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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】スライス装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20230925BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20230925BHJP
   A22C 17/00 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B26D3/28 610G
B26D7/18 D
B26D3/28 610F
A22C17/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021127250
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022395
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博志
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋輝
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527451(JP,A)
【文献】特開2009-269141(JP,A)
【文献】国際公開第2020/233913(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0042757(US,A1)
【文献】特開平08-118288(JP,A)
【文献】特開2021-59416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 7/18
A22C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列された複数の柱状の食品原木を、原木移送機構を用いて、当該食品原木の軸方向に間欠的に移送する原木移送ステーションと、
前記原木移送機構によって間欠移送された複数の食品原木を、円板状の刃部を有する切断刃を、自転させながら公転させることによってスライスするスライスステーションと、
前記切断刃でスライスされたスライス片を受け止めると共に、当該スライス片を整列させて、複数枚のスライス片が重畳したスライス食品を作製する整列用コンベア、および当該整列用コンベアで作製された未包装のスライス食品を受け取り、下流に設置された包装機に向けて搬送する搬送用コンベアを含む搬送ステーションと、
前記原木移送機構、切断刃、整列用コンベアおよび搬送用コンベアの動作を制御するコントローラと、を備え、
前記整列用コンベアは、前記複数の食品原木の配列方向と平行な方向に分割された2以上の小コンベアで構成され、
前記スライスステーションは、前記切断刃によってスライスされたスライス片が、隣接する2つの前記小コンベア間に跨った状態で受け止められるように設けられ
前記搬送ステーションは、前記スライス片が跨るように受けられる2つの前記小コンベアの排出側端部で、前記スライス片が巻き込まれることを防止するバーが、前記2つの小コンベア間に設けられていることを特徴とするスライス装置。
【請求項2】
前記2以上の小コンベアは、前記切断刃の公転に合わせ、かつタイミングをずらして駆動される、請求項1に記載のスライス装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスライスステーションにおいて、前記円板状の刃部を有する切断刃の代わりに、インボリュート曲線もしくはそれに近似した曲線に沿った形状の刃部を有する勾玉型の切断刃を用い、当該切断刃を、軸を中心に回転させることにより前記食品原木をスライスすることを特徴とするスライス装置。
【請求項4】
前記2以上の小コンベアは、前記切断刃の回転に合わせ、かつタイミングをずらして駆動される、請求項3に記載のスライス装置。
【請求項5】
前記整列用コンベアは2台の小コンベアで構成され、当該2台の小コンベアは、それぞれ2本の前記食品原木からスライスされたスライス片を受け止める、請求項2または4に記載のスライス装置。
【請求項6】
前記小コンベアで作製されるスライス食品は、小コンベア毎に食品原木の種類が異なる、請求項2または4に記載のスライス装置。
【請求項7】
前記小コンベアで作製されるスライス食品は、小コンベア毎に重畳されるスライス片の数が異なる、請求項2または4に記載のスライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハム等の食品原木をスライスし、かつスライス片が重畳された食品を作製するスライス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スライスされた複数枚のハムを包装用フィルムで包装してスライス商品を作製する場合、1~2mの柱状のハム原木を一定の厚さでスライスし、スライス片を所定枚数重ねた後、コンベアに送り出す。
【0003】
コンベアに送り出された未包装のスライス食品は包装機まで搬送され、包装用フィルムのポケットに投入された後、更にカバーフィルムで密閉されて商品の形態となる。
【0004】
上述の工程によってスライス商品を生産する際、近年では、生産性を高めるために複数本(例えば4本)のハム原木を、1枚の円板状の切断刃を用いて切断している。
【0005】
その際、スライスされたハム間のピッチと、包装用フィルムに形成されたポケットのピッチが異なり、またスライスの状態によってハムが落下する位置が微妙にずれるため、コンベアに載置されたスライス食品を、そのまま包装機に搬送した場合、スライス食品がポケットにうまく投入できない。
【0006】
そのため、スライス装置では、スライスハムがポケットに正確に投入されるように、コンベア上でスライス食品の位置を搬送方向と直交する方向にずらし、整列させた後に包装機まで搬送している(特許文献1参照)。
【0007】
従来のスライス装置では、スライス食品をコンベア上に整列させる前処理として、複数本の食品原木からスライスされたスライス片を、整列用のコンベアで受け止めると共に、その上でスライス片を重畳させている。
【0008】
そして、整列用コンベア上に、スライス片が複数枚重畳された状態のスライス食品を、食品原木の数に応じて作製した後、それらスライス食品を搬送用のコンベアに移載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2020-11744号公報
【文献】特開2005-230959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のスライス装置では、整列用コンベア上でスライス片が重畳されてスライス食品が作製された後、一旦、食品原木の移送を止め、スライス食品を整列用コンベアから搬送用コンベアへ移載して、整列用コンベア上を空けた後、食品原木の移送とスライスを再開している。従って、スライス食品の移載が完了するまでの間、原木のスライスを停止させる必要がある。
【0011】
一方、切断刃は複数本の食品原木を同時にスライスするのではなく、自転する切断刃を公転させ、食品原木の間を移動しながらスライスし、かつ原木の移送に同期してスライス動作を繰り返す。
【0012】
そしてスライス食品を整列用コンベアから搬送用コンベアへ移載する際には、原木の移送を止め、原木がない状態で切断刃を移動させるが、その間、スライス片の作製が中断するため、スライス食品の生産効率が低下する。そして効率低下の割合は、原木の数が多くなって切断刃の移動に時間がかかる程大きくなる。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、整列用コンベアから搬送用コンベアへのスライス食品の移載中においても、原木のスライスを継続して行うことができるスライス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライス装置は、
平行に配列された複数の柱状の食品原木を、原木移送機構を用いて、当該食品原木の軸方向に間欠的に移送する原木移送ステーションと、
前記原木移送機構によって間欠移送された複数の食品原木を、円板状の刃部を有する切断刃を、自転させながら公転させることによってスライスするスライスステーションと、
前記切断刃でスライスされたスライス片を受け止めると共に、当該スライス片を整列させて、複数枚のスライス片が重畳したスライス食品を作製する整列用コンベア、および当該整列用コンベアで作製された未包装のスライス食品を受け取り、下流に設置された包装機に向けて搬送する搬送用コンベアを含む搬送ステーションと、
前記原木移送機構、切断刃、整列用コンベアおよび搬送用コンベアの動作を制御するコントローラと、を備え、
前記整列用コンベアは、前記複数の食品原木の配列方向と平行な方向に分割された2以上の小コンベアで構成され、
前記スライスステーションは、前記切断刃によってスライスされたスライス片が、隣接する2つの前記小コンベア間に跨った状態で受け止められるように設けられ
前記搬送ステーションは、前記スライス片が跨るように受けられる2つの前記小コンベアの排出側端部で、前記スライス片が巻き込まれることを防止するバーが、前記2つの小コンベア間に設けられていることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記2以上の小コンベアは、前記切断刃の公転に合わせ、かつタイミングをずらして駆動されることが好ましい。
【0016】
もしくは本発明に係るスライス装置は、前記スライスステーションにおいて、前記円板状の刃部を有する切断刃の代わりに、インボリュート曲線もしくはそれに近似した曲線に沿った形状の刃部を有する勾玉型の切断刃を用い、当該切断刃を、軸を中心に回転させることにより前記食品原木をスライスすることを特徴とする。
【0017】
ここで、前記2以上の小コンベアは、前記切断刃の回転に合わせ、かつタイミングをずらして駆動されることが好ましい。
【0018】
また前記整列用コンベアは2台の小コンベアで構成され、当該2台の小コンベアは、それぞれ2本の前記食品原木からスライスされたスライス片を受け止めることが好ましい。
【0019】
前記小コンベアで作製されるスライス食品は、小コンベア毎に食品原木の種類が異なるものであってもよい。もしくは、前記小コンベアで作製されるスライス食品は、小コンベア毎に重畳されるスライス片の数が異なるものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るスライス装置においては、整列用コンベアを2つ以上に分割し、それぞれのコンベアを、タイミングをずらして駆動することで、整列用コンベアから搬送用コンベアへのスライス食品の移載中であっても、原木のスライスを継続して行うことができるため、スライス食品の生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係るスライス装置の全体構成を示す正面図である。
図2】同スライス装置の原木移送ステーションの平面図である。
図3】同スライス装置の円板状の切断刃と4本の原木を、原木移送方向の下流側から見た図であり、(a)~(d)はスライス動作を示す。
図4】同スライス装置の整列ステーションの基本的な構成を示す平面図である。
図5】同スライス装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図6】従来のスライス装置の整列用コンベアおよび搬送用コンベアの構成を示す平面図である。
図7】従来のスライス装置におけるスライス食品作製の手順を示す図である。
図8】実施の形態1に係るスライス装置の整列用コンベアおよび搬送用コンベアの構成を示す平面図である。
図9】同スライス装置におけるスライス食品作製の手順を示す図である。
図10】スライスステーションにおいて勾玉型の切断刃を用いた場合の形状とスライス動作を説明する図である。
図11】実施の形態2に係るスライス装置におけるスライス食品作製の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係るスライス装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
(実施の形態1)
<スライス装置の構成と機能>
図1に、食品原木Wを所定の幅でスライスする本実施の形態に係るスライス装置の全体構成を示す。スライス装置1は、食品原木Wをスライスした後、それを重畳してスライス食品Sを作製するものである。
【0024】
図1に示すように、スライス装置1は、ベース10上に設置された原木移送ステーション2、スライスステーション3および整列ステーション4で構成されている。本実施の形態で用いるスライス装置1は、4本の食品原木W(以降、「原木W」と略す。)を同時にスライスする機能を備えている。以下、原木移送ステーション2、スライスステーション3および整列ステーション4の順に、それぞれの構成と各部の機能を説明する。
【0025】
図2は、原木移送ステーション2を上方から見た図である。原木移送ステーション2は、ガイド部20と、その上に設置され、4本の原木Wを、当該原木の軸方向に間欠的に移送する原木移送機構21とで構成されている。
【0026】
このうち原木移送機構21は、4本の原木Wのそれぞれを移送する第1移送手段22A~22Dと、4台の第1移送手段22A~22Dをまとめて移送する第2移送手段23とで構成されている。
【0027】
一方、ガイド部20は、支柱11および12によってベース10上に傾斜して設置され、当該ガイド部20には、円柱状の4本の原木Wのそれぞれを収容する、断面が船底状の4本の支持レーン201が形成されている。
【0028】
第1移送手段22A~22D、およびそれぞれの先端に取り付けられたグリッパ24の構成と機能を説明する。なお、第1移送手段22A~22Dの構成と機能は変わらないため、以後、第1移送手段22Aについて説明する。
【0029】
第1移送手段22Aの筐体220から突き出たロッド221は、筐体220内に収容されたリニアアクチュエータによって前進および後退が可能である。ロッド221は金属製の棒で作製され、内部には、グリッパ24に内蔵されたエアーシリンダにエアーを供給する空気孔が軸方向に形成されている。
【0030】
ロッド221は、エアー供給用のコネクタ(図示せず)を介してグリッパ24と連結され、ロッド221の空気孔を介して筐体220側から供給されたエアーは、グリッパ24内のエアーシリンダに供給される。
【0031】
図示しないが、グリッパ24の前部には、対向する2対のツメが直交する状態で配置されており、内部に収容されたエアーシリンダを駆動することで爪を旋回させ、原木Wの後端部を把持する。第1移動手段22Aは、その状態において、後述するコントローラ5によって筐体220内のリニアアクチュエータを駆動してロッド221を前進または後退させる。
【0032】
一方、第2移送手段23は、図2に示すように、ガイド部20の両側部に設置されたボールねじ231とリニアガイド232、およびこれらを跨ぐように設置された平板状のテーブル233で構成されている。テーブル233は、ボールねじ231のナット(図示せず)と連結されており、モータ234によってボールねじ231が回転すると、テーブル233が切断刃31に向けて(図2の紙面に向かって左側)移動する。
【0033】
4台の第1移送手段22A~22Dは、テーブル233の下面に取付部材(図示せず)を介して固定されており、テーブル233が切断刃31に向けて移送されると、第1移送手段22A~22Dも、テーブル233と一体となって移送される。
【0034】
第2移送手段23に対して第1移送手段22A~22Dの位置を調節できるようにした理由は、原木Wの長さの違いを吸収するためである。第1移送手段22A~22Dがない場合、原木Wの長さの違いを吸収できない。
【0035】
具体的に説明すると、原木Wのスライスを開始する際、第2移送手段23に対する第1移送手段22A~22Dの位置を調節して、スライスされる4本の原木Wの先端位置を一致させる。その後、第2移送手段23を間欠的に前進させながら、切断刃31によるスライスを繰り返せば、原木を無駄なくスライスできる。第2移送手段23の移送量、すなわちスライス片の厚みは、後述するコントローラ5(図5参照)によって調節が可能である。
【0036】
次に、前述の図1および新たな図3を参照して、スライスステーション3の構成と機能を説明する。図1において、支柱12に支持されたスライスステーション3は、原木Wをスライスする円板状の切断刃31、および切断刃31を自転させながら公転させる切断刃駆動部材32を備えている。
【0037】
切断刃駆動部材32を用いて、切断刃31を自転させながら公転させることにより、支持レーン201上を移送されてきた原木Wは一定の厚さにスライスされる。そのため、切断刃31の回転軸33は、回転板34の一端に、切断刃駆動部材32の回転軸より所定距離離した状態で、回転自在に支承されている。
【0038】
図3は、円板状の切断刃31と4本の原木Wを、原木移送方向の下流側から見た図で、(a)~(d)は、切断刃31による一連のスライス動作を示している。図中、原木Wの断面に斜線を施した箇所は、スライスされた部分を示す。
【0039】
円板状の切断刃31は、軸33回りに自転しながら、回転板34の軸Oを中心に、矢印で示す方向に円を描きながら公転する。図3(a)に示すように、原木Wを間欠的に移送させる時点では、切断刃31は、4本の原木Wの上方に位置し、原木Wの移送を妨げない。
【0040】
図3(b)に示すように、切断刃31の公転が進むと、左端の原木Wからスライスを開始し、図3(c)に示すように、公転が進むにつれて右側の原木のスライスに移行し、図3(d)に示した時点で、4本の原木Wのスライスを完了する。その後、図3(a)に示す位置に移動し、原木Wの次の移送を待つ。
【0041】
原木Wの間欠的な移送に同期して、上述の動作を繰り返すことにより、スライス片が連続して作製される。後述するように、切断刃31でスライスされた食品が落下する位置には、スライス片を重畳した状態で受け止めると共に、それを下流の包装機(図示せず)まで搬送する整列ステーション4が設置されている。
【0042】
図4に、整列ステーション4の基本的な構成を示す。図中、矢印はスライス食品Sの搬送方向を示している。図4を参照して、原木Wがスライスされてから、包装機に配置された包装用フィルムのポケットに投入されるまでの手順を簡単に説明する。
【0043】
整列ステーション4は、整列用コンベア41、搬送用コンベア42および位置調整用コンベア43で構成されている。前述したように1~2mの円柱状の原木Wを4本用意し、原木移送機構21を用いて原木Wを間欠的に移送すると、原木Wが先端から順次所定の厚さでスライスされ、円形のスライス片が作製される。
【0044】
原木Wは、原木移送機構21(図2参照)によって左側に移送される。原木Wは、紙面に向って右側が上、左側が下になるように傾斜しており、切断刃31によってスライスされたスライス片は、整列用コンベア41上に落下する。
【0045】
整列用コンベア41を静止させた状態でスライスを繰り返せば、コンベア上に複数枚のスライス片が重なった状態で積層される。一方、整列用コンベア41を若干移動させながらスライスを繰り返すと、コンベア上にスライス片がずらした状態で積層される。スライス片をいずれの形態で整列させるかは、包装用フィルムへの実装状態にあわせて決定される。
【0046】
整列用コンベア41上に積層された未包装のスライス食品Sは、次のスライスに備えてコンベア上を空けるため、搬送用コンベア42に移載される。整列用コンベア41と搬送用コンベア42の搬送速度は等しく、かつ隣接して設置され、搬送面の高さがほぼ等しいため、スライス食品Sの円滑な移載が可能である。
【0047】
スライス食品Sは、更に、搬送方向と直交する方向の位置を調整するため、位置調整用コンベア43に移載される。下流に設置された包装機(図示せず)において、スライス食品Sは搬送方向と直交する方向に4列並んだ状態で包装される。そのため、包装用フィルムには、搬送方向と直交する方向にスライス食品Sを収納する4列のポケットが、均等な位置にピッチP2で形成されている。
【0048】
スライス装置1で4本の原木Wをスライスする際には、単一の切断刃31を用いて4本の原木Wを切断する制約上、整列用コンベア41に落下し、整列した4枚のスライス食品間のピッチP1は、フィルムに形成されたポケットのピッチP2より狭い。このため、位置調整用コンベア43で、スライス食品S間のピッチを拡げると共に、フィルムのポケットの位置と一致させる必要がある。
【0049】
本実施の形態では、位置調整用コンベア43を、搬送方向と直交する方向に分割された4台の小コンベアで構成し、小コンベアで搬送する間に、スライス食品Sの各位置を、搬送方向と直交する方向にずらして、フィルムのポケットの位置と一致させている。
【0050】
このようにしてスライス装置1で作製された4個のスライス食品Sは、コンベア7に移載されて包装機(図示せず)まで搬送された後、それぞれ、包装用フィルムの4つのポケットに投入され、その後、カバーフィルムで密閉される。
【0051】
図5に、スライス装置1の制御系の構成を示す。コントローラ5は、CPU、ROM、RAMおよび不揮発性メモリで構成され、原木移送機構21、切断刃31、および整列ステーション4の各コンベアの動作は、コントローラ5のメモリに格納されたプログラムによって制御される。
【0052】
図5に示すように、コントローラ5は、各ステーションに設置された位置センサ61や回転センサ62の出力信号に基づいて、各ステーションを駆動するモータ63やアクチュエータ64の動作タイミングを調節して、上述した一連の動作を実現する。モータ63には、前述した第2移送手段23のモータ234も含まれる。
【0053】
<整列用コンベア/搬送用コンベアの構成とスライス食品作製の手順>
次に、図6図9を参照して、本実施の形態における整列用コンベアおよび搬送用コンベアの構成と、それを用いたスライス食品作製の手順を、従来のそれらと比較しながら説明する。
【0054】
図6に従来の整列用コンベア81と搬送用コンベア82の構成を示す。整列用コンベア81は、平板状で下方が開放されたフレーム811の前部および後部に取り付けられた一対のプーリ812および813に、平ベルト814が捲回されて構成されている。プーリ813の一方の端にはベルト815が捲回され、図示しないモータ63の回転をプーリ813に伝達する。
【0055】
平ベルト814は5つに分割されているが、これは、フレーム811の後部のベルト間にバー816を取り付けるためである。バー816は、スライス食品Sを整列用コンベア81から搬送用コンベア82に引き渡すときに、スライス食品Sがコンベア間に巻き込まれることを防止している。
【0056】
すなわち、スライス食品Sは、粘着力によって一部が平ベルト814に貼り付いた状態で搬送されるため、そのままではコンベア81と82の間に巻き込まれる。平ベルト814によってプーリ813上まで搬送されたスライス食品Sは、水平方向に張り出したバー816によって平ベルト81から剥された後、次段の搬送用コンベア82に引き渡さわる。
【0057】
搬送用コンベア82の構成は、平ベルトの長さこそ異なるが、基本的に整列用コンベア82と同じであり、平板状で下方が開放されたフレーム821の前部および後部に取り付けられた一対のプーリ822および823に、平ベルト824が捲回されて構成されている。またプーリ823の一方の端にはベルト825が捲回され、図示しないモータ63の回転をプーリ823に伝達する。
【0058】
また整列用コンベア81と同様に、平ベルト824は5つに分割され、分割された平ベルト824間のフレーム821には、バー826が水平方向に張り出すように取り付けられ、スライス食品Sを下流側のコンベア7に移載する際に、コンベア間に巻き込まれるのを防止している。
【0059】
次に、図6に示した整列用コンベア81を用いた、従来のスライス装置におけるスライス食品作製の手順について説明する。
【0060】
図7に、従来のスライス装置におけるスライス食品作製の手順を示す。図中、原木移送の〇印は間欠移送を示す。同様に、スライスの〇印は1回分のスライスを示し、移載の〇印は、整列用コンベア81から搬送用コンベア82へのスライス食品Sの移載を示す。
【0061】
図7に基づいてスライス食品作製の手順を説明すると、原木移送機構21によって4本の原木Wがスライス片の厚さ分、間欠移送された後、切断刃31が回転しながら公転して、4本の原木Wがスライスされ、図6に示すように、4枚のスライス片が整列用コンベア上に落下して受け止められる。
【0062】
本実施の形態では、スライス片を4枚重畳したスライス食品Sを作製するため、上述した原木Wの移送とスライスを4回繰り返す。
【0063】
上述の処理により、整列用コンベア81上にスライス片が4枚重畳されたスライス食品Sを作製した後、スライス食品Sを整列用コンベア41から搬送用コンベア42に移載する。
【0064】
この際、搬送用コンベア42へのスライス食品Sの移載が完了するまで、整列用コンベア81上を空けておくため、原木Wの間欠移送を止め(図7に「×」で表示)、原木がない状態で切断刃31を1回公転させる(図7に「-」で表示)。
【0065】
このように従来のスライス装置では、スライス食品Sを整列用コンベア81から搬送用コンベア82へ移載する際、一旦、原木の移送とスライスを止めざるを得なかったため、スライス食品の生産効率を低下させていた。
【0066】
次に、図8を参照して、本実施の形態に係る整列用コンベア41および搬送用コンベア42の構成を説明する。
【0067】
搬送用コンベア42の構成は、従来の整列ステーションの搬送用コンベア82と同じである。すなわち、平板状で下方が開放されたフレーム421の前部および後部に取り付けられた一対のプーリ422および423に、平ベルト424が捲回されて構成されている。またプーリ423の一方の端にはベルト425が捲回され、図示しないモータ63の回転をプーリ423に伝達する。
【0068】
搬送用コンベア82と同様に、平ベルト424は5つに分割され、分割された平ベルト424間のフレーム421には、バー426が取り付けられ、スライス食品Sを下流側のコンベア7に移載する際に、コンベア間に巻き込まれるのを防止している。
【0069】
一方、整列用コンベア41については、従来の整列用コンベア81と構成が異なっている。整列用コンベア41は、原木が配列された方向と平行な方向に分割された2台の小コンベア41aおよび41bで構成され、それぞれのコンベアは、タイミングをずらして駆動できるように構成されている。以降、小コンベア41aおよび41bを総称して「整列用コンベア41」とも云う。
【0070】
図8を参照して整列用コンベア41の構成を説明する。上述したように、整列用コンベア41は、2台の小コンベア41aおよび41bで構成されているが、それぞれのコンベアの構成は、従来の整列用コンベア81の構成と基本的に変わりがない。
【0071】
すなわち、小コンベア41aは、平板状で下方が開放されたフレーム411aの前部および後部に取り付けられた一対のプーリ412aおよび413aに、平ベルト414aが捲回されて構成されている。またプーリ413aの一方の端にはベルト415aが捲回され、図示しないモータ63の回転をプーリ413aに伝達する。
【0072】
また平ベルト414aは3つに分割され、分割された平ベルト414a間のフレーム411aには、バー416aが取り付けられ、スライス食品Sを下流側のコンベア42に移載する際に、コンベア間に巻き込まれるのを防止している。
【0073】
小コンベア41bも小コンベア41aと同一の構成を備えており、添え字をaからbに変えた以外、それぞれの部材の構成と機能に変わりはない。ただし、小コンベア41aと小コンベア41bは、ベルト415aと415bが、別々のモータ63に接続されており、コントローラ5によって異なるタイミングで個別に駆動される。
【0074】
図8に示した整列用コンベア41を用いた、本実施の形態におけるスライス食品作製の手順について説明する。
【0075】
上述したように、本実施の形態における整列用コンベア41は2つに分割されており、下流側から見て左側の小コンベア41aは、左側の2本の原木に基づくスライス食品の作製に用いられ、右側の小コンベア41bは、右側の2本の原木に基づくスライス食品Sの作製に用いられる。
【0076】
前述の図3(b)(c)に示したように、4枚目のスライス片のスライスにおいて、切断刃31の公転が進んで左側2本の原木のスライスが終了した時点では、左側の小コンベア41a上へのスライス片の重畳が終了しているため、小コンベア41aについては、搬送用コンベア42へのスライス食品の移載を開始できる。従って、この時点で搬送用コンベア42への移載が行われる。
【0077】
一方、図3(c)に示したように、その時点では、右側の2本の原木のスライスが終了していないため、右側の小コンベア41bからコンベア42へのスライス食品の移載はできない。
【0078】
これに対し、図3(d)に示したように、切断刃31の公転が進んで右側2本の原木のスライスが終了した時点では、4枚のスライス片の重畳が終了しているため、右側の小コンベア41bについても、搬送用コンベア42への移載が行われる。
【0079】
その後、図3(a)に示したように、切断刃31の公転が進んでスライスが行われない、いわゆる空運転を行っている間に、4本の原木Wの間欠移送が行われ、原木Wのスライスが再開される。
【0080】
その際、右側の小コンベア41aから搬送用コンベア42への移載と4本の原木Wの間欠移送は、分離した状態で行われるため、右側の小コンベア41bから搬送用コンベア42へのスライス食品Sの移載と原木Wの間欠移送を並行して行うことによって、スライス食品作製の時間を短縮できる。
【0081】
図9に、上述したスライス商品Sの作製における原木移送、スライスおよび整列用コンベアから搬送用コンベアへの移載の手順を示す。図9図7とを比較して分かるように、本実施の形態に係るスライス装置1では、原木移送とスライスが、スライス食品の移載と並行して、かつ途切れることなく行われるため、従来の装置に比較して、スライス食品の生産効率を高めることができる。
【0082】
更に、本発明に係るスライス装置1を用いれば、整列用コンベアを3つ以上に分割することで、より多くの原木をスライスしながら、スライス食品Sを作製することが可能である。
【0083】
この場合、3台以上のコンベアを切断刃の公転と合わせ、かつタイミングをずらしながら駆動することにより、図9に示した手順と同様の手順でスライス食品Sを作製することができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、円板状の刃部を有する切断刃を自転させながら公転させることにより原木をスライスしたが、特許文献2に記載されたような勾玉型の切断刃を回転させることによって原木をスライスしてもよい。
【0085】
図10を参照して、勾玉型の切断刃の形状と動作を説明する。図10は、勾玉型の切断刃35と4本の原木Wを、原木移送方向の下流側から見た図で、(a)~(d)は切断刃による一連のスライス動作を示している。図中、矢印は切断刃35の回転方向を示している。また原木Wの断面に斜線を施した箇所は、スライスされた部分を示している。
【0086】
勾玉型の切断刃35は、外周部に、インボリュート曲線もしくはそれに近似した曲線に沿った形状の刃部が形成されたもので、軸Oを中心に回転することにより、4本の原木Wを連続してスライスすることができる。勾玉型の切断刃35は、円板状の切断刃を回転させる場合に比較し、切れ味が良いことから、食肉や魚肉をスライスする手段として広く用いられている。
【0087】
切断刃35は軸Oを中心に回転し、図10(a)に示す状態において原木Wが間欠移送され、切断刃35の回転が進むと、左端の原木Wからスライスを開始し、図10(b)(c)に示すように、回転が進むにつれて右側の原木のスライスに移行し、図10(d)に示した時点で、4本の原木Wのスライスを完了する。その後、図10(a)に示す位置に移動し、原木Wの次の移送を待つ。
【0088】
前述の図8に示したように、4本の原木Wの下方には、整列用コンベア41を構成する2台の小コンベア41a、41bが設置されている。図10(c)に示したように、左側2本の原木のスライスが終了した時点で、左側の小コンベア41a上への4枚のスライス片の重畳が完了した場合、小コンベア41aについて、搬送用コンベア42へのスライス食品の移載を開始する。
【0089】
その後、図10(d)に示したように、切断刃35の回転が進んで右側2本の原木のスライスが終了した時点で、4枚のスライス片の重畳が完了した場合、右側の小コンベア41bについて、搬送用コンベア42への移載が行われる。
【0090】
上述した勾玉型の切断刃35は、円板状の切断刃31を自転させながら公転させる場合に比較して駆動機構が簡単であり、またスライスの高速化が比較的容易である。その反面、切断刃の外径が大きくなり、かつ刃部の研磨に手間と時間がかかるため、メンテナンス面で劣っている。いずれの切断刃を採用するかは、それぞれのメリット/デメリットを比較考量して決定すればよい。
【0091】
(実施の形態2)
実施の形態1では、スライス食品の生産効率を高めることを目的として、整列用コンベア41を、原木の配列方向と平行な方向に2つに分割し、分割された2台の小コンベア41a、41bを、タイミングをずらして駆動した。
【0092】
これに対し、本実施の形態では、分割された2台の小コンベア41a、41bを、異なるスライス食品を混在して作製するために用いている。図11に、本実施の形態における原木移送、スライスおよびスライス食品の移載の手順を示す。
【0093】
実施の形態1と同様に、本実施の形態でも4本の原木を連続してスライスするが、左側の2本の原木と右側の2本の原木は種類が異なり、更に、重畳するスライス片の数も異なっている。
【0094】
すなわち、本実施の形態では、例えばロースハムのスライス食品(スライス片の数3枚)とボンレスハムのスライス食品(スライス片の数4枚)を混在する状態で作製している。
【0095】
図11に、その際の手順を示す。前述の図9に示した手順とは、重畳されるスライス片の数が変わるだけであり、原木移送とスライスを中断することなく、スライス食品の移載を行える点については、変わりがない。
【0096】
このように、本発明に係るスライス装置を用いれば、異なる種類の原木を混在させた状態で、かつそれぞれに含まれるスライス片の数を変えたスライス食品を作製できるため、単一のスライス装置を用いて作製できるスライス食品の範囲が広がる。当然のことながら、その場合、包装機において、ポケットの形状が異なる2種類の包装用フィルムを用意する必要がある。
【符号の説明】
【0097】
S スライス食品
W 原木
1 スライス装置
2 原木移送ステーション
3 スライスステーション
4 整列ステーション
5 コントローラ
7、41a、41b コンベア
10 ベース
11、12 支柱
21 原木移送機構
22 第1移送手段
23 第2移送手段
24 グリッパ
31、35 切断刃
32 切断刃駆動部材
33 軸
34 回転板
41、整列用コンベア
41a、41b 小コンベア
42 搬送用コンベア
43 位置調整用コンベア
220 筐体
221 ロッド
231 ボールネジ
232 リニアガイド
233 テーブル
411a、411b、421 シャーシ
412a、412b、413a、413b、422、423 プーリ
414a、414b、424 平ベルト
416、426 バー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11