(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】地中ケーブル撤去用の削進管、地中ケーブル撤去装置、および地中ケーブル撤去工法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20230925BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G9/06
(21)【出願番号】P 2020107876
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(73)【特許権者】
【識別番号】591036653
【氏名又は名称】株式会社常磐ボーリング
(73)【特許権者】
【識別番号】592207256
【氏名又は名称】株式会社興洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 太一朗
(72)【発明者】
【氏名】松崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】立川 奨
(72)【発明者】
【氏名】名倉 正和
(72)【発明者】
【氏名】手塚 至
(72)【発明者】
【氏名】船渡 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】兼森 啓
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】横尾 拓志
(72)【発明者】
【氏名】椙島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 藤夫
(72)【発明者】
【氏名】高村 正和
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-224112(JP,A)
【文献】特開2016-226294(JP,A)
【文献】特開2005-094850(JP,A)
【文献】特開2019-073901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
H02G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内を通る地中ケーブルを削進管を用いて撤去する地中ケーブル撤去工法であって、
前記削進管は、
複数の金属製の短管を回動可能な関節で連結した自在管と、
前記自在管の先端に取り付けられた対称な2つの三角状の先端を有するくちばし形状のスクレーパと、
を有し、
前記管路内に削進管を挿入し
て該削進管の内部に地中ケーブルを内挿し、
前記削進管を回転させながら前記管路内を推進させ
て前記地中ケーブルと該管路を剥離させ、
前記地中ケーブルが前記削進管と共回りし始めたら、該削進管を該管路から引き抜くこと
により該地中ケーブルを該管路から撤去することを特徴とする地中ケーブル撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内を通る地中ケーブルを撤去するために地中ケーブルを内挿して回転および推進させて地中ケーブルと管路を剥離させる削進管、およびかかる削進管を用いて管路内を通る地中ケーブルを撤去する地中ケーブル撤去工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市における景観への配慮や安全性という観点から地中配線の普及が進んでいる。地中配線では、地中に管路を埋設し、かかる管路内に電力ケーブルや通信ケーブル等(以下、地中ケーブルと称する)を敷設する。地中ケーブルは、経年劣化した際や、不要になった際には管路から撤去される。このとき、地中ケーブルの老朽によりケーブルシースが管路内面に付着すると、摩擦抵抗が増加してしまい、地中ケーブルの引き抜きが不可能(撤去ができない)なことがある。
【0003】
地中ケーブルを引き抜けなかった場合、道路を掘削して地中ケーブルを撤去しなければならない。この掘削工事は、残土処理や廃棄物処理等の環境負荷を伴うこととなる。一方、引き抜けない地中ケーブルを管路に残置すると、地中ケーブルが迷走電流の電流回路となり地下埋設物の老朽化を加速させることにもなる。
【0004】
地中ケーブルを撤去する方法としては、例えば特許文献1に地中ケーブルの撤去方法が開示されている。特許文献1の地中ケーブルの撤去方法では、まず管路内に通されている電力ケーブルをマンホール内で切断する。そして、切断端からケーブルに推進管(削進管と同義)を嵌め、この推進管を継ぎ足しながら推進装置で管路内に押し込んで先頭推進管の先端のビットで固着部を剥離する。その後、ケーブルを管路から引き抜いている。特許文献1によれば、管路の内面に固着して引抜不能となっている地中ケーブルを効率よく撤去することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地中ケーブルが敷設されている管路は、直線状な部分もあれば、設置の都合上、屈曲している部分もある。このようなとき、特許文献1の地中ケーブルの撤去方法では、推進管の長手途中や接続部に自在関節を設けて曲げの自由度を与えるとしている。しかしながら、このような構成であると、作業現場に持っていく部品の数が増えてしまい、作業現場における作業者の手間も増える。このため、特許文献1の地中ケーブルの撤去方法には更なる改善の余地があった。
【0007】
また、削進管(推進管)を塩化ビニルのパイプなどで作成して弾性をもたせる場合もある。しかし、樹脂の管であっても径が大きいことから剛性が高く、さほど大きく曲げることはできない。また、無理に曲げれば屈曲部で折れたり割れたりしてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、作業現場での部品の追加や、その取り付け作業を必要とすることなく、管路から地中ケーブルを撤去することが可能な地中ケーブル撤去用の削進管、地中ケーブル撤去装置、および地中ケーブル撤去工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる地中ケーブル撤去用の削進管の代表的な構成は、管路内を通る地中ケーブルを撤去するために地中ケーブルを内挿して回転および推進させて地中ケーブルと管路を剥離させる削進管であって、複数の金属製の短管を回動可能な関節で連結した自在管と、自在管の先端に取り付けられたスクレーパとを有することを特徴とする。
【0010】
上記構成では、削進管を回転させながら管路内を推進させることにより、削進管の自在管に取り付けられたスクレーパによって地中ケーブルが管路から剥離する。これにより、地中ケーブルを管路から撤去することが可能となる。このとき、削進管は、複数の金属製の短管が回動可能な間接で連結された自在管を有する。これにより、削進管は、自在関節等の部品を必要とすることなく、管路の屈曲している部位を曲がることができる。したがって、作業現場での部品の追加や、その取り付け作業を必要とすることなく、管路から地中ケーブルを撤去することが可能であり、作業者の労力を軽減することができる。
【0011】
上記スクレーパは、対称な2つの三角状の先端を有するくちばし形状であるとよい。これにより、削進管の先端のスクレーパが地中ケーブルと管路との間に食い込みやすくなるため、地中ケーブルをより確実に引き抜き、撤去することが可能となる。
【0012】
上記スクレーパは、三角状の先端の内側にテーパが形成されているこれにより、スクレーパが地中ケーブルと管路との間により食い込みやすくなるため、上述した効果を高めることが可能となる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかる地中ケーブル撤去工法の代表的な構成は、管路内を通る地中ケーブルを、上述した削進管を用いて撤去する地中ケーブル撤去工法であって、管路内に削進管を挿入し、削進管を回転させながら前記管路内を推進させ、地中ケーブルが削進管と共回りし始めたら、削進管を管路から引き抜くことを特徴とする。
【0014】
上述した地中ケーブル撤去用の削進管における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該地中ケーブル撤去工法にも適用可能である。特に、上記の地中ケーブル撤去工法では、地中ケーブルが削進管と共回りすることにより、その回転によって、更に奥側の地中ケーブルが管路から引き剥される。したがって、削進管を管路の他端まで挿入することなく地中ケーブルを引き抜き、撤去することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業現場での部品の追加や、その取り付け作業を必要とすることなく、管路から地中ケーブルを撤去することが可能な地中ケーブル撤去用の削進管、地中ケーブル撤去装置、および地中ケーブル撤去工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】地中ケーブルを撤去する現場を説明する図である。
【
図2】本実施形態にかかる地中ケーブル撤去用の削進管、地中ケーブル撤去装置、およびその推進装置を説明する図である。
【
図5】本実施形態の削進管を用いた地中ケーブル撤去工法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、地中ケーブルを撤去する現場を説明する図である。
図1に示すように、地中ケーブルを撤去する現場(以下、撤去現場10と称する)では、地中の隣接する2つのマンホール12a・12bを接続する管路14が埋設されている。この管路14内には、地中ケーブル16が挿通されている。本実施形態では、後述する削進管を使用して管路14内を通る地中ケーブル16を撤去する。
【0019】
図2は、本実施形態にかかる地中ケーブル撤去用の削進管(以下、削進管100と称する)、およびその推進装置200を説明する図である。本実施形態では、削進管100は、推進装置200からの推進力によって管路14内を回転しながら推進する。
図2に示すように、推進装置200は、削進管100を回転させるモータ210、および削進管100を推進する油圧シリンダ220を含んで構成される。削進管100は、自在管110およびスクレーパ120を含んで構成される。
【0020】
図3は、自在管110を説明する図である。
図3(a)に示すように、自在管110は、複数の金属製の短管112a・112b・112c・112dを連結して構成される。この多節管である自在管110をつなぎ合わせることにより、任意の長さ(数十メートル~数百メートル)の管路14に対して削進を行うことができる。
【0021】
短管112a-112dの接続部分である関節114a・114b・114cは回動可能となっていて、
図3(b)に示すように屈曲することができる。自在管110を構成する複数の短管112a-112dのうち、最も先に管路14に挿入される短管112aには、その先端近傍に、同様の他の自在管110やスクレーパ120を取り付けるための取付部116が形成されている。一方、自在管110を構成する複数の短管112a-112dのうち、最も後に管路14に挿入される短管112dには、取付部116に接続される取付溝118が形成されている。
【0022】
図4は、スクレーパ120を説明する図である。
図4に示すスクレーパ120は、自在管110を構成する複数の短管112a-112dのうち、最も先に管路に挿入される短管112aの先端に取り付けられる。スクレーパ120の後端には、取付部116に接続される取付溝122が形成されている。
【0023】
特に本実施形態の削進管100では、スクレーパ120は、対称な2つの三角状の先端124を有するくちばし形状である。これにより、削進管100の先端のスクレーパ120が地中ケーブル16と管路14との間に食い込みやすくなるため、地中ケーブル16をより確実に引き抜き、撤去することが可能となる。
【0024】
なおスクレーパの先端が1つ(全体的に斜めにカットされた形状)の場合には、先端が食い込んだときに削進管が偏るため回転しづらくなるが、先端が2つであることによりバランス良く食い込むため、円滑に回転させることができる。また、先端が多数の鋸歯状の場合にはケーブル外皮を切削してOFケーブルの冷却油の漏れなどを招いてしまうが、先端が2つであればケーブル外皮を削る量が少なく、油漏れを防ぐことができる。
【0025】
更に本実施形態では、スクレーパ120は、三角状の先端124の内側にテーパ126が形成されている。これにより、スクレーパ120が地中ケーブル16と管路14との間により食い込みやすくなるため、上述した効果を高めることが可能となる。
【0026】
図5は、本実施形態の削進管100を用いた地中ケーブル撤去工法について説明する図である。
図5(a)に示すように、管路14内には地中ケーブル16が挿通されている。地中ケーブル16の老朽によりケーブルシース(外皮)が管路14内面に付着すると(付着箇所18)、摩擦抵抗が増加してしまい、地中ケーブル16の引き抜きが難しくなる。また管路14と地中ケーブル16との間に土砂などの異物20が詰まって固着してしまった場合にも、同様に地中ケーブル16の引抜が難しくなってしまう。
【0027】
そこで本実施形態の地中ケーブル撤去工法では、上述した削進管100を用いる。詳細には、まず
図5(b)に示すように、削進管100を管路14内に挿入し、削進管100の内部に地中ケーブル16を内挿する。次に、削進管100を、推進装置200のモータ210によって回転させつつ、油圧シリンダ220の推進力によって推進させる。これにより、自在管112aの先端に取り付けられたスクレーパ120が、管路14と地中ケーブル16との間に回転しながら食い込み、管路14と地中ケーブル16の付着箇所18が剥され、異物20のつまりが解消される。その結果、地中ケーブル16が管路14から剥離し、地中ケーブル16を管路14から撤去することが可能となる。
【0028】
特に本実施形態の削進管100では、自在管110の複数の短管112a-112dは回動可能に連結されている。これにより、削進管100は、自在関節等の別部品を必要とすることなく、管路14の屈曲している部位を曲がることができる。したがって、本実施形態の削進管100によれば、作業現場での部品の追加や、その取り付け作業を必要とすることなく、管路14から地中ケーブル16を撤去することが可能であり、作業者の労力を軽減することができる。
【0029】
また好適には、上述した地中ケーブル撤去工法では、削進管100を回転させながら管路14内を推進させた後に、地中ケーブル16が削進管100と共回りし始めたら、削進管100を管路14から引き抜くとよい。削進管100を進めていくと、次第に地中ケーブル16が削進管100の中に入り込む。すなわち、地中ケーブル16は削進管100の中に乗る状態となる。そして削進管100から伝わる回転力が地中ケーブル16と管路14の癒着力に勝ると、地中ケーブル16は削進管100と共に回り始める。すなわち、地中ケーブル16が削進管100と共回りし始めたら、地中ケーブル16の全体が管路14と剥離したことを意味する。この状態で削進管100を管路14内から引き抜けば、地中ケーブル16が乗った状態でともに引き抜くことができるため、別の装置で改めて地中ケーブル16を把持して引き抜く必要がなくなる。
【0030】
そこで、地中ケーブル16が削進管100と共回りし始めたら、削進管100を管路14の他端まで挿入することなく、地中ケーブル16を引き抜き、撤去することが可能となる。これにより推進管100を推進させる距離を短く済ませることができる。なお、地中ケーブル16が削進管100と共回りしているかどうかは、推進装置200の後方から削進管100の中をのぞき込み、ライトを当てて内部の地中ケーブル16端を観察することにより知ることができる。発明者らが確認したところ、おおむね管路14の半分程度の長さまで削進させれば共回りを開始することが多かった。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、管路内を通る地中ケーブルを撤去するために地中ケーブルを内挿して回転および推進させて地中ケーブルと管路を剥離させる削進管、およびかかる削進管を用いて管路内を通る地中ケーブルを撤去する地中ケーブル撤去工法に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…撤去現場、12a…マンホール、12b…マンホール、14…管路、16…地中ケーブル、18…付着箇所、20…異物、100…削進管、110…自在管、112a…短管、112b…短管、112c…短管、112d…短管、114a…関節、114b…関節、114c…関節、116…取付部、118…取付溝、120…スクレーパ、122…取付溝、124…先端、126…テーパ、200…推進装置、210…モータ、220…油圧シリンダ