(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用カバープレート組立体及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20230922BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/157 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/555 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/559 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20230922BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230922BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M50/15
H01M50/152
H01M50/157
H01M50/545
H01M50/555
H01M50/559
H01M50/55 101
H01M50/55 201
H01M10/052
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2021555392
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 CN2019082961
(87)【国際公開番号】W WO2020199248
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】201910272357.8
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201920460119.5
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521417473
【氏名又は名称】チャンチョウ マイクロバット テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジャウェン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ユンフェン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202042526(CN,U)
【文献】特表2014-510995(JP,A)
【文献】特表2014-511544(JP,A)
【文献】特表2018-502417(JP,A)
【文献】特開平05-129011(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0096045(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第109980149(CN,A)
【文献】特開平07-282843(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109216596(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部において筒体をなすように延在する貫通孔を有するカバープレート本体であって、前記筒体が前記カバープレート本体の少なくとも一方の表面に突出するカバープレート本体と、
前記筒体内に位置し、前記筒体に密封接合される環状の圧力解放部であって、前記カバープレート本体の変形によりクラックを生じたり、又は前記カバープレート本体から脱落したりするように構成される圧力解放部と、
前記圧力解放部の内周に配置され、軸方向に沿って前記圧力解放部を貫通する中心導体と、
を備える、リチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項2】
前記圧力解放部は無機非金属材料である、請求項1に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項3】
前記圧力解放部の材質はガラス又はセラミックである、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項4】
前記筒体は、前記カバープレート本体の一方の表面に突出し、前記カバープレート本体、前記圧力解放部、前記中心導体の、前記筒体と反対の側が揃っている、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項5】
前記カバープレート本体及び前記中心導体は、それぞれリチウムイオン電池の1つの電極として機能し、
前記圧力解放部は、前記筒体の自由端の端面を覆う延在部を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項6】
前記カバープレート本体の外縁は、環状接合部を形成するように一方側に延在する、請求項1から5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項7】
前記筒体は前記カバープレート本体に垂直である、請求項1から6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項8】
前記筒体の前記カバープレート本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の外側には、外面取りが形成される、請求項1から7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項9】
前記筒体のカバープレート本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の内側には、内面取りが形成され、
前記圧力解放部は、前記内面取りに囲まれた領域内に充填される、請求項1から8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項10】
前記中心導体は、前記圧力解放部の少なくとも一方の端面に突出する、請求項1から9のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項11】
前記カバープレートの外面には、前記圧力解放部の上端面を覆う絶縁層が配置され、前記中心導体の上端面は露出する、請求項1から10のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用カバープレート組立体。
【請求項12】
エネルギー変換素子と、
筒状部を含み、前記エネルギー変換素子が前記筒状部に囲まれたキャビティ内に位置する筐体と、
前記カバープレート本体が前記筒状部の一方の端をカバーし、前記カバープレート本体及び前記中心導体がそれぞれ前記エネルギー変換素子の2つの電極に接続される、請求項1から11のいずれか1項に記載のカバープレート組立体と、
を備える、リチウムイオン電池。
【請求項13】
前記カバープレート組立体の筒体は、前記キャビティ内に突出し、前記エネルギー変換素子では、前記筒体と前記圧力解放部とに対応する部分に凹構造が形成される、請求項
12に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー変換の技術分野に関し、さらに具体的には、リチウムイオン電池用カバープレート組立体及びエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のリチウムイオン電池、特に高出力の動力用リチウムイオン電池において、リチウムイオン電池が長期間の使用中又は熱暴走中に、内部気圧が過度に上昇した際に速やかに圧力を解放させて、爆発の発生を防ぐために、爆発防止・圧力解放構造や装置の設計が行われている。
【0003】
幾つかの技術方案として、キャップは、爆発防止・圧力解放の機能を有する。このキャップは、上部キャップ、下部キャップ、及び上部キャップと下部キャップとの間の破裂ダイヤフラムを含む。内部気圧が規定値を超えると、破裂ダイヤフラムが突き破られ、圧力が解放される。この圧力解放構造は、一般的に、円柱形のリチウムイオン電池のカバープレートに適用される。この圧力解放構造は、電流遮断と圧力解放の両方の機能を有する。しかしながら、構造が複雑で、部品が多く、組み立てるのに手間がかかり、また、高さに占める空間が大きく、セルの空間利用率が低い、という欠点がある。
【0004】
そのため、上記の技術的課題を解決するために、新しい技術方案を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、リチウムイオン電池用カバープレート組立体に関する新しい技術方案を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の第1の態様によれば、リチウムイオン電池用カバープレート組立体が提供される。このカバープレート組立体は、中央部において筒体をなすように延在する貫通孔を有するカバープレート本体であって、前記筒体が前記カバープレート本体の少なくとも一方の表面に突出するカバープレート本体と、前記筒体内に位置し、前記筒体に密封接合される環状の圧力解放部であって、前記カバープレート本体の変形によりクラックを生じたり、又は前記カバープレート本体から脱落したりするように構成される圧力解放部と、前記圧力解放部の内周に配置され、軸方向に沿って前記圧力解放部を貫通する中心導体と、を備える。
【0007】
任意的に、前記圧力解放部は無機非金属材料である。
【0008】
任意的に、前記圧力解放部の材質はガラス又はセラミックである。
【0009】
任意的に、前記筒体は、前記カバープレート本体の一方の表面に突出し、前記カバープレート本体、前記圧力解放部、前記中心導体の、前記筒体と反対の側が揃っている。
【0010】
任意的に、前記カバープレート本体及び前記中心導体は、それぞれリチウムイオン電池の1つの電極として機能し、前記圧力解放部は、前記筒体の自由端の端面を覆う延在部を含む。
【0011】
任意的に、前記カバープレート本体の外縁は、環状接合部を形成するように一方側に延在する。
【0012】
任意的に、前記筒体は前記カバープレート本体に垂直である。
【0013】
任意的に、前記筒体の前記カバープレート本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の外側には、外面取りが形成される。
【0014】
任意的に、前記筒体のカバープレート本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の内側には、内面取りが形成され、前記圧力解放部は、前記内面取りに囲まれた領域内に充填される。
【0015】
任意的に、前記中心導体は、前記圧力解放部の少なくとも一方の端面に突出する。
【0016】
任意的に、前記カバープレートの外面には、前記圧力解放部の上端面を覆う絶縁層が配置され、前記中心導体の上端面は露出する。
【0017】
本開示の別の実施形態によれば、リチウムイオン電池が提供される。このリチウムイオン電池は、エネルギー変換素子と、筒状部を含み、前記エネルギー変換素子が前記筒状部に囲まれたキャビティ内に位置する筐体と、前記カバープレート本体が前記筒状部の一方の端にカバーし、前記カバープレート本体及び前記中心導体がそれぞれ前記エネルギー変換素子の2つの電極に接続される、前記カバープレート組立体と、を備える。
【0018】
任意的に、前記カバープレート組立体の筒体は、前記キャビティ内に突出し、前記エネルギー変換素子では、前記筒体と前記圧力解放部とに対応する部分に凹構造が形成される。
【0019】
任意的に、前記中心導体と前記凹構造との間には、空隙が形成され、前記中心導体はタブによって前記エネルギー変換素子の1つの電極に接続され、前記タブは前記空隙内に伸縮可能構造として形成される。
【0020】
本開示のさらに別の実施形態によれば、リチウムイオン電池が提供される。このリチウムイオン電池は、エネルギー変換素子と、筒状部を含み、前記エネルギー変換素子が前記筒状部内に位置する筐体と、前記カバープレート本体が前記筒状部の一方の端をカバーし、前記カバープレート本体及び前記中心導体がそれぞれ前記エネルギー変換素子の2つの電極に接続される、前記カバープレート組立体と、を備え、前記筒状部の端は内側に向かう窄め部を形成し、前記環状接合部は前記窄め部の外側に外嵌される。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一実施形態によれば、カバープレート本体、圧力解放部、中心導体は同一層に位置するので、厚さがより小さく、高さ方向に占める空間が小さい。このような構造は、複数層に配置されたカバープレート組立体よりも、構造が簡単であり、組み立てが容易である。
【0022】
また、圧力解放部は圧力を解放する役割を果たすことができ、リチウムイオン電池の安全性能を向上させる。
【0023】
また、中心導体は導通する役割を有し、このカバープレート組立体は、リチウムイオン電池の少なくとも1つの電極として機能することができる。
【0024】
また、筒体と圧力解放部との間により良好な密封接合を形成することができ、これにより、カバープレート本体の厚さが小さい場合でも良好な密封効果を有し、ピン電池、ボタン電池などの小型エネルギー貯蔵素子に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、図面を参照しながら本出願の例示的な実施形態について詳細に説明することで、本出願の他の特徴及びその利点は明らかになる。
明細書に組み込まれ、明細書の一部をなす図面は、本出願の実施形態を示すものであり、その説明とともに本出願の原理を解釈するために用いられる。
【
図1】本開示の一実施形態に係るカバープレート組立体の断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る第2のカバープレート組立体の断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る第3のカバープレート組立体の断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る第4のカバープレート組立体の断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係るカバープレート組立体と筐体の組立図である。
【
図6】本開示の別の実施形態に係るリチウムイオン電池の断面図である。
【
図7】本開示の別の実施形態に係るリチウムイオン電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本出願の様々な例示的な実施形態について詳細に説明する。特に断りがない限り、これらの実施形態に記載された部材、工程の相対的な配置、数値表現式、及び数値は、本出願の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【0027】
以下、少なくとも1つの例示的な実施形態に対する説明は単に例示的なものにすぎず、決して本出願及びその適用又は使用を何ら制限するものではない。
【0028】
当業者にとって公知の技術、方法、装置に対して詳細に説明しないことがあるが、場合によっては、前記技術、方法、装置は明細書の一部と見なされるべきである。
【0029】
ここで示され検討される全ての例において、具体的な数値は全て、限定的なものではなく、例示的なもののみとして解釈されるべきである。したがって、例示的な実施形態の別の例において異なる値を有してもよい。
【0030】
なお、以下の図面において、類似の符号及び文字は類似の項目を表すので、ある項目は1つの図面において定義されると、以降の図面においてさらに説明する必要がないことに留意されたい。
【0031】
本開示の一実施形態によれば、リチウムイオン電池用カバープレート組立体が提供される。このカバープレート組立体は、カバープレート本体11と、圧力解放部12と、中心導体13と、を備える。
【0032】
カバープレート本体11は円形状、矩形状、楕円形状などを呈する。カバープレート本体11は全体としてシート状を呈する。カバープレート本体11の材質は、金属、プラスチックなどである。金属は、例えば、鉄基膨張合金、ステンレス鋼、コバール合金などを含む。
【0033】
カバープレート本体11は中央部において貫通孔を有する。貫通孔は、例えば、円形状孔、矩形状孔、楕円形状孔、又は他の形状の孔である。
【0034】
貫通孔は筒体15をなすように延在する。例えば、筒体15とカバープレート本体11とは一体に成形され、筒体15は、カバープレート本体11の少なくとも一方の表面に突出する。例えば、筒体15はカバープレート本体11に垂直である。これにより、圧力解放部12の構造がより規則的になる。
【0035】
もちろん、別の例において、筒体15とカバープレート本体11との夾角は鋭角でも鈍角でもよい。この場合にも、圧力を解放する役割を果たすことができる。
【0036】
圧力解放部12は筒体15中に位置し、筒体15に密封接合される。筒体15は、例えば、円柱形状、直方体形状、又は他の形状の角柱形状である一定の径を有する筒体15であってもよく、例えば、角柱台形状、円柱台形状などのように径が変わる筒体15であってもよい。圧力解放部12と密封接合を形成できればよい。
【0037】
圧力解放部12は、カバープレート本体11の変形によりクラックを生じたり、又はカバープレート本体11から脱落したりするように構成される。圧力解放部12は環状である。圧力解放部12は絶縁材料であり、例えば、無機非金属材料である。このような材料は、靭性が小さく、脆性が大きく、クラックが入りやすいという特徴があるので、筐体本体の内部圧力が設定値に到達すると、速やかに圧力を解放することができる。
【0038】
例えば、リチウムイオン電池の内部気圧が設定値に到達すると、カバープレート本体11が大きく変形する。この変形は、筒体15を介して圧力解放部12に作用する。例えば、筒体15の少なくとも一部が圧力解放部12を押圧することで、圧力解放部12にクラックが生じたり、又は圧力解放部12と筒体15との間に隙間ができたりする。クラックと隙間はいずれもガスのリークパスを形成することができ、内部ガスが放出されることを可能にする。或いは、クラックが隙間と連通してリークパスを形成してもよい。
【0039】
例えば、リチウムイオン電池の内部気圧が急激に上昇すると、内部高圧の作用により、圧力解放部12の少なくとも一部が筒体15から脱落して、リークパスを形成することで、速やかに圧力解放を行う。
【0040】
他の例では、カバープレート本体11の変形は気圧によるものに限定されない。リチウムイオン電池は、外力によって押圧されることによって変形しもよい。変形により、圧力解放部12が脱落する。損傷したリチウムイオン電池の内部におけるエネルギー変換素子は、使用中にガスが生じると、このガスは貫通孔から放出される。
【0041】
中心導体13は、圧力解放部12の内周に配置され、軸方向に沿って圧力解放部12を貫通する。中心導体13の材質は金属であり、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、コバール合金などである。
【0042】
この例において、カバープレート本体11、圧力解放部12、中心導体13は同一層に位置するので、厚さがより小さく、高さ方向に占める空間が小さい。このような構造は、複数層に配置されたカバープレート組立体よりも、構造が簡単であり、組み立てが容易である。
【0043】
また、圧力解放部12は、圧力を解放する役割を果たすことができ、リチウムイオン電池の安全性能を向上させた。
【0044】
また、中心導体13は、導通する役割を有し、このカバープレート組立体は、リチウムイオン電池の少なくとも1つの電極として機能することができる。
【0045】
また、筒体15と圧力解放部12との間により良好な密封接合が形成され得る。これにより、カバープレート本体11の厚さが小さい場合でも、良好な密封効果を有し、ピン電池、ボタン電池などの小型エネルギー貯蔵素子に好適に使用される。
【0046】
一例において、圧力解放部12の材質はガラス又はセラミックである。製作するときに、ガラス又はセラミックのグリーン体を貫通孔にセットする。中心導体13をグリーン体に嵌合する。次いで、グリーン体を仮焼し、構造強度を得るとともに、圧力解放部12を貫通孔と中心導体13とに密封接合(即ち、封着)させる。
【0047】
例えば、ガラス材質を選んで用いる場合、圧力解放部12はガラスセラミックス、ホウケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、又は他の特殊ガラスである。ガラスは、解放圧力の要求を満たす限り、中実構造、中空構造、又は透かし彫り構造のいずれかとしてもよい。
【0048】
一例において、筒体15はカバープレート本体11の一方の表面に突出する。カバープレート本体11、圧力解放部12、中心導体13の、筒体15と反対の側が揃っている。
【0049】
リチウムイオン電池を組み立てた後、カバープレート本体11における、セル19に近接する一方の表面を内面と、セル19から離れる表面を外面と定義する。例えば、
図1~2に示すように、筒体15が外面に突出する場合、内面は揃っている。この場合、筒体15は筐体の内部の空間を占めない。
【0050】
或いは、
図3に示すように、筒体15が内面に突出する場合、外面は揃っている。このような構造では、リチウムイオン電池の外形が規則的になり、空間利用率が高くなる。
【0051】
この2つの突出の形態において、圧力解放部12と筒体15との間にいずれも良好な密封接合が形成され得る。
【0052】
別の例において、
図4に示すように、筒体15は内面及び外面に突出する。この場合、筒体15と圧力解放部12との封着面積がより多くなり、密封効果がより高くなり、圧力を解放する際により高い臨界圧力値が必要となる。
【0053】
一例において、
図3に示すように、カバープレート本体11及び中心導体13は、それぞれリチウムイオン電池の1つの電極として機能する。例えば、中心導体13は正極として機能する。カバープレート本体11は負極として機能する。圧力解放部12は筒体15の自由端の端面を覆う延在部21を含む。
【0054】
自由端とは、筒体15の、カバープレート本体11から離れる一方の端を意味する。筒体15が外面に突出する場合、延在部21は自由端の端面を覆う。中心導体13がワイヤーによって外部回路と接続されると、延在部21の存在により、ワイヤーが筒体15と接触することがなく、これにより、短絡を効果的に防止することができる。
【0055】
図3に示すように、筒体15が内面に突出する場合、延在部21は自由端の端面を覆う。中心導体13がタブ又はワイヤーによってセル19と接続されると、延在部21の存在により、タブ又はワイヤーは筒体15と接触することがなく、これにより、短絡を効果的に防止することができる。
【0056】
筒体15が内面及び外面に突出する場合、延在部21は両方の自由端の端面を覆う。その場合でも、短絡を効果的に防止することができる。
【0057】
一例において、
図5に示すように、カバープレート本体11の外縁は、環状接合部23を形成するように一方側に延在する。組み立てる時に、環状接合部23は筐体の開口端に係合され、例えば、環状接合部23は、開口端の内側又は外側に位置する。環状接合部23はより大きな接合面積を有するので、カバープレート本体11と筐体との接合が容易になる。例えば、レーザー溶接、電気抵抗溶接、ロールグルーブなどによって接合する。
【0058】
筒体15の筐体本体との連結部分を根元と定義する。
図1に示すように、根元が直角の場合、根元に応力集中が発生しやすくなる。筐体本体の変形により、根元に大きな応力が発生し、根元の塑性変形を引き起こす。これにより、筐体本体の変形によって筒体15が横方向に移動することがなく、即ち、筐体本体の変形が筒体15に伝達されず、筒体15により圧力解放部12を押圧したり引っ張ったりすることがなく、隙間やクラックが生じることがない。リチウムイオン電池の防爆素子が無効化してしまう。
【0059】
この技術的課題を解決するために、一例において、筒体15では、根元の外側には、外面取り(
図2のR1で表される)が形成される。外面取りは根元に発生する応力集中を効果的に低減させることができ、これにより、筐体本体の変形を速やかに筒体15に伝達させることができる。その場合、筒体15の上半分により圧力解放部12を押圧し、下半分により圧力解放部12を引っ張ることで、圧力解放通路の形成がより容易になる。
【0060】
また、圧力解放部12の高さを、例えば、0.5mm未満になるように小さくすることが困難である。しかしながら、一部の小型のリチウムイオン電池では、解放圧力が小さいことが要求される。これは、圧力解放部12の有効高さが0.2mm、0.3mm、0.4mm、又はそれ以下であることを必要とする。しかしながら、従来の加工技術では達成することが困難である。
【0061】
一例において、筒体15では、根元の内側には、内面取りが形成される(
図2のR2で表される)。圧力解放部12は、内面取りに囲まれた領域内に充填される。圧力解放部12は直線段(
図2のbで表される)と湾曲段とを含む。直線段と筒体15との間に有効な密封接合が形成される。
【0062】
圧力解放部12の有効高さ、即ち直線段の寸法は、解放圧力を決定的に左右する。直線段の長さが大きいほど、解放圧力が大きくなり、逆に、直線段の長さが小さいほど、解放圧力が小さくなる。一方、圧力解放部12の、内面取りに囲まれた領域内に位置する部分(即ち、湾曲段)は、解放圧力への影響が少ない。内面取りを設けることで、直線段と筒体15との封着面積を効果的に低減させることができ、圧力解放部12の有効高さが小さくなる。
【0063】
これにより、圧力解放部12全体の高さが0.5mm又はそれ以上であっても、湾曲段による解放圧力に対する影響が小さいため、圧力解放部12の有効高さを0.2mm、0.3mm、0.4mm、又はそれ以下にすることができる。これにより、防爆素子はより低い解放圧力を有し、小型リチウムイオン電池、例えば、ピン電池又はボタン電池の使用上の要求を満たす。
【0064】
一例において、
図6~7に示すように、中心導体13は、圧力解放部12の少なくとも一方の端面に突出する。この例では、中心導体13が他の素子・デバイスに、例えば、ワイヤー又はFPCBによって電気的に接続される場合、ワイヤー又はFPCBは筒体15に接触し難い。
【0065】
また、レーザー溶接の時に、中心導体13は圧力解放部12に突出するため、ワイヤー又はFPCBが中心導体13に位置決めされやすくなり、溶接の位置がより正確になる。
【0066】
一例において、
図7に示すように、カバープレートの外面に絶縁層16が配置される。絶縁層16は圧力解放部12の上端面を覆う。中心導体13の上端面は露出する。
【0067】
例えば、絶縁層16は、プラスチック、ゴム、シリコーンなどの材料からなる薄膜である。薄膜は、カバープレートの外面及び圧力解放部12に接着される。薄膜の中央部には、中心導体13が露出する穴を有する。
【0068】
或いは、絶縁層16は絶縁材料からなる絶縁コーティング層である。
【0069】
この例では、絶縁層16によって、ワイヤー又はFPCBが中心導体13に接続される時、カバープレート本体11に接触することを効果的に防止できる。これにより、短絡の発生を効果的に防止できる。
【0070】
また、絶縁層によって、圧力解放部12が外部の物体によって衝突されることを効果的に防止できる。
【0071】
本開示の別の実施形態によれば、リチウムイオン電池が提供される。リチウムイオン電池の形状は、円柱形状、直方体形状、楕円柱形状、又は他の形状である。
【0072】
このリチウムイオン電池は、エネルギー変換素子と、筐体と、上記のカバープレート組立体と、を備える。エネルギー変換素子は、化学エネルギーと電気エネルギーとの間の変換を行うために用いられ、例えば、リチウムイオン電池のセル19などである。
【0073】
筐体は筒状部24を含む。筒状部24は、例えば、円形状、矩形状、楕円形状などの断面を有する。エネルギー変換素子は、筒状部24に囲まれたキャビティ内に位置する。
【0074】
カバープレート本体11は、筒状部24の一方の端をカバーする。カバープレート本体11及び中心導体13は、それぞれエネルギー変換素子の2つの電極に接続される。例えば、カバープレート本体11及び中心導体13は、それぞれリチウムイオン電池の正、負極として機能する。
【0075】
例えば、カバープレート組立体は2つである。2つのカバープレート本体11は、それぞれ筒状部24の対向の両端に配置される。
【0076】
或いは、カバープレート組立体は1つであってもよい。筒状部24のカバープレート組立体と反対の端は底部25である。底部25は筒状部24と一体に成形される。
【0077】
このリチウムイオン電池は安全係数が高く、エネルギー密度が高いという特徴を有する。
【0078】
一例において、カバープレート組立体の筒体15はキャビティ内に突出する。エネルギー変換素子では、筒体15と圧力解放部12とに対応する部分に凹構造が形成される。
【0079】
例えば、リチウムイオン電池のセル19は巻回構造である。セル19は、センターピン20と膜電極とを含む。膜電極は、正極材料と、負極材料と、正極材料と負極材料との間のセパレータとを含む。膜電極はセンターピン20に巻回される。巻回構造の中央部には凹構造が形成され、即ち、縁部と中央部には、段差が形成される。組み立てる際に、筒体15と圧力解放部12とが凹構造内に位置する。
【0080】
この構成では、筐体の内部の空間が最大限に利用され、セル19がより多くの電力を蓄積することができる。リチウムイオン電池におけるエネルギー密度がより高くなる。
【0081】
一例において、中心導体13と凹構造との間には、空隙14が形成される。中心導体13は、タブによってエネルギー変換素子の1つの電極(例えば、セル19の正極材料)に接続される。タブは、空隙14内に伸縮可能構造22として形成される。伸縮可能構造22であるタブは、実際の必要に応じて伸縮するために、予め所定の長さを有し、これにより、タブの端部の位置は固定されず、実際の必要に応じて位置を決めることができる。これにより、他の部材の組み立ての精度への要求を低減することができ、リチウムイオン電池の組み立て難度が低くなる。
【0082】
伸縮可能構造は、限定されないが、例えば、U字状、折り畳み状、波形状などの構造であってよく、当業者は実際の必要に応じて選択することができる。
【0083】
本開示のまた別の実施形態によれば、リチウムイオン電池が提供される。この例において、
図5に示すように、カバープレート本体11の外縁は、環状接合部23を形成するように一方側に延在する。カバープレート本体11は筒状部24の一方の端にカバーする。エネルギー変換素子(例えば、セル19)は筒状部24内に位置する。カバープレート本体11及び中心導体13は、それぞれエネルギー変換素子の2つの電極に接続される。
【0084】
カバープレート本体11の外縁は、環状接合部23を形成するように一方側に延在する。筒状部24の端は、内側に向かう窄め部26を形成する。窄め部26である筒状部24の口部は、内側に向かって窄められた構造を形成する。環状接合部23は、窄め部26の外側に外嵌される。環状接合部23は窄め部26と重なっている。例えば、レーザー溶接、電気抵抗溶接、ロールグルーブなどによって、カバープレート本体11と筐体とを接合する。環状接合部23によって、カバープレート本体11は筐体と組み立てやすくなる。
【0085】
一例において、このリチウムイオン電池の絶縁強度は1000V超である。リチウムイオン電池の密封の圧力レベルは、従来のプラスチック溶接によるリチウムイオン電池の圧力レベルを少なくとも3桁上回る。
【0086】
本出願の幾つかの特定の実施形態について、例を挙げて詳細に説明したが、当業者は、上記の例が本出願の範囲を限定するためのものではなく、説明するためのものであることを理解すべきである。当業者は、本出願の範囲及び精神から逸脱することなく、上記の実施形態を変更できることを理解すべきである。本出願の範囲は、特許請求の範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0087】
11 カバープレート本体、12 圧力解放部、13 中心導体、14 空隙、15 筒体、16 絶縁層、19 セル、20 センターピン、21 延在部、22 伸縮可能構造、23 環状接合部、24 筒状部、25 底部、26 窄め部