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  • 特許-ネビボロールを含む医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ネビボロールを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20230922BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P27/06
A61K9/10
A61K47/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020545478
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055149
(87)【国際公開番号】W WO2019166631
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】18159727.9
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/637,676
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512086242
【氏名又は名称】ノバリック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ルッシャー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】アイクホフ, キルステン
(72)【発明者】
【氏名】シュトレール, ディアナ
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542239(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136034(WO,A2)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2018年01月12日,Vol. 538,pp. 119-129
【文献】Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol,2014年,Vol. 252,pp. 917-923
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/353
A61P 27/06
A61K 9/10
A61K 47/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の固体粒子と、
(b)式(II)
CF (CF (CH CH (II)、
(式中、nは2~10の整数であり、mは2~10の整数である)
半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと:
を含み、前記ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の固体粒子が、半フッ化アルカンを含む前記液体ビヒクル中に懸濁される、医薬組成物。
【請求項2】
式(II)
CF(CF(CHCH (II)、
(式中、nは3~5の整数であり、mは4~7の整数である)
の半フッ化アルカンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記半フッ化アルカンが、1-ペルフルオロブチル-ペンタン(CF(CF(CHCH;F4H5)及び1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(CF(CF(CHCH、F6H8)からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
組成物が、水及び/又は保存剤を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の固体粒子が、0.3~1.5%(w/v)の濃度で前記液体ビヒクル中に懸濁される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の固体粒子が、0.45~1.0%(w/v)の濃度で前記液体ビヒクル中に懸濁される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ネビボロール塩酸塩の粒子形態のネビボロールの固体粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ネビボロール塩酸塩の固体粒子と1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子の少なくとも90%が、15μm以下のサイズを有する、請求項4~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
局所投与のための薬剤として使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置のための、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、対象の眼に投与される、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、1日2回まで、対象の眼に投与される、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、1眼当たり8~15μlの投与量又は1眼当たり10~12μlの投与量で投与される、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、1眼当たり45~120μgの単回投与量で投与される、請求項11~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物と、前記医薬組成物を保持するための容器とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的ベータ1(β)受容体遮断薬ネビボロールと、半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルとを含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、局所投与、特に眼科用局所投与に有用である。
【背景技術】
【0002】
液体形態の医薬組成物は、好ましいタイプの薬物製剤の1つを表す。眼科投与等の特定の局所投与の経路は、典型的には、活性成分の効率的な送達と、患者に優しい使用モードを提供するために液体形態を必要とする。
【0003】
液体製剤の最も単純なタイプは、活性医薬成分の水溶液等の溶液である。しかしながら、ある特定の場合、縣濁液等のより複雑な製剤の開発が考えられ得る。例えば、薬物物質が水溶液若しくは他の生体適合性溶媒系に非常に溶けにくい場合、又は加水分解に対して不安定である場合、単純な溶液は、実現できず、又は最良の選択ではない可能性がある。
【0004】
ネビボロールは、ベータ遮断薬と称される化合物のクラス-心調律異常を管理するために、また最初の心発作後の2回目の心発作から心臓を守る(2次予防)ために使用される薬物のクラスに属する。それらは、高血圧(高血圧症)の処置にも広く使用されている。
【0005】
ベータ遮断薬は、緑内障の処置にも使用されている。ベータ遮断薬は、毛様体のレベルでベータ受容体を遮断することにより、また房水の生産を低下させることにより作用し、それによって眼圧(IOP)を低下させる。2つのタイプの局所ベータ遮断薬が、緑内障の処置での使用のために入手可能である:ベータ1(β)及びベータ2(β)アドレナリン受容体の両方を遮断する非選択的ベータ遮断薬;並びにベータ1受容体のみを遮断する心選択的ベータ遮断薬。市販のベータ遮断薬のうち、チモロール、レボブノロール、メチプラノロール及びカルテオロールは非選択的であり;ベタキソロールは心選択的ベータ遮断薬である。ベータ遮断薬の最も深刻な副作用は、非選択的薬剤による慢性閉塞性気道障害の悪化、及び幾人かの患者における気管支痙攣の沈降(precipitation)である。
【0006】
ネビボロールは、高血圧症の処置及び左心室不全にも使用される、一酸化窒素を増強する血管拡張効果を備えたベータ1(β)受容体遮断薬である。これは、特定の状況下では心選択性が非常に高い。これはその塩酸塩のラセミ混合物の形態で治療的に使用され、陰性変力及び直接の血管拡張作用を示す。
【0007】
眼圧の上昇は、多くの場合、視神経損傷と関連する高頻度の眼の障害であり、その場合、疾患は緑内障である。視神経損傷の非存在下では、この状態は高眼圧症と称される。
【0008】
正常な眼圧は、通常、10~21mmHgの範囲であると定義されている。眼圧は主に、眼内の房水の生産速度と排水速度との間のバランスから生じる。加えて、眼圧は角膜の厚さ及び剛性の影響を受ける。眼圧は、典型的には約15~16mmHg付近で6mmHgまでの振幅で上下する。例えば、眼圧は通常、房水の生産の減少により夜間は低下する。眼圧はまた、運動、心拍数、呼吸、流体摂取、及び特定のタイプの全身又は局所薬物等の様々な生理学的因子に応答する。
【0009】
房水は、眼の毛様体によって生産され、毛様体から後眼房内に流れる。房水の組成は血漿の組成に非常に似ているが、タンパク質含有量が少ないことにより血漿と異なる。房水の主成分は水(99%)、電解質(生理学的pHを維持するための無機イオン)、少量のアルブミン及びβ-グロブリン、アスコルベート、ブドウ糖、ラクテート並びにアミノ酸である。
【0010】
房水は後眼房から、虹彩の瞳孔を介して眼の前眼房内に分配される。ここから、房水はいわゆる線維柱帯網を通して流れ、線維柱帯網は、線維柱細胞で裏打ちされた海綿状の組織範囲であり、その主な機能は、シュレム管と呼ばれる一組の管内に房水を排水することであり、シュレム管から房水は血液循環に進入する。線維柱帯網からシュレム管への房水の流れは、2つの異なる経路:房水静脈を介して強膜上静脈に直接、又は強膜内叢により集水チャネル(collector channel)を介して強膜上静脈に間接的に、のいずれかを介して生じる。この小柱流出経路は、排水される房水の主な部分を占める。加えて、ぶどう膜強膜路流出である第2の主要な排水経路が存在し、これは眼圧とは比較的独立しており、通常、健康なヒトにおいて房水排水の5~10%のみを占める。
【0011】
国際公開第2008/136034 A2号パンフレットは、高眼圧を低下させるための医薬の製造のためのネビボロール又はその塩若しくはエステルの使用を記載している。ネビボロールは、中でも、大豆油、卵黄リン脂質及びグリセロールを含むエマルジョンとして;大豆油を含む油溶液として;並びに流動パラフィン及びワセリンを含む眼科用軟膏として処方されている。動物試験において、動物は、1眼当たり100μlのエマルジョンの1%ネビボロールで処置されている。
【0012】
D.Szummy et al.は、Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol(2014)252:917-923に、眼圧に対するネビボロールの効果が試験される実験を記載している。ここでは、ネビボロールの溶液が兎の眼の結膜嚢に経口又は局所投与されている。ネビボロール溶液は、1滴(50μl)の体積で0.1%、0.5%及び1%の濃度で投与される。しかしながら、溶液の正確な組成、特に使用されている溶媒に関して示されていない。
【0013】
国際公開第2016/108130 A1号パンフレットは、実験セクションにてネビボロール塩酸塩のパラフィン中の分散液、及び糖尿病性創傷の処置のためのネビボロール塩酸塩を含むゲルの製剤を記載している。
【0014】
水性製剤の代替物として、各々の薬物物質が水に溶けにくく、又は加水分解を受けやすい場合、油性点眼薬が処方され得る。しかしながら、眼科投与のための全油ベースの製剤の主な欠点の1つは、それらが本質的に視覚に負の影響を有することである。油性溶液又は水中油エマルジョンのいずれで使用される場合でも、それらは生理学的涙液とは実質的に異なる屈折率を示し、これは視覚障害及びぼやけをもたらす。
【0015】
また、油ベースの製剤は涙液と容易に混合せず、均質な液相を形成しない。油性溶液は、水性の涙液とは完全に非混和性であり、生理学的環境における涙液と混合されたエマルジョンの正確な結末は、完全には予測できない。更に、中鎖トリグリセリド(MCT)等の油性担体は、眼への滴下により強い灼熱感を生じることが知られている。
【0016】
更に、水中油エマルジョンは、使用中に微生物汚染を受けやすい水溶液の様である。水中油エマルジョンが、原則として単回使用のバイアルよりも費用効率が高く、また患者に対して利便性の高い複数回用量の容器内に存在するべき場合、それらは、それらの微生物学的品質を確実にするために保存される必要があるであろう。同時に、眼科用製剤に使用され得る保存剤は、眼、特に眼球表面に対して潜在的に有害であり、可能な限り避ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、医薬として、特に局所適用に有用であり得る、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩を含む新規な医薬製剤を提供することである。本発明の更なる目的は、先行技術の製剤に関連した限界又は欠点の少なくとも1つを克服する、例えば開放隅角緑内障又は高眼圧症に関連した眼圧の上昇の処置を見出すことである。
【0018】
本発明の更なる目的は、有利な長期安定性を示すネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の液体製剤を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、低下された目標投与量で眼圧の低下に有効な、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の液体製剤を提供することである。
【0020】
本発明の更なる目的は、以下の記載、実施例、及び特許請求の範囲に基づいて明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の態様において、本発明は:
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
第2の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、より詳細には緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置のための、本発明の第1の態様の組成物を提供する。
【0023】
更なる態様において、本発明は、本発明の第1の態様による医薬組成物を、処置を必要とする対象の眼に投与することを含む、緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置のための方法を提供する。
【0024】
また更なる態様において、本発明は、本発明の第1又は第2の態様による医薬組成物と、医薬組成物を保持するための容器とを含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)中の濃度0.5%(w/v)のネビボロール塩酸塩の懸濁液が投与される、下記の実施例4によるインビボでの眼圧試験の測定の結果のグラフ表示である。
図2】1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)中の濃度1.0%(w/v)のネビボロール塩酸塩の懸濁液が投与される、下記の実施例4によるインビボでの眼圧試験の測定の結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
驚くべきことに、本発明の組成物は、以前より知られるネビボロールの製剤のいくつかの不都合を克服することが本発明者らにより見出された。
【0027】
第1の態様において、本発明は:
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明による医薬組成物は、第1の成分(a)ネビボロール及び/又はネビボロールの薬学的に許容され得る塩を含む。本明細書で使用される化合物ネビボロールは、構造式(Ia)
【化1】
の第2級アミン1,1’-[ビス(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-イル)]-2,2’-イミノジエタノールであり、分子式はC2225NOであり、分子質量は405,44g/molである。この化合物はナルビボロール(narbivolol)又はネビボロラム(nebivololum)としても知られ、ジアステレオマーの混合物の形態、又は単一のジアステレオマー、例えば式(Ib)
【化2】
のジアステレオマーの形態で使用することができ、これらは前記ジアステレオマーのラセミ混合物の形態、又は非ラセミ混合物の形態、又は純粋なエナンチオマーの形態、例えばRSSS及びSRRRエナンチオマーの形態のいずれかである。
【0029】
本明細書で使用される用語ネビボロールは、入手可能な場合、及びその意図される使用に従って、本発明の医薬組成物の製剤に使用され得る式(Ia)の化合物のエナンチオマーのラセミ混合物、任意の非ラセミ、即ちエナンチオマー的に富んだ(enantiomerically enriched)混合物、及び単一のジアステレオマー、又はジアステレオマーの混合物を指すことができる。
【0030】
ネビボロールは、上記の式(Ia)及び(Ib)に記載及び示されるその遊離塩基の形態、並びに薬学的に許容され得る塩、例えば式(Ic)
【化3】
のネビボロール塩酸塩、又は薬学的に許容され得る他の付加塩の形態で市販されている。
【0031】
医薬組成物は、ネビボロール及び/又はネビボロールの薬学的に許容され得る塩を含んでもよく、これは、組成物が、例えば式(Ia)及び式(Ib)に示す遊離塩基の形態のネビボロールを、単独で又はネビボロールの異なる薬学的に許容され得る塩の1つ若しくは混合物との組み合わせのいずれかで、含み得ることを意味する。更に、本医薬組成物は、式(Ic)の塩、例えば塩酸塩の形態のネビボロールを、単独で又は上述したネビボロールの他の薬学的に許容され得る塩との混合物の形態のいずれかで、含み得る。
【0032】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、ネビボロール塩酸塩の形態のネビボロールを含む。好ましくは、本発明の医薬組成物は、構成成分a)として、式(Ic)の立体異性体及びそのエナンチオマーのラセミ混合物としてのネビボロール塩酸塩含む。
【0033】
好ましくは、ネビボロール、ネビボロール塩酸塩又は上述したネビボロールの他の薬学的に許容され得る塩は、本発明による医薬組成物中に治療的有効量で存在する。本明細書で使用される用語「治療的有効量」は、所望の薬理学的効果を生じるのに有用な用量、濃度又は強度を指す。
【0034】
第2の成分(b)として、本発明による医薬組成物は、半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルを含む。本発明の主な利点のいくつかは、溶液、分散液又は縣濁液のいずれかを形成するための液体ビヒクルとして機能する、組成物中の半フッ化アルカンの存在によりもたらされる。本明細書で使用される用語「半フッ化アルカン」は、ペルフッ化された直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖炭化水素セグメントが、直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖炭化水素セグメントに結合している化合物を意味する。
【0035】
しかしながら、好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物、又は、より詳細には、本発明の医薬組成物の液体ビヒクルは、一般式(II)
CF(CF(CHCH (II)
の半フッ化アルカンを含み、式中、添字nは、2~10から選択される整数であり、mは2~10から選択される整数であり;又はnは3~7から選択される整数であり、mは4~7から選択される整数である。好ましくは、本発明の医薬組成物の液体ビヒクルは、一般式(II)の半フッ化アルカンを含み、式中、添字nは、3~5から選択される整数であり、mは4~7から選択される整数である。
【0036】
従って、本発明の組成物に使用される前記半フッ化アルカンは、好ましくはCF(CF-(CHCH(F4H5)、CF(CF-(CHCH(F4H6)、CF(CF-(CHCH(F4H7)、CF(CF-(CHCH(F4H8)、CF(CF-(CHCH(F5H5)、CF(CF-(CHCH(F5H6)、CF(CF-(CHCH(F5H7)、CF(CF-(CHCH(F5H8)、CF(CF-(CHCH(F6H5)、CF(CF-(CHCH(F6H6)、CF(CF-(CHCH(F6H7)、CF(CF-(CHCH(F6H8)、CF(CF-(CHCH(F8H8)、CF(CF-(CHCH(F6H10)から選択されてもよい。より好ましくは、前記半フッ化アルカンは、CF(CF-(CHCH(F4H5)、CF(CF-(CHCH(F6H6)、CF(CF-(CHCH(F6H8)及びCF(CF-(CHCH(F6H10)から選択されてもよい。最も好ましくは、前記半フッ化アルカンは、CF(CF-(CHCH(F4H5)及びCF(CF-(CHCH(F6H8)から選択される1つである。
【0037】
下記の丸括弧に記され及び本明細書に更に使用され得る特定の半フッ化アルカンの代替的な命名は、一般式FnHmに基づき、ここでFは直鎖ペルフッ化炭化水素セグメントを意味し、Hは直鎖非フッ化炭化水素セグメントを意味し、n、mは、各々のセグメントの炭素原子の数である。例えば、F4H5は、1-ペルフルオロブチル-ペンタン又はCF(CF-(CHCH(これは代替的に、式F(CF(CHHと表すこともできる)を示すのに使用することができ、これは4つの炭素(n=4)を有する直鎖ペルフッ化セグメントFと、5つの炭素(m=5)を有する直鎖非フッ化炭化水素セグメントとを有する。更に、F6H8は、1-ペルフルオロヘキシル-オクタン又はCF(CF-(CHCH(これは代替的に、式F(CF(CHHと表すこともできる)を示すのに使用することができ、これは6つの炭素(n=6)を有する直鎖ペルフッ化セグメントFと、8つの炭素(m=8)を有する直鎖非フッ化炭化水素セグメントとを有する。
【0038】
「1つの(a)」半フッ化アルカンを含む本発明の医薬組成物は、本明細書では、少なくとも1つの上述した式(II)の半フッ化アルカンを含むとして理解するべきである。しかしながら、場合により、組成物は、1つを超える、例えば2つ以上の式(II)の半フッ化アルカン、即ち上述した半フッ化アルカン種の任意の1つの混合物を含んでもよい。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明による医薬組成物は、1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(CF(CF-(CHCH(F6H8))及び1-ペルフルオロブチル-ペンタン(CF(CF-(CHCH(F4H5))から選択される式(II)の半フッ化アルカンを含む。本発明の特に好ましい実施形態では、式(II)の半フッ化アルカンは、ペルフルオロヘキシル-オクタン(CF(CF(CHCH、F6H8)である。
【0040】
また更なる実施形態において、本発明の医薬組成物の液体ビヒクルは、上記に特定した式(II)の半フッ化アルカンからなり得る。この状況ではまた、用語「1つの(a)」半フッ化アルカンは、少なくとも1つの半フッ化アルカンとして理解するべきであるが、1つを超える、又は複数の半フッ化アルカン化合物の選択肢も含み得る。従って、一実施形態では、組成物は、1つを超える、上記に特定した式(II)の半フッ化アルカンからなり得る。
【0041】
別の実施形態では、本発明による医薬組成物は、(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、(b)上記に定義した一般式(II)の半フッ化アルカン、又は上記に定義した半フッ化アルカン化合物の任意の1つ若しくは組み合わせから選択される半フッ化アルカンを含む又は該半フッ化アルカンから本質的になる液体ビヒクルと、場合により、(c)1つ以上の賦形剤とを含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「からなる(consists)」及び関連用語「からなっている(consisting)」又は「からなる(consist)」は、用語の前に置かれるもの以外の他の特徴が存在しないことを意味するとして理解するべきである。組成物の状況において、そのような用語の前に置かれるもの以外に、組成物中に任意の他の成分又は構成成分が存在する場合、該成分又は構成成分は、これらの用語と共に使用される用語「本質的に」又は「実質的に」(例えば、「から本質的になる」)により更に理解され得るように、本発明の目的に関連した技術的利点又は関連性を与えないように微量又は残量のみで存在する。半フッ化アルカンの合成に由来する、及び微量又は残量のみで存在する(精製により定量的に除去することができないため)、及び本発明の目的に関連した任意の技術的利点又は関連性を与えない、異性体又はオレフィン系不純物は、そのような他の成分又は構成成分の上記の定義に含まれることを理解するべきである。対照的に、本組成物の状況において用語「含んでいる(comprising)」又は関連用語「含む(comprises)」又は「含む(comprise)」は、用語の前に置かれるもの以外の他の特徴が、組成物中に存在し得ることを意味するとして理解するべきである。
【0043】
更なる実施形態では、上述した以前の実施形態のいずれかに定義された本医薬組成物の液体ビヒクルは、好ましくは、液体ビヒクルの総重量に対して、上述したような半フッ化アルカン又は半フッ化アルカンの混合物の少なくとも70%(w/w)、75%(w/w)、85%(w/w)、90%(w/w)、95%(w/w)、98%(w/w)、98.5%(w/w)、99%(w/w)、99.5%(w/w)、99.8%(w/w)又は少なくとも99.9%(w/w)の量の半フッ化アルカン又は場合により半フッ化アルカンの混合物を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物の液体ビヒクルは、少なくとも85%(w/w)の半フッ化アルカン又は異なる半フッ化アルカンの混合物を含む。更なる実施形態では、本発明の液体ビヒクルは、100%(w/w)の半フッ化アルカン又は半フッ化アルカンの混合物から本質的になる。
【0045】
本明細書で使用される用語「%(w/w)」は、特に示さない限り、本医薬組成物の液体ビヒクルの総重量に関連した組成物の構成成分の重量百分率としての量を示す(「w」は重量を示す)。
【0046】
特に好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物の液体ビヒクルは、好ましくは医薬組成物中に存在する唯一の半フッ化アルカンとして、1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(CF(CF-(CHCH(F6H8))を含む。更に好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物の液体ビヒクルは、1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)から本質的になる。1-ペルフルオロヘキシル-オクタンから本質的になる液体ビヒクルは、精製により定量的に除去できないF6H8の合成に由来する異性体又はオレフィン系不純物(例えば、2-ペルフルオロヘキシル-オクタン又は1-ペルフルオロヘキシル-オクテン)を、微量又は残量で含み得ることが理解される。
【0047】
更なる実施形態では、本発明による医薬組成物の液体ビヒクルは、好ましくは医薬組成物中に存在する唯一の半フッ化アルカンとして、1-ペルフルオロブチル-ペンタン(CF(CF-(CHCH(F4H5))を含む。更に好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物の液体ビヒクルは、1-ペルフルオロブチル-ペンタン(F4H5)から本質的になる。1-ペルフルオロブチル-ブタンから本質的になる液体ビヒクルは、精製により定量的に除去できないF4H5の合成に由来する異性体又はオレフィン系不純物(例えば、2-ペルフルオロブチル-ペンタン又は1-ペルフルオロブチル-ペンテン)を、微量又は残量で含み得ることが理解される。
【0048】
上述したような液体半フッ化アルカンは、化学的及び生理学的に不活性であり、無色且つ安定である。それらの典型的な密度は、1.1~1.7g/cmの範囲であり、それらの表面張力は、19mN/mと低い場合がある。RFRHタイプの半フッ化アルカンは、水に不溶性であるが、幾分か両親媒性でもあり、親油性の増加は、非フッ化セグメントのサイズの増加と相関する。
【0049】
上述した半フッ化アルカンを含む医薬組成物の液体ビヒクルは、更なる可溶化剤、例えば1つ以上の溶媒又は共溶媒も含むことができる。特定の実施形態では、本医薬組成物の液体ビヒクルは、共溶媒、好ましくは有機共溶媒を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「可溶化剤」は、本液体ビヒクルの半フッ化アルカン又は異なる半フッ化アルカンの混合物と混和性であり、溶解度を向上させ若しくは促進し、又は選択された上述した半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中での活性構成成分ネビボロールの分散性を向上させ若しくは促進する、化合物又は溶媒又は共溶媒、好ましくは有機溶媒を示し得る。
【0051】
潜在的に有用な有機共溶媒の例としては、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びエタノールが挙げられる。しかしながら、共溶媒の濃度は、好ましくは半フッ化アルカン又は半フッ化アルカン混合物の濃度に対して低い必要がある。エタノール等の有機共溶媒を使用する場合、その濃度を液体ビヒクルの総重量に対して約10%(w/w)又は5%(w/w)又は更には3%(w/w)のレベル以下に保つことが推奨される。より好ましくは、共溶媒、より詳細にはエタノールの含有量は、液体ビヒクルの総重量に対して約0.1~約2%(w/w)であり、最も好ましくは約1%(w/w)以下である。しかしながら、いくつかの実施形態では、本発明による本組成物の液体ビヒクルは、有機共溶媒を含まない。
【0052】
別の実施形態では、場合により本医薬組成物の液体ビヒクルに含まれ得る可溶化剤は、好ましくは、液体ビヒクルの総重量に対して3%(w/w)まで、又は好ましくは2.5%(w/w)までの量で存在してもよい。好ましい実施形態では、液体ビヒクルは、液体ビヒクルの総重量に対して1%(w/w)まで、好ましくは0.5%(w/w)までの少量で可溶化剤を含む。別の好ましい実施形態では、液体ビヒクルは更に、液体ビヒクルの重量に対して約2.5%~0.5%(w/w)、好ましくは約1%~0.5%(w/w)の量の可溶化剤を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、可溶化剤は、例えば、上述した更なる有機共溶媒、並びに/又はグリセリド油、液体ワックス及び流動パラフィンから選択される油、又は高度の生体適合性を示す有機溶媒等の液体賦形剤であってもよい。
【0054】
潜在的に有用な液体賦形剤の例は、1つ以上の半フッ化アルカンと組み合わせて使用され得る油性賦形剤を含み、トリグリセリド油、鉱物油、中鎖トリグリセリド(MCT)、油性脂肪酸ミリスチン酸イソプロピル、油性脂肪アルコール、ソルビトールと脂肪酸のエステル、油性ショ糖エステル、又は眼により生理学的に許容される任意の他の物質を含む。好ましい一実施形態では、液体ビヒクルは、液体賦形剤の形態の可溶化剤を含む。本明細書で使用される潜在的に有用な可溶化剤の更なる例は、有機溶媒である。好ましい有機溶媒としては、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びエタノールが挙げられる。また更に好ましい実施形態では、本医薬組成物の液体ビヒクルは、本医薬組成物の液体ビヒクルの総重量に対して好ましくは1%(w/w)まで、より好ましくは0.8%(w/w)まで、最も好ましくは0.5%(w/w)までの量のエタノールを可溶化剤として含み得る。
【0055】
本発明の医薬組成物は、成分a)として、上述したように、活性成分ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む。本医薬組成物は、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩を、約0.1%(w/v)~約10%(w/v)、又は約0.1%(w/v)~約5%(w/v)、又は約0.2%(w/v)~約3%(w/v)、又は約0.2%(w/v)~約2%(w/v)、又は約0.3%(w/v)~約1.5%(w/v)、又は約0.4%(w/v)~約1.25%(w/v)、又は約0.45%(w/v)~約1.0%(w/v)の量で含み得る。
【0056】
好ましい実施形態において、本医薬組成物は、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩を、約0.3%(w/v)~約1.5%(w/v)又は約0.45%(w/v)~約1.0%(w/v)の量で含む。
【0057】
更に好ましい実施形態では、本医薬組成物は、ネビボロール塩酸塩を、約0.3%(w/v)~約1.5%(w/v)又は約0.5%(w/v)~約1.0%(w/v)の量で含む。
【0058】
特に示されない限り、本医薬組成物に関連して本明細書全体で使用される用語「%(w/v)」は、組成物の総体積に関連した組成物の構成成分(例えば、ネビボロール又はネビボロール塩酸塩等)の重量百分率としての量を示す(「w」は重量を示し、「v」は体積を示す)。例えば、0.05%(w/v)は、1mLの組成物中の0.5mgの構成成分に関連すると理解することができ、0.1%(w/v)は、1mLの組成物中の1.0mgの構成成分に対応するであろう。
【0059】
活性構成成分ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくは上述したネビボロール塩酸塩は、下記に記載するように、半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に溶解、分散又は懸濁され得る。従って、本発明の液体医薬組成物は、溶液、好ましくは透明な溶液の形態又は縣濁液の形態であり得る。
【0060】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、縣濁液の形態で提供される。縣濁液は、分散液の一タイプとして定義することができ、分散液は、少なくとも1つの連続(又は密着(coherent))相と、連続相中に分散された少なくとも1つの不連続(又は内部)相とを有する系である。縣濁液において、分散相は固体状態にある。本発明の実践に有用な懸濁液は、少なくとも生理学的温度で液体であり、これは連続相が液体であることを意味する。典型的には、縣濁液は室温でも液体である。
【0061】
好ましくは、本発明は、分散相としてのネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の粒子、好ましくはネビボロール塩酸塩の粒子が、連続相としての半フッ化アルカン、例えば上記に定義した式(II)の半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に懸濁されている医薬組成物を提供する。従って、本発明の好ましい実施形態では、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩は、半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に懸濁されている。
【0062】
更なる実施形態では、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の粒子、好ましくはネビボロール塩酸塩の粒子は、固体粒子である。更に好ましい実施形態では、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩の粒子、好ましくは固体粒子は、実質的にネビボロール及び/又はその塩、好ましくはネビボロール塩酸塩からなる。
【0063】
更なる実施形態では、本発明の医薬組成物において、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩は、0.3~1.5%(w/v)の濃度、又は好ましくは0.5~1.0%(w/v)の濃度で液体ビヒクル中に懸濁される。
【0064】
上記に概略したように、好ましい実施形態において、本医薬組成物の活性成分としてのネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩は、懸濁された固体粒子の形態で組み込まれる。特定の実施形態において、懸濁粒子は、大部分が又は排他的に、活性成分からなる。
【0065】
懸濁されたネビボロール粒子、好ましくはネビボロール又はネビボロール塩酸塩の粒子の粒子サイズは、好ましくは約100μm未満であり、これは殆どの粒子、例えば少なくとも約90%の粒子が100μm未満のサイズを有することを意味する。どのタイプの粒径が粒子サイズと見なされるかは、粒子サイズ分布に使用される方法に依存し、これは次に、固体材料のタイプ及びおおよそのサイズ範囲に適しているか選択される。例えば、レーザー回折又は動的光散乱(光子相関分光法又は準弾性光散乱としても知られる)は、コロイド状及び低ミクロン範囲の粒子サイズの決定に適した方法である一方、沈降分析、ふるい分析又は光分析は、より大きい粒子サイズに選択され得る。
【0066】
更なる実施形態では、少なくとも約90%の懸濁ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩は、約20μm以下、好ましくは約15μm以下の粒子サイズを有する。最も好ましい実施形態では、少なくとも90%のネビボロール又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子は、約10μm未満のサイズを有し、又は約5μm未満のサイズを有する。眼科投与の場合は特に、少なくとも約90%のネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子は、最先端の粒子サイズ分布技術(例えばレーザー回折、動的光散乱)により測定して、約20μm未満のサイズを有し、好ましくは少なくとも約90%の懸濁粒子が約15μm以下、より好ましくは約10μm以下、又は好ましくは約5μm以下のサイズを有する。
【0067】
ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む医薬組成物は、特に半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に懸濁された場合、特に懸濁粒子のサイズに関連して有利な安定性を示す。縣濁液の形態の他の医薬組成物により知られるように、懸濁粒子は凝集する場合があり、粒子が互いに引き付ける力に応じて、このように形成された凝集体は再懸濁することがかなり困難であり得る。これに関連した更なる問題は、非均一な粒子サイズを有する懸濁液においては、より小さい粒子が徐々に溶解する傾向がある一方、より大きい粒子は、溶解した材料が表面上に堆積することにより成長する(オストワルド熟成)ことである。その結果、縣濁液の粒子サイズ分布は、時間と共により広くなり得る。特定のサイズを超えて成長する粒子は、意図する使用に適さない場合があり;例えば、それらは注入カニューレを閉塞し、又は、眼科投与の場合、眼球表面を刺激し、若しくは損傷さえもする場合がある。
【0068】
これとは対照的に、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む本発明の医薬組成物は、特に縣濁液の形態で提供される場合、その粒子サイズ分布を有意に変化させることなく長期間保存できることが見出された。従って、縣濁液の形態の、ネビボロール及び/又はその塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む本発明の医薬組成物は、懸濁粒子のそれらの粒子サイズ分布を有意に変化させることなく、長期間、例えば1年まで、又は6ヵ月まで、又は3ヵ月まで、又は2ヵ月まで、又は1ヵ月まで保存することができる。例示的な実施形態において、本発明は、縣濁液の形態の、ネビボロール及び/又はその塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む医薬組成物を提供し、少なくとも約90%のネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子は、室温で3週間保存した後、約15μm以下のサイズを有する。本明細書で使用される用語、室温は、全体において、20~25℃の範囲の温度として理解するべきである。
【0069】
別の例示的な実施形態では、本発明は、縣濁液の形態の、ネビボロール及び/又はその塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む医薬組成物を提供し、少なくとも約90%のネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子は、室温で3週間保存した後、約10μm以下のサイズを有する。
【0070】
先行技術にて知られるいくつかの他の縣濁液とは対照的に、本発明の医薬組成物は、縣濁液の形態で存在する場合、通常、界面活性剤を必要とせず、又は、たとえ必要とする場合であっても、その物理的安定のために少量のみの界面活性剤を必要とする。このことは、界面活性剤が、特に眼に又は注入により投与される場合、刺激及び局所毒性のかなりの可能性を有するため、相当な利点である。好ましい一実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、界面活性剤を実質的に含まない。更なる実施形態では、1つを超える界面活性剤が組み込まれる場合、界面活性剤の総量は、各々、最終組成物の総重量に関連して約5%(w/w)以下、特に約3%(w/w)以下、又は好ましくは約1%(w/w)以下である。更に好ましい実施形態では、量は各々、約0.5%(w/w)以下、又は約0.25%(w/w)以下である。
【0071】
この状況で、本明細書に記載される半フッ化アルカンは、異なる程度の親油性により特徴付けられるフッ化及び非フッ化アルキル(又はアルキレン)基を含むそれらの化学構造に起因して、幾分かの両親媒性の特性を有するが、界面活性剤の範囲内に含まれるとして理解されるものではない。
【0072】
非存在又は少量のみで存在する界面活性剤としては、賦形剤として様々なタイプの医薬組成物中に通常使用されている、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性及び両性界面活性剤、例えば湿潤剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤等が挙げられる。潜在的に有用と考えられる界面活性剤の例としては、チロキサポール、プルロニック(登録商標)F68LF又はLutrol F68、プルロニック(登録商標)L-G2LF及びプルロニック(登録商標)L62D等のポロキサマー、ポリソルベート20及びポリソルベート80等のポリソルベート、ポリをキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、ステアリン酸ポリオキシル、レシチン、精製又は合成リン脂質、並びに2つ以上のそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
本発明の医薬組成物は、例えば液体ビヒクルの特性、例えば粘度を変更するために、約10%(w/v)まで、より好ましくは約5%(w/v)まで、更により好ましくは約2%(w/v)までの範囲で賦形剤、例えば非フッ化有機液体を更に含むことができる。そのような他の液体は、グリセリド油、液体ワックス及び流動パラフィンから選択される油、又は高度の生体適合性を示す有機溶媒、又は1つを超える液体賦形剤の混合物であり得る。
【0074】
上述したような1つ以上の半フッ化アルカンと組み合わせて使用され得る潜在的に有用な油性賦形剤の例は、トリグリセリド油(即ち、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、油綿実油、ヒマシ油、スイートアーモンド油)、鉱物油(即ち、ワセリン及び流動パラフィン)、中鎖トリグリセリド(MCT)、油性脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、油性脂肪アルコール、ソルビトールと脂肪酸のエステル、油性ショ糖エステル、又は眼により生理学的に許容される任意の他の油性物質が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物は、勿論、必要に応じて又は有用な場合、更なる医薬賦形剤を含むことができる。潜在的に有用な賦形剤としては、酸、塩基、抗酸化剤、安定剤、相乗剤、着色剤及び増粘剤が挙げられる。しかしながら、好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物の液体ビヒクルは、いずれの(更なる)賦形剤も含まない。
【0076】
更に、本発明は、微生物学的に安定な、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む医薬組成物、好ましくは眼科用医薬組成物の処方手段を提供する。これは、本組成物の及び上述したような液体ビヒクルに含まれる半フッ化アルカンが、通常、微生物汚染を受けやすくないことに起因する。従って、多数の患者、特に眼科疾患又は状態を患う患者の耐容性がより高い、保存剤を含まない眼科用組成物を処方することが可能である。保存剤を含まない眼科用組成物は、複数回用量又は単回用量フォーマットの両方で提供することができる。
【0077】
従って、本発明の医薬組成物は薬学的に許容され得る保存剤を含み得るが、好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は保存剤を含まない。このことは、本発明の組成物が単回使用のための剤形(単回剤形)のみではなく、特に、複数の用量を有する複数回剤形で提供される場合、特に有用である。
【0078】
更なる実施形態では、水も本発明の医薬組成物中に存在し得るが、好ましくは、最終組成物(最終剤形)を基準として1.0%(w/w)まで、又は更には0.1%(w/w)以下までのみの少量である。好ましい実施形態では、医薬組成物、好ましくは本発明の医薬組成物の液体ビヒクルは、本質的に水を含まないが、残留水は、活性成分ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、特にネビボロール塩酸塩の潜在的な残留水の含有量に起因し得る。本明細書で使用される用語「本質的に」は、もしも存在する場合、本発明の目的に関連して技術的利点又は関連性を与えないように、微量又は残量で存在することを意味する。
【0079】
例えば、本発明のいくつかの実施形態における好ましい半フッ化アルカンとしての1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)又は1-ペルフルオロブチル-ペンタン(F4H5)は、水を全く含まず、又は1-ペルフルオロヘキシル-オクタン若しくは1-ペルフルオロブチル-ペンタンに対する水の最大溶解度以下の含水量を有し;例えば1-ペルフルオロブチル-ペンタンは、水分分析のために当該技術分野で既知の方法、例えばカールフィッシャー滴定方法により決定して、1.6×10-4mg/ml未満の含水量を有する。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、本質的にネビボロール塩酸塩と1-ペルフルオロブチル-ペンタン(F4H5)及び1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)から選択される半フッ化アルカンとからなる。更なる実施形態では、本発明の医薬組成物は、本質的にネビボロール塩酸塩と1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)、より詳細には1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)中に懸濁されたネビボロール塩酸塩からなる。
【0081】
例示的な実施形態において、本発明の医薬組成物は、最終組成物の重量を基準として約90~約99.99%(w/w)、より好ましくは約95~約99.9%(w/w)、より好ましくは97~99%(w/w)、更により好ましくは98~99%(w/w)の、上述した半フッ化アルカン、好ましくはF4H5及びF6H8から選択される半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルからなる。
【0082】
液体縣濁液の形態の本発明の医薬組成物は、従来の方法により調製することができる。原則として、固体ネビボロール及び/又はネビボロール塩、好ましくはネビボロール塩酸塩粒子は、半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に懸濁することができる。或いは、粒子は、活性成分の、典型的には有機溶液(及び、場合により1つ以上の固体賦形剤)を、半フッ化アルカンベースのビヒクルに制御条件下で加えることによりインサイチューで沈殿させることができる。
【0083】
ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、コロイドミル、ジェットミル等の標準的な装置を使用した従来の粉砕又はミリング方法を使用することができる。縣濁液の調製後に粒子サイズを低下させるべき場合、超音波処理、及びコロイドミル又は高圧ホモジナイザー等の様々なタイプのホモジナイザーを使用することができる。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明による組成物中の固体ネビボロール化合物の粒子サイズは、液体縣濁液の形態で提供される場合、最初に、薬物粒子を、上記の実施形態の任意の1つに記載されたような半フッ化アルカンを含み又は半フッ化アルカンからなる液体ビヒクルと組み合わせ、その後、上記の方法いずれかに従ってミリング又は粉砕するステップにより調整される。
【0085】
半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中の懸濁形態のネビボロール化合物を含む医薬組成物は、特に眼科使用のための局所投与に関連して、従来の水性又は半フッ化アルカンベースではない製剤を超えるいくつかの有利な特性を提供する。例えば、従来のペルフッ化化合物が液体ビヒクルとして使用される場合、縣濁液は、分散相及び連続相の相対密度に応じて、分散相の浮揚により又はその沈降により、非常に急速に分離する傾向がある。これは、密であり再分散性が乏しい可能性がある粒子凝集体の急速な形成が付随する。急速な浮揚又は沈降は、正確且つ再現可能な投与を、不可能ではないが非常に困難なものとする。例えば、眼科用縣濁液が振盪後、非常に急速に沈殿する場合、容器全体からの第1の投与は、振盪後すぐに引き出されない場合、容器が逆さまに保持されない限り、意図されるよりも少ない数の薬物粒子を含み、容器が逆さまに保持される場合、意図されるよりも多い薬物粒子が分注されるであろう。同じ容器がほぼ空であり、最後の用量が分注された際、体積当たり引き出される薬物用量は、最初の用量が少ない場合は多すぎ、逆もまた同様であろう。
【0086】
更に、凝集体は、容器の分注チャネル又は開口部を容易に閉塞し、それにより誤った投与をもたらし得る。容器から分注される場合、凝集体はそのサイズ、形状及び硬度に応じて結膜又は角膜の刺激を生じ得る。
【0087】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態によるネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩を含む半フッ化アルカンベースの縣濁液は、細かく分散され、均質なまま留まる。浮揚又は沈降が起こった場合、これはゆっくり起こり、患者が容器の振盪後に用量を引き出すのに十分な時間が残る。大きい凝集体の形成は認められない。浮揚又は沈降後、薬物粒子は、穏やかな振盪により容易に再分散され、それらの元の粒子サイズ分布をほぼ保持するように見える。好ましくは、本発明の医薬組成物は縣濁液であり、ネビボロール及び/又は薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩の粒子は、穏やかな振盪により再分散可能である。
【0088】
ネビボロール化合物の半フッ化アルカンベースの縣濁液のこれらの特性は、眼疾患の処置にネビボロールを使用するための優れた医薬品質及び性能特性をもたらす。患者及び/又は医療提供者に対する利便性のレベルは、大幅に向上する。より重要なことには、投与正確性、即ち投与の精度及び再現性が、他のタイプの医薬縣濁液と比較して大幅に改善される。これにより、より信頼できる治療効果と、過剰投与により起こる悪影響の危険性の低下がもたらされるであろう。
【0089】
半フッ化アルカン中に懸濁されたネビボロール又はネビボロール塩酸塩の懸濁液の形態の、本明細書に記載される組成物の驚くべき更なる利点は、点眼器等のドロッパーから分注された際に、非常に小さい液滴を形成するように思われることである。理論に束縛されることを望まないが、小さい液滴サイズは、半フッ化アルカンの密度、粘度及び表面張力の点でのそれらの独自の特性の相互作用の結果であると考えられる。いずれの場合でも、眼内への局所投与の場合、流体を受容及び保持する涙嚢の容量が極めて限られるため、小さい液滴又は体積の投与は非常に有利であると考えられる。実際に、水又は油に基づく従来の点眼製剤の投与が、すぐに、投与された薬のかなりの部分及び幾分かの涙液の放出をもたらすことは非常に一般的である。同時に、投与された用量の一部が、鼻涙管を介して全身に吸収される危険性が存在する。従って、有効用量の活性成分が、非常に小さい液滴として分注され得る小さい体積の液体に組み込まれ得る場合、これもまた投与の信頼性及び再現性の大幅な向上に寄与し、治療の安全性及び有効性が向上する筈である。
【0090】
半フッ化アルカンの使用に基づく本発明の尚更なる利点は、それらが投与後の最適に調整された蒸発挙動のために設計又は混合できることである。従って、ネビボロール又はその塩を、液体ビヒクルがその後蒸発により排除されるやり方で、眼に効率的に送達する眼科用組成物を処方することが可能である。このことは、容易に蒸発しないため非生理学的残留物を投与部位、例えば涙嚢内に形成する油性又はペルフッ化点眼ビヒクルとは非常に対照的である。
【0091】
第2の態様において、本発明は、医薬として使用するための、本発明の第1の態様による医薬組成物、即ち:
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む医薬組成物を提供する。
【0092】
本発明の第1の態様に関して上述したような、その全実施形態を含む医薬組成物は、対象の眼、好ましくはヒト対象の眼に関する疾患若しくは状態、又はそれに関連した任意の症状の治療又は予防に特に有用である。
【0093】
本発明の医薬組成物は、眼科用組成物として特に有用であり、対象の眼に投与することができる。より詳細には、本発明の医薬組成物は、対象の眼、例えば患者の眼瞼、眼嚢、眼の表面及び/又は眼科組織に局所投与することができる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、患者の眼の外表面に、又は医薬組成物をそれを必要とする患者の眼に投与する患者若しくは他の人により容易に接近可能な眼科組織に局所投与することができる。
【0094】
本医薬組成物は、特に低又は高粘度の液体として使用される場合(通常、1~3.5mPa sの範囲)、有利には液滴の形態で、又は噴霧により、又は注入により投与され得る。しかしながら、最も好ましくは、本発明の液体医薬組成物は、特に縣濁液の形態で提供される場合、眼に局所投与される液滴、より詳細には点眼薬として投与され得る。
【0095】
疾患の程度に応じて、又は、処置される患者の両眼が冒されているか否かに応じて、本眼科用医薬組成物の液滴又は点眼薬は、患者の片眼のみ又は両眼に投与され得る。本医薬組成物は、従来のドロッパーから投与される場合、通常約5~約15μlの範囲の体積の液滴サイズで提供される。この小さい液滴サイズは、通常、滴状での(dropwise)投与を容易にし、更に本発明の医薬組成物の正確な投与量を容易にする。従って、本発明の眼科用医薬組成物は、単一の液滴として、1眼当たり約5~15μl/用量の体積、好ましくは1眼当たり約8~15μl/用量の体積、より好ましくは1眼当たり約9~12μl/用量の体積、更により好ましくは1眼当たり約10~12μl/用量の体積、最も好ましくは1眼当たり約11μl/用量の体積で投与される。
【0096】
必要性に応じて、本発明による組成物は、1眼当たり1回(qd)、2回(bid)、3回(tid)又は4回(qid)/日で投与される。好ましくは、本発明による組成物は、1眼当たり2回/日までで投与される。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、1日2回(bid)投与される。より好ましい実施形態では、本発明の組成物は、1日1回(qd)投与される。
【0097】
本発明による医薬組成物は、緑内障、眼圧の上昇(IOP)、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置に特に有用である。
【0098】
本発明は、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩を含む安定な液体医薬組成物、特に安定な液体縣濁液を提供する。これらの組成物は、局所投与することができ、また既知の液体製剤と比較して少ない投与量での活性成分ネビボロールの投与を可能にし、それにより、特に緑内障の処置における前記既知の液体製剤の活性成分及び追加の構成成分に関連した副作用を低減する。
【0099】
これに基づいて、本発明の使用のための医薬組成物は、医薬組成物に関連した、上述した液滴サイズ及び目標投与量の有意な低下を可能し、従って、上記に概略したように、緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置における使用のために投与されるネビボロールの1日の総用量の有意な低下を可能にする。従って、緑内障、眼圧の上昇(IOP)、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置における使用のための本医薬組成物の好ましい実施形態において、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩、好ましくはネビボロール塩酸塩は、0.3~1.5%(w/v)の濃度、又は好ましくは0.5~1.0%(w/v)の濃度で液体ビヒクル中に懸濁される。前記好ましい実施形態において、液体ビヒクルは、式(II)に定義された半フッ化アルカン、又は上記に定義された半フッ化アルカンの任意の1つ、例えば1-ペルフルオロブチルペンタン又は1-ペルフルオロヘキシルオクタンから選択される半フッ化アルカンを含み又はそれから本質的になる。更なる実施形態では、本発明による使用のための医薬組成物は、1眼当たり10~12μlの投与量で投与されてもよく、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩は、少なくとも0.3%(w/v)の濃度で液体ビヒクル中に懸濁され得る。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、1眼当たりに投与されるネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の(単回)用量は、約45~約120μg、好ましくは約50~約110μg、更により好ましくは約55~110μgである。より好ましい実施形態では、緑内障、眼圧の上昇(IOP)、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置における使用のための医薬組成物は、a)半フッ化アルカン、好ましくはF6H8中に懸濁されたネビボロール塩酸塩を含み、1眼当たりに投与されるネビボロール塩酸塩の(単回)用量は、約45~約120μg、より好ましくは約50~約110μg、更により好ましくは約55~110μgである。
【0101】
別の実施形態では、緑内障、眼圧の上昇(IOP)、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置に使用するための医薬組成物は、付随してドライアイ疾患及び/又は高血圧症及び/又は心臓関連疾患を患う対象に投与される。従って、緑内障、眼圧の上昇(IOP)、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置に使用するための医薬組成物は、ドライアイ疾患及び/又は高血圧症及び/又は心臓関連疾患等の併存症を悪化させないことにおいて効果的である。
【0102】
別の好ましい実施形態では、緑内障、眼圧の上昇(IOP)、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置に使用するための医薬組成物は、非選択的ベータ遮断薬を用いた緑内障又は高眼圧症の処置に由来する副作用の予防において効果的であり、前記副作用は、慢性閉塞性気道疾患及び/又は気管支痙攣及び/又はドライアイ症状の悪化である。第3の態様において、本発明は、緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置方法を提供し、該方法は、本発明の第1の態様による医薬組成物、即ち:
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む医薬組成物を、処置を必要とする対象の眼に投与することを含む。
【0103】
従って、本発明のこの態様による方法は:

(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む組成物を提供することと、
-前記組成物を対象又は患者の眼の表面に局所投与することと、を含む。
【0104】
本発明のこの態様による方法については、本発明の他の態様に関連して上述した全実施形態及び好ましい実施形態が各々適用されることを理解するべきである。一実施形態における対象又は患者は、ヒトであり得る。別の実施形態では、対象は、獣医学対象又は患者であり得る。
【0105】
本発明による医薬組成物は、全身適用の必要なく、ベータ1受容体遮断薬ネビボロール又はその薬学的に許容され得る塩、特にネビボロール塩酸塩を、対象又は患者の眼の組織又は液体に直接投与及び送達し、又は輸送する可能性を提供する。活性化合物ネビボロール又はネビボロール塩酸塩が、上述した半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に懸濁された粒子の形態で投与される場合は特に、高濃度の活性化合物が比較的少量の組成物中で送達され得る。
【0106】
また更なる態様において、本発明は、本発明の第1の態様による医薬組成物、即ち:
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む医薬組成物の、
緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置のための医薬の製造のための使用を提供する。
【0107】
また更なる態様において、本発明は、本発明の第1の態様に関連して上述した医薬組成物、即ち:
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと
を含む医薬組成物と、
医薬組成物を保持するように適合された容器とを含む、医薬キットを提供する。好ましくは、本発明の医薬組成物を含む容器は、医薬組成物の投与に適合された液滴ディスペンサー又は装置を更に含む。
【0108】
本発明のこの態様によるキットの特定の実施形態において、容器は、組成物を対象又は患者の眼に局所投与するように適合された滴下装置等の分注手段、より詳細には、対象又は患者の眼の表面に対する滴状での局所投与のための分注手段を有する。好ましい一実施形態では、分注手段は、1滴当たり約15μl未満の体積で医薬組成物を滴状で分注するように適合されている。更なる実施形態では、分注手段は、各々、約13μl、12μl、又は11μl未満の体積を有する液滴を分注するように適合されている。特に、12μl未満の液滴体積は、現在、好ましい投与部位の1つである眼の前部の制限された保持能力の観点から、非常に有用であると考えられている。疑いを避けるために、そのような小さい液滴サイズは、主に、本発明による1つの半フッ化アルカン(又は複数の半フッ化アルカン)を組み込むことにより可能となり、通常約30~60μlの水滴を送達する点眼薬のための通常のドロッパーは、遥かに小さい液滴の半フッ化アルカンベースの製剤を分注することができる。
【0109】
本発明のこの態様によるキットにおいて、容器は、本明細書に記載されるネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルとを含む本医薬組成物の単回用量又は複数回用量を保持することができる。
【0110】
更に、本発明のこの態様によるキットは、患者の眼の表面に滴状で本組成物を局所投与するための容器の使用説明書を更に含むことができる。好ましくは本発明のこの態様によるキットに含まれる使用説明書又は指示書は、患者又は対象の冒された眼への局所投与を行う方法を使用者に指導するのに適した任意の形態であってもよい。これは任意の判読可能又は有形形態、好ましくは印刷形態又は任意の機械若しくはコンピューター判読可能な形態、好ましくは機械判読可能な光学ラベルの形態、例えばバーコード又はQRコード(登録商標)の形態であってもよい。特に好ましい実施形態では、使用指示書は、説明書(instruction leaflet)、製品若しくはパッケージ挿入物又は同封ラベルの形態で提供される。
【0111】
図面の説明
図1は、1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)中の濃度0.5%(w/v)のネビボロール塩酸塩の懸濁液が投与された、水溶液中の濃度0.5%(w/v)のチモロールの製剤に対する下記の実施例4によるインビボでの眼圧試験の測定の結果のグラフ表示である。グラフは、mmHgで測定された平均眼圧(IOP)の時間的進行を示す。
【0112】
図2は、1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)中の濃度1.0%(w/v)のネビボロール塩酸塩の懸濁液が投与された、水溶液中の濃度0.5%(w/v)のチモロールの製剤に対する下記の実施例4によるインビボでの眼圧試験の測定の結果のグラフ表示である。グラフは、mmHgで測定された平均眼圧(IOP)の時間的進行を示す。
【0113】
以下は、本発明により構成される番号付き項目である:
1.
(a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルと:
を含む医薬組成物。
【0114】
2.式(II)
CF(CF(CHCH (II)
(式中、nは2~10の整数であり、mは2~10の整数であり;又は
nは3~5の整数であり、mは4~7の整数である)
の半フッ化アルカンを含む、項目1に記載の医薬組成物。
【0115】
3.半フッ化アルカンが、1-ペルフルオロブチル-ペンタン(CF(CF(CHCH;F4H5)及び1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(CF(CF(CHCH、F6H8)からなる群から選択される、項目1又は2に記載の医薬組成物。
【0116】
4.液体ビヒクルが共溶媒を含む、項目1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【0117】
5.液体ビヒクルが、少なくとも85%(w/w)の半フッ化アルカン又は異なる半フッ化アルカンの混合物を含む、項目1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【0118】
6.液体ビヒクルが、半フッ化アルカン又は異なる半フッ化アルカンの混合物から本質的になる、項目1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【0119】
7.ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩が、半フッ化アルカンを含む液体ビヒクル中に懸濁される、項目1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
【0120】
8.ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩が、濃度0.3~1.5%(w/v)で液体ビヒクル中に懸濁される、項目1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【0121】
9.ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩が、濃度0.45~1.0%(w/v)で液体ビヒクル中に懸濁される、項目1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【0122】
10.ネビボロール塩酸塩の形態のネビボロールを含む、項目1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【0123】
11.組成物が、水及び/又は保存剤を本質的に含まない、項目1~10のいずれかに記載の医薬組成物。
【0124】
12.組成物が、更なる賦形剤を含まない、項目1~11のいずれかに記載の組成物。
【0125】
13.組成物が、界面活性剤を含まない、項目1~12のいずれかに記載の組成物。
【0126】
14.組成物が、ネビボロール塩酸塩と1-ペルフルオロブチル-ペンタン(F4H5)及び1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)から選択される半フッ化アルカンとから本質的になる、項目1~13のいずれかに記載の医薬組成物。
【0127】
15.組成物が、ネビボロール塩酸塩と1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)とから本質的になる、項目1~14のいずれかに記載の医薬組成物。
【0128】
16.少なくとも約90%の、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子が、約15μm以下、又は約10μm以下のサイズを有する、項目7~15のいずれかに記載の医薬組成物。
【0129】
17.少なくとも約90%の、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の懸濁粒子が、室温で3週間保存した後、約10μm以下のサイズを有する、項目7~16のいずれかに記載の医薬組成物。
【0130】
18.医薬として使用するための項目1~17のいずれかに記載の医薬組成物。
【0131】
19.緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置のための、項目18に記載の使用のための医薬組成物。
【0132】
20.組成物が対象の眼に投与される、項目18又は19に記載の使用のための医薬組成物。
【0133】
21.組成物が対象の眼に局所投与される、項目18~20のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【0134】
22.医薬組成物が、1眼当たり8~15μl、好ましくは約10~12μlの投与量で投与される、項目18~21のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【0135】
23.医薬組成物が、1眼当たり10~12μlの投与量で投与され、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩が、少なくとも0.3%(w/v)の濃度で液体ビヒクル中に懸濁される、項目18~22のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【0136】
24.ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩が、0.45~1.0%(w/v)の濃度で液体ビヒクル中に懸濁される、項目18~23のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【0137】
25.組成物が1日2回(bid)まで、好ましくは組成物が1日1回投与される、項目18~24のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【0138】
26.項目1~17のいずれか1つに記載の医薬組成物を、処置を必要とする対象の眼に投与することを含む、緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置方法。
【0139】
27.緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症及び/又はそれに関連する症状の処置のための医薬の製造のための、項目1~17のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【0140】
28.項目1~17のいずれか1つに記載の医薬組成物と、医薬組成物を保持するための容器とを含むキット。
【0141】
29.容器が、医薬組成物を投与するための液滴ディスペンサーを含む、項目28に記載のキット。
【0142】
30.容器が、患者の眼の表面に滴状で局所投与するための分注手段を含み、前記分注手段は、好ましくは、組成物を約15μl未満の体積で滴状で分注するように適合されている、項目29に記載のキット。
【0143】
31.容器が、請求項1~17のいずれかに記載の組成物の単回用量又は複数回用量を保持する、項目28~30のいずれかに記載のキット。
【0144】
32.組成物を患者の眼の表面に滴状で局所投与するための、容器の使用説明書を更に含む、項目28~31のいずれかに記載のキット。
【0145】
33.緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症又はそれに関連する症状の処置方法であって、該方法は、緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症又はそれに関連する症状を有するヒトの眼に、a)ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩と、b)半フッ化アルカンを含む液体ビヒクルとを含む組成物を投与することを含み、ネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩は、好ましくは液体ビヒクル中に懸濁され、単回用量で投与される1眼当たりのネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩の量は、約45~約120μgであり、また前記方法は、緑内障、眼圧の上昇、高眼圧症又はそれに関連する症状の処置において治療的に有効である、方法。
【0146】
34.1眼当たりの組成物目標投与量が、約8~約15μlである、項目33に記載の方法。
【0147】
35.1眼当たりの組成物目標投与量が、約10~約12μl、好ましくは約11μlである、項目33~34のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
36.組成物が、約0.45%~1.0% w/vのネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩を含み;1眼当たり単回用量で投与されるネビボロール及び/又はその薬学的に許容され得る塩が、約55~約110μgであり、1眼当たりの目標投与量が約11μlである、項目33~35のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
37.半フッ化アルカンが、F6H8及びF4H5から選択される、項目33~36のいずれかに記載の方法。
【0150】
38.半フッ化アルカンがF6H8である、項目37に記載の方法。
【0151】
39.組成物が、1日1回投与される、項目33~38のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
40.組成物が、水及び保存剤を実質的に含まない、項目33~39のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
41.組成物が、ネビボロール塩酸塩の形態のネビボロールを含む、項目33~40のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
以下の実施例は、本発明を説明する役割を果たす;しかしながら、これらは本発明の範囲を制限するものと理解されるべきではない。
【実施例
【0155】
実施例1:ネビボロール縣濁液の調製
80mgのネビボロール塩酸塩(Sigma Aldrich;純度100%)を直径2mmのステンレス鋼球で満たした25mL容器に導入した。その後、8mLの1-ペルフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)を加え、容器を閉鎖し、遊星ボールミル(PM 100、Retsch GmbH Germany)を用いてミリングを150rpmで10分間の間隔で3時間行った(向きを変えながら)。ミリング後、それによって形成された縣濁液をガラスバイアルに移動し、Vortexシェーカー上で最小30秒間振盪し、密封した。これにより、F6H8中の1.0%(w/v)ネビボロール塩酸塩縣濁液(10mg/mL)が得られた。
【0156】
同じ手順に従って、F6H8に代えて8mLのF4H5を使用して、1-ペルフルオロブチル-ペンタン(F4H5)中の1.0%(w/v)ネビボロール塩酸塩縣濁液(10mg/mL)を調製した。
【0157】
10mg/mLネビボロール縣濁液をガラスバイアル中で室温で保存し、粒子サイズ分布(PSD)をレーザー回折(HELOS 2412、50mLキュベットを用いて実行)により決定した。下記の表1に、室温で1日保存した後の異なるネビボロール縣濁液に関する粒子サイズ分布を示す。
【0158】
【表1】
【0159】
50:体積ベースで決定されたメジアン粒径、即ち粒子の50体積%が所定の直径よりも小さく、50%が大きい。
90:体積ベースで決定された、90%の累積アンダーサイズ分布に対応する粒径、即ち90%の粒子が所定値X90よりも小さい直径を有する。
99:体積ベースで決定された、99%の累積アンダーサイズ分布に対応する粒径、即ち99%の粒子が所定値X99よりも小さい直径を有する。
【0160】
実施例2:ネビボロール縣濁液の安定性評価
上記の実施例1に従って調製されたネビボロール縣濁液を、室温(20~25℃)で3週間保存した。続いて、粒子サイズ分布(PSD)をレーザー回折(Helios 2412、50mLキュベットを用いて実行)及び顕微鏡分析により再検討した。下記の表2は、室温(20~25℃)で3週間保存した後の異なるネビボロール縣濁液に関する粒子サイズ分布を示す。
【0161】
【表2】
【0162】
実施例3:ネビボロール縣濁液の希釈実験
濃度10mg/mLのF4H5又はF6H8中のネビボロール縣濁液を、ネビボロール塩酸塩(CAS No.152520-56-4;Chemos GmbH & Co.KG、Regenstauf)を使用して、上記の実施例1に従って調製した。縣濁液をF4H5又はF6H8のいずれかのアリコートを加えることにより濃度5mg/mLに希釈した。得られた縣濁液は、外観検査により調製後に均質であり、室温で5日間保存した。その後、縣濁液は分離及び混濁したが、沈殿した縣濁液の再懸濁は容易に達成された。
【0163】
室温(20~25℃)で5日間の保存後、下記の表3にまとめるように、粒子サイズ分布をレーザー回折(HELOS 2412、50mLキュベットを用いて実行)により決定した。
【0164】
【表3】
【0165】
上述したボールミリングプロセスにより調製した、各々濃度5mg/ml及び10mg/mLの、純粋なF4H5及びF6H8中の全ネビボロール塩酸塩縣濁液は、光学的外観、縣濁液の均質性、及び沈殿した縣濁液の再均質化への適合性を示し、このことは動物モデルにおける前臨床試験に関してポジティブにランク付けされた。
【0166】
F6H8中のネビボロール塩酸塩5mg/mL縣濁液製剤の安定性を、8週間にわたって試験した。サンプルを閉鎖ガラスバイアル中で室温で保存した。顕微鏡及びDLSにより測定した外観及び粒子サイズ分布は変化しなかった。
【0167】
対応するF6H8中のネビボロール塩酸塩10mg/ml製剤の安定性を、同じ設計で4週間にわたって試験した。有意な変化は検出されなかった。
【0168】
実施例4:動物試験における眼圧(IOP)の測定
水溶液の形態で投与された非選択的ベータ遮断薬チモロールと比較して、IOP(眼圧)を低下させる能力に関してネビボロールの薬力学を評価するために、正常血圧の犬を使用して動物試験を行った。試験設定及び設計は、以下の通りであった。
【0169】
総数8匹の犬を、全身の健康、体重、眼科検査の結果、IOPチャレンジに対する応答、及び以下の基準に基づいて、試験の参加のために選択した:
-健康、正常な眼球表面;
-試験前の少なくとも1か月間に侵襲性眼科手術;特に一般に角膜又は前眼部セグメントに関与する手術なし;
-少なくとも1か月間、局所又は全身コルチコステロイド処置なし;
-臨床試験に使用される典型的なウォッシュアウト期間と等しい、以前の局所眼球試験薬物からのウォッシュアウト(少なくとも1週間)。
【0170】
試験は、下記の表4にまとめた計画に従って行われた。チモロール溶液又はネビボロール縣濁液の各々の局所眼球用量を、マイクロピペットにより角膜の中央又は上部に投与し、眼の表面全体に広がらせた。用量の投与後、眼を自然に閉鎖させた。各動物を、眼をこすらないように約1分間拘束した。
【0171】
【表4】
【0172】
第1の試験では、右眼に投与されたチモロール(5mg/mL)の水溶液に対して、F6H8中のネビボロール塩酸塩(5mg/mL、4.6mg/mlネビボロールに変換)の懸濁液を左眼(OS)に投与した。投与は、1日1回、8日間行った。眼圧(IOP)を1、2、3、6、及び7日目の投与後0(投与直前)、2、4及び6時間;8日目の投与後-1、0(投与直前)、1、2、4、6、24及び48時間に、眼圧計(TonoVet)を使用して測定した。1眼当たり3回の読み取りを行った。結果を、上述した処置中の平均眼圧(IOP)の推移を示す図1にまとめる。
【0173】
第2の試験では、右眼に投与されたチモロール(5mg/mL)の水溶液に対して、F6H8中のネビボロール塩酸塩(10mg/mL;9.2mg/mlネビボロールに変換)の懸濁液を左眼(OS)に投与した。投与は、1日1回、8日間行った。眼圧(IOP)を1、2、3、6、及び7日目の投与後0(投与直前)、2、4及び6時間;8日目の投与後-1、0(投与直前)、1、2、4、6、24及び48時間に、眼圧計(TonoVet)を使用して測定した。1眼当たり3回の読み取りを行った。結果を、上述した処置中の平均眼圧(IOP)の推移を示す図2にまとめる。
【0174】
試験分析:
図1に示すように、F6H8中の5mg/mlネビボロール塩酸塩(50.5μgネビボロール、0.12μmol)11μlの投与は、1眼当たり30μlの目標投与量で投与された5mg/mlチモロール(150μgチモロール、0.47μmol)の溶液と同等の眼圧の低下をもたらした。
【0175】
実験データは、本発明による組成物を使用することにより、1眼当たり投与される単回用量の約74%の低下に変換される、より少ない目標用量の活性成分(0.12μmolネビボロール対0.47μmolチモロール)を使用した場合でも、市販の非選択的ベータ遮断薬の溶液と同等のIOPの低下を達成することが可能であることを示す。更に、より少ない目標用量は、例えば11μlの体積、即ち30μlよりも相当少ない体積で投与することができ、従って排出され又は全身に吸収される組成物の量を低下させることができる。
【0176】
図2に示すように、F6H8中の10mg/mlネビボロール塩酸塩(100.9μgネビボロール、0.25μmol)11μlの投与は、1眼当たり30μlの目標投与量で投与された5mg/mlチモロール(150μgチモロール、0.47μmol)の溶液と同等の眼圧の低下をもたらした。
図1
図2