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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/15 20230101AFI20230922BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20230922BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20230922BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20230922BHJP
【FI】
H10K50/15
H10K50/17
H10K59/122
H10K71/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021128328
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2019217730の分割
【原出願日】2014-08-25
(65)【公開番号】P2021170562
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓也
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-046141(JP,A)
【文献】特開2012-186157(JP,A)
【文献】特開2009-245736(JP,A)
【文献】特開2010-056012(JP,A)
【文献】特開2009-026751(JP,A)
【文献】特開2008-153159(JP,A)
【文献】特開2007-311237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に位置する第1電極と、
前記第1電極の少なくとも一部を囲む構造物と、
前記第1電極の上に位置し、かつ少なくとも一部が前記構造物の内側に位置し、複数の層を含む有機層と、
前記有機層の上に位置する第2電極と、
前記有機層のうち最も前記第1電極側に位置する第1層と、前記有機層のうち前記第1層以外の層と、の間と、前記有機層のうち前記第1層以外の前記層と、前記構造物の表面と、の間と、前記構造物の上面及び外側と、に位置し、層になっておらず、シロキサン結合を有する有機材料と、
を備える発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第1層は塗布膜である発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
前記第1層以外の層のうち最も前記第1層側に位置する層は塗布膜である発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置の光源の一つに有機EL素子がある。有機EL素子は、基板上に第1電極、有機層、及び第2電極をこの順に積層させた構成を有している。有機層は、複数の層を積層させた構成を有している。そして第1電極と第2電極の間に電流を流すことにより、有機層が発光する。
【0003】
特許文献1、2には、有機EL素子の有機層を、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、所定の形状にすることが記載されている。特に特許文献2には、絶縁層に開口を設け、この開口内を発光部分にすることが記載されている。特許文献2において、絶縁層は、オルガノポリシロキサンを含んでもよいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-170673号公報
【文献】特開2010-45050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は、有機EL素子の有機層の少なくとも一層を、塗布材料を用いて形成することが検討されている。一方、塗布材料で有機層の少なくとも一層を形成する場合、塗布材料は濡れ広がるため、この層の平面形状を高い精度で制御することは難しい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、塗布材料で有機層の少なくとも一層を形成する場合において、この層の平面形状を高い精度で制御することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、基板と、
前記基板上に形成され、塗布膜を囲む構造物と、
シロキサン結合を有する有機材料と、
を備え、
前記シロキサン結合を有する有機材料が、前記基板を形成する無機材料又は当該基板上にある無機材料に接しており、
前記無機材料は、前記構造物を囲む領域にある発光装置である。
【0008】
第2の発明は、基板上に、塗布膜の形成領域を囲む構造物を形成する工程と、
前記塗布膜の形成領域を囲む、前記基板を形成する無機材料又は当該基板の上にある無機材料に、シロキサン結合を有する有機材料を付着させる工程と、
を備える発光装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図2】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図3】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図4】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図5】実施例2に係る発光装置の平面図である。
図6図5から封止部材を取り除いた図である。
図7図6から第2電極を取り除いた図である。
図8図7から有機層及び絶縁層を取り除いた図である。
図9】封止部材の縁部と有機物が位置している領域との相対位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1及び図2は、実施形態に係る発光装置100の製造方法を示す断面図である。発光装置100は、基板110を用いて形成される。基板110は、例えばガラスなどの無機材料によって形成されたガラス基板、ガラスで形成された部材の一面に酸化ケイ素の膜が形成された基板、ポリイミド系樹脂で形成された部材の一面に窒化珪素又は窒化酸化ケイ素等の無機材料からなる膜(バリア膜)が形成された基板、アルミニウム等の金属材料で形成された基板などが挙げられ、無機材料で形成された膜又は部材を有するものである。なお、以下の説明において、「基板110の表面」は、基板110そのものの表面を差す。このため、「基板110の表面」には、基板110上に形成された膜の表面は含まれない。
【0012】
まず、図1(a)に示すように、基板110の上に、無機材料からなる導電膜、例えば透明導電膜を形成する。透明導電膜の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)である。次いで、導電膜上にレジストで形成したレジスト膜を所定の形状に形成し、このレジスト膜をマスクとして導電膜を、有機溶媒を用いたウェットエッチング、又はドライエッチングする。これにより、所定の形状を有する第1電極120、第1端子150、及び第2端子160が形成される。本図に示す例において、第1端子150は第1電極120と一体に形成される。
【0013】
次いで、基板110及び第1電極120上に、絶縁膜を形成し、この絶縁膜を選択的に除去する。これにより、第1電極120上には絶縁層170(構造物の一例)が形成される。絶縁層170は、例えばポリイミドなどの感光性の樹脂を用いて形成されており、第1電極120のうち有機層130(後述)が形成される領域を囲んでいる。また、絶縁層170の一部は、第1電極120と第2端子160の間に位置している。この状態において、基板110のうち絶縁層170を囲む領域の表面には、第1電極120、第1端子150、又は基板110そのものが位置している。これらは、いずれも無機材料である。
【0014】
次いで、図1(b)に示すように、基板110を、シロキサン結合を有する有機物を含む雰囲気にさらす。この有機物としては、例えば、シリコーン系の有機物、具体的には、例えばトリメチルシランなどである。また、雰囲気の温度は、例えば100℃以上300℃以下であり、雰囲気における有機物の濃度は、例えば1ppm以上1000ppm以下である。また、基板110を雰囲気に晒す時間は、例えば1分以上60分以下である。これにより、絶縁層170を囲む領域に位置する、基板110、第1端子150、絶縁層170、第1電極120、及び第2端子160には、有機物190(有機材料)が付着する。言い換えると、絶縁層170を囲む無機材料(例えば第1電極120すなわち基板110とは異なる材料)の表面には、有機物190が位置している。そしてその無機材料は、厚さ方向において有機物190よりも基板110側に位置しており、シロキサン結合を有する有機材料が、基板110を形成する無機材料又は基板110上にある無機材料に接している。。
【0015】
なお、有機物190が位置している無機材料は、絶縁層170の全周を囲んでいる。言い換えると、有機物190は絶縁層170の全周を取り囲んでいる。有機物190は、層になっていてもよいし、層になっていなくてもよい。これに限らず、この無機材料は、絶縁層170又は有機層130の周囲に形成して複数の無機材料を点在させる、或いは絶縁層170又は有機層130の全周を囲んで形成して環状の無機材料を配置しても構わない。
有機物190が層になっていない場合、有機物190の分子は、所定の密度で上記した無機材料の上に付着している。有機物190が層になっている場合、有機物190の厚さは有機層130を構成するいずれの層の厚さよりも薄く、例えば1nm以下である。第1電極120のうち絶縁層170の外側、言い換えると基板110の端部側に位置する領域に、有機物190は付着する。なお、有機物190の存在及び有機物190におけるシロキサン結合の有無は、例えばEDXやToF-SIMSを用いて検出することができる。
【0016】
次いで、図2(a)に示すように、有機層130を形成する。有機層130は、発光層を含む複数の層を積層させた構成を有している。有機層130は、少なくとも、正孔注入層、発光層、電子注入層を有している。そして、有機層130を構成する少なくとも一つの層(例えば正孔注入層または電子注入層)は、塗布材料を用いて形成される。これにより、有機層130を構成する少なくとも1つの層は塗布膜で形成される。有機層130のすべての層を塗布法で形成することで、有機層130が塗布膜となってもよい。塗布材料を用いた、塗布膜の形成方法(塗布法)の具体例は、例えばインクジェット法やディスペンサー法である。塗布材料は、有機層130を形成する有機材料と有機溶媒で構成される。ここで、絶縁層170及び絶縁層170を囲む無機材料(例えば第1電極120や基板110)の表面には、有機物190が付着している。有機物190はシロキサン結合を有しているため、有機層130を形成するための塗布材料に対して濡れにくい。このため、有機層130となる塗布材料は絶縁層170で囲まれた領域から広がりにくい。
【0017】
次いで、図2(b)に示すように、有機層130上に第2電極140を形成する。第2電極140の一部は、絶縁層170を超えて第2端子160に接続している。第2電極140は、Al、Au、Ag、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される少なくとも一つの金属を含む合金からなる金属層を含んでいる。第2電極140は、例えばスパッタリング法、蒸着法または塗布法を用いて形成される。
【0018】
その後、基板110に、有機層130を封止する封止部材を設ける。
【0019】
なお、図2には有機物190が層として図示されているが、有機物190は、有機層130と第1電極120の間の電気的な接続に影響を与えない程度に、薄く形成されている。第1電極120が第1端子150と分離して形成されており、第1電極120が第1端子150と電気的に接続している場合には、有機物190は電気的な接続に影響を与えない程度に薄い。また、第2電極140が第2端子160に電気的に接続している場合には、有機物190は電気的な接続に影響を与えない程度に薄い。
【0020】
以上、有機層130のうち少なくとも一つは、塗布法を用いて形成される。この際、塗布材料が絶縁層170で囲まれた領域の外側、例えば第1端子150、第2端子160又は後述する封止部材180の縁部182と重なる領域にまで広がる可能性がある。これに対して本実施形態によれば、縁層170及び絶縁層170を囲む無機材料(例えば第1電極120や基板110)の表面には、有機物190が付着している。このため、有機層130となる塗布材料は絶縁層170で囲まれた領域から広がりにくい。従って、有機層130の外周部の形状を高い精度で制御することができる。
【実施例
【0021】
(実施例1)
図3及び図4は、実施例1に係る発光装置100の製造方法を示す断面図である。まず、図3(a)に示すように、基板110上に第1電極120、第1端子150、第2端子160、及び絶縁層170を形成する。これらの形成方法は実施形態に示した通りである。
【0022】
次いで、有機層130の第1層131(例えば正孔注入層又は電子注入層)を、塗布法を用いて形成する。第1層131を塗布する装置には、有機層130の残りの層を塗布する装置と比較して塗布領域を高精度に制御することができる装置を用いることができる。
【0023】
次いで、図3(b)に示すように、基板110を、シロキサン結合を有する有機物を含む雰囲気にさらす。この工程の条件の詳細は、実施形態と同様である。これにより、基板110、第1端子150、絶縁層170、第1電極120のうち絶縁層170を囲む領域、及び第2端子160には、有機物190が付着する。第1層131の上には、有機物190は付着しても構わない。この場合には、絶縁層170で囲まれた領域にある第1層131の表面にも有機物190が存在することになる。
【0024】
次いで、図4(a)に示すように、有機層130の残りの層を形成する。残りの層の少なくとも一つ(全部であってもよい)は、塗布法を用いて形成される。ここで用いられる装置には、第1層131を塗布する装置と比較して低精度な装置を用いることができる。有機層130の第1層131及び残りの層の各々に対応する塗布装置について、第1層131を形成するための塗布装置のみ高精度な装置とし、残りの層を形成する塗布装置は低精度な装置とすることで、製造装置全体のコストを低減できる。なお、上記したように、第1層131の上にも有機物190が付着している場合がある。この場合、第1層131は有機材料で形成されているため、有機物190が付着していても、第1層131に塗布される塗布材料により塗布膜を形成できる。つまり、第1層131は濡れ性を有する。従って、有機層130の残りの層を塗布法で形成した場合、この塗布材料は、第1層131上に濡れ広がり、第1層131の外側へは無機材料に接する有機物190があることで濡れ広がりにくい。また、有機物190は薄いため、有機層130の機能に影響を与えにくい。
【0025】
その後、図4(b)に示すように、第2電極140を形成する。さらに、封止部材180を設ける。封止部材180は、第1電極120、有機層130、及び第2電極140の積層構造すなわち発光部を封止する。ただし、第1端子150及び第2端子160は、封止部材180の外部に位置している。本図に示す例において、封止部材180は気密封止構造を有しており、縁部182(すなわち基板110側と接する部分)は有機層130よりも外側に位置している。そして、少なくとも縁部182よりも内側の領域には有機物190が位置しているため、縁部182と重なる領域には有機層130のうち塗布材料で形成される層が位置していない。従って、封止部材180による封止性能は高くなる。
【0026】
なお、図4には有機物190が層として図示されているが、有機物190は、有機層130の機能に影響を与えない程度に薄い。第1電極120が第1端子150と分離して形成されており、第1電極120が第1端子150と電気的に接続している場合には、有機物190は電気的な接続に影響を与えない程度に薄い。また、第2電極160が第2端子160に電気的に接続している場合には、有機物190は電気的な接続に影響を与えない程度に薄い。
【0027】
本実施例によれば、第1層131を形成した後、基板110を、シロキサン結合を有する有機物を含む雰囲気に晒している。これにより、基板110、第1端子150、絶縁層170、第1電極120のうち絶縁層170を囲む領域、及び第2端子160には、有機物190が付着する。従って、有機層130の残りの層の少なくとも一つを塗布法で形成しても、塗布材料が絶縁層170の外側に広がることを抑制できる。一方、上記したように、絶縁層170の外側にある縁部182と重なる領域に塗布材料が広がることを抑止できるので、良好な封止性能を得ることができる。また、有機層130の残りの層の少なくとも一つを形成するのに用いる装置には、高い精度は要求されない。これにより、他の装置より低い精度の装置を導入することが可能になるので、発光装置100の製造コストを低くすることができる。
【0028】
また、本実施例では、基板110を、シロキサン結合を有する有機物を含む雰囲気に晒す前に、第1層131を形成している。有機材料で形成された第1層131に有機物190が付着していても第1層131に対して塗布材料の濡れ性は良好であると考えられる。従って、第1層131上に有機層を形成する場合、この有機層と第1層131の密着性は良好であると考えられる。
【0029】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る発光装置100の平面図である。図6は、図5から封止部材180を取り除いた図であり、図7は、図6から第2電極140を取り除いた図であり、図8は、図7から有機層130及び絶縁層170を取り除いた図である。また図9は、封止部材180の縁部182と有機物190が位置している領域との相対位置を説明するための図である。
【0030】
発光装置100は、例えば矩形などの多角形であり、有機EL素子102、第1端子150、及び第2端子160を有している。第1端子150及び第2端子160は、有機EL素子102に電力を供給するために設けられている。図5図8に示す例では、第1端子150は、第1の方向(図中X方向)に延在しており、第2端子160は第2の方向(図中Y方向)に延在している。
【0031】
有機EL素子102は、基板110に、第1電極120、有機層130、及び第2電極140をこの順に積層した構成を有している。本図に示す例では、有機EL素子102の光は基板110を介して外部に放射される(ボトムエミッション型)。
【0032】
基板110は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透明基板である。基板110は、可撓性を有していてもよい。この場合、基板110の厚さは、例えば10μm以上10000μm以下である。この場合においても、基板110は無機材料及び有機材料のいずれで形成されていてもよい。基板110は、例えば矩形などの多角形である。
【0033】
第1電極120は、例えば有機EL素子102の陽極として機能し、光透過性を有する透明電極である。有機EL素子102が発光した光は、第1電極120及び基板110を介して外部に出射する。透明電極の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の無機材料、またはポリチオフェン誘導体などの導電性高分子を含んでいる。第1電極120は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成されている。
【0034】
図7に示すように、第1電極120の上には、絶縁層170が形成されている。絶縁層170は、例えばポリイミドなどの感光性の樹脂によって形成されている。絶縁層170には、第1開口172が設けられている。そして、第1電極120のうち第1開口172の中に位置する領域の上に、有機層130が形成されている。このため、第1開口172は、有機EL素子102の縁を画定していることになる。
【0035】
有機層130は、発光層を有している。有機層130は、例えば、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に積層させた構成を有している。第1電極120と正孔輸送層の間には正孔注入層が形成されていてもよい。また、電子輸送層と第2電極140の間には電子注入層が形成されていてもよい。有機層130の少なくとも2つの層は、インクジェット法などの塗布法によって形成されている。有機層130の残りの層は、塗布材料を用いてインクジェット法で形成しても構わない。
【0036】
第2電極140は、Al、Au、Ag、Pt、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される少なくとも一つの金属を含む合金層を含んでいる。第2電極140は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成されている。そして、第1電極120、有機層130、及び第2電極140が重なっている領域から発光するため、この領域が発光部104となる。
【0037】
なお、第2電極140を透明電極にして、第1電極120を金属電極にしてもよい。この場合、有機EL素子102の光は、第2電極140を介して基板110とは逆側の面から放射される(トップエミッション型)。
【0038】
第1端子150は第1電極120に接続しており、第2端子160は第2電極140に接続している。図5図8に示す例において、2つの第1端子150が第2の方向に互いに離れて配置されており、かつ、2つの第2端子160が第1の方向に互いに離れて配置されている。
【0039】
第1端子150は、第1電極120と同一の層の上に第2層154を積層した構成を有している。第2層154は、第1電極120よりも抵抗値が低い材料(例えばAgなどの金属)によって形成されている。そして、第1端子150に電圧を供給する接続部材は、第2層154に接続している。
【0040】
また、第2端子160は、第1層の上に第2層164を積層した構成を有している。第1層は第1電極120と同様の材料により形成されている。ただし、第1層は第1電極120から分離している。第2層164は、第2層154と同様の材料により形成されている。
【0041】
また、第1電極120の上には複数の補助電極124が形成されている。補助電極124は、有機EL素子102内に位置しており、第1電極120よりも抵抗値の低い材料(例えばAgなどの金属)によって形成されている。補助電極124が形成されることにより、第1電極120の面内で電圧降下が生じることを抑制できる。これにより、発光装置100の輝度に分布が生じることを抑制できる。本図に示す例において、補助電極124は2つの第1端子150の間を延在しているが、2つの第1端子150の第2層154のいずれにも直接接続していない。ただし、補助電極124は、2つの第2層154の少なくとも一方に直接接続していてもよい。
【0042】
また、図5及び図8に示すように、複数の有機EL素子102は封止部材180によって封止されている。封止部材180は、基板110と同様の多角形の金属箔又は金属板(例えばAl箔又はAl板)の縁部182は、全周にわたって基板110側に下がった形状を有している。縁部182は段部として形成されていても構わない。そして、縁部182は接着材等で基板110に固定されている。なお、封止部材180はガラスで形成されていてもよい。
【0043】
第1端子150の一部及び第2端子160の一部は、封止部材180の外に位置している。そして、第1端子150のうち封止部材180の外側に位置する部分、及び第2端子160のうち封止部材180の外側に位置する部分には、それぞれ導電部材が接続される。この導電部材は、例えばリードフレームやボンディングワイヤであり、第1端子150(又は第2端子160)を回路基板等に接続する。
【0044】
次に、本実施例に係る発光装置100の製造方法を説明する。まず、基板110の上に第1電極120となる導電膜を、例えば蒸着法、スパッタリング法を用いて形成する。次いで、この導電膜上にレジスト膜を所定の形状に形成し、このレジスト膜をマスクとして導電膜をエッチングする。これにより、第1電極120(第1端子150の第1層を含む)、及び第2端子160の第1層が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0045】
次いで、基板110上に、補助電極124及び第2層154,164を形成する。
【0046】
次いで、次いで、基板110に形成された第1電極120の上に絶縁層170となる絶縁性の感光材料を、例えば塗布法により形成する。この絶縁層170は、有機層130が形成される領域を囲むように、形成される。次いで、この感光材料を露光及び現像する。これにより、絶縁層170及び第1開口172が形成される。次いで、第1開口172内に有機層130を形成する。有機層130を形成するときに、実施形態又は実施例1に示した方法が適用される。
【0047】
その後、有機層130上及び絶縁層170上に、第2電極140を、スパッタリング法を用いて形成する。その後、基板110に封止部材180を取り付ける。
【0048】
そして、図9に示すように、有機物190は、少なくとも縁部182で囲まれた領域に形成されている。本図に示す例では、有機物190は、第1電極120のうち発光部104となる領域及び絶縁層170の外側に位置する領域、並びに、絶縁層170の上にも形成されている。このため、有機層130のうち塗布材料で形成されている層が、絶縁層170の外側に濡れ広がりにくくなっている。なお、図9では、図を見やすくするため、有機物190が形成されている領域と縁部182の間に隙間を設けているが、この隙間は存在していなくてもよい。
【0049】
本実施例によっても、有機層130の残りの層の少なくとも一つを塗布法で形成しても、塗布材料が絶縁層170の外側に広がること、及び、封止部材180の縁部182と重なる領域にまで塗布材料が広がることを抑制できる。
【0050】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
100 発光装置
110 基板
116 第2電極
120 第1電極
130 有機層
131 第1層
140 第2電極
170 絶縁層(構造物)
190 有機物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9