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特許7353373低減されたコールドフローを有するポリジエンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】低減されたコールドフローを有するポリジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/04 20060101AFI20230922BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08F236/04
C08F4/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021544458
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020015425
(87)【国際公開番号】W WO2020160000
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】62/798,186
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クェール、3世、ジェームス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロッジマン、デビット エム.
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-051406(JP,A)
【文献】特開平05-279515(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078814(WO,A1)
【文献】特開平10-306113(JP,A)
【文献】特開2000-226408(JP,A)
【文献】特開2001-098013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317794(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0147694(US,A1)
【文献】米国特許第06391990(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08C 19/00- 19/44
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジエンを調製するためのプロセスであって、
a.共役ジエンモノマーを液相重合混合物内で60%以上の転化率に重合して、中間体ポリマーを形成する工程であって、前記液相重合混合物が、共役ジエンモノマー、ランタニド含有化合物、及びアルキル化剤を含み、前記中間体ポリマーが、ベースムーニー粘度を含む、形成する工程と、
b.前記中間体ポリマーに、結合剤として非有機金属芳香族トリエステル化合物を0.02~0.12phmの量で添加する工程であって、前記非有機金属芳香族トリエステル化合物の前記添加が、前記中間体ポリマーの前記ベースムーニー粘度を30~80%の範囲で増加させる、添加する工程と、を含
ここで、前記非有機金属芳香族トリエステル化合物は、下記の式(1)の化合物、式(2)の化合物、及び式(3)の化合物から成る群から選択される、プロセス
【化1】


【化2】


【化3】


式(1)~式(3)中、R、R’、及びR’’は独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。
【請求項2】
前記ランタニド含有化合物が、ネオジム化合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記非有機金属芳香族トリエステル化合物が、トリメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート及びトリイソノニルトリメリテートからなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記非有機金属芳香族トリエステル化合物が、トリメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリ-2-エチルヘキシルヘミメリテート及びトリイソノニルヘミメリテートからなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記非有機金属芳香族トリエステル化合物が、トリメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリ-2-エチルヘキシルトリメシテート及びトリイソノニルトリメシテートからなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記非有機金属芳香族トリエステル化合物が、前記中間体ポリマーに0.035~0.085phmの量で添加され、前記ランタニド含有化合物の量が、共役ジエンモノマー100g当たり0.001~2mmolの量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
ポリブタジエンを調製するためのプロセスであって、
a.ブタジエンモノマーをランタニド含有化合物及びアルキル化剤の存在下で反応容器内で80%以上の転化率に重合して、中間体ポリマーを形成する工程と、
b.前記中間体ポリマーを第2の反応容器に移動させる工程と、
c.前記第2の反応容器内のポリマーセメントに、結合剤として非有機金属芳香族トリエステル化合物を0.02~0.12phmの量で添加して、ポリブタジエンセメントを形成する工程であって、前記ポリブタジエンセメントが、35~45(ML1+4)の範囲のムーニー粘度を含む、形成する工程と、を含
ここで、前記非有機金属芳香族トリエステル化合物は、下記の式(1)の化合物、式(2)の化合物、及び式(3)の化合物から成る群から選択される、プロセス
【化4】


【化5】


【化6】


式(1)~式(3)中、R、R’、及びR’’は独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。
【請求項8】
前記非有機金属芳香族トリエステル化合物が、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート又はトリイソノニルトリメリテートからなる群から選択されるトリメリット酸エステル化合物である、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の反応容器に移動した前記中間体ポリマーが、20~30(ML1+4)の範囲のムーニー粘度を含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記工程aが、前記反応容器内にハロゲン含有化合物を更に含む、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリジエンを調製するためのプロセスに関し、特に、非有機金属芳香族トリムエステル又はトリメリット酸エステル化合物を結合剤として使用してポリマーの粘度を高めるプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリジエンは、溶液重合によって生成することができ、共役ジエンモノマーは、不活性溶媒又は希釈剤中で重合される。ポリジエン、例えばシス-1,4-ポリジエンは、サイドウォール及びトレッドなどのタイヤ部品の製造において用いられることが多い。これらのポリジエンポリマーは、線状骨格を特徴とするポリマーの形成をもたらす、ランタニド系触媒系を使用することによって生成されることが多い。
【0003】
線状骨格を有するようなポリジエンは、特にタイヤにおける使用に関して、多くの有利な特性を示すが、これらのポリマーは、これらの線状骨格構造によるコールドフローを呈する。従来、特にアニオン重合ポリマーの場合、コールドフロー問題は、ポリマー結合によって軽減することができる。ポリマー結合もまた、いくつかの困難を引き起こし得る。例えば、コールドフローの低減に関連する利点は、配合中のポリマーの加工性と均衡しなければならない。例えば、溶液重合中、溶媒は反応物の担体として機能し、更に、重合混合物(セメントとも呼ばれる)の撹拌及び移動を容易にするが、これは、セメントの粘度が、溶媒の存在によって低下するからである。したがって、重合反応における結合は、粘度を予測不可能に増加させる可能性があり、配合中にポリマーの加工性を保持するように制御する必要がある。
【0004】
また、ある化合物又は試薬をポリマー鎖、特にポリマー鎖の反応性末端と反応させる能力は、予測不可能であり得る。また更に、任意の特定の結合剤が、例えばタイヤの製造において使用されるものなどの特定の組成物内で、ポリマー及び/又はその使用から求められる1つ又は2つ以上の特性に悪影響を及ぼし得るかどうかを予測することは困難である場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特にタイヤ部品の製造において、ポリマーの加工性及び/又は使用に悪影響を及ぼすことなく、合成エラストマー、特にランタニド系触媒系及びアニオン性開始剤によって調製された線状ポリマーのコールドフローを低減する必要があるため、新規な結合剤及びポリマーの結合方法を開発する必要がある。
【0006】
第1の態様では、ポリジエンを調製するためのプロセスが開示され、このプロセスは、(a)共役ジエンモノマーを液相重合混合物内で60%以上のモノマー転化率に重合して、中間体ポリマーを形成する工程を含み、液相重合混合物は、少なくとも共役ジエンモノマー、ランタニド含有化合物、及びアルキル化剤を含有し、中間体ポリマーは、ベースムーニー粘度を有する。このプロセスは、中間体ポリマーに、結合剤として非有機金属トリメリット酸エステル化合物又は非有機金属芳香族トリエステル化合物を約0.02~約0.12phmの量で添加する工程(b)を更に含み、非有機金属トリメリット酸エステル化合物又は非有機金属芳香族トリエステル化合物の添加は、中間体ポリマーのベースムーニー粘度を約30~約80%の範囲で増加させる。
【0007】
態様1の例では、中間体ポリマーのムーニー粘度(ML1+4)は、約20~約30の範囲内であり、結合剤の添加後のポリマーのムーニー粘度(ML1+4)は、約35~約45の範囲である。
【0008】
態様1の例では、ポリジエンは、ポリブタジエンとして調製される。ポリブタジエンは、実質的にポリブタジエンを含む。別の例では、ポリブタジエンはコポリマーではなく、実質的にポリブタジエンからなる。
【0009】
態様1の別の例では、工程(a)の中間体ポリマーが、ベースコールドフロー値を含み、非有機金属トリメリット酸エステル化合物又は非有機金属芳香族トリエステル化合物の添加は、中間体ポリマーのベースコールドフロー値を約20~約50%の範囲で増加させる。
【0010】
態様1の別の例では、工程(a)の中間体ポリマーは、80%以上又は90%以上の共役ジエンモノマー転化率を含む。
【0011】
態様1の別の例では、プロセスによって調製されるポリジエンは、約100,000~約350,000の重量平均分子量を有する。
【0012】
態様1の別の例では、ランタニド含有化合物はネオジム化合物である。
【0013】
態様1の別の例では、非有機金属トリメリット酸エステル化合物はトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート又はトリイソノニルトリメリテートである。
【0014】
態様1の別の例では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、式(1)
【化1】
の化合物であり、
式中、R、R’、及びR’’は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。
【0015】
態様1の別の例では、式(1)の非有機金属芳香族トリエステル化合物は、トリメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート及びトリイソノニルトリメリテートからなる群から選択される。
【0016】
態様1の別の例では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、式(2)
【化2】
の化合物であり、
式中、R、R’、及びR’’は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。
【0017】
態様1の別の例では、式(2)の非有機金属芳香族トリエステル化合物は、トリメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリ-2-エチルヘキシルヘミメリテート及びトリイソノニルヘミメリテートからなる群から選択される。
【0018】
態様1の別の例では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、式(3)
【化3】
の化合物であり、
式中、R、R’、及びR’’は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。
【0019】
態様1の別の例では、式(3)の非有機金属芳香族トリエステル化合物は、トリメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリ-2-エチルヘキシルトリメシテート及びトリイソノニルトリメシテートからなる群から選択される。
【0020】
態様1の別の例では、非有機金属トリメリット酸エステル化合物は、約0.035~約0.085phmの量で中間体ポリマーに添加される。
【0021】
態様1の別の例では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、及び2つ以上のこれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
態様1の別の例では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンを含むか、又は1,3-ブタジエンである。
【0023】
態様1の別の例では、ポリジエンは、95%以上のシス-1,4-結合含有量を有する。
【0024】
態様1の別の例では、工程(a)の液相重合混合物は、有機溶媒を更に含む。
【0025】
態様1の別の例では、液相重合混合物は、工程(a)中、約80℃~約120℃の温度に維持される。
【0026】
態様1の別の例では、ランタニド含有化合物の量は、工程(a)の液相重合混合物中に共役ジエンモノマー100g当たり約0.001~約2mmolの量で存在する。
【0027】
態様1の別の例では、工程(a)の液相重合混合物は、ハロゲン含有化合物、例えば、有機金属塩化物化合物を更に含む。
【0028】
態様1の別の例では、態様1のプロセスで調製されたポリジエンポリマーが存在し、このポリジエンポリマーは、約35~約45(ML1+4)の範囲のムーニー粘度を有する。
【0029】
第2の態様では、ポリブタジエンを調製するためのプロセスが存在し、このプロセスは、(a)ブタジエンモノマーをランタニド含有化合物及びアルキル化剤の存在下で反応容器内で80%以上の転化率に重合して、中間体ポリマーを形成する工程と、(b)中間体ポリマーを第2の反応容器に移動させる工程と、(c)第2の反応容器内のポリマーセメントに、結合剤として非有機金属トリメリット酸エステル化合物又は非有機金属芳香族トリエステル化合物を約0.02~約0.12の量で添加して、ポリブタジエンセメントを形成する工程と、を含む。
【0030】
態様2の実施例では、ポリブタジエンセメントは、約35~約45(ML1+4)の範囲のムーニー粘度を有する。
【0031】
態様2の別の例では、非有機金属トリメリット酸エステル化合物は、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート又はトリイソノニルトリメリテートである。
【0032】
態様2の別の例では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、本明細書の式(1)、(2)、又は(3)の化合物である。
【0033】
態様2の別の例では、第2の反応容器に移動した中間体ポリマーは、約20~約30(ML1+4)の範囲のムーニー粘度を有する。
【0034】
態様2の別の例では、ポリブタジエンは、95%以上のシス-1,4-結合含有量を有する。例えば、高シスポリブタジエンは、結合反応が生じた後に、第2の反応容器から抽出されたポリマーである。
【0035】
態様2の別の例では、第2の反応容器におけるポリブタジエンセメント中のブタジエンモノマーの転化率は、95%以上である。
【0036】
態様2の別の例では、態様2のプロセスで調製されたポリブタジエンポリマーが存在し、このポリジエンポリマーは、約35~約45(ML1+4)の範囲のムーニー粘度、及び95%以上のシス-1,4-結合含有量を有する。
【0037】
上記態様のうちのいずれか1つ(又はこれらの態様の例)は、単独で、又は上記で論じた態様の例のうちの任意の1つ以上と組み合わせて提供されてもよく、例えば、第1の態様は、単独で、又は上記で論じた第1の態様の例のうちのいずれか1つ以上の例と組み合わせて提供されてもよく、第2の態様は、単独で、又は上記で論じた第2の態様の例のうちのいずれか1つ以上との例と組み合わせて提供されてもよい、などである。
【0038】
更なる特色及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、ある程度において、当業者はこの記載から容易に明らかであるか、又は、以下の「発明を実施するための形態」、「特許請求の範囲」を含む、本明細書に記載の実施形態を実施することにより認識するであろう。前述の一般的な説明及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも単なる例示であり、「特許請求の範囲」の性質及び特徴を理解するための概要又はフレームワークを提供することを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
添付図面を参照しつつ、以下の詳細な記載を読むと、本開示の態様又は例の上記及び他の特徴、例及び有益性がよりよく理解される:
【0040】
図1図1は、本発明の1つ以上の実施形態に従って調製された高シスポリブタジエンに使用される結合剤の量に対する、ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のグラフプロットである。
【0041】
図2図2は、本発明の1つ以上の実施形態に従って調製された高シスポリブタジエンに使用される結合剤の量に対する、ポリマー緩和(T80)のグラフプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0043】
本明細書では、5~25(又は5から25)などの範囲が与えられた場合、この範囲は、好ましくは、少なくとも5又は5より大きいことを意味し、これとは別個にかつ独立して、好ましくは、25以下又は25未満であることを意味する。一例では、このような範囲は、独立して、5以上、これとは別個にかつ独立して、25以下を規定する。
【0044】
本開示は、共役ジエンモノマーを1種以上の触媒で重合させて反応性又は中間体ポリマーを形成し、次いでそれを結合剤と反応させることによって生成される、ポリジエンに関する。1つ以上の実施形態では、結合剤は、非有機金属芳香族トリエステル化合物である。1つ以上の実施形態では、結合剤は、非有機金属トリメリット酸エステル化合物である。いくつかの実施形態における結合剤は、モノマーを約80%のレベルに転化した後、重合混合物に添加されて、ポリマーの粘度を選択的に増加させ、コールドフローを低減させる。本発明の1つ以上の実施形態によって生成されるポリジエンは、有利には、高シス-1,4-結合含有量及び任意選択で狭い分子量分布を特徴とする。結果として得られた結合ポリマーは、タイヤ部品の製造において用いることができる。
【0045】
1つ以上の実施形態では、反応性又は中間体ポリマーは、配位重合によって調製され、共役ジエンモノマーは、配位触媒系を使用することによって重合される。配位重合の重要な機構的特徴は、書籍(例えば、Kuran,W.,Principles of Coordination Polymerization;John Wiley&Sons:New York,2001)及び総説(例えば、Mulhaupt,R.,Macromolecular Chemistry and Physics 2003,volume 204,pages 289-327)において説明されている。配位触媒は、活性金属中心へのモノマーの配位又は錯化を、モノマーを成長ポリマー鎖に挿入する前に引き起こすメカニズムによって、モノマーの重合を開始する。当該技術分野で知られているように、配位触媒を形成するための方法は数多く存在する。しかし、全ての方法は、モノマーと配位してモノマーを活性金属中心と成長ポリマー鎖との間の共有結合に挿入することができる活性中間体を最終的に発生させる。配位触媒は、1成分系、2成分系、3成分系、又は多成分系とすることができる。1つ以上の実施形態では、配位触媒の形成を、重金属化合物(例えば、遷移金属化合物又はランタニド含有化合物)、アルキル化剤(例えば、有機アルミニウム化合物)、及び任意的に他の共触媒成分(例えば、ルイス酸又はルイス塩基)を組み合わせて行なってもよい。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのランタニド含有化合物と、少なくとも1つのアルキル化剤と、少なくとも1つのハロゲン源と、を含む触媒系が提供される。本発明の触媒系は、1種以上の共役ジエンモノマーを重合させて、ポリジエンを形成するために用いることができる。
【0047】
1つ以上の実施形態では、重合可能な共役ジエンモノマーの例には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、及び2,4-ヘキサジエンを挙げることができる。2つ以上の共役ジエンの混合物を共重合において用いてもよい。
【0048】
前述のように、本発明の触媒系は、少なくとも1種のランタニド含有化合物を含んでよい。本発明で有用なランタニド含有化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムのうち少なくとも1種の原子を含む化合物である。一実施形態では、これらの化合物には、ネオジム、ランタン、サマリウム、又はジジムを含めることができる。本明細書で用いる場合、「ジジム」という用語は、モナズ砂から得られる希土類元素の市販の混合物を示すものとする。加えて、本発明で有用なランタニド含有化合物は、元素ランタニドの形態とすることができる。
【0049】
ランタニド含有化合物中のランタニド原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3、及び+4の酸化状態であってもよい。一実施形態では、三価のランタニド含有化合物(ここで、ランタニド原子は、+3の酸化状態である)を用いることができる。好適なランタニド含有化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィナート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドベータ-ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド疑似ハライド、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
1つ以上の実施形態では、ランタニド含有化合物は、炭化水素溶媒(例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又は脂環式炭化水素)に可溶性であり得る。しかし、炭化水素不溶性のランタニド含有化合物も、本発明で有用な場合がある。重合媒体中で懸濁させて、触媒活性種を形成することができるためである。
【0051】
説明を簡単にするために、有用なランタニド含有化合物についての更なる説明では、ネオジム化合物に焦点を合わせるが、当業者であれば、他のランタニド金属に基づく同様の化合物を選択することができるであろう。
【0052】
上述のように、本発明で使用されるランタニド含有化合物には、例えば、ネオジムカルボキシレートなどのランタニドカルボキシレートを含むことができる。好適なネオジムカルボキシレートには、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(別名、ネオジムベルサテート)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエート、及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ランタニド含有化合物は、上述したように、ランタニド有機ホスフェート、例えばネオジムオルガノホスフェート、ランタニド有機ホスフィナート、例えばネオジムオルガノホスフィナート、ランタニドカルバメート、例えばネオジムカルバメート、ランタニドキサンテート、例えばネオジムキサンテート、ランタニドβ-ジケトネート、例えばネオジムβ-ジケトネート、ランタニドアルコキシド若しくはアリールオキシド、例えばネオジムアルコキシド又はネオジムアリールオキシド、又はランタニドハライド、疑似ハライド若しくはオキシハライド、例えばネオジムハライド、ネオジム疑似ハライド若しくはネオジムオキシハライドであってもよい。
【0054】
1つ以上の実施形態では、溶媒を担体として用いて、系の触媒又は触媒成分を溶解するか又は懸濁させて、触媒又は触媒成分を重合系へ送達することを促進してもよい。別の実施形態では、共役ジエンを触媒担体として用いることができる。更に別の実施形態では、触媒成分を、あらゆる溶媒も用いることなくそれらの純粋な状態で使用することができる。
【0055】
1つ以上の実施形態では、好適な溶媒としては、有機化合物として、触媒の存在下でモノマーを重合する間に伝搬ポリマー鎖への重合も取り込みも受けないものが挙げられる。1つ以上の実施形態では、これらの有機溶媒は、触媒に対して不活性である。1つ以上の実施形態では、これらの有機溶媒は、周囲温度及び圧力で液体である。例示的な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素などの低い又は比較的低い沸点を有する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、及び石油スピリットが挙げられる。脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びメチルシクロヘキサンが挙げられる。上記の炭化水素の混合物を使用することもできる。環境上の理由から、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素を用いることが望ましい場合がある。低沸点の炭化水素溶媒は、典型的には、重合が終了した際、ポリマーから分離される。
【0056】
前述したように、本発明の触媒系には、1つ以上のアルキル化剤を含めることができる。様々なアルキル化剤、又はこれらの混合物を使用することができる。1つ以上の実施形態では、アルキル化剤(ヒドロカルビル化剤と称されることもある)には、ヒドロカルビル基を別の金属に移すことができる有機金属化合物が含まれる。典型的には、これらの薬剤には、陽性金属、例えば第1族、第2族、及び第3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)の有機金属化合物が含まれる。1つ以上の実施形態では、アルキル化剤としては、有機アルミニウム及び有機マグネシウム化合物が挙げられる。アルキル化剤が不安定な塩素原子を含む場合、アルキル化剤は塩素含有化合物としても機能し得る。「有機アルミニウム化合物」という用語は、少なくとも1つのアルミニウム-炭素結合を含有する任意のアルミニウム化合物を指し得る。1つ以上の実施形態では、有機アルミニウム化合物は炭化水素溶媒に可溶であってもよい。
【0057】
トリヒドロカルビルアルミニウム化合物の例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1-メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリス(2,6-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ-p-トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられる。
【0058】
ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物の例には、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドが挙げられる。
【0059】
他の実施形態では、これらを重合に用いる前に、ランタニド化合物の溶液にルイス酸を添加して、これらの溶液の粘度を低下させることが有利であることが見出されている。ランタニド化合物のこれらの改質された溶液は、移動が容易であり、長い混合時間を用いる必要なく、他の触媒成分又はモノマーと容易に混合することが容易である。加えて、ランタニド化合物のこれらの改質された溶液の使用は、一貫した重合結果をもたらし、反応器の汚染を低減する。
【0060】
好適なルイス酸としては、遷移金属ハロゲン化物、IUPAC周期表の第2、12、13、14族及び第15族の元素のハロゲン化物、及び金属原子がIUPAC周期表の第2、12、13族又は第14族の元素に属する有機金属ハロゲン化物が挙げられ得る。好適なルイス酸の具体例としては、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド、ブチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムブロミド、ジブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジブチルスズジクロリド、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ガリウム、三塩化インジウム、二塩化亜鉛、二塩化マグネシウム、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウム、四塩化チタン、及び四塩化スズが挙げられる。
【0061】
1つ以上の不安定な塩素原子を含有する様々な塩素含有化合物又はハロゲン源、又はこれらの混合物を、ルイス酸として、又はそれらと共に用いることができる。2つ以上の塩素含有化合物の組み合わせを利用することもできる。1つ以上の実施形態では、塩素含有化合物は炭化水素溶媒に可溶であってもよい。他の実施形態では、重合媒体中に懸濁して触媒活性種を形成することができる炭化水素不溶性塩素含有化合物が有用であり得る。
【0062】
好適なタイプの塩素含有化合物としては、元素塩素、塩化水素、有機塩化物、無機塩化物、金属塩化物、有機金属塩化物、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有機塩化物の例としては、t-ブチルクロリド、塩化アリル、塩化ベンジル、ジフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルクロリド、ベンジリデンクロリド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、塩化ベンゾイル、プロピオニルクロリド、及びクロロギ酸メチルが挙げられる。
【0063】
無機塩化物の例としては、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、三塩化ホウ素、四塩化ケイ素、三塩化ヒ素、四塩化セレン、及び四塩化テルルが挙げられる。金属塩化物の例としては、四塩化スズ、三塩化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化ガリウム、三塩化インジウム、四塩化チタン、及び二塩化亜鉛が挙げられる。有機金属塩化物の例としては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、及びイソブチルアルミニウムセスキクロリドなどの有機アルミニウム塩化物;メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、及びベンジルマグネシウムクロリドなどの有機マグネシウム塩化物;並びにトリメチルスズクロリド、トリエチルスズクロリド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、及びトリ-n-ブチルスズクロリドなどの有機スズ塩化物が挙げられる。
【0064】
本発明によるポリジエンの製造は、触媒的に有効量の前述の触媒組成物又は触媒系の存在下で、共役ジエンモノマーを重合させることにより実施可能である。触媒組成物、共役ジエンモノマー及び任意の溶媒の導入は、使用される場合、重合混合物を形成し、その中でポリマー生成物が形成される。重合混合物中で使用される総触媒濃度は、成分の純度、重合温度、所望の重合速度と転化率、所望の分子量、及びその他多くの因子などの様々な要因の相互作用に依存し得る。したがって具体的な総触媒濃度については、各触媒成分を触媒的に有効な量で使用できるという以外、断定的に明確に述べることはできない。
【0065】
1つ以上の実施形態では、使用するランタニド化合物の量を、共役ジエンモノマー100g当たり、約0.001~約10mmol、他の実施形態では、約0.002~約1mmol、他の実施形態では、約0.005~約0.5mmol、及び他の実施形態では、約0.01~約0.2mmolに変えることができる。
【0066】
1つ以上の実施形態では、共役ジエンモノマー100重量部当たりの重量部(phm)で表される、使用されるランタニド含有化合物の量は、約0.005~約5phm、好ましくは約0.075~約2phm、より好ましくは約0.1~約1phmであり得る。
【0067】
1つ以上の実施形態では、アルキル化剤対、ランタニド含有化合物のモル比は、約1:1~約1,000:1、他の実施形態では、約2:1~約500:1、他の実施形態では、約5:1~約100:1で変動し得る。
【0068】
ルイス酸又はハロゲン含有化合物対、ランタニド含有化合物のモル比は、ハロゲン源中のハロゲン原子のモル数対、ランタニド含有化合物中のランタニド原子のモル数の比の観点で最もよく説明される。1つ以上の実施形態では、約0.5:1~約20:1、他の実施形態では約1:1~約10:1、及び他の実施形態では約2:1~約6:1で変動し得る。
【0069】
一実施形態では、ランタニド系触媒組成物をその場で形成することを、触媒構成成分をモノマーと溶媒とを含有する溶液に又はバルクモノマーに段階的又は同時に添加することによって、行なってもよい。一実施形態では、アルキル化剤を最初に添加し、次にランタニド含有化合物を添加し、次いでハロゲン源を添加することができる。
【0070】
別の実施形態では、ランタニド系触媒組成物を実行することができる。すなわち、触媒構成成分を重合系の外側で予混合することを、わずかなモノマーも存在しない状態で又は少なくとも1種の共役ジエンモノマーが少量存在する状態で、約-20℃~約80℃であり得る適温で行なう。触媒を事前形成するために用いてもよい共役ジエンモノマーの量は、ランタニド含有化合物のモル当たり、約1~約500モル、他の実施形態では、約5~約250モル、他の実施形態では、約10~約100モルの範囲とすることができる。結果として得られた触媒組成物を、必要に応じてエージングすることを、重合するモノマーに添加する前に行なってもよい。
【0071】
本発明に従った反応性又は中間体ポリマーの製造は、触媒的に有効量の触媒系の存在下で、共役ジエンモノマーを重合させることにより実施可能である。触媒、共役ジエンモノマー及び任意の溶媒の導入は、使用される場合、重合混合物を形成し、その中で中間体反応性ポリマーが形成される。使用される触媒の量は、使用される触媒の種類、成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び所望の転化率、所望の分子量、及び他の多くの要因などの様々な要因の相互作用に依存し得る。したがって、具体的な触媒の量については、触媒的に有効な量の触媒又は開始剤を用いてもよいと言う以外に、明確に述べることはできない。
【0072】
1つ以上の実施形態では、重合は、相当量の溶媒を含む重合系において行わる場合がある。一実施形態では、溶液重合系として、重合すべきモノマー及び形成されたポリマーの両方が溶媒に可溶であるものを用いてもよい。別の実施形態では、沈殿重合系を用いることを、形成されたポリマーが不溶性である溶媒を選択することによって行ってもよい。通常、両方の場合において、ある量の溶媒を、触媒を調製するときに用いてもよい溶媒量に加えて、重合系に添加する。更なる溶媒は、触媒を調製するときに用いる溶媒と同じであってもよいし又は異なっていてもよい。例示的な溶媒については前述している。1つ以上の実施形態では、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量に対して、20重量%超、他の実施形態では50重量%超、更に他の実施形態では80重量%超であり得る。
【0073】
他の実施形態では、使用する重合系は概ね、実質的に溶媒が含まれないか又は最小量の溶媒が含まれるバルク重合系であると考えられ得る。当業者であれば、バルク重合プロセス(すなわち、モノマーが溶媒として作用するプロセス)の利点を理解し、したがって、重合系は、バルク重合を行うことによって求められる利点に有害な影響を及ぼす溶媒より少ない溶媒を含む。1つ以上の実施形態では、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量に対して、約20重量%未満、他の実施形態では約10重量%未満、更に他の実施形態では約5重量%未満であり得る。別の実施形態では、重合混合物には、使用する原材料に固有の溶媒以外の溶媒は含有されていない。更に別の実施形態では、重合混合物は溶媒を実質的に欠いている。これは、存在していれば重合プロセスにかなりの影響を及ぼすであろう量の溶媒が、存在していないことを指す。溶媒を実質的に欠いている重合系は、溶媒を実質的に含まないとも言える。特定の実施形態では、重合混合物は溶媒を欠いている。
【0074】
重合は、当該技術分野で知られている任意の従来の重合容器内で行ってもよい。1つ以上の実施形態では、溶液重合を従来の攪拌槽型反応器内で行うことができる。他の実施形態では、特にモノマー転化率が約60%未満である場合、バルク重合を従来の攪拌槽型反応器内で行うことができる。更に他の実施形態では、特にバルク重合プロセスにおけるモノマー転化率が約60%を超える場合(この場合、典型的に、高粘性のセメントが得られる)、バルク重合を細長い反応器(重合中の粘性セメントがピストンによって又は実質的にピストンによって動かされる)内で行う場合がある。例えば、セメントが自浄式一軸スクリュー又は二軸スクリュー撹拌器によって押し出される押出機が、この目的に適している。有用なバルク重合プロセスの例は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,351,776号に開示されている。
【0075】
1つ以上の実施形態では、重合に対して使用する構成成分を全て単一容器(例えば、従来の撹拌タンク反応器)内で混合することができ、重合プロセスの全ての工程をこの容器内で行なうことができる。他の実施形態では、2つ以上の構成成分を1つの容器内で事前に組み合わせてから別の容器に移し、そこでモノマー(又は少なくともその大部分)の重合を行うことができる。
【0076】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして行うことができる。半連続プロセスでは、モノマーを必要に応じて断続的に充填して、すでに重合したモノマーと置き替える。1つ以上の実施形態では、重合が進む条件を制御して、重合混合物の温度を、約-10℃~約200℃、他の実施形態では、約0℃~約150℃、他の実施形態では、約20℃~約100℃の範囲に維持してもよい。1つ以上の実施形態では、重合の熱を取り除くことを、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続された還流凝縮器を用いることによるモノマーの気化及び凝縮による内部冷却、又は2つの方法の組み合わせによって行ってもよい。重合条件はまた、約0.1気圧~約50気圧、他の実施形態では約0.5気圧~約20気圧、他の実施形態では約1気圧~約10気圧の圧力下で重合を行うように制御することができる。1つ以上の実施形態では、重合を行い得る圧力には、大部分のモノマーが確実に液相となる圧力が含まれる。これらの又は他の実施形態では、重合混合物を嫌気条件下で維持してもよい。
【0077】
本発明の重合プロセスによって製造されるポリジエンは、これらのポリマー中の一部のポリマー鎖が、反応性鎖末端を有するように、疑似リビング特性を有する場合がある。所望のモノマー転化率が達成されると、所望により結合剤を重合混合物内に導入し、結合ポリマーのポリマーセメントが得られるように、任意の反応性ポリマー鎖と反応させる。1つ以上の実施形態では、重合混合物を急冷剤と接触させることに先立って、結合剤を導入する。他の実施形態では、急冷剤により重合混合物を部分的に急冷した後に結合を導入してもよい。
【0078】
結合剤としては、非有機金属芳香族トリエステル化合物、例えば、非有機金属トリメリット酸エステル化合物を挙げることができる。非有機金属トリメリット酸エステル化合物としては、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート又はトリイソノニルトリメリテートを挙げることができる。1つ以上の実施形態では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、式(1)の化合物を含むことができ:
【化4】
式中、R、R’、及びR’’は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。式(1)の化合物の例としては、トリメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、及びブチルジエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレートが挙げられる。非有機金属トリメリット酸エステル結合剤の他の例は、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,4-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られるトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート又はトリノニル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られる、トリイソノニルトリメリテートである。
【0079】
1つ以上の実施形態では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、式(2)の化合物を含むことができ:
【化5】

式中、R、R’、及びR’’は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。式(2)の化合物の例としては、トリメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、及びブチルジエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレートが挙げられる。非有機金属トリメリット酸エステル結合剤の他の例は、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,3-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリ-2-エチルヘキシルヘミメリテート又はトリノニル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリイソノニルヘミメリテートである。
【0080】
1つ以上の実施形態では、非有機金属芳香族トリエステル化合物は、式(3)の化合物を含むことができ:
【化6】

式中、R、R’、及びR’’は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。式(3)の化合物の例としては、トリメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、及びブチルジエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートが挙げられる。非有機金属トリメリット酸エステル結合剤の他の例は、トリ(2-エチルヘキシル)1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリ-2-エチルヘキシルトリメシテート又はトリノニル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリイソノニルトリメシテートである。
【0081】
1つ以上の実施形態では、所望のモノマー転化率に達した後であって、しかし例えばプロトン性水素原子を含有する急冷剤を添加する前に、結合剤を重合混合物へ導入してもよい。1つ以上の実施形態では、少なくとも60%、他の実施形態では少なくとも70%、他の実施形態では少なくとも80%、他の実施形態では少なくとも85%、及び他の実施形態では少なくとも90%のモノマー転化率後に、結合剤を重合混合物へ添加する。これらの又はその他の実施形態では、95%のモノマー転化率に先立って、他の実施形態では90%のモノマー転化率に先立って、他の実施形態では80%のモノマー転化率に先立って、他の実施形態では70%のモノマー転化率に先立って、及び他の実施形態では60%のモノマー転化率に先立って、結合剤を重合混合物へ添加する。1つ以上の実施態様では、完全な又は実質的に完全なモノマー転化の後に、結合剤を添加する。
【0082】
1つ以上の実施形態では、重合(又は、少なくともその一部)が実施される場所(例えば、容器内)で、例えば一次重合容器内で、結合剤を重合混合物に導入してもよい。他の実施形態では、重合(又は、少なくともその一部)が行われた場所とは異なる場所で、結合剤を重合混合物に導入してもよい。例えば、下流の容器(下流の反応器又はタンク、インライン反応器又はミキサー、押出機、又は脱揮装置を含む)内で、結合剤を重合混合物に導入することができる。1つ以上の実施形態では、共役ジエンモノマーは、ランタニド含有化合物、アルキル化剤、及び任意選択的にハロゲン源の存在下で、一次撹拌反応容器内で重合されて中間体ポリマー混合物を生成し、モノマー転化率は、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上である。所望のモノマー転化率を達成した後、結合剤をポリマー混合物に添加することができる。例えば、所望のモノマー転化率(例えば、60%超)を有する中間体ポリマーは、結合剤を添加して結合ポリマーセメントを形成するために、反応容器から第2の反応容器に移動させることができる。
【0083】
1つ以上の実施形態では、結合剤と反応性ポリマー又は中間体ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達した後、30分以内、他の実施形態では5分以内、及び他の実施形態では1分以内に起こり得る。1つ以上の実施形態では、結合剤と反応性ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達した後すぐに起こり得る。他の実施形態では、結合剤と反応性ポリマーとの間の反応は、反応性ポリマーが貯蔵された後に起こり得る。1つ以上の実施形態では、中間体ポリマーの貯蔵は、室温で又は室温未満で、不活性雰囲気下で行う。1つ以上の実施形態では、結合剤と中間体ポリマーとの間の反応は、約10℃~約150℃、他の実施形態では約20℃~約100℃の温度で起こり得る。結合剤と中間体ポリマーとの間の反応が完了するのに必要な時間は、中間体ポリマーの調製に用いられる触媒系のタイプ及び量、結合剤のタイプ及び量、並びに結合反応が行われる温度など、種々の要因に依存する。1つ以上の実施形態では、結合剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約10~60分間、行なわれ得る。
【0084】
結合剤が重合混合物に導入され、かつ、所望の反応時間が提供されたら、急冷剤を重合混合物又は結合ポリマーセメントに任意選択的に加えて、任意の残留反応性ポリマー又はモノマー、触媒、及び/又は触媒構成要素を不活性化することができる。1つ以上の実施形態では、急冷剤としては、アルコール、カルボン酸、無機酸、又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されないプロトン性化合物が挙げられる。特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、2007年8月7日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/890,591号に開示されるように、急冷剤としてポリヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0085】
重合混合物を急冷させた後、重合混合物の種々の成分を回収してもよい。1つ以上の実施形態では、未反応モノマーを重合混合物から回収することができる。例えば、当該技術分野で既知の技術を用いてモノマーを重合混合物から蒸留することができる。1つ以上の実施形態では、脱揮装置を用いてモノマーを重合混合物から取り出してもよい。モノマーを重合混合物から取り出した後、モノマーを精製してもよいし、貯蔵してもよいし、かつ/又はリサイクルして重合プロセスに戻してもよい。
【0086】
ポリマー生成物を重合混合物から回収することを、当該技術分野で知られた技術を用いて行ってもよい。1つ以上の実施形態では、脱溶媒及び乾燥技術を用いてもよい。例えば、ポリマーの回収を、重合混合物を加熱されたスクリュー装置(例えば脱溶媒押出機)に通すことによって行うことができ、この装置では、揮発性物質の除去が、適温(例えば、約100℃~約170℃)かつ大気圧又は準大気圧下の気化によって行われる。この処理によって、未反応モノマー及び任意の低沸点溶媒が除去される。代替的に、ポリマーの回収を、重合混合物に蒸気脱溶媒を施し、続いて、結果として得られたポリマークラムを熱風トンネル内で乾燥させることによって行うこともできる。ポリマーの回収はまた、重合混合物をドラム乾燥機上で直接乾燥させることによって行なうこともできる。
【0087】
シス-1,4-ポリジエン(例えば、シス-1,4-ポリブタジエン)は、本発明のプロセスの1つ以上の実施形態によって生成される場合、シス-1,4-ポリジエンは、有利には、96%を超える、他の実施形態では97%を超える、他の実施形態では98%を超える、他の実施形態では98.5%を超える、他の実施形態では99%を超える、シス-1,4結合含有量を有することができる。本発明のプロセスによって製造されるシス-1,4-ポリジエンは、優れた粘弾性特性を示し、タイヤトレッド、サイドウォール、サブトレッド、及びビードフィラーを含むがこれらに限定されない様々なタイヤ構成要素の製造に特に有用である。シス-1,4-ポリジエンは、タイヤストックのエラストマー構成要素の全て又は一部として使用することができる。シス-1,4-ポリジエンを他のゴムと共に使用してタイヤストックのエラストマー成分を形成する場合、これらの他のゴムは、天然ゴム、合成ゴム、及びこれらの混合物であってもよい。
【0088】
これらのポリマーの数平均分子量(M)は、約100,000~約350,000、他の実施形態では、約125,000~約300,000、他の実施形態では、約150,000~約275,000、他の実施形態では、約175,000~約250,000であってもよく、その測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)を用いて行ない、その校正は、ポリスチレン標準と当該のポリマーに対するMark-Houwink定数とを用いて行なう。これらのポリマーの分子量分布又は多分散性(M/M)は、約1.5~約5.0、他の実施形態では、約2.0~約4.0であってもよい。
【0089】
有利には、本発明の結合ポリマーは、改善されたコールドフロー耐性を呈してもよい。結合ポリマーは特に、タイヤ部品の製造に用いることができるゴム組成物の調製において有用である。ゴム混錬技術及びそこで用いられる添加剤は、全般に、The Compounding and Vulcanization of Rubber,in Rubber Technology(2nd Ed.1973)。本発明の結合ポリマーから調製されるゴム組成物が特に有用であるのは、タイヤ構成要素、例えばトレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビードフィラーなどを形成する場合である。好ましくは、本発明の結合ポリマーをトレッド配合及びサイドウォール配合で用いる。
【0090】
ゴム組成物をタイヤの製造において用いる場合、これらの組成物を加工してタイヤ部品にすることを、通常のタイヤ製造技術、例えば、標準的なゴム成形技術、成型技術、及び硬化技術により行うことができる。典型的には、加硫は、加硫性組成物を成形型内で加熱することによって行われ、例えば、これは、約140~約180℃に加熱され得る。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称され得、加硫物は、概して、熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する。他の成分(例えば、充填剤及び加工助剤)は、架橋された網状組織全体にわたって一様に分散してもよい。空気入りタイヤは、米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号において述べられるように作製することができ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
本発明の実施を示すために、以下の実施例が調製され、試験された。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして見なされるべきではない。特許請求の範囲が本発明を定義するものとする。
【実施例
【0092】
以下の実施例において、ポリマー試料のムーニー粘度(ML1+4)は、100℃で、大きなロータを備えたムーニー粘度計と、1分間のウォームアップ時間と、4分間の実行時間とを使用して決定した。ポリマー試料の数平均(M)及び重量平均(M)分子量及び分子量分布(M/M)は、問題のポリマーの標準及び定数で較正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。ポリマー試料のシス-1,4-結合含有量は、赤外分光法によって決定した。
【0093】
実施例1
【0094】
シス-1,4-ポリブタジエンの合成
【0095】
撹拌器ブレードを備えた第1の76リットル窒素パージされた反応器を、重合反応容器として使用した。触媒系として、以下の成分を反応器容器に添加した。触媒成分を静的ミキサーに通した後、反応器容器の底部に添加した。溶媒として33.38キログラム/時間のヘキサン(182.5phm)、8.09キログラム/時間のブタジエン/ヘキサンブレンド(21%w/wブタジエン)(10phm)、0.311キログラム/時間のヘキサン中のトリイソブチルアルミニウム(13.4%w/w)及びジイソブチルアルミニウム(6.6%w/w)(0.34phm)、0.114キログラム/時間のヘキサン中のネオジムバーサテート(4.4%w/w Nd基準)(0.0274phm)、及び0.051キログラム/時間のヘキサン中のエチルアルミニウムジクロリド(15%w/w)。72.83キログラム/時間のブタジエン/ヘキサンブレンド(21%w/wブタジエン)(90phm)を、別個の入口で反応容器の底部に供給した。反応器容器のジャケット温度を、約95℃に設定し、反応器内で約25分間混合又は滞留時間後、得られた中間体ポリマーを、第2の76リットルの窒素パージされた反応容器に連続的に移動させた。80%以上のモノマー転化率を支持するため、ジャケット温度を調整して、第1の反応容器の内部温度を維持した。第2の反応容器への移動時の中間体ポリマーのムーニー粘度(ML1+4)は、26.1と測定された。
【0096】
0.274キログラム/時間のヘキサン中トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(5%w/w)(0.075phm)の流れを、連続反応器システムの第2の反応容器の側に供給した。第2の反応器容器のジャケット温度を、約95℃に設定し、反応器内で約25分間混合又は滞留時間後、得られた結合ポリマーセメントを、重合反応を終了させるためにヘキサン及びイソプロパノール混合物で調製した収集容器に移した。収集容器への移動時の結合ポリマーセメントのムーニー粘度(ML1+4)は、38.9と測定された。したがって、中間体ポリマーをトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートと結合させると、49%又は12.8単位の粘度増加がもたらされた。
【0097】
収集容器内でポリマーは、ポリマーに対し約0.5%w/wのレベルで終了させた。終了後、酸化防止剤(Santoflex 77PD)を0.04%w/wのレベルでポリマーに添加し、2時間混合した。次いで、最終ポリマーセメントを水蒸気脱溶媒(steam desolventized)し、残留水を0.75%w/w以下のレベルまで乾燥させて、42.6.のムーニー粘度(ML1+4)を有するポリマー生成物を得た。したがって、中間体ポリマーをトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートと結合させると、63%又は16.5単位の粘度増加を有するポリマー生成物が得られた。
【0098】
実施例2
【0099】
シス-1,4-ポリブタジエンの合成
【0100】
異なる量のヘキサン中のトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(5%w/w)を第2の反応容器の側に供給して、実施例1の重合プロセスを繰り返した。以下の表1は、第2の反応容器に移された中間体ポリマー及び結合ポリマー生成物について測定したムーニー粘度(ML1+4)及び緩和(T80)を示す。
【0101】
緩和(T80)測定は、ムーニー粘度試験の最後に測定する。力がポリマー試料に加えられ、これにより、試料の角度ねじれ(angular twisting)が生じる。一定時間後、この力が解放され、ゴム試料は緩和することができる。ゴム試料がその最終ムーニー粘度値の80%まで緩和して戻るのにかかる時間を測定し(秒単位で)、T80として報告する。ゴムの分岐度が増加するにつれて、そのT80は増加する。これは、直鎖シス1,4-ポリブタジエンゴムよりも遅い速度で緩和する分枝状シス1,4-ポリブタジエンゴムに起因すると考えられる。
【0102】
【表1】
【0103】
図1及び図2は、それぞれ、実施例2で調製した結合ポリマーの粘度及び緩和の増加をグラフで示す。表1から分かるように、約0.01phm~約0.013phmの範囲のトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの使用は、中間体ポリブタジエンポリマーのムーニー粘度を8~18単位、又は32~75%増加させることができる。約0.025phm~約0.075phmの範囲の結合剤の使用は、中間体ポリブタジエンポリマーのムーニー粘度を14~18単位、又は56~75%増加させた。緩和時間(T80)もまた、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテートを使用して著しく増加する。例えば、約0.01phm~約0.013phmの範囲のトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの使用は、中間体ポリブタジエンポリマーの緩和時間(T80)を0.4~0.9秒、又は17~47%増加させることができる。約0.025phm~約0.075phmの範囲の結合剤の使用は、中間体ポリブタジエンポリマーの緩和時間(T80)を0.6~0.9秒、又は35~47%増加させた。
【0104】
表1のポリマー試料の数平均(M)及び重量平均(M)分子量、分子量分布(M/M)、及びシス-1,4-結合も測定した。0.01phmのトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの場合、Mは199,333であり、Mは468,032であり、M/Mは2.35であり、シス-1,4-結合は96であった。0.025phmのトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの場合、Mは211,704であり、Mは536,908であり、M/Mは2.53であり、シス-1,4-結合は96.5であった。0.05phmのトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの場合、Mは189,086であり、Mは470,670であり、M/Mは2.49であり、シス-1,4-結合は96.8であった。0.075phmのトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの場合、Mは206,941であり、Mは527,110であり、M/Mは2.55であり、シス-1,4-結合は96.4であった。0.132phmのトリ-2-エチルヘキシルトリメリテートの場合、Mは184,891であり、Mは540,540であり、M/Mは2.92であった。
【0105】
組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。
図1
図2