(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ブース
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20230925BHJP
A47B 13/10 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
A47B13/10
(21)【出願番号】P 2019123870
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】永石 昇
(72)【発明者】
【氏名】内野 学
(72)【発明者】
【氏名】平野 佑太
(72)【発明者】
【氏名】間下 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠輝
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-320525(JP,A)
【文献】特開平06-299716(JP,A)
【文献】特開平11-131899(JP,A)
【文献】特開2014-037671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
A47B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から離隔された内部空間を形成すると共に出入口開口が設けられた隔壁を備えるブースであって、
鉛直方向に沿った回転軸心を中心として回転可能とされた座を有すると共に前記内部空間に配置された椅子と、
平面視にて中央部が前記外部空間に向けて膨出するように湾曲された形状とされると共に、鉛直方向に沿った旋回軸心を中心として前記出入口開口を開閉可能に旋回移動可能とされたスライド扉と
を備え
、
前記隔壁は、
前記出入口開口が設けられると共に前記ブースの前側に配置された前壁部と、
前記ブースの後側に配置されると共に前記前壁部に対して前記椅子を挟んで対向配置された後壁部と、
前記前壁部の右端と前記後壁部の右端とを接続する右壁部と、
前記前壁部の左端と前記後壁部の左端とを接続する左壁部と
を有する平面視矩形状に形成されており、
前記スライド扉は、前記出入口開口を閉鎖する位置である閉鎖位置にて、前記中央部が平面視にて前記前壁部の外壁面よりも前記外部空間側に突出されている
ことを特徴とするブース。
【請求項2】
前記ブースが、前記隔壁を支持する床部を備え、
前記椅子が、前記床部に前記回転軸心を中心とする回転方向を除いて水平方向に固定されている
ことを特徴とする請求項1記載のブース。
【請求項3】
前記椅子の前記回転軸心は、前記出入口開口から前記内部空間の奥側に向かう方向にて、前記内部空間の中心位置よりも前記出入口開口寄りに配置されていることを特徴とする請求項2記載のブース。
【請求項4】
前記内部空間にて前記椅子を挟んで前記出入口開口の反対側に配置されたデスクを備えることを特徴とする請求項1~
3いずれか一項に記載のブース。
【請求項5】
前記デスクの前記椅子側の前縁の少なくとも一部は、平面視にて前記椅子の回転方向に沿って湾曲されていることを特徴とする請求項
4記載のブース。
【請求項6】
平面視における前記回転軸心から前記旋回軸心までの距離寸法よりも、前記スライド扉の旋回半径と前記椅子の回転半径との差寸法が大きいことを特徴とする請求項1~
5いずれか一項に記載のブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィス、展示場及び公共施設等において、執務等を行うためのブースが設置されることがある(例えば、特許文献1参照)。特に、近年、オフィスのフリーアドレス化や携帯端末やパソコン等のICT(情報通信技術)を活用したモバイルワークが進展している。そのため、各種の移動先で小スペースのブースを利用して執務等を行う機会が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オフィスや公共施設等にブースを設置する場合には、オフィスや公共施設等の空間を有効利用するために、ブースの内部空間の執務空間を確保しつつブースは必要最小限の大きさにすることが望まれる。また、ブース内部の空調を行う場合には、ブースの内部空間の容積を小さくすることでエネルギ効率を高めることができる。
【0005】
このように、ブースを小型化しつつかつ内部空間における執務スペースを広く確保するために、ブースの内部空間に座が回転可能な椅子を設置することが考えられる。このような椅子は、鉛直方向に沿った回転軸心を中心として座を回転することができるため、利用者が座ったまま向きを変更することが可能となる。このため、執務空間として利用できずに、利用者の移動スペースとしてのみ用いられる空間を最小限に抑えることができる。
【0006】
一方で、一般的に上述のブースは、平面視における形状が矩形状とされている。このため、ブースの内部空間に座が回転可能な椅子を設置した場合には、ブースの隅部にデッドスペースが生じやすい。特に、執務等を行う利用者の背後に位置するブースの隅部は、執務等を行うスペースとして有効利用されずに、デッドスペースとなる可能性が高い。座が回転可能な椅子を用いることで、利用者の移動スペースを削減できるものの、今後は上述のようなデッドスペースを削除することが望まれる。例えば、執務スペースをより広く確保しようとした場合には、椅子の回転軸心をできる限りブースの出入口開口に近づける必要があり、単純に回転軸心を出入口開口に近づけると内部空間の容積拡大につながる。このため、デッドスペースを削減することによって、内部空間の容積拡大を抑止しつつ執務スペースを広く確保する工夫が求められている。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、外部空間から離隔された内部空間を形成するブースにおいて、デッドスペースの削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、外部空間から離隔された内部空間を形成すると共に出入口開口が設けられた隔壁を備えるブースであって、鉛直方向に沿った回転軸心を中心として回転可能とされた座を有すると共に上記内部空間に配置された椅子と、平面視にて中央部が上記外部空間に向けて膨出するように湾曲された形状とされると共に、鉛直方向に沿った旋回軸心を中心として上記出入口開口を開閉可能に旋回移動可能とされたスライド扉とを備えるという構成を採用する。
【0010】
このような第1の発明によれば、ブースの内部空間に座が鉛直方向に沿った回転軸心を中心に回転可能とされた椅子が設置され、隔壁に設けられた出入口開口には平面視にて外部空間に向けて中央部が膨出するように湾曲されたスライド扉が設置されている。このような湾曲された形状のスライド扉によれば、ブースの内部空間を局所的に増大させることができる。このため、例えば着座した利用者が回転軸心を中心として向きを変更する場合における利用者の膝が通過する領域のみをスライド扉によって局所的に広げることができる。したがって、執務スペースを確保するために椅子の回転軸心を出入口開口に近づけて設置した場合であっても、利用者の背後の隅部のデッドスペースを最小限に抑えることができる。よって、本発明によれば、内部空間の容積拡大を抑止しつつ執務スペースを広く確保することが可能となる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ブースが、上記隔壁を支持する床部を備え、上記椅子が、上記床部に上記回転軸心を中心とする回転方向を除いて水平方向に固定されているという構成を採用する。
【0012】
このような第2の発明によれば、椅子が回転方向を除いて床部に対して固定されている。このため、椅子の回転軸心が移動することを防止し、利用者が向きを変更するために回転可能な位置に常に椅子を配置しておくことが可能となる。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記椅子の上記回転軸心が、上記出入口開口から上記内部空間の奥側に向かう方向にて、上記内部空間の中心位置よりも上記出入口開口寄りに配置されているという構成を採用する。
【0014】
このような第3の発明によれば、椅子の回転軸心が内部空間の中心位置よりも出入口開口寄りに配置されているため、回転軸心が内部空間の中心位置や中心位置よりも奥側に配置されている場合と比較して、椅子の奥側のスペース(すなわち執務等を行うスペース)を広く確保することが可能となる。
【0015】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記隔壁が、上記出入口開口が設けられると共に上記ブースの前側に配置された前壁部と、上記ブースの後側に配置されると共に上記前壁部に対して上記椅子を挟んで対向配置された後壁部と、上記前壁部の右端と上記後壁部の右端とを接続する右壁部と、上記前壁部の左端と上記後壁部の左端とを接続する左壁部とを有するという構成を採用する。
【0016】
このような第4の発明によれば、スライド扉の設置領域を除いたブースの形状が略矩形状となる。このため、複数のブースを並べて配置する場合に、ブース同士の間にデッドスペースが生じることを防止することができる。
【0017】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記スライド扉が、上記出入口開口を閉鎖する位置である閉鎖位置にて、上記中央部が平面視にて上記前壁部の外壁面よりも上記外部空間側に突出されているという構成を採用する。
【0018】
このような第5の発明によれば、平面視が略矩形状のブースであっても、スライド扉によって前壁部の外壁面よりも外側に内部空間が局所的に広げることができ、内部空間の容積拡大を抑止しつつ執務スペースを広く確保することが可能となる。
【0019】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記内部空間にて上記椅子を挟んで上記出入口開口の反対側に配置されたデスクを備えるという構成を採用する。
【0020】
このような第6の発明によれば、椅子に対して出入口開口と反対側のスペースに対してデスクが設置されているため、着座した利用者が出入口開口と反対側に向くことで、デスクを用いた作業を行うことが可能となる。
【0021】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記デスクの上記椅子側の前縁の少なくとも一部が、平面視にて上記椅子の回転方向に沿って湾曲されているという構成を採用する。
【0022】
このような第7の発明によれば、デスクの椅子側の前縁が平面視にて椅子の回転方向に沿って湾曲されているため、着座状態の利用者の回転動作を妨げない範囲においてデスクの作業面を広く確保することが可能となる。
【0023】
第8の発明は、上記第1~第7いずれかの発明において、平面視における上記回転軸心から上記旋回軸心までの距離寸法よりも、上記スライド扉の旋回半径と上記椅子の回転半径との差寸法が大きいという構成を採用する。
【0024】
このような第8の発明によれば、椅子とスライド扉とが干渉することを確実に防止することができる。例えば、椅子の回転位置とスライド扉の回転位置が重なっていない場合には、椅子の回転角度とスライド扉の旋回角度とが変更することによって、椅子とスライド扉との離間寸法が変化する。このため、椅子の回転半径とスライド扉の旋回半径との差が小さい場合には、椅子とスライド扉とが干渉する可能性がある。これに対して、本発明によれば、スライド扉の旋回半径と椅子の回転半径との差寸法が、椅子の回転軸心とスライド扉の旋回軸心までの距離寸法よりも大きいため、椅子の回転角度とスライド扉の旋回角度に関わらず、椅子とスライド扉とが干渉することを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スライド扉によってブースの内部空間を局所的に増大させることができ、内部空間の容積拡大を抑止しつつ執務スペースを広く確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態におけるブースの概略構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるブースの概略構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるブースが備えるスライド扉の模式的な全体図であり、(a)が前側に見た正面図であり、(b)が(a)におけるB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係るブースの一実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態のブース1の概略構成を示す正面図である。また、
図2は、本実施形態のブース1の概略構成を示す側面図である。また、
図3は、
図1のA-A断面図である。本実施形態のブース1は、オフィスや公共機関等の床面上に設置され、外部空間から離隔された執務等を行う内部空間Kを形成するものである。なお、以下の説明においては、
図1~
図3に示すように、ブース1の内部空間Kで作業を行う利用者が外部空間と内部空間Kとの間で出入りする側を「前」、ブース1に対して前側から正対する利用者の右手側を「右」、左手側を「左」、ブース1に対して前側から正対する利用者から見てブース1の裏側を「後」とする。
【0029】
本実施形態のブース1は、
図1に示すように、床部2と、支柱3と、側壁4と、天井壁5と、上部ガイド機構6と、スライド扉7と、ガイドローラ8(
図1において省略、
図3参照)と、椅子9と、デスク10と、支持台11と、ディスプレイ12と、空調装置13とを備えている。
【0030】
床部2は、本実施形態のブース1が設置される床面上に直接的に載置され、支柱3、側壁4、天井壁5、上部ガイド機構6、スライド扉7、ガイドローラ8、椅子9、デスク10、支持台11、ディスプレイ12及び空調装置13を直接的あるいは間接的に下方から支持している。本実施形態において、床部2は、平面視にて矩形状とされている。このような床部2は、例えば
図1及び
図2に示すように、キャスタ2aやアジャスタ2bを備えている。このような床部2は、接床可能なキャスタ2aを備えており、容易に移動させることが可能である。また、設置位置においては、アジャスタ2bを接床することで、ブース1の移動が規制される。
【0031】
支柱3は、床部2上に立設された柱部材である。支柱3は、平面視において、矩形状とされた床部2の4つの隅部の各々に配置されている。つまり、本実施形態において、支柱3は、4本設置されている。これらの4本の支柱3は、本実施形態において同一の高さ寸法とされている。なお、これらの支柱3の高さ寸法が異なっていても良い。また、支柱3の数も変更可能である。
【0032】
側壁4は、支柱3同士の間の各々に配置されている。本実施形態において支柱3同士の間は4つあるため、本実施形態において側壁4は4つ設けられている。
図3に示すように、これらの4つ側壁4のうち、ブース1の前側に配置された側壁4を前壁部4a、ブース1の右側に配置された側壁4を右壁部4b、ブース1の左側に配置された側壁4を左壁部4c、ブース1の後側に配置された側壁4を後壁部4dと称する。
【0033】
前壁部4aは、ブース1の前側に配置された2つの支柱3の間に配置されており、平面視にて矩形状の床部2の前側の1辺に沿って配置されている。この前壁部4aは、床部2の上面に立設され、左縁部が左側の支柱3に対して接続されており、右縁部が右側の支柱3に対して接続されている。なお、
図1及び
図3に示すように、前壁部4aの左右方向の中央部には、出入口開口Eが設けられている。この出入口開口Eは、左右方向の開口寸法がブース1の利用者が通過可能な大きさとされ、高さ寸法が前壁部4aの下端から上端に至る大きさとされている。このような出入口開口Eは、ブース1の外側空間と内側空間との間で利用者が出入りを行うための開口である。
【0034】
右壁部4bは、ブース1の右側に配置された2つの支柱3の間に配置されており、平面視にて矩形状の床部2の右側の1辺に沿って配置されている。この右壁部4bは、床部2の上面に立設され、前縁部が前側の支柱3を介して前壁部4aの右縁部に対して接続され、後縁部が後側の支柱3を介して後壁部4dの右縁部に対して接続されている。つまり、右壁部4bは、ブース1の右側に配置された2つの支柱3の間を閉塞しており、前壁部4aの右端と後壁部4dの右端とを接続している。
【0035】
左壁部4cは、ブース1の左側に配置された2つの支柱3の間に配置されており、平面視にて矩形状の床部2の左側の1辺に沿って配置されている。この左壁部4cは、床部2の上面に立設され、前縁部が前側の支柱3を介して前壁部4aの左側部に対して接続され、後縁部が後側の支柱3を介して後壁部4dの左縁部に対して接続されている。つまり、左壁部4cは、ブース1の左側に配置された2つの支柱3の間を閉塞しており、前壁部4aの左端と後壁部4dの左端とを接続している。
【0036】
後壁部4dは、ブース1の後側に配置された2つの支柱3の間に配置されており、平面視にて矩形状の床部2の後側の1辺に沿って配置されている。この後壁部4dは、床部2の上面に立設され、右縁部が右側の支柱3に対して接続され、左縁部が左側の支柱3に対して接続されている。つまり、後壁部4dは、ブース1の後側に配置された2つの支柱3の間を閉塞している。このような後壁部4dは、平面視にて前壁部4aに対して椅子9を挟んで対向配置されている。
【0037】
これらの支柱3及び側壁4は、本実施形態において、外部空間から離隔された内部空間Kを形成すると共に出入口開口Eが設けられた隔壁14を形成している。つまり、本実施形態のブース1は、外部空間から離隔された内部空間Kを形成すると共に出入口開口Eが設けられた隔壁14を備えている。このような隔壁14は、床部2によって下方から支持されており、前壁部4aと、右壁部4bと、左壁部4cと、後壁部4dとを備えている。つまり、隔壁14は、出入口開口Eが設けられると共にブース1の前側に配置された前壁部4aと、ブース1の後側に配置されると共に前壁部4aに対して椅子9を挟んで対向配置された後壁部4dと、前壁部4aの右端と後壁部4dの右端とを接続する右壁部4bと、 前壁部4aの左端と後壁部4dの左端とを接続する左壁部4cとを有している。
【0038】
天井壁5は、支柱3及び側壁4に下方から支持されることによって、内部空間Kを上方から閉塞している。この天井壁5は、例えば、天井フレームと、天井パネルとを備えている。天井フレームは、天井パネルを水平方向から囲むと共に天井パネルの周縁に接続された枠状の部材であり、支柱3及び側壁4の上端に固定されている。天井パネルは天井フレームに支持されて平面視で天井フレームの内側に配置された板状の部材である。
【0039】
上部ガイド機構6は、天井壁5の前側に吊下げ支持されており、前壁部4aに設けられた出入口開口Eの上部に配置されている。この上部ガイド機構6は、スライド扉7を鉛直方向に沿った
図3に示す旋回軸心Lbを中心とした周方向にスライド可能に支持する機構である。例えば、上部ガイド機構6は、不図示のリニアモータ等を備える。このように上部ガイド機構6がリニアモータを備えている場合には、スライド扉7が自動的に移動される。
【0040】
スライド扉7は、
図3に示すように旋回軸心Lbを中心とする円弧状に湾曲された扉体であり、上部ガイド機構6によって出入口開口Eを開閉可能とされている。
図4は、スライド扉7の模式的な全体図であり、(a)が前側に見た正面図であり、(b)が(a)におけるB-B断面図である。これらの図に示すように、スライド扉7は、ガラスパネル7aと、上縁フレーム7bと、下縁フレーム7cと、側縁フレーム7dと、緩衝部材7eとを備えている。
【0041】
ガラスパネル7aは、ガラスによって形成されたパネル体であり、前後方向から見て矩形状とされている。なお、スライド扉7の透光性を確保するためにガラスパネル7aを採用しているが、透光性が不要である場合には他の材質のパネル体を用いることも可能である。
【0042】
上縁フレーム7bは、ガラスパネル7aの上端縁に接合されたフレーム部材である。下縁フレーム7cは、ガラスパネル7aの下端縁に接合されたフレーム部材である。側縁フレーム7dは、ガラスパネル7aの右端縁と左端縁との各々に対して接合されたフレーム部材あり、上縁フレーム7b及び下縁フレーム7cの端部に対して不図示のボルトによって固定されている。このような側縁フレーム7dは、本実施形態において2つ設けられている。これらの上縁フレーム7b、下縁フレーム7c及び側縁フレーム7dは、例えばアルミニウム合金によって形成されている。
【0043】
緩衝部材7eは、側縁フレーム7dのガラスパネル7aの反対側の端部に接続されており、側縁フレーム7dの上端から下端に至る範囲に設けられている。このような緩衝部材7eは、スライド扉7が他の部材や人と接触した場合の衝撃を和らげる。
【0044】
このようなスライド扉7は、平面視にて中央部が外部空間に向けて膨出するように湾曲された形状とされている。このスライド扉7の中央部は、
図3に示すように、出入口開口Eを閉鎖する位置である閉鎖位置にスライド扉7が配置された状態にて、平面視にて前壁部4aの外壁面よりも外部空間側に突出されている。つまり、
図2に示すように、スライド扉7を閉鎖した状態で、スライド扉7の中央部は、前方に向けて前壁部4aの外壁面よりも突出している。このようなスライド扉7は、鉛直方向に沿った旋回軸心Lbを中心として出入口開口Eを開閉可能に旋回移動可能とされている。
【0045】
ガイドローラ8は、床部2の床面に対して設けられたローラ部材であり、スライド扉7の下縁フレーム7cに設けられた不図示のガイド溝に対して摺動可能に収容されている。本実施形態においては、ガイドローラ8は、出入口開口Eがスライド扉7によって閉鎖された状態であっても開放された状態であっても、常にスライド扉7の一部が存在する箇所に対して設置されている。つまり、ガイドローラ8は、スライド扉7の位置に関わらず常に存在する箇所に設置されている。このため、ガイドローラ8は、スライド扉7のスライド位置に関わらず、常に下縁フレーム7cのガイド溝に収容された状態とされる。
【0046】
椅子9は、ブース1の内部空間Kに配置されており、脚部9aと、支基9bと、座9cと、背凭れ9dとを備えている。脚部9aは、不図示のアンカボルト等によって床部2に対して固定されており、支基9b、座9c及び背凭れ9dを直接的あるいは間接的に下方から支持している。この脚部9aは、座9c及び背凭れ9dを支持する支基9bを、鉛直方向に沿った
図3に示す回転軸心Laを中心として回転可能に支持している。つまり、支基9b、座9c及び背凭れ9dは、回転軸心Laを中心とする周方向に回転可能とされている。
【0047】
支基9bは、上述のように、座9c及び背凭れ9dを支持しており、例えば座9cの高さ方向を調節する機構や背凭れ9dの傾動を調節するための機構が内蔵されている。座9cは、利用者が直接的に座る部位であり、着座した利用者の体重を下方から支持する。背凭れ9dは、支基9bに対して傾動可能に接続されており、着座した利用者を背中側から支持する。
【0048】
このような椅子9は、上述のように回転軸心Laを中心として座9cが回転可能とされている。このため、着座した利用者は、着座姿勢のまま回転軸心Laを中心に座9cを回転させることにより、容易に自らが向く方向を水平面内において変更可能とされている。なお、椅子9は、回転軸心を中心とする回転方向を除いて床部2に固定されている。このため、利用者が回転方向以外に座9c等に力を加えた場合であっても、椅子9が床部2に対して前後左右に移動されることがない。
【0049】
また、
図3に示すように、椅子9の回転軸心Laは、出入口開口Eから内部空間Kの奥側に向かう方向(本実施形態における前後方向)にて、内部空間Kの中心位置Cよりも出入口開口E寄りに配置されている。つまり、本実施形態においては、内部空間Kのうち、椅子9の後ろ側の空間が広く確保されるように、椅子9の回転軸心Laが、内部空間Kの中心位置Cよりも出入口開口E寄りに配置されている。
【0050】
さらに、
図3に示すように、平面視における回転軸心Laから旋回軸心Lbまでの距離寸法d1よりも、スライド扉7の旋回半径dbと椅子9の回転半径daとの差寸法が大きい。なお、ここでの椅子9の回転半径daとは、平面視において、回転軸心Laから椅子9の最も遠方の部位までの距離である。本実施形態においては、
図3に示すように、椅子9の回転半径daは、平面視において、回転軸心Laから椅子9の座9cの背凭れ9dと反対側の角部までの距離とされている。
【0051】
デスク10は、内部空間Kにて椅子9を挟んで出入口開口Eの反対側に配置されている。このデスク10は、ブラケット10aと、天板10bとを有している。ブラケット10aは、
図2に示すように、天板10bを下方から支える部材であり、後壁部4dの内壁面に対して固定されている。
【0052】
天板10bは、表裏面が上下方向に向けて配置されたプレート状の部材であり、下方に空間を空けた状態にてブラケット10aによって支持されている。この天板10bは、
図3に示すように、前縁が椅子9側に向けられ、後縁が後壁部4dの内壁面に当接し、右縁が右壁部4bの内壁面に当接し、左縁が左壁部4cの内壁面に当接するように配置されている。つまり、天板10bは、椅子9よりも内部空間Kの奥側において、内部空間Kの左右方向の幅一杯に設けられている。
【0053】
また、天板10bの前縁は、デスク10において最も椅子9側に位置する部位であり、右側の領域が左側の領域よりも前側に配置され、右側の領域と左側の領域とを繋ぐ中央領域が平面視にて椅子9の回転方向に沿って湾曲されている。つまり、本実施形態においては、デスク10の椅子9側の前縁の一部が、平面視にて椅子9の回転方向(回転軸心Laを中心とする周方向)に沿って湾曲されている。このように、デスク10のデスク10の椅子9側の前縁が湾曲されることによって、利用者が着座状態で椅子9を回転させた場合に、利用者の胴部とデスク10とが接触することを防止しつつ天板10bの上面を広く確保することができる。
【0054】
また、天板10bの前縁の右側の領域には、ホルダ15が設置されている。このホルダ15は、利用者が傘や杖を載置可能な部位であり、載置された傘等がデスク10から落下しないように保持する。
【0055】
支持台11は、ディスプレイ12を支持する台部であり、デスク10の上方にて右壁部4bと後壁部4dとが接続される角部に配置されている。この支持台11は、右壁部4bの内壁面と後壁部4dの内壁面とに固定されている。このような支持台11は、例えば不図示のディスプレイ12の制御機器を収容している。ディスプレイ12は、支持台11に対して固定されており、不図示の制御機器等の制御の下、例えば利用者の端末から受信した情報等を表示する。空調装置13は、デスク10の下方にて床部2に設置されており、内部空間Kに対して温度や湿度を調整した調和空気を供給する。
【0056】
このような本実施形態のブース1を利用する場合には、スライド扉7が自動あるいは手動によって、旋回軸心Lbを中心として旋回する方向にスライドされ、出入口開口Eが開放される。出入口開口Eが開放された状態で、利用者は、椅子9を自らの方に向け、座9cに後ろ向きで着座する。その後、利用者は、着座姿勢のまま回転軸心Laを中心として椅子9を回転させてデスク10側を向く。これと前後して、スライド扉7が自動あるいは手動にて閉じられる。
【0057】
以上のような本実施形態のブース1は、外部空間から離隔された内部空間Kを形成すると共に出入口開口Eが設けられた隔壁14を備え、鉛直方向に沿った回転軸心Laを中心として回転可能とされた座9cを有すると共に内部空間Kに配置された椅子9と、平面視にて中央部が外部空間に向けて膨出するように湾曲された形状とされると共に、鉛直方向に沿った旋回軸心Lbを中心として出入口開口Eを開閉可能に旋回移動可能とされたスライド扉7とを備えている。
【0058】
このような湾曲された形状のスライド扉7によれば、ブース1の内部空間Kを局所的に増大させることができる。このため、このような本実施形態のブース1によれば、例えば着座した利用者が回転軸心Laを中心として向きを変更する場合における利用者の膝が通過する領域のみをスライド扉7によって局所的に広げることができる。したがって、執務スペースを確保するために椅子9の回転軸心Laを出入口開口Eに近づけて設置した場合であっても、利用者の背後の隅部のデッドスペースを最小限に抑えることができる。よって、本実施形態のブース1によれば、内部空間Kの容積拡大を抑止しつつ執務スペースを広く確保することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態のブース1においては、ブース1が、隔壁14を支持する床部2を備え、椅子9が、床部2に回転軸心Laを中心とする回転方向を除いて水平方向に固定されている。このような本実施形態のブース1によれば、椅子9の回転軸心Laが移動することを防止し、利用者が向きを変更するために回転可能な位置に常に椅子9を配置しておくことが可能となる。
【0060】
また、本実施形態のブース1においては、椅子9の回転軸心Laが、出入口開口Eから内部空間Kの奥側に向かう方向(前後方向)にて、内部空間Kの中心位置よりも出入口開口E寄りに配置されている。このような本実施形態のブース1によれば、椅子9の回転軸心Laが内部空間Kの中心位置よりも出入口開口E寄りに配置されているため、回転軸心Laが内部空間Kの中心位置や中心位置よりも奥側に配置されている場合と比較して、椅子9の奥側のスペース(すなわち執務等を行うスペース)を広く確保することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態のブース1においては、隔壁14が、出入口開口Eが設けられると共にブース1の前側に配置された前壁部4aと、ブース1の後側に配置されると共に前壁部4aに対して椅子9を挟んで対向配置された後壁部4dと、前壁部4aの右端と後壁部4dの右端とを接続する右壁部4bと、前壁部4aの左端と後壁部4dの左端とを接続する左壁部4cとを有している。このような本実施形態のブース1によれば、スライド扉7の設置領域を除いたブース1の形状が略矩形状となる。このため、複数のブース1を並べて配置する場合に、ブース1同士の間にデッドスペースが生じることを防止することができる。
【0062】
また、本実施形態のブース1においては、スライド扉7が、出入口開口Eを閉鎖する位置である閉鎖位置にて、中央部が平面視にて前壁部4aの外壁面よりも外部空間側に突出されている。このような本実施形態のブース1によれば、平面視が略矩形状のブース1であっても、スライド扉7によって前壁部4aの外壁面よりも外側に内部空間Kが局所的に広げることができ、内部空間Kの容積拡大を抑止しつつ執務スペースを広く確保することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態のブース1においては、内部空間Kにて椅子9を挟んで出入口開口Eの反対側に配置されたデスクを備えている。このような本実施形態のブース1によれば、椅子9に対して出入口開口Eと反対側のスペースに対してデスク10が設置されているため、着座した利用者が出入口開口Eと反対側に向くことで、デスク10を用いた作業を行うことが可能となる。
【0064】
また、本実施形態のブース1においては、デスクの椅子9側の前縁の少なくとも一部が、平面視にて椅子9の回転方向に沿って湾曲されている。このような本実施形態のブース1によれば、デスクの椅子9側の前縁が平面視にて椅子9の回転方向に沿って湾曲されているため、着座状態の利用者の回転動作を妨げない範囲においてデスクの作業面を広く確保することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態のブース1においては、平面視における回転軸心Laから旋回軸心Lbまでの距離寸法d1よりも、スライド扉7の旋回半径dbと椅子9の回転半径daとの差寸法が大きい。このような本実施形態のブース1によれば、椅子9とスライド扉7とが干渉することを確実に防止することができる。例えば、椅子9の回転位置とスライド扉7の回転位置が重なっていない場合には、椅子9の回転角度とスライド扉7の旋回角度とが変更することによって、椅子9とスライド扉7との離間寸法が変化する。このため、椅子9の回転半径daとスライド扉7の旋回半径dbとの差が小さい場合には、椅子9とスライド扉7とが干渉する可能性がある。これに対して、本実施形態のブース1によれば、スライド扉7の旋回半径dbと椅子9の回転半径daとの差寸法が、椅子9の回転軸心Laとスライド扉7の旋回軸心Lbまでの距離寸法d1よりも大きいため、椅子9の回転角度とスライド扉7の旋回角度に関わらず、椅子9とスライド扉7とが干渉することを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態のブース1においては、接床可能なキャスタ2aを備えている。キャスタ2aによってブース1を容易に移動することが可能となり、ブース1の移動及び設置を容易に行うことができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、椅子9が回転方向を除いて水平方向に固定された構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、椅子9が前後方向や左右方向にスライド可能な構成とすることも可能である。
【0069】
また、上記実施形態においては、ブース1が平面視において、スライド扉7の設置領域を除いて矩形状とされた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ブース1の外形形状は変更可能である。
【0070】
また、上記実施形態においては、デスク10の前縁の一部が湾曲された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、デスク10の前縁が全領域に亘って湾曲された構成を採用することも可能である。また、デスク10の前縁が直線状とされた構成を採用することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態においては、内部空間Kに1人のみの利用者が入れるブース1について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数人が内部空間Kに入ることができるブースに適用することも可能である。
【0072】
また、上記実施形態においては、椅子9の回転半径daが、平面視において、回転軸心Laから椅子9の座9cの背凭れ9dと反対側の角部までの距離となる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、椅子9の回転半径daが、回転軸心Laから椅子9の座9cの背凭れ9dの角部までの距離となる構成に適用することも可能である。特に背凭れ9dが傾動可能な場合は、傾動状態における角部までの距離となる構成に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1……ブース、2……床部、3……支柱、4……側壁、4a……前壁部、4b……右壁部、4c……左壁部、4d……後壁部、5……天井壁、6……上部ガイド機構、7……スライド扉、8……ガイドローラ、9……椅子、9a……脚部、9b……支基、9c……座、9d……背凭れ、10……デスク、11……支持台、12……ディスプレイ、13……空調装置、14……隔壁、15……ホルダ、d1……距離寸法、da……回転半径、db……旋回半径、E……出入口開口、K……内部空間、La……回転軸心、Lb……旋回軸心