(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】支持要素に計時器構成要素を付着させるための弾性保持部材
(51)【国際特許分類】
G04B 17/32 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G04B17/32
(21)【出願番号】P 2021538899
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2019072968
(87)【国際公開番号】W WO2020057919
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス,イバン
(72)【発明者】
【氏名】キュザン,ピエール
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528572(JP,A)
【文献】特開2013-234901(JP,A)
【文献】特開2018-63250(JP,A)
【文献】国際公開第2007/132306(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/163148(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/32-17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持要素(3)に計時器構成要素(2)を付着させるための弾性保持部材(1)であって、前記支持要素(3)が挿入される可能性が高い開口部(5)を備え、前記開口部(5)内で前記支持要素(3)の弾性把持を確実にするのに役立つ接続ゾーン(9)の間に画定される剛性アーム(6)および弾性アーム(7)を備え、前記剛性アーム(6)は、前記支持要素(3)と前記保持部材(1)との接触ゾーン(8)だけを具備し、前記剛性アーム(6)または前記弾性アーム(7)は、それぞれ接続ゾーン(9)の間で長手方向に伸長し、これらの前記剛性アーム(6)および前記弾性アーム(7)は、連続して交互に前記保持部材(1)内に
六角形を形成するように配列され、各前記剛性アーム(6)は、各前記弾性アーム(7)を構成する材料の体積よりも大きな材料の体積を有し、各前記弾性アーム(7)は、二重弾性変形のために更に前記長手方向の周りに捻られることが可能であり、前記弾性保持部材(1)は前記弾性アーム(7)が捻られた状態で前記支持要素(3)を把持可能であり、各前記接触ゾーン(8)は、自身と接続される各前記接続ゾーン(9)に対して前記支持要素(3)側に突出する弾性保持部材(1)。
【請求項2】
前記保持部材(1)は、前記計時器構成要素(2)に接続される可能性が高い外部構造物(4a)、および前記支持要素(3)が挿入される可能性が高い開口部を(5)を画定する内部構造物(4b)を備え、前記外部構造物(4a)および前記内部構造物を(4b)を相互接続する前記剛性アーム(6)および前記弾性アーム(7)を備え、これらの前記剛性アーム(6)は、前記弾性アーム(7)により相互接続されることを特徴とする、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項3】
前記弾性アーム(7)と同じ数の前記剛性アーム(6)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項4】
各前記剛性アーム(6)は、その2つの反対側の端部内で2つの異なる前記弾性アーム(7)に接続されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項5】
各前記弾性アーム(7)は、各前記剛性アーム(6)の横断面よりも小さな横断面を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項6】
各前記弾性アーム(7)は、この前記弾性アーム(7)の本体全体で一定の横断面を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項7】
前記保持部材(1)は、前記計時器構成要素(2)に接続される可能性が高い外部構造物(4a)、および前記支持要素(3)が挿入される可能性が高い開口部を(5)を画定する内部構造物(4b)を備え、
前記外部構造物(4a)および前記内部構造物(4b)は、それぞれ前記保持部材(1)の外部周壁および内部周壁を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項8】
前記外部周壁および前記内部周壁は、可変ギャップ(E)に従って互いに分離されることを特徴とする、請求項7に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項9】
前記ギャップ(E)は、前記剛性アーム(6)に含まれる前記外部周壁の部分と前記内部周壁の部分の間に画定されたとき、最大ギャップ(E1)になることを特徴とする、請求項8に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項10】
前記ギャップ(E)は、前記外部周壁の部分と、前記剛性アーム(6)に含まれる前記内部周壁内に画定される接触ゾーン(8)の部分との間に画定されたとき、最大ギャップ(E1)になることを特徴とする、請求項8または9に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項11】
前記ギャップ(E)は、前記弾性アーム(7)に含まれる前記外部周壁の部分と前記内部周壁の部分の間に画定されたとき、最小ギャップ(E2)になることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項12】
前記保持部材(1)は、前記計時器構成要素(2)に接続される可能性が高い外部構造物(4a)、および前記支持要素(3)が挿入される可能性が高い開口部を(5)を画定する内部構造物(4b)を備え、
前記外部構造物(4a)および前記内部構造物(4b)は、異なる形状を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項13】
前記計時器構成要素(2)との付着点(11)を備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項14】
てん真などの支持要素(3)にひげぜんまいなどの計時器構成要素(2)を付着させるためのひげ玉であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項15】
ケイ素系材料から作られること特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項16】
弾性保持部材、すなわち計時器(100)の時計のムーブメント(110)用計時器構成要素ユニット(120)であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の保持部材(1)を備える計時器構成要素ユニット(120)。
【請求項17】
前記保持部材(1)と一体形であることを特徴とする、請求項16に記載の計時器構成要素ユニット(120)。
【請求項18】
弾性保持部材を、すなわち請求項16または17に記載の計時器構成要素ユニット(120)を備える、計時器(100)の時計のムーブメント(110)用組立体(130)であって、前記計時器構成要素ユニット(120)は、支持要素(3)に付着させられる組立体(130)。
【請求項19】
弾性保持部材の組立体(130)を、すなわち請求項18に記載の、支持要素(3)を伴う計時器構成要素ユニット(120)を生産するための方法であって、
-前記ユニットの弾性保持部材(1)の開口部の(5)の中に前記支持要素(3)を挿入するステップ(13)であって、この前記弾性保持部材(1)の弾性アーム(7)の、弾性ねじれ変形および引張変形である二重弾性変形を誘発する、前記弾性保持部材の剛性アーム(6)を動かす段階(15)を具備する、前記弾性保持部材(1)を弾性的に変形させるサブステップ(14)を備えるステップ(13)と、
-前記弾性保持部材(1)の前記剛性アーム(6)により、前記支持要素(3)に抵抗トルクを加えるサブステップ(17)を備える、前記支持要素(3)に前記保持部材(1)を付着させるステップ(16)と
を備える方法。
【請求項20】
時計のムーブメント(110)であって、請求項18に記載の少なくとも1つの組立体(130)を備える時計のムーブメント(110)。
【請求項21】
計時器(100)であって、請求項20に記載の時計のムーブメント(110)を備える計時器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持要素に計時器構成要素を取り付けるための弾性保持部材に関する。
【0002】
本発明はまた、弾性保持部材、すなわち計時器構成要素ユニット、および支持要素を伴うそのようなユニットの組立体に関する。
【0003】
本発明は同様に、そのような組立体を生産するための方法に関する。
【0004】
追加で本発明は、少なくとも1つのそのような組立体を備える時計のムーブメントに関する。
【0005】
最後に本発明は、そのようなムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0006】
従来技術では、そうして弾性把持により、時計のムーブメント内のてん真上のひげぜんまいの組立体に寄与する時計のひげ玉などの弾性保持部材は公知である。
【0007】
しかしながら、そのような弾性保持部材は、そのような組立体を生産する枠内で、これらのてん真に対して、制限された低い抵抗トルクを有するという事実に起因して、複雑で時間と費用のかかる搭載動作を課すという大きな欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、詳細には弾性保持要素の組立体に関する、すなわち、支持要素を伴う計時器構成要素に関する搭載動作を容易にする/簡単にするために、かなり大きい抵抗トルクを有する弾性保持部材を提案することにより、前述の欠点のすべてまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、支持要素に計時器構成要素を付着させるための弾性保持部材であって、前記支持要素が挿入される可能性が高い開口部を備え、開口部内で支持要素の弾性把持を確実にするのに役立つ、接続ゾーンの間に確定された剛性アームおよび弾性アームを備え、剛性アームは、支持要素と保持部材との接触ゾーンだけを具備し、前記剛性アームまたは前記弾性アームは、それぞれ接続ゾーンの間で長手方向に伸長し、これらの剛性アームおよびこれらの弾性アームは、保持部材内に連続して交互に配列され、各剛性アームは、各弾性アームを構成する材料の体積よりも大きな材料の体積を有する弾性保持部材に関する。
【0010】
したがって、これらの特徴のおかげで、そうして詳細には特に、内部構造物および外部構造物を備える弾性保持部材の剛性アームを構成する材料の、結果として得られる体積(または量)により誘発されるこの弾性保持部材のかなり大きい剛性のおかげで、弾性保持部材はこの場合、弾性把持を可能にするかなり大きい抵抗トルクを生むために束縛されたとき、大量の弾性エネルギーを蓄積することができる。材料のこれらのかなり大きい体積は、より具体的には、支持要素をこの保持部材の中に挿入する間、負荷の下に(または応力の下に)置かれる接触ゾーン内に含まれることが留意される。
【0011】
追加でこの弾性保持部材は、そのような保持部材を構成するケイ素などの材料に関しては、許容できる応力値の範囲内でこの弾性エネルギー蓄積を維持するように構成されることが理解される。
【0012】
他の実施形態では、
-保持部材は、前記計時器構成要素に接続される可能性が高い外部構造物、および支持要素が挿入される可能性が高い開口部を画定する内部構造物を備え、内部構造物および外部構造物を相互接続する剛性アームおよび弾性アームを備え、これらの前記剛性アームは、前記弾性アームにより相互接続される。
-弾性保持部材は、弾性アームと同数の剛性アームを備える。
-各剛性アームは、その2つの反対側の端部で2つの異なる弾性アームに接続される。
-各弾性アームは、各剛性アームの横断面よりも小さな横断面を有する。
-各弾性アームは、この弾性アームの本体全体で一定の横断面を有する。
-外部構造物および内部構造物は、それぞれ前記保持部材の外部周壁および内部周壁を備える。
-外部周壁および内部周壁は、可変ギャップにより互いに分離される。
-前記ギャップは、剛性アームに含まれる外部周壁の部分と内部周壁の部分の間に画定されたとき、最大ギャップになる。
-前記ギャップは、外部周壁の部分と、剛性アームに含まれる内部周壁内に画定される接触ゾーンの部分との間に画定されたとき、最大ギャップになる。
-前記ギャップは、弾性アームに含まれる外部周壁の部分と内部周壁の部分の間に画定されたとき、最小ギャップになる。
-外部構造物および内部構造物は、異なる形状を有する。
-弾性保持部材は、計時器構成要素との付着点を備える。
-弾性保持部材は、てん真などの支持要素にひげぜんまいなどの計時器構成要素を付着させるためのひげ玉である。
-弾性保持部材は、ケイ素系材料から作られる。
【0013】
本発明はまた、弾性保持部材、すなわち、そのような保持部材を備える時計のムーブメント用計時器構成要素ユニットに関する。
【0014】
有利には、ユニットは一体形である。
【0015】
本発明は同様に、そのような弾性保持部材を備える計時器の時計のムーブメント用の組立体、すなわち、支持要素に付着した計時器構成要素ユニットに関する。
【0016】
さらに、本発明は、
-前記ユニットの弾性保持部材の開口部の中に支持要素を挿入するステップであって、この弾性支持部材の弾性アームの二重弾性変形を含む、弾性保持要素の剛性アームを動かすための段階を具備する、弾性保持部材を弾性的に変形させるサブステップを備えるステップと、
-支持要素に保持部材を付着させるステップであって、弾性保持部材の剛性アームにより前記支持要素に抵抗トルクを加えるサブステップを備えるステップと
を備える、弾性保持部材の組立体を、すなわち支持要素を備える計時器構成要素ユニットを生産するための方法に関する。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つのそのような組立体を備える時計のムーブメントに関する。
【0018】
本発明は同様に、そのような時計のムーブメントを備える計時器に関する。
【0019】
他の具体的な特徴および利点は、添付図面を参照して暗示的な限定しない例によって本明細書で以後行う以下の記述から明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による、この場合、束縛されない状態にある、支持要素に計時器構成要素を付着させるための弾性保持部材の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による、この場合、静止状態にある、支持要素に計時器構成要素を付着させるための弾性保持部材の透視図である。
【
図3】本発明の実施形態による、この場合、静止状態にある、支持要素に計時器構成要素を付着させるための弾性保持部材の透視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、弾性保持部材を含む少なくとも1つの組立体を、すなわち支持要素に付着した計時器構成要素ユニットを具備する時計のムーブメントを備える計時器を示す。
【
図5】弾性保持部材のそのような組立体を、すなわち支持要素を伴う計時器構成要素ユニットを生産するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図3は、支持要素3に計時器構成要素2を付着させるための弾性保持部材1の一実施形態を示す。例として、弾性保持部材1は、てん真などの支持要素3にひげぜんまいなどの計時器構成要素2を付着させるためのひげ玉であってよい。
【0022】
これらの実施形態では、この保持部材1は、弾性保持部材の内部に、すなわち、計時器100の時計のムーブメント110内に配列するために提供される、
図4で見ることができる計時器構成要素ユニット120の内部に含まれてよい。そのようなユニット120は、いわゆる「壊れやすい」材料から、好ましくは微細機械加工可能な材料から作られた一体形であってよい。そのような材料は、ケイ素、石英、コランダム、またはさらにまたセラミックを備えてよい。
【0023】
このユニットの変形形態では、弾性保持部材1だけは、そのようないわゆる「壊れやすい」材料から作られてよく、計時器構成要素2はこの場合、別の材料から製作されることが留意される。
【0024】
このユニット120は、たとえば弾性把持により支持要素3に付着させることにより、時計のムーブメント110用組立体130の一部を形成してよい。この組立体130は、時計分野に適用するために発明されたことが留意される。しかしながら、本発明は、航空学、宝石、またはさらに自動車などの他の分野で申し分なく実装されてよい。
【0025】
そのような保持部材1は、第1の平面P1および第2の平面P2にそれぞれ含まれる、好ましくは平坦な上面および下面12だけではなく外部構造物4aおよび内部構造物4bも備える。これらの外部構造物4aおよび内部構造物4bは、それぞれこの保持部材1の外部周壁および内部周壁を備え、異なる形状を有する。より具体的には、外部構造物4aに関しては、外部構造物4aは、凸状の形状を有する部分を備える、全体的に六角形の形状を有してよい。これらの部分の各々は、剛性アーム6に弾性アームを接続する接続ゾーン9の範囲内に含まれる。弾性アーム7および剛性アーム6は、それぞれ保持部材1の部分を相互接続する細長い形状の一部であるようなものである。換言すれば、剛性アームまたは弾性アームは、2つの接続ゾーン9の間で長手方向に伸長する。これに関連して、弾性アーム7について言うと、部材1のうち相互接続される部分は剛性アーム6であり、この接続は接続ゾーン9で遂行される。同様に剛体アーム6について言うと、部材1のうち相互接続される部分は弾性アーム7であり、この接続は接続ゾーン9で明白に遂行される。この外部構造物4aは、詳細には保持部材1の外部周壁内に配列された少なくとも1つの付着点11を用いて計時器構成要素2に接続されることが意図される。内部構造物4bに関しては、内部構造物4bは、三角形ではない形状を有する。この保持部材1の内部周壁を備えるこの内部構造物4bは、支持要素3が挿入されることが意図される、そのような保持部材1の開口部5を画定するのに寄与する。この開口部5は、ここに配列されるために提供される支持要素3の端部の接続部分の体積よりも小さな体積を保持部材1内に画定する。この接続部分は、詳細には剛性アーム6の接触ゾーン8と協働するために提供される、支持要素3の周壁13上に画定される部分10のすべてまたは一部を備えることが留意される。
【0026】
この保持部材1は、外部構造物4aおよび内部構造物4bを相互接続する、剛性アーム6および弾性アーム7を備える。この保持部材1は、弾性アーム7と同数の剛性アーム6を備えることが留意される。剛性アーム6はこの場合、変形不可能またはほとんど変形不可能であり、保持部材1を補強するための要素の役割を果たす。弾性アーム7に関しては、弾性アーム7は、主に引っ張られる間に変形可能であるが、同様にねじれる間にも変形可能である。これらの剛性アーム6およびこれらの弾性アーム7は、この保持部材1内に連続して交互に画定される、またはさらにまた分配される。換言すれば、これらの剛性アーム6は、前記弾性アーム7により相互接続される。より具体的には、各弾性アーム7は、その2つの反対側の端部内で、接続ゾーン9で2つの異なる剛性アーム6と接続される。そのような剛性アーム6および弾性アーム7は、限定しない、網羅的ではない手法で、
-保持部材1の内部周壁を、したがって、さらにまたこの保持部材1の開口部5を一緒に画定するのに寄与する、内部構造物4bに含まれる内部面と、
-この保持部材1の外部周壁を一緒に画定する、外部構造物4aに含まれる外部面と
を備える。
【0027】
弾性アーム7の内部面は、本質的に平坦であり、剛性アーム6の内部面は、たとえば波状になることにより、平坦ではなくてよいことが留意される。これに関連して、各剛性アーム6の内部面は、少なくとも1つの接触ゾーン8を備えてよい。接触ゾーン8は、丸みがあっても、凸状であっても、さらにまた平坦であってもよい。あるいは、剛性アーム6のそのような内部面は、好ましくは平坦な2つの接触ゾーン8を備えてよい。
【0028】
これらの剛性アーム6および弾性アーム7は、外部構造物4aおよび内部構造物4bを、さらに言えばこれらの外部構造物4aの部分および内部構造物4bの部分をそれぞれ備えることにより相互接続する。この保持部材1では、これらの剛性アーム6および弾性アーム7は本質的に、内部構造物4bにより、詳細にはこの保持部材1の内部周壁により画定される、この保持部材1内に提供される開口部5内で支持要素3の弾性把持を遂行することを可能にする。
【0029】
したがって、見てきたように、これらの剛性アーム6は、これらの剛性アーム6の内部面のすべてまたは一部の中に画定されてよい、支持要素3と保持部材1との接触ゾーン8だけを備える。別様に「接触界面」として知られる各接触ゾーン8は、支持要素3の接続部分の周壁13と、詳細には支持要素3のこの周壁13内に画定された対応する部分と協働するために提供される。これに関連して、保持部材1はこの場合、時計のムーブメント110内で計時器構成要素2の、たとえばひげぜんまいの、正確な中心合わせを遂行することに寄与する3つの接触ゾーン8を備える。この保持部材1では、各剛性アーム6は、各弾性アーム7を構成する材料の体積よりも実質的に大きい、または厳密に大きい材料の体積を有する。多くの材料が存在するほど、それだけ大きな剛性をアームが有することが明確に理解される。追加で、この保持部材1でのアームの弾性または剛性は、この部材1の接触ゾーン8に対して、より具体的には、これらの接触ゾーン8に力を加える間の、これらの剛性アームまたはこれらの弾性アームの変形の激しさに対して画定されることが留意される。実際は、外部構造物4aおよび内部構造物4bは、詳細には内部周壁および外部周壁はこの場合、これらの構造物がたとえば剛性アーム6に含まれるか、さらにまた弾性アーム7に含まれるかどうかに応じて変化する可変ギャップEにより、この保持部材1内で互いに分離されることが留意される。実際は、このギャップEは、各剛性アーム6に含まれる内部周壁の部分と外部周壁の部分の間で画定されたとき、最大ギャップE1になり、すなわち、最大ギャップE1は、この剛性アーム6の内部面と外部面の間に現れる。詳細には、剛性アーム6ごとに、この最大ギャップE1は、内部周壁の内部面に含まれる各接触ゾーン8と、この剛性アーム6の外部周壁の部分との間で画定される。さらに、このギャップEは、弾性アーム7に含まれる外部周壁の部分と内部周壁の部分の間で画定されるとき、最小ギャップE2になり、すなわち、最小ギャップE2は、この弾性アーム7の内部面と外部面の間に現れる。
【0030】
したがってこの場合、各弾性アーム7は、各剛性アーム6の横断面よりも小さな横断面を有することが理解される。換言すれば、各弾性アーム7の横断面は、各剛性アーム6の横断面の表面積よりも小さな表面積を有する。弾性アーム7の横断面は、弾性アーム7の本体全体で一定である、または実質的に一定であるのに対して、剛性アーム6の横断面は、剛性アーム6の本体全体で一定しない/可変であることが留意される。追加で、
-各剛性アーム6の横断面は、好ましくはこの剛性アーム6の本体が伸長する長手方向の軸に対して垂直な、立体の断面または部分的に立体の断面であり、
-各弾性アーム7の横断面は、好ましくは、この弾性アーム7の本体が伸長する長手方向の軸に対して垂直な、立体の断面または部分的に立体の断面である
ことが理解される。
【0031】
剛性アーム6および弾性アーム7のそのような構成は、従来技術の保持部材と比較して、同じ把持に対して大量の弾性エネルギーを保持部材1が蓄積できるようにする。次いで、保持部材1に蓄積されたそのような量の弾性エネルギーは、保持部材の組立体130内で,すなわち、この支持要素3を伴う計時器構成要素ユニット120内で、支持要素3の保持部材のより大きな抵抗トルクを得ることができるようにする。したがって、換言すれば、保持部材1に蓄積されたそのような過剰な弾性エネルギーは、抵抗トルクを増大させ、最適な弾性把持を可能にする。追加で、保持部材1のそのような構成は、従来技術の保持部材の弾性エネルギー比よりも6~8倍大きな弾性エネルギー比を蓄積できるようにする。
【0032】
図5を参照すると、本発明は同様に、弾性保持部材の組立体130を、すなわち、支持要素3を伴う計時器構成要素ユニット120を生産するための方法に関する。この方法は、保持部材1の開口部5の中に支持要素3を挿入するステップ13を備える。このステップ13の間、支持要素の端部は、この開口部5内に画定される体積の中にこの支持要素3の接続部分を導入することを見越して、保持部材1の下面12内に画定される開口部5の入り口に提示される。このステップ13は、詳細には前記開口部5を備えるこの保持部材1の中央ゾーンの保持部材1を弾性的に変形させ、その結果、支持要素3の接続部分の周壁13の部分10により剛性アーム6の接触ゾーン8に接触力を加えるサブステップ14を備える。中央ゾーンのこの弾性変形は、実際にはこの場合、詳細には保持部材1の中央ゾーンに含まれるこの面12の一方の部分で本質的に凹状形状を有する、保持部材1の下面12の変形を引き起こす。換言すれば、保持部材1の中央ゾーンが変形したとき、保持部材1の下面12は、もはや平坦ではなく、この場合、第2の平面P2に、もはや完全に含まれるわけではない。
【0033】
前述のように、保持部材1のこの弾性変形は、支持要素3の周壁13の部分10により剛性アーム6の接触ゾーン8に接触力を加える結果となる。そのような変形サブステップ14は、剛性アーム6に加えられた接触力の作用を受けて剛性アーム6を動かす段階15を備える。剛性アーム6のそのような動きは、支持要素3および保持部材1に共通な中心軸に対して放射状の方向B1と、この中心軸Cと合体した方向B2の間に含まれる方向に従って遂行される。この方向B2は、方向B1に対して垂直であり、かつ下面12から上面まで画定されるように配向されることが留意される。接触力は、好ましくは各接触ゾーン8に対して垂直である、または実質的に垂直である。一連のこの段階12の間、この接触力の作用を受けてこのように動く剛性アーム6は、弾性アーム7の二重弾性変形を引き起こす。
【0034】
第1の変形は別様に、これらの弾性アーム7の「弾性ねじれ変形」として知られる。このねじれ変形の間、各弾性アーム7は、その2つの端部で、そのような端部が接続される動きで、剛性アーム6により同じ回転方向B4で駆動される。これらの弾性アーム7の本体の部分だけは、この場合これらのアーム7の端部は、ねじれで変形可能であることが理解される。そのような第1の変形は、詳細には、支持要素3を備える保持部材1を組み立てる間に保持部材1のどんな破損も、および/またはこの部材1のどんな亀裂の出現も回避することに寄与することにより、保持部材1の開口部5の中に支持要素3を挿入するのを改善するのに寄与する。
【0035】
第2の変形は別様に、弾性アーム7の「引張変形」として、またはさらにまた「弾性伸長変形」としても知られる。この伸長変形の間、各弾性アーム7は、その2つの端部で、そのような端部を接続する動きで、剛性アーム6により反対方向の長手方向B3に引っ張られる。そのような第2の変形は、詳細には保持部材1が大量の弾性エネルギーを蓄積するという点で寄与する。
【0036】
弾性アーム7のこの二重弾性変形は、同時に、もしくは実質的に同時に、またはさらにまた連続して、もしくは実質的に連続して遂行されてよい。変形段階の実装の枠内で、この二重弾性変形が連続して、または実質的に連続して遂行されるとき、第1の変形は、第2の変形の前に行われることが留意される。
【0037】
この方法はその後、支持要素3に保持部材1を付着させるステップ16を備える。そのような付着ステップ16は、支持要素3上に保持部材1の放射状弾性把持を遂行するサブステップ17を備える。したがって、そのような拘束状態で、保持部材1は、詳細には弾性把持により最適にひげ玉にはめることを可能にする、結果として生じる抵抗トルクを保持部材1に与えるのに役立つ大量の弾性エネルギーを蓄積することが理解される。