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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 10/00 20060101AFI20230922BHJP
   B23K 7/06 20060101ALI20230922BHJP
   B23K 7/10 20060101ALI20230922BHJP
   B23K 9/013 20060101ALI20230922BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20230922BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20230922BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20230922BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B23K10/00 501B
B23K7/06 G
B23K7/10 P
B23K7/10 501F
B23K9/013 C
B23K9/32 E
B23K15/00 502
B23K15/00 507
B23K26/364
B23K37/02 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023098275
(22)【出願日】2023-06-15
【審査請求日】2023-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 航
(72)【発明者】
【氏名】上月 崇功
(72)【発明者】
【氏名】右田 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】池澤 行雄
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04287005(US,A)
【文献】実開昭49-019032(JP,U)
【文献】特開昭64-027781(JP,A)
【文献】特開2003-112239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 10/00
B23K 7/06
B23K 7/10
B23K 9/013
B23K 9/32
B23K 15/00
B23K 26/364
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、
前記ワークに対して相対移動可能に構成される加工機本体と、
前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、
前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記第1面に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備え、
前記トーチは、前記熱加工時における前記加工機本体の前記ワークに対する移動方向を基準として先端が基端に対して前方に位置するように傾斜して配置され、
前記噴出器の噴出口は、前記ワークの第1面側かつ前記移動方向を基準として前記トーチの先端より前方に位置し、
前記噴出器は、前記移動方向前方に前記噴出体を噴出し、
前記加工機は、加工機本体を移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成し、
前記噴出器は、前記トーチの左右両側に配置された左右一対のノズルを備える、加工機。
【請求項2】
ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、
前記ワークに対して相対移動可能に構成される加工機本体と、
前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、
前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記第1面に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備え、
前記トーチは、前記熱加工時における前記加工機本体の前記ワークに対する移動方向を基準として先端が基端に対して前方に位置するように傾斜して配置され、
前記噴出器の噴出口は、前記ワークの第1面側かつ前記移動方向を基準として前記トーチの先端より前方に位置し、
前記噴出器は、前記移動方向前方に前記噴出体を噴出し、
前記加工機は、加工機本体を移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成し、
前記加工機本体に支持され、前記移動方向を基準として前記トーチより後方において形成された溝に前記加工機本体を倣わせる倣いローラを備えた加工機。
【請求項3】
ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、
前記ワークに対して相対移動可能に構成される加工機本体と、
前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、
前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記第1面に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備え、
前記トーチは、前記熱加工時における前記加工機本体の前記ワークに対する移動方向を基準として先端が基端に対して前方に位置するように傾斜して配置され、
前記噴出器の噴出口は、前記ワークの第1面側かつ前記移動方向を基準として前記トーチの先端より前方に位置し、
前記噴出器は、前記移動方向前方に前記噴出体を噴出し、
前記加工機は、加工機本体を移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成し、
前記噴出器の噴出口は、前記ワークの表面に平行な方向に長い形状を有している加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークに対して熱加工を行う加工機関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに溝を形成したり、ワークを切断したりするために、プラズマ加工等の熱加工が行われる。熱加工においては、トーチの先端とワークの加工箇所との間にプラズマ等の熱源を発生させることによりワークの切削が行われる。
【0003】
このような熱加工においては、ワークから切削された金属がドロスと呼ばれる溶融金属となってワークの表面または背面に堆積する。ワークに堆積したドロスは、すぐに冷えてワークに固着する。熱加工後にワークに固着したドロスを除去することは手間であり、生産性を低下させる。また、ワークにドロスが固着することにより、熱加工の安定的な継続が妨げられる恐れもある。
【0004】
このようなドロスの堆積の課題に関して、例えば、下記特許文献1には、プラズマ切断作業の開始前に、プラズマトーチ側の被切断材の面の切断予定部に向けてドロス付着防止剤を噴射する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公平7-26054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、熱加工前にドロス付着防止剤を噴射することによって、ドロスがワークに固着し難くなることは期待できるものの、ワークの表面または裏面にドロスが堆積することには変わりない。したがって、熱加工におけるドロスの除去の問題については改善の余地がある。
【0007】
そこで、本開示は、熱加工の際にドロスのワークへの堆積を防止することができる加工機提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る加工機は、ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、前記ワークに対して相対移動可能に構成される加工機本体と、前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備え、前記トーチは、前記熱加工時における前記加工機本体の前記ワークに対する移動方向を基準として先端が基端に対して前方に位置するように傾斜して配置され、前記噴出器の噴出口は、前記ワークの第1面側かつ前記移動方向を基準として前記トーチの先端より前方に位置し、前記噴出器は、前記移動方向前方に前記噴出体を噴出し、前記加工機は、加工機本体を移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成する。
【0009】
本開示の他の態様に係る加工機は、ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、加工機本体と、前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、前記トーチに対向する前記ワークの第1面とは異なる面であって、前記トーチの先端から前記ワークの加工箇所に向けて延びる仮想の直線と交差する面において前記ワークの加工箇所に基づいて定められる所定の領域に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出させる噴出器と、を備えている。
【0010】
本開示の他の態様に係る加工方法は、ワークに対して熱加工を行うための加工方法であって、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチを、前記ワークの加工箇所に向けて保持し、前記熱源を発生させることにより前記ワークの加工箇所に対して前記熱加工を行いながら、前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出させ、前記トーチを前記ワークに対して移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成し、前記ワークの第1面側かつ前記トーチの前記ワークに対する移動方向を基準として前記トーチの先端より前方から前記移動方向前方に前記噴出体を噴出させる。
【0011】
本開示の他の態様に係る加工方法は、ワークに対して熱加工を行うための加工方法であって、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチを、前記ワークの加工箇所に向けて保持し、前記熱源を発生させることにより前記ワークの加工箇所に対して前記熱加工を行いながら、前記トーチに対向する前記ワークの第1面とは異なる面であって、前記トーチの先端から前記ワークの加工箇所に向けて延びる仮想の直線と交差する面において前記ワークの加工箇所に基づいて定められる所定の領域に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、熱加工の際にドロスのワークへの堆積を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係る加工機の概略構成を示す正面図である。
図2図2は、図1に示す加工機の側面図である。
図3図3は、図1に示す加工機におけるトーチ近傍を示す拡大平面図である。
図4図4は、本開示の実施の形態2に係る加工機の概略構成を示す正面図である。
図5図5は、図4に示す加工機における加工箇所近傍を示す拡大平面図である。
図6図6は、実施の形態2の変形例における加工機の概略構成を加工機本体のワークに対する移動方向から見た図である。
図7図7は、図6に示す加工機の平面図である。
図8図8は、本開示の変形例における加工機の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
以下、本開示の実施の形態1に係る加工機について説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態1に係る加工機の概略構成を示す正面図である。加工機1は、熱加工として、ワークWの溶接部Bの裏側に溝G2を形成するための溝加工を行う作業機械である。一般に、溝加工はガウジングと称される。ワークWには、V形、X形、U形、J形等の様々な形状を有する開先G1が予め形成されている。ワークWの開先G1に対して表面側から溶接した後、ワークWの裏面に対して溝加工を行うことにより、元の開先G1より深い溝G2を形成する。これにより、表側からの溶接ビードにおける欠陥部を除去し、裏側からの溶接時に溶接不良が生じることを防止することができる。なお、ワークWに開先G1が予め形成されない場合もある。このようなワークWに対しても溝加工を実施し得る。すなわち、本開示におけるワークWに対する熱加工は、開先G1に対する熱加工に限られず、開先G1が存在しない箇所への熱加工も含まれる。
【0016】
図1においては、溶接対象であるワークWを水平に設置した状態で、当該ワークWの第1面S1に加工機1が設置された状態を示す。したがって、以下の説明において、ワークWの第1面S1に遠い方が加工機1における上方となり、近い方が下方となる。また、ワークWの第1面S1は、加工機1が当接する面、すなわち、後述するトーチ21に対向する面を意味する。ワークWの溶接部B、すなわち、溶接ビードが形成された面は、第1面S1とは反対側の第2面S2である。
【0017】
本実施の形態において、加工機1は、加工機本体2と、台車3と、を備えている。台車3は、台車本体4と、台車本体4に支持される車輪5と、を備えている。台車本体4は、加工機本体2を固定する固定面6を含んでいる。台車本体4は、直方体形状の筐体7を含む。筐体7の上面が固定面6となる。車輪5は、ワークWの第1面S1に接する。
【0018】
台車3は、台車本体4をワークWの第1面S1上において移動させるためのモータ8を備えている。モータ8は、筐体7内に設置される。モータ8への電力供給は、外部から電力ケーブル40を介して行われる。これに代えて、台車3にバッテリが搭載されてもよい。
【0019】
本実施の形態において、ワークWの第1面S1には、溶接線に沿ってレールRが固定される。レールRの固定方法は特に限定されない。例えば、レールRは、ワークWに、溶接により固定されてもよいし、磁石により固定されてもよいし、真空パッドにより固定されてもよい。レールRは、断面が円形のレールである。例えば、レールRは、パイプレールである。台車本体4は、レールRを保持するレール保持器9を含む。筐体7は、下面すなわち固定面6とは反対側の面にレールRが挿通される凹部10を有する。凹部10は、円弧状の断面を有する。レール保持器9は、凹部10の周囲に配設される。
【0020】
レール保持器9は、レールRを両側から挟持するような一対のローラを含む。一対のローラは、モータ8により駆動される駆動側ローラ11と、駆動側ローラ11に対向配置される従動側ローラ12と、を含む。台車本体4は、モータ8の駆動力を駆動側ローラ11に伝えて駆動側ローラ11を回転させるリンク13を有している。リンク13は、例えばギヤボックス等を含む。なお、レール保持器9の構成は、これに限られない。例えば、レール保持器9は、一対のローラに加えて補助ローラを備えてもよい。
【0021】
上記のように、本実施の形態においては、一対のローラ11,12でレールRを挟持した状態で駆動側ローラ11がモータ8の駆動力により回転することにより、台車3がレールRに沿って移動する。これにより、台車3は、ワークWに対してワークWの溶接線方向に移動する。この際、車輪5がワークWに接しながら回転する。台車3がレール保持器9によってレールRに保持されるため、ワークWの表面が上を向く場合だけでなく、横を向く場合および下を向く場合等であっても、台車3をレールRに沿って移動させ、台車3に搭載された加工機本体2によるワークWへの熱加工を行うことができる。また、ワークWは平面だけでなく曲面を有していてもよい。
【0022】
台車本体4の固定面6の一部には、移動制御器51が搭載されたケース52が固定されている。台車3は、ケース52の上面に配置され、台車3を操作するための操作盤53を有している。移動制御器51は、処理回路を含み、モータ8を制御する。
【0023】
加工機本体2は、固定面6に、着脱可能に固定される。固定面6は、固定穴6aを有する。加工機本体2は、固定穴6aに挿通される固定ねじ54により固定面6に固定される。固定ねじ54を緩めることにより、加工機本体2は、台車本体4の固定面6から取り外すことができる。
【0024】
固定面6には、加工機本体2に代えて、他の作業機械を固定可能である。これにより、加工機1として構成される加工機本体2を含む複数の作業機械において、台車3を共通化することができる。他の作業機械は、例えば、溶接トーチを移動させながら溶接を行う溶接機、溶接または加工前後の検査を行う検査機、溝加工以外の加工を行う加工機等を含み得る。例えば、加工機1において溝G2の切削加工を行った後、加工機本体2を固定面6から取り外し、固定面6に検査機を固定して台車3をレールRに沿って移動させることにより、加工機1により形成された溝G2の検査を行ってもよい。加工機本体2から検査機への取り換えは、台車3がレールRを保持した状態で行うことができる。
【0025】
図2は、図1に示す加工機の側面図である。加工機1は、ワークWに対して熱加工を行うトーチ21を備えている。本実施の形態において、トーチ21は、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間に熱源となるプラズマアークを発生させるプラズマトーチである。
【0026】
加工機本体2は、トーチ21を駆動するためのドライバ41を備えている。ドライバ41は、電源から供給される電力を所定の電圧または電流に変換してトーチ21内の電極に供給し、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間に熱源となるプラズマアークを発生させる。電源は、加工機本体2に搭載されたバッテリであってもよいし、外部電源から電力ケーブルを介して加工機本体2に電力が供給されてもよい。また、台車3の電源と加工機本体2の電源とが共通化されてもよい。ドライバ41は、インバータ等を含む処理回路を備えている。さらに、加工機本体2は、操作盤42を備えている。ドライバ41は、操作盤42の操作に基づいて、トーチ21を駆動する。
【0027】
加工機本体2は、トーチ21を台車3に保持する保持器22を備えている。トーチ21は、熱加工時における加工機本体2のワークWに対する移動方向Fを基準として先端21aが基端21bに対して前方に位置するように傾斜して配置される。保持器22は、トーチ21の傾斜配置を保持する。トーチ21の中心軸C1のワークWの第1面S1に対する傾斜角θは、特に限定されないが、例えば30度である。
【0028】
加工機本体2は、固定面6に固定される第1本体31と、第1本体31から前方に延出された第2本体32とを含む。第2本体32は、第1本体31に対して幅方向に移動可能に構成される。保持器22は、第2本体32に支持されるアーム23と、アーム23に支持され、トーチ21を保持するクランプ24と、を含む。保持器22は、トーチ21の傾斜角θおよびトーチ高さを変更可能に構成される。トーチ高さは、トーチ21の先端21aにおけるワークWの第1面S1に対する高さとして定義される。
【0029】
このような構成により、本実施の形態における加工機1は、ワークWに対してトーチ21が固定された加工機本体2を移動させながらトーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間にプラズマアークを発生させることによりワークWの第1面S1に溝G2を形成する熱加工を行う。
【0030】
ここで、本実施の形態において、加工機1は、噴出体Eを噴出する噴出器60を備えている。噴出器60は、トーチ21に対向するワークWの第1面S1に向けて噴出体Eを噴出させる。噴出器60は、ワークWの第1面S1においてワークWの加工箇所A2に基づいて定められる所定の領域A1に向けられる。噴出器60の噴出口60aは、ワークWの第1面S1側かつ移動方向Fを基準としてトーチ21の先端21aより前方に位置している。噴出器60は、先端の噴出口60aが基端に対して前方に位置するように配置される。これにより、噴出器60は、移動方向Fにおける前方に噴出体Eを噴出する。また、噴出口60aは、ワークWの第1面S1との距離が所定の距離以下となる位置に配置される。さらに、噴出口60aは、噴出体Eの噴出方向がワークWの第1面S1に対して水平または水平に近い角度となるように配置される。
【0031】
噴出器60は、加工機本体2に固定される。本実施の形態では、噴出器60は、保持器22に保持される。噴出器60は、トーチ21の左右両側に配置された左右一対のノズル61を備えている。一対のノズル61間の間隔は、開先幅またはトーチ21によって形成される溝G2より広くなるように配置される。ノズル61は、噴出体を供給する供給管62に接続されている。供給管62は、保持器22のクランプ24に固定されている。
【0032】
このように、本実施の形態では、トーチ21を保持する保持器と噴出器60を保持する保持器とが共通化または一体化される。このため、例えば、第2本体32を第1本体31に対して幅方向に移動させること等により、トーチ21の位置調整が行われても、トーチ21と噴出器60との位置関係を保持することができる。なお、トーチ21を保持する保持器と噴出器60を保持する保持器とは、互いに独立して構成されてもよい。
【0033】
噴出器60の噴出口60aは、ワークWの表面に平行な方向、すなわち、開先の幅方向に長い形状を有している。例えば、噴出口60aは、左右に長い長円形または楕円形を有する。例えば、ノズル61は、円形のパイプで構成され、その先端が上下方向にプレスされることにより、ノズル61の先端が噴出口60aとして形成されてもよい。これに代えて、開先の幅方向に長い長円形または楕円形を有する噴出口60aが円形のパイプで構成されるノズル61の先端に装着されてもよい。
【0034】
噴出器60から噴出される噴出体Eは、例えば、所定のガスである。所定のガスは、例えばアルゴンまたは窒素等の不活性ガスを含む。不活性ガスを用いることにより、ワークWに噴出体Eが吹き付けられた際に、ワークWが酸化することを防止することができる。なお、所定のガスは、ドロス除去の目的を達成するためには、不活性ガスに限られず、酸素または空気等のその他のガスでもよい。また、噴出体Eは、ガスに限られず、液体または固体でもよい。例えば、噴出体Eは、水、砂等の研磨材、または、ドライアイス等でもよい。
【0035】
さらに、本実施の形態において、加工機1は、倣いローラ63を備えている。倣いローラ63は、加工機本体2に支持される。加工機本体2は、第1本体31から後方に延出された第3本体33と、第3本体33から下方に延出された第4本体34とを含む。倣いローラ63は、第4本体34の下端に支持される。倣いローラ63は、幅方向中心位置が、トーチ21の幅方向中心位置に一致するように配置される。倣いローラ63は、移動方向Fを基準としてトーチ21より後方において形成された溝G2に加工機本体2を倣わせる。このために、倣いローラ63の高さは、ワークWの溝G2内に位置するような高さに設定される。すなわち、倣いローラ63の最下端は、車輪5の最下端より低い位置に位置する。
【0036】
加工機1が倣いローラ63を備えることにより、加工機1を実際に形成された溝G2に確実に倣わせることができる。これにより、加工機1をワークW上においてより安定的に移動させることができる。したがって、溝加工の自動化をより促進することができる。
【0037】
図3は、図1に示す加工機におけるトーチ近傍を示す拡大平面図である。図3には、加工機1におけるトーチ21、クランプ24、および噴出器60以外の構成については図示を省略している。前述したように、トーチ21は、先端21aが基端21bに対して前方に位置するように傾斜して配置されているため、図3に示すように、ワークWの加工箇所A2は、トーチ21の先端21aより前方に位置する。すなわち、トーチ21の先端21aより前方のワークWの開先位置とトーチ21の先端21aとの間にプラズマアークが形成される。
【0038】
この状態でトーチ21を含む加工機1がワークWに対して移動方向Fに移動する。プラズマアークにより、加工箇所A2におけるワークWの一部が溶融してドロスとなる。ドロスは、プラズマアークにより前方に吹き飛ばされる。吹き飛ばされたドロスは、加工箇所A2より前方かつワークWにおける第1面S1の開先の両側に堆積する、または、堆積しようとする。このように、ドロスが堆積する、または、堆積しようとする領域が所定の領域A1として設定される。例えば、所定の領域A1は、開先G1の縁部すなわち形成後の溝G2の縁部を含む領域に設定される。噴出器60は、このように設定された所定の領域A1に向けて噴出体Eを噴出させる。すなわち、噴出体Eは、ワークWの第1面S1側かつトーチ21のワークWに対する移動方向Fを基準としてトーチ21の先端21aより前方から移動方向前方に噴出する。
【0039】
噴出器60から所定の領域A1に向けて噴出体Eが噴出されることにより、所定の領域A1の近傍に飛来したドロスが前方へ吹き飛ばされる。また、一旦、所定の領域A1においてドロスが堆積したとしても、ドロスが冷えて当該位置においてワークWに固着する前に、噴出体Eにより吹き飛ばされる。このように、ワークWの加工箇所A2に対して熱加工を行いながらワークWの第1面S1に向けて噴出体Eを噴出させることにより、溝加工の際にドロスがワークWの第1面S1に堆積することを防止することができる。
【0040】
溝加工においてドロスがワークWの第1面S1に堆積することが防止されることにより、溝加工における品質の安定化および溝加工の自動化を促進することができる。溝加工中にワークWの第1面S1、特に、開先G1の縁部にドロスが堆積すると、トーチ21がドロスに接触することによりトーチ21が損傷したり、プラズマアークの生成不良を生じたりする恐れがある。また、本来、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間で発生するべきプラズマアークが、トーチ21の先端21aとドロスとの間で発生する恐れがある。これは、一般にダブルアークと称される。ダブルアークが生じると、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間のプラズマアークが弱められたり、切れたりする恐れがある。この結果、溝加工に不良が生じる恐れがある。
【0041】
また、ドロスがワークWの第1面S1、特に、形成された溝G2の縁部に堆積すると、堆積したドロスが倣いローラ63に干渉する恐れもある。倣いローラ63とドロスとの干渉による加工機1への移動抵抗が増大すると、加工機1の移動が困難になる恐れがある。この結果、加工機1が移動しながら溝加工を継続することができなくなる恐れがある。
【0042】
本実施の形態によれば、ワークWの第1面S1にドロスが堆積することに伴う上記問題を解決することができる。したがって、加工機1により行われる溝加工における品質を安定させることができる。また、加工機1による溝加工の自動化を促進することができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、噴出器60の噴出口60aが、ワークWの第1面S1側かつ移動方向Fを基準としてトーチ21の先端21aより前方に位置し、かつ、噴出器60が、移動方向Fの前方に噴出体Eを噴出するように構成されている。そのため、噴出器60のノズル61自体とプラズマアークとの干渉、噴出口60aから噴出される噴出体Eとプラズマアークとの干渉、または噴出体Eにより吹き飛ばされるドロスとプラズマアークとの干渉を防止することができる。したがって、溝加工に影響を与えることなくドロスを除去することができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、噴出器60の噴出口60aが、ワークWの表面に平行な方向に長い形状を有している。このため、噴出口60aから噴出する噴出体Eの噴出速度を高くすることができる。また、噴出体Eを幅方向に広い範囲に噴出させることができる。
【0045】
なお、噴出口60aは、移動方向Fを基準として所定の領域A1より手前に位置することが好ましい。これにより、噴出器60のノズル61とドロスとの干渉を防止することができる。また、本実施の形態においては、噴出器60がトーチ21の左右両側に配置された左右一対のノズル61を備えている。これにより、噴出体Eにより第1面S1における溝G2の左右両側に堆積するドロスを効率的に吹き飛ばすことができる。
【0046】
[実施の形態1における変形例]
上記実施の形態1では、噴出器60が左右一対のノズル61を備える例を示したが、ワークWの加工箇所A2に基づいて定められる所定の領域A1に向けて噴出体Eを噴出させることができれば、噴出器60の構成は、上記態様に限られない。例えば、上記実施の形態1では、左右に1つずつのノズル61が配置される例を示したが、これに代えて、片側あたり2以上のノズルが配置されてもよい。ノズルの配置態様は、幅方向に並列配置されてもよいし、高さ方向に並列配置されてもよい。
【0047】
また、一または複数のノズルがトーチ21の上方に配置されてもよい。この場合も、噴出口60aは、移動方向Fを基準としてトーチ21の先端21aより前方に位置し、移動方向Fの前方に噴出体Eを噴出するように構成され得る。また、トーチ21の上方にトーチ21の同心円上に円弧状に複数のノズルが配置されてもよい。また、円弧状に形成されたノズルがトーチ21の上方に配置されてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態1では、左右一対のノズル61の先端における噴出口60aが移動方向Fの前方に向けて配置される例を示したが、これに限られない。例えば、各噴出口60aが移動方向Fの斜め前方に向けて配置されてもよい。すなわち、各噴出口60aの向く方向は、移動方向Fの前方成分に、幅方向または高さ方向の成分を加えた方向であってもよい。また、片側あたり2以上のノズルが配置される場合、2以上のノズルが放射状に延びてもよいし、2以上の噴出口が放射状に向けられてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態1では、加工機1が倣いローラ63を備えた構成を例示したが、倣いローラ63はなくてもよい。また、加工機本体2が台車3に着脱不能であってもよい。すなわち、溝加工専用の加工機1においても、上記実施の形態1におけるドロス除去に関する構成を採用し得る。
【0050】
また、上記実施の形態1では、台車3は、移動制御器51により制御され、トーチ21は、ドライバ41により駆動される態様について例示したが、これに限られない。例えば、移動制御器51とドライバ41とが通信可能に接続されてもよい。さらに、ドライバ41は、移動制御器51から送られる指令信号に基づいてトーチ21の駆動を制御してもよい。例えば、台車3の走行位置に基づいてトーチ21の駆動のオンまたはオフが切り替えられてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、台車3の操作盤53が台車3に備えられ、加工機本体2の操作盤42が加工機本体2に備えられる例を示したが、これに限られない。例えば、台車3または加工機本体2が、台車3およびトーチ21を操作する共通の操作盤を備えていてもよい。また、台車3または加工機本体2、台車3または加工機本体2を遠隔操作するための遠隔操作端末を加工機1の本体とは別に有していてもよい。遠隔操作端末は、加工機1の本体に有線または無線により接続される。無線により接続される場合には、遠隔操作端末は、インターネット等のネットワークを介して通信可能なスマートフォン等の通信端末でもよい。
【0052】
[実施の形態2]
次に、本開示の実施の形態2に係る加工機について説明する。
【0053】
図4は、本開示の実施の形態2に係る加工機の概略構成を示す正面図である。図4において、実施の形態1に係る加工機1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。本実施の形態における加工機1Bは、熱加工として、ワークWに穴開け加工または切断加工を行う作業機械である。一般に、穴開け加工は、ピアッシングと称される。
【0054】
本実施の形態において、加工機1Bは、加工機本体2Bが台車として構成されている。すなわち、加工機本体2Bは、台車本体4と、台車本体4に支持される車輪5と、を備えている。加工機本体2Bの筐体は、台車本体4と共通になっている。車輪5は、所定のレールR上に設置される。
【0055】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、加工機1Bは、ワークWに対して熱加工を行うトーチ21を備えている。トーチ21は、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間に熱源となるプラズマアークを発生させるプラズマトーチである。
【0056】
加工機本体2は、トーチ21を加工機本体2に保持する保持器22を備えている。トーチ21は、先端21aがワーク設置台70に設置されたワークWの第1面S1に対面するように、当該第1面S1に対して垂直に配置される。言い換えると、トーチ21は、トーチ21の先端21aからワークWの加工箇所A2に向けて延びる仮想の直線がワークの第1面S1および第1面S1とは反対側の第2面S2に交差するように配置される。上記仮想の直線は、トーチ21の中心軸C1の延長線と言える。保持器22は、第1本体25、第2本体26およびクランプ24を含む。第1本体25は、台車本体4に支持され、上下方向に延出している。第2本体26は、第1本体25に支持され、移動方向Fに対して直交する方向、すなわち、レールRの幅方向に延出している。クランプ24は、第2本体26に支持され、トーチ21を保持する。
【0057】
第2本体26は、第1本体25に対して上下方向に移動可能であってもよい。また、クランプ24は、第2本体26に対してレールRの幅方向に移動可能であってもよい。これにより、クランプ24の先端の位置が調整可能となる。
【0058】
台車本体4は、台車本体4をレールR上において移動させるためのモータ8を備えている。モータ8は、台車本体4内に設置される。モータ8への電力供給は、外部から電力ケーブル40を介して行われる。これに代えて、台車本体4にバッテリが搭載されてもよい。モータ8から出力される動力により車輪5が回転することで、加工機本体2Bは、レールRに沿った方向に移動する。
【0059】
加工機本体2Bは、台車本体4内に、モータ8を制御する移動制御器51およびトーチ21を駆動するためのドライバ41を備えている。移動制御器51およびドライバ41は、1つの処理回路として構成されてもよい。台車本体4の上面には、加工機1Bを操作するための操作盤52Bが配置されている。操作盤52Bに対する操作入力に基づいて、移動制御器51は、加工機本体2Bの移動制御を行い、ドライバ41は、トーチ21の駆動制御を行う。
【0060】
本実施の形態における加工機1Bは、加工機本体2が停止した状態でトーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間にプラズマアークを発生させることにより、ワークWに穴を開ける熱加工を行う。また、加工機1Bは、ワークWに対して加工機本体2を移動させながらトーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間にプラズマアークを発生させることにより、ワークWを切断する熱加工を行う。切断加工をワークWの内部から始める場合には、加工機本体2の停止状態における穴開け加工が行われた後に、当該位置から加工機本体2を移動させることにより、切断加工が行われる。
【0061】
本実施の形態においても、加工機1Bは、噴出器60Bを備えている。噴出器60Bは、加工機本体2に支持される。噴出器60Bは、ノズル61と、ノズル61を保持する保持器64とを含む。保持器64は、台車本体4に固定される。本実施の形態において、噴出器60Bの噴出口60aは、ワークWの第2面S2側において噴出体Eを噴出するように配置される。また、噴出口60aは、ワークWの第2面S2との距離が所定の距離以下となる位置に配置される。さらに、噴出口60aは、噴出体Eの噴出方向がワークWの第2面S2に対して水平または水平に近い角度となるように配置される。
【0062】
図5は、図4に示す加工機における加工箇所近傍を示す拡大平面図である。図5は、加工箇所A2の近傍をワークWの第2面S2側から見た図である。図5には、加工機1Bにおけるトーチ21および噴出器60Bのノズル61以外の構成については図示を省略している。前述したように、トーチ21は、ワークWの第1面S1に対して垂直に配置されているため、図5に示すように、ワークWの加工箇所A2は、平面視においてトーチ21の先端21aの同心円状に広がる領域となる。すなわち、トーチ21の先端21a直下のワークWとトーチ21の先端21aとの間にプラズマアークが形成される。
【0063】
プラズマアークにより、加工箇所A2におけるワークWが溶融してドロスとなる。本実施の形態における熱加工では、プラズマアークが加工箇所A2においてワークWを貫通するため、生じたドロスは、ワークWの第2面S2における加工箇所A2の周囲に堆積する、または、堆積しようとする。切削加工の場合は、トーチ21を含む加工機1BがワークWに対して移動方向Fに移動する。これにより、加工箇所A2がトーチ21の移動に伴って移動方向Fに移動し、ワークWにおける加工箇所A2の通過部分に切れ込みG3が形成される。
【0064】
この際、生じたドロスは、ワークWの第2面S2における切れ込みG3の片側または両側に堆積する、または、堆積しようとする。このように、ドロスが堆積する、または、堆積しようとする領域が所定の領域A1として設定される。本実施の形態においては、実施の形態1のようにトーチ21が傾斜していないため、所定の領域A1は、加工箇所A2において形成される切れ込みG3の縁部の片側または両側を含む領域に設定される。穴開け加工のみの場合も同様に、所定の領域A1が加工箇所A2の周囲に設定される。
【0065】
噴出器60Bは、このように設定された所定の領域A1に向けて噴出体Eを噴出させる。本実施の形態において、図4に示されるように、噴出器60Bの噴出口60aは、トーチ21の先端21aからワークWの加工箇所A2に向けて延びる仮想の直線、すなわち、トーチ21の中心軸C1の延長線と噴出体Eの噴出方向、すなわち、噴出口60aの中心軸の延長線とが交差するように配置される。さらに、図5に示されるように、噴出器60Bの噴出口60aは、切断加工時における加工機本体2のワークWに対する移動方向Fと噴出体Eの噴出方向とが交差するように配置される。
【0066】
噴出器60Bから所定の領域A1に向けて噴出体Eが噴出されることにより、所定の領域A1の近傍に生じたドロスが側方へ吹き飛ばされる。また、一旦、所定の領域A1においてドロスが堆積したとしても、ドロスが冷えて当該位置においてワークWに固着する前に、噴出体Eにより吹き飛ばされる。このように、ワークWの加工箇所A2に対して熱加工を行いながらワークWの第2面S2に向けて噴出体Eを噴出させることにより、穴開け加工または切断加工の際にドロスがワークWの第2面S2に堆積することを防止することができる。
【0067】
本実施の形態においては、噴出器60Bの噴出口60aは、切断加工時における加工機本体2のワークWに対する移動方向Fと噴出体Eの噴出方向とが交差するように配置される。このため、切れ込みG3の縁部の両側にドロスが堆積しても、噴出体Eの噴出範囲が水平方向に狭い範囲であっても両側のドロスを効率よく一度に吹き飛ばすことができる。なお、本実施の形態においては、噴出される噴出体Eまたは吹き飛ばされたドロスとプラズマアークとがワークWの第2面S2側において交差し得る。しかし、プラズマアークにおけるワークWの第2面S2側部分は、ワークWの切削または穴開けに影響を与えない箇所であるため、問題を生じない。
【0068】
[実施の形態2における変形例]
上記実施の形態2においては、噴出器60Bの噴出口60aは、切断加工時における加工機本体2のワークWに対する移動方向Fと噴出体Eの噴出方向とが交差するように配置される態様を例示したがこれに限られない。例えば、噴出器60Bの噴出口60aは、上記実施の形態1のように、移動方向Fに沿った方向に噴出体Eを噴出するように配置されてもよい。なお、噴出器60Bの噴出口60aが移動方向Fと噴出体Eの噴出方向とが交差しない場合であっても、切れ込みG3の縁部の両側に堆積したドロスを吹き飛ばすことが可能である。この場合、噴出器60Bが複数の噴出口60aを備える、または、噴出口60aを幅広形状とすること等により、より効率的に切れ込みG3の縁部の両側に堆積したドロスを吹き飛ばすことができる。
【0069】
また、上記実施の形態2においては、噴出器60Bは、1つのノズル61を有する例を示したが、ノズル61の数は2以上でもよい。ノズル61および噴出口60aの配置態様も、上記所定の領域A1に向けて噴出体Eを噴出可能である限り、特に限定されない。
【0070】
また、上記実施の形態2においては、加工機本体2Bが台車の機能を有する構成を例示したが、実施の形態1のように、台車と加工機本体2Bとが別体に構成され、台車に対して加工機本体2Bを着脱可能としてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態2においては、加工機本体2Bが車輪5の駆動力によりレールR上を移動する構成を例示したが、実施の形態1のように、レールRを保持するレール保持器9を構成する駆動側ローラ11の駆動力により加工機本体2BがレールRに沿って移動する構成としてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態2においては、噴出器60Bの噴出口60aがトーチ21に対向するワークWの第1面S1とは反対側の第2面S2側に配置される態様を例示したが、噴出器60BがワークWの第1面S1とは異なる面であって、トーチ21の先端21aからワークWに向けて延びる仮想の直線と交差する面側に配置される限り、上記実施の形態2と同様の構成が適用可能である。
【0073】
図6は、実施の形態2の変形例における加工機の概略構成を加工機本体のワークに対する移動方向から見た図である。図7は、図6に示す加工機の平面図である。本変形例において、実施の形態2と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。また、図6および図7において、加工機本体2Bは、図示を省略しているが、例えば実施の形態2と同様の構成とすることができる。
【0074】
本変形例の加工機1Cにおいて、トーチ21は、ワークWの端部において開先を形成するために、ワークWの端部を斜めに切断するように配置されている。このため、トーチ21は、加工機本体2BのワークWに対する移動方向Fに対して交差する方向においてワークWの第1面S1に対して傾斜するように保持器22に保持される。すなわち、トーチ21は、中心軸C1の延長線である上記仮想の直線がワークWの第1面S1および第1面S1と交差する側面S3に交差するように配置される。
【0075】
本変形例において、噴出器60Cも、保持器22に保持される。噴出器60Cの噴出口60aは、側面S3側に配置される。さらに、本変形例においては、噴出器60Cの噴出口60aが、移動方向Fを基準としてトーチ21の先端21aより後方に位置し、かつ、噴出器60Cが、移動方向Fの前方に噴出体Eを噴出するように構成されている。
【0076】
本変形例においても、トーチ21の中心軸C1の延長線上にあるワークWとトーチ21の先端21aとの間にプラズマアークが形成される。形成されるプラズマアークにより、加工箇所A2におけるワークWが溶融してドロスとなる。本変形例における熱加工では、プラズマアークが加工箇所A2においてワークWを貫通するため、生じたドロスは、ワークWの側面S3における加工箇所A2の周囲または下方に堆積する、または、堆積しようとする。
【0077】
ここで、本変形例において、切れ込みG3の縁部の上方側のワーク部分は、熱加工後に不要となる、あるいは、プラズマアークによる溶融により当該ワーク部分自体が存在しなくなる。そのため、所定の領域A1は、加工箇所A2において形成される切れ込みG3の縁部の下方側を含む領域に設定される。噴出器60Cは、このように設定された所定の領域A1に向けて噴出体Eを噴出させる。本実施の形態において、図6に示されるように、噴出器60Bの噴出口60aは、中心軸がトーチ21の先端21aからワークWの加工箇所A2に向けて延びる仮想の直線、すなわち、トーチ21の中心軸C1の延長線より下方に位置するように配置される。
【0078】
なお、所定の領域A1は、加工箇所A2において形成される切れ込みG3の縁部の上方側および下方側の双方を含む領域に設定されてもよい。この場合、噴出器60Bの噴出口60aは、中心軸がトーチ21の先端21aからワークWの加工箇所A2に向けて延びる仮想の直線と交差するように配置されてもよい。
【0079】
噴出器60Cから所定の領域A1に向けて噴出体Eが噴出されることにより、所定の領域A1の近傍に生じたドロスが側方へ吹き飛ばされる。また、一旦、所定の領域A1においてドロスが堆積したとしても、ドロスが冷えて当該位置においてワークWに固着する前に、噴出体Eにより吹き飛ばされる。このように、ワークWの加工箇所A2に対して熱加工を行いながらワークWの側面S3に向けて噴出体Eを噴出させることにより、穴開け加工または切断加工の際にドロスがワークWの側面S3に堆積することを防止することができる。
【0080】
なお、本変形例では、噴出器60Cの噴出方向が加工機本体2Bの移動方向Fに沿っている例を示したが、噴出器60Cの噴出方向は、鉛直方向であってもよい。また、噴出器60Cの噴出方向は、移動方向に沿った成分および鉛直方向成分を含む斜め方向であってもよい。
【0081】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0082】
例えば、上記実施の形態において、熱加工として、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間にプラズマアークを発生させるプラズマ加工を例示したが、トーチ21の先端21aとワークWの加工箇所A2との間に熱源を発生させて、当該熱源により加工を行い得る加工方法を種々採用することが可能である。言い換えると、加工時にドロスが発生する加工方法を採用する加工機に対して本開示の内容は適用可能である。例えば、プラズマ加工に代えて、トーチ21からガス、レーザまたは電子ビーム等を照射することによって熱加工を行う加工機に対しても本開示を適用することができ、同様の効果を奏する。
【0083】
また、上記実施の形態では、噴出器60,60Bが加工機本体2,2Bに保持される態様を例示したが、噴出器60,60Bは、加工機本体2,2Bとは別に構成されてもよい。この場合、噴出器60,60Bは、加工機本体2,2Bの移動に合わせて噴出口60aと所定の領域A1との位置関係を保持するように、噴出器60,60B自体の位置または噴出口60aの位置が移動する。すなわち、噴出器60,60Bと加工機本体2,2Bとが協調制御されてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、レールRに沿って加工機本体2,2BがワークWに対して移動する態様を例示したが、これに限られない。例えば、加工機本体2,2Bが基台に接続され、複数の関節を有するアームを備えたロボットとして構成されてもよい。この場合、アームの先端に保持器22が固定され、ロボットを制御するロボットコントローラは、アームを動作させることにより、保持器22に固定されたトーチ21の位置を制御してもよい。
【0085】
また、加工機本体2,2Bに対してワークWが移動する構成としてもよい。図8は、本開示の変形例における加工機の概略構成を示す平面図である。図8において、実施の形態1,2に係る加工機1,1Bと同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。本変形例における加工機1Dは、実施の形態2と同様に、熱加工として、ワークWに穴開け加工または切断加工を行う作業機械である。
【0086】
本変形例において、ワークWは、ワーク台車71に設置される。ワーク台車71は、レールR上を移動可能に構成される。なお、ワーク台車71は、レールR上を移動可能な移動機構に代えて、移動方向Qに移動可能な種々の移動機構を採用可能である。
【0087】
一方、加工機本体2Dは、地面等の固定物に固定されている。加工機本体2Dは、固定物に固定される第1支持体27と、第1支持体27に支持される第2支持体28と、第2支持体28に支持されるクランプ24と、を備えている。第1支持体27は、ワーク台車71の移動方向Qに直交する方向に延びる延出体27aと、延出体27aの両端において固定物に固定される脚27bと、を含む。延出体27aは、ワーク台車71の幅より長い長さを有している。ワーク台車71は、2つの脚27bの間を通過可能に配置される。
【0088】
第2支持体28は、第1支持体27の延出体27a上を移動方向Qに直交する方向に移動可能に構成される。クランプ24は、トーチ21を保持する。クランプ24は、第2支持体28に対して高さ方向に移動可能に構成される。
【0089】
固定物に固定された加工機本体2Dに対してワークWがワーク台車71により移動方向Qに搬送されることにより、加工機本体2Cが保持するトーチ21がワークWに対して移動方向Fに相対移動する。
【0090】
本変形例における噴出器60Dは、地面等の固定物に固定される。噴出器60Dは、固定物に固定される土台65と、土台65に支持される保持器64と、保持器64により保持されるノズル61と、を含む。噴出器60Cの噴出口60aにおけるトーチ21との位置関係および噴出体Eの噴出方向は、実施の形態2と同様である。
【0091】
本変形例のような噴出器60Dにおいても、トーチ21に対向するワークWの第2面S2においてワークWの加工箇所A2に基づいて定められる所定の領域A1に向けて、噴出体Eを噴出させてドロスを除去することにより、ワークWへのドロスの堆積を防止することができる。
【0092】
なお、本変形例においては、熱加工として穴開け加工および切断加工を行う例を示したが、溝加工の場合においても、同様に、加工機本体に対してワークWが移動する構成を採用し得る。この場合、噴出器は、加工機本体に保持されてもよいし、加工機本体とは別に保持されてもよい。例えば、噴出器は、加工機が設置される建屋の上方から吊り下げ保持されてもよい。
【0093】
[本開示のまとめ]
[項目1]
本開示の一態様に係る加工機は、ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、前記ワークに対して相対移動可能に構成される加工機本体と、前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備え、前記トーチは、前記熱加工時における前記加工機本体の前記ワークに対する移動方向を基準として先端が基端に対して前方に位置するように傾斜して配置され、前記噴出器の噴出口は、前記ワークの第1面側かつ前記移動方向を基準として前記トーチの先端より前方に位置し、前記噴出器は、前記移動方向前方に前記噴出体を噴出し、前記加工機は、加工機本体を移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成する。
【0094】
上記構成によれば、噴出器から所定の領域に向けて噴出体が噴出されることにより、ワークの第1面側にドロスが発生する熱加工において、所定の領域の近傍に飛来したドロスが吹き飛ばされる。また、一旦、所定の領域においてドロスが堆積したとしても、ドロスが冷えて当該位置においてワークに固着する前に、噴出体により吹き飛ばされる。このように、ワークの加工箇所に対して熱加工を行いながらワークの第1面に向けて噴出体を噴出させることにより、溝加工の際にドロスがワークWの第1面に堆積することを防止することができる。
【0095】
さらに、噴出口の位置を上記構成の位置とし、当該位置から移動方向前方に噴出体を噴出させることにより、噴出器のノズル自体、噴出口から噴出される噴出体および噴出体により吹き飛ばされるドロスが、プラズマアークに干渉することを防止することができる。したがって、熱加工に影響を与えることなくドロスを除去することができる。
【0096】
[項目2]
項目1の加工機において、前記噴出器は、前記トーチの左右両側に配置された左右一対のノズルを備えてもよい。これにより、噴出体によりドロスを効率的に吹き飛ばすことができる。
【0097】
[項目3]
項目1の加工機は、前記加工機本体に支持され、前記移動方向を基準として前記トーチより後方において形成された溝に前記加工機本体を倣わせる倣いローラを備えてもよい。これにより、加工機を熱加工により形成された溝に確実に倣わせることができる。これにより、加工機をワーク上においてより安定的に移動させることができる。したがって、溝加工の自動化をより促進することができる。
【0098】
[項目4]
本開示の他の態様に係る加工機は、ワークに対して熱加工を行うための加工機であって、加工機本体と、前記加工機本体に固定され、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、前記トーチに対向する前記ワークの第1面とは異なる面であって、前記トーチの先端から前記ワークの加工箇所に向けて延びる仮想の直線と交差する面において前記ワークの加工箇所に基づいて定められる所定の領域に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備えている。
【0099】
上記構成によれば、噴出器から所定の領域に向けて噴出体が噴出されることにより、ワークの第1面とは異なる面側にドロスが発生する熱加工において、所定の領域の近傍に飛来したドロスが吹き飛ばされる。また、一旦、所定の領域においてドロスが堆積したとしても、ドロスが冷えて当該位置においてワークに固着する前に、噴出体により吹き飛ばされる。このように、ワークの加工箇所に対して熱加工を行いながらワークの第1面とは異なる面に向けて噴出体を噴出させることにより、溝加工の際にドロスがワークWの第1面とは異なる面に堆積することを防止することができる。
【0100】
[項目5]
項目4の加工機において、前記噴出器の前記噴出口は、前記ワークの前記第1面とは異なる面側かつ前記トーチの先端から前記ワークの加工箇所に向けて延びる仮想の直線と前記噴出体の噴出方向とが交差するように配置されてもよい。これによれば、ワークの第1面とは異なる面側において切削溝の両側または切削穴の周囲のドロスを一度に吹き飛ばすことができる。したがって、効率的なドロスの除去を行うことができる。
【0101】
[項目6]
項目4または5の加工機において、前記加工機本体は前記ワークに対して相対移動可能に構成され、前記噴出器の前記噴出口は、前記熱加工時における前記加工機本体の前記ワークに対する移動方向と前記噴出体の噴出方向とが交差するように配置されてもよい。これによれば、ワークの第2面側に発生するドロスを効率的に吹き飛ばすことができる。
【0102】
[項目7]
項目4から6の何れかの加工機において、前記トーチは、前記仮想の直線が前記ワークの前記第1面および前記第1面とは反対側の第2面に交差するように配置され、前記噴出器の前記噴出口は、前記第2面に向けられてもよい。
【0103】
[項目8]
項目4から7の何れかの加工機において、前記トーチは、前記仮想の直線が前記ワークの前記第1面および前記第1面と交差する側面に交差するように配置され、前記噴出器の前記噴出口は、前記側面に向けられてもよい。
【0104】
[項目9]
項目1から8の何れかの加工機において、前記噴出器の噴出口は、前記ワークの表面に平行な方向に長い形状を有していてもよい。これにより、噴出口から噴出する噴出体の噴出速度を高くすることができる。また、噴出体を幅方向に広い範囲に噴出させることができる。
【0105】
[項目10]
本開示の他の態様に係る加工方法は、ワークに対して熱加工を行うための加工方法であって、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチを、前記ワークの加工箇所に向けて保持し、前記熱源を発生させることにより前記ワークの加工箇所に対して前記熱加工を行いながら、前記トーチに対向する前記ワークの第1面に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出させ、前記トーチを前記ワークに対して移動させながら前記熱加工を行うことにより前記ワークの前記第1面に溝を形成し、前記ワークの第1面側かつ前記トーチの前記ワークに対する移動方向を基準として前記トーチの先端より前方から前記移動方向前方に前記噴出体を噴出させる。
【0106】
[項目11]
本開示の他の態様に係る加工方法は、ワークに対して熱加工を行うための加工方法であって、先端と前記ワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチを、前記ワークの加工箇所に向けて保持し、前記熱源を発生させることにより前記ワークの加工箇所に対して前記熱加工を行いながら、前記トーチに対向する前記ワークの第1面とは異なる面であって、前記トーチの先端から前記ワークの加工箇所に向けて延びる仮想の直線と交差する面において前記ワークの加工箇所に基づいて定められる所定の領域に向けて、前記熱加工に伴って前記所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出させる。
【符号の説明】
【0107】
1,1B,1C,1D 加工機
2,2B,2D 加工機本体
21 トーチ
60,60B,60C,60D 噴出器
60a 噴出口
61 ノズル
63 倣いローラ
A1 所定の領域
A2 加工箇所
E 噴出体
F 移動方向
G2 溝
S1 第1面
S2 第2面
W ワーク
【要約】
【課題】熱加工の際にドロスのワークへの堆積を防止することができる加工機および加工方法を提供する。
【解決手段】加工機は、ワークに対して相対移動可能に構成される加工機本体と、加工機本体に固定され、先端とワークの加工箇所との間に熱源を発生させるトーチと、トーチに対向するワークの第1面に向けて、熱加工に伴って所定の領域に堆積するドロスを除去するための噴出体を噴出する噴出器と、を備え、トーチは、熱加工時における加工機本体のワークに対する移動方向を基準として先端が基端に対して前方に位置するように傾斜して配置され、噴出器の噴出口は、ワークの第1面側かつ移動方向を基準としてトーチの先端より前方に位置し、噴出器は、移動方向前方に噴出体を噴出し、加工機は、加工機本体を移動させながら熱加工を行うことによりワークの第1面に溝を形成する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8