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特許7353293均一な剛性を有するポリマーゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法
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  • 特許-均一な剛性を有するポリマーゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】均一な剛性を有するポリマーゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/02 20060101AFI20230922BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230922BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230922BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20230922BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230922BHJP
【FI】
B05D7/02
B05D7/24 302C
B05D3/00 D
B32B9/00 Z
B82Y5/00
B82Y40/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020548699
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019056168
(87)【国際公開番号】W WO2019175177
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】1852101
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アリス・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ・ミグダル
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530035(JP,A)
【文献】特表2016-539699(JP,A)
【文献】特開2006-272002(JP,A)
【文献】国際公開第2013/079231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
A61L15/00-33/18
B32B1/00-43/00
B82Y5/00-99/00
C08J7/04-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法であって、
a)ポリマーマトリックス及び前記ポリマーマトリックス内の溶媒を含むゲルを用意する工程であって、前記ポリマーマトリックスが、前記溶媒の存在下で膨潤可能な3次元網目構造を形成し、1バール及び25℃での、前記溶媒中の前記ポリマーマトリックスの溶解度が1g/l未満であり、剛性値Riの標準偏差σが20%未満であり、剛性値Riは、原子間力顕微鏡法によって、工程a)で用意された前記ゲルの表面全体にわたって分布したn個の点で測定され、nは50よりも大きく、標準偏差σは、式(I):
【数1】
[式中、「平均値」は、剛性値Riの算術平均であり、式(II):
【数2】
で定義される通りである]
で定義される通りである、工程、次いで、
b)前記ゲルの表面にナノ物質を堆積させる工程であって、前記ナノ物質が、前記ゲルの孔の平均径以上の平均径を有する、工程、次いで、
c)少なくとも溶媒含有量が経時的にもはや変化しなくなるまで、前記ゲルから前記溶媒を蒸発させる工程であって、但し、蒸発の開始時に、前記溶媒中の無機塩の含有量が6g/l未満である、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記剛性値が、対称分布±10%に従い、但し、前記分布の算術平均「平均値」及び中央値「中央値」は、式(III):
【数3】
で定義される偏差eが10%未満であるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲルの前記ポリマーマトリックスが、
- ポリアクリルアミド
- ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びエチレングリコール又はプロピレングリコールのコポリマー、これらは任意選択で、(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる単位を含む
- 任意選択で(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含む、多糖類
- ジアクリレート化合物及び/又は(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる(コ)ポリマー
- (メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含むポリビニルアルコール
- (メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含むデキストラン
- ポリプロピレンフマレート及びポリ(プロピレンフマレート-co-エチレングリコール)
- ポリシロキサン、並びに
- これらの組み合わせ
から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲルの前記ポリマーマトリックスが、ポリアクリルアミドから選択されるポリマーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲルの前記ポリマーマトリックスが、アクリルアミド及びN,N'-メチレンビスアクリルアミドの重合から得られるポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲルの前記ポリマーマトリックス内に存在する前記溶媒が、水性溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水性溶液が水である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲルの前記ポリマーマトリックス内に存在する前記溶媒が、ペンタン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、及びキシレンの中から選択され、前記ポリマーマトリックスが、ポリ(ジメチルシロキサン)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ物質が、
- タンパク質、ペプチド、及びその混合物
- 多糖類、並びに
- ナノ粒子
の中から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ物質が、金属、半導体、及びポリマーナノ粒子の中から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ物質が、多糖類、タンパク質、ペプチド、及びその混合物の中から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ物質が、インテグリンを介した細胞接着を誘導するタンパク質及び/又はペプチドの中から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ物質が、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、又はRGD型ペプチドの中から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲルに、タンパク質及び/又はペプチド及び/又は多糖類を共有結合グラフト化する工程d)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
工程c)の後、溶媒で洗い流す工程e)を含み、溶媒和形態のゲルが得られる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な剛性を有するポリマーゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法、得ることができるゲル、及びその用途に関連する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野において、特に、生物学、薬学、又は診断法において、その表面がナノ物質(タンパク質、ナノ粒子等)を含む基材を備えるデバイスが求められている。
【0003】
「硬い」基材、例えば、ガラス又はシリコンの表面にナノ物質を堆積させることは比較的容易である。しかし、表面とナノ物質との間の結合力を強化して、デバイスの寿命を延ばすために、ガラス又はシリコンを、より柔らかい基材、例えば、ポリマーマトリックスをベースにしたゲル、例えば、ヒドロゲルに置き換えることが望ましい。
【0004】
ポリマーマトリックスをベースにしたゲルの密度は、その多孔性に直接関連する。ゲルがより多孔性であるほど、あまり剛体ではなくなり、逆の場合も同様である。
【0005】
ゲルの表面に堆積させたナノ物質の表面密度を制御することは、細胞培養の分野における課題であり、生理学的な剛性(kPa程度)の基材の表面で、表面化学の定量的な制御を維持しながら、細胞を培養することが望ましい。この必要性は、特に、幹細胞工学を要求し、薬理学スクリーニングの分野で浮上する。細胞は、その生化学的反応を、その化学的環境に適応させるのに加え、その環境の剛性に適応させる。したがって、in vitro細胞培地及び埋め込み型媒体の剛性及び化学的性質を独立して制御することが必要である。
【0006】
既存のゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法は、ゲルの化学構造に依存する。より正確には、3種の技術が使用される。
【0007】
第1の技術によれば、ポリマーマトリックスのポリマーを調製するのに用いられるモノマーは、ナノ物質を含むように修飾される。この場合、得られたポリマーの表面密度の制御は可能であるが、ゲルで得られたナノ物質の表面密度は、ゲルの剛性/多孔性に直接関係する。
【0008】
他の2種の技術は、完全に、又は部分的に溶媒和されたゲルの表面に、ナノ物質を堆積させ、次いでグラフト化することに基づく:
- ナノ物質の溶液を、表面を任意選択で(反応中間体をグラフト化することによって、及び/若しくは放射線によって)予め活性化させたゲルと接触させる;又は
- ナノ物質を修飾して、ゲルの表面と反応性にし、溶液の形態でゲルの表面に添加する。
【0009】
この2つの場合において、例えば、ナノ物質の溶液を取り出して、ナノ物質のグラフト化反応を実施するとき、方法が、一般に避けることができない、部分的な乾燥工程を含むと、グラフト化ナノ物質の表面密度は、ゲルの多孔性/剛性に応じて決まる。実際に、ゲルは、多孔質材料であり、したがって、脱水に極めて影響を受けやすく、特有の乾燥時間は、ゲルの多孔性/剛性に応じて、一般に数秒程度(典型的には、0.1kPa程度の剛性を有するゲルについて)から数分程度(典型的には、25kPa程度の剛性を有するゲルについて)である。他方で、ゲルが、方法の間に、完全に溶媒和されたままであるならば、堆積させたナノ物質の表面密度は、ゲルの剛性/多孔性に無関係である。しかし、この2種の技術は、表面に対するナノ物質の拡散によって制限されるので、ナノ物質が、ゲルの表面に接近し、相互作用する可能性が低いならば、ナノ物質の堆積効率は非常に低い。したがって、この2種の技術では、堆積したナノ物質の表面密度を容易に制御することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2013/079231号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Enas M. Ahmed、Journal of Advanced Research、2015、6、105~121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、ゲルの剛性に依存することなく、堆積したナノ物質の表面密度を制御することを可能にする、ゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目標を達成するため、第1の目的によれば、本発明は、ゲルの表面にナノ物質を堆積させる方法であって、
a)ポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス内の溶媒を含むゲルを用意する工程であって、ポリマーマトリックスが、上記溶媒の存在下で膨潤可能な3次元網目構造を形成し、1バール及び25℃での、溶媒中のポリマーマトリックスの溶解度が1g/l未満であり、ゲルが示すマイクロメートルスケールでの剛性のばらつきが10%未満である、工程、次いで、
b)ゲルの表面にナノ物質を堆積させる工程であって、上記ナノ物質が、ゲルの孔の平均径以上の平均径を有する、工程、次いで、
c)少なくとも溶媒含有量が経時的にもはや変化しなくなるまで、ゲルから溶媒を蒸発させる工程であって、但し、蒸発の開始時に、溶媒中の無機塩の含有量が6g/l未満である、工程
を含む、方法に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】均一な密度のゲルからの溶媒の蒸発の1つの動態を示す図である。
図2】均一な密度のゲルからの溶媒の蒸発の別の動態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
方法は、ポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス内の溶媒を含むゲルを用意する工程a)であって、ポリマーマトリックスが、上記溶媒の存在下で膨潤可能な3次元網目構造を形成し、1バール及び25℃での、溶媒中のポリマーマトリックスの溶解度が1g/l未満である、工程a)を含む。
【0016】
ゲルは、ポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス内の溶媒を含み、ポリマーマトリックスは、上記溶媒の存在下で膨潤可能な3次元網目構造を形成する。したがって、ポリマーマトリックスは、その構造内の溶媒の割合を保つことができる。一般に、25℃での、ゲルのポリマーマトリックス内の最大溶媒含有量(最大溶媒質量の、最大溶媒質量及び乾燥ポリマーマトリックス質量の合計に対する比として計算される)は、20~100%、好ましくは38~100%で変化する。最大含有量を超えて溶媒を添加し続ける場合、添加された溶媒は、もはやポリマーマトリックスに取り込まれない。
【0017】
ゲルのポリマーマトリックスのポリマーは、ホモポリマー性(ホモポリマーから形成された3次元網目構造)、コポリマー性(コポリマーから形成された3次元網目構造)、又はマルチポリマー性(3次元相互侵入高分子網目構造(IPN))であってもよい。
【0018】
一般に、ポリマーマトリックスは、
- ポリアクリルアミド
- ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びエチレングリコール又はプロピレングリコールのコポリマー、これらは任意選択で、(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる単位を含む
- 任意選択で(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含む、多糖類
- ジアクリレート化合物及び/又は(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる(コ)ポリマー
- (メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含むポリビニルアルコール
- (メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含むデキストラン
- ポリプロピレンフマレート及びポリ(プロピレンフマレート-co-エチレングリコール)
- ポリシロキサン、例えばポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、並びに
- これらの組み合わせ
の中から選択されるポリマーを含む(又は、それからなる)。
【0019】
特に、アクリルアミド及びN,N'-メチレンビスアクリルアミドの重合から得られるポリアクリルアミドをベースにしたポリマーマトリックスがとりわけ好ましい。
【0020】
用語「(メタ)アクリレート化合物」は、アクリレート又はメタクリレートから誘導される化合物、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、スルホプロピルアクリレートから選択される化合物を意味すると理解され、ここで、酸は、塩の形態、特にナトリウム又はカリウムの形態であってもよい。
【0021】
溶媒は、1バール及び25℃での、ポリマーマトリックスの溶解度が1g/L未満であり、ポリマーマトリックスが膨潤可能な、任意の溶媒であることができる。
【0022】
例えば、溶媒は、水溶液、又はアルコール、アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン)、ケトン(例えば、アセトン)、及び芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレン)の中から選択される有機溶媒であってもよい。
【0023】
一実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリシロキサン、例えばポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を含み(又は、それからなる)、その一方で溶媒は、ペンタン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、又はキシレンの中から選択される。
【0024】
最も一般的な溶媒は水溶液であり、好ましくは、任意選択で脱イオン化された、水である。そして、ゲルはヒドロゲルである。ヒドロゲルの例は、Enas M. Ahmedによる概説(Journal of Advanced Research、2015、6、105~121)において見出される。ポリマーマトリックスは、一般に、
- 例えば、アクリルアミド及びN,N'-メチレンビスアクリルアミドの重合から得られるポリアクリルアミド
- ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びエチレングリコール又はプロピレングリコールのコポリマー、これらは任意選択で、(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる単位を含む
- 任意選択で(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含む、多糖類
- ジアクリレート化合物及び/又は(メタ)アクリレート化合物の重合から得られる(コ)ポリマー
- (メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含むポリビニルアルコール
- (メタ)アクリレート化合物の重合から得られる繰り返し単位を含むデキストラン
- ポリプロピレンフマレート及びポリ(プロピレンフマレート-co-エチレングリコール)、並びに
- これらの組み合わせ
の中から選択されるポリマーを含む(又は、それからなる)。
【0025】
工程a)で用意されたゲルの剛性は均一である。工程a)で用意されたゲルにおいて、剛性値Ri(iは1からnまで変化する)の標準偏差σは、好ましくは20%未満、典型的には15%未満、特に10%未満、とりわけ5%未満、好ましくは1%未満であり、剛性値Riは、原子間力顕微鏡法によって、工程a)で用意されたゲルの表面全体にわたって分布したn個の点で測定され、nは50よりも大きく、典型的には100よりも大きく、特に1000よりも大きく、好ましくは10000よりも大きく、標準偏差σは、式(I):
【0026】
【数1】
【0027】
[式中、「平均値」は、剛性値Riの算術平均であり、式(II):
【0028】
【数2】
【0029】
で定義される通りである]
で定義される通りである。
【0030】
好ましくは、上記剛性値Riは、±10%、特に±5%、好ましくは±1%で対称分布に従い、但し、上記分布の平均「平均値」及び中央値「中央値」は、式(III):
【0031】
【数3】
【0032】
で定義される偏差eが10%未満、特に5%未満、好ましくは1%未満であるものである。剛性値の標準偏差σは上記で定義されたもの、又はそれ以外のものである。
【0033】
中央値は、一連のn個の順序づけられた剛性値Riを、同数の要素を有する2つの部分に分けることができる、「中央値」剛性値である。故に、剛性値Riの集合は、同数の要素を有する2つの部分: 一方は、全て「中央値」以下である剛性値Riの半分であり、他方は、全て「中央値」以上である剛性値Riの残り半分、に分けられる。
【0034】
値eがより低いほど、剛性値Riは、より良好に対称分布に従う。完全な対称剛性分布は、偏差e0を有する。
【0035】
好ましくは、上記剛性値Riは、±10%、特に±5%、好ましくは±1%で正規分布に従い、但し、上記分布の平均「平均値」及び中央値「中央値」は、差eが10%未満、特に5%未満、好ましくは1%未満であるものである。
【0036】
好ましくは、n個の点は、ゲルの表面全体にわたってランダムに分布している。
【0037】
好ましくは、マイクロメートルスケールでの、その剛性のばらつきは、10%未満、好ましくは5%未満である。剛性は、工程b)でナノ物質を堆積させるゲルの表面で測定される。言い換えれば、1μm離れたゲルの2つの点の剛性の差は、好ましくは10%を超えない。
【0038】
好ましくは、センチメートルスケールでのゲルの剛性のばらつきは、20%未満、特に15%未満、好ましくは10%未満である。
【0039】
特に好ましくは、ゲルの剛性のばらつきは、20%未満、特に15%未満、好ましくは10%未満である。言い換えれば、2つの点[工程b)の間にナノ物質を堆積させる、ゲルの表面のどこでもよい]の剛性の差は、20%、特に15%、好ましくは10%を超えない。
【0040】
ゲルは、典型的には1μm2以上の表面積、好ましくは10μm2以上の表面積を有する。1μm2未満の領域では、剛性のばらつきを測定するのがより難しくなる。ナノ物質のサイズが500nm~1000nmである場合、10μm2よりも小さい表面では、ナノ物質の表面密度のばらつきを測定するのがより難しくなる。更に、ゲルの表面は、一般に1000mm2以下である。均一である、ナノ物質の表面分布について、実際、ゲル、蒸発させる溶媒の液滴、及び蒸発に用いたガスの間の界面での、毛細管力の作用を制限することが好ましい。これらの毛細管力は、実際、液滴の中心へ向かってナノ物質を引き寄せる傾向があり、端部から中心へ向かって濃度勾配を引き起こす。この影響は、ゲルの表面が1000mm2を超える場合、観測され得る。
【0041】
ゲルの表面が大きいほど、多数の点での剛性の測定は容易になる。一般に、ゲルの表面が小さいほど、偏差eは小さくなる。
【0042】
ゲルの表面が80mm2未満である(表面が円形であるならば、その直径は10mm未満である)場合、分布は、少なくとも50点超、好ましくは少なくとも500点超で測定され、一方で偏差eは、好ましくは5%未満、又は1%未満である。
【0043】
ゲルの表面が80mm2~1000mm2である(表面が円形であるならば、その直径は10mm~35mmである)場合、分布は、好ましくは、少なくとも100点超、特に少なくとも1000点超、理想的には少なくとも10000点超で測定され、一方で差eは、好ましくは10%未満、又は5%未満である。
【0044】
ゲルの剛性は、一般に、0.01kPa~500kPa、特に0.05kPa~100kPa、好ましくは0.1kPa~50kPaである。
【0045】
局所剛性、故に剛性のばらつきは、原子間力顕微鏡法(AFM)によって、例えば、出願WO2013/079231号の29頁及び30頁に記載された手順に従って測定することができる。
【0046】
方法は、ゲルの表面にナノ物質を堆積させる工程b)を含む。ナノ物質は、好ましくは、
- タンパク質、ペプチド、及びその混合物
- 多糖類、並びに
- ナノ粒子、特に、金属、半導体、又はポリマーナノ粒子
の中から選択される。
【0047】
ナノ物質は、バクテリアであってもよい。
【0048】
ナノ物質は、一般に細胞ではない。一実施形態において、ナノ物質は、生きた組織ではない。
【0049】
金属は、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニド、遷移金属、及びいわゆる「卑」金属の中から選択され、好ましくは、金、銀、及びインジウムの中から選択される。
【0050】
半導体は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)である。
【0051】
ポリマーナノ粒子は、例えば、ポリスチレンで、又はラテックスで製造することができる。
【0052】
タンパク質、ペプチド、多糖類、及びその混合物、特に、インテグリンを介した細胞接着を誘導するタンパク質及び/又はペプチドは、好ましいナノ物質であり、こうしたタンパク質は、場合により、フィブロネクチン、フィブリノゲン、コラーゲン、又はラミニン、ビトロネクチン、又はRGD型ペプチドである。タンパク質及び/又はペプチド及び/又は多糖類は、ゲルのポリマーマトリックスと反応することが可能な官能性を有するように、修飾することができる。
【0053】
接頭語「ナノ」は、ナノ物質の平均径が、1~1000nm、特に2~500nm、例えば2~250nmであることを意味する。金ナノ粒子は、典型的には、平均径5~400nmを有する。銀又はインジウムのナノ粒子は、典型的には、平均径2~10nmを有する。
【0054】
工程b)で堆積させたナノ物質は、ゲルの孔の平均径(すなわち、工程b)の条件の下、ナノ物質を堆積させる場合の孔の平均径)以上の平均径を有する。これにより、ナノ物質は、ゲルの表面に留まることができ、ポリマーマトリックスに、沈下せず、又は僅かに沈下し得るだけである。実際、ナノ物質が、相当な割合でゲル中に浸透し得る場合、脱溶媒和ゲルの表面に堆積させたナノ物質の表面密度は、孔が小さくなるにつれて、更により高い。この場合、ナノ物質の表面密度は、ゲルの剛性/多孔性と無関係ではない。
【0055】
好ましくは、工程b)で堆積させたナノ物質は、ゲルの平均孔径よりも、少なくとも2倍大きい、特に、少なくとも3倍大きい、特に、少なくとも4倍大きい、好ましくは、少なくとも5倍大きい、例えば、少なくとも10倍大きい、平均径を有する。
【0056】
ゲルの平均孔径は、中性子散乱又は小角X線散乱によって測定することができる。平均孔径は、典型的には、2~4オングストロームの領域である。
【0057】
タンパク質又はペプチドの平均径は、典型的には、ゲル電気泳動によって測定される。多糖類の平均径は、一般に、光散乱と連結させた高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(流体力学的半径を決定することを可能にする)によって測定される。ナノ粒子の平均径は、典型的には、透過電子顕微鏡法(TEM)及び走査電子顕微鏡法(SEM)によって測定される。
【0058】
一般に、工程b)の間、ナノ物質は、ナノ物質及び溶媒を含む混合物の形態で堆積させる。この混合物用の溶媒は、ゲルの溶媒と同じものであっても、異なるものであってもよい。好ましくは、混合物の溶媒は、ゲルの溶媒に可溶性である[工程b)の条件の下、可溶性である]。好ましくは、混合物の溶媒は、ゲルの溶媒と同じものである。
【0059】
混合物は、コロイド状(ナノ物質が浮遊状態である)であってもよい。
【0060】
方法は、工程b)と工程c)との間に、一般に、1分~24時間の、特に1分~12時間、例えば5分~1時間の、時間長で、ゲルの表面にナノ物質を接触させておく工程で構成される工程b1)を含むことができる。ナノ物質がタンパク質である場合、この工程は、インキュベーションに対応する。
【0061】
方法は、好ましくは、工程b)と工程c)との間に、
- 例えば、ゲルの上記表面から上澄み液を吸引することによって実施される、ゲルの表面からナノ物質の一部を取り除く工程で構成される工程、及び/又は
- 洗い流す工程
を含まない。
【0062】
実際、こうした工程が実施される場合、残留ナノ物質の量、故に得られたゲルのナノ物質の表面密度を制御するのはより難しい。
【0063】
方法は、少なくとも、溶媒含有量が、もはや経時的に変化しなくなるまで、ゲルから溶媒を蒸発させる工程c)を含む。
【0064】
均一な密度のゲルからの溶媒の蒸発は、図1及び図2において示される、2つの動態を含む。
【0065】
蒸発の第1の期間(図1及び図2の「A」)の間、溶媒は、毛細管力によって、ゲル表面から連続して取り除かれる一方で、溶媒含有量は、一定の比率で減少し、それは、ゲルの表面が、溶媒によって十分に濡れており、液体の表面のようにふるまうことによって説明される。その蒸発率は、液体表面の蒸発率に等しく、乾燥に用いられるガス及びゲル表面の境界層の移動係数のみに応じて決まる。
【0066】
蒸発を続けるとき、蒸発率は、第1の蒸発期間と第2の蒸発期間との間の転移を示す臨界蒸発時間Tcでの臨界蒸発率に達する。
【0067】
蒸発の第2の期間(図1及び図2の「B」)の間、拡散力は、毛細管力よりも優勢になり、ゲルからの溶媒の除去は、主に、その表面に対する、ゲルの孔内への溶媒の拡散によって制御される。溶媒の蒸発率は、経時的に一定ではない。蒸発率は、それを超えて、ゲルがもはや乾燥できない、すなわち、溶媒含有量がもはや経時的に変化しない、平衡時間Teqでの平衡蒸発率に到達するまで減少する。
【0068】
本発明の方法の工程c)において、溶媒の蒸発は、少なくとも、溶媒含有量がもはや経時的に変化しない、最短時間である、この平衡時間Teqまで実施される。
【0069】
平衡時間Teqを超えた溶媒含有量は、ゲル及び用いた溶媒に応じて、ゼロでなくても(図1)、ゼロであってもよい(図2)。例えば、ヒドロゲル(溶媒が水溶液である)では、吸湿性ポリマーマトリックスの、平衡時間Teqを超えた溶媒含有量は、ゼロではないが、非吸湿性ポリマーマトリックスの、平衡時間Teqを超えた溶媒含有量は、ゼロになる。
【0070】
平衡時間Teqは、それぞれのゲルに特徴的なものである。平衡時間Teqは、溶媒の性質及びポリマーマトリックスの性質(すなわち、ポリマーの性質だけでなく、その多孔性、故にその剛性)、並びに工程c)の条件に応じて決まる。
【0071】
溶媒が水溶液である(ゲルはヒドロゲルである)場合、溶媒の蒸発は脱水である。
【0072】
通常、工程c)において、
- 蒸発は、空気若しくは不活性ガス(例えば、窒素若しくはアルゴン)、好ましくは空気であるガスに、ゲルを接触させることによって実施され、並びに/又は
- 圧力は、0.1~1バール、好ましくは1バールであり、並びに/又は
- ゲルに接触させるガスの温度は、4~90℃、特に10~70℃、好ましくは15~40℃、特に室温(20℃)若しくは37℃であり、並びに/又は
- 接触させるガスの速度は、0~4m/秒、特に0~1m/秒、好ましくは0.45m/秒~0.50m/秒程度(例えば、ゲルが、層流フードに設置される場合)であり、これらの条件は、工程c)の間、独立して、経時的に一定であるか、又は経時的に変化する。
【0073】
勿論、接触させるガスの、温度がより高いほど、及び/又は速度がより高いほど、溶媒の蒸発、故に工程c)はより速くなる。ナノ物質が、ゲル孔の平均径よりも、少なくとも10倍より大きい平均径を有する場合、ナノ物質はゲル中に浸透しないために、蒸発の加速は、ゲルの表面のナノ物質の分布に影響を与えない。しかし、ナノ物質が、ゲルの平均孔径と同じ大きさの程度の平均径を有する場合、蒸発の加速は、ナノ物質のゲル中への浸透を制限するのに役立つ。故に、接触させるガスの、より高い温度及び/又はより高い速度が好ましい。しかし、ガスの温度及び速度は、ゲル及び/又はナノ物質の劣化を避けるために高すぎてはならない(例えば、ある種のタンパク質は、ある温度を超えると分解し、又は高すぎる速度で投射されたガスは、ゲル表面に損傷を与えることがあり、及び/又はその破砕/亀裂をもたらすことがある)。
【0074】
好ましくは、少なくとも平衡時間Teqまで、又は工程c)の継続時間の間に、蒸発の条件は、経時的に一定であり、すなわち
- ゲルをガスに接触させることによって蒸発を実施する場合、
- ガスの性質は経時的に同じままであり、
- ガス流量は±10%で一定であり、
- ガス温度は±2℃で一定であり、及び
- 加圧/減圧は、経時的に±10%で一定である(例えば、加圧/減圧は、真空で、蒸発のための、加圧(P≧1バール)又は減圧(P<1バール)を意味する)。
【0075】
一般に、工程c)の間に溶媒の蒸発を可能にするために、工程c)の開始時で(蒸発が始まったとき)、ゲルは、平衡時間Teqでのゲルの溶媒含有量τeqよりも多い溶媒含有量τaを有する。実際には、この条件は、ナノ物質を、ナノ物質及び溶媒を含む混合物として堆積させる場合に、ほぼ常に該当する。
【0076】
工程c)の間、蒸発の開始時に、溶媒中のミネラル塩の含有量は、6g/l未満、特に5g/l未満、典型的には4g/l未満、例えば3g/l未満、好ましくは2g/l未満であり、含有量1.5g/l未満、又は1.0g/l未満、又は0.5g/l未満が特に好ましい。好ましくは、工程c)の間、溶媒は無機塩を含まない。
【0077】
塩化物塩(NaCl、KCl、CaCl2、及び/又はMgCl2)、リン酸塩(Na2HPO4及び/又はK2HPO4)、炭酸塩(NaHCO3)は、無機塩の例である。これらは、通常、ヒドロゲルの溶媒、及びタンパク質用の溶媒として用いられる、生理学的な、水溶液及び/又は緩衝液において使用される。
【0078】
一般に、工程a)で供給されたゲルのミネラル塩含有量、及び場合により、工程b)の間に添加されたミネラル塩含有量(これらのミネラル塩は、特に、工程b)の間に堆積させた、ナノ物質及び溶媒を含む混合物の溶媒由来であり得る)が既知であるので、使用者は、蒸発の開始時にミネラル塩含有量を知る。ミネラル塩含有量が未確認である場合、イオンクロマトグラフィーによってミネラル塩含有量を測定することができる。
【0079】
本発明は、ゲルからの溶媒の全蒸発(すなわち、少なくとも、溶媒含有量がもはや経時的に変化しなくなるまで)により、ゲル又はナノ物質のいずれも劣化させることなく、ナノ物質の表面分布、故にその表面密度を容易に制御することができることに基づく。溶媒を蒸発させると、ゲルの表面に堆積させたナノ物質の量を知ることは容易である。というのは、この量は、工程b)の間に堆積させたナノ物質の量に対応するからである(但し、ナノ物質の一部は、工程b)と工程c)との間で(溶液の吸引によって、又は洗い流しによって)取り除かれない)。したがって、堆積したナノ物質の表面密度は、極めて正確に知られる。工程c)の間に、ナノ物質のゲルの表面に対する拡散のために、ナノ物質を制限なく堆積させる。
【0080】
本発明の方法を実施するために、克服すべき技術的偏見があった。実際、当業者は、特に、亀裂/破砕及び結晶の析出によるゲルの劣化を予測する故に、ゲルから溶媒を蒸発させることを完全に避ける。しかし、これらの劣化は、ミネラル塩含有量が前述されたものを超える場合にのみ認められる。特定の理論に捉われることを望まず、発明者らによれば、ミネラル塩は、より高い含有量で存在し、溶媒の蒸発中に結晶化し、それによって、溶媒和形態でのその使用を考慮して、特にその再膨潤の間に、ゲルの亀裂をもたらし、これによって、一般に、表面で、多数の析出物、及び除去できない結晶が存在することになる。好ましくは、工程c)の間に、溶媒は、工程c)の条件の下、結晶化可能な化合物を含まない。
【0081】
ナノ物質がタンパク質である場合、さらなる技術的偏見があった。実際に、当業者は、一般に、乾燥を実施すると、タンパク質が分解することを予測するので、ゲルから溶媒を蒸発させることを完全に避ける。これは、大部分のタンパク質供給業者が、タンパク質を変性させることを避けるために、溶解させたタンパク質を乾燥させることを避けるように勧めるからである。しかし、意外なことに、概して、こうした変性は、本発明の方法では観測されない。更に、当業者は、通常、緩衝化された水溶液であり、その無機塩の含有量が前述されたものを超える、生理学的媒体中でタンパク質を使用することに慣れている。溶媒を用いた、工程c)で定義された塩含有量は、当業者にとって極めて異例である。
【0082】
有利なことに、工程c)の終わりに得られたゲルの、ナノ物質の表面密度は、用いたゲルの剛性に無関係である。ゲルの剛性は、ただ、蒸発の動力学(経時的に、平衡時間Teqに到達するための)に影響を及ぼす。
【0083】
有利なことに、工程c)で得られたゲルのナノ物質の表面密度は均一である。
【0084】
ナノ物質の表面密度を測定する方法は、ナノ物質の性質に応じて変化する。例えば、ナノ物質がタンパク質である場合、上記タンパク質を認識可能な一次抗体、次いで、上記一次抗体を認識可能な二次抗体を使用することができ、この二次抗体は、フルオロフォアに結合し、共焦点蛍光顕微鏡法によって表面密度が分析される。ナノ物質がナノ粒子である場合、表面密度を走査電子顕微鏡法によって分析することができる。
【0085】
方法は、工程a)の前に、
a0)溶媒含有量τaよりも多い初期溶媒含有量τiを有するゲルを用意する工程、次いで
a0')ゲルから、初期溶媒含有量τaまで溶媒を蒸発させる工程であって、それによって工程a)で定義されたゲルが得られる、工程
を含むことができる。
【0086】
したがって、工程a0')の蒸発は、ナノ物質を堆積させる前に実施される。この事前の蒸発により、ゲルの表面での溶媒層の厚さを減らすことができ、続く工程b)の間にゲルの表面に対するナノ物質の対流によって移動を促進することができる。
【0087】
方法は、工程b)の前に、工程b)で堆積させるナノ物質と反応させることが可能な官能基を、ゲルの表面にグラフト化する工程で構成される工程b0)を含むことができる。
【0088】
工程b)の間に堆積させるナノ物質は、工程b)の前に、ゲルのポリマーマトリックスと反応させることが可能な官能性を有するように修飾することができる。方法は、工程b)の前に、ナノ物質(特に、タンパク質及び/又はペプチド及び/又は多糖類)に、ゲルと反応させることが可能な、少なくとも1種の官能基をグラフト化する工程で構成される工程b0')を含むことができる。
【0089】
工程b0)及び工程b0')において、好ましくは、官能基を反応させて共有結合を形成することができる。
【0090】
ナノ物質が、タンパク質及び/又はペプチド及び/又は多糖類である場合、方法は、ゲルに、タンパク質及び/又はペプチド及び/又は多糖類を共有結合グラフト化する工程d)を含むことができ、それによって、それらを決定的に固定化することができ、例えば、工程c)の後にゲルを洗い流す間に、ゲルの表面で、ペプチド及び/又はタンパク質及び/又は多糖類が再び動くことを防ぐことができる。この工程d)は、工程c)と同時であってもよく(蒸発の間)、又は工程c)の後で(脱溶媒和ゲルで)実施されてもよい。好ましくは、工程d)が実施される場合、方法は、工程a)及び工程d)の間に洗い流す工程を含まない。
【0091】
方法は、工程c)の後、溶媒で洗い流す工程e)を含むことができる。この溶媒は、ゲル溶媒と同じものであっても、異なるものであってもよい。洗い流す工程は、繰り返すことができる。
【0092】
方法は、工程c)の後、又は存在するならば、工程e)の後、ゲルを回復する工程f)を含むことができる。ゲルは、工程c)の終わりで回復される場合、脱溶媒和形態(ゲルの平衡時間を超えた溶媒含有量)である。洗い流す工程e)が、工程c)の後で、及び工程f)の前に実施される場合、ゲルは、溶媒和形態(溶媒は、洗い流す溶液の溶媒である)であることができる。溶媒和形態又は脱溶媒和形態のゲルは、有利なことに、数カ月、一般に少なくとも1カ月、特に少なくとも3カ月、又は少なくとも9カ月、室温(20℃)で、概ね、ゲル又はナノ物質のいずれの劣化も認めることなく(タンパク質の変性がないことを含む)、保管することができる。
【0093】
本発明の方法は、容易に実施される。方法は、複雑な装置を必要としない。方法は、安価である。
【0094】
第2の目的によれば、本発明は、上記の方法によって得ることができるゲルであって、ゲルの表面が、ナノ物質で少なくとも部分的に被覆されており、領域1μm2当たりのナノ物質の量Qj(jは1からpまで変化する)の標準偏差σ'が、40%未満、典型的には30%未満、特に20%未満、好ましくは10%未満であり、ナノ物質の量Qjは、顕微鏡法によって、ゲルの表面全体にわたって分布したpμm2の表面で測定され、pは10よりも大きく、特に100よりも大きく、典型的には10000(100×100)よりも大きく、好ましくは1000000(1000×1000)よりも大きく、標準偏差σ'は、式(IV):
【0095】
【数4】
【0096】
[式中、「平均値」は、領域1μm2当たりのナノ物質の量Qjの算術平均であり、式(V):
【0097】
【数5】
【0098】
で定義される通りである]
で定義される通りである、ゲルに関連する。
【0099】
好ましくは、表面積1μm2当たりのナノ物質の上記量Qjは、±10%、特に±5%、好ましくは±1%で対称分布に従い、但し、上記分布の算術平均「平均値」及び中央値「中央値」は、式(VI):
【0100】
【数6】
【0101】
で定義される差e'が25%未満、特に20%未満、典型的には10%未満、好ましくは5%未満であるものである。表面1μm2当たりのナノ物質の量Qj(jは1からpまで変化する)の標準偏差σ'は上記で定義されたもの、又はそれ以外のものである。
【0102】
中央値は、一連のp個の順序づけられた、表面1μm2当たりのナノ物質の量を、同数の要素を有する2つの部分に分けることができる、表面積1μm2当たりのナノ物質の「中央値」量である。領域1μm2当たりのナノ物質の量Qjの集合は、同数の要素を有する2つの部分: 一方は、全て「中央値」以下である領域1μm2当たりのナノ物質の量Qjの半分であり、他方は、全て「中央値」以上である表面1μm2当たりのナノ物質の量Qjの値の残り半分、に分けられる。
【0103】
e'値がより低いほど、表面1μm2当たりのナノ物質の量Qjは、より良好に対称分布に従う。ナノ物質の完全な対称表面分布は、偏差e'0を有する。
【0104】
好ましくは、表面積1μm2当たりのナノ物質の上記量Qjは、±10%、特に±5%、好ましくは±1%で正規分布に従い、但し、上記分布の平均「平均値」及び中央値「中央値」は、差e'が25%未満、特に20%未満、典型的には10%未満、好ましくは5%未満であるものである。
【0105】
好ましくは、pμm2の表面は、ゲルの表面全体にわたってランダムに分布している。
【0106】
好ましくは、ゲルの表面での、ナノ物質の表面密度のばらつきは、60%未満、特に50%未満、典型的には40%未満、好ましくは30%未満である。
【0107】
一般に、溶媒和又は非溶媒和のゲルは、ひび割れることなく、
以下の
- 位相差顕微鏡法において、光学的に
- 剛性を測定することによって:表面をスキャンすることによって、破壊のレベルで弾性ではない、力/押込み曲線が観測される(低い振幅押込みで曲線の断絶の存在)
- 又は、試料が透明ではない場合、電子顕微鏡法
で特徴付けることができる。
【0108】
このゲルには、表面に堆積させたナノ物質の性質に応じて、極めて多様な用途がある。第3の目的によれば、本発明は、細胞培養のための、活性医薬成分をスクリーニングするための、フォトニックセンサー(典型的には、ナノ物質が半導体である場合)、又は物理化学的なセンサー、例えば、pH(典型的には、ナノ物質が金粒子である場合)若しくは温度(典型的には、ナノ物質がCdTe粒子である場合)のセンサーとしての、検体検出用のセンサーとしての、タンパク質チップ若しくはペプチドチップ(典型的には、ナノ物質がタンパク質及び/若しくはペプチドである場合)としての、細胞チップとしての、又は生体分子キャプチャーチップとしての、このゲルの使用に関連する。
【0109】
本発明はまた、
- ナノ物質が、ペプチド、タンパク質、及び/又は多糖類である、本発明のゲルと、医薬活性成分を接触させる工程を含む、活性医薬成分をスクリーニングするための細胞位置決め法
- ナノ物質が、ペプチド、タンパク質、及び/又は多糖類である、本発明のゲルと、捕捉される生体分子を含む媒体を接触させる工程を含む、生体分子を捕捉する方法
- 本発明のゲルと、検出される検体を含む媒体を接触させる工程を含む、分析法にも関連する。
【0110】
以下の図及び実施例は、本発明を説明するものである。
【0111】
実施例は、ポリアクリルアミドヒドロゲル及びナノ物質であるタンパク質(フィブロネクチン又はフィブリノゲン)を用いて実施した。
【0112】
用いたポリアクリルアミドヒドロゲルは、センチメートルスケールで10%及び100μmスケールで5%の、剛性のばらつきを有した(剛性測定は、10μm毎に行った)。
【実施例1】
【0113】
ポリアクリルアミドヒドロゲルの表面で予め活性化されたタンパク質(フィブロネクチン)のグラフト化
本実施例において、感光性架橋剤を、タンパク質として用いたフィブロネクチンにグラフト化して、UV Aへの曝露の下、ヒドロゲルの表面と反応性にする。ゲルの表面で予め活性化されたフィブロネクチンのグラフト化は、光活性化反応である。
【0114】
a)ベースガラスカバースリップのシラン化
ベースカバースリップは、ヒドロゲルのベース固定具として機能する。
【0115】
直径30mmのベースガラスカバースリップを、水酸化ナトリウム0.1モル/Lの溶液中で10分間洗浄した。その後、水、次いでエタノールで十分に洗い流し、空気乾燥させた。
【0116】
Bind-Silane(GE Healthcare社)56μLを含むシラン溶液500μL、酢酸10%484μL、及び超高純度エタノール14.46mLをカバースリップに置き、溶液の全ての跡が消えるまで、編まれたポリエステルの布で擦り込んだ。こうして、その表面にアルデヒド官能性を有するガラススライドを得、それによって、ポリアクリルアミドゲルの共有結合グラフト化が可能になる。
【0117】
b)透明マスクのシラン化
ヒドロゲルをUVで架橋結合し、透明マスクにより、ヒドロゲルの表面を平坦にすることができる。マスクは、フッ素化シランで処理した顕微鏡カバースリップからなり、ヒドロゲルへのその接着を制限した。
【0118】
光学顕微鏡カバースリップ(26mm×76mm)を、濃縮過酸化水素/硫酸1:2溶液で10分間洗浄した。次いで、オプツール処理(ダイキン工業社 DSX):パーフルオロヘキサン中に1/1000まで希釈したオプツールに1分間浸漬することによって、カバースリップを疎水性にした。次いで、カバースリップを、80℃の水蒸気中に1時間放置した。最後にそれを、パーフルオロヘキサン中で、ゆっくり拡散しながら、10分間浸漬した。
【0119】
c)3種のポリアクリルアミドヒドロゲルの調製
出願WO2013/079231号に記載された方法に従って、
- アクリルアミド10%(初めに40%溶液250μL)
- N,N'-メチレンビスアクリルアミド(ビス)0.5%(初めに2%溶液250μL)
- Irgacure819w/v0.2%(Ciba、光開始剤)
- プロピルアミン1%(開始剤)
- 脱イオン水(490μl)
からなる組成物からヒドロゲルを調製した。
【0120】
Irgacure819をUV-不透明ボトルで計量した。プロピルアミンをそれに加えた。全体を50℃で2分間加熱した。加熱後、均質で透明な溶液を得た。水、アクリルアミド、及びビスアクリルアミドを迅速に加えた。全体を、ピペットで静かに均質化し、酸素の取り込みを制限した。30μLを、上記の手順で前処理したガラスカバースリップ30mmに置いた。カバースリップは、スペーサーに設置された、カバースリップと透明マスクとの間に間隔40μmを維持するスペーサーを備える試料ホルダーに設置した。3種のヒドロゲルを得るために、全体(マスク、溶液、カバースリップ)を、Eleco UVP281ファイバーランプ(2W/cm2)を用いて、7.8秒間、15秒間、又は20秒間照らした。次いで、各セットを水中に浸漬して、鉗子を用いて、ヒドロゲルからマスクを取り外した。各ヒドロゲルを、脱イオン水で3回洗い流し、脱イオン水中に保管した。
【0121】
d)ヒドロゲルの剛性の特徴決定
各ヒドロゲルの多孔性のばらつきは、ヒドロゲルの局所剛性を測定することによって評価した。局所剛性を、水性媒体中でAFM(JPK商標)によって測定した。点の押込みに対するゲルの抵抗を記録した。数ミリメートル離れた間隔の4つの100μm×100μm範囲をスキャンした。スキャンを10μmのステップで実施して、一連の押込み曲線を得た。それぞれの曲線は、製造業者の手順に従って、弾性押込みモデルで処理した。
【0122】
得られた剛性は、ゲルを調製するための照明時間に依存する。剛性は、
- 照明時間7.8秒で調製したヒドロゲルについて、0.6kPa及び剛性値Riの標準偏差σ11.7%
- 照明時間15秒で調製したヒドロゲルについて、11.8kPa及び剛性値Riの標準偏差σ11.8%、並びに
- 照明時間20秒で調製したヒドロゲルについて、24.7kPa及び剛性値Riの標準偏差σ9.2%
の程度である。
【0123】
e)ヒドロゲルでの、活性フィブロネクチンの堆積、続いて共有結合グラフト化
フィブロネクチンを、モル比1/480で、ヘテロ二官能性スルホ-NHS-LC-ジアジリン(スルホスクシンイミジル-6-(4,4'-アジペンタンアミド)ヘキサノエート架橋剤、ThermoScientific Pierce社、商標sulfo-LC-SDA)に予め結合した。フィブロネクチン(Roche社)5mgを、37℃で、超高純度脱イオン水2mLに30分間溶解させた。スルホ-LC-SDA1.2mgを、暗闇で計量し、室温で、フィブロネクチン溶液中に30分間溶解させた。この操作を2回繰り返し、モル比1/480が得られた。この手順により、スルホ-LC-SDAの加水分解を制限しながら、スルホ-LC-SDAのスルホ-NHS官能性を、フィブロネクチンのアミン基と反応させることができた。形成された化合物は、感光性ジアジリン官能性と結合したフィブロネクチン分子である。形成された化合物は、暗室で、4℃で、PBS+/+1×の2lに対して、48時間、6-8000膜を介して濾膜分析し、24時間後、PBSが変化した。次いで、小容量(25μl及び50μl)に分けて-20℃で凍らせて保管した。
【0124】
上記手順で調製したヒドロゲルを、縦型層流フード(Aura社)で、26℃で、1時間脱水した(工程a0'))。
【0125】
UVを含まない光を備えた部屋で、上記の手順による共役フィブロネクチン溶液800μlを、無菌脱イオン水中に濃度3.5μg/mlで調製し、ピペットを用いてゲルに堆積させた(工程b))。
【0126】
ヒドロゲル+フィブロネクチン溶液全体を、溶液をヒドロゲルの表面から完全に蒸発させるまで、層流フード(対流0.5m/秒)の下、37℃のホットプレート上に置いた(工程c))。
【0127】
ゲルを、直ちに、ElecoUVP281UVランプで5分間照らした(工程d))。その後、PBS+/+溶液で、静かに3回洗い流した(工程e))。官能化ゲルを、PBS+/+の溶液中で水和させて4℃で保管した。
【0128】
f)グラフト化タンパク質の分布の特徴決定
PBS+/+溶液をゲルから吸引し、PBS+/+1×溶液-Tween20 0.1%-BSA2%からなる飽和溶液に置き換え、室温で30分間ゆっくり撹拌した。
【0129】
ピペットを用いて飽和溶液を吸引し、ウサギで生成された一次ポリクローナル抗フィブロネクチン抗体(Sigma-Aldrich社、F3648)3μLをPBS+/+1×-Tween20 0.1%-BSA2%1.2mL中に希釈した溶液に置き換えた。室温でゆっくり撹拌しながら、抗体を1時間インキュベートした。次いでこれを、ロバで生成されウサギに移した、Alexa488に結合した二次抗体(Molecular Probes社、A21206)0.6μLを含む溶液1.2mLに1×PBS+/+溶液-Tween20 0.1%-BSA2%を補充したものに1時間、室温でゆっくりと撹拌し光から保護しながら曝露した。次いで、吸引によって溶液を除去し、ゲルをPBS+/+1×-Tween20 0.1%-BSA2%1.2mLで3回洗い流した。次いで、ゲルをPBS+/+1×溶液中で4℃で光から保護しながら保管した。
【0130】
グラフト化タンパク質の分布の特徴決定は、共焦点蛍光顕微鏡法(Leica SP顕微鏡)によって実施した。波長488nm、像間隔0.28μmで、画像スタックを各ヒドロゲルについて得た。様々な取得が、一定のゲインで、一定のレーザー強度で行われた。画像の各スタックをImageJソフトウェアで集め、セクションを抽出した。最大強度画像を画像スタックから計算し、375×375μmウィンドウの蛍光表面の2次元投影を得た。抗体表示により、画素化した画像を得た。これを修正するために、画素化は、半径10ピクセルのガウスフィルターによって制限した。次いで、強度の平均値をこの投影で計算した(Table 1(表1))。
【0131】
【表1】
【0132】
3種のヒドロゲルのそれぞれの間で強度の顕著な変化がないことは、グラフト化タンパク質の量がヒドロゲルの剛性/多孔性に無関係であることを示す。
【実施例2】
【0133】
ポリアクリルアミドヒドロゲルの予め活性化された表面でのタンパク質(フィブリノゲン)のグラフト化
本実施例において、実施例1のものと同じ架橋剤を、光化学反応によって、ヒドロゲルの表面に過剰に付着させ、活性化表面を得た。但し、タンパク質(フィブリノゲン)は、タンパク質の第一級アミン官能性とのカップリング反応によって、ヒドロゲルの活性化表面と反応させた。
【0134】
a)ベースガラスカバースリップのシラン化
実施例1aと同様である。
【0135】
b)透明マスクのシラン化
実施例1bと同様である。
【0136】
c)3種のヒドロゲルの調製
実施例1cと同様である。照明時間は、7.5秒、9秒、及び10秒であった。
【0137】
d)各ヒドロゲルの剛性の特徴決定
実施例1dと同様である。得られた剛性は、それぞれ、
- 2.9kPa及び剛性値Riの標準偏差σ10.3%。
- 4.6kPa及び剛性値Riの標準偏差σ4.3%、並びに
- 9.5kPa及び剛性値Riの標準偏差σ9.5%
であった。
【0138】
e)ヒドロゲルの表面の活性化(工程b0))
【0139】
UVを含まない光を備えた部屋で、上記の手順に従って調製された各ヒドロゲルを、縦型層流フード(Aura社)で、26℃で、1時間脱水した。ヘテロ二官能性スルホ-NHSLC-ジアジリン(スルホスクシンイミジル6-(4,4'-アジペンタンアミド)ヘキサノエート、ThermoScientific Pierce社、商標sulfo-LC-SDA)架橋剤の溶液を、無菌脱イオン水中で、濃度0.44mg/mLで調製した。この溶液800μlを、ピペットを用いて、ゲルに堆積させた。この溶液を、層流フードの下、26℃で60分間インキュベートした。次いで、ピペットで残留溶液を静かに吸引し、更に層流フードの下、ゲルを40分間再び乾燥させた。
【0140】
次いで、ゲルをElecoUVP281UVランプで5分間照らした。
【0141】
f)フィブリノゲンの共有結合グラフト化
蛍光Alexa Fluor488プローブ(F13191、Invitrogen社)に結合したフィブリノゲンの溶液を濃度8.75μg/mLで調製した。この溶液800μlを、ゲルの、活性化された表面にピペットを用いて堆積させた(工程b))。
【0142】
ヒドロゲル+フィブリノゲン溶液アセンブリは、溶液をヒドロゲルの表面から完全に蒸発させるまで、層流フード(対流0.5m/秒)の下、37℃のホットプレートに置いた(工程c)及び工程d))。
【0143】
次いで、ゲルを、PBS+/+の溶液で、静かに3回洗い流した(工程e))。
【0144】
官能化ゲルを、PBS+/+の溶液中で水和させて4℃で光から保護しながら保管した。
【0145】
g)グラフト化タンパク質の分布の特徴決定
グラフト化タンパク質を、フルオロフォアに結合した。グラフト化タンパク質の分布の特徴決定は、共焦点蛍光顕微鏡法(Leica SP顕微鏡)によって実施された。画像スタックを、波長488nmで、像間隔0.28μmで、それぞれの剛性段階について得た。様々な取得が、一定のゲインで、一定のレーザー強度で行われた。画像の各スタックは、ImageJソフトウェアで集めた。最大強度画像を画像スタックから計算し、蛍光表面の2次元投影を得た。抗体表示により、画素化した画像を得た。これを修正するために、画素化は、半径10ピクセルのガウスフィルターによって制限された。次いで、強度の平均値をこの投影で計算した(Table 2(表2))。
【0146】
【表2】
【0147】
3種のヒドロゲルのそれぞれの間で強度の顕著な変化がないことは、グラフト化タンパク質の量がヒドロゲルの剛性/多孔性に無関係であることを示す。
図1
図2