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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】バゼドキシフェンの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/12 20060101AFI20230925BHJP
   C07D 295/108 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C07D209/12
C07D295/108 CSP
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019113633
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2019218348
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】102018000006562
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519222760
【氏名又は名称】エッレジエッレ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】Erregierre S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・フェラーリ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエーレ・デ・ザーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ヴェツォージ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ベロッティ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-036346(JP,A)
【文献】特表2002-515431(JP,A)
【文献】国際公開第2008/098527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩を合成するためのプロセスであって、以下の工程:
a)式(I)
【化1】

[式中、R及びRは、互いに独立して、水素、C-Cアルキル及びC-Cシクロアルキルを含群から選択されるが、ただし、R及びRは両方とも水素であることはないか;又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピロリジン、ピペリジン及びモルホリンを含群から選択されるヘテロシクロアルキル環を形成する]
で示される化合物と式(II)
【化2】

[式中、Xは、有機酸又は無機酸のアニオンを表す]
で示される化合物との間のビシュラー・メーラウ反応で、式5
【化3】

で示される化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールを得ること、
b)で示される化合物をバゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩に変換すること
を含む、プロセス。
【請求項2】
及びRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、請求項1で定義されるとおりのヘテロシクロアルキル環を形成する、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
及びRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリン環を形成する、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
が、塩素アニオン又は臭素アニオンである、請求項1~3のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項5】
が、塩素アニオンである、請求項1~4のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項6】
(I)で示される化合物をバゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩に変換することが、以下の工程:
3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドール 5を、1-[2-[4-(クロロメチル)フェノキシ]エチル]アゼパン 6でN-アルキル化して、化合物 1-{4-[2-(アゼパン-1-イル)エトキシ]ベンジル}-5-(ベンジルオキシ)-2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-メチル-1H-インドール 7を得ること;
化合物7からベンジルオキシ基を除去してバゼドキシフェン8を得、そして、場合によりその酢酸塩1へとそれを変換すること
を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項7】
化合物 1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン 11。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バゼドキシフェン及びそれらの類似体を合成するための中間体である化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
で示されるバゼドキシフェン酢酸塩(1-[4-(2-アゼパン-1-イル-エトキシ)ベンジル]-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチル-5-ヒドロキシインドール酢酸塩)は、選択的エストロゲン受容体モデュレータ(SERM)であり、骨折リスクの高くなっている女性における閉経後骨粗鬆症の処置についてヨーロッパで登録されている。
【化1】
【0003】
本化合物は、細胞及び組織のタイプに依存して、受容体アゴニスト及び/又はアンタゴニストとして作用する。その効果は、骨においてエストロゲン様(骨代謝回転及び吸収の生化学的マーカーの減少)及び肝臓においてエストロゲン様(LDLコレステロール及びリポタンパク質の減少)、並びに子宮内膜及び乳房において抗エストロゲン性である。現在、乳ガン及び膵臓ガンの処置におけるその潜在的な使用に関する研究が行われている。
【0004】
バゼドキシフェン及びその塩の調製は、多くの特許文献(例えば、特許文献1~7など)、及び刊行物(非特許文献1)に記載されている。
【0005】
記載されている合成の大部分についての重要な中間体は、スキーム1に報告される合成方法によって得られる化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールであり、ここで、重要な工程は、式で示される1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(4-ベンジルオキシフェニルアミノ)プロパン-1-オンと式で示される4-ベンジルオキシアニリン塩酸塩との間のビシュラー・メーラウ(Bischler-Moehlau)反応である。式で示される化合物は、4-ベンジルオキシアニリン塩酸塩及び式で示される4-ベンジルオキシフェニル-2-ブロモプロパン-1-オンから順に得られる。
【化2】
【0006】
特許文献7には、式で示される臭素誘導体と式で示されるアニリンを反応させることによって式で示される化合物を調製するための方法が記載されており、そこでは、式で示される中間体 1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(4-ベンジルオキシフェニルアミノ)プロパン-1-オンを単離し、次いで式で示される化合物とのビシュラー・メーラウ反応に供する。
【0007】
次いで、中間体を、スキーム2に報告された合成方法(を、式で示される1-[2-[4-(クロロメチル)フェノキシ]エチル]アゼパンでアルキル化することを含む)によってバゼドキシフェン酢酸塩に変換して、中間体を得る。の接触水素化により、バゼドキシフェンが得られ、最後に、これを酢酸で塩化してを得る。
【化3】
【0008】
ビシュラー・メーラウ反応は、α-臭素-アルキル-アリールケトン(α-ブロモアセトフェノン又はα-ブロモプロピオフェノンなど)及び過剰のアニリン(ブロモケトン1当量あたり少なくとも2モル当量)から2-アリール-インドール類を調製するために使用される一般的な手順である(非特許文献2、3)。
【0009】
当初開発された方法は、かなり劇的な反応条件を必要とするため、より穏やかな条件を含むそれらの変法(触媒として臭化リチウムを使用するか、又はマイクロ波を照射するなど)が開発されてきた。アセタール環化によって2位及び3位が置換されていないインドールの調製を可能にする合成の変法(非特許文献4~7)もまた公知である。
【0010】
スキーム1に記載の単離されていない中間体4、又は特許文献7において単離されたものなどのα-アニリンケトン類(これらはビシュラー・メーラウ反応を用いる2-アリール-インドールを合成するための代表的な中間体である)に加えて、今日までのこの反応について文献に記載された唯一の中間体は、単離されているか否かにかかわらず、α-アンモニウムケトン類又はα-ピリジニウムケトン類である。ビシュラー・メーラウ合成について今日までに知られている中間体の一般構造をスキーム3に報告する。
【化4】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5998402号明細書
【文献】米国特許第6479535号明細書
【文献】米国特許第6005102号明細書
【文献】欧州特許第0802183号明細書
【文献】欧州特許第1025077号明細書
【文献】国際公開第2011/022596号
【文献】国際公開第2008/098527号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,Vol 44,1564-1567,2001
【文献】Bischler,A.;Brion,H. Ber.Dtsch.Chem.Ges.1892,25,2860-2879
【文献】Bischler,A.;Fireman,P. Ber.Dtsch.Chem.Ges. 1893,26,1336-1349
【文献】Pchalek,K. et al., Tetrahedron 2005,61,77-82
【文献】Sridharan,V. et al., Synlett 2006, 91-95
【文献】Nordlander,J.E. et al., J.Org.Chem. 1981,46,778-782
【文献】Sundberg,R.J. et al., J.Org.Chem. 1984,49,249-254
【文献】SYNLETT,2006,9195
【文献】Izvestiya Akademii Nauk SSSR,Seriya Khimicheskaya,1991,509-11
【文献】Indian Journal of Chemistry,section B;Organic Chemistry Including Medical Chemistry,1978,533-534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第一級若しくは第二級脂肪族/脂環式アミン(α-モノアルキルアミノ-若しくはα-ビスアルキルアミノ-、アセトフェノン若しくはプロピオフェノンなど)、又はヘテロシクロアルキルアミンを用いて、ビシュラー・メーラウ反応を介して、α位で置換されたアリール-アルキルケトン中間体を使用して一般的なインドール(特に、式で示される化合物)を得ることは、知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の説明
式(I)
【化5】

[式中、R及びRは、互いに独立して、水素、C-Cアルキル及びC-Cシクロアルキルを含有する群から選択されるが、ただし、R及びRが両方とも水素ではないか;又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピロリジン、ピペリジン及びモルホリンを含有する群から選択されるヘテロシクロアルキル環を形成する]
で示される化合物が、バゼドキシフェン及びバゼドキシフェン酢酸塩を合成するための中間体である化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールの調製に有用な中間体であることが、ここに見出された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、バゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩を合成するためのプロセスであって、以下の工程:
a)式(I)
【化6】

[式中、R及びRは、互いに独立して、水素、C-Cアルキル及びC-Cシクロアルキルを含有する群から選択されるが、ただし、R及びRは両方とも水素ではないか;又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピロリジン、ピペリジン及びモルホリンを含有する群から選択されるヘテロシクロアルキル環を形成する]
で示される化合物と、式(II)
【化7】

[式中、Xは、有機酸又は無機酸のアニオンを表す]
で示される化合物との間のビシュラー・メーラウ反応で、式
【化8】

で示される化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールを得ること、
b)既知の方法により、をバゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩に変換すること
を含む、プロセスに関する。
【0016】
本発明の一実施態様では、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、上記で定義されるとおりのヘテロシクロアルキル環を形成する。
【0017】
本発明の好ましい実施態様では、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリン環を形成する。
【0018】
式(I)で示される化合物を調製するためのプロセスは、4-ベンジルオキシフェニルプロピオフェノンを臭素化剤と反応させて式で示される4-ベンジルオキシフェニル-2-ブロモプロパン-2-オンを得る下記のスキーム4に要約される。次に、ブロモケトンを式(IV)で示される第一級又は第二級アミン(式中、R及びRは、式(I)で示される化合物について定義されるとおりである)と反応させて、式(I)で示される化合物を得る。化合物(I)は場合により単離することができ、又はビシュラー・メーラウ反応の代表的な条件下、式(II)で示される化合物とin situで反応させて式で示される化合物を得ることができる。
【化9】
【0019】
4-ベンジルオキシプロピオフェノンは、カルボニル基に隣接するメチレン基を臭素化するための従来の方法(例えば、トルエン、メタノール又はそれらの混合物より選択される溶媒中、三塩化アルミニウムなどのルイス酸の存在下、臭素を用いて)により、4-ベンジルオキシフェニル-2-ブロモプロパン-1-オンに変換することができる。ブロモケトンとアミン(IV)の反応は、無溶媒で、又はトルエン、クロロベンゼン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミド(好ましくは、トルエン)から選択される溶媒中、のモル当量あたり少なくとも2モル当量の(IV)で一般に行われる。この反応は、好ましくは、無溶媒で行われる。
【0020】
式(I)で示される化合物と式(II)で示される化合物との間のビシュラー・メーラウ反応は、該反応に典型的に用いられる溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、トルエン及びクロロベンゼンなど)中で行われ得、該溶媒の還流温度で操作され得る。本出願の発明者らは、この工程で通常使用される溶媒であるDMFの代わりにクロロベンゼンを使用することが、アニリン(II)のN-ホルミル誘導体の形成(これは、環化に必須な高温における、DMFの分解に起因する)を防止することを見出した。該N-ホルミル誘導体は、最終生成物から除去されるべき更なる不純物を示し、とりわけ、該反応からアニリン(II)を取り除く。クロロベンゼンの使用が特に好ましい。
【0021】
本発明によるプロセスにおいて、α-ブロモ-アルキル-アリールケトンで出発する代表的な方法を用いる場合に必要とされる2.2当量と対照的に、式(I)で示される化合物と対比して1.1モル当量のアニリン誘導体(II)が、式で示される化合物を調製するために典型的に使用される。
【0022】
更に、ビシュラー・メーラウ環化を受ける式(I)で示される化合物は、α-アニリンケトン中間体の調製で典型的に使用されるアニリン誘導体よりも安価な脂肪族、脂環式又はヘテロシクロアルキルアミンから得られる。
【0023】
式(I)で示される中間体が環化を受ける前に単離される場合、式で示される化合物の収率及び純度は、代表的な方法によって得られるものよりも高い。
【0024】
で示される化合物の収率及び純度は、中間体(I)が単離されない場合、代表的な方法の収率及び純度と同等であるが、いずれにしても、本発明によるプロセスは、上記の要因を考慮すると経済的に有利である。
【0025】
1-(4-ベンジルオキシフェニル)プロパン-1-オンは、式10
【化10】

で示される1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンを塩化ベンジルと反応させることによって調製することができる。
【0026】
該反応は、一般的に有機溶媒(トルエン、クロロベンゼン又はDMFなど)中で操作されるフェノール基のアルキル化の代表的な条件下で、又は、メチルセロソルブの存在下又は非存在下で、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムの存在下、水と、水と混和しない溶媒(トルエン又はクロロベンゼンなど)との混合物中における相間移動条件下で行われる。該反応は、有機又は無機塩基(例えば、アルカリ若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、又は炭酸塩、アルコキシド若しくはアルカリ金属ヒドリド)の存在下で行われる。工程a)は、好ましくは、臭化テトラブチルアンモニウムの存在下、水酸化ナトリウムを塩基として用いて、水とトルエンの混合物中で行われる。
【0027】
本発明の一実施態様では、式(I)で示される化合物は、以下:
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(ピロリジン-1-イル)プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-ジエチルアミノプロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-シクロヘキシルアミノプロパン-1-オン、
から選択される。
【0028】
本発明の一実施態様では、式(I)で示される化合物は、1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(モルホリン-4-イル)プロパン-1-オンである。
【0029】
3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールは、バゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩の調製について記載されるプロセスのいずれかによって、例えば、以下の工程:
3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールを1-[2-[4-(クロロメチル)フェノキシ]エチル]アゼパンでN-アルキル化して、化合物 1-{4-[2-(アゼパン-1-イル)エトキシ]ベンジル}-5-(ベンジルオキシ)-2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-メチル-1H-インドールを得ること;
化合物からベンジルオキシ基を除去してバゼドキシフェンを得、場合によりその酢酸塩へとそれを変換すること
を含む、上記スキーム2に記載される方法によって、バゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩に変換することができる。
【0030】
一実施態様では、バゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩を調製するための本発明による方法において、化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールは、以下:
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(ピロリジン-1-イル)プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-ジエチルアミノプロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-シクロヘキシルアミノプロパン-1-オン、
から選択される化合物より得られる。
【0031】
バゼドキシフェン又はバゼドキシフェン酢酸塩を調製するための本発明による方法において、化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールは、好ましくは、1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(モルホリン-4-イル)プロパン-1-オンから得られる。
【0032】
本出願において報告される比較例において詳述されるように、中間体を調製するための本発明によるプロセスは、特許文献7に記載されるプロセスよりも多くの利点を提示し、より簡便に工業規模で実施されるだけでなく、単離された化合物の純度の点でも、後者よりもはるかに良好に行われる。
【0033】
特に、特許文献7に記載される方法に従うと、本発明によるプロセスにより得られる中間体の純度(総不純物 0.24~0.29%)と比較して、より更に低いHPLC純度(総不純物 3.35%)の中間体が得られる。特許文献7により得られる中間体に存在する主な不純物は、4-ベンジルオキシアニリンであり、これは潜在的に遺伝毒性の不純物であることに留意されたい。その含有量は1.97%であり、これは本発明による方法により得られる中間体に見られる含有量(0.01%)よりも、より更に高い。
【0034】
更に、特許文献7の方法は、N-(4-ベンジルオキシフェニル)-α-アミノ-4-ベンジルオキシプロピオフェノンの調製工程において2回の濾過を含み、後続のビシュラー・メーラウ反応は、イソプロパノール中、110~115℃、又は圧力(3~4バール)下で行われるが、一方で本発明による方法は、式(I)で示される化合物の1回の単離のみを含み、且つビシュラー・メーラウ反応は、大気圧、したがって、より安全な条件下で行われる。
【0035】
最後に、本発明によるプロセスの式(I)で示される中間体は、脂肪族、脂環式又はヘテロシクロアルキルアミン(これらは、液体である)を使用することによって得られるが、一方で特許文献7の中間体は、固体である。したがって、本発明による式(I)で示される中間体(特に、NRが、モルホリン環(化合物11)を表す中間体(I))を調製する場合、過剰のアミン(モルホリン)は容易に除去される。逆に、特許文献7の中間体を調製するために使用される4-ベンジルオキシアニリンは、除去するのが困難な固体であり、本発明によるプロセスによって得られるインドール中で定量される0.01%に対して、特許文献7の方法では、3回の単離にもかかわらず、それをほぼ2%含有するインドールをもたらす。技術的利点は明らかである。
【0036】
本発明の更なる主題は、式()で示される化合物 1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン11である。
【化11】
【0037】
以下の実施例により、本発明をここに説明する。
【実施例
【0038】
実施例1 1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン11の調製
【0039】
工程I:4-ベンジルオキシプロピオフェノンの調製
蒸留水(15Kg)、水酸化ナトリウム(4.50Kg;0.1125モル)、トルエン(57.0Kg)、4-ヒドロキシプロピオフェノン(15.0Kg;0.10モル)及び臭化テトラブチルアンモニウム(0.75Kg)を反応器に入れる。この塊を還流加熱(約90℃)し、次いで塩化ベンジル(14.25Kg;0.1125モル)を加える。塊を、完全に変換するまで還流で維持し、次いで水相を分離し除去する。得られたトルエン溶液を15~25℃まで冷却し、更に処理することなく次の工程に送る。
【0040】
工程II:4-ベンジルオキシ-α-ブロモプロピオフェノンの調製
15.0Kgの4-ヒドロキシプロピルフェノンから工程Iで得た4-ベンジルオキシ-プロピオフェノンのトルエン溶液全体、メタノール(24.0Kg)及び塩化アルミニウムを、触媒量で反応器に入れる。この塊を40~45℃まで加熱し、該温度を維持しながら臭素(17.25Kg;0.108モル)を注ぐ。注いだ後、完全に変換するまで塊を40~45℃に維持し、次いで蒸留水を加える。
より下側の水相を分離し、除去し、得られたトルエン溶液を更に処理することなく次の工程に送る。
【0041】
工程III:1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オンの調製
15.0Kg(0.10モル)の4-ヒドロキシプロピオフェノンから工程IIで得られた4-ベンジルオキシ-α-ブロモプロピオフェノンのトルエン溶液全体及びモルホリン(18.0Kg;0.2066モル)を反応器に入れる。この塊を2時間、還流加熱(約110℃)し、次いで蒸留水を塊に加える。水相を分離し、廃棄する。
有機相を、油状の残渣が得られるまで真空下で蒸留し、次いでメタノール(90Kg)を注ぐ。完全な溶液が得られるまでその塊を55~65℃で撹拌し、これを10℃まで冷却する。沈殿した塊を遠心分離し、メタノールで洗浄し、乾燥する。26.0Kgの1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オンを得る。収率:80.0%、工程Iで使用した4-ヒドロキシプロピオフェノンのKgに基づき計算した。
HPLC分析は、0.64%の総不純物含有量を示す。
【0042】
実施例2
実施例1に記載された手順に従い、そして、工程IIIのモルホリンをピペリジン、ピロリジン、ジエチルアミン及びシクロヘキシルアミンから選択されるアミンで置き換えることにより、以下の生成物:
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(ピロリジン-1-イル)プロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-ジエチルアミノプロパン-1-オン;
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-シクロヘキシルアミノプロパン-1-オン、
を調製する。
【0043】
実施例3 1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン11の調製
実施例1に記載された手順を繰り返し、工程IIにおいて4-ベンジルオキシ-α-ブロモプロピオフェノンを単離し、次いでそれをモルホリンと反応させる。
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン11を90.2%の収率で得る。
HPLC分析は、0.12%の総不純物含有量を示す。
【0044】
実施例4 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドール5の調製
実施例1で得られた1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン(26.0Kg;0.08モル)、クロロベンゼン(104Kg)及び4-(ベンジルオキシ)アニリン塩酸塩(20.8Kg;0.088モル)を反応器に入れる。この塊を125~130℃で8時間加熱する。次いでこの塊を80~90℃まで冷却し、これに蒸留水を加える。より下側の有機相を分離し、より上側の水相を除去する。有機相を蒸留して残渣とし、次いでメタノール(104Kg)を加える。この塊を20~25℃まで冷却し、次いでメタノールで洗浄しながら遠心分離する。乾燥後、28.0Kgの3-メチル-5-(ベンジルオキシ)-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールが得られる。収率:83.5%。
HPLC分析は、0.24%の総不純物含有量を示す。
4-(ベンジルオキシ)アニリンの含有量は、0.01%。
【0045】
実施例5 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドール5の調製
実施例3で得られた1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン11を出発生成物として用いて、実施例4に記載した手順を繰り返す。
3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールが、中間体11と対比して83.5%の収率で、臭素誘導体(3)と対比して75%の収率で得られる。
HPLC分析は、0.29%の総不純物含有量を示す。
4-(ベンジルオキシ)アニリンの含有量は、0.01%。
【0046】
実施例6
4-ベンジルオキシアニリン塩酸塩を、実施例2で得られたα-アミノプロピオフェノンと反応させて、実施例4に記載された手順を繰り返し、化合物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールを得る。
【0047】
実施例7 バゼドキシフェン酢酸塩の調製
【0048】
工程I:1-{4-[2-(アゼパン-1-イル)エトキシ]ベンジル}-5-(ベンジルオキシ)-2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-メチル-1H-インドールの調製
60%水素化ナトリウム(6.0Kg;0.15モル)及びN,N-ジメチルアセトアミド(10.0Kg)を中性化した反応器(neutralised reactor)に入れる。温度を0~10℃に調整し、別途調製した3-メチル-5-(ベンジルオキシ)-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドール(25.0Kg、0.0596モル)とN,N-ジメチルアセトアミド(37.5Kg)との溶液を滴下する。次に、1-{2-[4-(クロロメチル)フェノキシ]エチル}ヘキサヒドロ-1H-アゼピン塩酸塩(20.0Kg;0.0657モル)及びN,N-ジメチルアセトアミドを溶解することにより別途調製した溶液を注ぐ。注いだ後、この塊を0~10℃で30分間維持し、次いでトルエン(50Kg)及び水を加える。この塊を70℃まで加熱し、次いで、より下側の水相を分離し、除去する。メタノール(175Kg)を加え、混合物を20~25℃まで冷却し、メタノール(50Kg)で洗浄しながら遠心分離する。乾燥後、約32.0Kgの1-{4-[2-(アゼパン-1-イル)エトキシ]ベンジル}-5-(ベンジルオキシ)-2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-メチル-1H-インドールが得られる。収率:82.6%。
【0049】
工程II:バゼドキシフェン酢酸塩の調製
1-{4-[2-(アゼパン-1-イル)エトキシ]ベンジル}-5-(ベンジルオキシ)-2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-メチル-1H-インドール(28.0Kg;0.043モル)、テトラヒドロフラン(140Kg)及び5%Pd/c(2.80Kg)を反応器に入れる。混合物を60℃、4気圧の水素圧で8時間水素化し、次いで触媒を濾過する。濾過した溶液を真空下で蒸留し、得られた油状の残渣を蒸留水(22.4Kg)、酢酸エチル(67.2Kg)及び80%酢酸(3.64Kg;0.0485モル)中に溶解させる。この混合物を20~30℃まで冷却して良好な沈殿を得、次いで0~5℃まで加熱し、遠心分離し、蒸留水(22.4Kg)及び酢酸エチル(22.4Kg)で洗浄する。約20.6Kgのバゼドキシフェン酢酸塩が得られる。収率:90.3%。
【0050】
比較例1 N-(4-ベンジルオキシフェニル)-α-アミノ-4-ベンジルオキシプロピオフェノン4の調製
N-(4-ベンジルオキシフェニル)-α-アミノ-4-ベンジルオキシプロピオフェノンは、特許文献7の7頁の実施例2、即ち、該生成物の最高収率を報告する実施例に記載されるように調製する。
2つの調製(比較例1A及び比較例1B)において、5時間の反応及び2回の濾過による単離の後、生成物を、それぞれ89.8%及び92%の収率で、そして、それぞれ0.23%及び0.26%の総不純物含有量で得る。
【0051】
比較例2 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドール5の調製
比較例1で得た生成物を、特許文献7の9頁の実施例2、即ち、該生成物の最高収率を報告する実施例に記載されるように式で示される化合物に変換する。反応は、イソプロパノール中、110~115℃、加圧下(3~4バール)で行う。
(比較例1Aから得られた)と4-ベンジルオキシアニリン塩酸塩との反応について特許文献7に示された5時間の反応時間の後、反応が不完全であり、生成物は、と対比して62.4%、臭素誘導体と対比して56%の低収率で、そして、非常に低いHPLC純度(全ての不純物の合計が27.3%)で、単離される(比較例2A)。
完全な変換が得られるまで(15時間をゆうに超える)反応時間を増加させることによって、化合物は、本発明によるプロセスによって得られるものに対して同等の収率([比較例1Bで得られた]と対比して86.1%、臭素誘導体と対比して79.2%)で得られるが、より更に低いHPLC純度(1.97%の4-ベンジルオキシアニリン含有量で、全ての不純物の合計が3.35%)で得られる(比較例2B)。
【0052】
表1は、本発明による中間体 1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン11(実施例1及び3)と特許文献7の中間体 N-(4-ベンジルオキシフェニル)-α-アミノ-4-ベンジルオキシプロピオフェノン(比較例1)の収率及び純度を比較する。
【0053】
表2は、本発明によるプロセス(実施例4及び5)により、又は特許文献7に記載のプロセス(比較例2)により得られた生成物 3-メチル-5-ベンジルオキシ-2-(4-ベンジルオキシフェニル)-1H-インドールの収率及び純度を比較する。
【表1】

【表2】