(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】2,6-ジアルキルフェニル酢酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/08 20060101AFI20230922BHJP
C07C 57/58 20060101ALI20230922BHJP
C07C 57/30 20060101ALI20230922BHJP
C07F 3/02 20060101ALI20230922BHJP
C07C 309/66 20060101ALI20230922BHJP
C07C 309/65 20060101ALI20230922BHJP
C07C 309/73 20060101ALI20230922BHJP
C07C 33/30 20060101ALI20230922BHJP
C07C 29/141 20060101ALI20230922BHJP
B01J 25/00 20060101ALI20230922BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C07C51/08
C07C57/58 CSP
C07C57/30
C07F3/02 B
C07C309/66
C07C309/65
C07C309/73
C07C33/30
C07C29/141
B01J25/00 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020555161
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2019058356
(87)【国際公開番号】W WO2019197232
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヒムラー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ブローム,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】モラディ,ワーヘド・アフメド
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/011670(WO,A1)
【文献】特表2002-513025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0039701(US,A1)
【文献】特表2011-512321(JP,A)
【文献】特開2010-235603(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071920(WO,A2)
【文献】特表2003-510326(JP,A)
【文献】国際公開第2017/121699(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/015489(WO,A1)
【文献】特表2014-525401(JP,A)
【文献】特開2007-031430(JP,A)
【文献】特開2001-158754(JP,A)
【文献】特開昭58-067637(JP,A)
【文献】国際公開第2016/193761(WO,A1)
【文献】特開平08-225467(JP,A)
【文献】特表2007-536338(JP,A)
【文献】XIANG L; ET AL,STEREOSELECTIVE SYNTHESIS OF ALL INDIVIDUAL ISOMERS OF [BETA]-METHYL-2',6'-DIMETHYLPHENYLALANINE,TETRAHEDRON ASYMMETRY,英国,PERGAMON PRESS LTD,1995年,VOL:6, NR:1,PAGE(S):83 - 86,http://dx.doi.org/10.1016/0957-4166(94)00357-H
【文献】Zhu, Chunlan et al,Synthesis of 2,4,6-trimethylbenzaldehyde,Jingxi Huagong Zhongjianti ,2005年,35(3),,33-34
【文献】STN Interntional, file CHEMCATS,2017年12月17日,CAS Registry No. 2159586-57-7,化合物名Benzenemethanol, 2, 6-dimethyl-, 1-(4-methylbenzenesulfonate)
【文献】STN Interntional, file CHEMCATS,2014年05月09日,CAS Registry No. 1601046-43-8,化合物名Benzenemethanol, 2, 4, 6-trimethyl-, 1-methanesulfonate
【文献】STN Interntional, file CHEMCATS,2016年02月26日,CAS Registry No. 1874998-32-9,化合物名Methanesulfonic acid, 1,1,1-trifluoro-, (2,4,6-trimethylphenyl)methylester
【文献】STN Interntional, file CHEMCATS,2016年03月04日,CAS Registry No. 1879859-20-7,化合物名Methanesulfonic acid, 1, 1, 1-trifluoro-, (2, 6-dimethylphenyl) methyl ester
【文献】LOFGREN NILS; ET AL,SYNTHESES OF THREE XYLOCAINE(R) ANALOGUES STERIC EFFECTS IN THE REACTION BETWEEN 以下備考,ACTA CHEMICA SCANDINAVICA,デンマーク,1963年,VOL:17,NR:5,PAGE(S):1252 - 1261,http://dx.doi.org/10.3891/acta.chem.scand.17-1252,2,6-DIMETHYLPHENYLLITHIUM AND EPICHLOROHYDRIN
【文献】Wei, Yingfei et al,Synthesis of Triazolylidene Nickel Complexes and Their Catalytic Application in Selective Aldehyde Hydrosilylation,ACS Catalysis,2016年,6(12),,8192-8200
【文献】Bui The Khai; Arcelli, Antonio,Selective reduction of aldehydes by a formic acid-trialkylamine-dichlorotris(triphenylphosphine)ruthenium [RuCl2(PPh3)3] system,Tetrahedron Letters ,1985年,26(28),,3365-8
【文献】Delgado-Rebollo, Manuela et al,Synthesis and catalytic alcohol oxidation and ketone transfer hydrogenation activity of donor-functionalized mesoionic triazolylidene ruthenium(ii) complexes,Dalton Transactions ,2014年,43(11),,4462-4473
【文献】Sommer, Michael G. et al,Ruthenium Azocarboxamide Half-Sandwich Complexes: Influence of the Coordination Mode on the Electronic Structure and Activity in Base-Free Transfer Hydrogenation Catalysis,Organometallics,2016年,35(17),,2840-2849
【文献】Collier, Steven J.,2-Propanol,e-EROS Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,2016年,1-15
【文献】GEIER G R; ET AL,EFFECTS OF ALDEHYDE OR DIPYRROMETHANE SUBSTITUENTS ON THE REACTION COURSE LEADING 以下備考,TETRAHEDRON,2004年10月18日,VOL:60, NR:50,PAGE(S):11435 - 11444, S1 - S29,http://dx.doi.org/10.1016/j.tet.2004.09.081,TO MESO-SUBSTITUTED PORPHYRINS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
B01J
C07B
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物の製造するための方法であって、
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、
メチルを表し、そして、
R
3は、
塩素を表す]、
該方法は、
第1の工程(1)において、式(II)の化合物
【化2】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を、溶媒の存在下、マグネシウムと反応させ、式(III)
【化3】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を得て、
第2の工程(2)において、式(III)の化合物を式(IV)の化合物
【化4】
[式中、R
4及びR
5は、互いに独立して、
メチルを表す]
と反応させ、式(V)の化合物
【化5】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、前記の定義を有する]
を得て、
第3の工程(3)において、式(V)の化合物を、酸性条件下、加水分解によって反応させ、式(VI)の化合物
【化6】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を得て、
第4の工程(4)において、式(VI)の化合物を、触媒の存在下、水素化して式(VII)の化合物
【化7】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]を得て、
第5の工程(5)において、式(VII)の化合物を反応させて、式(VIII)の化合物
【化8】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有し、そして、
Yは、
塩素または臭素を表す]を得て、
第6の工程(6)において、式(VIII)の化合物を、式(IX)のシアン化物
【化9】
[式中、Mは、
ナトリウムを表す]
と反応させて、式(X)の化合物
【化10】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]を得て、
第7の工程(7)において、式(X)の化合物を、酸性または塩基性条件下で加水分解して、式(I)の化合物
【化11】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を得る、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
第4の工程(4)における水素化のために、金属ルテニウム、コバルトまたはニッケルにより作成された触媒が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第4の工程(4)における水素化のために、
コバルトスポンジ触媒が触媒として使用される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第4の工程(4)における水素化のために、
ニッケルスポンジ触媒が触媒として使用される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第4の工程(4)における水素化のために、[2-(アミノメチル)ピリジン](ジクロロ)(ジフェニルホスフィノブタン)ルテニウム(II)が触媒として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(V)の化合物
【化12】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、前記の定義を有す]。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸の製造方法に関する。
一般式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸は、作物保護において害虫を防除するために特に使用することができる生物活性化合物の調製のための重要な中間体である。それらは殺虫剤、殺ダニ剤または除草剤環状ケト-エノール(例えば、WO2006/089633)の調製に特に有用であり、該当する2,6-ジアルキルフェニルアセチルクロリドはこれらの2,6-ジアルキルフェニル酢酸から生成される。
【背景技術】
【0002】
2,6-ジアルキルフェニル酢酸を調製するための様々な方法が既に知られている(例えば、Bioorg.&Med.Chem.17(2009)4241-56;Chem.Eur.J.、19(2013)7334-7;WO2004/050607;WO2010/104217;US20110039701;WO2011/003530;WO2011/089072;WO2018/015489)。しかしながら、これらの方法は完全に満足できるものではない。したがって、例えば、これらの方法のいくつかでは、収率は不満足であるか、またはパラジウム触媒などの高価な試薬を使用しなければならず、その結果、合成が不経済になる可能性がある。さらに、医薬または農業の分野のための活性成分の製造のために、パラジウムまたは他の重金属が、非常に低い許容残留量まで除去されることが必要とされる。センシティブな遷移金属触媒の使用はまた、触媒の不活性化(「中毒」)が容易に起こり得るので、高純度の出発材料の使用を必要とする。
【0003】
パラジウム触媒を使用せずに2,6-ジアルキルフェニル酢酸を調製する1つの可能性は例えば、最初に2,6-ジアルキルブロモベンゼンから出発する2,6-ジアルキルベンズアルデヒドを合成し;このアルデヒドを水素化して対応する2,6-ジアルキルベンジルアルコールを得;このベンジルアルコールを対応する2,6-ジアルキルベンジルハライドに変換し;ハロゲン化ベンジルを無機シアン化物と反応させて対応する2,6-ジアルキルフェニルアセトニトリルを得、次いで2,6-ジアルキルフェニルアセトニトリルを加水分解して2,6-ジアルキルフェニル酢酸を得ることからなる。
【0004】
中間体化合物(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)アセトニトリルの調製はすでに知られており(国際公開第2001/23387号パンフレット)、4-クロロ-2,6-ジメチルブロモベンゼンを最初にブチルリチウムと反応させ、次にN,N-ジメチルホルムアミドと反応させ、4-クロロ-2,6-ジメチルベンズアルデヒドをこうして得;このアルデヒドを水素化ホウ素ナトリウムの手段によって還元して4-クロロ-2,6-ジメチルベンジルアルコールを得;このアルコールを塩化チオニルと反応させて4-クロロ-2,6-ジメチルベンジルクロリドを得;続いてこのベンジルクロリドをシアン化ナトリウムで(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)アセトニトリルに変換する。
【0005】
しかしながら、この方法におけるブチルリチウムおよび水素化ホウ素ナトリウムの使用は不利であり、これらの両方は高価であり、工業的規模での取り扱いが困難である(例えば、ブチルリチウムとの反応において-100℃までの低い反応温度である;Chem.Eur.J.2013,19,7334-7)。
【0006】
ブチルリチウムの代わりにマグネシウムを使用し、それによって対応する2,6-ジアルキルフェニルグリニャール化合物を調製することも既に知られている(例えば、Chem.Eur.J.2014,20,6268-71;J.Med.Chem.2017,60,1325-42)。しかしながら、2,6-ジアルキルフェニル酢酸を得るためのさらなる反応は、そこに開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2006/089633
【文献】WO2004/050607
【文献】WO2010/104217
【文献】US20110039701
【文献】WO2011/003530
【文献】WO2011/089072
【文献】WO2018/015489
【文献】WO2001/23387
【非特許文献】
【0008】
【文献】Bioorg.&Med.Chem.17(2009)4241-56
【文献】Chem.Eur.J.、19(2013)7334-7
【文献】Chem.Eur.J.2014,20,6268-71
【文献】J.Med.Chem.2017,60,1325-42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
2,6-ジアルキルフェニルグリニャール化合物をパラホルムアルデヒドと反応させ、それによって対応するベンジルアルコールを直接調製し、それらから対応する塩化ベンジルを調製することも既に知られている(US 20110039701; WO 2010/104217)。しかしながら、このようにして製造されたベンジルアルコールは、非常に高価な手段によってのみパラホルムアルデヒドを完全に除去することができるという事実がこの方法の欠点である。しかしながら、これは、次の工程における高発癌性ビス(クロロメチル)エーテルの形成を回避するために絶対的に不可欠である。
【0010】
従って、2,6-ジアルキルフェニル酢酸を調製するための改良された方法が依然として必要とされている。
【0011】
従って、本発明は、式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸を調製するための新規な方法に関し、
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立してC
1-C
6-アルキルを表し、そして、
R
3は、水素、C
1-C
6-アルキル、フッ素又は塩素を表す]、
該方法は、
第一の工程(1)において、式(II)の2,6-ジアルキルブロモベンゼン
【化2】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を、溶媒の存在下、マグネシウムと反応させ、一般式(III)のグリニャール化合物
【化3】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を得て、
第2の工程(2)において、式(III)のグリニャール化合物を一般式(IV)のN,N-ジアルキルホルムアミド
【化4】
[式中、R
4及びR
5は、互いに独立して、C
1-C
6-アルキルを表すか、または、一緒になって-(CH
2)
2-X-(CH
2)
2-を表し、ここで、Xは、CH
2、酸素または硫黄を表す]
と反応させ、一般式(V)の化合物
【化5】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、前記の定義を有する]
を得て、
第3の工程(3)において、一般式(V)の化合物を、酸性条件下、加水分解によって反応させ、一般式(VI)のアルデヒド
【化6】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を得て、
第4の工程(4)において、一般式(VI)のアルデヒドを、触媒の存在下、水素化して一般式(VII)のベンジルアルコール
【化7】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]を得て、
第5の工程(5)において、一般式(VII)のベンジルアルコールを反応させて一般式(VIII)の化合物
【化8】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有し、そして、
Yは、塩素、臭素、OSO
2Me、OSO
2(4-Me-Ph)またはOSO
2CF
3を表す]とし、
第6の工程(6)において、一般式(VIII)の化合物を、一般式(IX)のシアン化物
【化9】
[式中、Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを表す]
と反応させて、一般式(X)の化合物
【化10】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]を得て、
第7の工程(7)において、一般式(X)の化合物を、酸性または塩基性条件下で加水分解して、一般式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸
【化11】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記の定義を有する]
を得る。
【0012】
【0013】
式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸の製造方法が好ましく、ここで、
R1及びR2は、互いに独立してC1-C6-アルキルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、
R4及びR5は、互いに独立して、C1-C6-アルキルを表すか、または、一緒になって-(CH2)2-X-(CH2)2-を表し、
ここで、Xは、CH2、酸素、または硫黄を表し、
Yは、塩素、臭素、OSO2Me、OSO2(4-Me-Ph)またはOSO2CF3を表し、
Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを表す。
【0014】
特に好ましいのは、式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸を調製する方法であって、ここで、
R1及びR2は、互いに独立して、メチルまたはエチルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、
R4及びR5は、互いに独立して、C1-C6-アルキルを表すか、または、一緒になって-(CH2)2-O-(CH2)2-を表し、
Yは、塩素、臭素、OSO2Me、OSO2(4-Me-Ph)またはOSO2CF3を表し、
Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを表す。
【0015】
非常に特に好ましいのは、式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸の製造方法であって、ここで、
R1及びR2は、互いに独立して、メチルまたはエチルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、
R4及びR5は、互いに独立して、メチル若しくはn-ブチルを表すか、または、一緒になって-(CH2)2-O-(CH2)2-を表し、
Yは、塩素または臭素を表し、
Mは、ナトリウムまたはカリウムを表す。
【0016】
例外的に好ましいのは、式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸の製造方法であって、ここで、
R1及びR2は、メチルを表し、
R3は、塩素を表し、
R4及びR5は、メチルを表し、
Yは、塩素または臭素を表し、
Mは、ナトリウムを表す。
【0017】
同様に、例外的に好ましいのは、式(I)の2,6-ジアルキルフェニル酢酸の製造方法であって、ここで、
R1及びR2は、メチルを表し、
R3は、水素を表し、
R4及びR5は、メチルを表し、
Yは、塩素または臭素を表し、
Mは、ナトリウムを表す。
【0018】
非常に特に好ましいのは、(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)酢酸、(4-クロロ-2,6-ジエチルフェニル)酢酸、2,6-ジメチルフェニル酢酸および2,6-ジエチルフェニル酢酸の調製である。
【0019】
(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)酢酸および2,6-ジメチルフェニル酢酸の調製が強調される。
【0020】
本発明では、一般式(V)の新規な化合物も同様に提供し、
【化13】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、前記の定義を有す]。
【0021】
好ましいのは、一般式(V)の化合物であって、ここで、
R1およびR2は、互いに独立して、C1-C6-アルキルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、そして
R4およびR5は、互いに独立して、C1-C6-アルキルを表すか、一緒になって-(CH2)2-X-(CH2)2-を表し、ここで、Xは、CH2、酸素またはイオウを表す。
【0022】
特に好ましいのは、一般式(V)の化合物であって、ここで、
R1およびR2は、互いに独立して、メチルまたはエチルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、そして
R4およびR5は、互いに独立して、C1-C6-アルキルを表すか、または一緒になって-(CH2)2-O-(CH2)2-を表す。
【0023】
非常に特に好ましいのは、一般式(V)の化合物であって、ここで、
R1およびR2は、互いに独立して、メチルまたはエチルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、そして
R4およびR5は、互いに独立して、メチル若しくはn-ブチルを表すか、または一緒になって-(CH2)2-O-(CH2)2-を表す。
【0024】
例外的に好ましいのは、一般式(V)の化合物であって、ここで、
R1およびR2は、メチルを表し、
R3は、塩素を表し、そして
R4およびR5は、メチルを表す。
【0025】
同様に例外的に好ましいのは、一般式(V)の化合物であって、ここで、
R1およびR2は、メチルを表し、
R3は、水素を表し、そして
R4およびR5は、メチルを表す。
【0026】
R1およびR2がメチルを表し、R3が水素を表し、そして、R4およびR5がメチルを表す式(V)の以下の化合物は、先行技術(Tetrahedron、60(50)、11435-11444、2004; Tetrahedron Asymmetry、6(3)、83-86、1995)から既に知られている。
【0027】
したがって、この化合物は保護の範囲から除外される。
【0028】
同様に、本発明は、一般式(VIII)の新規化合物を提供し、
【化14】
[式中、R
1、R
2およびR
3は、前記の定義を有し、
Yは、OSO
2Me、OSO
2(4-メチルフェニル)またはOSO
2CF
3を表す]。
【0029】
好ましいのは、一般式(VIII)の化合物であって、ここで、
R1及びR2は、互いに独立して、メチルまたはエチルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、そして、
Yは、OSO2Me、OSO2(4-メチルフェニル)またはOSO2CF3を表す。
【0030】
特に好ましいのは、一般式(VIII)の化合物であって、ここで、
R1及びR2は、メチルを表し、
R3は、水素または塩素を表し、そして、
Yは、OSO2Me、OSO2(4-メチルフェニル)またはOSO2CF3を表す。
【0031】
非常に特に好ましいのは、一般式(VIII)の化合物であって、ここで、
R1及びR2は、メチルを表し、
R3は、塩素を表し、そして、
Yは、OSO2Me、OSO2(4-メチルフェニル)またはOSO2CF3を表す。
【0032】
同様に非常に特に好ましいのは、一般式(VIII)の化合物であって、ここで、
R1及びR2は、メチルを表し、
R3は、水素を表し、そして、
Yは、OSO2Me、OSO2(4-メチルフェニル)またはOSO2CF3を表す。
【0033】
式(VIII)の以下の化合物は、先行技術から既に知られている(WO2009/045479、Chemcats1879859-20-7、Chemcats1874998-32-9、Chemcats1601046-43-8):
【化15】
【0034】
したがって、これらの化合物は保護の範囲から除外される。
【0035】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)および(X)において、R1、R2、R3、R4、R5、YおよびMは、上記の定義を有する。
【0036】
式(II)、(III)、(IV)、(VI)、(VII)、(IX)および(X)の化合物は、市販されているか、または公知のプロセスに従って調製することができるかのいずれかである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による製法の一般的な説明:
本発明による方法の第1工程(1):
本発明による方法の第1の工程において、溶媒および希釈剤として、例えば、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンまたはメシチレン、またはこれらの溶媒および希釈剤の混合物を使用することができる。
【0038】
溶媒および希釈剤としては、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランまたはトルエンまたはこれらの溶媒および希釈剤の混合物が好ましい。
【0039】
特に好ましくは、テトラヒドロフランとトルエンとの混合物である。
【0040】
一般式(II)のブロモ芳香族化合物に基づくマグネシウムの量は、モル当たり0.9~1.5モル、好ましくはモル当たり1.0~1.3モルである。
【0041】
一般式(III)のグリニャール化合物を調製するためのマグネシウムと一般式(II)のブロモ芳香族化合物との間の反応は、原則として知られている様々な方法で、例えば、ヨウ素、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、1,2-ジブロモエタン、塩化トリメチルシリル、塩化メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム溶液、または一般式(III)のグリニャール化合物の既に入手可能な溶液の化学量論量以下の添加によって開始することができる。ヨウ素、1,2-ジブロモエタン、臭化エチルマグネシウム、および一般式(III)のグリニャール化合物の入手可能な溶液を使用することが好ましい。特に好ましくは、臭化エチルマグネシウムおよび一般式(III)のグリニャール化合物の入手可能な溶液が使用される。
【0042】
本発明の処理の第1工程(1)における反応温度は、10~70℃、好ましくは10~40℃である。
【0043】
第1の工程の生成物は単離されず、むしろ本発明の方法の第2の工程において溶液として使用される。
【0044】
本発明による方法の第2工程(2):
一般式(III)のグリニャール化合物を、一般式(IV)のホルムアミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N-ホルミルピペリジン、N-ホルミルモルホリンまたはN-ホルミルチオモルホリンと反応させる。使用は、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミドまたはN-ホルミルモルホリンで調製される。
【0045】
一般式(IV)のホルムアミドの量は、一般式(III)のグリニャール化合物1モル当たり0.9~2モル、好ましくは1モル当たり1~1.5モルである。
【0046】
もちろん、本発明の方法の第2の工程で使用される溶媒および希釈剤は、第1の工程で使用されたものである。
【0047】
反応温度は10~70℃、好ましくは10~40℃である。
【0048】
第2の工程の生成物は単離されず、むしろ第3の工程において溶液または懸濁液として使用される。
【0049】
本発明による方法の第3工程(3):
本発明の方法の第3の工程で使用される溶媒および希釈剤は、当然、第1および第2の工程で使用されたものである。
【0050】
一般式(V)の化合物の加水分解には、水との混合物中の種々の酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸または酢酸を使用することができる。好ましくは、塩酸または硫酸が使用される。
【0051】
反応温度は10~70℃、好ましくは20~50℃である。
【0052】
後処理は、濾過、相分離、抽出および蒸留などの有機化学の公知の方法に従って行われる。
【0053】
本発明による方法の第4工程(4):
本発明による方法の第4の工程では、例えば、以下のものを溶媒および希釈剤として使用することができる:エーテル、例えば、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン;ニトリル、例えばアセトニトリルまたはブチロニトリル;エステル、例えば酢酸メチルまたは酢酸ブチル;炭化水素、例えばヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレンまたはクロロベンゼン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノール;またはこれらの溶媒および希釈剤の混合物。
【0054】
一般式(VI)および(VII)の化合物の融点を超える温度で、溶媒または希釈剤の存在なしに水素化を実施することも可能である。
【0055】
溶媒および希釈剤としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸メチルまたはこれらの溶媒および希釈剤の混合物が好ましく、溶媒または希釈剤の存在なしに一般式(VI)および(VII)の化合物の融点より高い温度で実施することも好ましい。
【0056】
本発明の方法の第4の工程における触媒として、原則として、ベンズアルデヒドの水素化に適した対応するベンジルアルコールを与える全てのもの、例えば、金属パラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、コバルトまたはニッケルを有する触媒を使用することができる。金属ルテニウム、コバルトまたはニッケルを有する触媒が好ましい。
【0057】
水素化は、均一に溶解した触媒および不均一触媒の両方を用いて実施することができる。例としては、コバルトスポンジ触媒(ラネーコバルト)、ニッケルスポンジ触媒(ラネーニッケル)、パラジウムオンカーボン、プラチナオンカーボン、ルテニウムオンカーボン、{ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru-MACHO、CAS 1295649-40-9)、ジクロロトリフェニルホスフィン[ビス(2-(エチルチオ)エチル)アミン]ルテニウム(II)(CAS 1462397-86-9)、[2-(アミノメチル)ピリジン](ジクロロ)(ジフェニルホスフィノブタン)ルテニウム(II)(CAS850424-32-7)、クロロ[N-[(1R,2R)-1,2-ジフェニル-2-[[3-(η6-フェニル)プロピル]アミノ-κN]エチル]-4-メチルベンゼンスルホンアミダト-κN]ルテニウム(CAS1192620-83-9)を含む。
【0058】
反応温度は20~200℃、好ましくは50~150℃である。
【0059】
水素化は、標準圧力または高圧で行うことができる。好ましくは、1~100バールの水素、特に好ましくは10~50バールの水素の高圧で作業する。
【0060】
後処理は、濾過、相分離、抽出および蒸留などの有機化学の公知の方法に従って行われる。
【0061】
本発明による方法の第5工程(5):
本発明による方法の第5工程では、例えば、以下のものを溶媒および希釈剤として使用することができる:エーテル、例えば、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン;ニトリル、例えばアセトニトリルまたはブチロニトリル;エステル、例えば酢酸メチルまたは酢酸ブチル;アミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドまたはN-メチルピロリドン;炭化水素、例えばヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレンまたはクロロベンゼン;またはこれらの溶媒および希釈剤の混合物。メチルシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンまたはこれらの溶媒および希釈剤の混合物が好ましい。
【0062】
Yが臭素である一般式(VIII)の化合物は、一般式(VII)の化合物を、臭化水素、N-ブロモスクシンイミド、三臭化リンまたは臭化チオニルのような臭素化剤と反応させることによる、原則として有機化学で公知の方法によって得ることができる。好ましくは、臭化水素または臭化チオニルが使用される。
【0063】
Yが塩素である一般式(VIII)の化合物は、一般式(VII)の化合物を、塩化水素、N-クロロスクシンイミド、三塩化リン、三塩化シアヌル、ホスゲンまたは塩化チオニルのような塩素化剤と反応させることによって、原則として有機化学で公知の方法によって得ることができる。好ましくは、塩化水素、ホスゲンまたは塩化チオニルが使用される。
【0064】
Yが、塩化水素、ホスゲンまたは塩化チオニルを使用する塩素である一般式(VIII)の化合物を調製する場合、高い収率を達成するために、最初に塩素化剤を充填し、一般式(VII)のベンジルアルコールを前記塩素化剤中に計量することが好ましい。塩化チオニルを最初に充填し、一般式(VII)のベンジルアルコールを前記塩化チオニル中に計量供給することが特に好ましい。
【0065】
YがOSO2Me、OSO2(4-メチルフェニル)またはOSO2CF3である一般式(VIII)の化合物は、一般式(VII)の化合物を対応する塩化スルホニルまたはスルホニル無水物と反応させることにより、原則として有機化学で公知の方法により製造することができる。
【0066】
本発明による方法の第6工程(6):
本発明による方法の第6工程では、例えば、以下のものを溶媒および希釈剤として使用することができる:メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル;アセトニトリルまたはブチロニトリルなどのニトリル;酢酸メチルまたは酢酸ブチルなどのエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドまたはN-メチルピロリドンなどのアミド;ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレンまたはクロロベンゼンなどの炭化水素;水、またはこれらの溶媒および希釈剤の混合物。メチルシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、クロロベンゼンまたは水またはこれらの溶媒と希釈剤との混合物が好ましい。
【0067】
一般式(IX)のシアン化剤としては、シアン化リチウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムを用いることができる。好ましくは、シアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムが使用される。
【0068】
使用されるシアン化物の量は、一般式(VIII)の化合物1モル当たり0.9~2モル、好ましくは1モル当たり1~1.5モルである。
【0069】
反応が溶媒と希釈剤の二相混合物中で起こる場合、それは一般に相間移動触媒の存在下で行われる。このような相間移動触媒は例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロリドまたはテトラデシルアンモニウムクロリド、またはこのようなテトラアルキルアンモニウム塩の混合物(例えば、Aliquat336)であり得る。
【0070】
相間移動触媒の量は、一般式(VIII)の化合物に対して0.01~10モル%、好ましくは0.1~5モル%である。
【0071】
反応温度は20~200℃、好ましくは50~150℃である。
【0072】
反応はまた、減圧または高圧で実施することもできる。
【0073】
後処理は、濾過、相分離、抽出および蒸留などの有機化学の公知の方法に従って行われる。
【0074】
本発明による方法の第7工程(7):
本発明による方法の第7の工程において、例えば、以下のものを溶媒および希釈剤として使用することができる:ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレンまたはクロロベンゼンなどの炭化水素;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール;水またはこれらの溶媒および希釈剤の混合物。メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレンもしくは水、またはこれらの溶媒および希釈剤の混合物が好ましい。
【0075】
反応が溶媒と希釈剤の二相混合物中で起こる場合、それは一般に相間移動触媒の存在下で行われる。このような相間移動触媒は例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロリドまたはテトラデシルアンモニウムクロリド、またはこのようなテトラアルキルアンモニウム塩の混合物(例えば、Aliquat336)であり得る。
【0076】
本発明の方法の第7の工程は、原則として、酸性またはアルカリ性条件下で実施することができる。
【0077】
酸性条件下で実施するために、塩酸、硫酸またはリン酸のような酸を水との混合物中で使用する。好ましくは、水との混合物中の硫酸が使用される。
【0078】
アルカリ性条件下で実施するために、塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムが使用される。好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが使用される。
【0079】
反応温度は50~250℃、好ましくは80~200℃である。
【0080】
反応はまた、減圧または高圧で実施することもできる。
【0081】
後処理は、濾過、相分離、抽出および蒸留などの有機化学の公知の方法に従って行われる。
【実施例】
【0082】
本発明は以下の実施例によってより詳細に説明されるが、それに限定されるものではない。
【0083】
実施例
実施例1:(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)臭化マグネシウム
【化16】
2.67g[109.9mmol]のマグネシウム削り状物およびヨウ素の小さな結晶を、アルゴン下で250mlの三つ口フラスコに最初に入れる。フラスコ内容物を、ホットエアガンにより、ヨウ素蒸気が見えるまで撹拌しながら加熱する。テトラヒドロフラン(THF)100ml中の4-クロロ-2,6-ジメチルブロモベンゼン21.7g[99mmol]の溶液約10mlをそれに添加し、反応の開始が識別可能になるまで50℃に加熱する。次いで、残りの反応物溶液をゆっくりと計量供給し、内部温度を冷却により50℃に保つ。続いて、撹拌をさらに1時間続ける。
【0084】
実施例2:(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)臭化マグネシウム
【化17】
20.05g[0.825モル]のマグネシウム削り状物を、アルゴン下で2リットルのジャケット付き容器にはじめに装入する。最初に、実施例1からの溶液50mlを25℃でそれに添加し、次いで、THF565ml中の4-クロロ-2,6-ジメチルブロモベンゼン164.6g[0.75モル]の溶液25gをそれに添加する。反応の開始は、発熱によって明らかである。次いで、内部温度が33℃を超えないように、反応物溶液の残りの量を2.5時間以内に計量供給する。最後に、さらに撹拌を35℃で1時間行う。少量のバッチ試料をヨウ素のTHF溶液中に撹拌し、その後のHPLC分析は、4-クロロ-2,6-ジメチルブロモベンゼンの完全な変換を示す。
【0085】
実施例3:(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)(ジメチルアミノ)メトキシド臭化マグネシウム
【化18】
185mlのTHF中の54.8g[0.75モル]のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の溶液を、約1時間以内に27~35℃で2lのジャケット付き容器中の実施例2からの溶液に計量供給する。続いて、撹拌を27~35℃でさらに1時間続ける。得られた生成物をさらに後処理することなく次の工程で使用する。
【0086】
実施例4:4-クロロ-2,6-ジメチルベンズアルデヒド
【化19】
402gの半濃塩酸を、15℃で2lジャケット付き容器中で実施例3からの反応混合物中に計量供給し、pHが1に下がるようにする。反応混合物を空にし、相を分離し、水相をそれぞれの場合に200mlのメチルtert-ブチルエーテル(MBTE)で3回抽出し、合わせた有機相を100mlの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥を硫酸ナトリウムで行い、濃縮を減圧下で行う。131.5gの黄色がかった固体が得られる。100℃、6ミリバールで低沸点不純物を除去した後、黄色がかった固体123.4gが残り、これは、GC分析による表題化合物90.7%を含有し、実施例2の出発物質に基づいて理論の83%の収率に相当する。
【0087】
GC/MS:M/e=167((M-1)+,35Cl、100%)、139(M-29、45%)。
1H-NMR(600MHz、CDCl3):δ=2.59(s、6H)、7.09(s、2H)、10.55(s、1H)ppm.
融点:59℃。
【0088】
実施例5:4-クロロ-2,6-ジメチルベンジルアルコール
【化20】
480mlのエタノール中89.2%[0.639モル]の純度を有する120.8gの4-クロロ-2,6-ジメチルベンズアルデヒドを、最初に2lのオートクレーブに入れる。3.6gのラネーコバルト(Actimet:各場合に水およびエタノールで3回洗浄)をそれに添加し、オートクレーブを閉じ、アルゴンで2回フラッシュし、次いで100℃および30バールの水素圧で16時間水素化を行う。室温に冷却し、排気した後、反応混合物をセライトを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。定量的
1H-NMRによると、90.4%の表題化合物からなる115.6gの製品が得られ、これは理論値の95.8%の収率に相当する。
【0089】
GC/MS:M/e=170(M+,35Cl、35%)、152(M-18,35Cl、100%)。
1H-NMR(600MHz、d6-DMSO):δ=2.34(s、6H)、4.44(d、J=5.3Hz、2H)、4.75(t、J=5.3Hz、1H)、7.06(s、2H)ppm.
融点(98.3%精製化合物):110.6℃。
【0090】
実施例6:4-クロロ-2,6-ジメチルベンジルアルコール
【化21】
4-クロロ-2,6-ジメチルベンズアルデヒド1g(純度94%)のテトラヒドロフラン10ml溶液をオートクレーブに加え、[2-(アミノメチル)ピリジン](ジクロロ)(ジフェニルホスフィノブタン)ルテニウム(II)(CAS850424-32-7)8mgおよびTHF中のカリウムtert-ブトキシドの1.7M溶液16μlをそれに加える。オートクレーブを10バールのアルゴンで2回フラッシュし、次いで50バールの水素を50℃で18時間それに適用する。室温に冷却し、排気した後、GC/MS分析による91.7%の純度で表題化合物を得る。
【0091】
GC/MS:M/e=170(M+,35Cl、35%)、152(M-18,35Cl、100%)。
【0092】
実施例7:2-(ブロモメチル)-5-クロロ-1,3-ジメチルベンゼン
【化22】
48%濃度の臭化水素酸水溶液60ml中、4-クロロ-2,6-ジメチルベンジルアルコール8.53g[50mmol]を92℃で4時間加熱する。反応混合物を室温に冷却し、塩化メチレン50mlをそれに添加する。相を分離し、水相を各回50mlの塩化メチレンで2回抽出する。合わせた有機相を、50mlの水、次いで30mlの飽和重炭酸ナトリウム溶液で振盪することによって抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮する。これにより、12.22gの固体が得られ、これは、GC/MS分析によれば、91.1%の表題化合物を含み、これは理論値の95.3%の収率に相当する。
【0093】
GC/MS:M/e=232(M+,35Cl,79Br、5%)、153(M-79、100%)。
【0094】
実施例8:2-(クロロメチル)-5-クロロ-1,3-ジメチルベンゼン
【化23】
14.94g[0.19モル]の塩化チオニルを最初に充填し、72℃に加熱し、75mlのトルエン中の16.47g[0.0965モル]の4-クロロ-2,6-ジメチルベンジルアルコールの温(74℃)溶液を1時間以内にそれに滴下する。その後、72℃で90分間さらに撹拌する。過剰の塩化チオニルを留去し、残渣をいくらかのセライト上で濾過し、減圧下で濃縮する。これにより、緑がかった固体20.21gが得られ、これは、GC/MS分析によれば表題化合物87.2%を含有し、これは理論値の96.5%の収率に相当する。
【0095】
GC/MS:M/e=188(M+,35Cl、12%)、153(M-35、100%)、119(M-36、72%)。
1H-NMR(600MHz、CDCl3):δ=2.33(s、6H)、4.53(s、2H)、6.97(s、2H)ppm.
融点:63.5~64℃。
【0096】
実施例9:(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)アセトニトリル
【化24】
74.4%の純度の2-(クロロメチル)-5-クロロ-1,3-ジメチルベンゼン70.8gの溶液を、最初にトルエン105mlに入れ、水35mlおよびAliquat336の1.13gをそれに加え、混合物を65℃に加熱し、シアン化ナトリウム16.38g[0.334モル]の水55ml中溶液を、激しく撹拌しながら計量供給する。続いて、撹拌を80℃で16時間行う。相を室温で分離し、有機相を120mlの飽和重炭酸ナトリウム水溶液および100mlの水の2回で洗浄し、乾燥を硫酸ナトリウム上で行い、濃縮を減圧下で行う。これにより、61.9gの固形物が得られ、これは、定量的
1H-NMRによれば、標題化合物69.8%を含有し、これは理論値の86.3%の収率に相当する。100mlのイソプロパノールから再結晶すると、33.1gの固体が得られ、これは、GC/MS分析によれば99.2%の表題化合物を含有し、これは理論値の65.6%の収率に相当する。
【0097】
GC/MS:M/e=179(M+,35Cl、57%)、152(M-27、100%)、144(70%)、118(90%)。
1H-NMR(600MHz、d6-DMSO):δ=2.34(s、6H)、3.89(s、2H)、7.2(s、2H)ppm.
融点:87.6℃。
【0098】
実施例10:(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)酢酸
【化25】
純度82%の(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)アセトニトリル28.1gおよび純度84.8%の(4-クロロ-2,6-ジメチルフェニル)アセトニトリル45.6gを最初にエタノール300mlに入れ、45%水酸化ナトリウム溶液122gをそれに加え、攪拌を、還流下で48時間行う。室温に冷却した後、反応混合物を氷上に置き、濃塩酸でpH1に調整し、固体を吸引し、水で洗浄し、乾燥させる。これにより76.04gの固形物が得られ、この固形物は定量
1H-NMRによれば86.8%の純度を有し、これは理論値の96.8%の収率に相当する。
【0099】
GC/MS:M/e=198(M+,35Cl、23%)、153(M-45、100%)、115(23%)。
1H-NMR(600MHz、d6-DMSO):δ=2.34(s、6H)、3.58(s、2H)、7.1(s、2H)ppm.
融点(再結晶後):188.7℃。
【0100】
実施例11:(2,6-ジメチルフェニル)臭化マグネシウム
【化26】
4.01g[165mmol]のマグネシウム削り状物およびヨウ素の小さな結晶を、アルゴン下で250mlの三つ口フラスコに最初に入れる。フラスコ内容物を、ホットエアガンにより、ヨウ素蒸気が見えるまで撹拌しながら加熱する。2,6-ジメチルブロモベンゼン27.76g[150mmol]のテトラヒドロフラン(THF)150ml中の溶液約10mlをそこに加え、反応開始が判別できるようになるまで50℃に加熱する。次いで、残りの反応物溶液をゆっくりと計量供給し、内部温度を冷却により50℃に保つ。続いて、撹拌をさらに1時間続ける。
【0101】
実施例12:(2,6-ジメチルフェニル)臭化マグネシウム
【化27】
最初に、66.62g[2.741モル]のマグネシウム削り状物を、アルゴン下で6リットルのジャケット付き容器に入れる。最初に、実施例11からの溶液を25℃でそれに添加し、次いで、THF800mlを加える、2,6-ジメチルブロモベンゼン461.2g[2.492モル]の1200mlのTHF中の溶液100gを、次に30℃でそれに添加する。反応の開始は、発熱によって明らかである。次いで、内部温度が33℃を超えないように、反応物溶液の残りの量を100分以内に計量供給する。最後に、さらに撹拌を35℃で2時間行う。少量のバッチ試料をヨウ素のTHF溶液中に撹拌し、その後のHPLC分析は、2,6-ジメチルブロモベンゼンの完全な変換を示す。
【0102】
実施例13:(2,6-ジメチルフェニル)(ジメチルアミノ)メトキシド臭化マグネシウム
【化28】
6リットルのジャケット付き容器中、THF500ml中のDMF193.1g[2.642モル]の溶液を、実施例12からの溶液に、24~29℃で約90分以内に計量供給する。続いて、撹拌を27℃でさらに1時間続ける。得られた生成物をさらに後処理することなく次の工程で使用する。
【0103】
実施例14:2,6-ジメチルベンズアルデヒド
【化29】
1500gの半濃塩酸を、15~20℃で6lジャケット付き容器中、実施例13からの反応混合物に計量導入し、pHが1に低下するようにし、そして混合物を室温でさらに3時間撹拌する。反応混合物を空にし、相を分離し、水相を、それぞれの場合において500mlのMTBEで2回抽出し、合わせた有機相を500mlの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥を硫酸ナトリウム上で行い、濃縮を減圧下で行う。これにより318.7gの黄色がかった固形物が得られ、これは定量的
1H-NMRによれば84.0%の表題化合物を含み、これは実施例12の出発物質に基づいて、理論値の75.5%の収率に相当する。
【0104】
GC/MS:M/e=133((M-1)+,35Cl、100%)、105(M-29、100%)。
1H-NMR(600MHz、CDCl3):δ=2.55(s、6H)、7.15(m、2H)、7.39(m、1H)、10.53(s、1H)ppm。
【0105】
実施例15:2,6-ジメチルベンジルアルコール
【化30】
1300mlのエタノール中、溶液としての実施例14からの化合物318.7gを、最初に5lのオートクレーブに入れた。3.9gのラネーコバルト(Actimet)をそれに添加し、これを水で2回、そしてエタノールで3回洗浄し、閉じたオートクレーブをアルゴンで2回フラッシュし、次いで水素化を100℃および30バールの水素圧で34時間実施する。続いて、反応混合物をセライトを通して濾過し、次いで減圧下で濃縮する。これにより299.6gの固体が得られ、これはGC/MS分析によれば74.7%の表題化合物を含み、これは理論値の74%の収率に相当する。
【0106】
GC/MS:M/e=138(M+、20%)、118(100%)。
【0107】
実施例16:2-(クロロメチル)-1,3-ジメチルベンゼン
【化31】
100mlのトルエン中、91.4g[0.768モル]の塩化チオニルを最初に充填し、72℃に加熱し、700mlのトルエン中の純度74.7%の2,6-ジメチルベンジルアルコール100gの溶液を1時間以内にそれを滴下する。続いて、72℃で1時間、さらなる撹拌を行う。過剰の塩化チオニルを留去し、残渣をいくらかのセライト上で濾過し、減圧下で濃縮する。これにより、107.2gの褐色油が得られ、これはGC/MS分析によれば71.0%の表題化合物を含有し、これは理論値の89.7%の収率に相当する。
【0108】
GC/MS:M/e=154(M+,35Cl、17%)、119(M-35、100%)。
【0109】
実施例17:2,6-ジメチルフェニルアセトニトリル
【化32】
最初に、純度68.9%の2-(クロロメチル)-1,3-ジメチルベンゼン105.6gの溶液をトルエン150mlに入れ、水50mlおよび1.9gのAliquat336を加え、混合物を65℃に加熱し、水80ml中のシアン化ナトリウム27.68g[0.565モル]の溶液を激しく撹拌しながら計量供給する。続いて、撹拌を80℃で16時間行う。さらに0.85gのAlitquat336および2.3gのシアン化ナトリウムをそれに添加し、80℃で18時間撹拌する。相を室温で分離し、有機相を120mlの飽和重炭酸ナトリウム水溶液および100mlの水の2回で洗浄し、乾燥を硫酸ナトリウム上で行い、濃縮を減圧下で行う。これにより、85gの粗生成物が得られ、これは、GC/MS分析によれば表題化合物79.3%を含み、これは理論値の98.6%の収率に相当する。
【0110】
GC/MS:M/e=145(M+、40%)、118(M-27、100%)。
【0111】
実施例18:2,6-ジメチルフェニル酢酸
【化33】
最初に、純度94%の2,6-ジメチルフェニルアセトニトリル11gを、トリエチレングリコール100mlおよび水25mlの混合物に入れる。28.1gの(85%)KOHペレットをそれに添加し、120℃で18時間撹拌する。混合物を50℃に冷却するまで放置し、次いで500mlの氷冷水を反応混合物中に撹拌し、反応混合物を32%塩酸でpH1に調整し、固体を濾別し、各々の場合75mlの水で2回洗浄し、乾燥する。これにより、9.89gの固体が得られ、これはHPLC分析によれば96.3%の表題化合物を含み、これは理論値の81.7%の収率に相当する。
【0112】
GC/MS(sil.):M/e=236(M+(sil.)、7%)、221(M+(sil.)-15、10%)、192(10%)、119(13%)、73(100%)。