(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ポンプ本体アセンブリ、熱交換機器、流体機械及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
F04B 27/06 20060101AFI20230922BHJP
F04B 1/113 20200101ALI20230922BHJP
F04C 18/32 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F04B27/06
F04B1/113
F04C18/32
(21)【出願番号】P 2022511003
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2020110701
(87)【国際公開番号】W WO2021098314
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】201911158497.9
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
【住所又は居所原語表記】Qianshan Jinji West Road,Zhuhai, Guangdong, 519070, P.R. CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】董 明珠
(72)【発明者】
【氏名】胡 余生
(72)【発明者】
【氏名】魏 会軍
(72)【発明者】
【氏名】徐 嘉
(72)【発明者】
【氏名】杜 忠誠
(72)【発明者】
【氏名】任 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】楊 森
(72)【発明者】
【氏名】李 直
(72)【発明者】
【氏名】張 培林
(72)【発明者】
【氏名】梁 社兵
(72)【発明者】
【氏名】史 正良
(72)【発明者】
【氏名】張 栄▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】丁 寧
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/06
F04B 1/113
F04C 18/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体アセンブリであって、
ピストン(1)と、
回転軸(2)と、
ピストンスリーブ(3)であって、前記回転軸(2)が前記ピストン(1)を駆動して回転させるとともに前記ピストンスリーブ(3)内で往復運動させるピストンスリーブ(3)と、
シリンダ(4)であって、前記ピストンスリーブ(3)が前記シリンダ(4)内に位置し、かつ前記ピストン(1)の外周壁と前記シリンダ(4)の内壁との間に圧縮室(5)が形成され、前記ピストン(1)の外周壁又は前記シリンダ(4)の内壁における前記圧縮室(5)に対応する位置に圧力逃がし凹部(11)が設けられるシリンダ(4)と、を備え
、
前記ポンプ本体アセンブリが排気している時、前記圧力逃がし凹部(11)は、排気口から離れたガスが前記圧力逃がし凹部(11)を通って、前記排気口に流れることを可能にするポンプ本体アセンブリ。
【請求項2】
運動の過程において、前記ピストン(1)の外周壁のうち前記圧力逃がし凹部(11)の位置以外の部分は前記シリンダ(4)の内壁に適合することができる請求項1に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項3】
前記圧力逃がし凹部(11)は前記ピストン(1)の周方向に沿って延びている請求項1に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項4】
前記圧力逃がし凹部(11)の前記ピストン(1)の回転方向に沿った両端のそれぞれから前記圧縮室(5)の対応する両端までの弧長の和は2mm以上である請求項3に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項5】
前記シリンダ(4)はさらに排気通路(41)を有し、前記圧力逃がし凹部(11)の前記ピストン(1)の回転方向に沿った両端のうちの前記排気通路(41)に近い一端と前記排気通路(41)との間の弧長は1mm以上である請求項3に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項6】
前記回転軸(2)の軸線方向において、前記圧力逃がし凹部(11)と前記ピストン(1)のエッジとの間の距離は1mm以上であり、又は、
前記回転軸(2)の軸線方向において、前記圧力逃がし凹部(11)と前記シリンダ(4)のエッジとの間の距離は1mm以上である請求項1に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項7】
前記圧力逃がし凹部(11)は少なくとも1本の圧力逃がし溝を備え、前記圧力逃がし溝が複数である場合、複数の前記圧力逃がし溝は互いに連通するか又は互いに独立する請求項1に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項8】
各前記圧力逃がし溝の溝幅は0.5mm以上であり、又は、
各前記圧力逃がし溝の溝深さは0.1mm以上であり、又は、
すべての前記圧力逃がし溝の横断面積は0.025mm
2以上である請求項7に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項9】
すべての前記圧力逃がし溝の横断面積の和と、前記ピストン(1)の前記シリンダ(4)軸線に垂直な横断面の面積との比は0.001以上0.5以下である請求項7に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項10】
各前記圧力逃がし溝の横断面は矩形又は扇形である請求項7に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項11】
前記圧力逃がし溝は1本でありかつ前記ピストン(1)の周方向又は前記シリンダ(4)の周方向に沿って延びており、又は、
前記圧力逃がし溝は2本でありかつ十字形を呈し、又は、
前記圧力逃がし溝は3本でありかつH形を呈し、又は、
前記圧力逃がし溝は3本でありかつ「工」字形を呈し、又は、
前記圧力逃がし溝は複数本でありかつ魚骨状を呈し、又は、
前記圧力逃がし溝は2本であり、かつ第1の前記圧力逃がし溝は前記ピストン(1)の周方向又は前記シリンダ(4)の周方向に沿って延びており、第2の前記圧力逃がし溝は環状を呈しかつ第1の前記圧力逃がし溝と交差する請求項7に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項12】
前記圧力逃がし凹部(11)のキャビティ体積と前記ポンプ本体アセンブリの吐出量との比は0.001以上0.02以下である請求項1~11のいずれか一項に記載のポンプ本体アセンブリ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポンプ本体アセンブリを備える流体機械。
【請求項14】
流体機械は圧縮機である請求項13に記載の流体機械。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の流体機械を備える熱交換機器。
【請求項16】
流体機械の動作方法であって、前記流体機械は請求項13又は14に記載の流体機械であり、前記流体機械のシリンダ(4)は間隔を空けて設けられた吸気通路(43)、圧力逃がし通路(42)及び排気通路(41)を有し、かつ前記圧力逃がし通路(42)と前記シリンダ(4)のキャビティは圧力逃がし口を介して連通し、前記排気通路(41)と前記シリンダ(4)のキャビティは排気口を介して連通し、前記動作方法は、
前記流体機械が排気終了時に、前記流体機械のポンプ本体アセンブリの圧力逃がし凹部(11)は前記圧力逃がし口と直接又は間接的に連通し、同時に排気口から離脱することを含む、流体機械の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換システムの分野に関し、具体的には、ポンプ本体アセンブリ、熱交換機器、流体機械及びその動作方法に関する。
【0002】
本開示は、CN出願番号が201911158497.9、出願日が2019年11月22日の出願を基としてその優先権を主張し、ここでは該CN出願の開示内容は全体として本開示に援用される。
【背景技術】
【0003】
発明者らに知られている回転シリンダピストン圧縮機のポンプ本体構造及び回転シリンダピストン圧縮機では、回転軸によってピストンが回転駆動され、ピストンがピストンスリーブを駆動してシリンダ内で回転させる。ピストンは回転軸及びピストンスリーブのそれぞれに対して往復運動し、かつ2つの往復運動は互いに垂直である。このような過程において吸気、圧縮及び排気が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸気、圧縮、排気の過程において、ピストンとシリンダの内径との径方向の距離は周期的に変化する。吸気過程において、ピストンとシリンダの内径との径方向の距離が増大し続け、圧縮、排気の過程において、距離が10-2mm程度になるまで減少し続ける。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、ピストンと、回転軸と、ピストンスリーブであって、回転軸がピストンを駆動して回転させるとともにピストンスリーブ内で往復運動させるピストンスリーブと、シリンダであって、ピストンスリーブがシリンダ内に位置し、かつピストンの外周壁とシリンダの内壁との間に圧縮室が形成され、ピストンの外周壁又はシリンダの内壁における前記圧縮室に対応する位置に圧力逃がし凹部が設けられるシリンダと、を備えるポンプ本体アセンブリを提供する。
【0006】
いくつかの実施例では、運動の過程において、ピストンの外周壁の圧力逃がし凹部の位置以外の部分はシリンダの内壁に適合することができる。
【0007】
いくつかの実施例では、圧力逃がし凹部はピストンの周方向に沿って延びている。
【0008】
いくつかの実施例では、圧力逃がし凹部のピストンの回転方向に沿った両端のそれぞれから圧縮室の対応する両端までの弧長の和は2mm以上である。
【0009】
いくつかの実施例では、シリンダはさらに排気通路を有し、圧力逃がし凹部のピストンの回転方向に沿った両端のうちの排気通路に近い一端と排気通路との間の弧長は1mm以上である。
【0010】
いくつかの実施例では、回転軸の軸線方向において、圧力逃がし凹部とピストンのエッジとの間の距離は1mm以上であり、又は回転軸の軸線方向において、圧力逃がし凹部とシリンダのエッジとの間の距離は1mm以上である。
【0011】
いくつかの実施例では、圧力逃がし凹部は少なくとも1本の圧力逃がし溝を備え、圧力逃がし溝が複数である場合、複数の圧力逃がし溝は互いに連通するか又は互いに独立する。
【0012】
いくつかの実施例では、各圧力逃がし溝の溝幅は0.5mm以上である。
【0013】
いくつかの実施例では、各圧力逃がし溝の溝深さは0.1mm以上である。
【0014】
いくつかの実施例では、すべての圧力逃がし溝の横断面積は0.025mm2以上である。
【0015】
いくつかの実施例では、すべての圧力逃がし溝の横断面積の和と、ピストンのシリンダ軸線に垂直な横断面の面積との比は0.001以上0.5以下である。
【0016】
いくつかの実施例では、各圧力逃がし溝の横断面は矩形又は扇形である。
【0017】
いくつかの実施例では、圧力逃がし溝は1本でありかつピストンの周方向又はシリンダの周方向に沿って延びており、又は圧力逃がし溝は2本でありかつ十字形を呈し、又は圧力逃がし溝は3本でありかつH形を呈し、又は圧力逃がし溝は3本でありかつ「工」字形を呈し、又は圧力逃がし溝は複数本でありかつ魚骨状を呈し、又は圧力逃がし溝は2本であり、かつ第1の圧力逃がし溝はピストンの周方向又はシリンダの周方向に沿って延びており、第2の圧力逃がし溝は環状を呈しかつ第1の圧力逃がし溝と交差する。
【0018】
いくつかの実施例では、圧力逃がし凹部のキャビティ体積とポンプ本体アセンブリの吐出量との比は0.001以上0.02以下である。
【0019】
本開示の別の態様によれば、上記ポンプ本体アセンブリを備える流体機械を提供する。
【0020】
いくつかの実施例では、流体機械は圧縮機である。
【0021】
本開示の別の態様によれば、上記流体機械を備える熱交換機器を提供する。
【0022】
本開示の別の態様によれば、流体機械の動作方法であって、流体機械は上記流体機械であり、流体機械のシリンダは間隔を空けて設けられた吸気通路、圧力逃がし通路及び排気通路を有し、かつ圧力逃がし通路とシリンダのキャビティは圧力逃がし口を介して連通し、排気通路とシリンダのキャビティは排気口を介して連通し、動作方法は、流体機械が排気終了時に、流体機械のポンプ本体アセンブリの圧力逃がし凹部は圧力逃がし口と直接又は間接的に連通し、同時に排気口から離脱することを含む流体機械の動作方法を提供する。
【0023】
本開示の一部を構成する明細書の図面は本開示をさらに理解するために用いられ、本開示の例示的な実施例及びその説明は本開示を解釈するために用いられ、本開示を不当に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のポンプ本体アセンブリの実施例1のポンプ本体アセンブリの内部構造模式図を示す。
【
図2】
図1におけるシリンダの内部構造模式図を示す。
【
図3】
図1におけるピストンの模式的斜視図を示す。
【
図5】
図4におけるピストンのA-A面の断面図を示す。
【
図6】
図4におけるB-B面の断面図を示し、ここで圧力逃がし凹部の横断面の形状は半円形である。
【
図9】実施例1におけるポンプ本体アセンブリの排気速度の回転角に伴う変化傾向の比較図を示す。
【
図10】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例3のピストンの断面図(その視角が
図6に類似する)を示し、ここで圧力逃がし凹部の横断面の形状は矩形である。
【
図12】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例4のピストンの構造模式図を示す。
【
図13】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例5のピストンの構造模式図を示す。
【
図14】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例6のピストンの構造模式図を示す。
【
図15】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例7のピストンの構造模式図を示す。
【
図16】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例8のピストンの構造模式図を示す。
【
図17】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例9のピストンの構造模式図を示す。
【
図18】本開示のポンプ本体アセンブリの実施例10のピストンの構造模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
なお、矛盾しない場合、本開示における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。以下、図面及び実施例を参照しながら本開示を詳細に説明する。
【0026】
指摘すべきことは、特に明示しない限り、本開示に使用されるすべての技術及び科学的用語が当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有することである。
【0027】
本開示では、逆の説明をしない場合、使用される方位詞、例えば「上、下、頂、底」は一般的に図面に示す方向に対するものであるか、又は部材自体が鉛直、垂直又は重力方向にある場合に対するものであり、同様に、理解及び説明を容易にするために、「内、外」は各部材自体の輪郭に対する内、外を指すが、上記方位詞は本開示を限定するものではない。
【0028】
研究により、排気のための通路の面積が押圧端面とシリンダとの間の径方向における距離と横断面の高さとの積であることを発見した。排気過程において、排気口以外の高圧ガスは、排気口に到達する前に、ピストンの押圧端面とシリンダとの間の空間を流れる必要があるが、ピストンの押圧端面とシリンダとの間の径方向における距離が減少し続けることに伴って、この時、排気面積は排気口の面積よりはるかに小さく、距離の減少に伴って、有効排気面積も減少し、それにより、排気抵抗が大きく、排気圧力が上昇し、設計された排気圧力より高くなり、圧縮室全体に過圧縮現象が発生し、圧縮機のエネルギー効率に悪影響を与える。
【0029】
発明者らが知る別の解決手段では、シリンダに圧力逃がし通路が開設されることにより、過圧縮を一定程度緩和する。しかし、研究により、ピストンの押圧端面全体でのガスが高圧ガスであるため、圧力逃がし通路は圧力逃がし通路の近傍位置でのみの過圧縮を改善することができ、圧力逃がし通路及び排気通路から離れた位置では依然として過圧縮現象が存在することを発見した。
【0030】
これに鑑み、本開示の実施例は、排気時の過圧縮現象を改善することができるポンプ本体アセンブリ、熱交換機器、流体機械及びその動作方法を提供する。具体的には、流体機械は下記ポンプ本体アセンブリを備える。熱交換機器は、下記流体機械を備える。いくつかの実施例では、流体機械は圧縮機である。
【0031】
実施例1
図1~
図9に示すように、ポンプ本体アセンブリは、ピストン1、回転軸2、ピストンスリーブ3及びシリンダ4を備える。回転軸2は、ピストン1を駆動して回転させるとともにピストンスリーブ3内で往復運動させる。ピストンスリーブ3はシリンダ4内に位置し、かつピストン1の外周壁とシリンダ4の内壁との間に圧縮室5が形成される。ピストン1の外周壁又はシリンダの内壁における圧縮室5に対応する位置に圧力逃がし凹部11が設けられる。
【0032】
なお、本実施例では、圧力逃がし凹部11はピストン1の外周壁に開設される。
【0033】
本開示の技術的解決手段を適用すると、ピストンスリーブ3はシリンダ内に位置し、かつピストン1の外周壁とシリンダ4の内壁との間に圧縮室5が形成され、ピストン1の外周壁又はシリンダ4の内壁における圧縮室5に対応する位置に圧力逃がし凹部11が設けられる。ポンプ本体アセンブリが排気過程にある場合、排気口から離れたガスは圧力逃がし凹部11により排気口に流れ、このように、排気面積を増大させ、排気中のポンプ本体アセンブリの過圧縮をさらに改善する。
【0034】
図1に示すように、ピストン1の外周壁の圧力逃がし凹部11の位置以外の部分は、運動過程においてシリンダ4の内壁に適合することができる。圧力逃がし凹部11は圧縮室5内のガスの過圧縮をさらに緩和するためのものであり、圧縮室5内のガスが一定の圧縮比を有することを保証する必要があり、このため、ピストン1の外周壁の圧力逃がし凹部11の位置以外の部分は、シリンダ4の内壁に適合する必要がある。
【0035】
図3及び
図4に示すように、圧力逃がし凹部11はピストン1の周方向に沿って延びている。なお、上記圧力逃がし凹部11はピストン1の周方向に沿って延びているが、圧力逃がし凹部11が帯状の溝である必要はなく、概ねピストン1の周方向に沿って延びていればよい。言い換えれば、圧力逃がし凹部11はピストン1の周方向に沿って分布しており、圧力逃がし凹部11の作用は圧縮室5内のガスの過圧縮を緩和することである。圧力逃がし凹部11は、ピストン1の周方向に沿って分布していることで、圧縮室5のより多くの範囲をカバーすることができ、圧縮室5内の排気口の位置にないガスは、圧力逃がし凹部11により排気口に流れ、それにより、過圧縮をよりよく緩和する作用を果たす。
【0036】
図1、
図3、
図4、
図5に示すように、圧力逃がし凹部11のピストン1の回転方向に沿った両端のそれぞれから圧縮室5の対応する両端までの弧長の和は2mm以上である。ポンプ本体アセンブリの2つの容積室の独立性及びブローバイ回避の必要性を考慮すると、排気終了の時点では、圧力逃がし凹部11は排気口及び吸気通路43を貫通できないため、ピストン1に圧力逃がし凹部11を開設する際には両端に一定のシール距離を残す必要がある。
図1に示すように、ポンプ本体アセンブリの排気が終了する時、ピストン1の両端の位置は圧縮室5の対応する両端の位置とほぼ重なり、本実施例では、ピストン1の両端を基準とし、
図5に示すように、シール距離はL1とL2であり、L1とL2の長さの和は2mm以上である。
【0037】
図1及び
図5に示すように、シリンダ4はさらに排気通路41を有し、圧力逃がし凹部11のピストン1の回転方向に沿った両端のうちの排気通路41に近い一端と排気通路41との間の弧長は1mm以上である。本実施例では、この距離は図示されたL1に対応し、即ち、L1は1mm以上である。排気口の箇所におけるガスが高い気圧を有するため、距離L1を制限する必要があり、シール距離が小さすぎると、高圧のガスが圧力逃がし凹部11を介して吸気通路43内に入り、ポンプ本体アセンブリの吸気に悪影響を与える可能性がある。吸気口の箇所におけるガスの気圧が低いため、シール距離L2については、一定のシール距離を設定すればよい。
【0038】
本開示のいくつかの実施例では、圧力逃がし凹部11は少なくとも1本の圧力逃がし溝を備え、圧力逃がし溝が複数である場合、複数の圧力逃がし溝は互いに連通するか又は互いに独立する。圧力逃がし凹部11は、ポンプ本体アセンブリの過圧縮現象を緩和するためのものであり、ポンプ本体アセンブリの圧縮量、パワー等の状況に応じて各ポンプ本体アセンブリの過圧縮が異なるため、実際に使用する過程において、異なる状況に応じて異なる形態の圧力逃がし凹部11が使用されてもよい。
【0039】
図3~
図5に示す具体的な実施例では、ピストン1の周方向に沿って延びている1本の圧力逃がし溝が採用される。
【0040】
図6~
図8に示すように、各圧力逃がし溝の溝幅は0.5mm以上である。選択可能には、各圧力逃がし溝の溝深さは0.1mm以上である。選択可能には、すべての圧力逃がし溝の横断面積は0.025mm
2以上である。すべての圧力逃がし溝は、最終的に圧縮末端の圧縮ガスを排出するために用いられ、圧力逃がし溝自体も一部の排気通路であり、加工プロセスの課題を考慮する必要があり、圧力逃がし溝の幅、深さ及び横断面積に関してはある程度制限する必要があり、いくつかの実施例では、溝幅は0.8mmであり、溝深さは0.2mmであり、溝の横断面積は0.16mm
2である。
【0041】
図6~
図8に示すように、すべての圧力逃がし溝の横断面積の和とピストン1のシリンダ4の軸線に垂直な横断面の面積との比は0.001以上0.5以下である。
図10に示すように、ピストン1の横断面積の大きさは、ポンプ本体アセンブリの圧縮量に応じて決定され、圧力逃がし溝の作用は、ポンプ本体アセンブリの排気末端の有効排気面積を増大させることであり、したがって、両者の間の比の大きさを制限することにより、ポンプ本体アセンブリの圧縮量に影響をできるだけ与えずに圧力逃がし溝が圧縮を緩和する作用を果たすことを保証できる。
【0042】
選択可能には、各圧力逃がし溝の横断面は矩形又は扇形である。圧力逃がし溝の横断面をフライス盤により矩形又は扇形に直接加工することができる。本実施例では、圧力逃がし溝の横断面は半円形である。
【0043】
回転軸2の軸線方向において、圧力逃がし凹部11とピストン1のエッジとの間の距離は1mm以上である。ピストン1がシリンダ内で運動することを考慮すると、シリンダの上下端面は、ガスによる力の作用によりシリンダ4のピストンキャビティ内に向かって変形し、変形したシリンダ4とピストン1のエッジとの「引っ掛かり」を回避するために、圧力逃がし凹部11とピストン1のエッジとの間の距離は1mm以上である。
【0044】
図9に示すように、ポンプ本体アセンブリの回転軸2はピストン1を駆動して回転させ、ピストン1はピストンスリーブ3に対して相対的な往復運動のみが存在し、かつ2つの往復運動は互いに垂直であり、この過程において吸気、圧縮及び排気が行われる。ポンプ本体アセンブリは単シリンダ・二重圧縮室構造であり、2つの圧縮室5は互いに独立する。単一の容積室は、吸気開始角度が0°であり、0°~180°で吸気が完了し、80°~360°で圧縮及び排気が完了する。もう1つの圧縮室5とそれとの間に180°ずれが生じ、このことは、1つの圧縮室5が吸気を完了して圧縮段階に入ろうとするときに、もう1つの圧縮室5が排気を完了して吸気段階に入ろうとすることを意味する。
【0045】
排気初期段階において、圧縮室5の排気面積は排気口の面積と圧力逃がし口の面積の和であり、
【数1】
式中、D1は排気口の直径であり、D2は圧力逃がし口の直径である。
【0046】
排気末端では、ピストン1のヘッド部とシリンダ4の内円との径方向の距離が減少し続けるため、この時、圧縮室5の排気面積は、ピストン1のヘッド部とシリンダ4との径方向の距離及び排気口の周長と圧力逃がし口の周長の和に対して線形関係があり、
【数2】
式中、Δはピストン1のヘッド部とシリンダ4の内円との径方向の隙間である。
【0047】
圧縮室5が排気口から徐々に離脱する過程において、圧縮室5と排気口が重なった領域は徐々に減少し、この時、有効排気面積Sは、
【数3】
であり、
δは有効接触面積の割合である。
【0048】
回転シリンダの圧縮機の理論排気速度Vを定義する計算式は以下のとおりである。
【数4】
V’は回転シリンダの圧縮室5の容積変化率である。
【0049】
圧縮を開始する角度を0°角と定義し、この時、V’の計算式は以下のとおりである。
【数5】
Vは圧縮機の吐出量であり、ωは回転軸の回転角速度である。
【0050】
排気段階全体において、圧縮室5の有効排気面積、理論排気速度の回転角に伴う変化の法則は
図9に示され、圧縮末端では、圧縮室5の有効排気面積が徐々に減少し、理論排気速度が増大し続けることが明らかであり、この時、対応する排気抵抗が増加し続け、末端排気には深刻な過圧縮現象が発生し、圧縮機のエネルギー効率に深刻な影響を与える。具体的には、
図9に示すように、組み合わせ圧力逃がし溝の排気速度の回転角に伴う変化曲線も
図9に示される。
【0051】
図1に示すように、圧力逃がし凹部11のキャビティ体積とポンプ本体アセンブリの吐出量との比は0.001以上0.02以下である。ピストンのヘッド部に圧力逃がし凹部が開設されることにより、吸気過程においてポンプ本体の実際の吸気量を増加させる。排気過程において、圧力逃がし凹部11内の高圧ガスは次の吸気サイクルに入り、したがって、圧力逃がし凹部11が大きすぎると吸気過程に悪影響を与える。よって、ピストン全体での圧力逃がし凹部11のキャビティ体積とポンプ本体アセンブリの吐出量との比は0.001以上0.02以下である。
【0052】
本開示の流体機械の動作方法では、流体機械は上記流体機械であり、流体機械のシリンダは間隔を空けて設けられた吸気通路、圧力逃がし通路42及び排気通路41を有し、かつ圧力逃がし通路42とシリンダのキャビティは圧力逃がし口を介して連通し、排気通路41とシリンダのキャビティは排気口を介して連通し、動作方法は、流体機械が排気終了時に、流体機械のポンプ本体アセンブリの圧力逃がし凹部11は圧力逃がし口と直接又は間接的に連通し、同時に排気口から離脱することを含む。排気が終了する時点では、圧縮室5は排気口の位置から離れ、圧縮室5内のガスは圧力逃がし口によってしか圧力逃がしを行うことができず、圧力逃がし効果を達成するとともにブローバイを回避するために、排気が終了する時点で、流体機械のポンプ本体アセンブリの圧力逃がし凹部11は圧力逃がし口と直接又は間接的に連通し、同時に排気口から離脱する。
【0053】
実施例2
実施例1に対して本実施例の主な相違点は、圧力逃がし凹部11がシリンダ4に開設されることである。
【0054】
具体的には、ポンプ本体アセンブリは、ピストン1、回転軸2、ピストンスリーブ3、シリンダ4を備え、回転軸2はピストン1を駆動して回転させるとともにピストンスリーブ3内で往復運動させる。ピストンスリーブ3はシリンダ4内に位置し、かつピストン1の外周壁とシリンダ4の内壁との間に圧縮室5が形成され、シリンダ4の内壁における圧縮室5に対応する位置に圧力逃がし凹部11が設けられる。
【0055】
本開示の技術的解決手段を適用すると、ピストンスリーブ3はシリンダ内に位置し、かつピストン1の外周壁とシリンダの内壁の間に圧縮室5が形成され、ピストン1の外周壁又はシリンダ4の内壁における圧縮室5に対応する位置に圧力逃がし凹部11が設けられる。ポンプ本体アセンブリが排気している場合、排気口から離れたガスは圧力逃がし凹部11により排気口から排出することができ、このように、排気面積を増大させ、排気中のポンプ本体アセンブリの過圧縮をさらに改善する。
【0056】
選択可能には、回転軸2の軸線方向において、圧力逃がし凹部11とシリンダ4のエッジとの間の距離は1mm以上である。
【0057】
実施例3
実施例1に対して本実施例の主な相違点は、
図10及び
図11に示すように、圧力逃がし溝の横断面が矩形であることであり、矩形が半円形より加工されやすく、加工過程において刃先の1つの方向のみを移動すればよい。
【0058】
もちろん、圧力逃がし溝の数に応じて、本開示はさらに様々な実施例を提供する。実施例4~実施例6では、圧力逃がし溝は1本である。実施例7~実施例10では、圧力逃がし溝は複数本である。圧力逃がし溝はポンプ本体アセンブリの過圧縮現象を緩和するためのものであり、ポンプ本体アセンブリの圧縮量、パワー等の状況に応じて各ポンプ本体アセンブリの過圧縮の状況は異なるため、実際の使用過程において、異なる状況に応じて異なる形態の圧力逃がし溝を採用してもよい。加工の利便性を考慮すると、実施例1における圧力逃がし溝はピストン1の周方向に沿って開設され、かつ1本のみである。
【0059】
実施例4
実施例1と同様に、圧力逃がし溝は1本である。実施例1との違いは、圧力逃がし溝の延在方向が異なることである。
【0060】
図12に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は1本でありかつ回転軸の軸線方向に沿って延びている。
【0061】
実施例5
実施例1と同様に、圧力逃がし溝は1本である。実施例1との違いは、圧力逃がし溝の延在方向が異なることである。
【0062】
図13に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は1本でありかつ回転軸の軸線方向との間に夾角を有し、かつ前記夾角は90度ではない。
【0063】
実施例6
実施例1と同様に、圧力逃がし溝は1本である。実施例1との違いは、圧力逃がし溝の形状が異なることである。
【0064】
図14に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は1本でありかつ環状を呈する。
【0065】
実施例7
実施例1との違いは、圧力逃がし溝の数が異なることである。
【0066】
図15に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は2本でありかつ十字形を呈する。
【0067】
実施例8
実施例7と同様に、圧力逃がし溝は複数本である。実施例7との違いは、圧力逃がし溝の形状が異なることである。
【0068】
図16に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は3本でありかつH形を呈する。
【0069】
もちろん、3本の圧力逃がし溝の組み合わせは「工」字形であってもよい。
【0070】
実施例9
実施例7と同様に、圧力逃がし溝は複数本である。実施例7との違いは、圧力逃がし溝の形状が異なることである。
【0071】
図17に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は複数本でありかつ魚骨状を呈する。
【0072】
実施例10
実施例7と同様に、圧力逃がし溝は複数本である。実施例7との違いは、圧力逃がし溝の形状が異なることである。
【0073】
図18に示す具体的な実施例では、圧力逃がし溝は2本であり、かつ第1の圧力逃がし溝はピストン1の周方向又はシリンダ4の周方向に沿って延びており、第2の圧力逃がし溝は環状を呈しかつ第1の圧力逃がし溝と交差する。
【0074】
本開示の上記実施例では、ピストンスリーブはシリンダ内に位置し、かつピストンの外周壁とシリンダの内壁との間に圧縮室が形成され、ピストンの外周壁又はシリンダの内壁における圧縮室に対応する位置に圧力逃がし凹部が設けられる。ポンプ本体アセンブリが排気している場合、排気口から離れたガスは圧力逃がし凹部により排気口に流れ、このように、排気面積を増大させ、排気中のポンプ本体アセンブリの過圧縮をさらに改善する。
【0075】
明らかに、上記で説明された実施例は本開示の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本開示における実施例に基づいて、当業者が創造的労力を必要としない前提で得られたすべての他の実施例は、いずれも本開示の特許範囲に属するべきである。
【0076】
なお、ここで使用される用語は、具体的な実施形態を説明するために過ぎず、本開示の例示的な実施形態を限定することを意図するものではない。ここで使用されるように、文脈が明確に示されない限り、単数形は複数形も含むことを意図し、また、理解すべきことは、本明細書において用語「含む」及び/又は「備える」を使用する場合、特徴、ステップ、動作、デバイス、コンポーネント及び/又はそれらの組み合わせが存在することを示す。
【0077】
なお、本開示の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における用語「第1」、「第2」などは類似する対象を区別するために用いられ、特定の順序又は先後順序を説明するものではない。ここで説明された本開示の実施形態はここで図示又は説明された以外の順序で実施することができるように、このように使用されるデータは適切な場合に交換してもよいことを理解すべきである。
【0078】
以上は本開示の好ましい実施例に過ぎず、本開示を限定するものではなく、当業者にとって、本開示には種々の変更や変化が可能である。本開示の精神と原則内で行われたいかなる修正、同等置換、改良なども本開示の特許範囲内に含まれるべきである。