりも一つ下の段に抜出液として供給する吸収液抜出工程と、を有するCO2回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収装置及びCO2回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばボイラからの燃焼排ガスの中に含有される酸性ガス、特にCO2を回収・除去する方法について、様々な方法が提案されている。このような方法としては、燃焼排ガス中のCO2を、例えばアミン水溶液を用いたCO2吸収液として接触させて除去し、回収する方法がある。
【0003】
例えば、CO2吸収液は排ガス中のCO2をCO2吸収塔で吸収し、排ガスからCO2を除去した後、再生塔でCO2吸収液に吸収されたCO2を放散してCO2吸収液を再生し、この再生したCO2吸収液を再びCO2吸収塔に循環して排ガスからCO2を除去するために再利用する方法が用いられている。このとき、CO2を吸収したCO2吸収液は、再生塔においてリボイラからの蒸気で加熱されることにより、CO2を放散し、高純度のCO2が回収される。この際、CO2吸収塔において、上部のCO2吸収液の供給位置と下部ガス供給位置の間の少なくとも一か所に、下部CO2吸収液の抜出液の一部を返送し、排ガスからのCO2の吸収量を増大させ、CO2吸収液の再生に必要なリボイラ熱量を低減することの提案がある(例えば、特許文献1)。また、CO2吸収塔の吸収部を複数段とし、下段の吸収部の循環液の抜出位置よりも上部側に抜出液の一部を返送し、同様に排ガスからのCO2の吸収量を増大させ、CO2吸収液の再生に必要なエネルギーを低減することの提案がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-512088号公報
【文献】国際公開第09/104744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状のCO2回収装置では、再生塔でのCO2の放散と、CO2吸収液の再生に要する蒸気エネルギーの低減に課題があり、CO2吸収液を再生利用する際のリボイラに多くの熱量を要しているという問題がある。
【0006】
さらに燃焼排ガス中のCO2の含有量は10~15容量%(以下単に「%」という)であるが、燃焼排ガス以外の微量のCO2を含有する大気圧近傍のガスや、濃度10%以下のCO2を含有する例えばガスタービンガス等からのガス中のCO2の存在量の少ない各種ガスからCO2を回収する場合においても、CO2吸収液を再生利用する際のリボイラ熱量を低減することができるCO2回収装置及び方法が切望されている。
【0007】
本発明は、前記事情に照らして、CO2の存在量の少ない各種ガスからCO2を回収する際において、CO2吸収液を再生利用する際のリボイラ熱量を低減することができるCO2回収装置及びCO2回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様のCO2回収装置は、低濃度のCO2を含有するガスとCO2吸収液とを向流接触させてCO2を除去するCO2吸収塔と、CO2を吸収したリッチ溶液をリボイラからの蒸気で熱交換し、CO2吸収液として再生する吸収液再生塔と、前記CO2吸収塔の塔底部からCO2を吸収したリッチ溶液を抜出し、前記吸収液再生塔の上部側に供給するリッチ溶液供給ラインと、前記吸収液再生塔の塔底部からCO2を放出したリーン溶液を抜出し、前記CO2吸収塔の上部側に供給するリーン溶液供給ラインと、を備えるCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔が、少なくとも二段以上のCO2吸収部を有し、各段のCO2吸収部の下部側から抜出したCO2吸収液を、抜出段と同じ段の各段のCO2吸収部の上部側に、循環液として供給する吸収液循環ラインと、前記吸収液循環ラインから循環液の一部を抜出し、抜出段よりも一つ下の段に抜出液として供給する吸収液抜出ラインと、を有する。
【0009】
本発明の第2の態様のCO2回収方法は、低濃度のCO2を含有するガスとCO2吸収液とを向流接触させてCO2を除去するCO2吸収工程と、CO2を吸収したリッチ溶液を蒸気で熱交換し、CO2吸収液として再生する吸収液再生工程と、前記CO2吸収工程でCO2を吸収したリッチ溶液を抜出し、前記吸収液再生工程に供給し、前記吸収液再生工程で塔底部からCO2を放出したリーン溶液を抜出し、前記CO2吸収工程に供給し、ガス中のCO2を回収するCO2回収方法であって、前記CO2吸収工程が、少なくとも二段以上のCO2吸収部を有し、各段のCO2吸収部の下部側から抜出したCO2吸収液を、抜出段と同じ段の各段のCO2吸収部の上部側に、循環液として供給する吸収液循環工程と、吸収液循環工程から循環液の一部を抜出し、抜出段よりも一つ下の段に抜出液として供給する吸収液抜出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CO2の存在量の少ない各種ガスからCO2を回収する際において、CO2回収の際のリボイラ熱量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、実施形態2に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。
図3図3は、実施形態3に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。
図4図4は、試験例1のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。
図5図5は、試験例1のCO2回収量比を示す図である。
図6図6は、試験例1の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。
図7図7は、試験例2のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。
図8図8は、試験例2のCO2回収量比を示す図である。
図9図9は、試験例2の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。
図10図10は、試験例3のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。
図11図11は、試験例3のCO2回収量比を示す図である。
図12図12は、試験例3の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。
図13図13は、試験例4のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。
図14図14は、試験例4のCO2回収量比を示す図である。
図15図15は、試験例4の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に表現された思想及び範囲を逸脱することなく、種々の変形、追加、及び省略が当業者によって可能である。
【0013】
[実施形態1]
【0014】
図1は、実施形態1に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、このCO2回収装置10Aは、例えば低濃度のCO2を含有する大気圧近傍の導入ガス(例えば空気)11A中のCO2を回収する装置である。このCO2回収装置10Aは、導入ガス11AとCO2吸収液のリーン溶液13Aとを向流接触させて導入ガス11A中のCO2をCO2吸収液に吸収させて除去するCO2吸収塔14と、このCO2吸収塔14の後段に設けられ、CO2を吸収したCO2吸収液のリッチ溶液13CからCO2を放出させてリーン溶液13Aを再生する吸収液再生塔15と、を具備する。
【0015】
このCO2回収装置10Aにおいては、CO2吸収液がCO2吸収塔14と吸収液再生塔15との間を循環している。CO2が放出されたCO2吸収液のリーン溶液13Aは、CO2吸収塔14でガス中のCO2を吸収してリッチ溶液13Cとなり、このリッチ溶液13Cが吸収液再生塔15に供給される。この供給されたリッチ溶液13Cは、吸収液再生塔15でCO2が放出され再生されて、リーン溶液13Aとなり、その後CO2吸収塔14に供給される。ここで、CO2吸収液は、CO2を放出したリーン溶液13A、ガス中のCO2を一部吸収したセミリッチ溶液13B、ガス中のCO2を吸収してCO2吸収塔14から排出されるリッチ溶液13Cの総称であり、CO2回収装置10A内を循環する場所ごとにおいて、CO2を含む割合に応じてその名称を変更して使用している。
【0016】
ここで、本発明で使用できるCO2吸収液としては、特に限定されるものではないが、例えばアルカノールアミンやアルコール性水酸基を有するヒンダードアミン類等のアミン系化合物を例示することができる。このようなアルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等を例示することができるが、通常モノエタノールアミン(MEA)が好ましい。またアルコール性水酸基を有するヒンダードアミンとしては、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-(エチルアミノ)-エタノール(EAE)、2-(メチルアミノ)-エタノール(MAE)、2-(ジエチルアミノ)-エタノール(DEAE)等を例示することができる。
【0017】
CO2吸収塔14の塔底部14bと吸収液再生塔15の塔頂部15aとの間には、CO2吸収塔14でCO2を吸収したリッチ溶液13Cを、吸収液再生塔15の上部側に供給するリッチ溶液供給ラインL1が設けられている。このリッチ溶液供給ラインL1には、CO2吸収塔14でCO2を吸収したリッチ溶液13Cを吸収液再生塔15に向けて供給するリッチ溶液ポンプ51と、リッチ溶液13Cを吸収液再生塔15で加熱してCO2が除去されたリーン溶液13Aによって加熱するリッチ・リーン溶液熱交換器52とが設けられている。
【0018】
CO2吸収部141は、CO2吸収塔14内の高さ方向に配設された、導入ガス11AからCO2を吸収する第一CO2吸収部(以下「第一吸収部」という)141A及び第一吸収部141Aの下部に位置する第二CO2吸収部(以下「第二吸収部」という)141Bを含む。
【0019】
第一吸収部141Aと第二吸収部141Bとの間には、第一吸収部141Aの上部から流下して第一吸収部141Aの下部に滞留したセミリッチ溶液13Bを貯留する液貯留部143A及びチムニートレー143Bが設けられている。
【0020】
この液貯留部143Aには、該液貯留部143Aに貯留したセミリッチ溶液13Bを、CO2吸収塔14の抜出位置Aから全量を抜き出し、抜出段と同じ段の第一吸収部141Aの上部の導入位置Bから導入する第一吸収液循環ラインL11が設けられている。
【0021】
第一吸収液循環ラインL11には、セミリッチ溶液13Bを第一吸収部141Aの上部に循環させるセミリッチ溶液ポンプ25が設けられている。また、第一吸収液循環ラインL11には、循環するセミリッチ溶液13Bの循環流量を調整する循環流量調整弁V1が設けられている。
【0022】
第一吸収液循環ラインL11には、リーン溶液供給ラインL2の先端が接続位置Hにて接続され、吸収液再生塔15で再生されたリーン溶液13Aと循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)とが合流され、これらが合わさって(13A/13B)、上段液分散器140Aに導入される。なお、リーン溶液供給ラインL2の先端を、第一吸収液循環ラインL11に接続せずに、第一吸収部141Aの上部の上段液分散器140Aに直接接続するようにして、リーン溶液13Aと循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)とを別々に上段液分散器140Aへ導入するようにしてもよい。
【0023】
CO2吸収塔の塔底部の液貯留部144には、該液貯留部144に貯留したリッチ溶液13CをCO2吸収塔14の抜出位置Cから全量を抜き出し、抜出段と同じ段の第二吸収部141Bの上部の導入位置Dから導入する第二吸収液循環ラインL12が設けられている。
【0024】
また、第二吸収液循環ラインL12から抜出位置Eでリッチ溶液13Cの一部を、循環液13C-1として分離している。第二吸収液循環ラインL12の抜出位置Eでは、リッチ溶液供給ラインL1の基端が接続されている。そして、抜出液のリッチ溶液13Cはリッチ溶液供給ラインL1を介して吸収液再生塔15に供給されている。リッチ溶液供給ラインL1には、リッチ送液流量調整弁V2を設け、吸収液再生塔15へのリッチ溶液13Cの供給量を調整している。また、第二吸収液循環ラインL12には、循環流量調整弁V3を設け、循環する循環液13C-1の循環流量を調整している。
【0025】
また、第一吸収液循環ラインL11から循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)の一部を、抜出位置Fで抜出液13B-1として抜出し、抜出段よりも一つ下の段の第二吸収部141Bに抜出液13B-1を供給する吸収液抜出ラインL21が設けられている。
【0026】
本実施の形態では、吸収液抜出ラインL21は、その先端が第二吸収液循環ラインL12に接続位置Gで接続され、抜出液13B-1は循環液13C-1と合流している。これにより、抜出液13B-1と循環液13C-1とが合わさって(13B-1/13C-1)、第二吸収部141Bの上部の導入位置Dに一つのラインを介して供給される。なお、吸収液抜出ラインL21の先端を、第二吸収液循環ラインL12に接続せずに、第二吸収部141Bの上部の下段液分散器140Bに直接接続して、抜出液13B-1と循環液13C-1とを別々に下段液分散器140Bへ導入するようにしてもよい。
【0027】
また、吸収液抜出ラインL21には、抜出流量調整弁V4を設け、抜出液13B-1の抜出流量を調整している。
【0028】
そして、第一吸収部141Aにおいては、吸収液再生塔15で再生されたリーン溶液13Aと循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)とがCO2吸収液として供給される。供給されたリーン溶液13Aと循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)とは、第一吸収部141Aの上部に設けた上段液分散器140Aから分散され、充填槽内を流下する。ここで、循環液としてのセミリッチ溶液13Bは、リーン溶液13AよりもCO2濃度が高いが、まだまだCO2吸収能力はあるので、第一吸収部141Aにおいて再利用することでガス11B中のCO2を吸収することができる。
【0029】
また、第二吸収部141Bにおいては、第一吸収部141Aでガス11B中のCO2を一部吸収したセミリッチ溶液13Bの抜出液13B-1と循環液13C-1とが供給される。供給された抜出液13B-1と循環液13C-1とは、第二吸収部141Bの上部に設けた下段液分散器140Bから分散され、充填槽内を流下する。ここで、循環液としてのリッチ溶液13Cは、セミリッチ溶液13BよりもCO2濃度が高いが、まだまだCO2吸収能力はあるので、第二吸収部141Bにおいて再利用することで導入ガス11A中のCO2を吸収することができる。
【0030】
CO2吸収塔14では、第一吸収部141AでCO2を含有するガス11Bと、塔内に導入されたアミン系化合物からなるCO2吸収液のリーン溶液13Aと循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)とが対向流接触する。この結果、塔内に導入されたガス中のCO2が除去された出口ガス11Cとなると共に、リーン溶液13Aがセミリッチ溶液13Bとなる。
【0031】
そして、第二吸収部141Bでは、塔底部側から導入されたCO2を含有する導入ガス11AとCO2を一部吸収したセミリッチ溶液13B(抜出液13B-1と循環液13C-1)とが対向流接触する。これにより、導入ガス11A中のCO2は、化学反応によりセミリッチ溶液13Bに吸収される。この結果、導入ガス11A中のCO2が除去されて、CO2濃度が低減された導入ガス11Bとなると共に、セミリッチ溶液13BがCO2をより吸収してリッチ溶液13Cとなる。このようにして、CO2を含有する導入ガス11A、11Bは、第一、第二吸収部141A、141Bを通過することにより、CO2が除去された出口ガス11Cとなる。
【0032】
この脱炭酸された出口ガス11Cは、塔頂部14a内に設置されたミストエリミネータ145でガス中のミストが捕捉され、CO2吸収塔14の塔頂部14aから外部へ排出される。
【0033】
また、吸収液再生塔15の内部には、CO2を吸収したリッチ溶液13Cから水蒸気によりCO2を放出する充填部151が設けられている。吸収液再生塔15の塔底部15b近傍には、塔底部15bに流下したリーン溶液13Aの一部を循環する循環ラインL4が設けられている。この循環ラインL4には、飽和水蒸気Sによってリーン溶液13Aを間接加熱して水蒸気を発生するリボイラ31と、リボイラ31に供給する飽和水蒸気Sの量を調整する調整弁32とが設けられている。なお、加熱後の飽和水蒸気Sは、水蒸気凝縮水W4となる。
【0034】
吸収液再生塔15の塔頂部15aには、水蒸気を伴ったCO2ガス41を排出するガス排出ラインL5が設けられている。このガス排出ラインL5には、水蒸気を伴ったCO2ガス41中の水分を凝縮するコンデンサ42と、CO2ガス44と凝縮水W5とを分離する分離ドラム43とが設けられている。凝縮水W5として水分が分離されたCO2ガス44は、分離ドラム43の上部から外部に放出される。分離ドラム43の底部と吸収液再生塔15の塔頂部15aとの間には、分離ドラム43にて分離された凝縮水W5を吸収液再生塔15の塔頂部15aに供給する凝縮水ラインL6が設けられている。凝縮水ラインL6には、分離ドラム43にて分離された凝縮水W5を吸収液再生塔15の塔頂部15aに供給する凝縮水循環ポンプ45が設けられている。
【0035】
また、吸収液再生塔15の塔底部15bとCO2吸収塔14の塔頂部14aには、吸収液再生塔15の塔底部15bのCO2吸収液のリーン溶液13Aを、CO2吸収部141の上部側に供給するリーン溶液供給ラインL2が設けられている。このリーン溶液供給ラインL2には、吸収液再生塔15において水蒸気で加熱されてCO2が除去されたリーン溶液13Aにより、CO2を吸収したリッチ溶液13Cを加熱するリッチ・リーン溶液熱交換器52と、吸収液再生塔15の塔底部15bのリーン溶液13AをCO2吸収部141の上部に供給するリーン溶液ポンプ54と、CO2吸収液のリーン溶液13Aを所定の温度に冷却する冷却部55とが設けられている。
【0036】
本実施形態では、この冷却部55において、リーン溶液13AをCO2吸収塔14に導入する導入ガス11Aのガス温度(室温:例えば25℃)と同等、又は近似する温度まで冷却するようにしている。
【0037】
次に、本実施形態に係るCO2回収装置10Aの全体動作について説明する。例えば微量のCO2を含有する導入ガス(大気)11Aは、CO2吸収塔14の塔底部14bから塔内部に導入され、塔内を上昇する。CO2吸収塔14に導入されたガスは、CO2吸収部141の第一吸収部141A及び第二吸収部141Bで例えばアルカノールアミン等のアミン系化合物を含むCO2吸収液と対向流接触され、ガス中のCO2がCO2吸収液に吸収されてCO2が除去された脱炭酸された出口ガス11Cとなる。
【0038】
CO2が除去された出口ガス11CはCO2吸収塔14の塔頂部14aから外部へ排出される。
【0039】
CO2吸収塔14でCO2を吸収したCO2吸収液のリッチ溶液13Cは、リッチ溶液供給ラインL1を介してリッチ・リーン溶液熱交換器52でリーン溶液13Aとの間で熱交換された後、リッチ溶液ポンプ51によって吸収液再生塔15の上部側に供給される。
【0040】
吸収液再生塔15に供給されたCO2吸収液のリッチ溶液13Cは、吸収液再生塔15の充填部151内を流下する間にリボイラ31からの水蒸気の熱によりCO2が除去されてリーン溶液13Aとなる。吸収液再生塔15内では、チムニートレー151Aの液貯留部151Bの液が循環ラインL4に循環されると共に、リボイラ31で飽和水蒸気Sによって加熱されて吸収液再生塔15の内部に水蒸気が発生する。リーン溶液13Aは、この発生した水蒸気の熱によりリッチ溶液13CからCO2が放出されることで、得られる。加熱後の飽和水蒸気Sは、水蒸気凝縮水W4となる。CO2吸収液から除去された水蒸気を同伴するCO2ガス41は、コンデンサ42によって水分が凝縮された後、分離ドラム43の上部から凝縮水W5が分離されたCO2ガス44として外部に放出される。分離された凝縮水W5は、吸収液再生塔15に供給される。
【0041】
吸収液再生塔15の塔底部15bから抜き出されたリーン溶液13Aは、リーン溶液供給ラインL2を介してリッチ・リーン溶液熱交換器52によってリッチ溶液13Cとの間で熱交換された後、リーン溶液ポンプ54によってCO2吸収塔14のCO2吸収部141の上部側に供給される。
【0042】
CO2吸収部141の上部側に供給されたリーン溶液13Aは、第一吸収部141Aでガス11BのCO2を吸収してセミリッチ溶液13Bとなり、第一吸収部141Aの下部側の抜出位置Aにて、第一吸収液循環ラインL11により抜き出される。抜き出されたセミリッチ溶液13Bは、セミリッチ溶液ポンプ25によって第一吸収部141Aの上部側の導入位置Bに、リーン溶液13Aと共に供給される。
【0043】
また、第二吸収部141Bでは、ガス11B中のCO2を吸収してリッチ溶液13Cとなる。このリッチ溶液13Cは、第二吸収部141Bの下部側の抜出位置Cにて、第二吸収液循環ラインL12により抜き出される。抜き出されたリッチ溶液13Cは、循環液13C-1を抜出位置Eで分配され、リッチ溶液ポンプ51によって第二吸収部141Bの上部側の導入位置Dに、循環液13C-1として供給される。
【0044】
また、セミリッチ溶液13Bは第一吸収液循環ラインL11の抜出位置Fで一部が吸収液抜出ラインL21により分配され、第二吸収液循環ラインL12の接続位置Gで抜出液13B-1と循環液13C-1とが合流する。この抜出液13B-1と循環液13C-1とが合わさって(1B-1/13C-1)、第二吸収部141Bの上部の導入位置Dに一つのラインを介して供給される。
【0045】
抜出位置Eで循環液13C-1を分岐したリッチ溶液13Cは、リッチ溶液供給ラインL1を介して吸収液再生塔15に供給される。
【0046】
このように、本実施形態によれば、CO2吸収塔14の第一吸収部141Aの下部側から抜出したセミリッチ溶液13Bを、抜出段と同じ段の141Aの上部側に供給する第一吸収液循環ラインL11と、CO2吸収塔14の第二吸収部141Bの下部側から抜出したリッチ溶液13Cを抜出段と同じ段の第二吸収部141Bの上部側に供給する第二吸収液循環ラインL12と、第一吸収部141Aの下部側から抜出した循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)を分岐させ、抜出段よりも一つ下の段の第二吸収部141B下部側から抜出したリーン溶液13C-1に合流させる吸収液抜出ラインL21と、吸収液再生塔15から、CO2吸収塔14の最上段の第一吸収部141Aの上部に供給し、第一吸収部141Aの下部側から抜出したセミリッチ溶液13Bに合流させるリーン溶液供給ラインL2と、CO2吸収塔14から吸収液再生塔15へ吸収塔底部のリッチ溶液13Cを送液するリッチ溶液供給ラインL1と、を有している。
【0047】
よって、実施形態1によれば、CO2を吸収したセミリッチ溶液13B、リッチ溶液13Cを、第一吸収部141A、第二吸収部14Bの各々の下部側から外部へ抜出し、吸収液を抜出した位置より各段の上部側に循環液として供給することができる。これにより、循環された循環液は、再度第一吸収部141A、第二吸収部14Bにおいて、吸収液として再利用してガス中のCO2を回収することができる。この結果、CO2吸収液中のCO2濃度を上昇させることで、CO2吸収塔14内でのCO2回収効率が向上し、CO2吸収液の単位量当りのCO2回収量を増加させることができる。また、CO2吸収塔14の塔底部14bにおけるリッチ溶液13C中のCO2濃度を上昇させることができるため、吸収液再生塔15には、CO2濃度を高くしたリッチ溶液13Cを供給することができる。
【0048】
ここで、本実施形態のように、吸収部が第一吸収部141Aと第二吸収部141Bとの二段構成の場合には、循環液13C-1からの抜出液はリッチ溶液13Cであり、リッチ溶液供給ラインL1が吸収液抜出ラインとして機能して、抜出液であるリッチ溶液13Cを吸収液再生塔15へ供給する。なお、吸収部が第一吸収部141Aと第二吸収部141Bと第三吸収部との三段構成の場合には、第二吸収部141Bの循環液13C-1からの抜出液は、第二吸収部の抜出段よりも一つ下の段である第三吸収部に、抜出液として供給することとなる。
【0049】
この結果、CO2吸収塔14において、セミリッチ溶液13Bと、リッチ溶液13Cとを二回再利用することとなるので、CO2吸収塔14と吸収液再生塔15との間を循環するCO2吸収液の系内の循環流量を減少させることができる。これにより、吸収液再生塔15に供給されるリッチ溶液13Cの流量を減少させることができるため、CO2吸収液の再生のために吸収液再生塔15で使用するリボイラ31のスチーム供給量を低減し、熱エネルギーの消費を低減することで、エネルギー効率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態では、ガス中のCO2濃度がごく微量のCO2を含有するガス(例えば大気)中からCO2を回収する際でも、吸収液再生塔15に供給されるリッチ溶液13C中のCO2濃度を上昇させることで、吸収液再生塔15において要するスチーム量を軽減し、熱エネルギーの低減を図ることができるため、CO2吸収液の再生の処理において更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0051】
次に、本実施形態に係るCO2回収装置10Aにおける、循環液と抜出液との分配率について説明する。
【0052】
本実施形態では、第一吸収部141Aの下部において、第一吸収液循環ラインL11により循環されるセミリッチ溶液13B(循環液13B)の流量(f1)と、吸収液抜出ラインL21により抜き出される抜出液13B-1の流量(f2)との分割割合の流量比(以下「分配流量比」ともいう)を、1対1~60対1、好ましくは10対1~60対1、さらに好ましくは30対1~60対1とするのが良い。
【0053】
また、CO2吸収塔14の底部において、第二吸収液循環ラインL12に送液される循環液13C-1の流量(f3)と、リッチ溶液供給ラインL1に送液されるリッチ溶液13Cの流量(f4)との分配流量比を、1対1~60対1、好ましくは10対1~60対1、さらに好ましくは30対1~60対1とするのが良い。
【0054】
以下、本実施形態の分配流量比の流量比率の効果を示す好適な試験例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本試験例の図4図9では濃度1%以下のCO2を含有するガスを対象とした例を示している。
【0055】
図4は、試験例1のリッチ溶液中のCO2濃度比を示す図である。ここで、図4では、各段の抜出無のCO2濃度を基準(1)として、性能向上の比率を求めた。図4中、横軸は、第一吸収液循環ラインL11に送液される循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)流量(f1)と、吸収液抜出ラインL21に送液される抜出液13B-1の流量(f2)との分配流量比であり、1対1~60対1としている(なお、図5図6においても同様)。なお、第二吸収液循環ラインL12に送液される循環液13C-1の流量(f1)と、リッチ溶液供給ラインL1に送液される抜出液であるリッチ溶液13Cの流量(f2)との分配流量比も同様であり、1対1~60対1としている。
【0056】
図5は、試験例1のCO2回収量比を示す図である。ここで、図5では、各段の抜出無のCO2回収量を基準(1)として性能向上の比率を求めた。図6は、試験例1の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。図6は、抜出無のリボイラ量を基準(1)として削減率を求めた。
【0057】
図4図6に示すように、試験例1においては、分配流量比が、1対1~60対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果が共に増大した。特に、分配流量比が、1対1~40対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果の増大率が向上した。
【0058】
ここで、吸収液のCO2吸収速度は、物質移動容量係数(物質移動係数と気液接触面積との積)と推進力(CO2分圧とCO2平衡分圧との差)との積で表される。CO2吸収塔14下部側のリッチ液側から塔頂部への循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)の吸収液を返送する場合は、従来技術(特許文献1)にも開示のとおり、ガス中のCO2含有量が多い場合(例えばボイラ排ガスのような10%超-15%のCO2濃度)、推進力の低下より出口側の酸性ガス(CO2)の濃度が上昇する場合がある。
【0059】
これに対して、本試験例のように、例えば、大気のようなCO2濃度が1%と少ないガスからCO2を除去する場合では、CO2吸収部下部側のリッチ液側から上部側のリーン液側に塔頂部を含めて吸収液を循環した場合でも、推進力の低下よりも物質移動容量係数の向上が大きく、CO2吸収速度の向上が図れることとなる。このように、本発明によるCO2吸収速度の向上は、特に対象ガス中CO2濃度が比較的低い条件において顕著である。
【0060】
よって、本発明が適用されるガス中のCO2濃度が低濃度のガスの例示としては、微量(濃度1%以下のCO2)を含有する大気圧近傍のガス、好ましくは、濃度10%以下のCO2を含有する大気圧近傍のガス、さらに好ましくは,濃度5%以下のCO2を含有する大気圧近傍のガスが例示される。ここで、濃度10%以下のCO2を含有するガスとしては、例えばボイラ、ガスタービン、燃焼炉、加熱炉、焼却炉、内燃機関等の燃焼排ガスや大気並びに閉鎖空間および略閉鎖空間等の空気等が例示される。
【0061】
本発明では、大気または閉鎖空間および略閉鎖空間等の空気を対象とする場合、リーン吸収液温度は、対象ガス温度又は、対象ガス温度と極力低い温度に近づけることが望ましい。
【0062】
これは、CO2吸収塔14の導入ガス11が、水分未飽和の大気または空気の場合では、吸収液中の水分蒸発による水分飽和ガスが排出される。このため、吸収液への水の補充が必要となり、リーン溶液温度が高い場合には、CO2吸収塔14の出口ガス11Cの温度上昇および飽和水分量増加による排出水分量が多くなるため、吸収液への水の補充量が増加する。このため、本実施形態では、図1に示すように、リーン溶液供給ラインL2に補給水導入ラインL9を設け、補給水70を導入して、吸収液を希釈することで、吸収液中のアミン濃度の上昇を防止している。
【0063】
CO2吸収塔14の導入ガス11Aが水分未飽和の大気または空気では、CO2吸収量が少ないことから、従来のようなボイラからの燃焼排ガス中のCO2を吸収する際に発生する反応熱による発熱量よりも、水分の蒸発潜熱の吸熱量が多くなる。このため、導入ガス11Aと同温度のリーン溶液13Aを用いた場合でも、例えば実施形態1の試験例1の導入ガス11Aのガス温度(T1)が25℃とした条件では、出口ガス11Cの排出ガス温度(T2)は、導入ガス11Aのガス温度(T1)よりも3℃程度低下する。
【0064】
このように、CO2含有量が微量(CO2濃度1%以下)なガスからCO2を除去する条件では、第一吸収液循環ラインL11、第二吸収液循環ラインL12に冷却器を設置しなくても、CO2吸収塔14に導入されるリーン溶液13Aよりも吸収部循環液の方が温度は低い状態となる。この結果、従来のような吸収塔内部でのCO2を吸収する際のアミン溶液の反応熱が発生しないので、セミリッチ溶液13B、リッチ溶液13Cを循環させる第一吸収液循環ラインL11、第二吸収液循環ラインL12への冷却器の省略を図ることができる。
【0065】
また、比較として、従来技術(特許文献2:国際公開第09/104744号)のように、本発明のような第一吸収液循環ラインL11を設置せず、第二吸収液循環ラインL12のみを用いて吸収液の循環を行った場合(上段循環無し、下段循環有り)の性能を基準(比較例2)とした性能を図7図9に示す。
【0066】
図7は、試験例2のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。ここで、図7では、上段循環無し、下段循環有りのCO2濃度を基準(1)として、性能向上の比率を求めた。図7中、横軸は、第一吸収液循環ラインL11に送液される循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)流量(f1)と、吸収液抜出ラインL21に送液される抜出液13B-1の流量(f2)との分割割合の流量比であり、1対1~60対1としている(なお、図9図10においても同様)。なお、第二吸収液循環ラインL12に送液される循環液13C-1の流量(f1)と、リッチ溶液供給ラインL1に送液される抜出液であるリッチ溶液13Cの流量(f2)との分配流量比も同様であり、1対1~60対1としている。
【0067】
図8は、試験例2のCO2回収量比を示す図である。ここで、図8では、上段循環無し、下段循環有りのCO2回収量を基準(1)として性能向上の比率を求めた。
図9は、試験例2の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。ここで、図9では、上段循環無し、下段循環有りのリボイラ量を基準(1)として削減率を求めた。
【0068】
図7図9に示すように、試験例2においては、分割割合の流量比が、1対1~60対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果が増大した。特に、分割割合の流量比が、1対1~30対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果の増大率が向上した。
【0069】
本実施形態のCO2回収装置10Aでは、CO2吸収塔14の内部に2つの吸収部(第一吸収部141A、第二吸収部141B)を設けた場合について、説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、CO2吸収塔14の内部に2つ以上の吸収部を設け(第一吸収部141Aと第二吸収部141Bとの間にさらに一つ以上の吸収部を設置)、各々循環と抜出を所定の分割割合の流量比として、循環させるようにしてもよい。
【0070】
[実施形態2]
図2は、実施形態2に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。実施形態2では、実施形態1に示す図1のCO2回収装置10Aに新たな構成を追加して説明する。なお、実施形態1の構成と同一構成部分についてはその説明は省略する。
実施形態2のCO2回収装置10Bは、実施形態1のCO2回収装置10Aにおいて、
CO2吸収塔14の第一吸収部141Aのガス流れ後流側の塔頂部14a内に、水洗部142を設けている。
【0071】
この水洗部142の底部には、CO2が除去された出口ガス11Cを洗浄する洗浄水W2を貯留する液貯留部144Aが設けられている。この液貯留部144Aと水洗部142の上部との間には、液貯留部144Aで回収されたCO2吸収液を含む洗浄水W2を水洗部142の塔頂部14a側から供給して循環させる循環ラインL3が設けられている。この循環ラインL3には、洗浄水W2を冷却する熱交換器21と、熱交換器21を介して液貯留部144Aで回収されたCO2吸収液を含む洗浄水W2を循環ラインL3内で循環させる循環ポンプ22が設けられている。
【0072】
本実施形態では、CO2濃度が低いガス中のCO2を回収しているので、前述したように、CO2の吸収はアミン吸収液の発熱反応は生じるものではない。しかしながら、外部へ放出する出口ガス11C中のアミン吸収液の同伴を極力低減するには、図2に示す水洗部142を設置するのが、ニアゼロエミッションを達成する観点からも好ましいものとなる。
【0073】
[実施形態3]
図3は、実施形態3に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。実施形態3では、実施形態2に示す図2のCO2回収装置10Bに新たな構成を追加して説明する。なお、実施形態1の構成と同一構成部分についてはその説明は省略する。
実施形態3のCO2回収装置10Cは、実施形態2のCO2回収装置10Bにおいて、CO2吸収塔14の前流側に、導入ガス11Aを所定温度まで冷却する冷却塔12を設けている。冷却塔12は、導入ガス11Aを冷却する冷却部121を有する。また、冷却塔12の底部12b側と冷却部121の頂部12a側との間には、冷却水W1を循環させる循環水ラインL7が設けられている。この循環水ラインL7には、冷却水W1を冷却する熱交換器122と、冷却水Wを循環水ラインL7内で循環させる循環ポンプ123とを設けている。
【0074】
冷却部121では、導入ガス11Aと冷却水W1とを向流接触させることにより、導入ガス11Aが所定温度まで冷却される。熱交換器122は、導入ガス11Aとの間での熱交換により加熱された冷却水W1を冷却する。循環ポンプ123は、熱交換器122を介して冷却塔12の底部12bに流下した冷却水W1を冷却部121の頂部12aに供給する。冷却された導入ガス11Aは導入ラインL8を介して、CO2吸収塔14の底部近傍から塔内に導入される。
【0075】
また、実施形態3においては、リーン溶液供給ラインL2に設置していた冷却部55を、第一吸収液循環ラインL11に設置している。これにより、第一吸収液循環ラインL11からの循環する循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)と、リーン溶液供給ラインL2からのリーン溶液13Aとの合わさった液(13A/13B)を冷却している。
【0076】
本実施形態では、実施形態1とは異なり、導入ガス11Aとして、CO2を3%以上、10%以下含有するガス(例えばタービン排ガス、各種燃焼排ガス)を対象とするのが好ましい。CO2を3%以上含有するガスを対象とする場合、リーン溶液13Aの液温度は、冷却塔12の出口の水分飽和ガス温度レベルのリーン吸収液温度が想定される。
【0077】
例えば、本実施形態の導入ガス11Aのガス温度が40℃の条件では、従来のような各段の吸収液循環が無い場合、塔頂部14aから排出される出口ガス11Cのガス温度は、導入ガスのガス温度よりも約10℃程度上昇することとなる。よって、このような条件では、第一吸収液循環ラインL11に冷却部55を設置する方が、吸収液の温度上昇の防止を図ることができ、吸収液中のCO2濃度の増加に有利となる。
【0078】
以下、本実施形態の分配流量比の流量比率の効果を示す好適な試験例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本試験例の図10図15では濃度3%以上のCO2を含有するガスを対象とした例を示している。
【0079】
図10は、試験例3のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。ここで、図10では、各段の抜出無のCO2濃度を基準(1)として、性能向上の比率を求めた。図10中、横軸は、第一吸収液循環ラインL11に送液される循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)の流量(f1)と、吸収液抜出ラインL21に送液される抜出液13B-1の流量(f2)との分配流量比であり、1対1~60対1としている(なお、図11図12においても同様)。なお、第二吸収液循環ラインL12に送液される循環液13C-1の流量(f1)と、リッチ溶液供給ラインL1に送液される抜出液であるリッチ溶液13Cの流量(f2)との分配流量比も同様であり、1対1~60対1としている。
【0080】
図11は、試験例3のCO2回収量比を示す図である。ここで、図11では、各段の抜出無のCO2回収量を基準(1)として性能向上の比率を求めた。図12は、試験例3の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。図13は、抜出無のリボイラ量を基準(1)として削減率を求めた。
【0081】
図10図12に示すように、試験例3においては、分配流量比が、1対1~60対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果が増大した。特に、分配流量比が、1対1~20対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果の増大率が向上した。
【0082】
また、比較として、従来技術(特許文献2:国際公開第09/104744号)のように、本発明のような第一吸収液循環ラインL11を設置せず、第二吸収液循環ラインL12のみを用いて吸収液の循環を行った場合(上段循環無し、下段循環有り)の性能を基準(比較例2)とした性能を図13図15に示す。
【0083】
図13は、試験例4のリッチ液中のCO2濃度比を示す図である。ここで、図13では、上段循環無し、下段循環有りのCO2濃度を基準(1)として、性能向上の比率を求めた。図7中、横軸は、第一吸収液循環ラインL11に送液される循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)の流量(f1)と、吸収液抜出ラインL21に送液される抜出液13B-1の流量(f2)との分割割合の流量比であり、1対1~60対1としている(なお、図14図15においても同様)。なお、第二吸収液循環ラインL12に送液される循環液13C-1の流量(f1)と、リッチ溶液供給ラインL1に送液される抜出液であるリッチ溶液13Cの流量(f2)との分配流量比も同様であり、1対1~60対1としている。
【0084】
図14は、試験例4のCO2回収量比を示す図である。ここで、図14では、上段循環無し、下段循環有りのCO2回収量を基準(1)として性能向上の比率を求めた。図15は、試験例4の吸収液再生塔のリボイラ熱量削減率(%)を示す図である。ここで、図15では、上段循環無し、下段循環有りのリボイラ量を基準(1)として削減率を求めた。
【0085】
図13図15に示すように、試験例4においては、分割割合の流量比が、1対1~60対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果が増大した。特に、分割割合の流量比が、1対1~40対1においては、リッチ液中のCO2濃度比、CO2回収量比、リボイラ熱量削減率(%)の分配効果の増大率が向上した。
【0086】
各実施形態に記載のCO2回収装置及びCO2回収方法は、例えば、以下のように把握される。
【0087】
第1の態様に係るCO2回収装置10A、10B、10Cは、低濃度のCO2を含有する導入ガス11AとCO2吸収液とを向流接触させてCO2を除去するCO2吸収塔14と、CO2を吸収したリッチ溶液13Cをリボイラ31からの蒸気で熱交換し、CO2吸収液として再生する吸収液再生塔15と、CO2吸収塔14の塔底部14bからCO2を吸収したリッチ溶液13Cを抜出し、吸収液再生塔15の上部側に供給するリッチ溶液供給ラインL1と、吸収液再生塔15の塔底部15bからCO2を放出したリーン溶液13Aを抜出し、CO2吸収塔14の上部側に供給するリーン溶液供給ラインL2と、を備えるCO2回収装置10Aであって、CO2吸収塔14が、少なくとも二段以上のCO2吸収部141A、141Bを有し、各段のCO2吸収部141A、141Bの下部側から抜出したCO2吸収液を、抜出段と同じ段の各段のCO2吸収部141A、141Bの上部側に、循環するセミリッチ溶液13B(循環液13B)、循環するリッチ溶液13C(循環液13C-1)として供給する吸収液循環ラインL11、L12と、吸収液循環ラインL11、L12からセミリッチ溶液13B(循環液13B)循環液13C-1の一部を抜出し、抜出段よりも一つ下の段に抜出液13B-1、13Cとして供給する吸収液抜出ラインL21、L1と、を有する。
【0088】
この構成によれば、CO2を吸収したCO2吸収液を各段のCO2吸収部の下部側から外部へ抜出し、CO2吸収液を抜出した位置より各段の上部側に供給し、再度CO2吸収液として利用してガス中のCO2を回収することができ、CO2吸収液中のCO2濃度を上昇させることができ、CO2の存在量の少ない各種ガスからCO2を回収する際において、CO2回収の際のリボイラ熱量の低減を図ることができる。
【0089】
第2の態様に係るCO2回収装置10A、10B、10Cは、導入ガス11A中のCO2濃度が10容量%以下である。
【0090】
この構成によれば、CO2濃度が10容量%以下である導入ガス11AからCO2を回収する際において、CO2回収の際のリボイラ熱量の低減を図ることができる。
【0091】
第3の態様に係るCO2回収装置10A、10B、10Cは、循環液13B、13C-1と抜出液13B-1、13Cとの分割割合の流量比を、1対1~60対1とする。
【0092】
この構成によれば、循環液13B、13C-1と抜出液13B-1、13Cとの分割割合の流量比を、1対1~60対1とすることで、CO2の存在量の少ない各種ガスからCO2を回収する際において、CO2回収の際のリボイラ熱量の低減を図ることができる。
【0093】
第4の態様に係るCO2回収装置10B、10Cは、最上段のCO2吸収部のガス流れ後流側に、水洗部142を有する。
【0094】
この構成によれば、水洗部142を有するので、出口ガス11Cが水洗され、外部へ放出する出口ガス11C中のアミン吸収液の同伴を極力低減することができる。
【0095】
第5の態様に係るCO2回収装置10Cは、第一吸収液循環ラインL11に冷却部55を有する。
【0096】
この構成によれば、第一吸収液循環ラインL11に冷却部55を有するので、吸収液の温度上昇の防止を図ることができ、吸収液中のCO2濃度の増加に有利となる。
【0097】
第6の態様に係るCO2回収方法は、低濃度のCO2を含有する導入ガス11AとCO2吸収液とを向流接触させてCO2を除去するCO2吸収工程と、CO2を吸収したリッチ溶液13Cをリボイラ31からの蒸気で熱交換し、CO2吸収液として再生する吸収液再生工程と、CO2吸収工程でCO2を吸収したリッチ溶液13Cを抜出し、吸収液再生工程に供給し、吸収液再生工程でCO2を放出したリーン溶液13Aを抜出し、CO2吸収工程に供給し、ガス中のCO2を回収するCO2回収方法であって、前記CO2吸収工程が、少なくとも二段以上のCO2吸収部141A、141Bを有し、各段のCO2吸収部141A、141Bの下部側から抜出したCO2吸収液を、抜出段と同じ段の各段のCO2吸収部141A、141Bの上部側に、循環液13B、13C-1として供給する吸収液循環工程と、吸収液循環工程から循環液13Bの一部を抜出し、抜出段よりも一つ下の段に抜出液13B-1、13Cとして供給する吸収液抜出工程と、を有する。
【0098】
この構成によれば、CO2を吸収したCO2吸収液を各段のCO2吸収部の下部側から外部へ抜出し、CO2吸収液を抜出した位置より各段の上部側に供給し、再度CO2吸収液として利用してガス中のCO2を回収することができ、CO2吸収液中のCO2濃度を上昇させることができ、CO2の存在量の少ない各種ガスからCO2を回収する際において、CO2回収の際のリボイラ熱量の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0099】
10A~10C CO2回収装置
11A、11B 導入ガス
11C 出口ガス
13A リーン溶液
13B セミリッチ溶液
13B-1 抜出液
13C リッチ溶液
13C-1 循環液
14 CO2吸収塔
15 吸収液再生塔
31 リボイラ
55 冷却部
141A 第一CO2吸収部(第一吸収部)
141B 第二CO2吸収部(第二吸収部)
144 液貯留部
1 リッチ溶液供給ライン
2 リーン溶液供給ライン
11 第一吸収液循環ライン
12 第二吸収液循環ライン
21 吸収液抜出ライン
図1
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