IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィトファーマ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図1
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図2
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図3
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図4
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図5
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図6
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図7
  • 特許-HMBCa粉末組成物の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】HMBCa粉末組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/43 20060101AFI20230925BHJP
   C07C 59/01 20060101ALI20230925BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230925BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C59/01
A23L33/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019189020
(22)【出願日】2019-10-15
(62)【分割の表示】P 2019085343の分割
【原出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183370
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504222078
【氏名又は名称】フィトファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】阪川 良
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525410(JP,A)
【文献】特表2014-506254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶が針状のHMBCa水和物を溶解させてHMBCaを含有する溶液を調製するステップと、前記HMBCaを含有する溶液をスプレードライ噴霧乾燥して結晶が球状のHMBCa水和物を得るステップと、を含むことを特徴とするHMBCa粉末組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶が球状のHMBCa粉末組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HMB(ビス-3-ヒドロキシ-3-メチルブチレートモノハイドレート)は、必須アミノ酸の一種であるロイシンの代謝物質である。HMBは、一般的に、筋たんぱく質の合成を活性化すると共に、分解を抑制する効果があることが確認されている。そのため、HMBは、健康食品向けの原料とされ、特に粉末状のHMBCa水和物は、タブレット錠剤やカプセル錠剤などの製剤やサプリメントなどの原料とされている。
【0003】
HMBは、典型的にはジアセトンアルコールと次亜塩素酸ソーダによる酸化反応によって生成される。反応収率が比較的低いHMBは、その後、抽出・精製などの工程を経て純度が高められる。粉末状のHMBCa水和物は、HMBの溶液に水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加してHMBCaを生成し、棚式乾燥、粉砕、篩等を行って粉末状とする。製剤やサプリメントを製造する場合、例えば打錠機で打錠してタブレット錠剤とする。或いは充填機でハードカプセルに充填されてカプセル錠剤とする。一般的に、打錠或いは充填するには粉末原料に流動性が要求されるが、これまでの粉末状のHMBCa水和物はその流動性が十分ではなかった。そのため、錠剤の質量にばらつきがでたり仕上がりが悪くなったりすることがあった。特に流動性が求められる直接打錠の場合は、実際には打錠が不可能である。
【0004】
対策の一つとして、流動性を高めるための副原料を混合することも検討されているが、不経済である。それ故、流動性を向上させた粉末状のHMBCa水和物の出現が望まれてきたが、未だ実現されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-145121号公報
【文献】特表2014-525410号公報
【文献】特開2015-218158号公報
【文献】特表2016-514733号公報
【文献】特許第6470481号公報
【文献】特表2014-525410号公報
【文献】特表2014-506254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、流動性を向上させたHMBCa粉末組成物を得ることのできるHMBCa粉末組成物の製造方法を提供することにある。
【0007】
さらに本発明の他の目的は、タブレット錠剤やカプセル錠剤などの製剤やサプリメントなどの原料として好適なHMBCa粉末組成物を得ることのできるHMBCa粉末組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のHMBCa粉末組成物の製造方法は、結晶が針状のHMBCa水和物を溶解させてHMBCaを含有する溶液を調製するステップと、前記HMBCaを含有する溶液をスプレードライ噴霧乾燥して結晶が球状のHMBCa水和物を得るステップと、を含むことを特徴とする。好ましい実施形態に従うHMBCa粉末組成物は、HMBCa(3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸カルシウム)水和物を主成分とし、結晶が球状であり、安息角が35°以下であり、見かけ密度が0.5g/ml以上である。好ましくは、安息角が30°以下であって、見かけ密度が0.54g/ml以上である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るHMBCa粉末組成物を構成するHMBCa水和物の化学式である。
図2】実施例1~6及び比較例1~9の各HMBCa粉末の結晶系,安息角,見かけ密度の結果を示す一覧表である。
図3】実施例1のHMBCa粉末の顕微鏡写真である。
図4】実施例2のHMBCa粉末の顕微鏡写真である。
図5】実施例3のHMBCa粉末の顕微鏡写真である。
図6】比較例1のHMBCa粉末の顕微鏡写真である。
図7】比較例2のHMBCa粉末の顕微鏡写真である。
図8】比較例7のHMBCa粉末の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うHMBCa粉末組成物の製造方法について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0011】
実施形態に従うHMBCa粉末組成物は、HMBカルシウム(HMBCa;3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸カルシウム)の水和物を主成分とする粉末である。以下、HMBCa水和物を主成分とする粉末を「HMBCa粉末」と称することがある。また、図1には、HMBCa水和物の化学式の一表記例を示している。HMBCa水和物は、例えば一水和物(n=1)である。なお、「主成分とする」とは、HMBCaの含有量が、乾燥物で、例えば90質量%以上、好ましくは、98%質量以上である
【0012】
HMBCa粉末の結晶系は、これまでのHMBCa粉末の結晶系が針状であるのに対し、本実施形態では球状を呈している。結晶が球状であるか或いは針状であるかは、後述する実施例の結果からも明らかなように、顕微鏡写真等で確認することができる。球状結晶の平均粒子径は、好ましくは100μm以下である。
【0013】
HMBCa粉末の安息角は、35°以下、好ましくは30°以下であり、且つ、HMBCa粉末の見かけ密度は、0.5g/ml以上、好ましくは0.54g/ml以上である。安息角は、重力場において粉末が堆積して自由面を形成するときの、粉末層表面と水平面とのなす角である。測定方法の一例として、JIS R 9301-2-2に準じ、ロート等を用いて一定面積の水平面上にHMBCa粉末を上方から自由落下させて円錐状の堆積層を形成させ、その円錐表面と水平面とのなす角を測定する注入法を用いる。また、見かけ密度は、粉末の単位容積当たりの質量であり、「かさ比重」と同義である。測定方法の一例として、JIS K 3362に準じ、ロート等を用いて容器内にHMBCa粉末を上方から自由落下させ、容器内のHMBCa粉末のかさ体積と質量を測定し、演算により見かけ密度を算出する。
【0014】
このようなHMBCa粉末を製造する方法の一例を説明する。まず原料となるHMBCa水和物を準備する。HMBCa水和物は、公知の方法で製造することができる。すなわち、ジアセトンアルコールと次亜塩素酸ソーダを原料にして生成したHMBに水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加してHMBCaを生成し、棚式乾燥による乾燥工程、粉砕工程、及び篩工程を得て生成された粉末状のHMBCa水和物である。勿論、他の方法で製造されたものであってもよい。或いは、市販されている粉末状のHMBCa水和物を用いてもよい。これらはいずれも結晶系が針状であることを確認している。
【0015】
次に原料となるHMBCa水和物を水、好ましくは温水に溶解させ、例えばフィルタ―プレスなどの濾過装置、もしくは、カートリッジフィルターで濾過して不溶解残渣等を除去する。濾材は、例えば濾過精度が0.5μm~5μm相当のものを用いる。次に濾液をスプレードライ噴霧乾燥により乾燥させることによって、実施形態に従うHMBCa粉末を得る。上述した公知の製造方法における反応工程で生成されるHMBCa含有溶液は、スプレードライ噴霧乾燥を行うことができないことから棚式乾燥されるがこのように棚式乾燥で製造された針状物のHMBCa水和物を温水に溶解させて、溶液を調製することによってスプレードライ噴霧乾燥を実現可能とした。そして後述する実施例の結果から明らかなように、スプレードライ噴霧乾燥により得られたHMBCa粉末は、結晶が球状であり、安息角が35°以下、見かけ密度が0.5g/ml以上である。さらにHMBCa100質量部中のHMB含有量は、85質量%以上であり、HMBCa100質量部中のCa含有量は14質量%以上である。
【0016】
得られたHMBCa粉末は、好ましい一例として、健康食品の原料に用いる。その中にタブレット錠剤やカプセル錠剤などの錠剤にしたものがある。タブレット錠剤は、例えばHMBCa粉末に賦形剤,結合剤,崩壊剤などの添加剤を、または、他の機能性成分を添加して打錠機で打錠することによって成形する。打錠方法は、そのまま打錠する直接打錠法と、顆粒にしてから打錠する顆粒打錠法があるが、いずれであってもよい。一方、カプセル錠剤は、例えば充填機でハードカプセル内にHMBCa粉末を充填することによって製造する。勿論、健康食品は、錠剤に限定されることはなく、粉末状のままであってもよく、或いは液体に溶かして健康飲料水等としてもよい。
【0017】
上述の実施形態に従うHMBCa水和物を主成分とするHMBCa粉末は、結晶系が球状を呈し、安息角が35°以下(好ましくは30°以下)であり、且つ、見かけ密度が0.5g/ml以上(好ましくは0.54g/ml以上)であり、高い流動性を備えている。そして後述する実施例の結果からも明らかなように、直接打錠法で打錠することが可能である。すなわち、実施形態に従うHMBCa粉末によれば、高い流動性が要求される直接打錠に対する打錠適性を有するまで流動性を向上させたHMBCa粉末を提供することができる。
【実施例
【0018】
(実施例1~6)
続いて、実施形態に従うHMBCa粉末の結晶系、安息角、及び見かけ密度を確認するために行った実施例について説明する。実施例1~6は、既述したように、粉末状のHMBCa水和物を原料に用い、温水に溶解、濾過、及びスプレードライ噴霧乾燥することによって得たHMBCa粉末の実施例であり、結晶系、安息角、及び見かけ密度を確認した。原料としたHMBCa水和物は、公知の製造方法であるジアセトンアルコールと次亜塩素酸ソーダによる酸化反応工程、抽出・精製などの精製工程、棚式乾燥による乾燥工程、粉砕工程、及び篩工程を得て製造されたものである。なお、実施例1~3と実施例4~6は、それぞれ同じ製造元のHMBCa水和物を原料に用いた。各実施例1~6の結晶系、安息角、及び見かけ密度の結果を図2に示す。
【0019】
さらに、実施例1の顕微鏡の写真を図3に示し、実施例2の顕微鏡写真を図4に示し、実施例3の顕微鏡写真を図5に示す。
【0020】
(比較例1~9)
一方、比較例1~9として、実施例のように温水に溶解、濾過、及びスプレードライ噴霧乾燥を行っていないHMBCa粉末の、結晶系、安息角、及び見かけ密度を確認した。これらは、公知の製造方法であるジアセトンアルコールと次亜塩素酸ソーダによる酸化反応工程、抽出・精製などの精製工程、棚式乾燥による乾燥工程、粉砕工程、及び篩工程を得て製造されたものである。比較例1と比較例7は市販品であり、比較例2~4、比較例5~6、比較例8、及び比較例9は製造元が夫々異なるが、いずれも実施例で原料とした粉末状のHMBCa水和物に相当する。各比較例1~9の結晶系、安息角、及び見かけ密度の結果を図2に併せて示す。なお、結晶系は、顕微鏡写真により確認した。安息角及び見かけ密度は、既述の測定法により測定した。
【0021】
さらに、比較例1の顕微鏡の写真を図6に示し、比較例2の顕微鏡写真を図7に示し、比較例7の顕微鏡写真を図8に示す。
【0022】
図2図5の結果から明らかなように、実施例1~6は、いずれも結晶構造が球状であることを確認した。併せて、実施例1~6は、平均粒子径が100μm以下であることを確認した。さらに、安息角が35°以下、見かけ密度が0.5g/ml以上であることを確認した。一方、比較例1~9(市販品含む)は、いずれも結晶構造が針状であった。さらに、安息角が45°以上、見かけ密度が0.41g/ml以下であった。
【0023】
(打錠試験)
さらに、実施例1~6のHMBCa粉末と、比較例1~9のHMBCa粉末を原料にして直接打錠を実施したときの打錠適性を確認した。実施例1~6のHMBCa粉末は、いずれも打錠障害は発生せず、直接打錠法での打錠が可能であった。これに対し、比較例1~9のHMBCa粉末は、打錠障害が発生し、直接打錠法での打錠が不可能であった。すなわち、直接打錠法を採用することはできず、顆粒にしてから打錠する顆粒打錠法での打錠となる。
【0024】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8