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  • 特許-判断力算出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】判断力算出装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/798 20140101AFI20230925BHJP
   A63F 13/212 20140101ALI20230925BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230925BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
A63F13/798
A63F13/212
A61B5/00 C
A61B5/16 110
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020054226
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021153682
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】勝原 康雄
(72)【発明者】
【氏名】下山 未来
(72)【発明者】
【氏名】梶 洋隆
(72)【発明者】
【氏名】菊池 弘一
(72)【発明者】
【氏名】林 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】坂口 徹朗
【審査官】奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533044(JP,A)
【文献】特開2016-022082(JP,A)
【文献】特表2002-503505(JP,A)
【文献】特開2007-130212(JP,A)
【文献】大塚誠也他2名,前額光電脈波計測によるゲーム中の心拍変動計測および自律神経指標解釈の試み,日本デジタルゲーム学会 第8回年次大会予稿集,日本,日本デジタルゲーム学会,2018年03月02日,第23-26頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/24,13/00-13/98
A61B 5/00-5/0538,5/16,5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出する判断力算出装置であって、
前記プレイヤに係る生体情報を時間情報に紐づけて取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報に基づいて、交感神経及び副交感神経各々の活動度を算出することによって、前記プレイヤの内面状態の時間変化を算出する第1算出手段と、
前記ビデオゲームの進行中に生じるイベントのうち注目すべきイベントである注目イベントを時間情報に紐づけて抽出する抽出手段と、
前記注目イベントに紐づけられた時間情報に基づいて、前記内面状態の時間変化のうち前記注目イベントが生じたタイミングを含む所定期間の内面状態を抽出し、前記抽出された内面状態から前記プレイヤの判断力を算出する第2算出手段と、
を備えることを特徴とする判断力算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出する判断力算出装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業中におけるユーザの心拍変動を示す特徴量と、作業中における情報処理能力に関する情報とを時刻に基づいて対応付けて事前データベースに記憶し、該事前データベースを用いてユーザの情報処理能力を推定する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-137138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える「エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)」が世界中で盛り上がりを見せている。eスポーツでは、例えばビデオゲームの成績に基づく処理能力の評価だけでなく、集中すべきポイントを判断する力も、プレイヤの評価指標となる。上記特許文献1に記載された技術では、プレイヤの判断力を評価できないという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ビデオゲームのプレイヤの判断力を評価することができる判断力算出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る判断力算出装置は、ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出する判断力算出装置であって、前記プレイヤに係る生体情報を時間情報に紐づけて取得する生体情報取得手段と、前記生体情報に基づいて、交感神経及び副交感神経各々の活動度を算出することによって、前記プレイヤの内面状態の時間変化を算出する第1算出手段と、前記ビデオゲームの進行中に生じるイベントのうち注目すべきイベントである注目イベントを時間情報に紐づけて抽出する抽出手段と、前記注目イベントに紐づけられた時間情報に基づいて、前記内面状態の時間変化のうち前記注目イベントが生じたタイミングを含む所定期間の内面状態を抽出し、前記抽出された内面状態から前記プレイヤの判断力を算出する第2算出手段と、を備えるというものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る判断力算出装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
判断力算出装置に係る実施形態について説明する。実施形態に係る判断力算出装置は、ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出する。
【0009】
ビデオゲームの成績(例えば、ゲーム内での得点等)が良ければ、プレイヤが、ゲームを上手に進められる、即ち、情報処理能力に優れていると評価することはできる。例えば一瞬の判断の結果によりゲーム展開が大きく変わり得るeスポーツ等においては、情報処理能力だけでなく、プレイヤの判断力も評価指標として重要となる。
【0010】
そこで、当該判断力算出装置では、プレイヤの判断力を算出するために、生体情報取得手段、第1算出手段、抽出手段及び第2算出手段を備える。
【0011】
生体情報取得手段は、プレイヤに係る生体情報を時間情報に紐づけて取得する。生体情報には、例えば心拍、脈拍、呼吸、瞬き、視線、脳波、音声、体動等の自律神経系の反応が反映されたデータが含まれていてよい。生体情報は、例えばプレイヤに装着されたウェアラブルセンサや、プレイヤを撮像した画像に画像処理を施すことにより取得されてよい。
【0012】
第1算出手段は、生体情報に基づいて、プレイヤの内面状態の時間変化を算出する。「内面状態」の一例としては、集中、緊張、リラックス等が挙げられる。第1算出手段は、生体情報に基づいて、例えば交感神経及び副交感神経各々の活動度を算出することにより内面状態の時間変化を算出してよい。このとき、第1算出手段は、交感神経の活動度が副交感神経の活動度より優位な場合に、例えば集中、緊張等と判定してよく、副交感神経の活動度が交感神経の活動度より優位な場合に、例えばリラックス等と判定してよい。尚、交感神経及び副交感神経各々の活動度は、例えば心拍動のゆらぎ、吸気時間、呼吸のポーズ時間等に基づいて算出されてよい。
【0013】
抽出手段は、ビデオゲームの進行中に生じるイベントのうち注目すべきイベントである注目イベントを時間情報に紐づけて抽出する。注目イベントの一例としては、ゲームの進行上避けられないイベント(例えば、特定の地点の通過、特定のキャラクタの打倒等)、ゲームの展開を左右し得るイベント(例えば、対戦相手のキャラクタに比較的大きなダメージを与えた等)が挙げられる。尚、注目イベントは、判断力の算出対象のプレイヤがビデオゲームを実行する前に決定されてもよいし、該プレイヤがビデオゲームの実行を終了した後に決定されてもよい。
【0014】
抽出手段は、ビデオゲームに係るゲームデータに基づいて、例えば、所定のフラグが立ったことを検出することにより、或いは、得点が比較的大きく変化したことを検出することにより、注目イベントを時間情報に紐づけて抽出してよい。
【0015】
第2算出手段は、注目イベントに紐づけられた時間情報に基づいて、プレイヤの内面状態の時間変化のうち前記注目イベントが生じたタイミングを含む所定期間の内面状態を抽出し、該抽出された内面状態からプレイヤの判断力を算出する。注目イベントは時間情報に紐づけられているため、第2算出手段は、注目イベントが生じたタイミングを特定することができる。第2算出手段は、注目イベントが生じたタイミングを含む所定期間の内面状態を抽出する。これにより、注目イベントが生じたときのプレイヤの内面状態が抽出される。
【0016】
ビデオゲームの進行中には、プレイヤが意図して生じたイベントと、プレイヤが意図せずに(即ち、偶然に)生じたイベントとがある。プレイヤの内面状態としての集中が比較的高いときに、注目イベントが生じていれば、プレイヤの意図により(言い換えれば、判断により)該注目イベントが生じたとみなすことができる。他方で、プレイヤの集中が比較的低いときに、注目イベントが生じていれば、プレイヤの意図によらずに該注目イベントが生じたとみなすことができる。そこで、第2算出手段は、例えば、所定期間に占める、プレイヤが集中していた時間の割合を、該プレイヤの判断力をとして算出してよい。
【0017】
このように当該判断力算出装置によれば、ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出することができる。
【0018】
実施形態に係る判断力算出装置の一具体例としての判断力算出装置100について図1を参照して説明する。図1において、判断力算出装置100は、生体データ取得部1、内面状態算出部2、ゲームデータ取得部3、イベント抽出部4、判断力算出部5及び判断力表示部6を備えて構成されている。
【0019】
生体データ取得部1は、例えばプレイヤが装着したウェアラブルセンサの出力から、例えば心拍、脈拍、呼吸、瞬き、視線、脳波、音声、体動等の自律神経系の反応が反映されたデータを含む生体情報を時間情報に紐づけて取得する。尚、生体情報には、例えば心拍、脈拍、呼吸、瞬き、視線、脳波、音声、体動等の全てが含まれる必要はなく、これらのうちの少なくとも一つが含まれていればよい。
【0020】
内面状態算出部2は、上記生体情報の特徴を抽出して、交感神経及び副交感神経各々の活動度を算出する。内面状態算出部2は、例えば、生体情報として、プレイヤの呼吸の時間変化が取得された場合、呼吸のポーズ時間に着目してよい。この場合、内面状態算出部2は、ポーズ時間が基準値よりも小さい場合、交感神経の活動度を副区間神経の活動度よりも優位にしてよい。このとき、内面状態算出部2は、交感神経の活動度が副区間神経の活動度より優位であることを、例えば「集中」、「緊張」又は「ストレス」等と表現してよい。つまり、内面状態算出部2は、交感神経及び副交感神経各々の活動度を比較して、プレイヤの内面状態を推定する。
【0021】
尚、交感神経の活動度と副交感神経の活動度とのどちらが優位かが判定される際には、例えば交感神経の活動度が副交感神経の活動度より第1基準値以上大きければ、交感神経の活動度が優位であると判定されてよい。同様に、副交感神経の活動度が交感神経の活動度より第2基準値以上大きければ、副交感神経の活動度が優位であると判定されてよい。第1基準値及び第2基準値は、プレイヤ毎及び/又はゲーム毎に設定されてもよいし、固定値であってもよい。また、第1基準値及び第2基準値は同じであってもよい。
【0022】
ゲームデータ取得部3は、例えばゲームのスコア、プレイヤキャラクタの位置、ゲーム進行中に発生したイベント等を含むゲームデータを取得する。ここで、ゲームデータは、例えばAPI(Application Program Interface)等から取得されてよい。或いは、ゲームデータは、例えばゲーム画面に対応する画像に画像処理を施すことにより取得されてよい。
【0023】
イベント抽出部4は、ゲームデータから、ゲームの進行中に生じたイベントを時間情報に紐づけて抽出する。イベント抽出部4は、ゲームデータに含まれるイベントを流用してもよい。イベント抽出部4は特に、ゲームの進行中に生じたイベントのうち、注目すべきイベントである注目イベントを抽出する。尚、イベント抽出部4は、注目イベントのみを抽出してもよいし、注目イベントに加えて、他のイベントも抽出してもよい。
【0024】
判断力算出部5は、内面状態算出部2により推定されたプレイヤの内面状態と、イベント抽出部4により抽出された注目イベントとを、時間情報に基づいて関連付ける。判断力算出部5は、関連付け結果から、注目イベントが生じたタイミングを含む所定期間に占める、プレイヤが集中していた時間(言い換えれば、交感神経の活動度が副区間神経の活動度より優位であった時間)の割合を、該プレイヤの判定力として算出する。例えば所定期間が2分であり、プレイヤが集中していた時間が1分30秒である場合、判断力算出部5は、該プレイヤの判断力を75%とする。尚、判断力の算出方法は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0025】
判断力表示部6は、算出された判断力を表示する。判断力の表示態様は、例えば円グラフやパーセンテージ等であってよい。
【0026】
(技術的効果)
当該判断力算出装置100によれば、ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出することができる。例えば複数のプレイヤがチームを組む場合、該チームの監督やコーチは、当該判断力算出装置100により算出された判断力を参照して、メンバーを決定することができる。当該判断力算出装置100が、プレイヤの判断力の時間変化を、注目イベントが生じたタイミングと一緒に出力するように構成されている場合、例えば当該判断力算出装置100の出力を参照することで、どこで集中すべきであったか、どこで余計な集中をしていたかを、プレイヤ自身が知ることができ、ビデオゲームのトレーニングに活用することができる。この場合、観客は、例えばeスポーツの大会等に出場するプレイヤが、どのようなシーンで集中を高めているかを知ることができ、観客自身の技能向上に活用することができる。例えばビデオゲームのゲーム進行の様子が、ネットワーク等を介して配信される場合に、実況者等が判断力を参照して実況内容を充実させることができる。
【0027】
<変形例>
判断力算出部5は、注目イベントが生じたタイミングを含む第1所定期間に占めるプレイヤが集中していた時間の割合から、注目イベント以外のイベントが生じたタイミングを含む第2所定時間に占めるプレイヤが集中していた時間の割合を引き算した値を、判断力として算出してよい。
【0028】
以上に説明した実施形態及び変形例から導き出される発明の態様を以下に説明する。
【0029】
発明の一態様に係る判断力算出装置は、ビデオゲームのプレイヤの判断力を算出する判断力算出装置であって、前記プレイヤに係る生体情報を時間情報に紐づけて取得する生体情報取得手段と、前記生体情報に基づいて、前記プレイヤの内面状態の時間変化を算出する第1算出手段と、前記ビデオゲームの進行中に生じるイベントのうち注目すべきイベントである注目イベントを時間情報に紐づけて抽出する抽出手段と、前記注目イベントに紐づけられた時間情報に基づいて、前記内面状態の時間変化のうち前記注目イベントが生じたタイミングを含む所定期間の内面状態を抽出し、前記抽出された内面状態から前記プレイヤの判断力を算出する第2算出手段と、を備えるというものである。
【0030】
上述の実施形態においては、生体データ取得部1が生体情報取得手段の一例に相当し、内面状態算出部2が第1算出手段の一例に相当し、イベント抽出部4が抽出手段の一例に相当し、判断力算出部5が第2算出手段の一例に相当する。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う判断力算出装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…生体データ取得部、2…内面状態算出部、3…ゲームデータ取得部、4…イベント抽出部、5…判断力算出部、6…判断力表示部、100…判断力算出装置
図1