(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】グレーチング用受枠
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20230925BHJP
E03F 5/06 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
E03F5/04 E
E03F5/06 Z
(21)【出願番号】P 2021066877
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000213231
【氏名又は名称】株式会社中部コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118706
【氏名又は名称】青山 陽
(72)【発明者】
【氏名】近藤 充博
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦夫
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-043015(JP,A)
【文献】特開平10-102558(JP,A)
【文献】実開昭58-099379(JP,U)
【文献】実開昭52-006529(JP,U)
【文献】特開2009-161961(JP,A)
【文献】特開2004-019104(JP,A)
【文献】特開2007-198096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
E03F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレーチングで覆われた排水溝に設けられるグレーチング用の受枠であって、
前記排水溝の一方の側壁上端に長手方向に延在して固定された受枠部と、
一端が前記受枠部に着脱可能に係留され、他端が前記排水溝の幅方向に向かって延在するブラケットと、
前記ブラケットから下方に延在して前記排水溝の底面に固定されずに接しており、高さ調節が可能とされた支持脚を備え
ており、
前記支持脚はボルトとナットの組み合わせにより高さ調節可能とされており、
前記ブラケットには前記ボルト及び前記ナットを操作するための開口が設けられているグレーチング用受枠。
【請求項2】
前記受枠部の長手方向両端には前記排水溝の幅方向に向かって延在し、前記グレーチングの長手方向の移動を阻止するための受枠部端部が設けられている請求項1に記載のグレーチング用受枠。
【請求項3】
前記受枠部には上方に向かって突出する凸部が設けられており、前記ブラケットには前記凸部が挿入される孔が設けられている請求項1又は2に記載のグレーチング用受枠。
【請求項4】
前記凸部は前記孔を貫通し、さらに上方に突出して前記グレーチングの隙間に挿入可能とされている請求項3に記載のグレーチング用受枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水溝に設けられるグレーチング用の受枠に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の周縁に排水溝を設ける場合、排水溝にはグレーチング用の受枠が設けられる。このグレーチング用の受枠は、建物との間に隙間ができないようするため、通常、建物側に溶接して設けられることになる。しかし、建物に建具が設けられている場合には、建具と受枠とを直接溶接することができない。このため、
図4に示すように、受枠部101下につなぎ材102を設け、つなぎ材102の一端側を基礎103に固定し、他端側にレベル調節可能な支持脚104を設けることによってグレーチング105を支持することが行われている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】第一機材株式会社2020年12月発行「No.63総合カタログ」4-1-17(365頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のグレーチング用受枠では、建具枠100へ受枠部101を溶接によって固定することは回避できるものの、グレーチング105と建具枠100との間に受枠部101が存在するため、グレーチング105と建具枠100とを密接させて施工することはできない。また、つなぎ材102があるため掃除がし難い。さらに、受枠部101と建具枠100との間にも隙間が生じ、この隙間にゴミが詰まるため、シール工事が必要となる。また、施工時には狭い作業スペースにおいて横方向から支持脚104下のナットを回してレベルの調節を行うため、無理な姿勢で作業をしなければならないとともに、作業時間も長くなる。さらには、建具枠100とグレーチング105の間に受枠部101が存在することとなるため、外観において複雑となり意匠性に欠けるという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、建物に近接してグレーチングを設ける場合において、建物とグレーチングとの間に受枠が存在することなく密接させることが可能であり、外観がすっきりとして意匠性に優れ、施工が容易なグレーチング用受枠を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のグレーチング用受枠は、グレーチングで覆われた排水溝に設けられるグレーチング用の受枠であって、前記排水溝の一方の側壁上端に長手方向に延在して固定された受枠部と、一端が前記受枠部に着脱可能に係留され、他端が前記排水溝の幅方向に向かって延在するブラケットと、前記ブラケットから下方に延在して前記排水溝の底面に固定されずに接しており、高さ調節が可能とされた支持脚とを備えている。
【0007】
本発明のグレーチング用受枠では、グレーチングを所定の場所に収容するための受枠部が排水溝の一方の側壁上端に長手方向に延在して固定されている。また、一端が受枠部に着脱可能に係留され、他端が排水溝の幅方向に向かってブラケットが延在しており、ブラケットから下方に延在して排水溝の底面に接する支持脚によってブラケットが支持されている。このため、受枠部の他端側を建物側に固定する必要がなく、施工が容易となる。また、グレーチングを外せばブラケットを簡単に取り外すことができるため、排水溝の清掃等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。さらに、建物とグレーチングとの間に受枠が存在しないため、グレーチングを建物側に密接させることが可能となる。このため、外観がすっきりとして意匠性に優れることとなる。また、グレーチングと建物との間に隙間を設ける必要がないため、隙間にシーリング剤等を充填する必要もなく、ゴミがたまったりするおそれもない。さらには、支持脚が高さ調節可能とされているため、グレーチングのレベル面の調節を容易に行うことができる。
【0008】
受枠部の長手方向両端には、排水溝の幅方向に向かって延在する受枠部端部が設けられていることが好ましい。こうであれば、グレーチングが長手方向にずれることを阻止することができる。
【0009】
また、受枠部には上方に向かって突出する凸部が設けられており、ブラケットには凸部が挿入される孔が設けられていることが好ましい。こうであれば、ブラケットの孔を受枠部の凸部に挿入させたり、凸部から孔を外したりすることにより、ブラケットの着脱を極めて容易に行うことができるため、施工が容易となり、施工時間も短くできる。
【0010】
さらに、凸部は孔を貫通し、さらに上方に突出してグレーチングの隙間に挿入可能とされていることが好ましい。こうであれば、グレーチングが排水溝の幅方向に移動する力が加わった場合、グレーチングが凸部に引っかかり、移動を阻止することができる。
【0011】
また、支持脚はボルトとナットの組み合わせにより高さ調節可能とされていることが好ましい。こうであれば、グレーチングのレベル合わせが容易となる。さらに、ブラケットにはボルト及びナットを操作するための開口が設けられていることが好ましい。こうであれば、ブラケットに設けられた開口を介してボルト及びナットを調節することが可能となる。このため、作業者は支持脚の高さ調節作業を無理な姿勢をとることなく上側から容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のグレーチング用受枠を用いた排水溝の断面図である。
【
図2】実施例1のグレーチング用受枠における受枠部の斜視図である。
【
図3】実施例1のグレーチング用受枠を用いた排水溝の部分断面図である。
【
図4】従来のグレーチング用受枠を用いた排水溝の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化したグレーチング用受枠について、図面を参照しつつ詳述する。
(実施例1)
実施例1のグレーチング用受枠は、
図1に示すように、建物の建具201に沿って設けられた排水溝1に用いるものである。排水溝1の、建物と反対側の側壁1aの上端には、断面がL字型の受枠部3がグレーチング2の長手方向の一辺を載置可能に延在している。受枠部3は断面L字型の固定部材4と背中合わせに溶接されており、固定部材4はアンカーボルト5で基礎6に固定されており、全体が側壁1aに埋め込まれている。また、受枠部3の長手方向の両端には、
図2に示すように排水溝1の幅方向に突出して受枠部端部3aが設けられている。
【0014】
図2及び
図3に示すように、受枠部3の水平面側には等間隔で3箇所に孔3bが開けられており、
図3に示すように、孔3bには上方に向かって突出する凸部3cが挿入され、溶接によって固定されている。凸部3cはブラケット7の一端側に設けられた孔7aに挿入されることにより、ブラケット7が受枠部3に着脱可能に係留されている。ブラッケット7は下方に向かって開口する断面コ字形状とされており、排水溝1の幅方向に向かって延在している。ブラケット7の他端は
図1に示すように受枠部3の方向に向かって開口する略立方体容器形状とされており、ブラケット7の下面7b側に長尺ボルト8が挿入されている。長尺ボルト8にはナット9とナット10とが下面7bを挟むように螺合されており、ナット10はブラケット7に固定されている。ブラケット7が水平となるように長尺ボルト8を調節した後、ナット9を締めつけることによって下面7bを固定し、ブラケット7のレベルを調節することができるようになっている。長尺ボルト8の真上の位置には開口7dが設けられており、ブラケットの上面7c側にはゴムシート11が張り付けられている。長尺ボルト8の下方先端は保護キャップ12が被せられている。長尺ボルト8、ナット9,10及び保護キャップ12から支持脚が構成されている。
【0015】
図1に示すように、グレーチング2には長手方向に等間隔で平行に並ぶベアリングバー2aが設けられており、ブラケット7に貼られたゴムシート11上に載置されている。凸部3cはベアリングバー2a間の隙間に挿入され、幅方向の移動を阻止する構造とされている。
【0016】
・施工方法
次に、実施例1のグレーチング用受枠を用いた施工方法について述べる。
まず、基礎6にアンカーボルト5を打ち込み、断面L字型の受枠部3と背中合わせに溶接された断面L字型の固定部材4をアンカーボルト5に固定する。そしてコンクリートを打設して排水溝1を形成する。排水溝1の養生が完了した後、ブラケット7の孔7aを受枠部3の凸部3cに挿入して排水溝1内に載置する。さらに、支持脚の長尺ボルト8をブラケット7のレベルが水平となるように調節し、ナット9をブラケット下面7bまで締め付けた後、長尺ボルト8を開口7dの上側から工具を用いて反時計回りに回すことによって、緩み止めを行う。そして、グレーチング2を受枠部3内に収容する。このとき、受枠部3の凸部3cはグレーチング2の隣接するベアリングバー2a間の隙間に挿入されるようにする。以上のようにして施工が完了する。
【0017】
実施例1のグレーチング用受枠を用いた排水溝では、グレーチング2を所定の場所に収めるための受枠部3が、排水溝1の一方の側壁1aの上端に長手方向に延在して固定されており、他方の側壁側には固定されていない。その代わりに、ブラケット7が長尺ボルト8、ナット9,10及び保護キャップ12からなる支持脚によって支持されている。このため、受枠部3を建物側で固定する必要がなく施工が極めて容易となる。また、建具201とグレーチング2との間に受枠が存在しないため、グレーチング2を建物側にほぼ密接状態にさせることが可能となる。このため、外観がすっきりとして意匠性に優れることとなる。さらに、グレーチング2と建物との間にほとんど隙間を設ける必要がないため、隙間にシーリング剤等を充填する必要もない。また、支持脚(長尺ボルト8、ナット9,10及び保護キャップ12)が高さ調節可能とされているため、グレーチング2のレベル面の調節を容易に行うことができる。さらに
、受枠部3の長手方向両端には、排水溝1の幅方向に向かって延在する受枠部端部3aが設けられているため、グレーチング2が長手方向に移動することを阻止することができる。また、受枠部3には上方に向かって突出する凸部3cが設けられており、ブラケット7には孔7aが設けられているため、ブラケット7の着脱が極めて簡単に行うことができ、施工が容易となり、施工時間も短くできる。また、グレーチング2を外せばブラケット7を簡単には取り外すことができるため、排水溝1における清掃等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。さらには、凸部3cは孔7aを貫通し、さらに上方に突出してグレーチング2の隙間に挿入可能とされているため、グレーチング2が排水溝1の幅方向に移動することを防止できる。
【0018】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のグレーチング用受枠は、建物とグレーチングとの間に受枠が存在することなく密接させることが可能であり、外観がすっきりとして意匠性に優れ、施工が容易なため、建物に近接してグレーチングを設ける場合において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
1…排水溝(1a…側壁)
2…グレーチング(2a…ベアリングバー)
3…受枠部(3a…受枠部端部、3b…孔、3c…凸部)
4…固定部材、5…アンカーボルト、6…基礎
7…ブラケット(7a…孔、7b…下面、7c…上面、7d…開口)
8…長尺ボルト
9,10…ナット
11…ゴムシート、12…保護キャップ、201…建具