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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ドア開閉制御システム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/73 20150101AFI20230925BHJP
   E05F 15/75 20150101ALI20230925BHJP
   E05F 15/79 20150101ALI20230925BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/75
E05F15/79
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019235181
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102896
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】317006258
【氏名又は名称】オプテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】河原 大地
(72)【発明者】
【氏名】吉開 嵩司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 翔
(72)【発明者】
【氏名】島田 博史
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181464(JP,A)
【文献】特開2002-309853(JP,A)
【文献】特開2006-112048(JP,A)
【文献】特開2015-176206(JP,A)
【文献】特開平05-231066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F15/00 -15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに設けられ人体の一部の接触または近接によりタッチ信号を送出するタッチスイッチと、
前記ドアの周辺の対象物を該対象物からの検知波に基づいて検出する検知エリアを形成するエリアセンサと、
前記タッチスイッチからのタッチ信号を受信し、ドア開制御信号を出力する受信器と、
前記ドア開制御信号を受信したとき、前記ドアを開かせる起動手段と、
を備えたドア開閉制御システムであって、
前記エリアセンサは、前記ドアが閉状態の時に前記検知エリアのうちの前記ドア近傍の近傍エリアにて前記対象物を少なくとも通常長である所定時間以上検出し続けた場合に、前記ドア開制御信号の出力指令を出力し、
前記受信器は、前記出力指令を受信した場合にも、前記ドア開制御信号を出力し、
前記エリアセンサは、前記対象物を、前記近傍エリア以外の遠方エリアで検出することなく、前記近傍エリアで検出した場合に、前記所定時間を前記通常長よりも長くする、
ドア開閉制御システム。
【請求項2】
ドアに設けられ人体の一部の接触または近接によりタッチ信号を送出するタッチスイッチと、
前記ドアの周辺の対象物を該対象物からの検知波に基づいて検出する検知エリアを形成するエリアセンサと、
前記タッチスイッチからのタッチ信号を受信し、ドア開制御信号を出力する受信器と、
前記ドア開制御信号を受信したとき、前記ドアを開かせる起動手段と、
を備えたドア開閉制御システムであって、
前記エリアセンサは、前記ドアが閉状態の時に前記検知エリアのうちの前記ドア近傍の近傍エリアにて前記対象物を少なくとも通常長である所定時間以上検出し続けた場合に、前記ドア開制御信号の出力指令を出力し、
前記受信器は、前記出力指令を受信した場合にも、前記ドア開制御信号を出力し、
前記エリアセンサは、
所定期間内における前記エリアセンサから出力された前記出力指令に基づく前記ドア開制御信号の出力頻度であるエリアセンサ頻度と、前記所定期間内における前記タッチスイッチから送出された前記タッチ信号に基づく前記ドア開制御信号の出力頻度であるタッチスイッチ頻度とを算出し、
前記タッチスイッチ頻度に対して前記エリアセンサ頻度が多い場合、前記所定時間の前記通常長を短くし、
前記タッチスイッチ頻度に対して前記エリアセンサ頻度が少ない場合、前記所定時間の前記通常長を標準値に戻す、
ドア開閉制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドア開閉制御システムにおいて、
前記エリアセンサは、前記ドアの無目および天井を含む前記ドア周辺に設けられる、
ドア開閉制御システム。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のドア開閉制御システムにおいて、
前記タッチスイッチは、前記人体の一部の接触による前記タッチ信号を送出する機械式スイッチ、または前記タッチスイッチ近傍のタッチ検出エリアにおいて前記人体の一部を検出することにより前記人体の一部の近接による前記タッチ信号を送出する光学式センサである、
ドア開閉制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動ドアを開閉するドア開閉制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動ドア等のドアに設けられた(ドア周辺設置も含む)タッチスイッチを人体の一部が接触することでまたは人体の一部が近接することで、該タッチスイッチからタッチ信号を送出してドアを開かせるドア開閉制御システムが知られている。タッチスイッチは、多くの場合、人通りの多い場所などでドアを通過する意思のある人のみに対してドアを開放する目的で使用され、ドアを通過する意思の無い人にドアを開放してしまう誤作動を防止する目的で使用される。
【0003】
なお、こうしたドア開閉制御システムでは、ドアを開放してからタイマ等で計時し、一定時間の経過後にドアを閉鎖する。この場合、当該一定時間内にドアを通過できなかった人は、ドアに挟まれる可能性がある。そこで、ドアの開閉軌道上における人等の対象物を検出して該対象物が通過した後にドアを閉じるための所謂安全センサを別途備えたドア開閉制御システムが知られている。この安全センサにより、ドアの開閉軌道上に人がいなくなった後にドアを閉鎖できる。また、この安全センサに加えて、ドアの直近を含む周辺の対象物を該対象物からの赤外線等の検知波に基づいて検出するエリアセンサを使用した場合でも、上記一定時間が経過しても、ドアを通過する人が通過を完了したことを検出してドアを閉鎖できるため、開閉軌道上のみならずドア周辺の安全も確保しうる。安全センサやエリアセンサには、AIRセンサ[Active Infra-Red Sensor:能動型赤外線センサ]が主に用いられる。なお、AIRセンサに代えて、検知原理が熱線式、超音波式、MW式、または画像式などであるセンサが用いられてもよい。
【0004】
タッチスイッチは、上記目的で使用される一方で、車椅子利用者、ベビーカーや台車使用者、または荷物や子連れ等のため両手がふさがっている人は、タッチスイッチを押しづらくドアを開けるのが困難であるという指摘がある。また、視覚障害者がタッチスイッチを見つけられない場合や、外国人等でタッチスイッチの使用方法が分からない場合に、ドアを開けられないことが生じうる。これに対し、特許文献1には、エリアセンサを利用して、その検知範囲に物体が検出されるとドアを開ける自動ドア装置が開示されている。
【0005】
また、タッチスイッチでは、部品劣化や機械的摩耗等による不具合が発生し、ドアを開けられないことが生じうるという指摘もある。加えて、無線方式のタッチスイッチでは、外来ノイズや電池切れ等による不具合も発生して、ドアを開けられないことが生じうる。これに対し、特許文献2には、タッチスイッチ等のセンサの不具合が検出された場合に、エリアセンサ等の光学式センサを使用してドアを開ける自動ドアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3779644号公報
【文献】特開2017-014719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の自動ドア装置は、ドアが閉まる際の安全性に関する開示にとどまり、どのような条件でドアを開放するかについて何ら開示が無い。また、特許文献2においても、どのような条件でドアを開放するかについて何ら開示が無い。前述のような、人通りの多い場所などでドアを通過する意思のある人のみに対してドアを開放するためには、さらに、ドアを通過する意思の無い人に不必要にドアを開放してしまう誤作動を防止するためには、ドアを開ける条件等は重要である。
【0008】
そこで、本発明は、従来技術の有する上記欠点を解消して、タッチスイッチを使用しなくてもドアを開放しうるドア開閉制御システム、加えてタッチスイッチの不具合時でもドアを開放しうるドア開閉制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0010】
本発明に係るドア開閉制御システムは、
ドアに設けられ人体の一部の接触または近接によりタッチ信号を送出するタッチスイッチと、
前記ドアの周辺の対象物を該対象物からの検知波に基づいて検出する検知エリアを形成するエリアセンサと、
前記タッチスイッチからのタッチ信号を受信し、ドア開制御信号を出力する受信器と、
前記ドア開制御信号を受信したとき、前記ドアを開かせる起動手段と、
を備えたドア開閉制御システムであって、
前記エリアセンサは、前記ドアが閉状態の時に前記検知エリアのうちの前記ドア近傍の近傍エリアにて前記対象物を少なくとも通常長である所定時間以上検出し続けた場合に、前記ドア開制御信号の出力指令を出力し、
前記受信器は、前記出力指令を受信した場合にも、前記ドア開制御信号を出力する。
【0011】
この構成によれば、ドア開閉制御システムは、前記エリアセンサは、前記ドアが閉状態の時に前記検知エリアのうちの前記ドア近傍の近傍エリアにて前記対象物を少なくとも通常長である所定時間以上検出し続けた場合に、前記ドア開制御信号の出力指令を出力し、前記受信器は、前記出力指令を受信した場合にも、前記ドア開制御信号を出力する。よって、従来技術の有する上記欠点を解消して、タッチスイッチを使用しなくてもドアを開放でき、加えてタッチスイッチの不具合時でもドアを開放できる。例えば、タッチスイッチを押しづらくドアを開けるのが困難である状況、タッチスイッチの使用方法が分からない状況、または、タッチスイッチ自身の部品劣化や機械的摩耗等による不具合の場合等に、近傍エリアを除くドア遠方でのドアを通過する意思のない人の動きによる誤作動や、例えば風によって飛ばされた新聞紙などの飛来物や横切り進入の通行人などのドア近傍を瞬間的に通過する物体による誤作動等を低減しつつ、すなわち不用意なドア開放を低減しつつ、タッチスイッチを押さなくともドアを開けることができる。
【0012】
上記構成において、前記エリアセンサは、前記対象物を、非検出状態から前記近傍エリア以外の遠方エリアで検出することなく、前記近傍エリアで検出した場合に、前記所定時間を前記通常長よりも長くすることが好ましい。これにより、ドア近傍を突発的に通過する横切り進入者などに対して、タッチスイッチを押すことなくドアが不用意に開放される可能性をより低減しうる。
【0013】
上記構成において、
前記エリアセンサは、
所定期間内における前記エリアセンサから出力された前記出力指令に基づく前記ドア開制御信号の出力頻度であるエリアセンサ頻度と、前記所定期間内における前記タッチスイッチから送出された前記タッチ信号に基づく前記ドア開制御信号の出力頻度であるタッチスイッチ頻度とを算出し、
前記タッチスイッチ頻度に対して前記エリアセンサ頻度が多い場合、前記所定時間の前記通常長を短くし、
前記タッチスイッチ頻度に対して前記エリアセンサ頻度が少ない場合、前記所定時間の前記通常長を標準値に戻すことが好ましい。
これにより、視覚障害者、車椅子利用者、およびベビーカーや台車使用者等にとって、ドア使用の際の快適性が減損される可能性を低減しうる。
【0014】
上記構成において、前記エリアセンサは、前記ドアの無目および天井を含む前記ドア周辺に設けられることが好ましい。これにより、前記エリアセンサは、遠近両方における対象物の検出が良好となり、また設置場所が邪魔とならない。
【0015】
上記構成において、
前記タッチスイッチは、前記人体の一部の接触による前記タッチ信号を送出する機械式スイッチ、または前記タッチスイッチ近傍のタッチ検出エリアにおいて前記人体の一部を検出することにより前記人体の一部の近接による前記タッチ信号を送出する光学式センサであることが好ましい。これにより、接触によるドア開放だけでなく、非接触によるドア開放が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るドア開閉制御システムは、従来技術の有する上記欠点を解消して、タッチスイッチを使用しなくてもドアを開放でき、加えてタッチスイッチの不具合時でもドアを開放できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るドア開閉制御システムの概略側面図である。
図2】同ドア開閉制御システムの制御部の概念ブロック図である。
図3】同ドア開閉制御システムの横切りモードを説明するための平面図である。
図4】同ドア開閉制御システムのエリアセンサからの通常の出力波形図である。
図5】同ドア開閉制御システムのエリアセンサからの横切り時の出力波形図である。
図6】同ドア開閉制御システムのタッチスイッチ頻度およびエリアセンサ頻度を説明する図である。
図7】同ドア開閉制御システムのタッチスイッチ頻度およびエリアセンサ頻度を説明する図である。
図8】同ドア開閉制御システムの動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号は、同一または相当部分を示し、特段変更等の説明がない限り、適宜その説明を省略する。
【0019】
<ドア開閉制御システムの基本構成および基本動作等>
図1に、本発明の一実施形態に係るドア500を開閉するドア開閉制御システム1の概略側面図を示す。本実施形態のドア開閉制御システム1は、自動ドアの開放等を行うドア開閉制御を行う。すなわち、本実施形態では、ドア500は、スライド式の両開きまたは片開きの自動ドアの扉であり、敷居や鴨居のような水平方向の部材である無目400に懸下され支持されている。本実施形態に係るドア開閉制御システム1は、例えば、上記のように自動ドアを開放等するドア開閉制御に適用しうるが、この自動ドアに限らず、前記起動手段がドアを開かせるための開錠等を行う開錠施錠制御にも適用しうる。
【0020】
ドア500には、人体の一部の接触または近接により、タッチ信号TS(図2)を送出するタッチスイッチ210が、図1のように人体の腰から胸の高さ辺りの範囲で、該ドアの主面において、ドアの開扉時に通路側となる端辺付近に設けられている。タッチスイッチ210から上記タッチ信号TSが送出されることで、後述のように、自動ドアのドア500が開放される(このドア開放を「タッチスイッチドア開放」と呼ぶ)。よって、当該自動ドアを通過する意思のある人は、タッチスイッチ210を押す。
【0021】
本実施形態のタッチスイッチ210は、本実施形態では、人体の一部の接触によるタッチ信号TSを送出する機械式スイッチである。なお、タッチスイッチ210は、タッチスイッチ近傍のタッチ検出エリアにおいて人体の一部を検出することにより人体の一部の近接によるタッチ信号TSを送出する光学式センサであってもよい。この場合、接触によるドア開放だけでなく、非接触によるドア開放が可能となる。
【0022】
同図では、さらに、エリアセンサ300が、ドア500の無目400に設けられている。エリアセンサ300は、ドア500の周辺の対象物を該対象物からの検知波に基づいて検出する検知エリアを形成する。本実施形態では、エリアセンサ300は、例えば、AIRセンサ[Active Infra-Red Sensor:能動型赤外線センサ]であり、同図の検知エリアD1~D6において、対象物600からの検知波に含まれる赤外線を検出して、ドア500の周辺の対象物600を検出する。対象物600は、本実施形態では、人体であり、例えば、視覚障害者、車椅子利用者、ベビーカーや台車使用者、または荷物や子連れ等のため両手がふさがっている人が含まれる。
【0023】
検知エリアD1~D6は、ドア500の下端辺に対して平行な列方向のエリアで、互いに隣り合って並んでいる。検知エリアD1が、ドア500の最も近くに位置しており、検知エリアD2~D5は、この順にドア500から遠ざかり、検知エリアD6が最もドア500から遠い検知エリアとなっている。このように、エリアセンサ300は、少なくとも、ドア500の下端辺に対して平行な列方向において対象物600が検出可能となっている。すなわち、エリアセンサ300は、少なくとも、対象物600のドア500からの遠近の距離に従った検出が可能である。この場合、エリアセンサ300は、対象物600のドア500に対する移動MV(近づき方向および遠ざかり方向)が検出可能である。
【0024】
以下において、検知エリアD1~D6のうちのドア500近傍の検知エリアD1、D2を近傍エリアと呼ぶ。また、ドア500近傍の検知エリアD1,D2以外である検知エリアD3~D6を遠方エリアと呼ぶ。尚、前記近傍エリアおよび前記遠方エリアの境界は、この検知エリアD2とD3との間に限られず、変更可能である。同図では、近傍エリアである検知エリアD1、D2における対象物からの検知波(赤外線)を検知しうる検知範囲と、遠方エリアである検知エリアD3~D6における対象物からの検知波(赤外線)を検知しうる検知範囲とを、別々のハッチングで示している。ここで、本実施形態では、列状の各検知エリアD1~D6には、図3に示すように、ドア500に対して横方向(または列方向に直交する行方向)の対象物検出を可能とするスポット状の個別検知エリアDAが複数含まれている。これは、例えばエリアセンサ300が8×6のマトリクス状の赤外線検知素子(センサ)で構成されることで、実現しうる。
【0025】
図2に示すように、タッチスイッチ210から、無線信号たる上記タッチ信号TSが、所謂タッチスイッチセンサである受信器200に送出される。受信器200は、タッチ信号TSを受信すると、ドア開制御信号DSをドアコントローラ100に向けて出力する。起動手段たるドアコントローラ100は、このドア開制御信号DSを受信するとドア500を開かせる。具体的には、ドアコントローラ100は、ドア開制御信号DSの受信により、自動ドアのドア500を開閉駆動するモータ等が含まれる開閉駆動部DDへ該モータを開駆動する開駆動指令を出力することで、ドア500を開かせる。以上により、当該自動ドアを通過する意思のある人が、タッチスイッチ210を押すことで、自動ドアのドア500が開放される。なお、起動手段には、ドア500を開閉駆動する上記開閉駆動部DDが含まれてもよい。
【0026】
タッチスイッチセンサ200が、ドアを開放してからタイマ等で計時し、通常0.5秒など短時間である出力保持時間等の一定時間が経過した時にドアコントローラ100へその旨を通知し、ドアコントローラ100が、閉駆動指令を上記開閉駆動部DDへ出力することで、ドア500を閉鎖する(なお、コントローラ100が、いわゆる開放タイマを使用してドア500の開放時間を設定してもよい)。この際、本実施形態では、後述のエリアセンサ300を使用して、ドア500の開閉軌道上およびドア周辺における人等の対象物600を検出してドア500の閉動作から開動作へと転じさせ、対象物600のドア500への挟み込みを防止する。なお、エリアセンサ300は、開閉軌道上の安全を確保するために、開閉軌道上に検知エリアを形成している(図1では図示を省略)。このエリアセンサ300は、本実施形態では、タッチスイッチセンサ200と併用されることから、以下では併用センサ300とも呼ぶ。
【0027】
<併用センサ開ドア条件>
本実施形態の併用センサ300は、「ドア500が閉状態の時に、検知エリアD1~D6のうちの近傍エリアたる検知エリアD1、D2にて対象物600を、少なくとも通常長である所定時間以上検出し続けた場合」(以下、「併用センサ開ドア条件」とも呼ぶ)に、上記ドア開制御信号DSの出力指令OCを出力する。通常長は、例えば、少なくとも健常者等の一般人がドア近傍の近傍エリアで検出されたのちタッチスイッチを押すまでの時間長さかそれ以上の長さのことを言う。すなわち、通常長は、例えば併用センサ開ドア条件を満たした際の併用センサ300によるドア500の開放(このドア開放を「併用センサドア開放」と呼ぶ)が不用意に発生しにくい最低値となっている。なお、通常長は、出荷時に初期値に設定されており、例えば2秒である。ここで、「少なくとも通常長である所定時間」とは、原則所定時間は通常長であるが、例えば後述の横切り対策モードのように所定時間が通常長から変更される場合があることを表している。
【0028】
この構成の場合、受信器200は、この出力指令OCを受信した場合にも、前記ドア開制御信号DSを出力する。すなわち、受信器200は、近傍エリアにて対象物600を併用センサ300が上記所定時間以上検出し続けた場合には、タッチスイッチ210からのタッチ信号TSを受信しなくても、併用センサ300からの出力指令OCの受信を受けてドアコントローラ100にドア開制御信号DSを出力する。この構成により、タッチスイッチを押しづらくドアを開けるのが困難である状況、タッチスイッチの使用方法が分からない状況、または、タッチスイッチ自身の部品劣化や機械的摩耗等による不具合の場合等に、近傍エリアを除くドア遠方でのドアを通過する意思のない人の動きによる誤作動や、例えば風によって飛ばされた新聞紙などの飛来物や横切り進入の通行人などのドア近傍を瞬間的に通過する物体による誤作動等を低減しつつ、すなわち不用意なドア開放を低減しつつ、タッチスイッチ210を押さなくともドア500を開けることができる。なお、この場合、タッチスイッチ210によるドア500の開放(上記タッチスイッチドア開放)も可能であるため、併用センサドア開放によるドア500の開放を待つことなく、タッチスイッチ210を押してドア500を開放することも可能である。
【0029】
なお、これらのドアコントローラ100、受信器200、併用センサ300は、概念ブロック図たる図2に示されるようなカスケード状にリレー通信型で接続されていてもよいが、バス通信型で接続されていてもよい。バス通信として、例えばCAN(Controller Area Network)通信が使用しうる。CAN通信では、CANバス上に接続された機器に、各々ノードIDが付与される。CAN通信を使用した場合は、例えば、ドアコントローラ100をバスマスタとし、受信器200、併用センサ300等をスレーブ(スレーブ器)とする。バスマスタのドアコントローラ100が、ドアを閉鎖する際の安全検出信号の出力機器やドアを開放する際のドア開放起動信号の出力機器を設定する出力設定、後述の所定時間の通常長、およびスレーブ器のノードID等を管理する。この構成により、これまでのDIP(Dual In-line Package)スイッチによる設定からスマートホンなどの端末機からの設定が可能となる利点や、伝達情報量の向上、常時死活監視が可能、複雑な配線が不要となるなどの利点がある。なお、バス通信の場合でも、上記併用センサ開ドア条件による併用センサ300からのドア500の開放は、併用センサ300からドアコントローラ100にドア開制御信号DSを直接出力するのではなく、併用センサ300から出力指令OCを受信器200に出力することで、併用センサ300が受信器200を経由する形でドア開制御信号DSをドアコントローラ100に出力して行う。なお、CANバス等のバス上には、他に備えられた不図示のセンサ等も接続されている。
【0030】
<横切り対策モード>
以上により、上記併用センサ開ドア条件を満たせば、タッチスイッチ210を押さなくともドア500を開けることが可能となるが、同条件を満たせば、ドア近傍を瞬間的に通過する横切り進入者などに対しても、タッチスイッチ210を押すことなく不用意にドア500が開放される可能性がある。そこで、併用センサ300は、対象物600を、前記近傍エリア以外の遠方エリアで検出することなく、前記近傍エリアで検出した場合に、前記所定時間を前記通常長よりも長くする(この所定時間が前記通常長よりも長い状態を「横切り対策モード」とも呼ぶ)。所定時間を前記通常長よりも長くする場合は、例えば定められた倍数だけ延長する、定められた値だけ加算する、または無限値に設定する。これにより、ドア近傍を突発的に通過する横切り進入者などに対して、タッチスイッチ210を押すことなくドア500が不用意に開放される可能性をより低減しうる。これについて、以下で詳説する。
【0031】
図3に示すように、対象物600が横切りではなく通常の動作でドア500へ接近する場合、すなわち、遠方エリアに含まれる検知エリアD6から近傍エリアに含まれる検知エリアD1へ向けて対象物600が進入する場合、列方向の各検知エリアD1~D6を検出する行方向に対応した赤外線検知素子のうち(同図では各検知エリアに8個)、対象物600を検出したいくつかの素子の検知波形は、図4に示すような矩形状の波形図となる。同図では、横軸(不図示)が時間軸であり、対象物600を検出した場合に縦軸(不図示)方向に信号が立ち上がってアサートされる(または有効とされる)。同図によると、対象物600が横切りではなく通常の動作でドア500へ接近する場合、検知エリアD6の波形図から検知エリアD1の波形図に向けて、時間の経過と共に信号が順番にアサートされていく。
【0032】
一方、図3に示すように、対象物600が横切り動作である場合、すなわち、遠方エリアの検知エリアD3~D6に対象物600が進入せず、近傍エリアの検知エリアD1、D2のみに対象物600が進入した場合、図5に示すような波形図となり、遠方エリアの検知エリアD3~D6の波形図において信号がアサートされることなく、近傍エリアの検知エリアD1、D2のみにおいて、信号がアサートされる。このように非検出状態から遠方エリアで検出されることなく、近傍エリアで検出した場合に、対象物600の横切り進入が検出される。対象物600の横切り進入が検出されると、上記横切り対策モードが適用され、併用センサ300は、前記所定時間を前記通常長よりも長くし、ドア500が不必要に解放されないようにする。なお、本実施形態では、横切り対策モードは、その対象物600が検知エリアで検出されてから検出されなくなるまでのその1回においてのみ適用されるモードであり、対象物600が検知エリアで検出されなくなると、上で述べた基本動作のような通常動作のモードに復帰する。
【0033】
<通常長変更モード>
以上により、横切り対策モードが適用される機能を有しつつ、タッチスイッチ210を押さなくともドア500を開ける動作が実現されるが、一定の回数内のドア開放において、上記併用センサドア開放が過半数を占める場合など併用センサドア開放の回数(エリアセンサ頻度とも呼ぶ)が上記タッチスイッチドア開放の回数(タッチスイッチ頻度とも呼ぶ)よりも多い場合と、上記タッチスイッチドア開放が過半数を占める場合などエリアセンサ頻度がタッチスイッチ頻度よりも少ない場合とで、上記併用センサ開ドア条件における所定時間が同じであると、エリアセンサ頻度がタッチスイッチ頻度よりも多い場合において、視覚障害者、車椅子利用者、およびベビーカーや台車使用者等にとって、自動ドア使用の際の快適性が減損される可能性がある。これは、健常者等の一般人が使用するタッチスイッチ210によるドア開放の頻度よりも、上記台車使用者等による併用センサドア開放の方の頻度が高いにも関わらず、併用センサドア開放におけるドア開放までの時間(原則通常長となっている所定時間)が硬直的に変更されないままでは、上記台車使用者等にとって一般人よりも長い時間ドア開放を待たされるのは不快で不便であると考えられるからである。
【0034】
そこで、併用センサ300は、タッチスイッチ頻度およびエリアセンサ頻度を算出(計数)し、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が多い場合、所定時間の通常長を短くし、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が少ない場合、所定時間の通常長を例えば出荷時の前記初期値である標準値に戻す(この対応を「通常長変更モード」とも呼ぶ)。すなわち、ドア500の開放における併用センサドア開放およびタッチスイッチドア開放の履歴を参酌して、所定時間の通常長を決定する。所定時間の通常長を短くする場合は、例えば定められた割合で縮小する、定められた値だけ減算する、または0秒に設定する。なお、本実施形態では、タッチスイッチ頻度とエリアセンサ頻度が等しい場合は、ドア利用者の気性などの諸条件を勘案して、所定時間の通常長を短くしてもよいし、所定時間の通常長を標準値に戻してもよい。以上の構成により、上で述べた自動ドア使用の際の快適性の減損を低減しうる。その一方で、併用センサドア開放が不用意に発生しにくくなっている。これについて、以下で詳説する。なお、エリアセンサ頻度およびタッチスイッチ頻度は、上で述べた回数に限定されるものではなく、平均値等が用いられてもよい。
【0035】
図6は、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が多い場合であり、図7は、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が少ない場合である。図6では、タッチスイッチ頻度は所定期間の10回のうちの3回となっているのに対して、エリアセンサ頻度は所定期間の10回のうちの7回となっている。すなわち、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が多い場合であり、通常長変更モードが適用されている場合には、併用センサ300は、所定時間の通常長を短くする。一方、図7では、タッチスイッチ頻度は所定期間の10回のうちの8回となっているのに対して、エリアセンサ頻度は所定期間の10回のうちの2回となっている。すなわち、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が少ない場合であり、通常長変更モードが適用されている場合には、併用センサ300は、所定時間の通常長を標準値に戻す。なお、上記所定期間は、現在時間直近からの10回であるが、回数は10回に限られない。
【0036】
<本実施形態のドア開閉制御システムの動作>
次に、上で説明した本実施形態のドア開閉制御システムの動作について、図8のフロー図を使用して説明する。上記横切り対策モード、通常長変更モードは、必須搭載機能ではないが、本実施形態では両方の機能を搭載している。
【0037】
本ドア開閉制御システムが始動されると(START)、上記所定時間は通常長に設定される。始動直後は、通常長は初期値となっている(ステップS1)。その後、タッチスイッチセンサ200のタッチ信号TSの検出処理および併用センサ300の対象物600の検出処理が各々開始される(ステップS2)。この後、自動ドアのドア500が完全に閉鎖されていない場合(ステップS3でNO)、ドア500が開放されている間の従来の検知ロジックすなわち併用センサ300を用いた挟み込み防止検知等が実行され(ステップS4)、再びステップS3へ戻る。
【0038】
自動ドアのドア500が完全に閉鎖されている場合(ステップS3でYES)、次に併用センサ300が対象物600を検出したか判定する(ステップS5)。併用センサ300が対象物600を検出していない場合は(ステップS5でNO)、横切り判定は不要であるため、ステップS9へ移行する。併用センサ300が対象物600を検出した場合は(ステップS5でYES)、次に、併用センサ300が、対象物600をドア近傍エリア以外で検出せず、近傍エリアで検出したか否かが判定(横切り判定)される(ステップS6)。
【0039】
併用センサ300が、対象物600をドア近傍エリア以外で検出せず近傍エリアで検出した場合には、対象物600の横切り進入があったと判定し(ステップS6でYES)、横切り対策モードとなり、所定時間を長くする(ステップS8)。次にステップS9へ移行する。なお、その対象物600が検知エリアで検出されてから検出されなくなると、インタラプト処理等により横切り対策モードが解除される。併用センサ300が、対象物600をドア近傍エリア以外で検出せず近傍エリアで検出した場合ではないときは、対象物600の横切り進入ではなかったと判定し(ステップS6でNO)、所定時間を通常長とする(ステップS7)。次にステップS9へ移行する。
【0040】
ステップS9では、タッチ信号TSの検出の有無によりタッチスイッチ210の押下があったか判定を行い、タッチスイッチ210の押下があった場合は(ステップS9でYES)、ステップS12へ移行し、タッチスイッチ210の押下がなかった場合は(ステップS9でNO)、ステップS10へ移行する。
【0041】
ステップS10では、併用センサ300の近傍エリアでの検出時間が所定時間以上であったか否かが判定される。併用センサ300の近傍エリアでの検出時間が所定時間以上であった場合は(ステップS10でYES)、併用センサ300がタッチスイッチセンサ200にドア開制御信号DSの出力指令OCを出力し(ステップS11)、ステップS12へ移行する。併用センサ300の近傍エリアでの検出時間が所定時間以上でなかった場合は(ステップS10でNO)、処理はステップS3へ戻る。
【0042】
ステップS12では、タッチスイッチ210の押されたか、または併用センサ開ドア条件が満たされたので、受信器(タッチスイッチセンサ)200は、ドア開制御信号DSを出力する。これにより、タッチスイッチドア開放または併用センサドア開放による自動ドアの開放(ドア500の開放)が実行される。
【0043】
ステップ13では、通常長変更モードが実行され、併用センサ300は、所定期間である現在時間直近の10回について、タッチスイッチ頻度およびエリアセンサ頻度を計数する。次に、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が多いか否か判定される(ステップS14)。タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が多い場合(ステップS14でYES)、所定時間の通常長を短くし(ステップS16)、タッチスイッチ頻度に対してエリアセンサ頻度が多くない場合(ステップS14でNO)、所定時間の通常長を標準値に戻す(ステップS15)。この後、ステップS3に戻り、以上の処理を繰り返す。
【0044】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
例えば、ドア開制御信号DSは受信器200が出力しているが、併用センサ300が出力指令に代えて出力してもよい。上記所定時間、エリアセンサ頻度およびタッチスイッチ頻度の算出(計数)は、併用センサ300に代えて受信器200が行ってもよい。この場合、具体的には、併用センサ300は上記の対象物600の検出の状態(結果)を受信器200へ伝達し、受信器200はタッチスイッチ210のタッチ信号TSの受信状態を併用センサ300へ伝達することで実願可能となる。
【0046】
また、上記横切り対策モードおよび通常長変更モードの上述の動作では、例えばタッチスイッチ210の不具合や視覚障害者、車椅子利用者、およびベビーカーや台車使用者等の通行が極端に多いことにより、前記タッチスイッチ頻度に比べて前記エリアセンサ頻度が極端に多くなった場合に(エリアセンサ頻度が90%以上の場合など)、上記台車使用者等にとって自動ドア使用の際の快適性が減損される可能性がある。それは、この場合では上記台車使用者等の自動ドア使用が普通(通常、平常)であるとみなせる一方で、上記横切り対策モードおよび通常長変更モードの上述の動作が、上記台車使用者等が使用する場合を例外的とみなして動作しているためである。そこで、この前記タッチスイッチ頻度に比べて前記エリアセンサ頻度が極端に多くなった場合には、上記横切り対策モードの上述の動作を行わずに、すなわち横切り判断(図8のステップS6)をすることなく、前記所定時間を前記通常長のままとしてもよい。この場合、対象物600が横切り動作を意図していないにも関わらず、見かけ上横切り対策モードでは対象物600が横切り動作であると判定されるケースでも、横切り動作との判定が行われないため、快適性の減損を回避しうる。加えて、この前記タッチスイッチ頻度に比べて前記エリアセンサ頻度が極端に多くなった場合には、通常長変更モードの上述の動作を行わずに、すなわちエリアセンサ頻度がタッチスイッチ頻度よりも多いか否かの判断(図8のステップS14)をすることなく、前記通常長を初期値である標準値へ戻してもよい。この場合、上記台車使用者等の自動ドア使用が普通の状態(通常状態、平常状態)であることから、特段通常長変更モードを適用することを不要とできる。
【符号の説明】
【0047】
1 ドア開閉制御システム
100 ドアコントローラ(起動手段)
200 受信器(タッチスイッチセンサ)
210 タッチスイッチ
300 併用センサ(エリアセンサ)
400 無目
500 ドア
600 対象物
D1、D2 検知エリア(近傍エリア)
D3~D6 検知エリア(遠方エリア)
DS ドア開制御信号
OC 出力指令
TS タッチ信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8