特許 7353229 シフト装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-09-21

(45)【発行日】2023-09-29

(54)【発明の名称】シフト装置

(51)【国際特許分類】

   B60K 20/00 20060101AFI20230922BHJP

   G05G 1/08 20060101ALI20230922BHJP

   G05G 5/04 20060101ALI20230922BHJP

【ＦＩ】

B60K20/00 B

G05G1/08 B

G05G5/04 A

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2020071903

(22)【出願日】2020-04-13

(65)【公開番号】P2021167180

(43)【公開日】2021-10-21

【審査請求日】2021-04-15

【審判番号】

【審判請求日】2022-11-10

(73)【特許権者】

【識別番号】000003551

【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所

(73)【特許権者】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】小野 宙樹

(72)【発明者】

【氏名】井上 宣央

【合議体】

【審判長】平城 俊雅

【審判官】久島 弘太郎

【審判官】中屋 裕一郎

(56)【参考文献】

【文献】特表２０２０－５０９９７１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特表２０１６－５１０２８２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１１－０４２３５４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－０４７０７４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００８－０４７３７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－３４７２３４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００４－２４１３１７（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

B60K 20/00

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

車室側に突出されると共に、基端側に移動不能にされる突出部と、
前記突出部の径方向外側に配置され、前記突出部の周方向側に回転されると共に前記突出部の基端側に変位されてシフト位置が変更されるシフト体と、
を備え、前記シフト体の前記突出部先端側面が前記突出部の先端面に対し前記突出部基端側に配置されるシフト装置。

【請求項2】

車室側に突出されると共に、基端側に移動不能にされる突出部と、
前記突出部の径方向外側に配置され、前記突出部の周方向側に回転されると共に前記突出部の基端側に変位されてシフト位置が変更されるシフト体と、
前記突出部の先端側に設けられ、前記突出部の径方向外側に拡大されて突出部基端側面が前記シフト体の前記突出部先端側面に対向される拡大部と、
を備えるシフト装置。

【請求項3】

前記シフト体の前記突出部先端側かつ前記突出部径方向外側の角面が前記突出部径方向外側へ向かうに従い前記突出部基端側へ向かう方向に傾斜される請求項１又は請求項２記載のシフト装置。

【請求項4】

前記突出部が車両上側に突出される場合に前記シフト体の前記突出部先端側面が車両後側の部分において当該車両後側以外の部分に対し前記突出部基端側に配置されると共に、前記突出部が車両水平方向側に突出される場合に前記シフト体の前記突出部先端側面が車両下側の部分において当該車両下側以外の部分に対し前記突出部基端側に配置される請求項１～請求項３の何れか１項記載のシフト装置。

【請求項5】

車室側に露出される露出面を備え、前記シフト体の突出部基端側面が前記露出面に対し前記突出部軸方向において同一位置又は前記突出部基端側に配置される請求項１～請求項４の何れか１項記載のシフト装置。

【請求項6】

前記シフト体が変位された後に回転可能にされる請求項１～請求項５の何れか１項記載のシフト装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、シフト体が回転されると共に変位されてシフト位置が変更されるシフト装置に関する。

【背景技術】

【0002】

下記特許文献１に記載の操作装置では、回転スイッチが、周方向に回転されると共に、軸方向に変位されて、シフト位置が変更される。

【0003】

ここで、このような操作装置では、回転スイッチが不要に変位されることを抑制できるのが好ましい。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特表２００８－５１８８４５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は、上記事実を考慮し、シフト体が不要に変位されることを抑制できるシフト装置を得ることが目的である。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の第１態様のシフト装置は、車室側に突出される突出部と、前記突出部の径方向外側に配置され、前記突出部の周方向側に回転されると共に前記突出部の軸方向側に変位されてシフト位置が変更されるシフト体と、を備える。

【0007】

本発明の第２態様のシフト装置は、本発明の第１態様のシフト装置において、前記シフト体の前記突出部先端側面が前記突出部の先端面に対し前記突出部軸方向において同一位置又は前記突出部基端側に配置される。

【0008】

本発明の第３態様のシフト装置は、本発明の第１態様又は第２態様のシフト装置において、前記シフト体の前記突出部先端側かつ前記突出部径方向外側の角面が前記突出部径方向外側へ向かうに従い前記突出部基端側へ向かう方向に傾斜される。

【0009】

本発明の第４態様のシフト装置は、本発明の第１態様～第３態様の何れか１つのシフト装置において、前記シフト体の前記突出部先端側面が車両後側又は下側において前記突出部基端側に配置される。

【0010】

本発明の第５態様のシフト装置は、本発明の第１態様～第４態様の何れか１つのシフト装置において、車室側に露出され、前記シフト体の前記突出部基端側面が前記突出部軸方向において同一位置又は前記突出部基端側に配置される露出面を備える。

【0011】

本発明の第６態様のシフト装置は、本発明の第１態様～第５態様の何れか１つのシフト装置において、前記シフト体が変位された後に回転可能にされる。

【発明の効果】

【0012】

本発明の第１態様のシフト装置では、突出部が車室側に突出されており、シフト体が突出部の周方向側に回転されると共に突出部の軸方向側に変位されて、シフト位置が変更される。

【0013】

ここで、シフト体が突出部の径方向外側に配置される。このため、シフト体が不要に変位されることを突出部によって抑制できる。

【0014】

本発明の第２態様のシフト装置では、シフト体の突出部先端側面が突出部の先端面に対し突出部軸方向において同一位置又は突出部基端側に配置される。このため、シフト体が不要に突出部基端側に変位されることを抑制できる。

【0015】

本発明の第３態様のシフト装置では、シフト体の突出部先端側かつ突出部径方向外側の角面が突出部径方向外側へ向かうに従い突出部基端側へ向かう方向に傾斜される。このため、シフト体が不要に突出部基端側に変位されることを抑制できる。

【0016】

本発明の第４態様のシフト装置では、シフト体の突出部先端側面が、車両後側又は下側の部分において、突出部基端側に配置される。このため、例えば、突出部の先端側に手のひらが載置された際に、シフト体の突出部先端側面が車両後側又は下側の部分において手のひらの最大隆起部分によって押圧されることを抑制できて、シフト体が突出部基端側に変位されることを抑制できる。

【0017】

本発明の第５態様のシフト装置では、車室側に露出面が露出されており、シフト体の突出部基端側面が露出面に対し突出部軸方向において同一位置又は突出部基端側に配置される。このため、シフト体と露出面との間に異物が侵入することを抑制できる。

【0018】

本発明の第６態様のシフト装置では、シフト体が変位された後に回転可能にされる。このため、シフト体が変位される前に回転されることを制限でき、シフト体の誤操作を抑制できる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明の実施形態に係るシフト装置を示す左斜め後方から見た斜視図である。

【図2】本発明の実施形態に係るシフト装置においてノブが「Ｎ」位置に配置される際を示す左斜め後方から見た斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0020】

図１には、本発明の実施形態に係るシフト装置１０が左斜め後方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、シフト装置１０の前方を矢印ＦＲで示し、シフト装置１０の右方を矢印ＲＨで示し、シフト装置１０の上方を矢印ＵＰで示している。

【0021】

本実施形態に係るシフト装置１０は、車両（自動車）のコンソール（図示省略）に設置されて、車両の運転席（図示省略）の車両前側かつ車幅方向内側に配置されており、シフト装置１０の前方、左方及び上方は、それぞれ車両の前方、左方及び上方に向けられている。

【0022】

図１に示す如く、シフト装置１０には、支持体としての略直方体形箱状のプレート１２が設けられており、プレート１２は、内部が下側に開放されると共に、コンソール内に固定されている。プレート１２の上壁には、突出部としての略円柱状の支持柱１４（図２参照）が一体に設けられており、支持柱１４は、上方に突出されて、コンソールの上側に延出されている。支持柱１４の上端（先端）には、円板状のパネル１４Ａが同軸上に一体に設けられており、パネル１４Ａの径は、支持柱１４のパネル１４Ａ以外の部分の径に比し、大きくされている。

【0023】

支持柱１４には、シフト体としての円筒状のノブ１６が同軸上に支持されている。ノブ１６の内径は、支持柱１４のパネル１４Ａ以外の部分の径と略同一にされると共に、ノブ１６の外径は、パネル１４Ａの径に比し大きくされており、ノブ１６内には、支持柱１４のパネル１４Ａ以外の部分が同軸上に嵌入されている。ノブ１６の上面（先端面）は、ノブ１６の径方向（支持柱１４の径方向）外側へ向かうに従い下側（支持柱１４の基端側）へ向かう方向に傾斜されており、ノブ１６の上側かつ径方向外側の角面１６Ａは、湾曲されて、ノブ１６の径方向外側へ向かうに従い下側へ向かう方向に更に傾斜されている。

【0024】

ノブ１６は、中心軸線に沿って上下方向（支持柱１４の軸方向）に所定範囲で変位（スライド）可能にされると共に、中心軸線周りに一方向Ａ及び他方向Ｂ（支持柱１４の周方向、図１等参照）に所定範囲で回転可能にされている。ノブ１６は、車両の車室内に露出されており、ノブ１６は、車両の乗員（特に運転手）が操作可能にされている。例えば、乗員は、ノブ１６の外周面を上側（径方向外側でもよい）から把持してノブ１６を変位及び回転可能にされると共に、ノブ１６の上面を手指で押圧してノブ１６を下方に変位可能にされている。

【0025】

ノブ１６は、上端（上側かつ径方向内側の端）が支持柱１４のパネル１４Ａ下面に当接されて、シフト位置（初期位置）としての「Ｈ」位置（ホーム位置）に配置されており、ノブ１６は、「Ｈ」位置から下方に変位されて、シフト位置としての「Ｎ」位置（ニュートラル位置）に配置される（図２参照）。さらに、ノブ１６は、「Ｎ」位置から他方向Ｂに回転されて、シフト位置としての「Ｒ」位置（リバース位置）に配置されると共に、「Ｎ」位置から一方向Ａに回転されて、シフト位置としての「Ｄ」位置（ドライブ位置）に配置される。

【0026】

ノブ１６が「Ｈ」位置から「Ｎ」位置直前までの範囲に配置される際には、ノブ１６の一方向Ａ及び他方向Ｂへの回転が規制される。ノブ１６が「Ｒ」位置から「Ｎ」位置直前までの範囲及び「Ｄ」位置から「Ｎ」位置直前までの範囲に配置される際には、ノブ１６の上下方向への変位が規制される。ノブ１６は、「Ｎ」位置から「Ｈ」位置側に付勢されると共に、「Ｒ」位置及び「Ｄ」位置から「Ｎ」位置側に付勢されており、ノブ１６が「Ｈ」位置以外の位置に操作された状態で、ノブ１６への操作力の作用が解除された際には、ノブ１６が付勢力により「Ｈ」位置に復帰（回転及び変位）される。

【0027】

シフト装置１０の上側には、被覆体としての略直方体形箱状のカバー１８が設けられており、カバー１８内は、下側に開放されている。カバー１８の露出面としての上面１８Ａは、コンソールの上側（車室内）に露出されており、カバー１８は、プレート１２の上側を被覆している。カバー１８の上壁には、円状の露出孔２０が貫通形成されており、露出孔２０には、プレート１２の支持柱１４が同軸上に貫通されている。露出孔２０の上側には、ノブ１６が同軸上に配置されており、露出孔２０の径は、ノブ１６の径に比し僅かに大きくされると共に、ノブ１６の下面（基端面）は、カバー１８の上面１８Ａに対し上下方向において同一位置に配置されている。

【0028】

次に、本実施形態の作用を説明する。

【0029】

以上の構成のシフト装置１０では、ノブ１６が「Ｈ」位置に配置されており、ノブ１６が上下方向に変位されると共に一方向Ａ及び他方向Ｂに回転されて、ノブ１６のシフト位置が変更される。

【0030】

ここで、ノブ１６がプレート１２の支持柱１４の径方向外側に配置されている。このため、ノブ１６と一体に支持柱１４が上下方向に変位される場合とは異なり、例えば支持柱１４及びノブ１６の上側に物又は乗員の手のひらが載置された際に、ノブ１６が不要に下方に変位されることを支持柱１４によって抑制できる。これにより、ノブ１６が不要に「Ｈ」位置から「Ｎ」位置に配置されることを抑制でき、ノブ１６の「Ｈ」位置から下方への変位位置にシフト位置（本実施形態では「Ｎ」位置）を設置できて、ノブ１６のシフト位置の設置パターン（ノブ１６の操作パターン）の自由度を向上できる。

【0031】

また、ノブ１６の上端が支持柱１４のパネル１４Ａ下面に当接されて、ノブ１６の上面がパネル１４Ａの上面に対し下側に配置されている。このため、ノブ１６の上面がパネル１４Ａの上面に対し上側に配置される場合とは異なり、例えば支持柱１４及びノブ１６の上側に物又は乗員の手のひらが載置された際（特にノブ１６の上側に柔軟な物の垂下部分又は手のひらの周部の隆起部分が配置された際）に、ノブ１６が不要に下方に変位されることを抑制できる。

【0032】

さらに、ノブ１６の上面がノブ１６の径方向外側へ向かうに従い下側へ向かう方向に傾斜されている。このため、例えば支持柱１４及びノブ１６の上側に物又は乗員の手のひらが載置された際（特にノブ１６の上側に柔軟な物の垂下部分又は手のひらの周部の隆起部分が配置された際）に、ノブ１６が不要に下方に変位されることを一層抑制できる。

【0033】

しかも、ノブ１６の上側かつ径方向外側の角面１６Ａが、湾曲されて、ノブ１６の径方向外側へ向かうに従い下側へ向かう方向に傾斜されている。このため、例えば支持柱１４及びノブ１６の上側に物又は乗員の手のひらが載置された際（特にノブ１６の上側に柔軟な物の垂下部分又は手のひらの周部の隆起部分が配置された際）に、ノブ１６が不要に下方に変位されることを一層抑制できる。

【0034】

また、ノブ１６が「Ｈ」位置から「Ｎ」位置直前までの範囲に配置される際にノブ１６の一方向Ａ及び他方向Ｂへの回転が規制されて、ノブ１６が「Ｈ」位置から「Ｎ」位置に変位された後に一方向Ａ及び他方向Ｂに回転可能にされる。このため、ノブ１６が「Ｈ」位置から「Ｎ」位置に変位される前に一方向Ａ及び他方向Ｂに回転されることを制限でき、ノブ１６の誤操作を抑制できる。

【0035】

さらに、ノブ１６の下面がカバー１８の上面１８Ａに対し上下方向において同一位置に配置されている。このため、ノブ１６とカバー１８の上面１８Ａ（露出孔２０の周面）との間に異物が侵入することを抑制できると共に、カバー１８内が露出孔２０を介して視認されることを抑制できる。

【0036】

なお、本実施形態において、ノブ１６の上面の後部（車両後側部分）がノブ１６の上面の後部以外の部分に対し下側に配置されてもよい。これにより、例えば、支持柱１４及びノブ１６の上側に乗員の手のひらが載置された際に、ノブ１６の上面の後部が手のひらの最大隆起部分（手首側部分）によって押圧されることを抑制でき、ノブ１６が不要に下方に変位されることを一層抑制できる。

【0037】

また、本実施形態では、ノブ１６の上面がパネル１４Ａの上面に対し下側に配置される。しかしながら、ノブ１６の上面（上端）がパネル１４Ａの上面に対し上下方向において同一位置に配置されてもよい。

【0038】

さらに、本実施形態では、ノブ１６の下面がカバー１８の上面１８Ａに対し上下方向において同一位置に配置される。しかしながら、ノブ１６の下面（下端）がカバー１８の上面１８Ａに対し下側に配置されてもよい。

【0039】

また、本実施形態では、ノブ１６が「Ｈ」位置から下方に変位されて「Ｎ」位置に配置される。しかしながら、ノブ１６が「Ｈ」位置から下方に変位されてシフト位置に配置されなくてもよい。すなわち、ノブ１６が、「Ｈ」位置からの下方変位位置から他方向Ｂに回転されて「Ｒ」位置に配置されると共に、「Ｈ」位置からの下方変位位置から一方向Ａに回転されて「Ｄ」位置に配置されてもよい。この場合、例えば、ノブ１６とは別に、「Ｎ」位置スイッチ（ニュートラル位置スイッチ）が操作可能に設けられてもよい。

【0040】

さらに、本実施形態では、シフト装置１０がコンソールに設置される。しかしながら、シフト装置１０が車両の他の部分（インストルメントパネル又はコラムカバー等）に設置されてもよい。この場合、本実施形態におけるノブ１６の上面の後部がノブ１６の上面の下側部分にされてもよい。

【0041】

また、本実施形態では、ノブ１６が「Ｈ」位置から下方に変位される。しかしながら、ノブ１６が「Ｈ」位置から上方に変位されてもよい。

【符号の説明】

【0042】

１０・・・シフト装置、１４・・・支持柱（突出部）、１６・・・ノブ（シフト体）、１６Ａ・・・角面、１８Ａ・・・上面（露出面）

【図1】

【図2】