(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】B型肝炎感染の治療方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230922BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230922BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230922BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230922BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20230922BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230922BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C12N15/113 100Z
C12N15/113 ZNA
A61P31/20
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K31/522
A61K31/7125
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2020521880
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 US2018056801
(87)【国際公開番号】W WO2019079781
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521359667
【氏名又は名称】ディセルナ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】コーザー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】エイブラムス マーク
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538679(JP,A)
【文献】国際公開第2016/183009(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/100401(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成するセンス鎖を含むオリゴヌクレオチドであって、
前記センス鎖が、GACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)で規定される配列からなり、かつ3、8~10、12、13及び17位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、2、4~7、11、14~16、18~26及び31~36位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに1位及び2位のヌクレオチドの間のホスホロチオエート結合を含み、
前記センス鎖上の前記‐GAAA‐配列の前記各ヌクレオチドが、一価のGalNac部分とコンジュゲートされており、
前記アンチセンス鎖が、UUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG(配列番号5.1)で規定される配列からなり、かつ2、3、5、7、8、10、12、14、16及び19位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、4、6、9、11、13、15、17、18及び20~22位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに1位と2位、2位と3位、3位と4位、20位と21位、及び21位と22位のヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を含み、そして
前記アンチセンス鎖の5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素が、メトキシホスホネート(MOP)を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記アンチセンス鎖の前記5’‐ヌクレオチドが、以下の構造:
を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記‐GAAA‐モチーフが、以下の構造:
を含み、式中:
Lが、結合、クリックケミストリーハンドル、又は長さが1~20の連続的な共有結合原子のリンカーであって、置換及び非置換アルキレン、置換及び非置換アルケニレン、置換及び非置換アルキニレン、置換及び非置換ヘテロアルキレン、置換及び非置換ヘテロアルケニレン、置換及び非置換ヘテロアルキニレン、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択されるリンカーであり、そして
Xが、O、S又はNである、請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
Lが、アセタールリンカーである、請求項3に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
Xが、Oである、請求項3又は4に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記‐GAAA‐配列が、以下の構造:
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成するセンス鎖を含むオリゴヌクレオチドであって、
前記センス鎖が、GACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)で規定される配列からなり、かつ3、8~10、12、13及び17位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、2、4~7、11、14~16、18~26及び31~36位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに1位と2位の前記ヌクレオチド間にある1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、
前記センス鎖の前記‐GAAA‐配列の前記各ヌクレオチドが、一価のGalNac部分とコンジュゲートされており、
前記‐GAAA‐配列が、以下の構造:
を含み、そして
前記アンチセンス鎖が、UUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG(配列番号5.1)で規定される配列からなり、かつ2、3、5、7、8、10、12、14、16及び19位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、4、6、9、11、13、15、17、18及び20~22位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに1位と2位、2位と3位、3位と4位、20位と21位、及び21位と22位のヌクレオチド間のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、そして、
前記アンチセンス鎖の5’‐ヌクレオチドが、以下の構造:
を有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
対イオンを含む請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
薬学的に許容可能な担体を含む請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
賦形剤を含む請求項8~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
ホスフェート緩衝生理食塩水を含む請求項8~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
細胞内のB型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原(HBsAg)の発現を低減するインビトロ方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを、前記細胞に送達する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記細胞が、肝細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが、前記細胞内で該オリゴヌクレオチドを発現するように遺伝子操作された導入遺伝子の形態で送達される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
患者においてHBV感染を治療するための薬剤の製造における、請求項1~7のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、又は請求項8~12のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチド又は組成物が、前記
患者に対して皮下投与されるものである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチド又は組成物が、前記
患者に対して静脈内で投与されるものである、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記薬剤が、薬学的に許容可能な担体を含み、前記薬学的に許容可能な担体が、水を含む溶媒又は分散媒である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
二本鎖オリゴヌクレオチドであって、
センス鎖:
5’ mG-S-mA-fC-mA-mA-mA-mA-fA-fU-fC-mC-fU-fC-mA-mC-mA-fA-mU-mA-mA-mG-mC-mA-mG-mC-mC-[ademG-GalNAc]-[ademA-GalNAc]-[ademA-GalNAc]-[ademA-GalNAc]-mG-mG-mC-mU-mG-mC 3’と、
アンチセンス鎖:
5’ [MePhosphonate-4O-mU]-S-fU-S-fA-S-mU-fU-mG-fU-fG-mA-fG-mG-fA-mU-fU-mU-fU-mU-mG-fU-mC-S-mG-S-mG 3’と、
を含み、
ここで、
ヌクレオシド間の「-」は、ホスホロジエステルヌクレオシド間結合を意味し、
ヌクレオシド間の「-S-」は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を意味し、
mAは、2’-O-メチルアデノシンリボヌクレオシドを意味し、
mGは、2’-O-メチルグアノシンリボヌクレオシドを意味し、
mCは、2’-O-メチルシチジンリボヌクレオシドを意味し、
mUは、2’-O-メチルウリジンリボヌクレオシドを意味し、
fAは、2’-フルオロアデノシンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
fGは、2’-フルオログアノシンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
fCは、2’-フルオロシチジンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
fUは、2’-フルオロウリジンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
[ademG-GalNAc]は、
を意味し、
[ademA-GalNAc]は、
を意味し、そして、
[MePhosphonate-4O-mU]は、
を意味することを特徴とする二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項21】
二本鎖オリゴヌクレオチドのナトリウム塩であって、前記二本鎖オリゴヌクレオチドが、
センス鎖:
5’ mG-S-mA-fC-mA-mA-mA-mA-fA-fU-fC-mC-fU-fC-mA-mC-mA-fA-mU-mA-mA-mG-mC-mA-mG-mC-mC-[ademG-GalNAc]-[ademA-GalNAc]-[ademA-GalNAc]-[ademA-GalNAc]-mG-mG-mC-mU-mG-mC 3’と、
アンチセンス鎖:
5’ [MePhosphonate-4O-mU]-S-fU-S-fA-S-mU-fU-mG-fU-fG-mA-fG-mG-fA-mU-fU-mU-fU-mU-mG-fU-mC-S-mG-S-mG 3’と、
を含み、
ここで、
ヌクレオシド間の「-」は、ホスホロジエステルヌクレオシド間結合を意味し、
ヌクレオシド間の「-S-」は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を意味し、
mAは、2’-O-メチルアデノシンリボヌクレオシドを意味し、
mGは、2’-O-メチルグアノシンリボヌクレオシドを意味し、
mCは、2’-O-メチルシチジンリボヌクレオシドを意味し、
mUは、2’-O-メチルウリジンリボヌクレオシドを意味し、
fAは、2’-フルオロアデノシンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
fGは、2’-フルオログアノシンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
fCは、2’-フルオロシチジンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
fUは、2’-フルオロウリジンデオキシリボヌクレオシドを意味し、
[ademG-GalNAc]は、
を意味し、
[ademA-GalNAc]は、
を意味し、そして、
[MePhosphonate-4O-mU]は、
を意味することを特徴とする二本鎖オリゴヌクレオチドのナトリウム塩。
【請求項22】
次式、
の構造を有する、二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか1項に記載の二本鎖オリゴヌクレオチドを含む組成物。
【請求項24】
対イオンを更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記対イオンが、Na+対イオンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
薬学的に許容可能な担体を更に含む、請求項23記載の組成物。
【請求項27】
前記薬学的に許容可能な担体が、水である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
Na+対イオン及び水を更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
患者において慢性B型肝炎感染を治療するための薬剤の製造のための、請求項20~22のいずれか1項に記載の二本鎖オリゴヌクレオチド、又は請求項23~28のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記薬剤が、前記患者に対して皮下投与されるものである、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記患者が、HBVe-抗原(HBeAg)陽性患者である、請求項16~19、29及び30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
前記HBeAg陽性患者が、血清HBV表面抗原(HBsAg)>1,000IU/mLを有する、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記患者が、HBeAg陰性患者である、請求項16~19、29及び30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記HBeAg陰性患者が、血清HBsAg>500IU/mLを有する、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記患者が、血清HBV DNA>20,000IU/mLを有する、請求項16~19、29及び30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
細胞内のB型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原(HBsAg)の発現を低減するインビトロ方法であって、請求項20~22のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを、前記細胞に送達する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
前記細胞が、肝細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記オリゴヌクレオチドが、前記細胞内で該オリゴヌクレオチドを発現するように遺伝子操作された導入遺伝子の形態で送達される、請求項36又は37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はオリゴヌクレオチド及びその使用、特にB型肝炎感染の治療に関連するオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、世界中の罹患率及び死亡率の重要な原因となっている。ヌクレオシド類似体などの現在のHBV治療法では、血漿ウイルス血症を軽減するためには生涯に渡って治療が必要であり、一般に長期的には有効ではない。従来から慢性HBVにとって機能的回復が最善の治療結果であった。RNA干渉(RNAi)技術は薬理学的に介入できる可能性がある。
【0003】
外被タンパク質は、総称してB型肝炎表面抗原(HBsAg)として公知である。HBsAgは、重複するオープンリーディングフレーム(ORF)にコードされるS、M及びLと称する3種の関連ポリペプチドから成る。最小のエンベロープタンパク質は226個のアミノ酸を有するSであり、S‐ORFと称する。M及びLは上流の翻訳開始部位から生成され、Sにそれぞれ55及び108個のアミノ酸を付加する。HBVのS、M、及びL糖タンパク質はDane粒子というインタクトな感染性HBVウイルス粒子のウイルス外被に見られ、これら3種は全て非常に過剰に生成及び分泌され、慢性HBV患者の血液中に見られる非感染性サブウイルスの球状及び繊維状粒子(両方ともデコイ粒子と称される)を形成する。デコイ粒子表面上に豊富に存在するHBsAgは、慢性HBV感染(CHB)患者の体液性免疫及び自然クリアランスを阻害すると考えられている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の態様は、改善されたオリゴヌクレオチド系組成物に関するものであり、また被験体におけるHBV感染を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、HBV表面抗原(HBsAg)発現の耐久性ノックダウンを生成する強力なオリゴヌクレオチドの開発に関する。当該オリゴヌクレオチドは、肝細胞のHBsAgの全形態をコードするmRNAの、RNA干渉(RNAi)を介した認識及び破壊を誘導する。これには、宿主ゲノムに組み込まれているcccDNAとHBVのDNAとの両方から転写されたウイルスRNAから翻訳されたタンパク質が含まれる。本明細書においてオリゴヌクレオチドは、既知の遺伝子型全てに渡ってHBVゲノムにコードされるHBsAg転写産物の広範なセットを標的とするように設計している。いくつかの実施形態では、肝細胞においてHBsAg転写産物を標的とする本明細書で開示したオリゴヌクレオチドは、被験体への投与後の長期間(例えば、7週間を超えて数か月まで)持続する高い特異性でHBsAg発現を安定的に低下させ得ることが見出された(例えば、実施例1及び3参照)。いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドを使用してHBsAg発現を標的にすると、プレゲノムRNA(pgRNA)及び他のウイルスのライフサイクル中間体が減少することが発見されている。また本明細書で開示した特定のRNAiオリゴヌクレオチドは、cccDNA又は組み込まれたウイルスのいずれかに由来するHBsAg mRNA転写産物をノックダウンできることも分かっている。更なる態様では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドを使用してHBsAg発現を標的にすると、全HBVタンパク質(HBxを除く)、すなわちHBcAg、HBeAg、及びHBVポリメラーゼの発現が低下し、HBVコアタンパク質のサイトゾルが保持されることが発見されている。更に、いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法を使用したmRNAノックダウンに起因する循環HBsAgのクリアランスは、CHB患者における高レベルの循環HBsAgに引き起こされるHBV免疫寛容の破壊を可能にするため、臨床的に有利である。HBV感染に対する免疫系活動の再活性化は、HBsAgの永久的なセロクリアランスとして定義される機能的回復を達成するための基礎であると考えられている。
【0005】
過去の研究では、複数の異なるHBV遺伝子(すなわちS、C、P、及びX遺伝子)を標的とするRNAi薬剤の組み合わせを使用すると、又は場合によってはX遺伝子転写産物のみを標的とすると、HBV複製及び遺伝子発現は効果的に阻害されることが示された。ただし、ここで提供される結果から明らかになっているのは、HBsAg転写産物のみを標的とするRNAiオリゴヌクレオチドの使用がHBV複製及び遺伝子発現を効果的に阻害し、HBV感染の治療に新たな治療アプローチを提供するということである。ウイルスRNAをサイレンシングする直接的な効果に加えて、HSB(s)‐219前駆体は、HBVコア抗原(HBcAg)の核局在化を防止する。HBV‐X、又は両遺伝子を同時に標的としても、HBcAgの核局在化は防止されないことは重要である。前臨床データでは、Sを標的とするRNAi療法に起因する核の中心局在化の抑制がHBsAg抑制の持続時間を有意に改善することが強く示唆されている。特に、患者におけるHBcAgの核局在化の排除は、抗ウイルス療法に対する好ましい反応と相関することが分かっている。
【0006】
本開示のいくつかの態様から、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)mRNAの発現を低減するためのオリゴヌクレオチドが提供される。当該オリゴヌクレオチドは19~30ヌクレオチド長のアンチセンス鎖を含み、当該アンチセンス鎖はACAANAAUCCUCACAAUA(配列番号1)に規定されるHBsAg mRNAの配列に相補的な領域を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、当該オリゴヌクレオチドは更に、19~50ヌクレオチド長のセンス鎖を含み、当該センス鎖は、当該アンチセンス鎖と共に二重鎖領域を形成する。いくつかの実施形態では、当該センス鎖はUUNUUGUGAGGAUUN(配列番号2)に規定される配列に相補的な領域を含む。いくつかの実施形態では、当該センス鎖は5’‐UUAUUGUGAGGAUUNUUGUC(配列番号3)に規定される配列に相補的な領域を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、当該アンチセンス鎖はUUAUUGUGAGGAUUNUUGUCGG(配列番号4)に規定される配列を含む。いくつかの実施形態では、当該アンチセンス鎖はUUAUUGUGAGGAUUCUUGUCGG(配列番号5)に規定される配列から成る。いくつかの実施形態では、当該アンチセンス鎖はUUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG(配列番号5.1)に規定される配列から成る。
【0009】
いくつかの実施形態では、当該センス鎖はACAANAAUCCUCACAAUAA(配列番号6)に規定される配列を含む。いくつかの実施形態では、当該センス鎖はGACAANAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号7)に規定される配列を含む。いくつかの実施形態では、当該センス鎖はGACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)に規定される配列から成る。いくつかの実施形態では、当該センス鎖はGACAAGAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8.1)に規定される配列から成る。
【0010】
本開示の他の態様は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)mRNAの発現を低減するためのオリゴヌクレオチドを提供し、当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成するセンス鎖を含む。当該センス鎖はGACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)に規定される配列を含み、当該アンチセンス鎖はUUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG(配列番号5.1)に規定される配列を含み、アンチセンス鎖及びセンス鎖はそれぞれ、1つ以上の2’‐フルオロ及び2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、当該アンチセンス鎖の5’ヌクレオチドの糖の4’‐炭素はホスフェート類似体を含み、当該センス鎖は1つ以上のN‐アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分にコンジュゲートされる。
【0011】
本明細書では、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)mRNAの発現を低下させるためのオリゴヌクレオチドが更に提供される。当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成するセンス鎖を含み、当該オリゴヌクレオチド中で:当該センス鎖はGACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)に規定される配列を含み、3、8~10、12、13及び17位にある2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、2、4~7、11、14~16、18~26、及び31~36位にある2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、当該センス鎖は、1つ以上のN‐アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分にコンジュゲートされる;当該アンチセンス鎖はUUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG(配列番号5.1)に規定される配列を含み、2、3、5、7、8、10、12、14、16及び19位にある2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、4、6、9、11、13、15、17、18及び20~22位にあるO‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに少なくとも3つのホスホロチオエートヌクレオチド間での結合を含み、当該アンチセンス鎖における5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素はホスフェート類似体を含み、当該センス鎖は、1位と2位のヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、当該アンチセンス鎖は、ヌクレオチド1位と2位、2位と3位、3位と4位、20位と21位、及び21位と22位の間に5つのホスホロチオエート結合を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の5’‐ヌクレオチドは以下の構造:
【化1】
を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、センス鎖上の‐GAAA‐配列の1つ以上のヌクレオチドは一価のGalNac部分にコンジュゲートされる。
【0015】
いくつかの実施形態では、センス鎖上の‐GAAA‐配列の各ヌクレオチドは一価のGalNac部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、‐GAAA‐モチーフは以下の構造:
【化2】
を含み、式中:
Lは、結合、クリックケミストリーハンドル、又は長さが1~20の包括的かつ連続的な共有結合原子のリンカーを表し、置換及び非置換アルキレン、置換及び非置換アルケニレン、置換及び非置換アルキニレン、置換及び非置換ヘテロアルキレン、置換及び非置換ヘテロアルケニレン、置換及び非置換ヘテロアルキニレン、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択され、XはO、S又はNである。
【0016】
いくつかの実施形態では、Lはアセタールリンカーである。いくつかの実施形態では、XはOである。
【0017】
いくつかの実施形態では、‐GAAA‐配列は以下の構造:
【化3】
を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、センス鎖は、その3’末端にS1‐L‐S2として規定されるステムループを含み、S1はS2に相補的であり、Lは最大6ヌクレオチド長のS1とS2間のループを形成する。いくつかの実施形態では、Lはテトラループである。いくつかの実施形態では、Lは4ヌクレオチド長のS1とS2間のループを形成する。いくつかの実施形態では、LはGAAAとして規定される配列を含む。いくつかの実施形態では、ステムループのLの最大4ヌクレオチドは、それぞれ別のGalNAcにコンジュゲートされる。
【0019】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは2’‐修飾を含む。いくつかの実施形態では、2’修飾は:2’‐アミノエチル、2’‐フルオロ、2’‐O‐メチル、2’‐O‐メトキシエチル、及び2’‐デオキシ‐2’‐フルオロ‐β‐d‐アラビノ核酸:から選択される修飾である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの全ヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、当該少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合はホスホロチオエート結合である。アンチセンス鎖における5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素はホスフェート類似体を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドは、標的化リガンドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、標的化リガンドはN‐アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分である。
【0021】
本明細書では更に、先行する請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド及び対イオンを含む組成物、並びに先行する請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。
【0022】
本開示の他の態様は、細胞におけるB型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原の発現を低減する方法を提供し、当該方法は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの細胞への送達を含む。いくつかの実施形態では、当該細胞は肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はインビボ細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はインビトロ細胞である。
【0023】
本開示の他の態様は被験体におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載の組成物のオリゴヌクレオチド、又は当該組成物を被験体に投与する工程を含む。
【0024】
被験体においてHBV感染を治療する方法も提供され、当該方法は、HBsAg mRNAを選択的に標的とするRNAiオリゴヌクレオチドを被験体に投与する工程を含み、当該方法では、非表面抗原をコードするHBV mRNA転写産物を標的とするRNAiオリゴヌクレオチドでの治療をせずに、RNAiオリゴヌクレオチドを投与する。被験体においてHBV感染を治療する方法も提供され、当該方法はHBsAg mRNAを選択的に標的とするRNAiオリゴヌクレオチドを被験体に投与する工程を含み、当該方法では、HBxAg mRNA転写産物を選択的に標的とするRNAiオリゴヌクレオチドを被験体に投与しない。いくつかの実施形態では、当該方法は更に、有効量のエンテカビルを被験体に投与する工程を含む。
【0025】
本開示の他の態様は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)mRNAの発現を低減するためのオリゴヌクレオチドを提供し、当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖と共に二重鎖領域を形成するセンス鎖を含み、当該オリゴヌクレオチド中で:
センス鎖はGACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)に規定される配列を含み、3、8~10、12、13及び17位にある2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、2、4~7、11、14~16、18~26、及び31~36位にある2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに1位と2位のヌクレオチド間でホスホロチオエートヌクレオチド間結合を1つ含み、センス鎖の‐GAAA‐配列のヌクレオチドはそれぞれ、一価のGalNac部分にコンジュゲートされ、‐GAAA‐配列は以下の構造:
【化4】
を含み;また、
アンチセンス鎖はUUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG(配列番号5.1)に規定される配列を含み、2、3、5、7、8、10、12、14、16及び19位にある2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、1、4、6、9、11、13、15、17、18及び20~22位にあるO‐メチル修飾ヌクレオチド、並びにヌクレオチド1位と2位、2位と3位、3位と4位、20位と21位、及び21位と22位との間にホスホロチオエートのヌクレオチド間結合を5つ含み、当該アンチセンス鎖における5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素は以下の構造:
【化5】
を有する。
【0026】
オリゴヌクレオチドを含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、当該組成物は更に、Na+対イオンを含む。
【0027】
細胞におけるB型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原の発現を低減する方法も提供され、当該方法は、オリゴヌクレオチド又は組成物の送達を含む。いくつかの実施形態では、当該細胞は肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はインビボ細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はインビトロ細胞である。
【0028】
被験体においてB型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療する方法が提供され、当該方法は、オリゴヌクレオチド又は組成物を被験体に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、当該方法は更に、有効量のエンテカビルを被験体に投与する工程を含む。
【0029】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、特定の実施形態を説明し、書面の説明と共に、本明細書で開示した組成物及び方法の特定の態様の非限定的な例を提供する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】HBVゲノムの構成の略図上のRNAi標的部位の例を示す。
【
図2】HDIマウスにおけるHBsAg発現を低減するためのオリゴヌクレオチドの単回投与評価を示す。
【
図3】HBsAgを標的とするオリゴヌクレオチドを用いた特定の投与計画中の血漿HBsAgレベルの経時的なグラフである。この例から分かるように、オリゴヌクレオチドは前臨床的な効力を示し、投与期間を超えて減少レベルを維持した。
【
図4】レポーターアッセイを用いたHeLa細胞におけるHBsAgマッピングの結果を示すグラフである。HBVゲノムの254位を標的とする未修飾siRNAを、特定の濃度で陽性対照として使用した。Thermo Fisher社から市販されているSilencerのsiRNAがこれらの実験の陰性対照となった。エラーバーはSEMを表す。
【
図5】HBsAgを標的とするオリゴヌクレオチドHBV‐219において設計されたミスマッチがHBV遺伝子型全体で増加することを示す遺伝子型保存比較を示す。
【
図6】プロトタイプ配列としてHBV Genotype Aを使用するpsiCHECK2レポーターアッセイ用に設計したベクターを示す。
【
図7】ミスマッチの導入の効果を評価するために設計したオリゴヌクレオチドのいくつかの例を示す。親及びミスマッチ鎖のオリゴヌクレオチド配列を整列させ、ボックス内のミスマッチ位置と共に示している。psiCHECK2レポーターアッセイで使用する対応するレポーター配列を更に示す。
【
図8】ミスマッチ研究で評価したオリゴヌクレオチドの単回用量滴定プロットを示し、ガイド鎖のミスマッチがインビボで忍容されることを実証している。
【
図9】HBsAgを標的とするオリゴヌクレオチドへのミスマッチの取り込みがインビボでの効力に悪影響を及ぼさないことを実証するインビボ用量滴定プロットを示す。
【
図10】化学修飾を有し二重鎖形態のHBsAgを標的とするオリゴヌクレオチド(HBV(s)‐219)の例を示す。濃い影は2’‐O‐メチルリボヌクレオチドを示す。明るい影は2’‐フルオロ-デオキシリボヌクレオチドを示す。
【
図11A】肝細胞におけるHBVコア抗原(HBcAg)の細胞内分布を検出する免疫組織化学染色の結果を示す。
【
図11B】HBVpgRNAに対する検出RNA転写産物配列をマッピングしたRNA配列決定の結果を示す。
【
図12A】HBVの流体力学的注射(HDI)モデルにおいて、ビヒクル対照及びHBxAg mRNAを標的とするRNAiオリゴヌクレオチドと比較した、HBsAg mRNAを標的とするHBV(s)‐219オリゴヌクレオチド前駆体HBV(s)‐219P2を用いた治療後のHBsAg mRNA発現の経時的推移を示す。
【
図12B】AAV‐HBVモデルにおいて、ビヒクル対照及びHBxAg mRNAを標的とするRNAiオリゴヌクレオチドと比較した、HBsAg mRNAを標的とするHBV(s)‐219オリゴヌクレオチド前駆体HBV(s)‐219P2を用いた治療後のHBsAg mRNA発現の経時的推移を示す。
【
図13】ビヒクル対照及びHBxAg mRNA(GalXC‐HBVX)を標的とするRNAiオリゴヌクレオチドと比較した、HBsAg mRNAを標的とするHBV(s)‐219オリゴヌクレオチドを用いた治療後の、HBVのAAV‐HBVモデル及びHDIモデルから得た幹細胞におけるHBcAgの細胞内分布を表す免疫組織化学染色の結果を示す。
【
図14A】PXB‐HBVモデルにおけるHBV(s)‐219前駆体1(HBV(s)‐219 P1)の抗ウイルス活性を示す。マウス9匹のコホートに、PBS中のHBV‐219P1を0mg/kg又は3mg/kgのいずれかで3週間毎に皮下投与した。各コホートから6匹のマウスを、血清HBsAg及び血清HBV DNAについて示された各時点(
図14A及び
図14B)で非末梢下顎頬出血により分析した。28日目(HBV(s)‐219P1の最初の投与から)に、残りの全てのマウスを安楽死させ、RT‐qPCRにより肝HBV DNA(
図14C)及び肝cccDNA(
図14D)用に肝生検を採取した。
【
図14B】PXB‐HBVモデルにおけるHBV(s)‐219前駆体1(HBV(s)‐219 P1)の抗ウイルス活性を示す。マウス9匹のコホートに、PBS中のHBV‐219P1を0mg/kg又は3mg/kgのいずれかで3週間毎に皮下投与した。各コホートから6匹のマウスを、血清HBsAg及び血清HBV DNAについて示された各時点(
図14A及び
図14B)で非末梢下顎頬出血により分析した。28日目(HBV(s)‐219P1の最初の投与から)に、残りの全てのマウスを安楽死させ、RT‐qPCRにより肝HBV DNA(
図14C)及び肝cccDNA(
図14D)用に肝生検を採取した。
【
図14C】PXB‐HBVモデルにおけるHBV(s)‐219前駆体1(HBV(s)‐219 P1)の抗ウイルス活性を示す。マウス9匹のコホートに、PBS中のHBV‐219P1を0mg/kg又は3mg/kgのいずれかで3週間毎に皮下投与した。各コホートから6匹のマウスを、血清HBsAg及び血清HBV DNAについて示された各時点(
図14A及び
図14B)で非末梢下顎頬出血により分析した。28日目(HBV(s)‐219P1の最初の投与から)に、残りの全てのマウスを安楽死させ、RT‐qPCRにより肝HBV DNA(
図14C)及び肝cccDNA(
図14D)用に肝生検を採取した。
【
図14D】PXB‐HBVモデルにおけるHBV(s)‐219前駆体1(HBV(s)‐219 P1)の抗ウイルス活性を示す。マウス9匹のコホートに、PBS中のHBV‐219P1を0mg/kg又は3mg/kgのいずれかで3週間毎に皮下投与した。各コホートから6匹のマウスを、血清HBsAg及び血清HBV DNAについて示された各時点(
図14A及び
図14B)で非末梢下顎頬出血により分析した。28日目(HBV(s)‐219P1の最初の投与から)に、残りの全てのマウスを安楽死させ、RT‐qPCRにより肝HBV DNA(
図14C)及び肝cccDNA(
図14D)用に肝生検を採取した。
【
図15A】HBV(s)‐219前駆体2(HBV(s)‐219P2)はエンテカビルの抗ウイルス活性を増強することを示す。HBVマウス流体力学的注射(HDI)モデルでは、1日目にHBV(s)‐219P2を単回、マウスに皮下投与した後、500ng/kgのエンテカビル(ETV)を14日間毎日経口投与した。循環ウイルス負荷(HBV DNA)をqPCRにより測定した(
図15A)。血漿HBsAgレベルをELISAにより測定した(
図15B)。肝臓HBV mRNA及びpgRNAレベルをqPCRにより測定した(
図15C)。結果から、併用療法で明らかな相加効果が示されている。ETV療法だけでは、循環HBsAgや肝ウイルスRNAに対する効果は示されない。HBsAb又はHBV RNAにより測定したHBV(s)‐219P2の抗ウイルス活性は、ETVの共投与に影響を受けない。「BLOD」は「検出限界以下」を意味する。
【
図15B】HBV(s)‐219前駆体2(HBV(s)‐219P2)はエンテカビルの抗ウイルス活性を増強することを示す。HBVマウス流体力学的注射(HDI)モデルでは、1日目にHBV(s)‐219P2を単回、マウスに皮下投与した後、500ng/kgのエンテカビル(ETV)を14日間毎日経口投与した。循環ウイルス負荷(HBV DNA)をqPCRにより測定した(
図15A)。血漿HBsAgレベルをELISAにより測定した(
図15B)。肝臓HBV mRNA及びpgRNAレベルをqPCRにより測定した(
図15C)。結果から、併用療法で明らかな相加効果が示されている。ETV療法だけでは、循環HBsAgや肝ウイルスRNAに対する効果は示されない。HBsAb又はHBV RNAにより測定したHBV(s)‐219P2の抗ウイルス活性は、ETVの共投与に影響を受けない。「BLOD」は「検出限界以下」を意味する。
【
図15C】HBV(s)‐219前駆体2(HBV(s)‐219P2)はエンテカビルの抗ウイルス活性を増強することを示す。HBVマウス流体力学的注射(HDI)モデルでは、1日目にHBV(s)‐219P2を単回、マウスに皮下投与した後、500ng/kgのエンテカビル(ETV)を14日間毎日経口投与した。循環ウイルス負荷(HBV DNA)をqPCRにより測定した(
図15A)。血漿HBsAgレベルをELISAにより測定した(
図15B)。肝臓HBV mRNA及びpgRNAレベルをqPCRにより測定した(
図15C)。結果から、併用療法で明らかな相加効果が示されている。ETV療法だけでは、循環HBsAgや肝ウイルスRNAに対する効果は示されない。HBsAb又はHBV RNAにより測定したHBV(s)‐219P2の抗ウイルス活性は、ETVの共投与に影響を受けない。「BLOD」は「検出限界以下」を意味する。
【
図16A】S抗原(HBV(s)‐219P2)又はX抗原(GalXC‐HBVXとする)を標的とするGalNac共役オリゴヌクレオチドのHBsAg抑制活性の比較を示す。結果から、HBVS‐219P2が、GalBC‐HBVX又は両RNAi薬の等モル併用よりも長い期間、HBsAgを抑制することが分かる。
図16Aは、HBVゲノムにおけるRNAi標的部位の位置が、HBV発現マウスにおけるHBsAg回復動態に影響を与えることを示している。
図16Bは、投与2週間後(左パネル)及び投与9週間後(右パネル)の血漿HBsAgレベルを示し、このことはHBVXコード領域単独、又はHBV(s)‐219P2との組み合わせを標的にすると、活性の持続時間が短くなることを示している。個々の動物のデータを示した。いくつかのデータポイント(最も灰色の円)が検出限界を下回った。
【
図16B】S抗原(HBV(s)‐219P2)又はX抗原(GalXC‐HBVXとする)を標的とするGalNac共役オリゴヌクレオチドのHBsAg抑制活性の比較を示す。結果から、HBVS‐219P2が、GalBC‐HBVX又は両RNAi薬の等モル併用よりも長い期間、HBsAgを抑制することが分かる。
図16Aは、HBVゲノムにおけるRNAi標的部位の位置が、HBV発現マウスにおけるHBsAg回復動態に影響を与えることを示している。
図16Bは、投与2週間後(左パネル)及び投与9週間後(右パネル)の血漿HBsAgレベルを示し、このことはHBVXコード領域単独、又はHBV(s)‐219P2との組み合わせを標的にすると、活性の持続時間が短くなることを示している。個々の動物のデータを示した。いくつかのデータポイント(最も灰色の円)が検出限界を下回った。
【
図17A】HBV(s)‐219P2、GalXC‐HBVX、又はこれらの1:1併用で治療したHBV発現マウスにおけるHBVコア抗原(HBcAg)の細胞内位置を示す。
図17Aは、投与後1、2、6、9、及び13週目に得られ、HBcAgに対して染色した肝臓切片における代表的な肝細胞を示す。
図17Bは、各動物における核染色したHBcAg陽性細胞の割合を示す(n=3/群、一匹当たり50細胞、投与2週間後)。X及びSオープンリーディングフレーム内を標的にして代替配列を設計及び試験した。
図17Cは、S抗原及びX抗原のいずれかを標的とする代替RNAiオリゴの投与2、3及び9週後に得られた肝細胞におけるHBcAgの細胞内分布を示す。
【
図17B】HBV(s)‐219P2、GalXC‐HBVX、又はこれらの1:1併用で治療したHBV発現マウスにおけるHBVコア抗原(HBcAg)の細胞内位置を示す。
図17Aは、投与後1、2、6、9、及び13週目に得られ、HBcAgに対して染色した肝臓切片における代表的な肝細胞を示す。
図17Bは、各動物における核染色したHBcAg陽性細胞の割合を示す(n=3/群、一匹当たり50細胞、投与2週間後)。X及びSオープンリーディングフレーム内を標的にして代替配列を設計及び試験した。
図17Cは、S抗原及びX抗原のいずれかを標的とする代替RNAiオリゴの投与2、3及び9週後に得られた肝細胞におけるHBcAgの細胞内分布を示す。
【
図17C】HBV(s)‐219P2、GalXC‐HBVX、又はこれらの1:1併用で治療したHBV発現マウスにおけるHBVコア抗原(HBcAg)の細胞内位置を示す。
図17Aは、投与後1、2、6、9、及び13週目に得られ、HBcAgに対して染色した肝臓切片における代表的な肝細胞を示す。
図17Bは、各動物における核染色したHBcAg陽性細胞の割合を示す(n=3/群、一匹当たり50細胞、投与2週間後)。X及びSオープンリーディングフレーム内を標的にして代替配列を設計及び試験した。
図17Cは、S抗原及びX抗原のいずれかを標的とする代替RNAiオリゴの投与2、3及び9週後に得られた肝細胞におけるHBcAgの細胞内分布を示す。
【
図18】健康な患者におけるHBV(s)‐219の安全性及び忍容性、並びにHBV患者におけるHBV(s)‐219の治療効果を評価するように設計した研究のコホート情報別の用量を示す。
【
図19A-1】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19A-2】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19A-3】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19A-4】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19B-1】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19B-2】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19B-3】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【
図19B-4】HBV(s)‐219及びHBV(s)‐219P2の化学構造を示す。(
図19A)HBV(s)‐219の化学構造。(
図19B)HBV(s)‐219P2の化学構造。
【発明を実施するための形態】
【0031】
いくつかの態様によれば、本開示は、HBV感染を治療するための細胞、特に肝臓の細胞(例えば、肝細胞)においてHBsAg発現を低減するのに有効である強力なオリゴヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるHBsAgを標的とするオリゴヌクレオチドは、標的組織(例えば、肝細胞)の選択された細胞に送達し、これらの組織におけるHBV感染を治療するように設計する。従って、関連する態様では、本開示は、細胞(例えば、肝臓の細胞)においてHBV表面抗原遺伝子発現を選択的に低減する工程を含むHBV感染治療方法を提供する。
【0032】
定義された用語の説明を含む本開示の更なる態様を以下に提供する。
I.定義
【0033】
およそ:本明細書で使用しているように、対象となる1つ又は複数の値に適用される用語「およそ」又は「約」は、言及された参照値と同様の値を指す。特定の実施形態では、特に明記しない限り、又は文脈から明白でない限り(そのような数値が、可能な値の100%を超える場合を除く)、用語「およそ」又は「約」は、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は記述した参照値のいずれかの方向(「を超える」又は「未満」)の範囲内にある値の範囲を意味する。
【0034】
投与する:本明細書で使用しているように、用語「投与する」又は「投与」は、薬理学的に有用な(例えば、被験体の状態を治療する)様式で物質(例えば、オリゴヌクレオチド)を被験体に提供することを意味する。
【0035】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR):本明細書で使用しているように、用語「アシアロ糖タンパク質受容体」又は「ASGPR」は、大きい方の48kDa(ASGPR‐1)及び小さい方の40kDa(ASGPR‐2)のサブユニットにより形成される二部から成るC型レクチンを指す。ASGPRは主に肝細胞の洞様毛細血管表面に発現し、末端ガラクトース又はN‐アセチルガラクトサミン残基(アシアロ糖タンパク質)を含む循環糖タンパク質の結合、内在化、及びその後のクリアランスに大きな役割を担う。
【0036】
相補的:本明細書で使用しているように、用語「相補的」は、2つのヌクレオチド又は2つのヌクレオチド配列が互いに塩基対を形成することを可能にする、2つのヌクレオチド間(例えば、2つの対向する核酸上、又は単一の核酸鎖の対向する領域上)又は2つのヌクレオチド配列間の構造的関係を意味する。例えば、対向する核酸のピリミジンヌクレオチドに相補的である1つの核酸のプリンヌクレオチドは、互いに水素結合を形成することによって共に塩基対を形成し得る。いくつかの実施形態では、相補的ヌクレオチドはワトソン・クリック様式で、又は安定した二重鎖の形成を可能にする任意の他の様式で塩基対になり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、2つの核酸は、相補性の領域を形成するように互いに相補的である複数のヌクレオチドの領域を有してもよい。
【0037】
デオキシリボヌクレオチド:本明細書で使用しているように、用語「デオキシリボヌクレオチド」は、リボヌクレオチドと比較して、そのペントース糖の2’位でヒドロキシルの代わりに水素を有するヌクレオチドを指す。修飾デオキシリボヌクレオチドは、糖、ホスフェート基もしくは塩基中での修飾もしくは置換、又は糖、ホスフェート基もしくは塩基の修飾もしくは置換を含む、2’位置以外の原子の1つ以上の修飾又は置換を有するデオキシリボヌクレオチドである。
【0038】
二本鎖オリゴヌクレオチド:本明細書で使用しているように、用語「二本鎖オリゴヌクレオチド」は、実質的に二重鎖形態であるオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの二重鎖領域(単数又は複数)の相補的塩基対は、共有結合的には分離している核酸鎖のヌクレオチドの逆平行配列間で形成される。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの二重鎖領域(単数又は複数)の相補的塩基対は、共有結合した核酸鎖のヌクレオチドの逆平行配列間で形成される。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの二重鎖領域(単数又は複数)の相補的塩基対は、(例えばヘアピンを介して)折り畳まれた単一核酸鎖から形成され、互いに塩基対になるヌクレオチドの相補的逆平行配列を提供する。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドは、互いに完全に二重鎖となっている2つの共有結合的には分離している核酸鎖を含む。しかし、いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドには、部分的に二重鎖になった、例えば一端又は両端にオーバーハングを有する、共有結合的には分離している2つの核酸鎖が含まれる。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドには、部分的に相補的であるヌクレオチドの逆平行配列が含まれ、従って、1つ以上のミスマッチを有してもよく、これには内部ミスマッチ又は末端ミスマッチが含まれてもよい。
【0039】
二重鎖:本明細書で使用しているように、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)に関する用語「二重鎖」は、ヌクレオチドの2つの逆平行配列の相補的塩基対合を経て形成される構造を指す。
【0040】
賦形剤:本明細書で使用しているように、用語「賦形剤」は組成物に含まれ得る非治療剤を指し、例えば所望の一貫性又は安定化効果を提供するか、又はそれらに寄与する。
【0041】
肝細胞:本明細書で使用しているように、用語「肝細胞(単数又は複数)」は、肝臓の実質組織の細胞を指す。これらの細胞は、肝臓の質量のおよそ70~85%を占め、血清アルブミン、フィブリノーゲン、及び凝固因子のプロトロンビン群(因子3及び4を除く)を産生する。肝細胞系譜細胞のマーカーには、トランスチレチン(Ttr)、グルタミン合成酵素(Glul)、肝細胞核因子1a(Hnf1a)、及び肝細胞核因子4a(Hnf4a)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。成熟肝細胞のマーカーには、チトクロームP450(Cyp3a11)、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(Fah)、グルコース6‐ホスフェート(G6p)、アルブミン(Alb)、及びOC2‐2F8が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Huchら、(2013年)、Nature、494(7436):247~250を参照されたい。肝細胞マーカーに関するその内容は、参照により本明細書に援用される。
【0042】
B型肝炎ウイルス:本明細書で使用しているように、用語「B型肝炎ウイルス」又は「HBV」は、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)ファミリーに属し、オルソヘパドナウイルス(Orthohepadnavirus)属のタイプ種に分類される小型DNAウイルスを指す。HBVウイルス粒子(ウイルス粒子)は、外部脂質外被、及びタンパク質で構成された正二十面体のヌクレオカプシドコアを含む。ヌクレオカプシドは一般に、ウイルスDNA、及びレトロウイルスと同様の逆転写酵素活性を有するDNAポリメラーゼを封入する。HBV外被には、感受性細胞のウイルス結合及び感受性細胞への侵入に関与するタンパク質が埋め込まれている。肝臓を攻撃するHBVは、配列に基づいた少なくとも10種の遺伝子型(A~J)に従って分類する。概して、ゲノムがコードする4つの遺伝子が存在し、これらの遺伝子はC、P、S、及びXと称する。コアタンパク質は遺伝子C(HBcAg)がコードし、その開始コドンの前に上流インフレームAUG開始コドンがあり、このコドンからプレコアタンパク質が生成する。HBeAgはプレコアタンパク質のタンパク質分解処理により生成する。DNAポリメラーゼは遺伝子Pがコードする。遺伝子Sは表面抗原(HBsAg)をコードする。HBsAg遺伝子は1つの長いオープンリーディングフレームであるが、遺伝子を3つの区域、pre‐S1、pre‐S2、及びSに分割する3つのフレーム内「開始」(ATG)コドンが含まれる。複数の開始コドンがあるため、大、中、小(pre‐S1+pre‐S2+S、pre‐S2+S、又はS)と称する3つの異なるサイズのポリペプチドが生成する。これらの比率は1:1:4としてもよい(Heermannら、1984年)。
【0043】
B型肝炎ウイルス(HBV)タンパク質は、いくつかのカテゴリと機能に編成できる。ポリメラーゼは逆転写酵素(RT)として機能してプレゲノムRNA(pgRNA)からウイルスDNAを産生し、またDNA依存性ポリメラーゼとして機能して共有結合的に閉じた環状DNA(cccDNA)をウイルスDNAから産生する。ポリメラーゼは、マイナス鎖の5’末端に共有結合する。コアタンパク質はウイルスのカプシド及び分泌E抗原を産生する。表面抗原は肝細胞内在化リガンドであり、またアウイルス(aviral)の球状及び繊維状粒子の主要な成分でもある。アウイルス粒子はデーン粒子(感染性ウイルス粒子)の>1000倍生成され、免疫デコイとして作用し得る。
【0044】
B型肝炎ウイルス表面抗原:本明細書で使用しているように、用語「B型肝炎ウイルス表面抗原」又は「HBsAg」は、HBVゲノムの遺伝子S(例えば、ORF S)がコードするSドメインタンパク質を指す。B型肝炎ウイルス粒子は、遺伝子Sがコードする3つのタンパク質により覆われたコア粒子中でウイルス核酸を運ぶ。これら3つのタンパク質は大型表面タンパク質、中程度表面タンパク質、及び主要表面タンパク質である。これらのタンパク質の中で、主要表面タンパク質は一般に約226アミノ酸であり、Sドメインのみを含む。
【0045】
感染:本明細書で使用しているように、用語「感染」は、被験体におけるウイルスなどの微生物の病原性侵入及び/又は拡大を指す。感染は溶原性である場合もあり、例えば、ウイルスDNAが細胞内で潜伏している可能性もある。あるいは、感染は溶解性である場合もあり、例えば、ウイルスは活発に増殖し、感染した細胞の破壊を引き起こす。感染は、臨床的に明らかな症状を引き起こす場合と引き起こさない場合がある。感染は局所化したままであるか、又は、例えば被験体の血液又はリンパ系を介して広がる可能性がある。例えば、HBV感染した個体は、ウイルス負荷、表面抗原(HBsAg)、e‐抗原(HBeAg)の1つ以上の検出、及び当技術分野で公知のHBV感染を検出するための他の種々のアッセイにより同定できる。HBV感染を検出するためのアッセイには、HBsAg及び/又はHBeAgの有無について血清又は血液サンプルを試験すること、更に任意で、HBV抗原が検出不可能なレベルにある可能性もある期間を補償するために1種以上のウイルス抗体(例えば、IgM及び/又はIgG)の有無をスクリーニングすることが含まれる。
【0046】
肝臓炎:本明細書で使用しているように、用語「肝臓炎」又は「肝炎」は、肝毒性物質への暴露に起因するような、特に傷害又は感染の結果としての肝臓の腫脹、機能不全、及び/又は痛みを伴う身体状態を指す。症状には、黄疸(皮膚や眼の黄変)、疲労、脱力感、吐き気、嘔吐、食欲減退、及び体重減少が挙げられる。肝臓炎は、治療せずに放置すると、線維症、肝硬変、肝不全、又は肝癌に進行する可能性がある。
【0047】
肝線維症:本明細書で使用しているように、用語「肝線維症」又は「肝臓の線維症」は細胞外基質タンパク質の肝臓における過剰な蓄積を指し、当該細胞外基質タンパク質にはコラーゲン(I、III、及びIV)、フィブロネクチン、ウンジュリン、エラスチン、ラミニン、ヒアルロナン、及びプロテオグリカンが挙げられ、これらは炎症及び肝細胞死から生じるものである。肝線維症は、治療せずに放置すると、肝硬変、肝不全、肝癌に進行することがある。
【0048】
ループ:本明細書で使用しているように、用語「ループ」は、互いに十分に相補的である核酸の2つの逆平行領域により両側が挟まれた核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)の不対領域を指し、これにより適切なハイブリダイゼーション条件下で(例えば、ホスフェート緩衝液中、細胞中)、不対領域の両側を挟む2つの逆平行領域がハイブリダイズし、二重鎖(「ステム」と称する)を形成する。
【0049】
修飾ヌクレオチド間結合:本明細書で使用しているように、用語「修飾ヌクレオチド間結合」という用語は、ホスホジエステル結合を含む参照ヌクレオチド間結合と比較して1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチド間結合を指す。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは天然に存在しない結合である。典型的には、修飾ヌクレオチド間結合は、修飾ヌクレオチド間結合が存在する核酸に1つ以上の望ましい特性を与える。例えば、修飾ヌクレオチドは、熱安定性、分解耐性、ヌクレアーゼ耐性、溶解性、生物学的利用能、生物活性、免疫原性低下等を改善し得る。
【0050】
修飾ヌクレオチド:本明細書で使用しているように、用語「修飾ヌクレオチド」は、アデニンリボヌクレオチド、グアニンリボヌクレオチド、シトシンリボヌクレオチド、ウラシルリボヌクレオチド、アデニンデオキシリボヌクレオチド、グアニンデオキシリボヌクレオチド、シトシンデオキシリボヌクレオチド及びチミジンデオキシリボヌクレオチドから選択される、対応の参照ヌクレオチドと比較して1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、天然には存在しないヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドはその糖、核酸塩基及び/又はホスフェート基中の1つ以上の化学修飾を有する。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは対応する参照ヌクレオチドにコンジュゲートされた1つ以上の化学部分を有する。典型的には、修飾ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドが存在する核酸に1つ以上の望ましい特性を与える。例えば、修飾ヌクレオチドは、熱安定性、分解耐性、ヌクレアーゼ耐性、溶解性、生物学的利用能、生物活性、免疫原性低下等を改善し得る。
【0051】
ニックドテトラループ構造:「ニックドテトラループ構造」は、離れたセンス(パッセンジャー)鎖及びアンチセンス(ガイド)鎖があることを特徴とするRNAiオリゴヌクレオチドの構造である。ここではセンス鎖がアンチセンス鎖と相補的な領域を有し、鎖の少なくとも一方、一般的にはセンス鎖は、少なくとも1つの鎖内に形成された隣接するステム領域を安定させるように構成されたテトラループを有する。
【0052】
オリゴヌクレオチド:本明細書で使用しているように、用語「オリゴヌクレオチド」は、例えば、100ヌクレオチド長未満の短い核酸を指す。オリゴヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよい。オリゴヌクレオチドは二重鎖領域があってもなくてもよい。一連の非限定的な例として、オリゴヌクレオチドは、小型干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、ダイサー基質干渉RNA(dsiRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖siRNA、又は一本鎖siRNAであってもよいが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドはRNAiオリゴヌクレオチドである。
【0053】
オーバーハング:本明細書で使用しているように、用語「オーバーハング」は、一方の鎖又は領域が二重鎖を形成する相補鎖の末端を超えて延びる一方の鎖又は領域から生じる末端非塩基対ヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、二本鎖オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の二重鎖領域から延びる1つ以上の不対ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、オーバーハングは、二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖又はセンス鎖上の3’又は5’オーバーハングである。
【0054】
ホスフェート類似体:本明細書で使用しているように、用語「ホスフェート類似体」は、ホスフェート基の静電特性及び/又は立体特性を模倣する化学部分を指す。いくつかの実施形態では、ホスフェート類似体は、酵素的除去を受けることが多い5’‐ホスフェートの代わりにオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態では、5’ホスフェート類似体は、ホスファターゼ耐性結合を含む。ホスフェート類似体の例には、5’メチレンホスホネート(5’‐MP)及び5’‐(E)‐ビニルホスホネート(5’‐VP)などの5’ホスホン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、5’末端ヌクレオチドの糖の4’炭素位置にホスフェート類似体(「4’‐ホスフェート類似体」と称する)を有する。4’‐ホスフェート類似体の例はオキシメチルホスホネートであり、ここではオキシメチル基の酸素原子は、糖部分(例えば、その4’‐炭素で)又はその類似体に結合する。例えば、2016年9月2日出願の米国仮出願第62/383,207号明細書、及び2016年9月12日出願の米国仮出願第62/393,401号明細書を参照されたい。ホスフェート類似体に関するこれらのそれぞれの内容は参照により本明細書に援用される。オリゴヌクレオチドの5’末端用に他の修飾が開発されている(例えば、国際公開第2011/133871号明細書、米国特許第8,927,513号明細書、及びPrakashら、(2015年)、Nucleic Acids Res.、43(6):2993~3011を参照されたい。ホスフェート類似体に関するこれらのそれぞれの内容は参照により本明細書に援用される)。
【0055】
発現低下:本明細書で使用しているように、用語、遺伝子の「発現低下」は、適切な参照細胞又は被験体と比較して、遺伝子がコードするRNA転写産物もしくはタンパク質の量の減少、及び/又は細胞もしくは対象における遺伝子の活性の量の減少を指す。例えば、細胞を二本鎖オリゴヌクレオチド(例えば、HBsAg mRNA配列に相補的であるアンチセンス鎖を有するもの)で処理すると、二本鎖オリゴヌクレオチドで処理していない細胞と比較して、(例えば、HBVゲノムのS遺伝子にコードされる)RNA転写産物、タンパク質及び/又は酵素活性の量が減少する場合がある。同様に、本明細書で使用するような「発現低下」は、遺伝子(例えば、HBVゲノムのS遺伝子)の発現低下をもたらす作用を指す。
【0056】
相補性の領域:本明細書で使用しているように、用語「相補性の領域」は、例えば、ホスフェート緩衝液中、細胞中などの適切なハイブリダイゼーション条件下でのヌクレオチドの2つの配列間でハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチドの逆平行配列に十分相補的である核酸(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド)のヌクレオチド配列を指す。
【0057】
リボヌクレオチド:本明細書で使用しているように、用語「リボヌクレオチド」は、その2’位にヒドロキシル基を含むそのペントース糖としてリボースを有するヌクレオチドを指す。修飾リボヌクレオチドは、リボース、ホスフェート基又は塩基の修飾又は置換などの、2’位以外の原子の1つ以上の修飾又は置換を有するリボヌクレオチドである。
【0058】
RNAiオリゴヌクレオチド:本明細書で使用しているように、用語「RNAiオリゴヌクレオチド」は以下のいずれかを指す:(a)センス鎖(パッセンジャー)及びアンチセンス鎖(ガイド)を有する二本鎖オリゴヌクレオチドであり、この二本鎖オリゴヌクレオチドでは、アンチセンス鎖もしくはアンチセンス鎖の一部が標的mRNAの切断でアルゴノート2(Ago2)エンドヌクレアーゼに使用される;又は(b)単一アンチセンス鎖を有する一本鎖オリゴヌクレオチドであり、この一本鎖オリゴヌクレオチドでは、アンチセンス鎖(もしくはそのアンチセンス鎖の一部)が標的mRNAの切断でAgo2エンドヌクレアーゼに使用される。
【0059】
鎖:本明細書で使用しているように、用語「鎖」は、ヌクレオチド間結合(例えば、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合)を介して結合された複数のヌクレオチドの単一の連続配列を指す。いくつかの実施形態では、鎖は、2つの自由末端、例えば、5’末端及び3’末端を有する。
【0060】
被験体:本明細書で使用しているように、用語「被験体」は、マウス、ウサギ、及びヒトを含む任意の哺乳動物を指す。一実施形態では、被験体は、ヒト又は非ヒト霊長類である。用語「個体」又は「患者」は「被験体」と言い換えて使用してもよい。
【0061】
合成:本明細書で使用しているように、用語「合成」は、人工的に合成した(例えば、機械(例えば、固体状核酸合成装置)を使用)核酸もしくは他の分子、又は、通常分子を生成する天然源(例えば、細胞又は生物)に由来しない核酸もしくは他の分子を指す。
【0062】
標的化リガンド:本明細書で使用しているように、用語「標的化リガンド」は、対象の組織又は細胞の同族分子(例えば、受容体)に選択的に結合し、対象の組織又は細胞に他の物質を標的化する目的で別の物質とコンジュゲートする分子(例えば、炭水化物、アミノ糖、コレステロール、ポリペプチド又は脂質)を指す。例えば、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドを対象の特定の組織又は細胞に標的化する目的で、標的化リガンドをオリゴヌクレオチドにコンジュゲートしてもよい。いくつかの実施形態では、標的化リガンドは細胞表面受容体に選択的に結合する。従って、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートしたときの標的化リガンドは、細胞の表面に発現する受容体への選択的結合、並びにオリゴヌクレオチド、標的化リガンド及び受容体を含む複合体の細胞によるエンドソーム内在化を通じて、オリゴヌクレオチドの特定の細胞への送達を促進する。いくつかの実施形態では、標的化リガンドは、細胞内在化後、又は細胞内在化の間に切断されるリンカーを介してオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ、それにより、オリゴヌクレオチドが細胞内の標的化リガンドから放出される。
【0063】
テトラループ:本明細書で使用しているように、用語「テトラループ」は、ヌクレオチドの隣接配列のハイブリダイゼーションにより形成した隣接二重鎖の安定性を向上するループを指す。安定性の向上は、隣接ステム二重鎖の融解温度(Tm)の上昇として検出可能であり、この温度は、ランダムに選択したヌクレオチド配列から成る同等の長さを有するループのセットから平均して予想される隣接ステム二重鎖のTmより高い。例えば、少なくとも2塩基対長の二重鎖を含むヘアピンに添加した10mMのNaHPO4中で、テトラループは少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、又は少なくとも75℃の融解温度をもたらす。いくつかの実施形態では、テトラループは、相互作用を積み重ねることにより隣接するステム二重鎖の塩基対を安定化させることが可能になる。また、テトラループ内のヌクレオチド間の相互作用には、非ワトソン‐クリックの塩基対形成、積み重ね相互作用、水素結合、及び接触相互作用が含まれるが、これらに限定されるものではない(Cheongら、Nature、1990年8月16日;346(6285):680~2;Heus及びPardi、Science、1991年7月12日;253(5016):191~4)。いくつかの実施形態では、テトラループは、4、5個のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、テトラループは3、4、5、又は6つのヌクレオチドを含むか、又はそれらから成り、これらは修飾されてもしなくてもよい(例えば、標的化部分にコンジュゲートされてもされなくてもよい)。一実施形態では、テトラループは4つのヌクレオチドから成る。テトラループではどのようなヌクレオチドを使用してもよく、そのようなヌクレオチドの標準IUPAC‐IUB記号は、Cornish‐Bowden(1985年)Nucl.Acids Res.13:3021~3030に記載の通りに使用できる。例えば、文字「N」は、その位置に任意の塩基が存在する可能性を意味し、文字「R」は、その位置にA(アデニン)又はG(グアニン)が存在することを示すために使用でき、「B」は、その位置にC(シトシン)、G(グアニン)、又はT(チミン)が存在することを示すために使用できる。テトラループの例には、テトラループのUNCGファミリー(例えばUUCG)、テトラループのGNRAファミリー(例えばGAAA)、及びCUUGテトラループ(Woeseら、Proc Natl Acad Sci USA、1990年11月;87(21):8467~71;Antaoら、Nucleic Acids Res.1991年11月11日;19(21):5901~5)が挙げられる。DNAテトラループの例には、テトラループのd(GNNA)ファミリー(例えばd(GTTA))、テトラループのd(GNRA)ファミリー、テトラループのd(GNAB)ファミリー、テトラループのd(CNNG)ファミリー、及びテトラループのd(TNCG)ファミリー(例えばd(TTCG))が挙げられる。例えば、Nakanoら、Biochemistry、41(48)、14281~14292、2002年、SHINJIら、Nippon Kagakkai Koen Yokoshu、第78巻;第2号;731頁(2000年)を参照されたい。これらは関連する開示として参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、テトラループはニックドテトラループ構造内に含まれる。
【0064】
治療:本明細書で使用しているように、用語「治療する」は、例えば被験体への治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド)の投与を経て当該薬剤を必要とする被験体をケアする行為を指す。その目的は現時点での状態(例えば、現時点でのHBV感染)に関する被験体の健康及び/もしくは福祉を改善することであり、又は状態の発生の可能性を防止もしくは低減する(例えば、肝線維症、肝炎、肝臓癌、又はHBV感染に関連する他の状態の防止)ことである。いくつかの実施形態では、治療には、被験体が経験する状態(例えば、HBV感染又は関連状態)の少なくとも1つの徴候、症状又は寄与因子の頻度又は重症度を低減する工程が含まれる。HBV感染中、被験体は皮膚や眼の黄変(黄疸)、暗色尿、極度の疲労、吐き気、嘔吐、腹痛などの症状を示す場合がある。従って、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療は、1つ以上のそのような症状の頻度又は重症度を低減できる可能性がある。しかし、HBV感染は、肝硬変、肝線維症、肝炎、肝癌などの1つ以上の肝症状に発展する可能性がある。従って、いくつかの実施形態では、本明細書で提供する治療は、そのような状態の1つ以上の頻度もしくは重症度を低減、又は予防もしくは軽減する可能性がある。
II.オリゴヌクレオチド系阻害剤
i.HBV表面抗原標的化
【0065】
いくつかの実施形態では、HBV表面抗原発現のオリゴヌクレオチド系阻害剤が本明細書で提供され、これを使用し、治療効果が達成できる。HBV表面抗原mRNAの検討及び様々なオリゴヌクレオチド試験を経て、HBV感染を治療するためのHBV表面抗原(HBsAg)の発現を低減する強力なオリゴヌクレオチドが開発された。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、全ての既知の遺伝子型に渡って既知のHBVゲノムの>95%を網羅するHBsAg mRNA配列を標的とするように設計している。いくつかの実施形態では、このようなオリゴヌクレオチドでは、肝臓中のHBVプレゲノムRNA(pgRNA)及びHBsAg mRNAが90%を超えて低減する。いくつかの実施形態では、HBsAg発現の低下は、単回投与又は治療計画後に長期間に渡って持続する。
【0066】
従って、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、細胞内の転写産物を標的とし、それらの発現を阻害する目的で、HBsAg mRNAに相補的な領域を有するように設計している。相補性の領域は概して、HBsAg mRNA発現を阻害する目的でオリゴヌクレオチド(又はその鎖)をHBsAg mRNAにアニーリングするのに好適な長さ及び塩基含有量を持つ領域である。いくつかの実施形態では、相補性の領域は少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、又は少なくとも20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは12~30(例えば、12~30、12~22、15~25、17~21、18~27、19~27、又は15~30)ヌクレオチド長の範囲の、HBsAg mRNAに相補的な領域を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長である、HBsAg mRNAに相補的な領域を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドはHBsAgをコードするmRNA配列を標的とするように設計している。例えば、いくつかの実施形態では、ACAANAAUCCUCACAAUA(配列番号1)に規定される配列に相補的な領域を持つアンチセンス鎖を有するオリゴヌクレオチドが提供される。この配列中、Nは任意のヌクレオチド(A、G、T、又はC)を指す。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは更に、アンチセンス鎖と共に二本鎖領域を形成するセンス鎖を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、UUNUUGUGAGGAUUN(配列番号2)に規定される配列に相補的な領域を有する。いくつかの実施形態では、センス鎖は、(5’→3’方向に示す):UUAUUGUGAGGAUUNUUGUC(配列番号3)に規定される配列に相補的な領域を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、UUAUUGUGAGGAUUNUUGUCGG(配列番号4)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、UUAUUGUGAGGAUUCUUGUCGG(配列番号5)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、UUAUUGUGAGGAUUUUUUGUCGG(配列番号5.1)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。いくつかの実施形態では、センス鎖は、ACAANAAUCCUCACAAUAA(配列番号6)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。いくつかの実施形態では、センス鎖は、GACAANAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号7)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。いくつかの実施形態では、センス鎖は、GACAAAAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。いくつかの実施形態では、センス鎖は、GACAAGAAUCCUCACAAUAAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号8.1)に規定される配列を含むか、又はそれから成る。
【0069】
いくつかの実施形態では、HBsAg mRNAの発現を低減するためのオリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖と共に二重鎖領域を形成するセンス鎖を含み、センス鎖は配列番号6~8.1のいずれか1つに規定される配列を含み、アンチセンス鎖は配列番号4~5.1のいずれか1つに規定される配列を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は2’‐フルオロ及び2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、N‐アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は2’‐フルオロ及び2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素はホスフェート類似体を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖及びセンス鎖のそれぞれは、2’‐フルオロ及び2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、並びに少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖の5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素はホスフェート類似体を含み、センス鎖はN‐アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分にコンジュゲートされる。
【0070】
いくつかの実施形態では、配列番号7~8.1のいずれか1つに規定される配列を含むセンス鎖は3、8~10、12、13、及び17位に2’‐フルオロ修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は1、2、4~7、11、14~16、18~26、及び31~36位に2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は1位と2位のヌクレオチド間でホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖はN‐アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分にコンジュゲートされる。
【0071】
いくつかの実施形態では、配列番号4~5.1のいずれか1つに規定される配列を含むアンチセンス鎖は、2、3、5、7、8、10、12、14、16、及び19位に2’‐フルオロ修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、1、4、6、9、11、13、15、17、18、及び20~22位に2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は3つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は1位と2位のヌクレオチド間で、2位と3位のヌクレオチド間で、3位と4位のヌクレオチド間で、20位と21位のヌクレオチド間で、21位と22位のヌクレオチド間でホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの態様では、アンチセンス鎖の5’‐ヌクレオチドの糖の4’‐炭素はホスフェート類似体を含む。
ii.二本鎖オリゴヌクレオチド
【0072】
本開示の方法においてHBsAg mRNA発現を標的化するために有用なオリゴヌクレオチドには様々な構造が存在し、RNAi、アンチセンス、miRNA等が含まれる。本明細書又は他の文献に記載される構造のいずれかが骨格として使用され、本明細書に記載される配列を組み込むか、又は標的とする。(例えば、RNAi経路を介して)HBV抗原発現を標的化するための二本鎖オリゴヌクレオチドは概して、互いに二重鎖を形成するセンス鎖及びアンチセンス鎖を有する。いくつかの実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は共有結合していない。しかし、いくつかの実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は共有結合している。
【0073】
いくつかの実施形態では、HBsAg mRNAの発現を低減するための二本鎖オリゴヌクレオチドは、RNA干渉(RNAi)に関与する。例えば、各鎖が19~25ヌクレオチドのサイズを有し、少なくとも1つの3’オーバーハングが1~5ヌクレオチドであるようなRNAiオリゴヌクレオチドが開発されている(例えば、米国特許第8,372,968号明細書を参照)。より長いオリゴヌクレオチドも開発されており、これはダイサーで処理して活性なRNAi産物を生成する(例えば、米国特許第8,883,996号明細書を参照)。更なる研究により、少なくとも1つの鎖の少なくとも一方の末端が二重標的領域を超えて拡張された拡張二本鎖オリゴヌクレオチドが生成され、このオリゴヌクレオチドには鎖の1つが熱力学的に安定したテトラループ構造を含む構造が含まれる(例えば、米国特許第8,513,207号明細書及び第8,927,705号明細書、並びに国際公開第2010033225号明細書参照。これらのオリゴヌクレオチドの開示について参照により本明細書に援用される)。このような構造は、一本鎖伸長(分子の片側又は両側)並びに二本鎖伸長を含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、ダイサー酵素で切断可能である。このようなオリゴヌクレオチドはセンス鎖の3’末端に(例えば、1、2、又は3ヌクレオチド長の)オーバーハングを有してもよい。このようなオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)は、標的RNA及び相補的なパッセンジャー鎖に対するアンチセンスである21ヌクレオチドのガイド鎖を含んでもよく、両鎖がアニーリングして、3’末端の一方又は両方において19bpの二重鎖及び2ヌクレオチドのオーバーハングを形成する。23ヌクレオチドのガイド鎖及び21ヌクレオチドのパッセンジャー鎖を有するオリゴヌクレオチドを含む、より長いオリゴヌクレオチドを設計することも可能であり、ここでは分子の右側(パッセンジャー鎖の3’末端/ガイド鎖の5’末端)に平滑末端が存在し、分子の左側(パッセンジャー鎖の5’末端/ガイド鎖の3’末端)に2ヌクレオチドの3’‐ガイド鎖オーバーハングが存在する。このような分子には、21塩基対の二重鎖領域が存在する。例えば、米国特許第9012138号明細書、第9012621号明細書、及び第9193753号明細書を参照されたい。各々は関連した開示について本明細書に援用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドはセンス鎖及びアンチセンス鎖を含んでもよく、両方とも17~26(例えば、17~26、20~25、19~21、又は21~23)ヌクレオチド長の範囲内にある。いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖は等しい長さである。いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖の両方が21~23ヌクレオチド長の範囲内にあるオリゴヌクレオチドの場合、センス鎖、アンチセンス鎖、又は両鎖上の3’オーバーハングは1又は2ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、23ヌクレオチドのガイド鎖及び21ヌクレオチドのパッセンジャー鎖を有し、ここでは分子の右側(パッセンジャー鎖の3’末端/ガイド鎖の5’末端)に平滑末端が存在し、分子の左側(パッセンジャー鎖の5’末端/ガイド鎖の3’末端)に2ヌクレオチドの3’‐ガイド鎖オーバーハングが存在する。このような分子には、21塩基対の二重鎖領域が存在する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、25ヌクレオチドのセンス鎖及び27ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、ダイサー酵素により作用を受けると、アンチセンス鎖が成熟RISCに組み込まれる。
【0076】
本明細書で開示する組成物及び方法で利用する他のオリゴヌクレオチド設計には、16量体siRNAs(例えば、Nucleic Acids in Chemistry and Biology.Blackburn(編集)、Royal Society of Chemistry、2006年参照)、shRNA(例えば、19bp以下のステムを有する;例えば、Mooreら、Methods Mol.Biol.2010年;629:141~158参照)、平滑siRNA(例えば、19bp長;例えば、Kraynack及びBaker、RNA 第12巻、163~176頁(2006年)参照)、非対称siRNA(aiRNA;例えば、Sunら、Nat.Biotechnol.26,1379~1382(2008年)参照)、非対称短二重鎖siRNA(例えば、Changら、Mol Ther.2009年4月;17(4):725~32参照)、フォークsiRNA(例えば、Hohjoh、FEBS Letters、第557巻、1~3号;2004年1月、193~198頁参照)、単鎖siRNA(Elsner;Nature Biotechnology 30、1063(2012年))、ダンベル型環状siRNA(例えば、Abeら、J Am Chem Soc 129:15108~15109(2007年)参照)、及び小型の内部セグメント化干渉RNA(sisiRNA;例えば、Bramsenら、Nucleic Acids Res.2007年9月;35(17):5886~5897参照)が含まれる。前述の各参考文献は、その中の関連する開示について、その全体が参照により援用される。HBsAgの発現を低減又は阻害するためにいくつかの実施形態で使用し得るオリゴヌクレオチド構造の別の非限定的な例には、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、及び短鎖siRNAが挙げられる(例えば、Hamiltonら、Embo J.,2002年、21(17):4671~4679参照;また、米国出願第20090099115号明細書参照)。
a.アンチセンス鎖
【0077】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖は「ガイド鎖」と称する場合もある。例えば、アンチセンス鎖がRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と会合してアルゴノートタンパク質に結合するか、又は1つ以上の類似因子と会合又は結合して標的遺伝子のサイレンシングを指示することが可能な場合は、ガイド鎖と称してもよい。いくつかの実施形態では、ガイド鎖と相補的なセンス鎖は「パッセンジャー鎖」と称してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するオリゴヌクレオチドは、最大50ヌクレオチド長(例えば、最大30、最大27、最大25、最大21、又は最大19ヌクレオチド長)であるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するオリゴヌクレオチドは、少なくとも12ヌクレオチド長(例えば、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも19、少なくとも21、少なくとも25、又は少なくとも27ヌクレオチド長)であるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖は、12~50又は12~30(例えば、12~30、11~27、11~25、15~21、15~27、17~21、17~25、19~27、又は19~30)ヌクレオチド長の範囲内にある。いくつかの実施形態では、本明細書に開示したオリゴヌクレオチドのいずれか1種のアンチセンス鎖は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド長である。
【0079】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は(5’→3’方向に示す)AATCCTCACA(配列番号9)に規定される配列に相補的な領域を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は(5’→3’方向に示す)UGUGAGGAUU(配列番号10)に規定される配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は(5’→3’方向に示す)TGTGAGGATT(配列番号11)に規定される配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、HBsAg mRNAの発現を低減するためのオリゴヌクレオチドは、配列番号9に規定される配列に相補的な領域を有するアンチセンス鎖、及びその3’末端にある1つ又は2つの非相補的ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は配列番号4~5.1のいずれか1つに規定されるヌクレオチド配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、HBsAg mRNAの発現を低減するためのオリゴヌクレオチドは、配列番号9に規定される配列に相補的な領域を有するアンチセンス鎖を含むことが可能であり、当該アンチセンス鎖は以下の配列のいずれか1つに規定される配列を持たない:(5’→3’方向に示す)TATTGTGAGGATTCTTGTCA(配列番号12);CGGTATTGTGAGGATTCTTG(配列番号13);TGTGAGGATTCTTGTCAACA(配列番号14);UAUUGUGAGGAUUUUUGUCAA(配列番号15);UGCGGUAUUGUGAGGAUUCTT(配列番号16);ACAGCATTGTGAGGATTCTTGTC(配列番号17);UAUUGUGAGGAUUUUUGUCAACA(配列番号18);AUUGUGAGGAUUUUUGUCAACAA(配列番号19);及びUUGUGAGGAUUUUUGUCAACAAG(配列番号20)。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号4、5、又は5.1に規定されるヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチド分異なる。
b.センス鎖
【0082】
いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドは最大40ヌクレオチド長(例えば、最大40、最大35、最大30、最大27、最大25、最大21、最大19、最大17、又は最大12ヌクレオチド長)のセンス鎖を有してもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは少なくとも12ヌクレオチド長(例えば、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも19、少なくとも21、少なくとも25、少なくとも27、少なくとも30、少なくとも35、又は少なくとも38ヌクレオチド長)のセンス鎖を有してもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは12~50(例えば、12~40、12~36、12~32、12~28、15~40、15~36、15~32、15~28、17~21、17~25、19~27、19~30、20~40、22~40、25~40、又は32~40)ヌクレオチド長の範囲のセンス鎖を有してもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド長のセンス鎖を有してもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのセンス鎖は27ヌクレオチドより長い(例えば、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチド)。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのセンス鎖は、25ヌクレオチドより長い(例えば、26、27、28、29又は30ヌクレオチド)。
【0083】
いくつかの実施形態では、センス鎖はその3’末端にステムループを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖はその5’末端にステムループを含む。いくつかの実施形態では、ステムループを含む鎖は2~66ヌクレオチド長(例えば、2~66、10~52、14~40、2~30、4~26、8~22、12~18、10~22、14~26、又は14~30ヌクレオチド長)の範囲内にある。いくつかの実施形態では、ステムループを含む鎖は8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ステムは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14ヌクレオチド長の二重鎖を含む。いくつかの実施形態では、ステムループは分子を分解(例えば、酵素分解)からより良好に保護し、標的細胞への送達のための標的化特性を促進する。例えば、いくつかの実施形態では、ループは、オリゴヌクレオチドの遺伝子発現阻害活性に大幅に影響を与えることなく修飾を行えるヌクレオチドを追加する。特定の実施形態では、以下に規定されるステムループを(例えば、その3’末端に)含むセンス鎖を有するオリゴヌクレオチドが本明細書で提供される:S1‐L‐S2、式中S1はS2に相補的であり、LはS1とS2との間に最大10ヌクレオチド長(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド長)のループを形成する。
【0084】
いくつかの実施形態では、ステムループのループ(L)は(例えば、ニックドテトラループ構造内の)テトラループである。テトラループはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含み得る。典型的には、テトラループは4、5個のヌクレオチドを有する。
c.二重鎖長
【0085】
いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖間に形成される二重鎖は少なくとも12(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、又は少なくとも21)ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖間に形成される二重鎖は12~30ヌクレオチド長(例えば、12~30、12~27、12~22、15~25、18~30、18~22、18~25、18~27、18~30、19~30、又は21~30ヌクレオチド長)の範囲内にある。いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖間に形成される二重鎖は12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖間に形成される二重鎖はセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖の全長に及ぶことはない。いくつかの実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖間の二重鎖は、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの全長に及ぶ。特定の実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖間の二重鎖は、センス鎖とアンチセンス鎖の両方の全長に及ぶ。
d.オリゴヌクレオチド末端
【0086】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、それによりセンス鎖もしくはアンチセンス鎖のいずれか、又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方に3’‐オーバーハングが存在する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、他の5’末端と比較して熱力学的に安定性が低い1つの5’末端を有する。いくつかの実施形態では、センス鎖の3’末端の平滑末端及びアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングを含む非対称オリゴヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の3’オーバーハングは1~8ヌクレオチド長(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8ヌクレオチド長)である。
【0087】
典型的には、RNAiのオリゴヌクレオチドには、アンチセンス(ガイド)鎖の3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングがある。ただし他のオーバーハングも考えられる。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、1~6ヌクレオチド、任意に1~5、1~4、1~3、1~2、2~6、2~5、2~4、2~3、3~6、3~5、3~4、4~6、4~5、5~6ヌクレオチド、又は1、2、3、4、5、もしくは6ヌクレオチドの長さを含む3’オーバーハングである。しかし、いくつかの実施形態では、オーバーハングは、1~6ヌクレオチド、任意に1~5、1~4、1~3、1~2、2~6、2~5、2~4、2~3、3~6、3~5、3~4、4~6、4~5、5~6ヌクレオチド、又は1、2、3、4、5、もしくは6ヌクレオチドの長さを含む5’オーバーハングである。
【0088】
いくつかの実施形態では、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端又は5’末端の1つ以上の(例えば、2、3、4)末端ヌクレオチドは修飾されている。例えば、いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端の1つ又は2つの末端ヌクレオチドは修飾されている。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端の最後尾ヌクレオチドは修飾され、例えば2’修飾、例えば2’‐O‐メトキシエチルを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端の最後尾にある1つ又は2つの末端ヌクレオチドは標的と相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端の最後尾にある1つ又は2つのヌクレオチドは標的と相補的ではない。
【0089】
いくつかの実施形態では、3’末端センス鎖にニックドテトラループ構造を有し、そのアンチセンス鎖の3’末端に2つの末端オーバーハングヌクレオチドを有する二本鎖オリゴヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、2つの末端オーバーハングヌクレオチドはGGである。典型的には、アンチセンス鎖の2つの末端GGヌクレオチドの一方又は両方は標的と相補的であるか、又は相補的でない。
【0090】
いくつかの実施形態では、センス鎖又はアンチセンス鎖の5’末端及び/又は3’末端には逆キャップヌクレオチドがある。
【0091】
いくつかの実施形態では、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端又は5’末端の末端ヌクレオチド間に、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6)の修飾ヌクレオチド間結合がある。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端又は5’末端のオーバーハングヌクレオチド間にある。
e.ミスマッチ
【0092】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、センス鎖とアンチセンス鎖間に1つ以上(例えば、1、2、3、4、5)のミスマッチを有してもよい。センス鎖とアンチセンス鎖間に複数のミスマッチがある場合、ミスマッチは連続して(例えば、連続して2、3個以上)配置されるか、又は相補性領域全体に点在していてもよい。いくつかの実施形態では、センス鎖の3’末端は1つ以上のミスマッチを含む。一実施形態では、2つのミスマッチがセンス鎖の3’末端に組み込まれる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのセンス鎖の3’末端での塩基ミスマッチ又はセグメントの不安定化により、おそらくダイサーによるプロセシングの容易化を経て、RNAiにおける合成二重鎖の効力が改善された。
【0093】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、対応する転写産物配列と比較して1つ以上のミスマッチを含むHBsAg転写産物と相補的な領域を有してもよい。オリゴヌクレオチド上の相補性領域は、適切なハイブリダイゼーション条件下で転写産物と相補的な塩基対を形成する能力を維持しているのであれば、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5等のミスマッチを有してもよい。あるいは、オリゴヌクレオチドの相補性領域は、適切なハイブリダイゼーション条件下でHBsAg mRNAと相補的な塩基対を形成する能力を維持しているのであれば、1以下、2以下、3以下、4以下、又は5以下のミスマッチを有してもよい。いくつかの実施形態では、相補性領域に複数のミスマッチがある場合、ミスマッチは連続して(例えば、2、3、4個以上)配置されるか、又は、適切なハイブリダイゼーション条件下でHBsAg mRNAと相補的な塩基対を形成する能力をオリゴヌクレオチドが維持しているのであれば、相補性領域全体に点在していてもよい。
iii.1本鎖オリゴヌクレオチド
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のHBsAg発現を低減するためのオリゴヌクレオチドはHBsAg mRNAとの相補性を有する一本鎖オリゴヌクレオチドである。このような構造には、一本鎖RNAiオリゴヌクレオチドが含まれるが、これに限定されるものではない。最近の取り組みにより、一本鎖RNAiオリゴヌクレオチドの活性が実証されている(例えば、Matsuiら(2016年5月)、Molecular Therapy、第24(5)巻、946~955参照)。しかし、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは核酸塩基配列を有する1本鎖オリゴヌクレオチドであり、これは5’から3’方向に書き込まれたとき、特定の核酸の標的セグメントの逆相補体を含み、そして(例えば、ギャップマーとして)細胞内のその標的RNAのRAaseH媒介切断を誘導するように、又は(例えば、ミックスマーとして)細胞内の標的mRNAの翻訳を阻害するように適切に修飾される。本開示で使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、米国特許第9,567,587号明細書に示されるような当該分野で公知の任意の好適な様式で修飾してもよい。この文献はアンチセンスオリゴヌクレオチドの修飾(例えば、核酸塩基(ピリミジン、プリン)の長さ、糖部分、及び核酸塩基の複素環部の改変など)に関する開示について参照により本明細書に援用される。また、アンチセンス分子は何十年もの間、特定の標的遺伝子の発現を低減するために使用してきた(例えば、Bennettら;Pharmacology of Antisense Drugs、Annual Review of Pharmacology and Toxicology、第57巻:81~105参照)。
iv.オリゴヌクレオチド修飾
【0095】
オリゴヌクレオチドは、特異性、安定性、送達、生物学的利用能、ヌクレアーゼ分解耐性、免疫原性、塩基対合特性、RNA分布及び細胞取り込み、並びに治療又は研究用途に関連する他の特徴を改善又は制御するために様々な方法で修飾してもよい。例えば、Bramsenら、Nucleic Acids Res.、2009年、37、2867~2881;Bramsen及びKjems(Frontiers in Genetics、3(2012年):1~22)を参照されたい。従って、いくつかの実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは1つ以上の好適な修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、その塩基(又は核酸塩基)、糖(例えば、リボース、デオキシリボース)、又はホスフェート基に修飾を有する。
【0096】
オリゴヌクレオチド上の修飾の数及びそのヌクレオチド修飾の位置はオリゴヌクレオチドの特性に影響を及ぼし得る。例えば、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを脂質ナノ粒子(LNP)又は類似の担体にコンジュゲートするか、又は組み込むことによりインビボで送達してもよい。しかし、オリゴヌクレオチドがLNP又は類似の担体に保護されていない場合、そのヌクレオチドの少なくとも数個を修飾することが有利となり得る。従って、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドのいずれかの特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの全て、又はほぼ全てのヌクレオチドを修飾する。特定の実施形態では、ヌクレオチドの半分以上を修飾する。特定の実施形態では、ヌクレオチドの半分未満を修飾する。典型的には、ネイキッド送達では、全ての糖を2’位で修飾する。これらの修飾は可逆的でも不可逆的でもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドは、所望の特性(例えば、酵素分解からの保護、インビボ投与後に所望の細胞を標的とする能力、及び/又は熱力学的安定性)を得るのに十分な数及び種類の修飾ヌクレオチドを有する。
a.糖修飾
【0097】
いくつかの実施形態では、修飾した糖(本明細書では糖類似体とも称する)には、例えば、糖の2’、3’、4’、及び/又は5’炭素位置に1つ以上の修飾がある修飾デオキシリボース又はリボース部分が含まれる。いくつかの実施形態では、修飾糖は、ロック核酸(「LNA」)(例えば、Koshkinら(1998年)、Tetrahedron 54、3607~3630参照)、アンロック核酸(「UNA」)(例えば、Sneadら、(2013年)、Molecular Therapy‐Nucleic Acids、2、e103参照)、及びブリッジ核酸(「BNA」)(例えば、Imanishi及びObika(2002年)、The Royal Society of Chemistry、Chem.Commun.、1653~1659年)に存在するような非天然代替炭素構造も含んでよい。Koshkinら、Sneadら、及びImanishi及びObikaは、糖修飾に関するそれらの開示について参照により本明細書に援用される。
【0098】
いくつかの実施形態では、糖中のヌクレオチド修飾は2’‐修飾を含む。2’‐修飾は、2’‐アミノエチル、2’‐フルオロ、2’‐O‐メチル、2’‐O‐メトキシエチル、及び2’‐デオキシ‐2’‐フルオロ‐β‐d‐アラビノ核酸であってもよい。典型的には、修飾は2’‐フルオロ、2’‐O‐メチル、又は2’‐O‐メトキシエチルである。いくつかの実施形態では、糖における修飾は糖環の修飾を含み、これには糖環の1つ以上の炭素の修飾が含まれてもよい。例えば、ヌクレオチドの糖の修飾は糖の2’‐酸素を含んでもよく、この2’‐酸素は糖の1’‐炭素もしくは4’‐炭素に結合しているか、又は2’‐酸素はエチレンもしくはメチレン架橋を介して1’‐炭素もしくは4’‐炭素に結合している。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは2’‐炭素~3’‐炭素結合を欠く非環式糖を有する。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、例えば糖の4’位にチオール基を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、末端の3’末端基(例えば、3’‐ヒドロキシル)はホスフェート基又は他の基であり、これは、例えば、リンカー、アダプターもしくは標識を結合するために、又は別の核酸へのオリゴヌクレオチドを直接結合するために使用できる。
b.5’末端ホスフェート
【0100】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの5’末端ホスフェート基はアルゴノート2との相互作用を促進する。しかし、5’ ホスフェート基を含むオリゴヌクレオチドは、ホスファターゼ又は他の酵素により分解されやすく、インビボでの生物学的利用能が制限される可能性がある。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、このような分解に耐性がある5’ホスフェートの類似体を含む。いくつかの実施形態では、ホスフェート類似体はオキシメチルホスホネート、ビニルホスホネート、又はマロニルホスホネートであってもよい。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端は天然5’‐ホスフェート基の静電特性及び立体特性を模倣する化学的部分(「ホスフェート模倣体」)に結合している(例えば、Prakashら、(2015年)、Nucleic Acids Res.、Nucleic Acids Res.2015年3月31日;43(6):2993~3011、ホスフェート類似体に関するその内容は参照により本明細書に援用される)。5’末端に結合可能な多くのホスフェート模倣体が開発されている(例えば、米国特許第8,927,513号明細書参照。リン酸類似体に関するその内容は参照により本明細書に援用される)。オリゴヌクレオチドの5’末端について、他の修飾も開発されている(例えば、国際公開第2011/133871号参照。ホスフェート類似体に関するその内容は参照により本明細書に援用される)。特定の実施形態では、ヒドロキシル基はオリゴヌクレオチドの5’末端に結合する。
【0101】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは糖の4’‐炭素位置にホスフェート類似体(「4’‐ホスフェート類似体」と称する)を有する。例えば、2016年9月2日出願の「4’‐Phosphate Analogs and Oligonucleotides Comprising the Same」と題された米国仮出願第62/383,207号、及び2016年9月12日出願の「4’‐Phosphate Analogs and Oligonucleotides Comprising the Same」と題された米国仮出願第62/393,401を参照されたい。ホスフェート類似体に関するその内容はそれぞれ参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは5’末端ヌクレオチドに4’‐ホスフェート類似体を含む。いくつかの実施形態では、ホスフェート類似体はオキシメチルホスホネートであり、ここではオキシメチル基の酸素原子が糖部分(例えば、その4’炭素で)又はその類似体に結合している。他の実施形態では、4’‐ホスフェート類似体は、チオメチルホスホネート又はアミノメチルホスホネートであり、ここではチオメチル基の硫黄原子又はアミノメチル基の窒素原子は糖部分又はその類似体の4’‐炭素に結合している。特定の実施形態では、4’‐ホスフェート類似体はオキシメチルホスホネートである。いくつかの実施形態では、オキシメチルホスホネートは、式‐O‐CH2‐PO(OH)2又は‐O‐CH2‐PO(OR)2で表され、式中、Rは独立して、H、CH3、アルキル基、CH2CH2CN、CH2OCOC(CH3)3、CH2OCH2CH2Si(CH3)3、又は保護基から選択される。特定の実施形態では、アルキル基はCH2CH3である。より典型的には、Rは独立して、H、CH3、又はCH2CH3から選択される。
【0102】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドに結合した
ホスフェート類似体はメトキシホスホネート(MOP)である。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドに結合した
ホスフェート類似体は5’モノ‐メチル保護MOPである。いくつかの実施形態では、
ホスフェート類似体を含む以下のウリジンヌクレオチド:
【化6】
を、例えば、ガイド(アンチセンス)鎖の最初の位置で使用してもよく、この修飾ヌクレオチドは[Meホスホネート‐4O‐mU]又は5’‐メトキシ,ホスホネート‐4’オキシ‐2’‐O‐メチルウリジンと称する。
c.修飾ヌクレオシド間結合
【0103】
いくつかの実施形態では、ホスフェート修飾又は置換により、少なくとも1つ(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも5つ)の修飾ヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドが生じ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのいずれか1種は、1~10個(例えば、1~10個、2~8個、4~6個、3~10個、5~10個、1~5個、1~3個、又は1~2個)の修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのいずれか1種は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の修飾ヌクレオチド間結合を含む。
【0104】
修飾ヌクレオチド間結合はホスホロチオエート結合、ホスホロチオエート結合、ホスホトリエステル結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、ホスホラミダイト結合、ホスホネート結合、又はボラノホスフェート結合であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示したいずれか1種のオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
d.塩基修飾
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは1つ以上の修飾核酸塩基を有する。いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基(本明細書では塩基類似体とも称する)はヌクレオチド糖部分の1’位に結合する。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は窒素塩基である。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国公開特許出願第20080274462号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドはユニバーサル塩基を含む。しかし、特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは核酸塩基を含まない(脱塩基性)。
【0106】
いくつかの実施形態では、ユニバーサル塩基は複素環部分であり、この部分は修飾ヌクレオチド内のヌクレオチド糖部分の1’位にあるか、あるいは二重鎖に存在する場合、二重鎖の構造を実質的に変えることなく複数種の塩基に対向させることが可能なヌクレオチド糖部分置換内の同等位置にある。いくつかの実施形態では、標的核酸に完全に相補的な参照一本鎖核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と比較して、ユニバーサル塩基を含む一本鎖核酸は、相補的核酸で形成された二重鎖のものよりTmが低い標的核酸を有する二重鎖を形成する。しかし、いくつかの実施形態では、ユニバーサル塩基が単一ミスマッチを生成する塩基で置き換えられた参照一本鎖核酸と比較して、ユニバーサル塩基を含む一本鎖核酸は、ミスマッチ塩基を含む核酸で形成した二重鎖のものよりTmが高い標的核酸を有する二重鎖を形成する。
【0107】
ユニバーサル結合ヌクレオチドの非限定的な例には、イノシン、1‐β‐D‐リボフラノシル‐5‐ニトロインドール、及び/又は1‐β‐D‐リボフラノシル‐3‐ニトロピロールが挙げられる(米国特許出願公開第20070254362号、Quayら;Van Aerschotら、An acyclic 5‐nitroindazole nucleoside amalogue as ambiguous nucleoside.Nucleic Acids Res.1995年11月11;23(21):4363~70;Loakesら、3‐Nitropyrrole and 5‐nitroindole as universal bases in primers for DNA sequencing and PCR.Nucleic Acids Res.1995年7月11日;23(13):2361~6;Loakes及びBrown,5‐Nitroindole as an universal base analogue.Nucleic Acids Res.1994年10月11日;22(20):4039~43.前記のそれぞれは、塩基修飾に関する開示について参照により本明細書に援用される)。
e.可逆的修飾
【0108】
標的細胞に到達する前にインビボ環境からオリゴヌクレオチドを保護するための特定の修飾を行うことが可能である一方で、当該修飾は、オリゴヌクレオチドが標的細胞のサイトゾルに到達すると、オリゴヌクレオチドの効力又は活性を低下させる可能性がある。分子が細胞外の望ましい特性を保持するように可逆的修飾を行うことは可能であり、その後、細胞の細胞質環境に入ると修飾は除去される。可逆的修飾は、例えば、細胞内酵素の作用により、又は細胞内の化学的条件により(例えば、細胞内グルタチオンによる還元により)除去することが可能である。
【0109】
いくつかの実施形態では、可逆的に修飾されたヌクレオチドは、グルタチオン感受性部分を含む。典型的には、核酸分子は環状ジスルフィド部分で化学的に修飾されており、ヌクレオチド間二ホスフェート結合により生じた負電荷を遮蔽し、細胞の取り込み及びヌクレアーゼ耐性を改善する。当初Traversa Therapeutics社(「Traversa」)に認められた米国公開出願第2011/0294869号明細書、Solstice Biologics社(「Solstice」)のPCT公開第WO2015/188197号明細書、Meadeら、Nature Biotechnology、2014年、32:1256~1263(「Meade」)、Merck Sharp&Dohme社のPCT公開第WO2014/088920号明細書を参照されたい。これらはそれぞれ、このような修正の開示について参照により組み込まれる。ヌクレオチド間二ホスフェート結合のこの可逆的修飾は、サイトゾル(例えば、グルタチオン)の還元環境により細胞内で切断されるように設計している。初期の例には、細胞内で切断可能であると報告されているホスホトリエステル修飾の中和が挙げられる(Dellingerら、J.Am.Chem.Soc.2003年、125:940~950)。
【0110】
いくつかの実施形態では、このような可逆的修飾により、オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼ及び他の過酷な環境条件(例えば、pH)に曝されるインビボ投与(例えば、血液及び/又は細胞のリソソーム/エンドソーム区分を通過する)中の保護が可能になる。グルタチオンのレベルが細胞外空間より高い細胞サイトゾルに放出されると、修飾は逆転し、その結果、オリゴヌクレオチドが切断される。可逆的なグルタチオン感受性部分を使用すると、不可逆的な化学修飾を使用する利用可能なオプションと比較して、対象のオリゴヌクレオチドに立体的に大型の化学基を導入することが可能となる。これは、これらの大型の化学基がサイトゾルで除去されるため、細胞サイトゾル内のオリゴヌクレオチドの生物学的活性に干渉しないからである。結果として、これらの大型の化学基を操作して、ヌクレアーゼ耐性、親油性、電荷、熱安定性、特異性、免疫原性低下などの様々な利点をヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに与えることが可能になる。いくつかの実施形態では、グルタチオン感受性部分の構造を操作し、その放出の動態を改変することが可能である。
【0111】
いくつかの実施形態では、グルタチオン感受性部分はヌクレオチドの糖に結合する。いくつかの実施形態では、グルタチオン感受性部分は修飾ヌクレオチドの糖の2’‐炭素に結合する。いくつかの実施形態では、特に修飾ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドである場合、グルタチオン感受性部分は糖の5’‐炭素に位置する。いくつかの実施形態では、特に修飾ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドである場合、グルタチオン感受性部分は糖の3’‐炭素に位置する。いくつかの実施形態では、グルタチオン感受性部分はスルホニル基を含む。例えば、2016年8月23日出願のCompositions Comprising Reversibly Modified Oligonucleotides and Uses Thereofと題された米国仮出願第62/378,635号明細書を参照されたい。その内容は、関連する開示について参照により本明細書に援用される。
v.標的化リガンド
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドを1つ以上の細胞又は1つ以上の器官に標的化することが望ましい場合もある。このような戦略は、他の器官における望ましくない影響を回避することに役立ち、又は、オリゴヌクレオチドでは利益がもたらされない細胞、組織もしくは器官に向かってオリゴヌクレオチドが過度に損失することを回避できる。従って、いくつかの実施形態では、特定の組織、細胞又は器官の標的化を容易にするために、例えば、オリゴヌクレオチドの肝臓への送達を容易にするために、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドを修飾してもよい。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドを肝臓の肝細胞へ送達することを促進するために、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドを修飾してもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の標的化リガンドにコンジュゲートされたヌクレオチドを含む。
【0113】
標的化リガンドは炭水化物、アミノ糖、コレステロール、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくはタンパク質の一部(例えば、抗体もしくは抗体フラグメント)又は脂質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、標的化リガンドはアプタマーである。例えば標的化リガンドは、腫瘍脈管系もしくは神経膠腫細胞を標的にするために使用するRGDペプチド、腫瘍脈管系もしくはストーマを標的にするためのCREKAペプチド、CNS脈管系に発現したトランスフェリン受容体を標的にするためのトランスフェリン、ラクトフェリンもしくはアプタマー、又は神経膠腫細胞上のEGFRを標的にするための抗EGFR抗体であってもよい。特定の実施形態では、標的化リガンドは、1つ以上のGalNAc部分である。
【0114】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のヌクレオチドは、それぞれ別個の標的化リガンドにコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの2~4個のヌクレオチドはそれぞれ別個の標的化リガンドにコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、標的化リガンドはセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの末端で2~4ヌクレオチドにコンジュゲートし(例えば、リガンドは、センス鎖又はアンチセンス鎖の5’又は3’末端の2~4ヌクレオチドのオーバーハング又は伸長部にコンジュゲートする)、それにより標的化リガンドは歯ブラシの毛に類似し、オリゴヌクレオチドは歯ブラシに類似する。例えば、オリゴヌクレオチドはセンス鎖の5’又は3’末端のいずれかでステムループを含み、ステムのループの1、2、3又は4つのヌクレオチドは、標的化リガンドに個々にコンジュゲートしてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、HBV抗原の発現を低減するオリゴヌクレオチドを被験体の肝臓の肝細胞に標的化することが望ましい。この目的のために、任意の適切な肝細胞標的化部分を使用してもよい。
【0116】
GalNAcは、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)の高親和性リガンドであり、これは主に肝細胞の洞様毛細血管表面に発現し、末端ガラクトース又はN‐アセチルガラクトサミン残基(アシアロ糖タンパク質)を含む循環糖タンパク質の結合、内在化、及びその後のクリアランスにおいて主要な役割を担う。本開示のオリゴヌクレオチドへのGalNAc部分の(間接的又は直接的いずれかの)コンジュゲーションは、これらの肝細胞上で発現するASGPRにこれらのオリゴヌクレオチドを標的化するために利用してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、一価のGalNAcに直接的又は間接的にコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、直接的又は間接的に複数の一価GalNAcにコンジュゲートする(すなわち、2、3、又は4つの一価GalNAc部分にコンジュゲートし、典型的には3又は4つの一価GalNAc部分にコンジュゲートする)。いくつかの実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは1つ以上の二価GalNAc、三価GalNAc、又は四価GalNAc部分にコンジュゲートする。
【0118】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5又は6つ)ヌクレオチドはそれぞれ、GalNAc部分にコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、ステムループのループ(L)の2~4ヌクレオチドはそれぞれ、別個のGalNAcにコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、標的化リガンドは、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの末端で2~4ヌクレオチドにコンジュゲートし(例えば、リガンドは、センス鎖又はアンチセンス鎖の5’又は3’末端の2~4ヌクレオチドのオーバーハング又は伸長部にコンジュゲートする)、それによりGalNAc部分は歯ブラシの毛に類似し、オリゴヌクレオチドは歯ブラシに類似する。例えば、オリゴヌクレオチドはセンス鎖の5’又は3’末端のいずれかでステムループを含み、ステムのループの1、2、3又は4つのヌクレオチドは、GalNAc部分に個々にコンジュゲートしてもよい。いくつかの実施形態では、GalNAc部分はセンス鎖のヌクレオチドにコンジュゲートする。例えば、4つのGalNAc部分をセンス鎖のテトラループ内のヌクレオチドにコンジュゲートすることが可能であり、各GalNAc部分は1つのヌクレオチドにコンジュゲートする。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書のオリゴヌクレオチドは、以下に示す、グアニジンヌクレオチドに結合した一価のGalNacを含む。これは[ademG‐GalNAc]又は2’‐アミノジエトキシメタノール‐グアニジン‐GalNAcと称する。
【化7】
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書のオリゴヌクレオチドは、以下に示す、アデニンヌクレオチドに結合した一価のGalNacを含む。これは[ademA‐GalNAc]又は2’‐アミノジエトキシメタノール‐アデニン‐GalNAcと称する。
【化8】
【0121】
このようなコンジュゲーションの例として、5’から3’までのヌクレオチド配列GAAA(L=リンカー、X=ヘテロ原子)を含むループ及びステム結合点について以下に示す。このようなループは、例えば、
図1Aに示す分子の27~30位に存在し得る。化学式において、
はオリゴヌクレオチド鎖への結合点である。
【化9】
【0122】
適切な方法又は化学(例えば、クリックケミストリー)を利用して、標的化リガンドをヌクレオチドに結合することが可能である。いくつかの実施形態では、ターゲティングリガンドは、クリックリンカーを使用してヌクレオチドにコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、アセタール系リンカーを使用して、本明細書に記載したオリゴヌクレオチドのいずれか1つのヌクレオチドに標的化リガンドをコンジュゲートする。アセタール系リンカーは、例えば2016年6月23日公開の国際特許出願公開第WO2016100401 A1に開示しており、このようなリンカーに関するその内容は参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、リンカーは不安定なリンカーである。しかし、他の実施形態では、リンカーはかなり安定している。
【0123】
5’から3’までのヌクレオチドGAAAを含むループについて例を以下に示す。ここではアセタールリンカーを用いて、GalNac部分をループのヌクレオチドに結合する。このようなループは、例えば
図10に示す分子の27~30位にあってもよい。化学式において、
はオリゴヌクレオチド鎖への結合点である。
【化10】
III.製剤
【0124】
オリゴヌクレオチドの使用を容易にするために、様々な製剤が開発されている。例えば、分解を最小化し、送達及び/もしくは取り込みを容易にし、又は製剤中のオリゴヌクレオチドに別の有益な特性を提供する製剤を使用して、オリゴヌクレオチドを被験体又は細胞環境に送達することが可能となる。いくつかの実施形態では、HBV抗原(例えば、HBsAg)の発現を低減するためのオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチド)を含む組成物が本明細書で提供される。このような組成物は、被験体の標的細胞の直接的環境又は全身のいずれかに投与されると、オリゴヌクレオチドの十分な量が細胞に入り、HBV抗原発現を低減するように適切に処方できる。本明細書で開示しているように、様々な好適なオリゴヌクレオチド製剤のいずれかを使用して、HBV抗原を低減するためのオリゴヌクレオチドを送達することが可能となる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスフェート緩衝生理食塩水、リポソーム、ミセル構造、及びカプシドなどの緩衝液中に処方する。
【0125】
カチオン性脂質を有するオリゴヌクレオチドの製剤を使用し、細胞へのオリゴヌクレオチドのトランスフェクションを促進できる。例えば、リポフェクチン、カチオン性グリセロール誘導体、及びポリカチオン性分子(例えば、ポリリジン)などのカチオン性脂質を使用できる。好適な脂質には、Oligofectamine、Lipofectamine(Life Technologies社)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals社、Boulder、コロラド州)、又はFuGene6(Roche社)が挙げられ、これらは全てメーカー取扱説明書に従って使用できる。
【0126】
従って、いくつかの実施形態では、製剤は脂質ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、賦形剤はリポソーム、脂質、脂質複合体、ミクロスフェア、マイクロ粒子、ナノスフェア、又はナノ粒子を含むか、又はその他の方法で、これらを必要とする被験体の細胞、組織、器官、又は身体への投与のために処方してもよい(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical Press、2013年参照)。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した製剤は賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、賦形剤により、組成物では有効成分の安定性、吸収、溶解性が改善され、及び/又は治療が促進される。いくつかの実施形態では、賦形剤は、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス塩基、又は水酸化ナトリウム)又はビヒクル(例えば、緩衝液、ワセリン、ジメチルスルホキシド、又は鉱油)である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、その保存期間を延長するために凍結乾燥し、その後、使用(例えば、被験体への投与)前に溶液にする。従って、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれか1種を含む組成物中の賦形剤は、凍結防止剤(例えば、マンニトール、ラクトース、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドン)、又は崩壊温度調節剤(例えば、デキストラン、フィコール、又はゼラチン)であってもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように処方する。投与経路の例には、静脈内、皮内、皮下などの非経口、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。
【0129】
注射用途に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び滅菌注射用液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL.TM.(BASF社、Parsippany、ニュージャージー州)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒とすることも可能である。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトールやソルビトールなどの多価アルコール、及び塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。滅菌注射用液は、選択した溶媒中に、必要量のオリゴヌクレオチドと、必要に応じて上記に列挙した成分の1種以上とを組み合わせて含有させた後、ろ過滅菌することで調製できる。
【0130】
いくつかの実施形態では、有効成分(単数又は複数)の割合は全組成物の重量又は体積の約1%~約80%の範囲、又はそれ以上であってもよいが、組成物は少なくとも約0.1%の治療薬(例えば、HBV抗原発現を低減するためのオリゴヌクレオチド)等を含んでもよい。溶解性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品保存寿命、並びに他の薬理学的考慮事項などの要素は、このような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、従って、様々な投与量及び治療計画が望ましいと言える。
【0131】
多くの実施形態は本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのいずれかの肝臓標的送達を意図しているが、他の組織の標的化も企図している。
IV.使用方法
【0132】
いくつかの実施形態では、HBsAgの発現を低減する目的で、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのいずれか1種を有効量で細胞に送達するための方法が提供される。本明細書で提供される方法は、任意の適切な細胞型で有用である。いくつかの実施形態では、細胞はHBV抗原を発現する任意の細胞(例えば、肝細胞、マクロファージ、単球由来細胞、前立腺癌細胞、脳の細胞、内分泌組織、骨髄、リンパ節、肺、胆嚢、肝臓、十二指腸、小腸、膵臓、腎臓、消化管、膀胱、脂肪及び軟部組織並びに皮膚)である。いくつかの実施形態では、細胞は、被験体から得られ、限られた数の継代を経た可能性がある初代細胞であり、それにより、細胞は、その自然の表現型特性をほぼ維持する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドが送達される細胞は、エクスビボ細胞又はインビトロ細胞である(すなわち、培養中の細胞又は細胞が存在する生物に送達できる)。特定の実施形態では、肝細胞のHBsAgの発現のみ低減する目的で、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのいずれか1種を有効量で細胞に送達するための方法が提供される。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドは適切な核酸送達方法を用いて導入することが可能である。当該方法には、オリゴヌクレオチドを含む溶液の注入、オリゴヌクレオチドで覆われた粒子によるボンバードメント、オリゴヌクレオチドを含む溶液への細胞もしくは生物の曝露、又はオリゴヌクレオチドの存在下での細胞膜の電気穿孔が含まれる。オリゴヌクレオチドを細胞に送達するための他の適切な方法も使用してよい。この方法には、脂質媒介担体輸送、化学物質媒介輸送、及びリン酸カルシウムなどのカチオン性リポソームトランスフェクション等が挙げられる。
【0134】
阻害の結果は、細胞もしくは被験体の1つ以上の特性を評価するための適切なアッセイにより、又はHBV抗原発現を示す分子(例えば、RNA、タンパク質)を評価する生化学的技術により確認できる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドがHBV抗原の発現レベルを低減する程度は、HBV抗原の発現レベル(例えば、mRNA又はタンパク質レベル)を適切な対照(例えば、オリゴヌクレオチドが送達されていないか、又は陰性対照が送達されている細胞又は細胞集団におけるHBV抗原発現のレベル)と比較することにより評価する。いくつかの実施形態では、HBV抗原発現の適切な対照レベルは、常に対照レベルを測定する必要がないように所定のレベル又は値にしてもよい。所定のレベル又は値は様々な形態を取ることが可能である。いくつかの実施形態では、所定のレベル又は値は中央値又は平均などの単一のカットオフ値とすることが可能である。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを投与すると、細胞におけるHBV抗原(例えば、HBsAg)発現のレベルが低下する。いくつかの実施形態では、HBV抗原発現レベルの低下は、HBV抗原の適切な対照レベルと比較して1%以下、5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、70%以下、80%以下、又は90%以下まで低下する可能性がある。適切な対照レベルは、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドと接触していない細胞又は細胞集団におけるHBV抗原発現のレベルであってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従ったオリゴヌクレオチドの細胞送達の効果は限定的な期間を経て評価する。例えば、HBV抗原のレベルは細胞において、オリゴヌクレオチドの細胞への導入から少なくとも8時間、12時間、18時間、24時間後に;又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、14、21、28、35、42、49、56、63、70、77、84、91、98、105、112、119、126、133、140、もしくは147日後に分析してもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、HBV抗原(例えば、HBsAg)発現レベルの低下は、投与後長期間にわたって持続する。いくつかの実施形態では、HBsAg発現の検出可能な低下は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの投与から7~70日の期間内で持続する。例えば、いくつかの実施形態では、検出可能な低下はオリゴヌクレオチドの投与から10~70日、10~60日、10~50日、10~40日、10~30日、又は10~20日の期間内で持続する。いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から20~70日、20~60日、20~50日、20~40日、又は20~30日の期間内で持続する。いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から30~70日、30~60日、30~50日、又は30~40日の期間内で持続する。いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から40~70日、40~60日、40~50日、50~70日、50~60日、又は60~70日の期間内で持続する。
【0137】
いくつかの実施形態では、HBsAg発現の検出可能な低下は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの投与から2~21週間の期間内で持続する。例えば、いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から2~20週、4~20週、6~20週、8~20週、10~20週、12~20週、14~20週、16~20週、又は18~20週の期間内で持続する。いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から2~16週、4~16週、6~16週、8~16週、10~16週、12~16週、又は14~16週の期間内で持続する。いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から2~12週、4~12週、6~12週、8~12週、又は10~12週の期間内で持続する。いくつかの実施形態では、検出可能な低下は、オリゴヌクレオチドの投与から2~10週、4~10週、6~10週、又は8~10週の期間内で持続する。
【0138】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、細胞中でオリゴヌクレオチド(例えば、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖)を発現するように遺伝子操作した導入遺伝子の形態で送達する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、本明細書で開示した任意のオリゴヌクレオチドを発現するように遺伝子操作した導入遺伝子を使用して送達する。導入遺伝子は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス又は単純ヘルペスウイルス)、又は非ウイルスベクター(例えば、プラスミド又は合成mRNA)を使用して送達してもよい。いくつかの実施形態では、導入遺伝子を被験体に直接注射できる。
ii.治療方法
【0139】
本開示の態様は、被験体におけるHBV感染の治療のためにHBsAg発現を低減する(例えば、HBsAg発現を低減する)方法に関する。いくつかの実施形態では、当該方法は、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドのいずれか1種を有効量で、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでもよい。本開示は、HBV感染及び/又はHBV感染に伴う疾患もしくは障害の危険性がある(又はこれらにかかりやすい)被験体を治療する予防的及び治療的方法の両方を提供する。
【0140】
特定の態様では、本開示は、被験体に治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド又はベクター又はそれらをコードする導入遺伝子)を投与することにより本明細書に記載の疾患又は障害を被験体において予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、治療対象の被験体は、例えば肝臓におけるHBsAgタンパク質の量の低下から治療的に利益を得ると思われる被験体である。疾患又は障害の危険性がある被験体は、例えば、当技術分野で公知の診断アッセイ又は予後アッセイの1種又は併用(例えば、肝硬変及び/又は肝炎の同定)により特定することが可能である。疾患又は障害が予防されるか、又はその進行が遅れるように、予防薬の投与は、疾患又は障害に特徴的な症状の検出に先立って、又はその兆候が表れる以前に行うことが可能である。
【0141】
本明細書に記載の方法は典型的に、有効量、すなわち、望ましい治療結果をもたらし得る量のオリゴヌクレオチドを被験体に投与する工程を含む。治療的に許容可能な量は、疾患又は障害を治療できる量と言える。任意の1被験体の適切な投与量は、被験体のサイズ、体表面積、年齢、投与する特定の組成物、組成物中の有効成分(単数又は複数)、投与の時間及び経路、健康全般、併用する他の薬物などの特定の要素に依存する。例えば、投与量は0.1~12mg/kgの範囲とすることが可能である。投与量はまた、0.5~10mg/kgの範囲とすることも可能である。あるいは、投与量は1.0~6.0mg/kgの範囲とすることも可能である。投与量はまた、3.0~5.0mg/kgの範囲とすることも可能である。
【0142】
いくつかの実施形態では、経腸的に(例えば、経口、胃栄養チューブ、経十二指腸栄養チューブ、胃瘻又は直腸経由)、非経口的に(例えば、皮下注射、静脈内注射又は注入、動脈内注射又は注入、骨内注入、筋肉内注射、脳内注射、脳室内注射、くも膜下腔内)、局所的に(例えば、皮膚上、吸入、点眼薬、又は経粘膜)、又は標的臓器(例えば、被験体の肝臓)への直接注射により、本明細書で開示した組成物のいずれか1種を被験体に投与する。典型的には、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドは静脈内又は皮下に投与する。
【0143】
非限定的な一連の例のとして、本開示のオリゴヌクレオチドは典型的には、四半期毎(3か月毎に1回)、隔月(2か月毎に1回)、毎月、又は毎週投与する。例えば、オリゴヌクレオチドは、1週間毎、2週間毎、又は3週間毎に投与してもよい。オリゴヌクレオチドは毎日投与してもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療対象の被験体は、ヒト又は非ヒト霊長類又は他の哺乳動物被験体である。被験体の他の例としては、イヌ及びネコなどの愛玩動物;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びニワトリなどの家畜;並びにマウス、ラット、モルモット、及びハムスターなどの動物が挙げられる。
【実施例】
【0145】
実施例1.HBsAg発現の強力なオリゴヌクレオチド阻害剤の開発
【0146】
HBV感染を治療するためのRNAiに基づく治療の標的としてHBV表面抗原を同定した。
図1に示すHBVゲノム構成に表すように、HBsAgは、単一のORFから転写した3つのRNA分子にコードされる。オリゴヌクレオチドは、HBsAgアセンブリに寄与する1つ以上のRNA転写産物をサイレンシングする目的で設計した(
図1の「X」で示したRNAi標的部位の例)。HBsAgを標的とするオリゴヌクレオチドHBV‐254を設計し、インビトロ及びインビボで評価した。HBV‐254は、4つのHBV RNA種のmRNA転写産物を直接標的にする能力に基づいて選択及び設計した。実験で使用したHBV‐254二重鎖オリゴヌクレオチドには、(5’→3’方向に示す)GUGGUGGACUUCUCUCAAUAGCAGCCGAAAGGCUGC(配列番号21)に規定される配列のセンス鎖;及び(5’→3’方向に示す)UAUUGAGAGAAGUCCACCCACGG(配列番号22)に規定する配列のアンチセンス鎖が含まれた。
【0147】
HDIマウスにおいてオリゴヌクレオチドHBV‐254の単回投与評価を行い、HBsAgウイルス転写産物を皮下標的化する能力を実証した(
図2)。図に示すように、HBV‐254は投与量の増加に伴ってマウスのHBsAgレベルを系統的に低減した。HBV‐254を3mg/kgで皮下投与するQW×3の投与計画後のマウスにおいて前臨床的効力を更に評価した(
図3)。投与時間は図中の矢印で示す。147日間に渡ってオリゴヌクレオチド処理したマウス及び未処置の対照マウスの両方でHBsAgレベルを監視した。試験期間全体に渡って処置マウスではHBsAgレベル低下が持続し、最初の投与から約2か月で発現レベル(対照と比較)が低下ベースラインで落ち着いたことを確認した。
【0148】
未修飾テトラループ形態のオリゴヌクレオチドを使用したpsiCHECKレポーターアッセイを用いるインビトロスクリーニングにより、他の強力なHBsAg標的化オリゴヌクレオチドを同定した。3つの異なるプレートからの結果を
図4に示す。蛍光ベースのレポーターアッセイを用い、HeLa細胞中、3種の濃度(1、10、及び100pM)でHBV‐254を含む各オリゴヌクレオチドを評価した。各プレートについて報告された結果は、陽性対照(8、40、及び200pM)、陰性対照(1nM)、及びmockトランスフェクションと比較して更に示す。ボックスで強調表示したオリゴヌクレオチドはインビボ試験用にスケールアップした。ここではHBV‐219及びHBV‐258が、HBV‐254及びスクリーニングから同定したオリゴヌクレオチドの中で最も強力なオリゴヌクレオチドであることがわかった。HBV‐219はHBV‐254より対数倍的な効力向上を示し、追加の評価のために選択した。
実施例2.包括的な治療有用性を高めるための配列保存分析及び遺伝子工学的ミスマッチ
【0149】
実施例1で評価した数種の最も強力なオリゴヌクレオチドをHBV遺伝子型A‐Iのゲノム配列と比較した。初期保存分析の結果を表1に収載する。表に示すように、HBV‐219の保存性はこれらのゲノム全体で比較的低くなっている。ただし、ミスマッチ(MM)がガイド鎖の15位に導入されると、保存率が大幅に増加する(66%から96%に)。参照により本明細書に援用されるGenBank公共データベースから得る遺伝子型別B型肝炎ウイルス(HBV)配列データを、生物情報学キュレーション及び整列化に使用した。
【表1】
【0150】
次の保存性分析を行った。当該分析は表1の数種のオリゴヌクレオチドに焦点を当て、より広い探索パラメーターを含めた。例えば、初期の分析には完全長ゲノム配列のみを含めたが、焦点を絞った分析では、完全長及び部分的(標的部位との同一性が>80%)配列を含めた。また、試験したゲノムの数は、初期の分析における5,628から、焦点を絞った分析では17,000超に増やした。焦点を絞った分析の結果は、初期分析で観察された傾向と概ね一致した(表2)。表に示すように、また更に
図5に示すように、HBV‐219は、ガイド鎖の15位でのミスマッチが忍容されない限り、HBV遺伝子型B、E、F、H、及びIに対して不活性であると予測された。
【表2】
【0151】
psiCHECK‐2デュアルルシフェラーゼレポーターシステムを利用して、HBV‐217、HBV‐219、HBV‐254、HBV‐255、及びHBV‐258のそれぞれの選択した位置でのミスマッチ効果を評価した。psiCHECKベクターは、レポーター遺伝子に融合した標的遺伝子の発現変化を監視することを可能にする。ここでは活性RNAiは融合構成物を分解し、それに対応するレポーターシグナルを減少させる。
図6は一般的にこれらのアッセイで利用されるベクターを示す。親部分のレポーター配列には、S ORF中の対象標的部位の周囲にある遺伝子型A(GenBank:AM282986.1)から得た120塩基対断片が含まれていた。親オリゴヌクレオチド二重鎖配列は、
図6に示される対応部位でレポータープラスミドと100%の相同性を有する。一方、ミスマッチオリゴヌクレオチド二重鎖配列は、レポータープラスミドに対して単一のミスマッチを有する。試験したオリゴヌクレオチドの親及びミスマッチ配列は
図7に示すように、親部分レポーター配列に対応するように整列させている。
【0152】
例示的なミスマッチアッセイでは、試験したオリゴヌクレオチドには同一の修飾パターンが含まれていた。
図7の各オリゴヌクレオチドについて示したナンバリングスキームによれば、修飾は以下の通りである:1位の5’‐メトキシ,ホスホネート‐4’‐オキシ‐2’‐O‐メチルウリジン;2、3、5、7、8、10、12、14、16、及び19位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド;1、4、6、9、11、13、15、17、18、及び20~22位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド;並びに1位と2位、2位と3位、3位と4位、20位と21位、21位と22位のヌクレオチド間のホスホロチオエートヌクレオチド間結合。ミスマッチ位置は、各親及びミスマッチセットで異なり、
図7のボックスに示す。
【0153】
各オリゴヌクレオチドを用いたpsiCHECK2レポーターアッセイは、HeLa細胞にトランスフェクトして、1nMから開始し6点5倍段階希釈を利用して、3日間行った。1日目に、10,000個のHeLa細胞/ウェル(96ウェル)を、黒い壁及び透明底を有するプレートに播種した(80~90%コンフルエント)。2日目に、ベクターDNA及びRNAi分子を適量の無血清Opti‐MEM(登録商標)I培地に希釈し、穏やかに混合した。Lipofectamine(登録商標)2000を穏やかに混合した後、0.2μLを25μLの無血清Opti‐MEM(登録商標)I培地に希釈し、各反応を行った。希釈液を穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。5分間のインキュベーション後、等量の希釈DNA及びRNAi分子を、希釈したLipofectamine(登録商標)2000と混合した。混合物を穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートして複合体を形成した。これに続いて、DNA‐RNAi分子‐Lipofectamine(登録商標)2000複合体を、細胞及び培地を含む各ウェルに加え、プレートを前後に揺らして穏やかに混合した。次に、標的遺伝子の回収及びアッセイを行う準備ができるまで、細胞をCO
2インキュベーター内、37℃でインキュベートした。3日目に、100μLのDual‐Glo試薬を各ウェルに加え、混合し、10分間インキュベートした後、発光を読み出した。更に、100μLのDual‐Glo Stop&Gloを各ウェルに加え、混合し、10分間インキュベートしてから発光を読み出した。活性に対するミスマッチの効果を評価するために、親及びミスマッチオリゴヌクレオチドごとに用量反応曲線を作成した。各オリゴヌクレオチドについて測定したEC
50値を、仕様を添付して表3に示す。
【表3】
【0154】
相対的EC
50値で示されるように、HBV‐219二重鎖のインビトロ用量‐反応曲線から、ガイド鎖の15位における単一ミスマッチによる活性の損失は無いことが分かった。HBV‐219親(ここではHBV(s)‐219P1とする)とミスマッチオリゴヌクレオチド(ここではHBV(s)‐219P2とする)とを比較する次のインビトロ分析から、ミスマッチの導入により活性が失われないことが確認された(
図8)。
図9の単回用量滴定プロットに示すように、HBV‐219ミスマッチオリゴヌクレオチド二重鎖(HBV(s)‐219P2)は、投与後70日間に渡ってインビボで忍容された。
【0155】
図10は、ミスマッチが組み込まれたHBV‐219(ここではHBV(s)‐219とする)の修飾二重鎖構造の例を示す。
図7の各オリゴヌクレオチドについて示されたナンバリングスキームによれば、センス鎖はヌクレオチド1から36に及び、アンチセンス鎖はオリゴヌクレオチド1から22に及び、後者の鎖は右から左の向きに番号を付けて示されている。二重鎖形態は、センス鎖の36位のヌクレオチドとアンチセンス鎖の1位のヌクレオチドとの間にニックを入れて示されている。センス鎖の修飾は以下の通りであった:3、8~10、12、13、及び17位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド;1、2、4~7、11、14~16、18~26、及び31~36位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド;1位と2位のヌクレオチド間のホスホロチオエートヌクレオチド間結合;27位の2’‐OHヌクレオチド;27位の2’‐アミノジエトキシメタノール‐グアニジン‐GalNAc;並びに28、29、及び30位それぞれの2’‐アミノジエトキシメタノール‐アデニン‐GalNAc。アンチセンス鎖の修飾は以下の通りであった:1位の5’‐メトキシ,ホスホネート‐4’‐オキシ‐2’‐O‐メチルウリジンホスホロチオエート;2、3、5、7、8、10、12、14、16、及び19位の2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド;1、4、6、9、11、13、15、17、18、及び20~22位の2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド;並びに1位と2位、2位と3位、3位と4位、20位と21位、及び21位と22位のヌクレオチド間のホスホロチオエートヌクレオチド間結合。アンチセンス鎖には、15位に組み込まれたミスマッチが含まれていた。また、図示するように、二重鎖のアンチセンス鎖には、21位から22位にわたる「GG」オーバーハングが含まれていた。
【0156】
HBV(s)‐219及び上述の2つの前駆体(HBV(s)‐219P1及びHBV(s)‐219P2)についての詳細を表4に示す。
【表4】
実施例3:HBV(s)‐219前駆体の抗ウイルス活性
【0157】
HBVコア抗原(HBcAg)の細胞内局在化に対するHBV(s)‐219前駆体の治療効果を評価した。NODscidマウスを、HBVゲノムの頭‐尾二量体の流体力学的注射(HDI)に供した。オリゴヌクレオチドによる処置は、HDIから2週間後に開始した。処置後にマウスから単離した肝細胞の免疫組織化学的染色から、HBVコア抗原(HBcAg)発現が急激に低下したことが分かった。
【0158】
HBVウイルス転写産物の全体的な発現に対するHBsAgノックダウンの効果を調べるために、RNA配列決定を行った。HDIマウスに3mg/kgで週1回投与を3回行ってから4日後に幹細胞を単離した。全RNAを肝細胞から抽出し、HiSeq Platformを使用したIllumina配列決定に供した。
図11Bは、検出されたRNA転写産物配列をHBV RNAに対してマッピングしたRNA配列決定結果を示す。HBV(s)‐219とその前駆体の標的部位も図示しており、オリゴヌクレオチドがpgRNA(3.5kb)、S1(2.4kb)、及びS2(2.1kb)転写産物を標的にすることが示されている。結果から、ビヒクル対照と比較して、HBV(s)‐219P1での処置により全HBVウイルス転写産物のうち90%超がサイレンシングされたことが分かる。
【0159】
HBV(s)‐219P1オリゴヌクレオチドの持続効果は、HBVの2つの異なるマウスモデル:cccDNA依存性HDIモデル、及びcccDNA非依存性であるAAVモデルで試験した。HBVのHDIモデルにおいて、ビヒクル対照、及びHBxAg mRNAを標的とするRNAiオリゴヌクレオチドと比較して、HBsAg mRNAを標的とするHBV(s)‐219P1オリゴヌクレオチド3mg/kgを週1回投与で3回行う処置状況下で、HBsAg mRNA発現の経時的(12週間)分析を行った(
図12A)。HBV(s)‐219P1オリゴヌクレオチドはHBsAg mRNA発現の≧3.9log減少を示し、活性持続期間は7週間超と比較的長く:一方、比較として、HBV(x)を標的とするオリゴヌクレオチドは約3.0log減少を示し、持続期間は前者より短かった。
【0160】
AAV‐HBVモデルにおいて、ビヒクル対照、及びHBxAg mRNAを標的とするRNAiオリゴヌクレオチドと比較して、HBsAg mRNAを標的とするHBV(s)‐219P1オリゴヌクレオチド3mg/kgを週1回投与で3回行う処置状況下で、HBsAg mRNA発現の更なる経時的(12週間)分析を行った(
図12B)。このモデルでは、HBV(s)‐219P2オリゴヌクレオチドは、HBV(x)を標的とするオリゴヌクレオチドと同等のlog減少と持続期間を示した。
図12A及び
図12Bで使用するHBxAg mRNAを標的とするRNAiオリゴヌクレオチドは、UGCACUUCGCGUCACCUCUAGCAGCCGAAAGGCUGCのセンス鎖配列、及びUAGAGGUGACGCGAAGUGCAGGのアンチセンス鎖配列を有する。HBxAgを標的とするこのRNAiオリゴヌクレオチドは、本明細書ではGalXC‐HBVXと称する。
【0161】
免疫組織化学的染色を行い、ビヒクル対照、及び上述のHBxAg mRNAを標的とするRVAiオリゴヌクレオチドと比較して、上記で示したようにHBsAg mRNAを標的とするHBV(s)‐219前駆体オリゴヌクレオチドで処置した後のHBVのAAV‐HBVモデル及びのHDIモデルから得られた肝細胞におけるHbcAgの細胞内分布を試験した(
図13)。処置後の残留コアタンパク質(HBcAg)から、HDIモデルでの2種のRNAiオリゴヌクレオチド間で細胞内局在に顕著な違いが示されたが、AAVモデルでは違いは見られなかった。
実施例4:PXB‐HBVキメラヒト肝臓モデル遺伝子型CにおけるHBV(s)‐219P1の評価
【0162】
キメラヒト肝臓モデルとしてHBVに関する文献でも知られているPXB‐HBVモデルにおいてHBV(s)‐219P1の抗ウイルス活性を評価した。この技術は、ヒト肝細胞を重篤な免疫無防備状態のマウスに移植し、遺伝的メカニズムを利用して宿主マウス肝細胞を毒害することに基づいている(Tatenoら、2015年)。この過程により、マウスは>70%がヒト組織に由来する肝臓を含み、野生型マウスとは異なり、HBVに感染することが可能になる(Liら、2014年)。PXB‐HBVモデルはHBV(s)‐219薬理学の観点からいくつかの目的を果たしている:(1)オリゴヌクレオチドがインビボでヒトRNAi機構(RISC)に関与している可能性を確認する;(2)GalNAcを標的とするリガンド構造はインビボでヒトASGRを介して肝細胞に内在化する可能性を確認する;(3)HBV感染の真の(HBV発現の遺伝子操作モデルに対する)モデルにおいて有効性を確認する。移植されたヒト肝細胞が不規則なキメラ肝生理学をもたらすという制限があるにもかかわらず(Tatenoら、2015年)、このモデルでは有意な抗ウイルス効果が観察できる。
【0163】
HBV遺伝子型Cによるマウスの初期感染からおよそ8週間後、各マウスから血漿を採取し、ベースラインHBsAg測定値として使用する。次に、各9匹のマウスのコホート(PKについてはn=3、PDについてはn=6)に、0(PBS)又は3mg/kgのHBV(s)‐219P1を週3回、SC注射した。投与の初日を0日目とする。非末梢血採取を毎週行い、各マウスの血清HBsAg及び循環HBV DNAレベルを測定した(
図14A~
図14D)。マウスは、28日目に末梢組織エンドポイントのために安楽死させた。28日目の肝臓試料を、肝臓内HBV DNA及びcccDNAレベルについて分析した。HBV(s)‐219P1で処理したマウスについて分析した全エンドポイントで、有意な抗ウイルス活性が観察され、HBsAgの>80%低下、並びに循環HBV DNA、肝内HBV DNA、及びcccDNAの有意な減少が見られた(
図14A~
図14D)。これらのデータから、HBV(s)‐219での処置が全身投与後に感染ヒト肝細胞で抗ウイルス活性をもたらすことが実証されている。
実施例5:エンテカビルの抗ウイルス活性を増強するHBV(s)‐219P2
【0164】
治療の現在の標準であるヌクレオチド(ヌクレオシド)類似体(例えば、エンテカビル)は、循環HBVゲノムDNAの低減には有効であるが、循環HBsAgは低減しない。このことにより、このような治療中はウイルス血症が制御されるが、生涯にわたる治療が必要であり、機能的治療が達成されることはまれである。S抗原を標的とするRNAiオリゴヌクレオチドは、ウイルスポリメラーゼ及びHBsAgタンパク質の両方に影響を与える。この研究では、抗ウイルス活性について、HBV発現マウス(HDIモデル)において単剤療法としてのHBV(s)‐219P2、及びエンテカビルとの併用治療の複合効果を検討した。
【0165】
マウスに、500ng/kgのエンテカビル(ETV)を毎日14日間経口投与した。HBV(s)‐219P2の単回皮下投与を行った。循環ウイルス負荷(HBV DNA)をqPCR(
図15A)により測定し、血漿HBsAgレベルをELISA(
図15B)により測定し、肝臓HBV mRNA及びpgRNAレベルをqPCRにより測定した。HBV(s)‐219P2とETVの併用療法で明らかな相加効果が観察された。結果から、ETV療法のみでは循環HBsAg又は肝臓ウイルスRNAに対して効果がないことが分かる。更に、HBsAg又はHBV RNAにより測定されたHBV(s)‐219P2の抗ウイルス活性はETVの共投与に影響を受けることはない(
図15B及び
図15C)。
【0166】
図15A~15Cに示すように、14日間毎日500ng/kgのPO投与を行うエンテカビルの単剤療法の結果、PBS処置マウスと比較して、血漿中に検出されたHBV DNAで平均約1.6log減少が示された(n=6)。循環HBsAg、又は肝ウイルスRNAのいずれかには有意な減少は観察されなかった。0日目にHBV(s)‐219P2の単独1mg/kg又は3mg/kgのSC投与を行う単剤療法の結果、PBSと比較して、血漿中に検出されたHBV DNAでそれぞれ平均約0.8log減少又は約1.8log減少が示された(n=7)。0日目にHBV(s)‐219P2の単独6mg/kgのSC投与を行う単剤療法の結果、血漿中HBV DNAで平均約2.5log減少が示され、2匹のマウスのレベルが検出限界を下回っていた(n=7)。0日目にHBV(s)‐219P2の単独SC投与を行う単剤療法の結果、循環HBsAgと肝臓ウイルスRNAの両方に用量依存的な減少が示された。エンテカビル500ng/kgを14日間毎日PO投与し、0日目にHBV(s)‐219P2の単独1mg/kgのSC投与を行う併用療法の結果、血漿中に検出されたHBV DNAで平均約2.3log減少が追加的に示された。HBV(s)‐219P2の単独1mg/kgSC投与の単剤療法で、血漿HBsAg及び肝臓ウイルス転写産物のレベルで同様の減少が観察され、血漿HBV DNAの減少で相加性が示されたが、循環HBsAg又は肝臓ウイルス転写産物では示されなかった。
実施例6. HBV(s)‐219P2とGalXC‐HBVXとの抗ウイルス活性の比較
【0167】
本研究では、HBV発現マウス(HDIモデル)に、HBV(s)‐219P2、GalXC‐HBVX(
図12A及び
図12Bで使用するGalXC‐HBVXと同じ配列)、又は2種のRNAiオリゴヌクレオチドの組み合わせを投与し、投与後2週間又は9週間の血漿HBsAgレベルを監視した。
図16Bに示すように、HBV(s)‐219P2もしくはGalXC‐HBVXのいずれか、又はこれらの組み合わせの単独飽和9mg/kgのSC投与を行う処置から2週間後に、同様のレベルのHBsAg抑制が観察された。S‐標的化HBV(s)‐219P2処理で処置したマウスではHBsAgの長期的抑制が観察され、一方、GalXC‐HBVX又はこれらの組み合わせで処置したマウスでは、処置後9週間でHBsAgが有意に回復した(n=3)。
【0168】
また、HBV発現マウスにおけるHBVコア抗原(HBcAg)の細胞内局在化を、HBV(s)‐219P2、GalXC‐HBVX、又はこれらの2種のRNAiオリゴヌクレオチドの組み合わせを投与したマウスにおいて評価した。HBV(s)‐219P2、GalXC‐HBVX、又はこれらの1:1の組み合わせの単独飽和用量(9mg/kg、s.c.)でHBV発現マウス(HDIモデル)を処置した。
図17Aに示す時点で、肝臓切片をHBcAgについて染色した;代表的な肝細胞を図に示す。単剤療法として、又はGalXC‐HBVXと組み合わせて、HBV(s)‐219P2で処置したコホートは核HBcAgを特徴づけている。GalXC‐HBVSのみで処置したコホートは、治療応答の好ましい予後指標として報告されているHBcAgの細胞質局在のみを示している(Huangら、J.Cell.Mol.Med.2018年)。各動物において核染色されたHBcAg陽性細胞の割合を
図17Bに示す(n=3/群、1匹当たり50細胞、投与後2週間)。HBcAg細胞内局在化に対する効果はHBVトランスクリプトームの領域によるものであってRNAi配列の未知の特性によるものではないことを確認するために、X及びSオープンリーディングフレーム内を標的にして、代替配列を設計及び試験した(
図17C参照)。
図17CではHBV‐254を使用した。HBV‐254の配列は実施例1で記述している。
図17Cで使用したHBxAgを標的とする代替オリゴヌクレオチドはGCACCUCUCUUUACGCGGAAGCAGCCGAAAGGCUGCのセンス鎖配列、及びUUCCGCGUAAAGAGAGGUGCGGのアンチセンス配列を有する。2種の別のRNAiオリゴヌクレオチドは、S又はX抗原において、
図16Bで使用したRNAiオリゴヌクレオチドとは異なるRNAi標的配列を有する。しかし、それらは血漿レベルHBcAgに対して同じ示差的効果を示し、その効果はS抗原自体を標的とすることに特異的であるが、使用されるオリゴヌクレオチドには特異的ではないことが示された。
実施例7 健康なヒト被験者における安全性、忍容性、及びHBV患者におけるHBV(s)‐219の有効性の評価
【0169】
本試験は、健康な被験者(A群)における安全性及び忍容性、並びにHBV患者(B群)におけるHBV(s)‐219の有効性を評価するように設計している。コホート情報別の用量を
図18に示す。HBV(s)‐219の分子構造を
図10及び
図19Aに示し、また以下にも示す:
【0170】
患者選択基準を以下に示す。
A群 ‐ 健康な被験者
選択基準:
1.インフォームドコンセントに署名した時点で、18歳(又は法的同意の年齢、どちらか年長の方)から65歳まで。
2.治療歴、健康診断及び研究室検査を含む医学的評価により決定するスクリーニング時に明白に健康であること。
a.進行中の疾患の症状がない。
b.体温、脈拍数、呼吸数、血圧に臨床的に重大な異常がない。
c.臨床的に重要な心血管疾患又は肺疾患、及び薬理学的投薬を必要とする心血管疾患又は肺疾患がない。
3.スクリーニング時に、そして治験責任医師のオピニオンの1日目のときに、正常な範囲内にある、又は臨床的に有意な異常のない12誘導心電図(ECG)を装着していること。
4.スクリーニング来院1のときに、及び入院時(1日目)に、アルコール又は薬物乱用のスクリーニングが陰性であること。
5.スクリーニング来院1以前の少なくとも5年間、非喫煙者であり、スクリーニング来院1での尿中コチニン濃度が陰性であること。
6.ボディマス指数(BMI)が18.0kg/m2以上32.0kg/m2以下の範囲内であること。
7.男性又は女性:
a.男性参加者:
男性参加者は、治療期間中、及び研究介入での投与後少なくとも2週間、避妊手段を使用し、この期間中は精子を提供しないことに同意しなければならない。
b.女性参加者:
女性の参加者は、妊娠しておらず、授乳中でなく、以下の条件の少なくとも1つが当てはまる場合に参加する資格がある:出産可能性のある女性(WOCBP)ではない女性か、又は地域によっては;避妊をスクリーニング後の試験登録から開始し、研究介入での投与後少なくとも12週間、治療期間全体にわたって継続する避妊ガイダンスに従うことに同意したWOCBP。
8.要件及び制限の遵守を含む、署名されたインフォームドコンセント1を提出できること。
【0171】
除外基準、A群
1.試験薬物の吸収、分布、もしくは排除、又は本試験における臨床評価及び実験評価を妨害する可能性のあるあらゆる病状の既往歴があること。これには以下が含まれる(限定されるものではない):慢性もしくは再発性腎疾患、機能性腸障害(例えば、頻回の下痢又は便秘)、消化管疾患、膵炎、発作障害、皮膚粘膜もしくは筋骨格障害、自殺未遂(単数又は複数)もしくは自殺念慮の既往歴、又は臨床的に有意な抑鬱もしくは薬理学的介入を必要とする他の精神神経障害。
2.不十分に制御された、もしくは不安定な高血圧;又は、スクリーニング時に持続収縮期血圧が>150mmHgであるか、もしくは拡張期血圧が>95mmHgであること。
3.インスリン又は血糖降下剤で治療された真性糖尿病の既往歴。
4.過去12か月以内に入院を必要とした喘息の既往歴。
5.中央研究所でスクリーニング結果により判定されたG‐6‐PD欠乏症の痕跡。
6.薬理学的に治療する甲状腺状態を除外する甲状腺状態(甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症等)を除いて、現在不十分に制御されている内分泌状態。
7.参加者の悪性腫瘍が化学療法で完全寛解状態にあり、過去3年間に追加の医学的又は外科的介入を受けていない場合、悪性腫瘍の既往歴が認められること。
8.多数の薬物アレルギーの既往歴、又はオリゴヌクレオチド又はGalNAcに対するアレルギー反応の既往歴。
9.研究介入の投与又は局所忍容性の評価を潜在的に妨げる可能性があるSC注射(単数又は複数)又は重大な腹部瘢痕に対する非忍容性の既往歴。
10.臨床的に関連する手術歴。
11.過去3年以内の持続的なエタノール乱用(>40gエタノール/日)又は違法薬物使用の既往歴。
12.研究介入の投与前7日以内に生じた臨床的に重大な疾患。
13.研究介入の投与前2か月以内の500mLを超える献血、又はスクリーニング前7日以内の血漿献血。
14.スクリーニングで進行中に生じた重大な感染又は既知の炎症過程(治験責任医師の意見による)。
15.慢性もしくは再発性尿路感染症(UTI)、又はスクリーニング前1か月以内のUTIの既往歴。
16.本試験の実施中に選択的外科処置の予定があること。
17.研究介入の投与前4週間以内の処方薬の使用。
18.治験責任医師及びスポンサーにより臨床的に関連がないと合意されていないにも関わらず、最初の投与から7日以内に、通常のビタミンを除いた店頭(OTC)薬又はハーブサプリメントを使用すること。
19.投与前3か月以内に治験薬を投与されたか、又は試験前に別の臨床試験の経過観察中であること。
20.スクリーニング時のHBV、HIV、HCV、又はHDV抗体の血清陽性(スクリーニング前3か月以内に実施される場合、既往歴検査を利用してもよい)。
21.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマ‐グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ(ALP)、又はアルブミンがスクリーニング来院時又は入院時(1日目)に基準範囲外にあること。
22.臨床的に関連があり、治験責任医師に容認できないと判断された完全血球数検査異常;<12.0g/dL(120g/Lに相当)のヘモグロビン;正常範囲外の血小板。
23.>7%のヘモグロビンAlC(HbAlC)。
24.臨床的に重要であり、治験責任医師に容認できないと判断されたその他の安全性臨床試験結果。
25.臨床研究センターに入院する48時間前から試験終了まで、運動レベルを大幅に変更したこと、又は変更する予定があること。
26.治験責任医師の意見において、参加者を登録に適さないようにする状態、又は試験への参加もしくは試験の完了を妨害する可能性があるあらゆる状態。
【0172】
B型肝炎の成人B群
選択基準、B群
1.インフォームドコンセントに署名した時点で、18歳(又は法的同意の年齢、どちらか年長の方)から65歳まで。
2.以下に示す慢性B型肝炎感染:
a.適応する臨床情報に基づいてCHBに適応する臨床既往歴があり、また以前にHBsAgに血清陽性を示し、他のHBV血清学的マーカー(HBeAg、HBV DNA)に血清陽性を示す可能性がある。
b.HBeAg陽性患者の場合、スクリーニング時に血清HBsAgが>1,000IU/mLであるか、あるいはHBeAg陰性患者の場合、>500IU/mLである。
c.中央研究所においてTaqMan(商標)HBV DNA v2.0アッセイで測定した治療歴のない患者のスクリーニングでの血清HBV DNAが>20,000IU/mLである。
d.血清IgM抗HBc陰性。
3.肝硬変の痕跡がない、代償性肝疾患に適応した臨床既往歴:
a.食道又は胃腸静脈瘤からの出血の既往歴なし。
b.腹水の既往歴なし。
c.慢性肝疾患に起因する黄疸の既往歴なし。
d.肝性脳症の既往歴なし。
e.門脈圧亢進症‐クモ状血管腫等の物理的な徴候なし。
f.肝硬変を示した過去の肝生検、肝画像検査、エラストグラフィ結果なし。
4.B型肝炎の治療経験がないこと:B型肝炎に対する過去の抗ウイルス治療がないか(過去のHBVヌクレオシド(ヌクレオチド)又はインターフェロン含有治療なし)、又は十分な忍容性及びコンプライアンスのあるスクリーニング来院の少なくとも12週間前から継続的にヌクレオシド(ヌクレオチド)療法(エンテカビル又はテノホビル)を行っていること。
5.血清ALT>60U/L(男性)、又は>38U/L(女性)(2×ULN。American Association for the Study of Liver Disease(AASLD)HBVガイダンス基準。Teraultら、2016年)
6.スクリーニング時、及び1日目に、12誘導ECGで(治験責任医師の意見において)臨床的に有意な異常がないこと。
7.肝疾患の他の認知された原因が無いこと。
8.十分に制御された高血圧及び高コレステロール血症のスタチン管理以外に、持続的な医学的管理又は慢性的もしくは再発的な薬理学的介入を必要とする他の医学的状態がないこと。
9.BMIが18.0kg/m2以上32.0kg/m2以下の範囲内であること。
10.男性又は女性:
a.男性参加者:
男性参加者は、治療期間中、及び研究介入での最後の投与後12週間、避妊手段を使用し、この期間中は精子を提供しないことに同意しなければならない。
b.女性参加者:
女性の参加者は、妊娠しておらず、授乳中でなく、以下の条件の少なくとも1つが当てはまる場合に参加する資格がある:WOCBPではないか、又は地域によっては、治療期間中、及び研究介入での投与後少なくとも12週間、避妊ガイダンスに従うことに同意したWOCBP。
11.要件及び制限の遵守を含む、署名されたインフォームドコンセントを提出できること。
【0173】
除外基準、B群
1.試験薬物の吸収、分布、もしくは排除、又は本試験における臨床評価及び実験評価を妨害する可能性のあるいずれかの病状の既往歴があり、これには以下が含まれる(限定されるものではない):慢性もしくは再発性腎疾患、機能性腸障害(例えば、頻回の下痢又は便秘)、消化管疾患、膵炎、発作障害、皮膚粘膜もしくは筋骨格障害、自殺未遂(単数又は複数)もしくは自殺念慮の既往歴、又は臨床的に有意な抑鬱もしくは薬理学的介入を必要とする他の精神神経障害。
2.不十分に制御された、又は不安定な高血圧。
3.インスリン又は血糖降下剤で治療された真性糖尿病の既往歴。
4.過去12か月以内に入院を必要とした喘息の既往歴。
5.中央研究所でスクリーニング結果により判定されたG‐6‐PD欠乏症の痕跡。
6.薬理学的に治療する甲状腺状態以外の甲状腺状態(例えば、甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症等)を除く、現在不十分に制御されている内分泌状態。
7.慢性もしくは再発性UTI、又はスクリーニング前1か月以内のUTIの既往歴。
8.HCCの既往歴
9.患者の悪性腫瘍が化学療法で完全寛解状態にあり、過去3年間に医学的又は外科的介入が追加されていない場合、HCC以外の悪性腫瘍の既往歴は許容される。
10.過去3年以内の持続的なエタノール乱用(>40gエタノール/日)又は違法薬物使用の既往歴。
11.研究介入の投与又は局所忍容性の評価を潜在的に妨げる可能性があるSC注射(単数又は複数)又は重大な腹部瘢痕に対する非忍容性の既往歴。
12.治療前6週間の間に輸血を受けたか、又は治験後経過観察中に輸血されることが予想される場合。
13.スクリーニング前2か月以内の>500mLの献血もしくは失血、又はスクリーニング前7日以内の血漿献血。
14.過去3年間に、スクリーニング又はインターフェロン治療から3か月以内に抗ウイルス療法(エンテカビル又はテノホビル以外)を受けたこと。
15.抗凝固剤、全身投与コルチコステロイド、全身投与免疫調節剤、又は全身投与免疫抑制剤の過去6か月以内の使用(又はそれらを使用する予定の要件)。
16.PI又はスポンサーの意見において試験の実行に干渉すると判断された、研究介入の投与前14日以内の処方薬の使用。全身吸収のない局所製品、スタチン(ロスバスタチンを除く)、高血圧治療薬、OTC及び処方鎮痛薬又はホルモン避妊薬(女性)は許容される。
17.注入型/埋め込み型受胎調節を除いて、試験介入の投与前3か月以内の薬剤の蓄積注射又は移植。
18.ハーブ系サプリメント又は店頭販売全身薬を永続的に使用すること;参加者は、試験期間中は進んで停止する必要がある。
19.投与前3か月以内に治験薬を投与されたか、又は試験登録前に別の臨床試験の経過観察中であること。
20.スクリーニング時に肝エラストグラフィ(すなわちFibroScan(登録商標))でkPaが>10.5であること。
21.スクリーニング時、仰臥位から10分後、収縮期血圧が>150mmHgであり、拡張期血圧が>95mmHgであること。
22.スクリーニングで肝トランスアミナーゼ(ALT又はAST)が>7×ULNと確認されたこと。
23.ジルベール病又はデュビン・ジョンソン症候群が認識できない限り、持続性又は再発性の高ビリルビン血症の既往歴。
24.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はC型肝炎ウイルス(HCV)又はデルタ肝炎ウイルス(HDV)に対する抗体の血清陽性。
25.Hgbが<12g/dL(男性)又は<11g/dL(女性)。
26.スクリーニング時、血清アルブミンが<3.5g/dL。
27.スクリーニング時、総WBC数が<4,000細胞個/μL、又は絶対好中球数(ANC)が<1800細胞個/μL。
28.スクリーニング時、血小板数がμL当たり≦100,000。
29.スクリーニング時の国際標準比(INR)又はプロトロンビン時間(PT)が、通常の基準範囲(現場の研究室基準範囲として)の上限を超えていること。
30.血清BUN又はクレアチニンが>ULNであること。
31.血清アミラーゼ又はリパーゼが>1.25×ULNであること。
32.血清HbA1cが>7.0%であること。
33.血清アルファ胎児タンパク質(AFP)値が>100ng/mLであること。スクリーニング時のAFPが>ULNであるが<100ng/mLである場合、肝画像検査により、HCCの疑いのある病変が明らかにならない限り患者は適格である。
34.臨床的に重要であり、治験責任医師に容認できないと判断されたその他の安全臨床試験結果。
35.臨床研究センターに入院する48時間前から試験終了まで、運動レベルを大幅に変更したこと、又は変更する予定があること。
36.治験責任医師の意見において、参加者を登録に適さないようにする状態、又は試験への参加もしくは試験の完了を妨害する可能性があるあらゆる状態。
【0174】
本明細書において例示的に説明した本開示は、任意の1つ又は複数の要素及び1つ又は複数の限定が本明細書に具体的に開示されていなくても適切に実施することができる。従って、例えば、本明細書の各例では、用語「含む」、「から本質的に成る」、及び「から成る」はいずれも、他の2つの用語のいずれかに言い換えることが可能である。使用した用語及び表現は限定ではなく説明の用語として使用しており、そのような用語及び表現の使用において、図示及び説明した特徴又はその一部の同等物を除外する意図はない。しかし、請求した本発明の範囲内で様々な修正が可能であることは認識している。従って、本発明は好ましい実施形態により具体的に開示されているが、本明細書で開示した概念の任意の特徴、修正、及び変形は、当業者により対処することが可能であることは理解されており、またそのような修正及び変形は、明細書及び添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあると考えられていることも理解されているものとする。
【0175】
本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がないか、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「備える」、「有する」、「含む」、及び「含有する」は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含む」を意味するが、これに限定されるものではない)として解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、単に、範囲内に該当する個々の各値を個別に参照する簡略法として機能することを意図し、個々の各値は、個別に本明細書で列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている方法は全て、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行可能である。本明細書で提供されるあらゆる例又は例示的な記述(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより詳細に明らかにすることを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定しない。明細書の記述は、本発明の実施に不可欠な請求要素が無いことを示していると解釈すべきでない。
【0176】
本明細書には本発明の実施形態が説明してあり、これには本発明を実施する発明者らにとって公知の最良の形態が含まれる。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読むと当業者に明らかになると思われる。
【0177】
本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に利用することを期待し、また本発明者らは、本明細書に具体的に記載された以外の方法でも本発明が実施されることを意図している。従って、適用可能な法律によって許可されているように、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象物の全ての修飾物及び同等物を含む。更に、その可能な変形全てにおける上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明に組み込まれる。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、又は慣例的な実験を利用するだけでそれを確認できる。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲に組み込まれることが意図されている。
【配列表】