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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】入場管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
G08B25/04 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023131762
(22)【出願日】2023-08-14
【審査請求日】2023-08-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522250482
【氏名又は名称】株式会社MEDIUS
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】久米 隆司
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-152552(JP,A)
【文献】特開2006-323558(JP,A)
【文献】特開2009-026291(JP,A)
【文献】特開2018-045665(JP,A)
【文献】特開2008-134729(JP,A)
【文献】特開2010-39551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00-85/28
G08B13/00-15/02
23/00-31/00
H04M9/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理区域への入場を管理させる入場管理システムにおいて、
ウェアラブル端末と、入場予定者数取得手段と、真正ユーザ数取得手段と、共連れ判定手段と、位置特定手段と、電波発受信手段とを含み、
前記ウェアラブル端末が、ユーザの生体情報を継続して取得する生体情報取得手段と、前記生体情報と生体判定情報とを照合して、前記ユーザが真正ユーザか否かを判定するユーザ判定手段と、予め真正ユーザの生体判定情報を記憶する生体情報記憶手段として機能し、
前記入場予定者数取得手段が、画像取得手段と画像解析手段とされ、
前記管理区域への出入口に、前記画像取得手段と、前記電波発受信手段とが設けられ、
前記画像解析手段が、前記画像取得手段が取得した入場者画像を解析し、前記出入口における入場予定者数を取得し、
前記生体情報取得手段が、前記出入口において、管理区域に入場するユーザの生体情報を取得し、
前記ユーザ判定手段が、前記生体情報と前記生体判定情報とを照合して、ユーザが許可された真正ユーザか否かを判定し、
前記真正ユーザ数取得手段が、真正ユーザ数を取得し、
前記共連れ判定手段が、
前記入場予定者数と前記真正ユーザ数とが同じであるときには、共連れがないと判定し、前記入場予定者数が前記真正ユーザ数を超えるときには、共連れがあると判定し、
前記電波発受信手段が、前記ウェアラブル端末からの位置特定電波の到来角度を検出する角度検出手段として機能され、
前記位置特定電波が、前記ウェアラブル端末を起点とする発信電波、又は、前記電波発受信手段を起点とした第2発信電波に応じて前記ウェアラブル端末が発した応答電波の少なくともいずれかとされ、
前記角度検出手段が、複数の電波検知手段を含み、
各々の前記電波検知手段が、並んで配列されると共に、同一の前記位置特定電波を受信し、
前記角度検出手段が、各々の前記電波検知手段が前記位置特定電波を受信した時間差により、前記位置特定電波の到来角度を検出させ、
前記位置特定手段が、前記電波発受信手段が設けられた位置と前記到来角度とにより、前記ウェアラブル端末の位置を特定させ、
共連れが判定されると共にウェアラブル端末の位置が特定される、
ことを特徴とする入場管理システム。
【請求項2】
更に、臨時タグを含み、
前記臨時タグが、前記ウェアラブル端末と同様に、前記位置特定電波を発信させ、
前記角度検出手段が、各々の前記電波検知手段が前記臨時タグからの前記位置特定電波を受信した時間差により、前記位置特定電波の到来角度を検出させ、
前記位置特定手段が、前記電波発受信手段が設けられた位置と、前記到来角度とにより前記臨時タグの位置を特定させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の入場管理システム。
【請求項3】
管理区域への入場を管理させる入場管理システムにおいて、
ウェアラブル端末と、入場予定者数取得手段と、真正ユーザ数取得手段と、共連れ判定手段と、位置特定手段と、三角形をなすように配置された3か所以上の電波発受信手段とを含み、
前記ウェアラブル端末が、ユーザの生体情報を継続して取得する生体情報取得手段と、前記生体情報と生体判定情報とを照合して、前記ユーザが真正ユーザか否かを判定するユーザ判定手段と、予め真正ユーザの生体判定情報を記憶する生体情報記憶手段として機能し、
前記入場予定者数取得手段が、画像取得手段と画像解析手段とされ、
前記管理区域への出入口に、前記画像取得手段が設けられ、前記ウェアラブル端末と電波発受信が可能な区域に、前記電波発受信手段が設けられ、
前記画像解析手段が、前記画像取得手段が取得した入場者画像を解析し、前記出入口における入場予定者数を取得し、
前記生体情報取得手段が、前記出入口において、管理区域に入場するユーザの生体情報を取得し、
前記ユーザ判定手段が、前記生体情報と前記生体判定情報とを照合して、ユーザが許可された真正ユーザか否かを判定し、
前記真正ユーザ数取得手段が、真正ユーザ数を取得し、
前記共連れ判定手段が、
前記入場予定者数と前記真正ユーザ数とが同じであるときには、共連れがないと判定し、前記入場予定者数が前記真正ユーザ数を超えるときには、共連れがあると判定し、
前記電波発受信手段が、前記ウェアラブル端末からの位置特定電波を受信し、
前記位置特定電波が、前記ウェアラブル端末を起点とする発信電波、又は、前記電波発受信手段を起点とした第2発信電波に応じて前記ウェアラブル端末が発した応答電波の少なくともいずれかとされ、
前記電波発受信手段が、電波計測手段としても機能され、
前記電波計測手段が、前記位置特定電波の電波強度値又は受信時間を計測し、
前記位置特定手段が、受信した3つ以上の前記電波強度値又は前記受信時間をもとに、前記ウェアラブル端末の位置を特定させ、
共連れの判定がされると共にウェアラブル端末の位置が特定される、
ことを特徴とする入場管理システム。
【請求項4】
更に、臨時タグを含み、
前記臨時タグが、前記ウェアラブル端末と同様に、前記位置特定電波を発信させ、
前記電波計測手段が、前記臨時タグからの前記位置特定電波の電波強度値又は受信時間を計測し、
前記位置特定手段が、3つ以上の前記電波強度値又は前記受信時間をもとに、前記臨時タグの位置を特定させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の入場管理システム。
【請求項5】
更に、許容滞在者数設定手段と、滞在者数取得手段と、入場制限手段とを含み、
前記許容滞在者数設定手段が、前記管理区域に滞在できる許容滞在者数を設定し、
前記滞在者数取得手段が、前記管理区域に居る滞在者数を取得し、
前記入場制限手段が、前記滞在者数が前記許容滞在者数未満でないときには、前記出入口の扉を開放させない、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の入場管理システム。
【請求項6】
更に、滞在予定者数取得手段を含み、
前記滞在予定者数取得手段が、前記入場予定者数と前記滞在者数との総和を取得し、
前記入場制限手段が、前記総和が前記許容滞在者数を超えると判定したときには、警告表示をさせる、
ことを特徴とする請求項5に記載の入場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証により真正なユーザを特定すると共に、管理区域に入場しようとする入場予定者数を特定し、真正ユーザ数と入場予定者数とを対比することにより、なりすまし・共連れによる入場を管理する入場管理システムに関する。
【0002】
詳細には、真正ユーザとその数は、生体情報を取得する生体認証手段により特定させる。入場予定者数は、管理区域への出入口において、画像取得手段と画像解析手段等により特定させればよい。入場予定者が真正ユーザだけか、加えて、入場予定者に含まれているその他の者が不正入場者か否か、を判定できる入場管理システムに関する。
【0003】
ここで生体認証手段とは、脈波等を取得する皮膚接触型、虹彩を取得する眼鏡型、動作特徴を取得する腰部装着型等のウェアラブル機器であれば好適であるが、歩く姿を歩容鑑定することによりユーザの本人認証をする判定手段であってもよい。画像解析手段等は、人の数を取得できればよく、映像判定機器、熱感知センサ等を併用してもよい。
【背景技術】
【0004】
従来から、工場の出入口等においては、社員証等のICカードから近距離無線通信によりユーザIDを取得して、社員のみに入場を許可させるICカード認証器が広く普及している。しかし、ICカードによる入場認証の場合には、ICカードの不正利用による「なりすまし」や、正規利用者の入場に同行する「共連れ」を防ぐことができなかった。
【0005】
近年、製造業においては、製品の品質確保のために、管理区域への厳格な入場管理が要求されるようになっている。例えば、自動車の塗装作業では、僅かな塵埃でも塗装品質に影響を及ぼすことから、塗装ラインを隔壁により区画し、塗装作業に習熟した熟練工以外の入場を制限させている。
【0006】
また、欧州各国の医薬品庁、米国の食品医薬品局、日本の厚生労働省等が加盟している「医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム」(以下「PIC/S」という)では、「無菌性の保証を損なわないよう、クリーンルーム内のオペレーターの最大人数を決定し(後略)(2022改正 PIC/S GMP Annex1 7.2)」との新基準が採用され、医薬品業界においては人数制限も含めた入場管理が求められるようになった。
【0007】
従来から、多くの分野において、イベント会場への入場、銀行の金庫室への入場のように、共連れを防止すべき管理区域がある。これらの管理区域では、身分証の提示、入場者数取得機等により入場者数の管理もされている。
【0008】
しかし、単に入場者数を取得しただけでは、不正な入場者の入場を排除できず、人数制限と共に適正な入場を保証するシステムの提供が求められていた。そこで本発明者は、なりすまし・共連れによる入場を管理することができ、人数制限のある管理区域にも適用可能な入場管理システムを発明するに至った。
【0009】
特許文献1には、生体情報により本人認証をして、指定区域への利用者の入室を管理する入場管理システムの技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、利用者が指定区域に入場する前に、認証器で反復して複数の生体情報を取得・蓄積し、蓄積した複数の生体情報のなかから、生体認証に最も適した品質の生体情報を抽出し、生体認証を実行させている。
【0010】
しかし、特許文献1に記載の技術により、本人認証の精度が向上したとしても、本人認証がされた後に、認証器がその他の者に使用されたときには、ICカード認証と同様に、その他の者による「なりすまし入場」が、可能であるという課題があった。
【0011】
また、特許文献1に記載の技術により、認証したユーザの入場が管理できたとしても、共連れがあった場合には、現実の入場者数は認証したユーザ数より多くなり、入場者数は管理できなかった。更に、許容滞在者数を設定していないため、現状の入場者数が多くても、入場者数を制限することができず、2022年に改正したPIC/Sには対応することができなかった。
【0012】
特許文献2には、立入制限区域に入場しようとする複数の利用者のなかに不審者が存在する場合に、利用者のなかから不審者を特定することができるとされている不審者検出システムの技術が開示されている。
【0013】
この文献に記載の技術によれば、ビルの出入口等に複数のアンテナを設置し、予め登録した携帯端末から発信させた電波を複数のアンテナで受信し、受信した電波の電波強度をもとに三辺測量をして各々の携帯端末の正確な位置を特定している。更に、カメラにより人物像を撮影し、各々の人物像の位置を特定し、人物像の位置と携帯端末の位置とが一致しなかった人物を不審者と判定させている。
【0014】
しかし、特許文献2に記載の技術によって、携帯端末の所在地と区域内の人数が特定でき、共連れが防止できたとしても、携帯端末が不正使用されている場合には、立入制限区域に不正利用者の滞在を許容することになり、なりすましが防止できないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
特許文献1:特開2015-185097号公報
特許文献2:国際公開2007-138811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、管理区域への出入口において、生体認証により真正ユーザを特定すると共に、真正ユーザ数と管理区域への入場予定者数とを特定し、真正ユーザ数と入場予定者数とを対比することにより、なりすまし・共連れによる入場を管理する入場管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の発明は、管理区域への入場を管理させる入場管理システムにおいて、ウェアラブル端末と、入場予定者数取得手段と、真正ユーザ数取得手段と、共連れ判定手段と、位置特定手段と、電波発受信手段とを含み、前記ウェアラブル端末が、ユーザの生体情報を継続して取得する生体情報取得手段と、前記生体情報と生体判定情報とを照合して、前記ユーザが真正ユーザか否かを判定するユーザ判定手段と、予め真正ユーザの生体判定情報を記憶する生体情報記憶手段として機能し、前記入場予定者数取得手段が、画像取得手段と画像解析手段とされ、前記管理区域への出入口に、前記画像取得手段と、前記電波発受信手段とが設けられ、前記画像解析手段が、前記画像取得手段が取得した入場者画像を解析し、前記出入口における入場予定者数を取得し、前記生体情報取得手段が、前記出入口において、管理区域に入場するユーザの生体情報を取得し、前記ユーザ判定手段が、前記生体情報と前記生体判定情報とを照合して、ユーザが許可された真正ユーザか否かを判定し、前記真正ユーザ数取得手段が、真正ユーザ数を取得し、前記共連れ判定手段が、前記入場予定者数と前記真正ユーザ数とが同じであるときには、共連れがないと判定し、前記入場予定者数が前記真正ユーザ数を超えるときには、共連れがあると判定し、前記電波発受信手段が、前記ウェアラブル端末からの位置特定電波の到来角度を検出する角度検出手段として機能され、前記位置特定電波が、前記ウェアラブル端末を起点とする発信電波、又は、前記電波発受信手段を起点とした第2発信電波に応じて前記ウェアラブル端末が発した応答電波の少なくともいずれかとされ、前記角度検出手段が、複数の電波検知手段を含み、各々の前記電波検知手段が、並んで配列されると共に、同一の前記位置特定電波を受信し、前記角度検出手段が、各々の前記電波検知手段が前記位置特定電波を受信した時間差により、前記位置特定電波の到来角度を検出させ、前記位置特定手段が、前記電波発受信手段が設けられた位置と前記到来角度とにより、前記ウェアラブル端末の位置を特定させ、共連れが判定されると共にウェアラブル端末の位置が特定されることを特徴としている。
【0018】
生体情報取得手段は、管理区域への出入口において、ユーザの生体情報を取得し、生体情報記憶手段に記憶された生体判定情報と照合させて、真正ユーザか否かを判定させている。「出入口」とは、クリーンルームにおける前室の空間であればよいが、閉じた空間でなくてもよい。前室から管理区域への扉の前で、真正ユーザか否かを判定させているため、不正入場者が真正ユーザになりすますことができない。
【0019】
入場管理システムは、PC・サーバ等の情報処理装置(以下、PCという)によればよいが限定されず、クラウドサーバや専用機器によってもよい。生体情報は、人の肌に接したウェアラブル端末、出入口において撮影した人の動画から取得してもよい。
【0020】
生体情報取得手段は、継続して生体情報を取得することのできるウェアラブル端末が好適であるが、ユーザの動作特徴等を外観観察して生体情報を取得してもよい。ウェアラブル端末の場合には、皮膚に接する皮膚接触型であれば、脈波、静脈血管がなす模様、毛穴の開口・配置がなす模様、皮膚の色素沈着模様等を光学センサ等により取得すればよい。眼鏡型であれば、虹彩を光学センサ等により取得すればよい。腰部装着型であればユーザの動作を加速度センサ・ジャイロセンサ等により取得すればよい。
【0021】
一方、管理区域への出入口において、ユーザの歩行姿を撮影して歩容鑑定によりユーザ判定をする場合には、PCの処理手段がなす生体情報取得手段により、ユーザの歩行姿があらわれた動画を解析して生体情報をなす動作特徴を取得させ、ユーザ判定手段によりユーザ判定をすればよい。歩容鑑定する場合には、出入口の空間を長くしておけばよいことは勿論のことである。
【0022】
生体情報記憶手段は、生体情報取得手段の種別に応じた生体判定情報を記憶している。ユーザ判定手段は、取得した生体情報と生体判定情報とを照合し、予め登録している真正ユーザか否かを判定させる。真正ユーザ数取得手段は、真正ユーザと判定された数を取得し、真正ユーザ数としている。個々のウェアラブル端末によりユーザ判定させる場合には、ウェアラブル端末から判定結果をPCに取得させてPCにおいて真正ユーザ数を取得すればよい。
【0023】
入場予定者数取得手段は、入場予定者数を管理区域への出入口において、画像取得手段により入場予定者を撮影し、撮影した画像を公知の画像解析手段により解析させて、入場予定者数を取得している。共連れ防止手段は、入場の直前に取得された入場予定者数に基づいて、共連れの有無を判定させるため、正しく共連れ判定をすることができる。
【0024】
解析用画像の取得は、光学式カメラ、サーモグラフィカメラ等によればよい。取得した解析用画像を、ネットワークに接続された入場管理システムのいずれかの処理手段を画像取得手段として機能させ、出入口の入場者画像を取得させる。そして、PCの処理手段を画像解析手段として機能させ、公知の監視カメラと同様にして、取得した解析用画像を解析させ、出入口における入場予定者数を取得させる。
【0025】
真正ユーザを判定したウェアラブル端末が取外され、装着状態の継続性が途切れ、他の者に引き渡されたときには、ウェアラブル端末が機能しない状態になる。これにより、出入口において、ウェアラブル端末を継続して装着しているユーザを、短時間で真正ユーザと判定できるため、なりすましによる入場を効率的に防止することができる。
【0026】
角度検出手段は、例えば、Bluetooth(登録商標)5.1において機能されるAngle of Arrival方式(以下AoA方式という)による方向検知機能により、電波の到来角度を特定させるとよい。角度検出手段は、並んで配列された複数の電波検知手段を含んでいる。電波検知手段が並んで配列されているため、各々の電波検知手段が受信した時間差により、角度検出手段が位置特定電波の到来角度を検出することができる。
【0027】
角度検出手段の個数は限定されない。複数設置した場合には、複数の到来角度方向の交点位置を特定させればよい、1個設置する場合には到来角度方向の人の腰の高さの位置を特定させればよい。位置特定電波は、ウェアラブル端末を起点として発信電波を発信させるアクティブ方式、電波発受信手段を起点として発信させた第2発信電波に応じて、ウェアラブル端末から応答電波を発信させるパッシブ方式のいずれであってもよい。電波の周波数・波形を変えて発信電波と応答電波を混在させてもよい。
【0028】
第1の発明によれば、管理区域にユーザが入場する直前に、生体情報により真正ユーザか否かを判定して、なりすまし入場を防止することに加えて、真正ユーザ数と入場予定者数とを対比して共連れの有無を判定させている。これにより、入場を許可されたユーザだけを入場させることができ、なりすまし・共連れによる入場を管理することができるという、従来にない有利な効果を奏する。
【0029】
更に、電波発受信手段に備えさせた角度検出手段により、ウェアラブル端末からの位置特定電波の到来角度を検出して、ウェアラブル端末の位置を特定させている。これにより、真正ユーザの位置を高い精度で特定することができ、共連れの状態が認められるときに、共連れされようとしている真正ユーザを特定することができるという効果を奏する。
【0030】
本発明の第2の発明は、第1の発明の入場管理システムにおいて、更に、臨時タグを含み、前記臨時タグが、前記ウェアラブル端末と同様に、前記位置特定電波を発信させ、前記角度検出手段が、各々の前記電波検知手段が前記臨時タグからの前記位置特定電波を受信した時間差により、前記位置特定電波の到来角度を検出させ、前記位置特定手段が、前記電波発受信手段が設けられた位置と、前記到来角度とにより前記臨時タグの位置を特定させることを特徴としている。
【0031】
第2の発明によれば、ウェアラブル端末と臨時タグが混在していても、ウェアラブル端末と臨時タグの位置を特定させることができる。臨時タグとは、検査員・監査者等の入場を許可された者に発給させる無線タグをいう。無線タグの形態は限定されず、例えば、ICカード型のRFIDタグ、Bluetooth(登録商標)タグ等のいずれであってもよい。
【0032】
臨時タグとウェアラブル端末の通信規格を統一させてもよいが、異なる通信規格としておくと好適である。ウェアラブル端末と臨時タグとを異なる通信規格としておけば、臨時タグを携帯している臨時許可者を、真正ユーザと区別することが容易である。第2の発明によれば、真正ユーザ以外の許可されたユーザの入場も管理することができるという効果を奏する。
【0033】
本発明の第3の発明は、管理区域への入場を管理させる入場管理システムにおいて、ウェアラブル端末と、入場予定者数取得手段と、真正ユーザ数取得手段と、共連れ判定手段と、位置特定手段と、三角形をなすように配置された3か所以上の電波発受信手段とを含み、前記ウェアラブル端末が、ユーザの生体情報を継続して取得する生体情報取得手段と、前記生体情報と生体判定情報とを照合して、前記ユーザが真正ユーザか否かを判定するユーザ判定手段と、予め真正ユーザの生体判定情報を記憶する生体情報記憶手段として機能し、前記入場予定者数取得手段が、画像取得手段と画像解析手段とされ、前記管理区域への出入口に、前記画像取得手段が設けられ、前記ウェアラブル端末と電波発受信が可能な区域に、前記電波発受信手段が設けられ、前記画像解析手段が、前記画像取得手段が取得した入場者画像を解析し、前記出入口における入場予定者数を取得し、前記生体情報取得手段が、前記出入口において、管理区域に入場するユーザの生体情報を取得し、前記ユーザ判定手段が、前記生体情報と前記生体判定情報とを照合して、ユーザが許可された真正ユーザか否かを判定し、前記真正ユーザ数取得手段が、真正ユーザ数を取得し、前記共連れ判定手段が、前記入場予定者数と前記真正ユーザ数とが同じであるときには、共連れがないと判定し、前記入場予定者数が前記真正ユーザ数を超えるときには、共連れがあると判定し、前記電波発受信手段が、前記ウェアラブル端末からの位置特定電波を受信し、前記位置特定電波が、前記ウェアラブル端末を起点とする発信電波、又は、前記電波発受信手段を起点とした第2発信電波に応じて前記ウェアラブル端末が発した応答電波の少なくともいずれかとされ、前記電波発受信手段が、電波計測手段としても機能され、前記電波計測手段が、前記位置特定電波の電波強度値又は受信時間を計測し、前記位置特定手段が、受信した3つ以上の前記電波強度値又は前記受信時間をもとに、前記ウェアラブル端末の位置を特定させ、共連れの判定がされると共にウェアラブル端末の位置が特定されることを特徴としている。
【0034】
第3の発明によれば、三角形をなすように3か所以上に設置された電波発受信手段が、ウェアラブル端末からの位置特定電波を受信し、その電波強度値又は受信時間を計測している。位置特定手段により、電波発受信手段の位置を中心として、3か所以上の電波発受信手段が計測した電波強度値等に応じた長さの半径の円弧を描いて交点を求め、ウェアラブル端末の位置を特定させればよい。半径は、受信時間に比例させ、電波強度値に反比例させればよい。
【0035】
位置特定電波は、ウェアラブル端末を起点として発信電波を発信させるアクティブ方式が好適であるが限定されない。電波発受信手段の通信規格は、Bluetooth(登録商標)、RFID等が好適であるが限定されない。管理区域の出入口において、電波発受信手段が3か所以上に配置されているため、複数の真正ユーザが出入口の近接した位置に居ても、夫々の真正ユーザを区別しやすく、真正ユーザの位置を高い精度で特定することができる。
【0036】
本発明の第4の発明は、第3の発明の入場管理システムにおいて、更に、臨時タグを含み、前記臨時タグが、前記ウェアラブル端末と同様に、前記位置特定電波を発信させ、前記電波計測手段が、前記臨時タグからの前記位置特定電波の電波強度値又は受信時間を計測し、前記位置特定手段が、受信した3つ以上の前記電波強度値又は前記受信時間をもとに、前記臨時タグの位置を特定させることを特徴としている。
【0037】
臨時タグの無線タグ方式は限定されず、例えば、ICカード型のRFIDタグ、Bluetooth(登録商標)タグ等のいずれであってもよい。第4の発明によれば、ウェアラブル端末と臨時タグが混在していても、ウェアラブル端末と臨時タグの位置を特定させることができる。
【0038】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明の入場管理システムであって、更に、許容滞在者数設定手段と、滞在者数取得手段と、入場制限手段とを含み、前記許容滞在者数設定手段が、前記管理区域に滞在できる許容滞在者数を設定し、前記滞在者数取得手段が、前記管理区域に居る滞在者数を取得し、前記入場制限手段が、前記滞在者数が前記許容滞在者数未満でないときには、前記出入口の扉を開放させないことを特徴としている。
【0039】
管理区域に居る滞在者数は、撮影した画像を解析して取得すればよい。許容滞在者数は、管理区域の特性・規模に応じて設定すればよい。例えば、製薬工場のクリーンルームである場合には、改正PIC/Sに対応するように、無菌性の保証を損なわない許容滞在者数とさせる。昼勤・夜勤の2直制工場の場合には、所定の業務引継ぎ時間だけ許容滞在者数を多くしてもよい。
【0040】
第5の発明によれば、管理区域の許容滞在者よりも、管理区域に居る滞在者数が少ない場合にしか、出入口の扉が開放可能とされないため、滞在者数が許容滞在者数を超えることがない。
【0041】
本発明の第6の発明は、第5の発明の入場管理システムであって、更に、滞在予定者数取得手段を含み、前記滞在予定者数取得手段が、前記入場予定者数と前記滞在者数との総和を取得し、前記入場制限手段が、前記総和が前記許容滞在者数を超えると判定したときには、警告表示をさせることを特徴としている。
【0042】
第6の発明によれば、出入口に居る入場予定者数と管理区域に居る滞在者数との総和が許容滞在者数を超える場合には、警告表示をさせている。第6の発明によれば、警告表示により、複数の入場予定者のうちの選択された者のみの入場を促し、滞在者が許容滞在者数を超えることが防止されるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0043】
・本発明の第1の発明によれば、入場を許可されたユーザだけを入場させることができ、なりすまし・共連れによる入場を管理することができるという、従来にない有利な効果を奏する。また、出入口において、ウェアラブル端末を継続して装着しているユーザを、短時間で真正ユーザと判定できるため、なりすましによる入場を効率的に防止することができる。
・更に、共連れの状態が認められるときに、共連れされようとしている真正ユーザを特定することができるという効果を奏する。
【0044】
・本発明の第2の発明によれば、真正ユーザ以外の許可されたユーザの入場も管理することができるという効果を奏する。
・本発明の第3の発明によれば、複数の真正ユーザが出入口の近接した位置に居ても、夫々の真正ユーザを区別しやすく、真正ユーザの位置を高い精度で特定することができる。
・本発明の第4の発明によれば、ウェアラブル端末と臨時タグが混在していても、ウェアラブル端末と臨時タグの位置を特定させることができる。
【0045】
・本発明の第5の発明によれば、管理区域の許容滞在者よりも、管理区域に居る滞在者数が少ない場合にしか、出入口の扉が開放可能とされないため、滞在者数が許容滞在者数を超えることがない。
・本発明の第6の発明によれば、警告表示により、複数の入場予定者のうちの選択された者のみの入場を促し、滞在者が許容滞在者数を超えることが防止されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】クリーンルームの配置図(実施例1)。
図2】全体フロー(実施例1)。
図3】ブロック図(実施例1)。
図4】生体情報取得処理フロー(実施例1)。
図5】ユーザ判定処理フロー(実施例1)。
図6】真正ユーザ数取得処理フロー(実施例1)。
図7】入場予定者数取得処理フロー(実施例1)。
図8】共連れ判定処理フロー(実施例1)。
図9】入場制限処理フロー(実施例1)。
図10】扉開閉処理フロー(実施例1)。
図11】位置特定手段の説明図(実施例1)。
図12】位置特定手段の説明図(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0047】
入場管理システム1は、管理区域への出入口において、生体認証により真正なユーザを認証すると共に、入場しようとする入場予定者数と真正ユーザ数とを対比して、管理区域へのなりすまし入場・共連れ入場を防止できるようにしている。また、管理区域の許容滞在者数を設定して、入場予定者がすべて入場したときに許容滞在者数を超えるときには、入場予定者に警告表示をすると共に、扉の開閉を制限させるようにした。
【実施例1】
【0048】
実施例1では、クリーンルームを例にして、クリーンルームへの入場管理、及び、クリーンルーム内の滞在管理をさせる入場管理システム1を、図1から図12を参照して説明する。図1はクリーンルームの平面図を示し、図2は全体フローを示し、図3は入場管理システム1のブロック図を示している。図4から図10は主要なフローを示し、図11図12は出入口における真正ユーザの位置特定の例を説明している。
【0049】
クリーンルーム10は、クリーンルームへの出入口となる前室20と、クリーンルーム内において、更に隔壁により区画された第2クリーンルーム30とからなっている。前室とクリーンルーム、クリーンルームと第2クリーンルームの間には、入退場管理システム1により開閉管理されている扉40が設けられている。破線で示すユーザ50は、ウェアラブル端末60を装着し、ユーザの後には同行者51がいる。また前室20には、クリーンルームの滞在者数が過大になるときに点灯される警告表示83が設けられている。
【0050】
前室20には、入場予定者を撮影する光学カメラと電波発受信手段が設けられている。クリーンルームには、死角が発生しないように適宜の間隔で光学カメラがなす画像取得手段70と電波発受信手段80が設けられている。また、第2クリーンルーム30にも入場予定者を撮影する光学カメラがなす画像取得手段70と電波発受信手段80が設けられている。入場管理システム1が実行されるPC90は、画像取得手段70、電波発受信手段80、ウェアラブル端末60と、通信手段100(図3参照)により情報の発受信がされる。
【0051】
入場管理システム1は、ユーザが前室20に入ってから、ユーザの生体情報取得処理(S100)、ユーザ判定処理(S200)、真正ユーザ数取得処理(S300)、入場予定者数取得処理(S400)、共連れ判定処理(S500)、入場制限・扉開放制限処理(S600)、入場制限・警告処理(S700)の実行(図2参照)を経て、クリーンルームへの扉40が開放される。要件を充たした入場予定者、例えば真正ユーザと臨時タグを所持している臨時許可者が入場してから、扉40が閉鎖される。
【0052】
前室20、第2クリーンルーム30のように、区画が小さい場合には、画像取得手段70と電波発受信手段80は、一つずつでよいが、区画が広いクリーンルーム10は、複数のユーザが滞在するため、区画の大きさに応じて複数の画像取得手段70と電波発受信手段80を設置させておけばよい。
【0053】
ここで、図2に示した全体フロー、図3に示したブロック図、図4から図10に示した各実行ステップを参照しつつ、入場管理システム1を説明する。図3は、入場管理システム1のブロック図を示している。入場管理システム1は、PC90がなす処理手段と記憶手段、光学カメラ・ビデオカメラ等がなす画像取得手段70、臨時タグ110、電波発受信手段80、通信手段100を必須の構成としている。
【0054】
生体情報を画像情報から特定させる歩容鑑定の場合には、画像取得手段70が歩行姿勢を示す動画を取得して、通信手段100を介してPC90に動画を取得させユーザ判定に進むが、ウェアラブル端末60を生体認証手段としている場合には、ウェアラブル端末60の記憶手段を生体情報記憶手段として、ウェアラブル端末60の処理手段によりユーザ判定をさせる。
【0055】
具体的には、例えば、歩容鑑定による場合には、PC90の処理手段により生体認証をさせればよく、脈波、静脈血管がなす模様等によりユーザ判定をする場合には、ウェアラブル端末60の処理手段により生体認証をさせればよい。理解を容易にするために、図2に示した一つのブロック図において、生体認証の態様に応じて、機能分担が変化することを、括弧書きにより示している。
【0056】
入場管理システム1においては、ウェアラブル端末60に備えられた光学センサが、生体情報取得手段をなしている。脈波、静脈血管がなす模様等を生体情報として取得してもよいが限定されず、毛穴の開口・配置がなす模様を生体情報として取得してもよい。ウェアラブル端末の記憶手段は生体判定情報を記憶している。
【0057】
光学センサが取得した生体情報と記憶手段から読みだした生体判定情報とを照合して、ウェアラブル端末60を装着したユーザ50が、予め、ウェアラブル端末の装着が予定された真正ユーザであるか否かをユーザ判定手段が判定し、真正ユーザである場合にはウェアラブル端末60の電波発受信機能が有効にされる。
【0058】
アクティブ方式で、ウェアラブル端末60・臨時タグ110を起点として、発信電波を位置特定電波として発信する場合、パッシブ方式で、電波発受信手段80からの第2発信電波を起点にして、ウェアラブル端末60・臨時タグ110から応答電波を位置特定電波として発信する場合の2通りがあり、これらが併用されることもある。理解を容易にするために、位置特定電波の発信の態様に応じて、構成の機能分担が変化することを、図2に示した一つのブロック図において、括弧書きにより示している。
【0059】
さて、入場管理システム1は、PC90と、通信手段100と、画像取得手段70と、ウェアラブル端末60と、臨時タグ110と、電波発受信手段80とからなっている。PC90は、処理手段91と記憶手段92を備えている。処理手段91は、入場予定者数取得手段、真正ユーザ数取得手段、共連れ判定手段、位置特定手段、許容滞在者数設定手段、滞在者数取得手段と、扉の開放制限をする入場制限手段、滞在予定者数予測手段、警告をする入場制限手段として機能する(図2参照)。
【0060】
処理手段91は、歩容による認証の場合には、画像からの生体情報取得手段として機能し、歩容による生体判定情報と照合させてユーザ判定手段として機能する。入場予定者数取得手段は、画像取得手段が取得した画像を、画像解析手段に解析させて入場予定者数を取得する。
【0061】
記憶手段92は、生体判定情報を記憶する生体情報記憶手段、臨時タグ情報記憶手段、電波発受信器情報記憶手段として機能する。生体情報記憶手段は、ウェアラブル機器ID、ウェアラブル機器が発する電波の周波数・波形等の電波情報を記憶する。更に、生体判定が歩容による場合には生体判定情報を記憶する。
【0062】
臨時タグ情報記憶手段は、入場を許可された臨時許可者に供与された臨時タグIDと臨時タグが発する電波情報を記憶する。電波発受信器情報記憶手段は、電波発受信器ID、電波発受信器の設置位置、電波発受信器が発する電波情報を記憶する。
【0063】
画像取得手段70は、光学式カメラ・ビデオカメラ等からなり、前室20の入場者(ユーザ50,同行者51)の画像を取得する。撮影した画像は、通信手段100を介してPCの処理手段91に取得させ、処理手段がなす入場予定者数取得手段に入場予定者数を取得させる。また、生体情報が歩容である場合には、画像をなす動画から入場者の動作特徴がなす生体情報を、処理手段91の生体情報取得手段に取得させ、生体情報記憶手段に記憶されている生体判定情報と対比させ、ユーザ判定手段にユーザ判定をさせる。
【0064】
ウェアラブル端末60の処理手段は、ユーザ判定手段、光センサを介して生体情報取得手段として機能する。ウェアラブル端末の記憶手段は、生体情報記憶手段として機能し、真正ユーザのユーザ判定情報を記憶する。
【0065】
また、ウェアラブル端末60は、位置特定電波の発受信機能を有する。アクティブ方式で位置特定電波として発信電波を発信することができると共に、パッシブ方式で電波発受信手段から第2発信電波を受信して、それに応じて応答電波を発信することができる。ウェアラブル端末60は、発信電波、第2発信電波、応答電波を電波発受信手段80と交信させて、電波発受信手段80にウェアラブル端末60の位置を取得させる。
【0066】
臨時タグ110は、RFIDタグ、Bluetooth(登録商標)タグ等の無線タグを備えたICカード等であればよく、ウェアラブル端末60と同様にして、位置特定電波を電波発受信手段80との間で交信させて、電波発受信手段80に臨時タグ110の位置を取得させる。
【0067】
一例として、電波発受信手段80は、角度検出手段81を備える。角度検出手段81は、並んだ複数の電波検知手段82,82・・を有し、各々の電波検知手段82がウェアラブル端末60から発信電波又は応答電波を受信して、角度検出手段81が電波の到来角度を検出する(図12参照)。
【0068】
角度検出手段81は、各々の電波検知手段82が受信した、並んでいる間隔に応じて発生した電波の位相差と到来角度を解析して、ウェアラブル端末60の位置を取得する。個々のウェアラブル端末が発する電波の周波数・波形がなす電波情報を変えておけば、ウェアラブル端末が多くても対応できることは勿論のことである。臨時タグ110についても、同様にして位置を取得させればよい。
【0069】
ここで処理手段による実行フローを、図4から図10を参照して具体的に説明する。図4は生体情報取得処理フローを示し、図5はユーザ判定処理フローを示し、図6は真正ユーザ数取得処理フローを示し、図7は入場予定者数取得処理フローを示し、図8は共連れ判定処理フローを示し、図9は入場制限・扉開放制限処理フローを示し、図10は入場制限・警告処理フローを示している。
【0070】
まず前室20において、入場予定者の生体情報を取得する生体情報取得処理(S100)がされる(図4参照)。生体情報取得処理においては、生体判定の種類が判定されて、種類に応じたフラグが付与される。ウェアラブル端末の装着を必要としない歩容鑑定により、生体判定をする場合には、予め歩容鑑定でユーザ判定をすることが設定される。歩容鑑定のみで生体認証をしてもよく、歩容鑑定の設定を省き、ウェアラブル端末のみにより生体認証することにしてもよい。
【0071】
歩容鑑定は、人に固有の動作特徴により本人を特定しているため、常に継続して生体情報が取得されている。ウェアラブル端末が出入口で外された場合には、ウェアラブル端末の機器IDが発信されなくなり、継続性が途切れるため、「その他の者」と判定される。まず、ステップ110で、歩容鑑定による生体認証か否かが判定され、YESの場合には、ステップ150に進み、歩容鑑定のフラグ、例えば「1」が付与され(S150)、ステップ170のPC処理手段によるユーザ判定に進む(S170)。NOの場合にはステップ120に進み、ウェアラブル端末による生体認証か否かが判定される(S120)。
【0072】
ステップ120で、YESの場合にはステップ130に進み、ウェアラブル端末のフラグ、例えば「2」が付与され(S130)、ステップ160のウェアラブル端末によるユーザ判定に進む(S160)。NOの場合には、ステップ140に進み、生体判定者以外の者のフラグ、例えば「3」が付与され(S140)、ステップ170のPC処理手段によるユーザ判定に進む(S170)。生体情報取得処理(S100)において、入場予定者には「1」「2」「3」のいずれかのフラグが付与され、ステップ200のユーザ判定処理に進む)。
【0073】
ステップ200において、フラグ「2」が付与された入場予定者は、ユーザ判定処理において、S210からS240まではウェアラブル端末で各処理が実行され、S250からS280はPCの処理手段91により各処理が実行される。フラグ「1」「3」が付与された入場予定者は、PCの処理手段91によりS210からS280までの各処理が実行される(図5参照)。
【0074】
具体的には、ユーザ判定処理(S200)においては、まずステップ210で、フラグの値に応じて、生体判定情報がPC又はウェアラブル端末の記憶手段から読み出されてから(S210)、ステップ220でフラグの値に応じた生体情報が取得され(S220)、ステップ230の生体情報の判定に進む(S230)。
【0075】
ステップ230では、フラグの値に応じて、ユーザの生体情報と生体判定情報が照合され、同一性が認められるかが判定される(S230)。YESの場合には、入場予定者が真正ユーザであると判定し(S240)、ステップ280に進む。NOの場合には、ステップ250の臨時タグを有するかの判定に進む。ステップ250でYESの場合には、ステップ260に進み、入場予定者が臨時許可者であると判定する(S260)。
【0076】
ステップ250でNOの場合には、ステップ270に進み、入場予定者をその他の者と判定する(S270)。入場予定者を、真正ユーザと判定(S240)、臨時許可者と判定(S260)、その他の者と判定(S270)してから、ステップ280に進み、ユーザ判定結果をPC90に取得させる(S280)。真正ユーザ判定をウェアラブル端末でしている場合には、通信手段100を介して、PC90に真正ユーザ判定結果を取得させればよい。
【0077】
ユーザ判定処理の後に、ステップ300の真正ユーザ数取得処理に進む(図6参照)。まずステップ310でウェアラブル装着者のフラグ、例えば「2」が付与されているか判定され、YESであればステップ320に進み、ウェアラブル装着者の真正ユーザ数を取得する(S320)。NOであれば、ステップ330に進み、歩容鑑定者のフラグ、例えば「1」が付与されているか判定され(S330)、YESであればS340に進み、歩容鑑定者の真正ユーザ数を取得する(S340)。
【0078】
ステップ320とステップ340から、ステップ350に進み、ウェアラブル装着者と歩容鑑定者とによる真正ユーザ数を合算して真正ユーザ数を取得する(S350)。ステップ330で、歩容鑑定者のフラグ、例えば「1」が付与されていない場合、具体的には生体判定者以外のフラグ、例えば「3」が付与されている場合には、ステップ360に進み、真正ユーザ数の取得外として処理して真正ユーザ数取得処理を終了する。
【0079】
ステップ400の入場予定者数取得処理においては、ステップ410で、画像取得手段70(図1参照)により出入口をなす前室20全体の画像を撮影し(S410)、ステップ420で、通信手段100を介して、PC90の処理手段91の画像取得手段に出入口の画像を取得させる(S420)。ステップ430に進み、処理手段91が機能する公知の画像解析手段により、前室20に居る入場予定者数を取得する(S430)。
【0080】
真正ユーザ数取得処理(S300)と入場予定者数取得処理(S400)の順は限定されないが、これらのステップを経て、ステップ500の共連れ判定処理に進む(S500)。共連れ判定処理においては、入場予定者数取得処理(S400)で取得させておいた入場予定者数をステップ510で取得し、真正ユーザ数取得処理(S300)で取得させておいた真正ユーザ数をステップ520で取得しステップ530に進む。
【0081】
ステップ530においては、入場予定者数と真正ユーザ数とが同じかが判定され(S530)、YESであればステップ540に進み「共連れ無」と判定させ(S540)、ステップ550に進み、管理区域への扉のロックを解除し、扉を開閉可能にする(S550)。NOであれば、ステップ560に進み「共連れ有」と判定させ(S560)、扉のロックをしたままとし扉の開放を制限する(S570)。
【0082】
ステップ600とステップ700においては、管理区域内の滞在者数を取得して管理区域への入場制限をしている。まずステップ600の入場制限・扉開放制限処理を開始する前に、ステップ601で管理区域内に滞在できる許容滞在者数の設定処理をする(S601)。PIC/Sに対応できるように、許容滞在者数を設定してもよく、時間帯に応じて許容滞在者数を変更できるようにしてもよい。
【0083】
ステップ600の入場制限・扉開放制限処理(S600)では、まず管理区域内をなすクリーンルーム10の滞在者数を画像取得手段70で撮影し、画像をPC90に取得させ、処理手段91がなす滞在者数取得手段の画像解析により、入場予定者数取得手段と同様に、ステップ610で、クリーンルーム内の滞在者数を取得させ(S610)、ステップ620に進む。
【0084】
ステップ620では、クリーンルーム内の滞在者数(S610)が許容滞在者数未満かが判定される(S620)。ステップ620でYESであり、入場予定者を入場させる余裕枠がある場合には、クリーンルーム10への扉40が開放できるようにロック解除する。NOの場合には、扉のロックをしたままとし扉の開放を制限する(S630)。
【0085】
ステップ700の入場制限・警告処理(S700)では、複数の入場予定者数と滞在者数の総和が許容滞在者数を超える場合の処理を示す。まずステップ710で、予め取得した入場予定者数(S430)を取得する(S710)。入場予定者数(S430)とステップ720で取得した滞在者数(S610)との総和を取得し(S720)、ステップ730に進む。
【0086】
ステップ730では、総和が許容滞在者数を超えるかが判定される(S730)。YESの場合には、ステップ740に進み、入場予定者の全てを入場させた場合には、許容滞在者数を超えることになるため、「警告表示83」を前室20に点灯させる(S740)。「警告表示83」が点灯されたときには、余裕枠内の人数が選択されて入場されればよい。NOの場合には、ステップ750に進む。ステップ750では、入場予定者の全てがクリーンルームに入場しても、許容滞在者数を超えないため、扉が開放可能とされ入場ができるようになる(S750)。
【0087】
ここで、図11図12を参照して、前室20における、ウェアラブル端末と臨時タグの位置を特定させる2つの例を説明する。ウェアラブル端末を起点に、位置特定電波として機器IDを示す発信電波をアクティブ方式で発信してもよく、いずれかの電波発受信手段が発信した第2発信電波をウェアラブル端末が受信して、ウェアラブル端末が位置特定電波として機器IDを示す応答電波をパッシブ方式で発信してもよい。
【0088】
図11では、理解を容易にするためウェアラブル端末が発した機器IDを示す発信電波又は応答電波を、3か所の電波発受信手段が受信した受信時間だけで、位置を特定させる例を示している。距離に応じて減衰する電波強度をもとに位置を特定させてもよいことは勿論のことである。図11(A)図はアクティブ方式、図11(B)図はパッシブ方式を説明する図を示している。
【0089】
例1では、三角形をなすように、3か所に配置された電波発受信手段80α、80β、80γは、夫々位置特定電波を受信すると共に電波計測手段として機能している。図11(A)図は、機器IDを示す発信電波(一点鎖線矢印参照)を位置特定電波として、ウェアラブル端末を起点として発信するアクティブ方式の説明図を示している。図11(B)図は、電波発受信手段を起点として発した第2電波(実線矢印参照)に応じて、機器IDを示す応答電波(破線矢印参照)を位置特定電波として、ウェアラブル端末から発信するパッシブ方式の説明図を示している。なお、電波発受信手段は、出入口の中に設置される必要はなく、電波発受信が可能であれば、出入口の外に配置されていてもよい。
【0090】
機器IDを示す位置特定電波が、発信電波又は応答電波のいずれであっても、ウェアラブル端末と電波発受信手段の位置に応じて、3か所に配置された電波計測手段に届くまでの受信時間が異なっている。電波発受信器80α、80β、80γが配置された点を中心として、夫々が受信した受信時間に応じた半径の円弧を描き、3つの円弧(図11(A)図、図11(B)図参照)の交点の位置を演算することによりウェアラブル端末の位置を特定することができる。
【0091】
電波計測手段が受信電波の強度で位置を特定する場合には、距離が近いほど受信電波の電波強度値が大きくなるため、電波強度値の逆数を使って3つの円弧の交点の位置を演算することによりウェアラブル端末の位置を特定することができる。
【0092】
次に、一つの電波発受信手段だけで、ウェアラブル端末の位置を特定させる例2を、図12を参照して説明する。図12においても、機器IDを示す発信電波又は応答電波が、ウェアラブル端末から発信されるが、理解を容易にするため、ウェアラブル端末から発信電波が発信される例を説明する。
【0093】
電波発受信手段をなす電波発受信器は、角度検出手段として機能する。角度検出手段は、並んで配列させた電波検知手段a,b,・・を備えている(図12(A),(B)図参照)。図12には、理解を容易にするため、電波検知手段の距離を誇張して示している。各々の電波検知手段は、一つの電波発受信器のなかで、異なる位置で位置特定電波としての発信電波を受信している。
【0094】
ウェアラブル端末から発せられた機器IDを示す一つの発信電波が、各々の電波検知手段に時間差のある状態で検知される。具体的には、電波検知手段aの方が電波検知手段bよりも受信位置が近いため、電波検知手段aの受信時Taと、電波検知手段bの受信時Tbとには、時間差(電波の位相差)が生じている(図12(C)図参照)。
【0095】
角度検出手段81(図3参照)は、例えばBluetooth(登録商標)5.1の方位検知機能に基づいて、時間差と電波検知手段の配列間隔とから、位置特定電波が電波発受信手段に入射したときの到来角度を検出させる。到来角度とは、鉛直方向の仰俯角と、水平方向の方向角とからなる方位角をいう。
【0096】
位置特定電波に示された端末IDと、到来角度と、電波発受信器IDとを、通信手段を介して、電波発受信手段からPC90に取得させる。記憶手段92の電波発受信器情報記憶手段に記憶された電波発受信器IDの位置を呼び出して、処理手段91がなす位置特定手段により電波発受信器IDの位置と取得した到来角度からウェアラブル端末の位置を特定させればよい。電波発受信器が1つの場合には、前記の到来角度の方向の人の腰の高さの位置をウェアラブル端末の位置として特定すればよい。
【0097】
例1、例2ともに、ウェアラブル端末の例で説明したが臨時タグでも同様である。また、ウェアラブル端末が起点として発信電波を発信させるアクティブ方式を説明したが、パッシブ方式でも同様であることは勿論のことである。ウェアラブル端末の位置を特定できることにより、画像取得手段により撮影された画像に映っている同行者51が、どの真正ユーザに同行しようとしているのかを追跡することができる。
【0098】
(その他)
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
・入場管理システム1が適用される管理区域の用途は、クリーンルームに限定されないのは勿論のことである。
・入場管理システムは、実施例に示した全てのフローが実行されなくてもよく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のフローの実行で足りる。
・入場管理システム1はPCに限定されず、クラウドで処理されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…入場管理システム、
10…クリーンルーム、20…前室、30…第2クリーンルーム、40…扉、
50…ユーザ、51…同行者、60…ウェアラブル端末、70…画像取得手段、
80,80α,80β,80γ…電波発受信手段、81…角度検出手段、
82…電波検知手段、83…警告表示、
90…PC、91…処理手段、92…記憶手段、
100…通信手段、110…臨時タグ
【要約】
【課題】管理区域への、なりすまし・共連れによる入場を管理する入場管理システムを提供することである。
【解決手段】管理区域への出入口において、生体認証により真正ユーザを特定すると共に、真正ユーザ数と管理区域への入場予定者数とを特定し、真正ユーザ数と入場予定者数とを対比することにより、なりすまし・共連れによる入場を制限させるようにした。また、臨時タグを発給することにより、真正ユーザ以外の許可者の入場も許容するが、設定した許容入場者数を超えることが予測される場合には、真正ユーザであっても、入場を制限するようにした。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12