IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーセル株式会社の特許一覧

特許7353244絶縁カバーを備えた電源装置及びその製造方法
<>
  • 特許-絶縁カバーを備えた電源装置及びその製造方法 図1
  • 特許-絶縁カバーを備えた電源装置及びその製造方法 図2
  • 特許-絶縁カバーを備えた電源装置及びその製造方法 図3
  • 特許-絶縁カバーを備えた電源装置及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】絶縁カバーを備えた電源装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20230922BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230922BHJP
【FI】
H05K1/14 G
H02M7/48 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020121259
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018269
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】澤山 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】古川 翔
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145765(JP,A)
【文献】特開2011-009418(JP,A)
【文献】特開平05-102635(JP,A)
【文献】特開2014-168336(JP,A)
【文献】特開2014-222739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H02M 7/48
H01L 23/12
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気・電子部品が実装された複数枚の基板を備え、所定の基板と前記所定の基板に相対する他方の基板間に絶縁カバーが実装された電源装置に於いて、
前記所定の基板又は前記他方の基板のいずれかは、前記絶縁カバーを実装可能とする実装領域が設けられた面を有し、前記実装領域に固定部材により前記絶縁カバーが固定され、
前記所定の基板又は前記他方の基板のいずれかに、その部品の一部を実装された基板の外側に位置させる所定の電気・電子部品を備え、
前記絶縁カバーは、前記所定の基板に実装される前記電気・電子部品と前記他方の基板に実装される前記電気・電子部品間の絶縁距離を確保するように基板間に配置され、前記電気・電子部品を基板に実装する表面実装設備にて実装可能な構造、かつ前記実装領域に固定される第1面と、前記実装領域に固定された場合に固定された基板から相対する基板の方向に起立する第2面とを有したL字形状であり、
前記第1面は、基板の内側に存在する電気・電子部品、及び前記第2面より基板側に位置する前記所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保し、
前記第2面は、自身より基板から離れた外側に位置する前記所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項記載の電源装置に於いて、
前記絶縁カバーは、前記表面実装設備のうち前記電気・電子部品を基板に搭載する表面実装機が搭載可能な平坦性をもつ面を有することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電源装置に於いて、
前記固定部材は、接着剤であり、
前記絶縁カバーが固定される前記所定の基板又は前記他方の基板のいずれかと前記絶縁カバーの間に配置されたことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
電気・電子部品が実装された複数の基板を備え、所定の基板と前記所定の基板に相対する他方の基板間に絶縁カバーが実装された電源装置の製造方法に於いて、
所定の電気・電子部品を前記所定の基板又は前記他方の基板のいずれかに、自身の一部を実装される基板の外側に位置するように実装し、
前記絶縁カバーが固定される実装領域が設けられた面を有する前記所定の基板又は前記他方の基板のいずれかに、前記電気・電子部品を基板に実装する表面実装設備にて前記絶縁カバーを前記実装領域に実装し、
前記絶縁カバーの実装後に、前記絶縁カバーが実装された基板とその他の基板との組み立てを行い、
前記絶縁カバーはL字形状であり、
前記絶縁カバーの実装は、L字形状の一方の面となる第1面が前記実装領域に固定されるように実装され、
前記第1面の固定は、固定された場合に、L字形状の他方の面となる第2面が固定された基板から相対する基板の方向に起立し、前記第1面が基板の内側に存在する電気・電子部品、及び前記第2面より基板側に位置する前記所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保し、記第2面が自身より基板から離れた外側に位置する前記所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保するように固定されることを特徴とする電源装置の製造方法。
【請求項5】
請求項記載の電源装置の製造方法に於いて、
前記絶縁カバーは、前記表面実装設備のうち前記電気・電子部品を基板に搭載する表面実装機で搭載可能な平坦性をもつ面を有し、
前記表面実装機は、前記平坦性をもつ面を利用して前記絶縁カバーの搭載を行うことを特徴とする電源装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の電源装置の製造方法に於いて、
前記絶縁カバーの実装は、
前記表面実装設備の塗布装置にて、前記実装領域に接着剤を塗布し、
前記表面実装設備の表面実装機にて、前記電気・電子部品の部品搭載と合わせて前記絶縁カバーを前記実装領域に搭載して、塗布された前記接着剤により前記絶縁カバーを前記実装領域に仮固定し、
前記表面実装設備のリフロー装置にて、リフロー装置の加熱により前記接着剤が熱硬化することで前記絶縁カバーを前記実装領域に固定することを特徴とする電源装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板を備え、所定の基板に実装される電気・電子部品と所定の基板に相対する他方の基板に実装される電気・電子部品間の絶縁距離を確保する目的で基板間に絶縁カバーを設けた電源装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の基板に実装される電気・電子部品と他方の基板に実装される電気・電子部品間の絶縁距離を確保する必要がある電源装置の構成として、特許文献1で開示している2種類の基板にて構成された電源装置等が挙げられる。また、必要な絶縁距離を確保する方法として、特許文献2で開示しているように絶縁性を有する絶縁カバーを用いて確保する方法が知られており、このような2種類の基板にて構成された電源装置に於いても、絶縁カバーを基板間に配置する方法が採られている。
【0003】
また、絶縁カバーの実装方法としては、基板の組み立てを行った後に、基板間に絶縁カバーを手挿入で実装する方法が一般的である。
【0004】
図4は、従来における基板間に絶縁カバーを設けた電源装置を示す一例であり、特許文献1と同様に2種類の基板にて構成されたものである。尚、図4(A)は絶縁カバーを挿入する方向から電源装置を見た正面図であり、更に、図4(A)は図4(B)のx-x視であり、絶縁カバーの起立している面は省略している。
【0005】
電気・電子部品16-1~16-2が実装され、入力用端子20と出力用端子22が基板の外側に延在して設けられ、入力用基板端子20と出力用基板端子22を保護するように入出力用端子樹脂18とが設けられたP1基板10と、電気・電子部品16-3~16-5が実装されたP2基板12とが組立部材14により組み立てられ、P1基板10とP2基板12の間に絶縁カバー24が図4(B)で示す矢印の方向に手挿入されることで実装される。絶縁カバー24は、図4(B)に示すように、側面から見てL字形状となる。
【0006】
組立部材14は、両基板を組み立てるための円柱状の銅であり、P1基板10とP2基板12間の距離を一定に保ったうえで、P1基板10とP2基板12の電気的接続・自立させるための機能も兼ねている。
【0007】
また、当該組立部材14の高さを長くすることでも、必要な絶縁距離を確保することは可能であるが、その場合は製品サイズが大型化してしまうため、絶縁カバーを用いることで組立部材14の高さを抑えて製品サイズの大型化を避けつつ、必要な絶縁距離を確保している。
【0008】
尚、図4(B)において、電気・電子部品16-4以外の電気・電子部品は省略しており、また、製品状態においては、入出力用端子20及び出力用端子22を露出させた状態でケースに格納されるが、当該ケースについても省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-117106
【文献】特開2011-009418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の絶縁カバーの実装方法にあっては、基板の組み立て完了後に基板間に手挿入するため、非常に狭い基板間、例えば数ミリメートルmm程度の間隔に対して行われる作業であり、視認性・作業性共に悪く、必要な絶縁距離を確保した状態で実装することが困難となっている。
【0011】
また、絶縁カバーが実装できたとしても、手挿入した絶縁カバーを定位置に保持する構造がないため、挿入後に絶縁カバーのずれが発生する可能性が十分にあり、絶縁性を永続的に確保することが困難となっている。
【0012】
本発明は、これら上記の問題点を解決するために、効率よく、簡単に絶縁カバーが実装でき、かつ必要な絶縁性を永続的に確保できる電源装置及びその電源装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(表面実装設備で絶縁カバーを実装可能とする構造を有する電源装置)
本発明は、電気・電子部品が実装された複数枚の基板を備え、所定の基板と所定の基板に相対する他方の基板間に絶縁カバーが実装された電源装置に於いて、
所定の基板又は他方の基板のいずれかは、絶縁カバーを実装可能とする実装領域が設けられた面を有し、実装領域に固定部材により絶縁カバーが固定され、
絶縁カバーは、所定の基板に実装される電気・電子部品と他方の基板に実装される電気・電子部品間の絶縁距離を確保するように基板間に配置され、電気・電子部品を基板に実装する表面実装設備にて実装可能な構造であることを特徴とする。
【0014】
(L字形状の絶縁カバー)
所定の基板又は他方の基板のいずれかに、その部品の一部を実装された基板の外側に位置させる所定の電気・電子部品を備え、
絶縁カバーは、実装領域に固定される第1面と、実装領域に固定された場合に固定された基板から相対する基板の方向に起立する第2面とを有したL字形状であり、
第1面は、基板の内側に存在する電気・電子部品、及び第2面より基板側に位置する所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保し、
第2面は、自身より基板から離れた外側に位置する所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保する。
【0015】
(絶縁カバーの表面平坦性)
絶縁カバーは、表面実装設備のうち電気・電子部品を基板に搭載する表面実装機が搭載可能な平坦性をもつ面を有する。
【0016】
(接着剤による絶縁カバーの固定)
固定部材は、接着剤であり、
絶縁カバーが固定される所定の基板又は他方の基板のいずれかと絶縁カバーの間に配置される。
【0017】
(絶縁カバーを設けた電源装置の製造方法)
また本発明の別形態にあっては、電気・電子部品が実装された複数の基板を備え、所定の基板と所定の基板に相対する他方の基板間に絶縁カバーが実装される電源装置の製造方法に於いて、
絶縁カバーが固定される実装領域が設けられた面を有する所定の基板又は他方の基板のいずれかに、電気・電子部品を基板に実装する表面実装設備にて絶縁カバーを実装領域に実装し、
絶縁カバーの実装後に、絶縁カバーが実装された基板とその他の基板との組み立てを行うことを特徴とする。
【0018】
(L字形状の絶縁カバーの実装方法)
所定の電気・電子部品は、所定の基板又は他方の基板のいずれかに、自身の一部を実装される基板の外側に位置するように実装され、
絶縁カバーはL字形状であり、
絶縁カバーの実装は、L字形状の一方の面となる第1面が実装領域に固定されるように実装され、
第1面の固定は、
固定された場合に、L字形状の他方の面となる第2面が固定された基板から相対する基板の方向に起立し、第1面が基板の内側に存在する電気・電子部品、及び第2面より基板側に位置する所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保し、第2面が自身より基板から離れた外側に位置する所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保するように固定される。
【0019】
(絶縁カバーの平坦な表面を利用した実装方法)
絶縁カバーは、表面実装設備のうち電気・電子部品を基板に搭載する表面実装機で搭載可能な平坦性をもつ面を有し、
表面実装機は、平坦性をもつ面を利用して絶縁カバーの搭載を行う。
【0020】
(接着剤による絶縁カバーの実装方法)
絶縁カバーの実装は、
表面実装設備の塗布装置にて、実装領域に接着剤を塗布し、
表面実装設備の表面実装機にて、電気・電子部品の部品搭載と合わせて絶縁カバーを実装領域に搭載して、塗布された接着剤により絶縁カバーを実装領域に仮固定し、
表面実装設備のリフロー装置にて、リフロー装置の加熱により接着剤が熱硬化することで絶縁カバーを実装領域に固定する。
【発明の効果】
【0021】
(基本的な効果)
電気・電子部品が実装された複数枚の基板を備え、所定の基板と所定の基板に相対する他方の基板間に絶縁カバーが実装された電源装置に於いて、所定の基板又は他方の基板のいずれかは、絶縁カバーを実装可能とする実装領域が設けられた面を有し、実装領域に固定部材により絶縁カバーが固定され、絶縁カバーは、所定の基板に実装される電気・電子部品と他方の基板に実装される電気・電子部品間の絶縁距離を確保するように基板間に配置され、電気・電子部品を基板に実装する表面実装設備にて実装可能な構造であるため、絶縁カバーの実装を従来のように人の手作業で行うことなく、表面実装設備を用いて自動で行うことができ、絶縁カバーの実装を効率よく、簡単に行うことができる。また、実装された絶縁カバーは固定されているため、絶縁カバーのずれが発生することがなく、絶縁性を永続的に確保することができる。

【0022】
(L字形状の絶縁カバーによる効果)
所定の基板又は他方の基板のいずれかに、その部品の一部を実装された基板の外側に位置させる所定の電気・電子部品を備え、絶縁カバーは、実装領域に固定される第1面と、実装領域に固定された場合に固定された基板から相対する基板の方向に起立する第2面とを有したL字形状であり、第1面は、基板の内側に存在する電気・電子部品、及び第2面より基板側に位置する所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保し、第2面は、自身より基板から離れた外側に位置する所定の電気・電子部品の一部に対しての絶縁距離を確保するため、入出力用端子のように最終製品状態でケースの外部に露出させる必要がある部品が実装されている場合であっても、絶縁カバーはケース内に収めることができ製品として外観を損なうことなく、外部に露出した部分についても絶縁距離を確保することができる。
【0023】
(絶縁カバーの表面平坦性による効果)
絶縁カバーは、表面実装設備のうち電気・電子部品を基板に搭載する表面実装機が搭載可能な平坦性をもつ面を有するため、電気・電子部品を搭載する場合と同様に絶縁カバーも基板に搭載できるため、絶縁カバーの実装を効率よく、簡単に行うことができる。
【0024】
(接着剤による絶縁カバーの固定による効果)
固定部材は、接着剤であり、絶縁カバーが固定される所定の基板又は他方の基板のいずれかと絶縁カバーの間に配置されるため、接着剤の塗布自体は表面実装設備にて可能な工程であることから、絶縁カバーの実装を効率よく、簡単に行うことができる。また、リフロー装置の加熱を利用することで接着剤を熱硬化させることも可能であり、既存の表面実装設備を最大限に利用することができる。
【0025】
本発明の電源装置の製造方法による効果は、前述した電源装置の場合と同じになることから、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明における絶縁カバーを設けた電源装置を示す説明図
図2】本発明における絶縁カバーの形状を示す説明図
図3】本発明における表面実装設備を用いた絶縁カバーの実装を含む電源装置の製造方法を示す説明図
図4】従来における絶縁カバーを設けた電源装置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[絶縁カバーを設けた電源装置の構成]
図1は、本発明における絶縁カバーを設けた電源装置を示す説明図である。図1(A)は絶縁カバーを設けた電源装置の正面図であり、図1(B)は絶縁カバーを設けた電源装置の側面図であり、図1(C)は絶縁カバーを設けたP1基板の上面図であり、図1(A)は図1(B)のx-x視であり,絶縁カバーの起立している面は省略している。尚、図1(A)の正面図及び図1(B)の側面図は、従来例となる図4(A)の正面図及び図4(B)の側面図と同じ方向から電源装置を見たものであり、基板の外側と内側は図1(B)の点線で仕切られた領域のことを示す。
【0028】
本実施形態の電源装置は、絶縁カバー24が接着剤30によりP1基板10に固定される点が、従来の絶縁カバーを設けた電源装置と異なる点であり、他の部分については同じである。尚、共通となる構成については、同じ符号を使用している。
【0029】
絶縁カバー24は、図1(C)のP1基板10上にハッチングして示されている実装領域32に対して実装される。実装領域32には、絶縁カバー24以外の部品は実装されず、基板のレジスト残りがあっても問題ない。
【0030】
接着剤30が塗布される箇所は、実装領域32の中央付近が望ましく、塗布径は1.0mm程度あれば、絶縁カバー24をP1基板10に固定することが出来る。
【0031】
また後述するが、接着剤30による絶縁カバー24の固定は、P1基板10とP2基板12の組み立て前に行われる。
【0032】
[絶縁カバー]
(絶縁カバーの形状)
図2は、本発明における絶縁カバーの形状を示す説明図であり、(A)を平面図、(B)を正面図、(C)を側面図として三面図で示している。
【0033】
絶縁カバー24は、絶縁性を持つ樹脂材料、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等を材料とし、L字形状を有している。
【0034】
絶縁カバー24は、後述される表面実装機にて吸着される表面26aと、P1基板10の実装領域32に実装(固定)される裏面26bを有するL字の一方の面である第1面26と、第1面26の端部から起立し、第1面が実装された場合に基板側となる表面28aと基板側とは反対側となる裏面28bを有するL字の他方の面である第2面28を備える。
【0035】
第1面26の表面26aは、表面実装機でP1基板10上に搭載される際に吸着される面であるため、表面実装機が吸着できる程度の表面平坦性を備えている。
【0036】
(絶縁カバーによる絶縁距離の確保)
当該L字形状の絶縁カバー24による絶縁距離の確保について、図1を用いて説明する。
【0037】
図1(A)に示す点線の左側を電源の入力部となる一次側回路とし、右側を電源の出力部となる二次側回路としており、この場合に絶縁距離の確保が必要となるのは、一次側回路と二次側回路間である。
【0038】
P1基板10及びP2基板12単体では、部品配置及び配線パターンにより一次側回路と二次側回路間の絶縁距離は確保されており、絶縁カバー24は同一基板内における絶縁距離の確保を考慮する必要はない。
【0039】
つまり、絶縁カバー24が考慮する必要がある絶縁距離は、P1基板10の一次側回路とP2基板12の二次側回路間、及びP1基板10の二次側回路とP2基板12の一次側回路間となる。
【0040】
以下は、P1基板10の二次側回路とP2基板12の一次側回路の中から、最短の空間距離となり得るP2基板12の電気・電子部品16-4とP1基板10の電気・電子部品16-2間、及びP2基板12の電気・電子部品16-4とP1基板10の一次側回路側に配置される一番左の出力用端子22を例として説明する。
【0041】
図1(A)から分かるように、電気・電子部品16-2の端子と電気・電子部品16-4の端子を結ぶ空間距離が絶縁カバー24の第1面26により遮られており、これにより電気・電子部品16-2と電気・電子部品16-4間の必要な絶縁距離が確保されている。
【0042】
また、図1(B)から分かるように、電気・電子部品16-2の端子と第2面28より基板側に位置する出力用端子22(P1基板10と入出力用端子樹脂18の間に露出する部分)を結ぶ空間距離が絶縁カバー24の第1面26により遮られており、電気・電子部品16-2の端子と第2面28より基板から離れた外側に位置する出力用端子22(入出力用端子樹脂18からさらに基板の外側に延在する部分)を結ぶ空間距離が絶縁カバー24の第2面28により遮られており、これらにより電気・電子部品16-2と出力用端子22間の必要な絶縁距離が確保されている。
【0043】
他に確保が必要な絶縁距離についても同じように絶縁カバー24により確保されている。
【0044】
[表面実装設備による絶縁カバーの実装]
従来例では、P1基板10及びP2基板12を組み立て後に、絶縁カバー24の実装を行っていたが、本発明の実施形態においては、P1基板10とP2基板12の組み立て前にP1基板10に絶縁カバー24を実装し、絶縁カバー24の実装後にP1基板10とP2基板12の組み立てを行う。
【0045】
ここでいう表面実装設備は、電気・電子部品の実装に必要な複数の装置を含むものであり、クリームはんだ印刷機、塗布装置、表面実装機、リフロー装置等を含む概念である。また、本発明の実施形態では、塗布装置としてディスペンサを採用している。
【0046】
図3は、本発明における表面実装設備を用いた絶縁カバーの実装を含む電源装置の製造方法を示す説明図であり、図3(A)から図3(C)に各過程における電源装置の正面図及び側面図を示している。尚、図3(B)及び(C)の正面図においては、x-x視であり、絶縁カバーの起立している面は省略している。
【0047】
クリームはんだ印刷機によりP1基板10の電気・電子部品が実装される箇所にクリームはんだが印刷される。続いて、ディスペンサにより絶縁カバー24をP1基板10に固定するための接着剤30がP1基板10に塗布される。塗布される箇所はP1基板10上の絶縁カバー24が実装される実装領域32の中央付近が好ましく、塗布径は、1.0mm程度であれば十分である。
【0048】
ここまでの工程が完了した状態が図3(A)であり、電気・電子部品の実装のためのクリームはんだが印刷され、絶縁カバー24をP1基板10に固定するための接着剤30が塗布された状態である。
【0049】
接着剤30の塗布後、表面実装機にて、絶縁カバー24を含めた実装部品がP1基板10の所定の位置に搭載される。接着剤30は熱硬化する接着剤を用いているため、表面実装機で搭載された段階では絶縁カバー24は仮固定の状態である。続いて、リフロー装置にて電気・電子部品がP1基板10に実装されると共に、リフロー装置の加熱により接着剤30が熱硬化し、絶縁カバー24はP1基板10に固定されることで実装される。
【0050】
ここまでの工程が完了した状態が図3(B)であり、絶縁カバー24を含む実装部品が実装された状態である。
【0051】
P1基板10に絶縁カバー24の実装後、P1基板10とP2基板12の組み立てを行う。組立部材14は予めはんだにてP2基板12に実装されており、P1基板10に対して組立部材14をはんだ付けすることで、P1基板10とP2基板12が組み立てられる。
【0052】
ここまでの工程が完了した状態が図3(C)であり、絶縁カバー24の実装と、P1基板10とP2基板12の組み立てが完了した状態である。
【0053】
このように、P1基板10とP2基板12の組み立て前に、P1基板10に絶縁カバー24を接着剤30で固定することで実装するため、絶縁カバー24の実装の際に、P2基板12が邪魔になることがなく、高い視認性・作業性を保ったまま絶縁カバー24の実装が可能となる。
【0054】
また、電気・電子部品を実装するための表面実装設備を利用しているため、絶縁カバーの実装を自動で行うことができ、効率よく、簡単に行うことができる。
【0055】
また、絶縁カバー24が接着剤30により定置に固定されることで、絶縁カバー24のずれが発生することがなく、絶縁性を永続的に確保することができる。
【0056】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、2種類の基板とそれらの基板間に設けた絶縁カバーからなる電源装置を例に取るものであったが、これは一例であり、構成する基板の枚数は2枚に限らず、それ以上であっても良い。また、基板枚数が増えるにあたり、絶縁距離を確保したい箇所が複数の基板間に存在するのであれば、対応する箇所に適宣に絶縁カバーを配置すれば良い。
【0057】
また、上記の実施形態にあっては、絶縁カバーの形状をL字形状としているが、絶縁距離が確保できるのであれば、L字形状に限定されるものではなく、適宣に絶縁カバーの形状を選択すれば良い。また、絶縁カバーの基板に対する配置についても説明、図で示した形態に限定されるものではなく、絶縁カバーを配置することで必要な絶縁距離が確保できれば良い。
【0058】
また、上記の実施形態にあっては、絶縁カバーは表面実装機で吸着可能な表面平坦性を備えているものであったが、これは一例であり、表面実装機にて基板上に絶縁カバーの搭載が可能な構造であれば良い。
【0059】
また、絶縁カバー及び基板以外の電源装置を構成する部材については、上記の実施形態の説明及び図で示したものに限定されるものではなく、適宣に製造する電源の仕様に合わせて選択すれば良い。
【0060】
また、上記の実施形態にあっては、表面実装設備にて絶縁カバーを実装している工程は一例であり、表面実装設備における工程は最終的に絶縁カバーを含む実装部品が実装されている状態となれば良く、その途中の工程は適宣に選択すれば良い。
【0061】
また、上記の実施形態にあっては、接着剤を熱硬化するものを選択しているが、絶縁カバーを定置に保持することが出来ればよく、熱以外で硬化する接着剤を使用しても良いし、接着剤以外の固定部材を使用しても良い。
【0062】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0063】
10:P1基板
12:P2基板
14:組立部材
16-1~16-5:電気・電子部品
18:入出力用端子樹脂
20:入力用端子
22:出力用端子
24:絶縁カバー
26:第1面
28:第2面
26a、28a:表面
26b、28b:裏面
30:接着剤
32:実装領域
図1
図2
図3
図4