(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】動脈アクセスグラフト及び血液除去アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230922BHJP
A61M 60/109 20210101ALN20230922BHJP
A61M 60/232 20210101ALN20230922BHJP
A61M 60/279 20210101ALN20230922BHJP
【FI】
A61M1/36 149
A61M60/109
A61M60/232
A61M60/279
(21)【出願番号】P 2020572916
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 GB2019051586
(87)【国際公開番号】W WO2020002872
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517165302
【氏名又は名称】スペクトラム メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】タマリ、 ジェレミー
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/112755(WO,A2)
【文献】特表2018-513732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0007931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 60/109
A61M 60/232
A61M 60/279
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動圧を受ける血液用の動脈アクセスグラフトであって、
前記動脈アクセスグラフトは腋窩動脈への外科的取り付けのため及びアクセスポートを通して前記腋窩動脈へのアクセスを提供するために構成され、
前記動脈アクセスグラフトは主管腔を画定する壁を含み、
前記壁の一部が前記壁を通る前記動脈アクセスグラフトへの前記アクセスポートを含み、
前記アクセスポートは、
少なくとも200mmHg(0.
263気圧
)の駆動圧に曝されたときに液密性を維持するために十分に強い自己閉鎖挙動を提供する付勢構造を含み、これにより、前記アクセスポートは、前記動脈アクセスグラフトを通って流れる加圧された血液を入れるのに十分な液密性である、動脈アクセスグラフト。
【請求項2】
前記付勢構造は、自己封止膜及び/又は弁を含む、請求項1に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項3】
前記付勢構造の自己閉鎖挙動は、前記壁の自己閉鎖挙動よりも強い、請求項1又は2に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項4】
前記アクセスポートは、アクセス管腔を含むアクセスアームを含み、前記アクセスアームは、前記壁から延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項5】
前記アクセス管腔は、前記主管腔よりも小さい直径を有する、請求項4に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項6】
前記付勢構造は、前記動脈アクセスグラフトの主管腔に対して遠位にある前記アクセスアームの端部を封止するように配置される、請求項4又は5に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項7】
前記アクセスアームは、前記動脈アクセスグラフトの壁から少なくとも10°、20°、30°、又は少なくとも45°の角度で延びる、請求項4から6のいずれか一項に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項8】
前記主管腔は、前記動脈アクセスグラフトの全長の少なくとも一部に沿って延びて前記主管腔を少なくとも2つの通路に分離する仕切り構造を含み、任意選択で、前記通路のうちの1つの断面が別の通路よりも大きい、請求項1から7のいずれか一項に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項9】
前記アクセスポートは1つの通路に結合する、請求項8に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項10】
前記仕切り構造は折り畳み可能及び/又は可撓性である、請求項8又は9に記載の動脈アクセスグラフト。
【請求項11】
左心室内腔から血液を除去するのに適した血液除去アセンブリであって、
請求項1から10のいずれか一項に記載の動脈アクセスグラフトと、
前記動脈アクセスグラフトのアクセスポートを通り抜けるように寸法決めされたカテーテルであって、前記アクセスポートの外側から前記動脈アクセスグラフトの端部を越えて延びるのに十分な長さのカテーテルと
を含む血液除去アセンブリ。
【請求項12】
前記カテーテルは、提供される流れ制御デバイスへの接続に適したコネクタを含み、任意選択で、前記コネクタは、ルアーコネクタである、請求項11に記載の血液除去アセンブリ。
【請求項13】
前記カテーテルは、戻り端又はピッグテール構成を含む、請求項11又は12に記載の血液除去アセンブリ。
【請求項14】
前記血液除去アセンブリは、前記カテーテルを誘導するために、前記動脈アクセスグラフトを通って延びるのに十分な長さの取り外し可能なガイドワイヤをさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の血液除去アセンブリ。
【請求項15】
前記血液除去アセンブリは、前記カテーテルを通って流れる流体の流量を表す流量値を測定するように構成された流量センサをさらに含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の血液除去アセンブリ。
【請求項16】
前記流量センサは、前記カテーテルと一体であるか又は前記カテーテルに取り付けられている、請求項15に記載の血液除去アセンブリ。
【請求項17】
前記流量値を取得し、前記流量値に応答して流れ制御デバイスの流れ制御パラメータを調節するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項15又は16に記載の血液除去アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管アクセスチューブ、特に動脈アクセスグラフトとして使用されるチューブに関する。本発明はまた、このような血管アクセスチューブを使用する血液除去方法及びアセンブリに関する。例示的な用途において、本発明は、左心室内腔から血液を除去するために使用される。
【背景技術】
【0002】
静脈-動脈の体外膜型人工肺による酸素化(ECMO)又は左心室補助術などの体外換気術の間、血液が心腔、特に左心室内腔に蓄積すると問題が生じる可能性がある。
【0003】
左心室は心臓で最も厚い筋肉であり、健康な人では、心臓組織の「ポンピング」作業のほとんどを行うことが期待される。左心室はまた、その代謝要求を満たすためにそれ自体に大量の血液供給を必要とする。左心室が機能しなくなった場合、治療は、左心室を支援及び/又は回復させるために、左心室から要求されるポンピング作業を減らし、左心室に酸素化された血液を供給することを含む。この処置は、「左心室補助」又は「左心バイパス」と呼ばれる。
【0004】
心室筋に向かう血流は、大動脈と心室壁との圧力差によって決まる。血液が左心室内腔に閉じ込められると、圧力差が減少し、その結果、心筋を通る血流が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、左心室からの血液の除去を容易にするシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載の、駆動圧を受ける流体用の血管アクセスチューブが提供される。血管アクセスチューブは、主管腔を画定する壁を含み、壁の一部は、壁を通してチューブ内に導入される物体用のアクセスポートを含み、アクセスポートは、最大50mmHg(0.0658気圧)の駆動圧に曝されたときに液密性を維持するために十分に強い自己閉鎖挙動を提供する付勢構造を含み、これにより、アクセスポートは、血管アクセスチューブを通って流れる加圧流体を入れるのに十分な液密性である。
【0007】
血管アクセスチューブは、動脈吻合に使用される動脈アクセスチューブなどの、いわゆる「グラフト」(外科的取り付け具)であることができる。当業者が理解するように、血管アクセスチューブの管腔を画定する壁は、チューブを通る血流を可能にする管状構造を有する。そこを通って送り出される血液を入れるために、このようなアクセスチューブは、以下により詳細に説明される駆動圧に耐えることができる。
【0008】
動脈アクセスチューブは、腋窩動脈、例えば右腋窩動脈にアクセスするために使用され得る。右腋窩動脈は大動脈に、したがって大動脈弁につながっており、その隣に左心室がある。腋窩動脈にアクセスすることにより、血管アクセスチューブは、腋窩動脈へのアクセス及び大動脈弁を横切って左心室への任意選択の延長を必要とするカテーテル又は他の好適なデバイス用のポートとして使用することができる。左心室へのカテーテルは、「左心室補助」、左心室支持、AVサポート、AV ECMO、又は心臓バイパス術として一般に知られる処置の間、流体、特に血液の除去を容易にする。
【0009】
血管アクセスチューブの例示的な使用は、ステントなどの1つ以上の冠状動脈インターベンションを提供するための冠状動脈へのアクセス部位としてであることができる。代わりに、又は加えて、血管アクセスチューブは、脈管構造に色素などの造影剤を提供するために脈管構造にアクセスするのに使用することができる。次いで、脈管構造又はその一部は、例えば異常の有無を確認するために、迅速かつ容易に画像化することができる。しかしながら、チューブが移植された後に管腔(チューブ内)にアクセスすることは不可能な場合がある。本発明は、管壁を通した管腔へのアクセスを容易にする。
【0010】
導入される物体は、グラフトの壁を通して横方向に導入されるカテーテルであることができる。「横方向」の導入とは、物体がチューブの両端の開口部を通してではなく、チューブの壁を通して管腔に挿入又は導入されることを意味する。
【0011】
グラフトの壁に穴を開けることは、加圧された血液が制御不能にそこから飛び散るグラフトの壁の穴の原因となるため、望ましくない場合がある。自己閉鎖アクセスポートの目的は、それを通してカテーテルなどの物体をチューブの主管腔に挿入することができかつチューブを通る液密チャネルを維持しながら外部の物体の取り出しを可能にする、壁内の構造を提供することである。
【0012】
自己閉鎖挙動は、提供される物体の導入によってアクセスポートが貫通されたときに液密状態を維持するために十分に強く、かつ物体の取り出し後に液密状態を維持するために十分に強い。
【0013】
十分に液密性であることにより、シールは、血液駆動圧及び患者に通常見られる血流速度で血管系を通って流れる血液などの流体を含むことができることが理解される。このような圧力は、血管の種類及び位置、患者の姿勢及び身長など、いくつかの状況によって異なる。10mmHg未満の圧力差が、通常毎分最大5リットルの領域で血液を駆動するのに十分な場合があり、駆動圧は、約100mmHgの低い血圧(すなわち、大気圧(1気圧=760mmHg)を超える)であることができる。駆動圧は、通常の使用時はより低いことができるが、チューブ壁で観察可能な圧力は一時的に上昇する場合がある。例えば、閉塞の場合、圧力はより高くなる場合がある。
【0014】
この点に関して、血液は、約200mmHgの(大気圧を超える)駆動圧で動脈アクセスグラフトを通して圧送され得る。心臓の活動がない場合、駆動圧は、ローラーポンプ又は遠心ポンプなどの外部の流れ制御デバイスによって提供され得る。
【0015】
チューブ管腔では、閉塞の場合、閉塞が除去されるまで又はポンプが弱められるまで流れ制御デバイス(ポンプ)が圧送し続けると、圧力が上昇することがある。その場合、管腔内の圧力は一時的に上昇し、外部の流れ制御デバイスの駆動圧に近づくことがあり、例えば駆動圧は200mmHg又は350mmHgに達することがある。通常、これより高い値は予想されない。最大200mmHg又は最大350mmHgの管腔液圧で自己封止状態を維持することができるアクセスポートは、動脈アクセスグラフトに実質的に液密な構成を提供し、一時的な圧力上昇にも耐える。いくつかのシナリオ、例えば試験目的では、それより低い駆動圧(例えば、50mmHg)に耐える構成で十分であると考えられる。
【0016】
スケールの説明を提供するために、動脈アクセスグラフトは、約8mmの直径を有することができ、導入されるカテーテルは、約8「フレンチ」又は2.33mm(1mm=3フレンチ)を有することができる。直径8mmのチューブの側壁に開けられる2.3mmの穴は、大きな穿刺となる。アクセスポートは、そのサイズの穴を自己封止できるだけでなく、最大200mmHgの駆動圧でアクセスポートを液密に保つことができる構造を提供する。設計には、最大50mmHg、最大100mmHg、最大150mmHg、最大200mmHg、最大250mmHg、最大300mmHg、最大350mmHg、又は最大400mmHgの駆動圧で液密性を維持するアクセスポートが含まれ得る。
【0017】
付勢構造は、提供される血液循環ポンプの駆動性能に関して十分に強い自己閉鎖挙動を有することができる。例えば、血液循環ポンプの例示的な最大駆動圧は、350mmHgであることができる。付勢構造は、350mmHgの駆動圧に耐えるような寸法にされ得る。
【0018】
付勢構造の封止性/アクセシビリティ特性は、提供される物体の侵入前、侵入中、侵入後、すなわち物体の導入前、物体が液密封止を通して配置されている間、及び物体が取り出された後、アクセスチューブの外部に対して主管腔の液密封止を維持することができる可逆的に閉鎖可能な構造を提供する。アクセスポートは、必要に応じて、管腔への「オンデマンド」アクセスを提供する。
【0019】
付勢構造は、自己閉鎖機構であると理解することができる。「自己閉鎖」により、自己閉鎖構造に開口が形成されるか又は存在する場合、自己閉鎖構造は、開口を封止、閉鎖、又は収縮することができ、かつ/又は、構造が液密性を維持するように、開口を通して挿入される物体との境界を形成することができることが理解されるであろう。当業者は、最大50mmHg又はそれ以上の駆動圧を有する流体を収容することができる自己閉鎖構造を特定するのに困難はないであろう。
【0020】
いくつかの実施形態では、付勢構造は自己封止膜を含む。
【0021】
自己封止膜は、最初は開口部なしで提供することができ、ある場所に穴を開けると、その場所を封止するように閉じ、あたかも膜に穴が開いていないかのように実質的に液密性になる。止血用自己封止膜などの好適な自己封止膜は、当業者に知られている。
【0022】
いくつかの実施形態では、付勢構造はバルブを含む。
【0023】
アクセスポートは、スリットバルブ又はダックビルバルブなどの構造内に既に存在する開口を含み得る。付勢構造は、加圧流体によって液密状態に付勢されるように配向されたバルブによって提供され得る。アクセスポートは、止血弁によって構成され得る、自己閉鎖挙動を提供する付勢構造を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、付勢構造の自己閉鎖挙動は、壁の自己閉鎖挙動よりも強い。
【0025】
当然のことながら、アクセスポートは、付勢構造によって、アクセスポートのない壁の残りの部分よりも強い自己閉鎖挙動を有することができる。これに関連して、グラフトなどの壁の残りの部分は、例えば、生体適合性の目的又は安定性の要件のために、再封止性以外の特性を考慮して製造することができ、これは本質的により少ない自己封止性を提供することができる。これは、壁の残りの部分に開口が形成され、壁の残りの部分は開口を閉じることができないことを意味する。
【0026】
より強い自己閉鎖挙動は、主管腔壁よりも厚いシール又はバルブ構造によって提供され得る。より強い自己閉鎖挙動は、主管腔壁よりも強い弾性変形可能性を有するシール又はバルブ構造によって提供され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、アクセスポートは、アクセス管腔を含むアクセスアームを含み、アクセスアームは、壁から延びる。
【0028】
本発明の文脈において、「アクセスアーム」という用語は、血管アクセスチューブから突出する管腔を有するチューブを意味するものと理解されるであろう。アクセス管腔は、主管腔に結合する。シールは、アクセスアームの壁結合端に、及び/又はアクセスアームに沿った途中のシール部分により、又は遠位端(壁結合端の反対側の端部)に配置され得る。
【0029】
アクセスアームにシールを設けることにより、他の方法では変更されていないグラフト構造に対して製品設計段階での様々なシールタイプの組み込みを容易にする。例えば、異なる自己封止強度を有する、異なる厚さのシールを、主管腔壁の構造に影響を与えることなく、必要に応じてアクセスアームに設けることができる。アクセスアームは、物体、例えばカテーテルを血管アクセスチューブ内に誘導するのを容易にする。
【0030】
当然のことながら、アクセスアームは、第1の端部及び第2の端部を有する。端部の一方は、血管アクセスチューブの管腔に対して遠位に位置し、すなわち自由端である。一方の端部は血管アクセスチューブにつながる。
【0031】
アクセスアームは、血管アクセスチューブと一体であること、例えば、一体成形構造又は織物構造であることができる。これは、アクセスアーム及び血管アクセスチューブが、別々のコンポーネントの結合ではなく、1つのコンポーネントとして形成されることを意味すると理解されるであろう。血管アクセスチューブは、1つのアームがアクセスポートによってシールされ、他の2つのアームが血管アクセスチューブの主管腔を提供する、「Y」又は「T」字の接合部分の形態で提供され得る。他の実施形態では、アクセスアームは、結合された、例えば、縫合され、接着され、又は他の方法で互いに結合された血管アクセスチューブに対して別個のコンポーネントであることができる。アクセスアーム及び血管アクセスチューブが一体であるか又は結合されているかにかかわらず、アクセスアーム及び血管アクセスチューブは、主管腔及びアクセス管腔を結合する構造を提供し、閉塞がない場合に、血管アクセスチューブの管腔と流体連通することを可能にする。
【0032】
いくつかの実施形態では、アクセスアームは、血管アクセスチューブの壁と同じ材料から形成される。他の実施形態では、アクセスアームは、血管アクセスチューブの壁とは異なる材料から形成される。
【0033】
血管アクセスチューブは、第1の端部及び第2の端部を有することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、アクセスポートは、血管アクセスチューブの第2の端部よりも第1の端部に近い、すなわち、アクセスポイントが中心から外れている、血管アクセスチューブの壁の一部を含む。いくつかの実施形態では、アクセスポートは、血管アクセスチューブの中間点と第1の端部との間の血管アクセスチューブの壁の一部を含む。いくつかの実施形態では、アクセスポートは、血管アクセスチューブの中間点と第2の端部との間の壁の一部を含む。アクセスポートは、例えば、血管アクセスチューブの中間点よりも第2の端部に近い、チューブの近位又は遠位の4分の1の壁の一部を含むことができる。代替的に、アクセスポートは、血管アクセスチューブの中間点よりも第1の端部に近い管状壁の一部を含むことができる。アクセスポートを中心から外して配置することは、ポートへの、ひいては患者へのアクセスの容易性を改善することができる。
【0034】
特に、使用中、血管アクセスチューブが患者に埋め込まれるとき、少なくともアクセスポートを含む壁の一部、又はアクセスアームを含む実施形態では、少なくとも血管アクセスチューブの管腔に対して遠位にあるアクセスアームの端部が、その長さが患者の外側に延びるように十分に長いことが想定される。これにより、アクセスポートを通した患者の脈管構造へのアクセスが容易になる。
【0035】
アクセスアームは、カテーテルなどの物体が主管腔に入る前に押される必要がある距離を増大させ、これにより、鋭利な物体がアクセスポートを通して力で押されたときに、アクセスポートの反対側の内側主管腔壁を損傷するリスクが低下する。
【0036】
アクセスアームは、アクセスポートがある場所でアクセスチューブの把持を容易にする。これが実際にどのように機能するかを想像すると、湾曲した外壁を通して鋭利な物体を押すことは、チューブの軸に沿って鋭利な物体を押すよりも多くの技術を必要とするので、アクセスアームを設けることにより、アクセスポートを意図したとおりに貫通できないリスクが低下する。
【0037】
アクセスアームは、アクセスポートを永久に閉じることが望ましい場合に、アクセスポートを締め具で締めるか、挟むか、又は縫い合わせることによって、アクセスポートを閉じる機能を有する。
【0038】
アクセスアームは、血管アクセスチューブのその隣接するチューブ部分の一方又は両方よりも長くても、同じ長さでも、又は短くてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、アクセスアームの管腔は、血管アクセスチューブの管腔よりも小さい直径を有する。これは、血管アクセスチューブの管腔よりも小さい直径を有する物体、例えばステント又はカテーテルを誘導するのに役立つ。
【0040】
血管アクセスチューブの管腔の直径は、チューブが患者の脈管構造に接続又は挿入され得るように構成される。適切な直径は当業者に知られているであろう。
【0041】
いくつかの実施形態では、血管アクセスチューブの管腔は、少なくとも3mm、4mm、5mm、又は6mm、及び/又は8mm、9mm、10mm、11mm、又は12mm未満の直径を有する。
【0042】
アクセスアームの管腔は、12mm未満、10mm未満、9mm未満、8mm未満、7mm未満、6mm未満、5mm未満、4mm未満、3mm未満、又は2mm未満の直径を有することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、付勢構造は、血管アクセスチューブの主管腔に対して遠位にあるアクセスアームの端部を封止するように配置される。
【0044】
シール構造は、アクセスアームの遠位端の近く又は遠位端に配置することができる。代替的に、シール構造は、アクセスアームの壁結合端(すなわち血管アクセスチューブに近い端部)の近く又は壁結合端にあることができる。複数のシール構造がアクセスアームに設けられ得る。例えば、シール構造が遠位端の近くに設けられ、シール構造が近位端の近くに設けられてもよい。直列に接続された複数の可逆的に閉鎖可能な構造は、1つのシールが機能しなくなった場合にフェールセーフの閉鎖を提供する。
【0045】
アクセスアームは、血管アクセスチューブの管状壁から少なくとも10°、少なくとも20°、少なくとも30°、少なくとも40°、少なくとも45°、少なくとも50°、少なくとも60°、少なくとも70°、少なくとも80°、少なくとも90°、少なくとも100°、少なくとも110°、少なくとも120°、少なくとも130°、少なくとも140°、少なくとも150°、少なくとも160°又は少なくとも170°の夾角で延びることができる。夾角は、血管アクセスチューブの第1の端部から測定されるものとして規定されることが理解されるであろう。
【0046】
いくつかの実施形態では、アクセスアームは、血管アクセスチューブの管状壁から、10°未満、20°未満、30°未満、40°未満、45°未満、50°未満、60°未満、70°未満、80°未満、90°未満の角度で延びる。
【0047】
アクセスアームが血管アクセスチューブの壁から約90°の角度で延びる実施形態では、アクセスアームは血管アクセスチューブの管腔の軸に対して実質的に垂直であることが理解されるであろう。
【0048】
当然のことながら、本発明のチューブ/アームは、例えば、可撓性材料又は可撓性壁構造の使用により可撓性であるため、脈管構造壁を損傷することなく患者の脈管構造の曲線及び直線に従うように調節され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、可撓性材料は、ポリマー又はコポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)又はPTFE)、ポリエチレンテレフタレート(ダクロン(登録商標))又はポリウレタンから成るか又はそれらを含む。ポリテトラフルオロエチレンは、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、可撓性材料は、繊維から形成された材料を含むか又は繊維から形成された材料から成る。例えば、可撓性材料は、織られた繊維性材料であることができる。線維は人造又は天然のものであることができる。織られた人造繊維の例はダクロン(登録商標)である。別の織られた人造繊維はポリウレタンである。他の好適な材料は当業者に知られているであろう。
【0051】
血管アクセスチューブ及び/又はアクセスアームの壁を形成する材料の中に又はその上に、1つ以上の追加の材料を埋め込むか又はコーティングすることができる。例えば、チューブの内側(すなわち、管腔に面したチューブの表面)は追加の材料でコーティングされ得る。代わりに又は加えて、チューブの外側(すなわち、管腔の外側のチューブの表面)は追加の材料でコーティングすることができる。追加の材料は、PTFE、ePTFE、ダクロン(登録商標)、ポリウレタン、又はそれらの任意の組合せを含み又はそれらから成り得る。
【0052】
追加の材料は、抗菌性金属などの抗菌性材料を含み又は抗菌性材料からなり得る。例示的な抗菌性金属は、金、銀又は銅を含む。追加の材料は、外側コーティングと内側コーティングとで同じであることができる。追加の材料は、外側コーティングと内側コーティングとで異なり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、主管腔は、チューブの全長の少なくとも一部に沿って延びて主管腔を少なくとも2つの通路に分離する仕切り構造を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、通路のうちの1つの断面(チューブ軸に垂直な)は、別の通路よりも大きい。
【0055】
当然のことながら、仕切り構造により、第1の通路及び第2の通路は流体的に互いに隔離されている。仕切り壁は、血管アクセスチューブの全長の少なくとも一部に沿って延び得る。このようにして、血管アクセスチューブの管腔全体の一部が、第1の通路及び第2の通路に分割される。管腔を複数の通路に分離するために、複数の仕切りを設けることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、アクセスポートは1つの通路に結合する。
【0057】
アクセスポートは、通路のうちの1つのみへのアクセスを提供するように配置され得る。これにより、一方の通路はアクセスポートを通してアクセス可能であり、他方の通路は仕切り構造によってアクセスポートから流体的に隔離される。他の通路は、血管アクセスチューブの第1の端部又は第2の端部を通してアクセス可能なままであることが理解されるであろう。
【0058】
仕切り構造は、第1の通路内の血流を、カテーテル又はステントなどの第2の通路内の挿入された物体又はデバイスから分離するのを補助することができる。
【0059】
仕切り構造はまた、血管アクセスチューブを通して挿入された物体を誘導及び/又は支持するのを補助するために、ガイドチャネル及び/又は足場の機能を提供することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1の通路の断面(すなわち、円形チューブの直径)は、第2の通路の断面より大きいことができる。
【0061】
内部仕切り構造は、折り畳み可能であることができる。例えば、内部仕切り構造は、プリーツ/折り畳みを伸ばすことによって構造を拡張するか又はプリーツ/折り畳みを形成することによって構造を折り畳むことができる、プリーツ構造又は折り畳み構造を有することができる。同様に、仕切り構造は、その壁の接触点間の直接の壁と壁の接触距離にまたがるのに必要な長さよりも長いことができる。仕切り構造は、壁と壁との接触点から内腔の周囲に円周方向にあることができるように十分に長いことができる。通路のうちの1つのみに加圧流体が供給される場合、仕切り構造は、支持構造(これが通路を通して挿入される場合のカテーテルなど)がない場合、他の通路の方向に曲がる/倒れることが予想される。したがって、第2の通路が空である場合、第1の通路は実質的に主管腔の全断面まで拡張可能である。
【0062】
いくつかの実施形態では、内部仕切り構造は、可撓性材料を含むか又は可撓性材料から成る。例示的な可撓性材料は、本明細書の別の箇所に記載されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、血管アクセスチューブは、請求項11に記載の、左心室内腔から血液を除去するのに適した血液除去アセンブリに含まれる。アセンブリは、血管アクセスチューブに加えて、アクセスポートを通り抜けるように寸法決めされ、かつアクセスポートの外側から血管アクセスチューブの端部を越えて延びるのに十分な長さのカテーテルを含む。
【0064】
上述のように、血管アクセスチューブは、動脈アクセスグラフトであることができる。動脈アクセスグラフトの典型的な直径は約8mmである。カテーテルの直径は、約8フレンチ(2.66ミリ)の領域であることができる。アクセスポートは、カテーテル直径よりも幾分か大きい直径、約10~2フレンチ(3.33から4mm)を有することができるため、カテーテルを収容するような寸法である。
【0065】
カテーテルの長さは、血管アクセスチューブよりもかなり長いことができるため、左心室内腔に到達するのに適している。
【0066】
カテーテルは、対象者への挿入に適したチューブであると理解されるであろう。チューブは、流体を対象者から除去及び/又は対象者に導入するのに適している。したがって、カテーテルは、左心室内腔から停滞及び/又は凝固した血液を除去するために使用されることが想定される。
【0067】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、提供される流れ制御デバイスへの接続に適したコネクタを含む。コネクタは、ルアーコネクタ又は他の好適な構成であることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、戻り端又はピッグテール構成を含む。
【0069】
当業者が認識するように、ピッグテール構成は、戻り端又はコイル状端を有するカテーテルを指す。ピッグテール構成を含む様々なカテーテルが市販され、当技術分野で知られている。ピッグテール構成は、例えば一度患者に挿入されると、カテーテルを適所に保持するのを補助する。ピグテール構造はまた、カテーテルを通して注入される流体、例えば画像検査用の流体の流れを可能にするのを補助することができる。さらに、ピッグテール構成は、血液又は凝血塊によるカテーテル先端の閉塞の影響を受けにくい。
【0070】
いくつかの実施形態では、アセンブリは、カテーテルを誘導するために、血管アクセスチューブを通って延びるのに十分な長さの取り外し可能なガイドワイヤをさらに含む。
【0071】
「ガイドワイヤ」という表現は、既知の機能的な用語であり、その場でのカテーテルの展開を補助するのに十分な剛性のあらゆる構造体を指し得ることができることが理解される。ガイドワイヤは金属ワイヤである必要はない。ガイドワイヤは、金属を含むことができる。
【0072】
血管アクセスチューブ及び/又はアクセスアームが仕切り構造を含む実施形態では、取り外し可能なガイドワイヤは、仕切り構造によって画定される第1の通路又は第2の通路を通って延びることができる。これは、カテーテルの挿入を誘導するのをさらに補助する。
【0073】
第1の通路の断面が第2の通路の断面よりも大きい実施形態では、取り外し可能なガイドワイヤは、第2の通路を通って延びることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、アセンブリは、カテーテルを通って流れる流体の流量を表す流量値を測定するように構成された流量センサをさらに含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、流量センサは、カテーテルと一体であるか又はカテーテルに取り付けられている。
【0076】
これにより、カテーテルによって除去される流体の流量を測定することができる。好適な流量センサは当技術分野で知られている。例示的な流量センサは、回転式ポテンショメータをベースとするセンサ、熱センサ、速度計、ドップラーベース又はレーザベースの流量センサを含むが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、流れ制御デバイスに接続される。流量センサは、流れ制御デバイスと通信していることができる。流量センサと流れ制御デバイスは、血液の流れが閉ループフィードバックに基づく機構によって制御されるように通信していることができる。
【0078】
例えば、コントローラが閾値流量値に設定され得る。使用中、流量センサが閾値未満の流量値を検出した場合、これを流れ制御デバイスに伝達し、流量を増加させることができる。代わりに、流量センサが閾値を超える流量値を検出した場合、これを流れ制御デバイスに伝達し、流量を減少させることができる。これにより、対象者に損傷を与えることなく対象者からの血液の最大限の除去を確実にするために正確な流れが提供される。
【0079】
流れ制御デバイスは、負圧源又は低圧源などの吸引発生デバイスであることができる。使用中、カテーテルに接続されると、流れ制御デバイスは、カテーテルを使用して左心室内腔から血液を除去するための駆動圧を生成する負圧又は低圧を加える。
【0080】
流れ制御デバイスは、動脈ポンプ、ローラーポンプ、真空源、潅流ポンプ又は駆動ベンチュリー型装置であり得る。
【0081】
本発明の第2の態様によれば、請求項19に記載の方法が提供される。方法は、前述の実施形態のいずれか1つによるアクセスポートを含む血管アクセスチューブの壁を通して血管の腔側にアクセスする方法である。方法は、血管アクセスチューブを血管に取り付けるステップと、カテーテルなどの物体でアクセスポートを突き通すステップと、アクセスポートから血管アクセスチューブの遠位端を越えて物体を挿入するステップとを含む。
【0082】
前述の実施形態のいずれか1つに従ってアクセスポートを利用することによって、方法は、提供される物体(カテーテルなど)がアクセスポートを通して挿入されるか否かにかかわらず、血管アクセスチューブ内で少なくとも50mmHg(0.0658気圧)の駆動圧を受ける流体を維持することを可能にする。
【0083】
いくつかの実施形態では、方法は、ガイドワイヤを使用して、アクセスポートから血管アクセスチューブの遠位端を越えて物体を挿入するステップと、ガイドワイヤを引き抜くステップとを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、物体はカテーテルであり、方法は、流れ制御デバイスを使用してカテーテルに駆動圧を加えてカテーテルの遠位端を通して流体を抜き取ることを含む。本明細書では、カテーテル駆動圧(カテーテルに加えられる吸引力)は、主管腔駆動圧(血管アクセスチューブを通して流体に加えられる駆動圧)とは別に制御されると理解されるであろう。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、流量センサを使用してカテーテルを通って流れる流体の流量を表す流量値を測定するステップと、流量値に応答して流れ制御デバイスの流れ制御パラメータを調節するステップとを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、血管アクセスチューブから物体を取り出すステップを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、方法は、アクセスポートから血管アクセスチューブの遠位端を越えて物体を再挿入するステップを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、アクセスポートを手作業で閉じるステップを含む。
【0089】
第2の態様の実施形態は、第1の態様の実施形態を使用することに関する。このため、第1の態様に関連して説明されるあらゆる実施形態及び特徴が、第2の態様の実施形態で使用され得る。
【0090】
方法は、人体又は動物の体を含まない医学的研究、例えば、ファントム又は試験セットアップに関する流れの研究に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
次に本発明を例として、以下の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1Aは、一実施形態による血管アクセスチューブの概略側面図を示す。
図1Bは、追加のコンポーネントを有するアセンブリにおける
図1Aの実施形態を示す。
【
図2】
図1Bのチューブの線X-Xを横切る断面図を示す。
【
図3】別の実施形態による血管アクセスチューブの断面図を示す。
【
図4】血液除去システムにおける
図1Bの実施形態の概略図を示す。
【
図5】一実施形態による血管アクセスチューブを使用する方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1Aは、血管アクセスチューブ2の側面図を示す。血管アクセスチューブは、主管腔を画定する概ね管状の断面を有する壁4を含む。チューブ2は、第1の端部6と第2の端部8とを有する。チューブ2の壁4の外側から延びているのは、管状でありかつチューブのアクセスポートを提供するアクセスアーム10である。アクセスアーム10は、アクセスアーム10の管腔が血管アクセスチューブ2の管腔と流体連通するように、血管チューブの壁4に接続された第1の端部を有する。アクセスアーム10の第2の端部は、血管アクセスチューブの管腔に対して遠位にあり、自由端を構成する。障害物がない場合、アクセスアーム10の自由端は、第1の端部6又は第2の端部8のいずれからのアクセスも必要とせずに、壁4を通して血管アクセスチューブ2の主管腔への通路を提供する。流体通路は、遠位端からアクセスアーム10を通り、アクセスアームが主管腔に結合する壁4の開口を通して第1の端部を通り、血管アクセスチューブ2に通じる。
【0093】
アクセスアーム10は、壁4から角度アルファ(α)で延びている。本実施形態では、角度αは約45°であるが、他の角度も考えられる。血管アクセスチューブ2及びアクセスアーム10は可撓性であることができ、したがって角度αは実際には変化することができる。
【0094】
アクセスアーム10は、この実施形態ではアクセスポートがアクセスアーム10の中心から外れて配置されるように、壁4の第2の端部8よりも第1の端部6に近い部分から延びている。
【0095】
また、
図1Aには、主管腔に沿って途中まで延び、主管腔を第1の通路22と第2の通路24に分離する折り畳み可能な壁26が示されている。折り畳み可能な壁26は任意選択のものである。
【0096】
自己閉鎖挙動を有する付勢構造を提供する自己封止膜12が、アクセスアーム10の自由端に配置されている。当然のことながら、他の実施形態では、自己封止膜12は、血管アクセスチューブ2に対して近位にある、すなわちアクセスアーム10と血管アクセスチューブ2との接合部又はその近くにあるアクセスアーム10の端部を可逆的に閉じるように配置され得る。代替的に、膜12は、アクセスアーム10の全長に沿った任意の部位に配置され得る。アクセスアーム10のない実施形態では、自己封止膜12は壁4に直接配置され得る。
【0097】
自己封止膜12の代わりに、止血弁などのバルブのような他の適切な構造を設けることができる。膜12の自己封止性は、液密性を維持しながら、例えば、提供されるカテーテルで膜に穿刺することを可能にする。これにより、最大50mmHg又はそれ以上の駆動圧の流体が主管腔を通って流れているときに、主管腔にアクセスすることができる。
【0098】
図1Bは、カテーテル14がガイドワイヤ16の助けを借りて膜12を通して挿入されている、
図1Aの血管アクセスチューブ2を概略的に示す。当然のことながら、カテーテル14以外の物体を管腔に挿入することができる。カテーテル14(又は他の物体)が挿入されると、膜12の自己封止特性により、膜12はカテーテル14の周りに寄り集まり、それによりカテーテル14の周りに、加圧流体が主管腔から外部に向かって飛び散るリスクを低下させかつ実質的に防止するのに十分な液密性のシールを提供する。実際には、少量の漏れは許容できる場合がある。膜12は、壁4に穴を開けた場合に観察されるであろう、チューブ2を通って流れる加圧された血液の飛散を実質的に回避する。カテーテル14(又は他の物体)が取り出されると、自己封止膜12は閉じて、膜が封止された壁4の特性を維持するのに十分な液密性を有するように開口を封止する。特に手術中の患者で一般に予想される圧力及び流量で流れる血液の体液喪失を防ぐのに十分な液密性を有する、シール及びバルブ構造(ダックビル弁など)が当技術分野で知られている。
【0099】
図1Bは、自己封止膜12内に挿入され、アクセスアーム10を通り、主管腔の第2の通路24を通り、第2の端部8を通って第2の端部8を越えているカテーテル14を示す。
図1Bにおいて、カテーテル14の遠位端15が第2の端部8の外側に突出し、遠位端15が血管アクセスチューブ2の端部を越えて突出することを示している。適切に長いカテーテルが血管アクセスチューブをはるかに越えて延び得ることが理解されるであろう。このため、十分に長いカテーテル14を用いると、血管アクセスチューブ2の管腔の実質的にあらゆる点、並びに血管アクセスチューブ2を越える領域がカテーテル14によってアクセスされ得る。これは、血管アクセスチューブ2の第1の端部6を通るアクセスを必要とせずに達成される。当然のことながら、膜12は、カテーテル14の周りに集まるときに液密封止を維持し続け、一方、アクセスポートから管腔へ及び管腔からの流体通路が、カテーテル14によって提供される。
【0100】
本実施形態では、アクセスアーム10は、血管アクセスチューブ2とは別個のコンポーネントであり、アクセスアーム10は、アクセスアーム10の管腔が血管アクセスチューブ2の管腔と流体連通するように、血管アクセスチューブに結合されている。しかし、当然のことながら、アクセスアーム10は、血管アクセスチューブ2と一体であることができる。
【0101】
図1A及び
図1Bに示されるように、アクセスアーム10の直径は、血管アクセスチューブの主通路の直径よりも小さい。しかし、当然のことながら、他の直径及び径差を想定することができる。例えば、アクセスアーム10は、血管アクセスチューブと同じ直径を有することができる。
【0102】
本実施形態では、アクセスアーム10及び血管アクセスチューブは、同じ可撓性材料から形成される。好適な可撓性材料は、ダクロン(登録商標)である。他の実施形態では、アクセスアーム10及び血管アクセスチューブは異なる可撓性材料で形成され得、両方が同じ材料又は異なる材料で形成され得る。
【0103】
図2は、
図1BのチューブのX-X線を横切る断面図を、主管腔の軸に垂直な平面で、概ねアクセスアーム10と血管アクセスチューブ2との結合部で示す。
図2では、
図1の対応する要素と同じ符号が使用され、対応する部分の説明は必ずしも繰り返されていない。
図2はまた、アクセスアーム10に沿って血管アクセスチューブ2の折り畳み可能な壁26内に(
図2の断面の平面を通って)延びるカテーテル14を断面で示す。
【0104】
図3は、
図1Bのチューブの線Y-Yを横切る断面を示す。
図3では、他の図の対応する構造に同じ符号が使用されている。
図3の断面は、血管アクセスチューブ2の主管腔に沿ってさらに取られており、アクセスアーム10を示していない。
図3は、血管アクセスチューブ20の管腔16が内部仕切り構造、この実施形態では折り畳み可能な壁26によって第1の通路22と第2の通路24に分離されていることをより明確に示している。第1の通路22は、例えば1:2又は1:3の比率で、第2の通路24よりも大きな断面を有する。断面間の他の適切な比率を使用することができる。
【0105】
第2の通路24のみがアクセスアーム10(
図3には図示せず)と流体連通している。第1の通路22は、内部仕切り構造によりアクセスアームから流体的に隔離されている。このため、カテーテル14は、第1の通路22を流れる流体に曝されない。第1の通路22は、第1の通路22及び第2の通路24を画定する壁構造に応じて、流体的に隔離されてもされなくてもよいことが理解されるであろう。一部の実施形態では、内部仕切り構造は設けられない。
【0106】
小さい方の第2の通路24は、カテーテル14のガイドチャネルとして機能する。第2の通路24は、第1の端部6からの流体が第2の通路24に入らないように、第1の端部6に対して封止され得る。これにより、第2の通路に挿入されたいかなる物体も第1の通路22内の流体に直接曝されない。
【0107】
第2の通路24に物体が挿入されていない場合、折り畳み可能な壁26は、第1の通路22内の流体圧力により、壁4の内面に倒れることがある。この場合、第1の通路22の断面は、実質的に壁4の断面に一致する。
【0108】
使用中、血管アクセスチューブ2は、第2の端部8が対象者の血管の中又は上に埋め込まれるように、第2の端部8が対象者の血管の中又は上に取り付けられる(吻合される)。アクセスアーム10の一部は、対象者の外側に残ることができる。
【0109】
カテーテル14がない場合、血管アクセスチューブ2は、その主管腔が外部から実質的に流体隔離されている、第1の端部6から第2の端部8への通路を提供する。アクセスアーム10は、血管アクセスチューブ2の流体隔離を維持するのに十分な液密状態でシール12によって封止される。
【0110】
血管アクセスチューブ2の埋め込み後、患者の血管にアクセスする必要がある場合、以下のように実現することができる。第1の端部6及び第2の端部8は、もはや外部からアクセスできない可能性がある。また、血管アクセスチューブ2の壁4を開くことは、その液密性を回復することが事実上不可能である可能性があるため、実用的でない可能性がある。これは特に動脈アクセスグラフトの場合に、それらが高い駆動圧に耐える必要があるため、当てはまる。
【0111】
しかしながら、自己封止膜12によって、血管アクセスチューブの主管腔へ及び/又は第2の端部8を越える器官へのアクセスを可能にする機構が提供される。自己封止膜12を、処置に適した物体、例えば、
図1Bに示すようなカテーテル14が通り抜けることができる。カテーテル14は、自己封止膜12を通ってアクセスアーム10に挿入され、さらに、カテーテル14が血管アクセスチューブの第2の端部8を越えて患者の血管内に延びるように、血管アクセスチューブに押し込まれる。
【0112】
膜の自己封止性は、チューブの管腔への流体アクセスがカテーテル14を通して可能であるように、膜がカテーテル14との液密封止を維持することを確実にする。
【0113】
図4は、カテーテル14が血管アクセスチューブ2に導入された、血液除去システムの一部としての
図1Bのデバイスを示す。
図4では、前の図の対応する要素に同じ符号が使用されている。
図4では、ガイドワイヤ(
図1B参照)は取り除かれている。
【0114】
カテーテル14の外側(遠位)端には、流れ制御デバイス32(概略的に示す)に接続するためのコネクタ30(概略的に示す)がある。カテーテル14はまた、一体型流量センサ36(概略的に示す)、又はカテーテル14を通る流路と作動的に連結された流量センサを含むことができる。カテーテル14の挿入の前又は後に、コネクタ30は、流れ制御デバイス32、例えば動脈ポンプに挿入されるか又は作動的に連結される。ポンプは、2つの例を挙げると、ローラーポンプ又は遠心ポンプであることができる。流れ制御デバイス32は、低圧又は「真空」によって誘発される流れ機構のコントローラであることができる。
【0115】
カテーテルが患者の血管に導入され、流れ制御デバイス32が接続されると、流れ制御デバイス32はカテーテル14に負圧を加える。これは、血液を除去することができるように、患者の血管又は左心室などの領域からカテーテル14内に及びカテーテル14を通して血液を引き出すのに役立つ吸引力を生成する。これは、対象者の左心室における停滞又は凝固した血液の蓄積がさもなければ合併症の恐れがある場合に、必要な駆動圧で酸素化された血液によって心臓が継続的に供給されている間に行う必要がある左心室補助処置において特に有益である。
【0116】
血液がカテーテルを通って流れるとき、流量は、一体型流量センサ36によって測定され得る。流量は、入力としてコントローラ34(概略的に示す)に提供され得る。これは、閉ループ制御の一部として提供され得る。例えば、血流を所定の閾値に維持するために、流量が所定の閾値を下回る場合、流れ制御デバイス32は、(より強い吸引力が加えられるように)負圧を増加させるようにコントローラ34によって制御され得る。流量が所定の閾値を超える場合、流れ制御デバイス32は、(より弱い吸引力が加えられるように)負圧を減少させるようにコントローラ34によって制御され得る。
【0117】
このため、コントローラ34は、一時的な変動に応答してアクセスアーム10を通る流量を調節することを可能にする制御ループを含むことができる。制御ループは、カテーテルを通る流れを所定のレベルに維持することを可能にする。
【0118】
これにより、左心室内腔から除去される血液の量の閉ループ制御を提供することができる。例えば、実際には、臨床医が、血液を左心室内腔から連続的に除去すべき適切な流量目標レベルを決定することができる。流体の定常的な除去を維持することによって患者へのあらゆるストレスを軽減するために、流量目標レベルは低くてもよい。
【0119】
コントローラ34のプロセッサは、左心室内腔から除去された血液の量を、流量センサ36からこれを導き出すことから又は血液が収集されるリザーバから決定することができる。リザーバ内の血液の量は、レベルセンサによって測定され得る。血液の量は、大動脈弁の状態を示す可能性がある。プロセッサは、処置中に除去された血液の総量又は単位時間当たりに除去された血液の量を決定することができる。
【0120】
図5は、血管アクセスチューブを使用する方法50のステップを示す。ステップ52において、血管アクセスチューブ2などの動脈アクセスチューブを提供する。血管アクセスチューブは、アクセスポートを提供するための自己封止膜12又はバルブを含む。ステップ54において、動脈アクセスチューブを血管内に挿入する。このステップは、動脈アクセスチューブを血管に移植又は吻合することを含むことができる。ステップ56において、アクセスポートを通して動脈アクセスチューブ内にカテーテル14を導入する。ステップ58において、動脈アクセスチューブの端部を越えてカテーテルの端部を導入する。ステップ60において、カテーテルに駆動圧を加える。駆動圧は、遠位のカテーテル先端から流体を吸引して流体を除去するために十分に強い。この処置は、左心室内腔から停滞した血液を除去するために用いられる。任意選択のステップ62において、カテーテルを通る流量が目標流量値に近いか又は目標流量値にあることを確実にするために、例えば流量センサの測定値に応答して、駆動圧を調節する。任意選択のステップ64において、カテーテルを動脈アクセスチューブから取り出す。これはカテーテルの閉塞により必要な場合がある。任意選択のステップ66において、閉塞していないカテーテルを提供する。これは、カテーテルから閉塞を除去することを含み得る。これは、新しいカテーテルを提供することを含み得る。方法は、アクセスポートを通して動脈アクセスチューブ内に閉塞していないカテーテルを挿入することによって、ステップ56で継続することができる。
【0121】
本発明の血管アクセスチューブは、一旦埋め込まれるか又は取り付けられると、身体の他の部分を切開する必要なしに、血管アクセスチューブの壁を通して繰り返しのアクセスを提供する。例えば、ピッグテールカテーテルを用いた通常の血液除去動作中であっても、カテーテル先端が血液又は凝血塊によって閉塞される可能性がある。その場合、本発明の血管アクセスチューブは、血液除去処置を継続するために、カテーテルの除去、カテーテルの洗浄又は交換、及び閉塞していないカテーテルの挿入を可能にする。このカテーテル交換は、血液が必要な駆動圧で動脈アクセスグラフトを通って流れている間に行うことができる。このため、本発明のアクセスポートは、他の処置に使用することができる。