(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】バイオアナライザー検証用標準材料組成物、及びそれを用いた標準ストリップ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/78 20060101AFI20230925BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230925BHJP
C09K 11/88 20060101ALN20230925BHJP
【FI】
G01N21/78 C
G01N21/64 Z
G01N21/78 A
C09K11/88
(21)【出願番号】P 2021556650
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 KR2020003800
(87)【国際公開番号】W WO2020190063
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0031876
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520111534
【氏名又は名称】バイオスクエア インコーポレイテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ホ ポム
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソン ウク
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-003989(JP,A)
【文献】特表2019-502907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372639(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0030601(US,A1)
【文献】特表2017-526907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0017987(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0160134(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157726(US,A1)
【文献】国際公開第2011/008064(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0123189(KR,A)
【文献】特表2011-516895(JP,A)
【文献】特開2012-137490(JP,A)
【文献】特表2019-502942(JP,A)
【文献】特開平10-082733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243189(US,A1)
【文献】BONG-HYUN JUN ET AL,Ultrasensitive, Biocompatible, Quantum-Dot-Embedded Silica Nanoparticles for Bioimaging,ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS,2012年05月09日,vol.22, no. 9,1843 - 1849,doi:10.1002/adfm.201102930
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/83
C09K 11/00 - C09K 11/89
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部、前記コア部の表面に結合した量子ドット部、及び前記コア部及び前記量子ドット部を保護するためのシェル部を含む量子ドット含有ナノ粒子を含み、前記コア部の直径が80~1,000nmであ
り、前記量子ドット部に含まれる量子ドットは、量子ドットがオレイン酸でコーティングされた構造を含む、バイオ分析装置検証用標準材料組成物。
【請求項2】
前記量子ドット部が、複数の量子ドット埋め込み層を含む、請求項1に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物。
【請求項3】
前記シェル部が、複数のシリカシェル層を含む、請求項1に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物。
【請求項4】
前記量子ドット含有ナノ粒子が、前記コア部と前記シェル部との結合を支持する支持部をさらに含む、請求項1に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される発光線を1つ又は複数含む、標準ストリップ。
【請求項6】
前記発光線を複数備え、複数の発光線の間で量子ドットの濃度が異なっている、請求項5に記載の標準ストリップ。
【請求項7】
前記発光線を複数備え、複数の発光線の間で蛍光信号強度が異なっている、請求項5に記載の標準ストリップ。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される発光部を含む、標準トレイ。
【請求項9】
請求項1に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される発光部を含む標準トレイに光源を照射するステップ;
照射光源により発光部から発せられる蛍光強度値が、バイオ分析装置の光学部に入力された標準蛍光強度値の範囲内であるか否かを判定するステップ;及び
前記判定により、前記蛍光強度値が前記標準蛍光強度値の範囲内となるように、光学部に入力された標準蛍光強度値の範囲に対して第一の校正を行うステップ、
を含む、バイオ分析装置の検証方法。
【請求項10】
請求項1に記載のバイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される発光線を1つ又は複数含む標準ストリップによって、光学部に入力された標準蛍光強度値に対して第二の校正を行うステップ、をさらに含む、請求項9に記載のバイオ分析装置の検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ分析装置の分析精度を検証する(verifying)(校正する(correcting))ことが可能な標準材料組成物、及びそれを用いた標準ストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
物体によって伝達、反射、又は屈折する放射エネルギーを波長の関数として測定する光学的検出法は、使いやすく、正確で、小型、或いは携帯性があり、さらに、低価格で様々な反応に対して用いることができるという長所を有している。そのため、前記光学的検出法は、例えば化学、物理学、生化学、免疫学、酵素学、分子生物学、食品学、等々といった様々な分野で適用されている。
【0003】
前記光学的検出法の一例は、光学的部分を備えたバイオ分析装置にラテラルフローストリップ又はマイクロ流体チップが適用されている検出(分析)法を含みうる。
【0004】
しかしながら、分析装置の生産においては、各分析装置に組み込まれるハードウエアの構成を同じに設計しても、例えば部品の電磁的特性の偏差、及び各構成の結合における偏差といった様々な変数に起因して、生産される多数の分析装置において、理想的な蛍光信号に関して同じデータが得られない、という問題がある。このことにより、蛍光強度測定による検出材料の定量的な診断及び分析の結果における分析精度(信頼性)が損なわれる。
【0005】
ゆえに、多数の分析装置によって検出がなされる際には、必要とする蛍光信号の強度を示す標準材料を参照試料(reference)として、分析装置の蛍光強度の偏差を校正する(correct)検証プロセス(verification process)が必要である。そのため、先行技術では、金、ラテックス、又は等々を混合したインク、或いは、例えばユーロピウム等の蛍光体(fluorescent substance)を標準材料として、分析装置の検証プロセスが実行されてきた。
【0006】
しかしながら、前記インクは、カラーダイアグラムに基づいた印刷プロセスを通じて標準材料として生産されるため、印刷プロセスが実行される際にはいつでも色表現の誤差が生じ、また外部に露出されたときに汚染されやすいので、その寿命は長くない、という問題を有する。さらに、前記蛍光体は、標準材料の生産プロセスの最中に光退色現象が生じることから、或いは、光、温度又は湿度の変化に対して敏感であることから、再現性に劣るという問題を有している。
【0007】
それゆえに、バイオ分析装置の分析精度を向上させるために、改善された標準材料の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、バイオ分析装置の分析精度を検証する(verify)(校正する(correct))バイオ分析装置検証(verifying)用標準材料組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、前記標準材料組成物から作製された標準ストリップを提供することである。
本発明のまた別の目的は、前記標準材料組成物から作製された標準トレイを提供することである。
本発明のまた別の目的は、前記標準ストリップ及び/又は前記標準トレイを用いるバイオ分析装置の検証方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、量子ドット含有ナノ粒子を含む、バイオ分析装置検証(verifying)用標準材料組成物を提供する。
【0010】
前記量子ドット含有ナノ粒子は、コア部、コア部の表面に結合する量子ドット部、並びにコア部及び量子ドット部を保護するためのシェル部、を含んでいてもよい。
【0011】
前記量子ドット部は、複数の量子ドット埋め込み層を含んでいてもよい。
前記シェル部は、複数のシリカシェル層を含んでいてもよい。
前記量子ドット含有ナノ粒子は、コア部とシェル部との結合を支持するための支持部をさらに含んでいてもよい。
【0012】
また、本発明は、バイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される、1つ又は複数の発光線を含む標準ストリップを提供する。
前記発光線は複数備わっていてもよく、量子ドットの濃度は、複数の発光線によって異なっていてもよい。
前記発光線は複数備わっていてもよく、蛍光の信号強度は、複数の発光線によって異なっていてもよい。
【0013】
さらに、本発明は、バイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される発光部を含む、標準トレイを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、バイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される発光部を含む標準トレイに光源を照射するステップ;照射光源により発光部から発せられる蛍光強度値が、バイオ分析装置の光学部に入力された標準蛍光強度値の範囲に入っているか否かを判定するステップ;及び、前記判定により、前記蛍光強度値が標準蛍光強度値の範囲に入るように、光学部に入力された標準蛍光強度値の範囲に対して第一の校正を行う(first correcting)ステップを含む、バイオ分析装置の検証方法を提供する。
【0015】
本発明のバイオ分析装置の検証方法は、バイオ分析装置検証用標準材料組成物で形成される1つ又は複数の発光線を有する標準ストリップによって、光学部に入力された標準蛍光強度値に対して第二の校正を行う(secondarily correcting)ステップ、をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、量子ドット含有ナノ粒子を含む標準材料組成物から作製される標準ストリップ及び/又は標準トレイを用いて、バイオ分析装置における光学部の校正を行うことにより、バイオ分析装置の分析精度が向上し得る。ゆえに、本発明は、信頼度の高いバイオ検出(分析)の結果をもたらすことに貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1~4は、本発明に係る量子ドット含有ナノ粒子の断面図である。
【
図2】
図1~4は、本発明に係る量子ドット含有ナノ粒子の断面図である。
【
図3】
図1~4は、本発明に係る量子ドット含有ナノ粒子の断面図である。
【
図4】
図1~4は、本発明に係る量子ドット含有ナノ粒子の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る標準ストリップの斜視図である。
【
図6】
図6及び
図7は、本発明に係る標準ストリップの作成プロセスを示すフローチャートである。
【
図7】
図6及び
図7は、本発明に係る標準ストリップの作成プロセスを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明に係る標準トレイの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る標準アセンブリの模式図である。
【
図10】
図10は、本発明に係るバイオ分析装置の検証のプロセスを説明するための参考図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る実験例1を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の明細書及び請求項で用いる用語及び単語は、従来の又は辞書的な意味に限定されると解釈されるのではなく、発明者は自身の発明を最良の方法で表現するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想と整合する意味又は概念であると解釈されるべきである。
【0019】
本発明は、光退色現象がほとんどなく、かつ光、温度、及び湿度の変化に敏感でない量子ドットをバイオ分析装置の検証(校正)用標準材料に導入することによって、バイオ分析装置の分析精度を上げつつ寿命が向上した標準材料を提供することを意図するものであり、詳細は図を参照して以下に示される。
【0020】
本発明は、量子ドット含有ナノ粒子を含むバイオ分析装置の検証用標準材料組成物(以下、「標準材料組成物」と称する)を提供する。本発明に係る前記標準材料組成物は、バイオ分析装置によってバイオ試料(生物学的試料)を検出(分析)する前に、前記バイオ分析装置が正確な検出値(分析値)を示すことができるように、前記バイオ分析装置を検証する(校正する)ために用いられる組成物、として定義されてもよい。
【0021】
本発明に係る前記標準材料組成物中に含まれる量子ドット含有ナノ粒子は、量子ドットを含む限りは特に限定されなくてもよい。すなわち、前記量子ドット含有ナノ粒子は、量子ドット粒子のみで構成されていてもよく、或いは、量子ドット粒子と他の成分とが組み合わさったものでもよい。ここにおいて、本発明における量子ドットは半導体であり、原子が球状層を約5~10層形成してその半径は通常10nm以下であって、そのサイズがある値以下になった場合にバルク状態の半導体材料中における電子の動特性がさらに限定されるために発光波長がバルク状態とは異なった値になる、量子閉じ込め効果を示す材料として定義されてもよい。この量子ドットは、励起光源からの光を受けることによってエネルギー励起状態に達した場合、対応するエネルギーバンドギャップに応じてエネルギーを自発的に発するという発光特性を示してもよい。
【0022】
本発明の量子ドット含有ナノ粒子は、特に、量子ドットそのものであってもよいし、或いは、
図1に示すようにコア部10、量子ドット部20、及びシェル部30を含む量子ドット含有ナノ粒子であってもよい。コア部10、量子ドット部20、及びシェル部30を含む前記量子ドット含有ナノ粒子については、以下に詳細を示す。
【0023】
本発明の量子ドット含有ナノ粒子に含まれるコア部10は、有機粒子又は無機粒子を含んでいてもよい。前記無機粒子は、具体的には、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、及び二酸化亜鉛からなる群から選ばれる1つ又は複数の成分からなるものでもよい。これらの無機粒子は高い安定性を有するので、それらがコア部10に適用される場合、量子ドット含有ナノ粒子のサイズは、コア部10のサイズと同様に、容易に制御でき、このことに起因して、様々な粒子サイズを有しながら光学特性(発光特性)にも優れた量子ドット含有ナノ粒子が得られうる。
【0024】
前記コア部10の直径は10~100,000nmであってもよく、特に、80~1,000nmであってもよい。コア部10の直径が上記範囲内にある場合、量子ドット含有ナノ粒子の取り扱い及び後処理を、容易に行いうる。
【0025】
本発明の量子ドット含有ナノ粒子に含まれる前記量子ドット部20は、コア部10の表面に結合しており、量子ドット含有ナノ粒子に光学特性を発揮させるものであってもよい。特に、前記量子ドット部20は、複数の量子ドットがコア部10の表面全体を包囲する構造(単一量子ドット埋め込み層)を有していてもよい。さらに、量子ドット部20に含まれる量子ドットは、シェル部30の成分であるシリカと架橋を形成していてもよく、量子ドットがランダムに又は均一にシェル部30の成分であるシリカと架橋結合している構造が現れてもよい。
【0026】
例えば、前記量子ドット部20の量子ドットが均一に分散して、両端に官能基を有する材料で修飾されるプロセスを経てコア部10の表面と結合してもよく、このことによって量子ドット部20が形成されてもよい。前記両端に官能基を有する材料は、具体的には、硫黄、窒素、及びリンからなる群から選ばれる1つ又は複数の原子を含む官能基が一端に結合し、シラン基、アミノ基、スルホン基、カルボキシ基、及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる1つ又は複数の官能基が他端に結合しているものであってもよい。特に、両端に官能基を有する材料は、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、又はメルカプトプロピルトリエトキシシランであってもよい。
【0027】
一方、量子ドット部20に含まれる量子ドットは、II-VI族半導体成分、III-V族半導体成分、又はIV-IV族半導体成分からなる単一コア構造を有していてもよく、或いは、単一コア上にII-IV族半導体成分をコーティングすることでコーティング層が形成された構造を有していてもよい。このことは、上記の量子ドット粒子に対して適用されてもよい。
【0028】
前記II-VI族半導体は、周期表のIIB族元素の少なくとも1つとVIB族元素の少なくとも1つとが結合しているものであってもよい。特に、前記II-VI族半導体は、CdS、CdSe、CdTe、ZnSe、ZnS、PbS、PbSe、HgS、HgSe、HgTe、CdHgTe、及びCdSexTe1-xからなる群から選ばれるものでもよい。前記III-V族半導体は、特に、GaAs、InAs、及びInPからなる群から選ばれるものでもよい。
【0029】
ここで、発光効率の点で、前記量子ドットは、単一コア構造よりむしろ、単一コア上にコーティング層が形成された構造を有するものがより好ましい。このことは、コーティング層が不働態化(パッシベーション)層として作用して単一コアを保護し、それによって前記量子ドットの安定性が向上することによる。特に、前記量子ドットとして、CdSe又はCdSの単一コア上にZnSのコーティング層が形成されているもの、或いはCdSeの単一コア構造上にCdSe又はZnSeのコーティング層が形成されているもの(1型量子ドット)、が用いられてもよい。
【0030】
さらに、前記量子ドットとして、単一コア構造又は単一コア構造上にコーティング層が形成された構造を有する量子ドット上に、疎水性有機化合物(例えばオレイン酸)がコーティングされた構造を有するものが用いられてもよい。
【0031】
これらの量子ドットの直径は、1~50nmでもよく、特に1~20nmでもよい。さらに、量子ドットが単一コア上にコーティング層が形成された構造を有する場合、単一コアの直径は、1~20nmでもよく、特に2~10nmでもよい。
【0032】
図2に示すように、量子ドットを含む量子ドット部20は、複数の量子ドット埋め込み層(量子ドットコーティング層)21、22、23を含んでいてもよい。特に、前記量子ドット部20は、コア部10の表面を包囲する第一量子ドット埋め込み層21、前記第一量子ドット埋め込み層21を包囲する第二量子ドット埋め込み層22、及び前記第二量子ドット埋め込み層22を包囲する第三量子ドット埋め込み層23を含んでいてもよい。ここで、量子ドット埋め込み層21、22、及び23の数は、
図2に示された数に限定されず、量子ドット含有ナノ粒子に求められる物理的特性及びサイズに応じて調整されてもよい。このように、量子ドット部20が複数の量子ドット埋め込み層21、22,23を含む場合、前記量子ドット含有ナノ粒子は、多層の多量子ドットを含み、それによって高い発光効率(量子収率)と向上した明るさを示す。このことは、本発明に係る標準材料組成物の光学特性(発光特性)の向上をもたらしうる。
【0033】
本発明の量子ドット含有ナノ粒子に含まれる前記シェル部30は、量子ドット部20と結合して取り囲んでおり、コア部10及び量子ドット部20を保護するよう働いてもよい。シェル部30は主にシリカで作られていてもよい。
【0034】
前記シェル部30の厚さは、1~1,000nmであってもよく、特に1~300nmであってもよい。前記シェル部30の厚さが上記の範囲内にあれば、前記量子ドット含有ナノ粒子が、コア部10及び量子ドット部20を保護しながらも重くなりすぎることを防ぐことができ、それにより前記量子ドット含有ナノ粒子の適用可能性が増す。
【0035】
図3に示すように、そのようなシェル部30は、複数のシリカシェル層31、32、33を含んでいてもよい。特に、前記シェル部30は、量子ドット部20を包囲する第一シリカシェル層31、前記第一シリカシェル層31を包囲する第二シリカシェル層32、及び前記第二シリカシェル層32を包囲する第三シリカシェル層33を含んでいてもよい。ここで、シリカシェル層31、32、及び33の数は、
図3に示された数に限定されず、量子ドット含有ナノ粒子に求められる物理的特性及びサイズに応じて調整されてもよい。このように、シェル部30が複数のシリカシェル層31、32,33を含む場合、シェル部30のキャッピング密度(capping density)が高くなり、前記量子ドット含有ナノ粒子の安定性が増す。さらに、シリカシェル層31、32、33の数を調整することにより、前記量子ドット含有ナノ粒子のサイズを所望のレベルまで自在に制御してもよい。ここで、シェル部30中に含まれるシリカシェル層31、32,33の数を調整することに加えて、シェル部30の形成における反応材料の量(volume)を調整することによって厚さを制御することで、ナノ粒子のサイズ制御を実行してもよい。
【0036】
一方では、(a)コア部10の直径と(b)シェル部30の厚さとの比(a:b、長さ比)は、120~3:1~7.5でもよく、特に6~3:1~2でもよい。シェル部30の厚さに対するコア部10の直径の比が上記の範囲内にある場合、量子ドット含有ナノ粒子の光学特性及び安定性が向上しうる。
【0037】
そのような量子ドット含有ナノ粒子は、コア部10及びシェル部30のそれぞれと結合して、コア部10とシェル部30との結合を保護する支持部40をさらに含んでもよい。すなわち、
図4を参照すると、前記量子ドット含有ナノ粒子は、コア部10とシェル部30との間に架橋構造を有する支持部40をさらに含む。そのような支持部40がさらに含まれている場合、コア部10とシェル部30との結合密度(架橋密度)が増加し得、前記量子ドット含有ナノ粒子の安定性が向上し得、これによって卓越した光学特性を有する量子ドット含有ナノ粒子が提供されうる。このことは、本発明に係る標準材料組成物の光学特性(発光特性)の向上をもたらしうる。
【0038】
前記支持部40は、コア部10と結合した第一の官能基を一端に有し、及びシェル部30と結合した第二の官能基を他端に有する炭素支持体(carbon supporter)で形成されていてもよい。ここで、前記第一の官能基は、ニトロ基、イミド基、エステル基、マレイミド基、ヨードアセトアミド基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、及びトシル基からなる群から選ばれてもよい。さらに、前記第二の官能基は、トリメトキシシラン基、トリエトキシシラン基、ジメトキシシラン基、ジエトキシシラン基、メトキシシラン基、及びエトキシシラン基からなる群から選ばれてもよい。
【0039】
特に、前記炭素支持体(carbon supporter)は、オリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールが主鎖構造を形成し、前記第一の官能基が主鎖構造の一端に結合し、前記第二の官能基が主鎖構造の他端に結合しているものでもよい。さらに、前記炭素支持体(carbon supporter)の分子量は100~15,000g/molであってもよい。前記炭素支持体(carbon supporter)が、例えばオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールを主鎖とする構造を有する場合、量子ドット含有ナノ粒子の調製プロセスにおいて溶剤(例えばエタノール)への分散性が増し、このことに起因して、結合密度(架橋密度)及び安定性が向上した量子ドット含有ナノ粒子が提供されてもよい。
【0040】
これらの量子ドット含有ナノ粒子は、前記標準材料組成物の光学特性、加工性、成型性等を考慮すると、前記標準材料組成物中に、前記標準材料組成物100重量部に対して1~80重量部、特に1~40重量部の含有量で含まれていてもよい。
【0041】
一方で、本発明に係る標準材料組成物は、様々な形に成型されるために、バインダー樹脂、硬化剤、添加物、及び溶剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
本発明に係る標準材料組成物にさらに含まれる前記バインダー樹脂は、光学分野で使用される樹脂である限りは、特に限定されない。特に、前記バインダー樹脂は、アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群から選ばれる1つ又は複数のものであってもよい。
【0043】
そのようなバインダー樹脂は、前記標準材料組成物の加工性、成型性、分散性等の特性を考慮すると、前記標準材料組成物中に、前記標準材料組成物100重量部に対して10~50重量部、特に25~50重量部の含有量で含まれていてもよい。
【0044】
本発明に係る標準材料組成物にさらに含まれる前記硬化剤は、前記バインダー樹脂の硬化反応を起こすものである限りは、特に限定されない。特に、前記硬化剤は、オキサゾリン系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤からなる群から選ばれる1つ又は複数のものであってもよい。
【0045】
これらの硬化剤は、前記標準材料組成物の硬化性、加工性等を考慮すると、前記標準材料組成物中に、前記標準材料組成物100重量部に対して1~10重量部、特に1~5重量部の含有量で含まれていてもよい。
【0046】
本発明に係る標準材料組成物にさらに含まれる前記添加剤は、光学分野で使用される添加剤である限りは、特に限定されない。特に、前記添加剤は、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、及び耐熱安定化剤からなる群から選ばれる1つ又は複数のものであってもよい。
【0047】
これらの添加剤は、前記標準材料組成物の加工性、光学特性等を考慮すると、前記標準材料組成物中に、前記標準材料組成物100重量部に対して5~50重量部、特に20~50重量部の含有量で含まれていてもよい。
【0048】
本発明に係る標準材料組成物にさらに含まれる前記溶剤は、光学分野で使用される溶剤である限りは、特に限定されない。特に、前記溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンを例とする芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンを例とする脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロールを例とするアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、及びメチルアミルケトンを例とするケトン系溶剤、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、及びエチルアセトアセテートを例とするエステル系溶剤、エチルエーテル、ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどを例とするエーテル系溶剤、からなる群から選ばれる1つ又は複数のものであってもよい。
【0049】
これらの溶剤は、前記標準材料組成物の加工性、成型性等を考慮すると、前記標準材料組成物中に、前記標準材料組成物100重量部に対して1~50重量部、特に10~20重量部の含有量で含まれていてもよい。
【0050】
本発明に係る上記標準材料組成物は、検証デバイスに応じた硬化及び成型のプロセスを経て、バイオ分析装置の検証(校正)に適用されてもよい。特に、本発明は、検証デバイスとして、標準ストリップ、標準トレイ、又は標準アセンブリを提供するものであり、これらについては以下に詳細に説明する。
【0051】
本発明は、上記の標準材料組成物で形成され、1つ又は複数の発光線を含む標準ストリップを提供する。具体的には、
図5を参照すると、本発明に係る標準ストリップは、ストリップ本体部100及び1つ又は複数の発光線200を含んでいてもよい。
【0052】
本発明に係る標準ストリップに含まれるストリップ本体部100は、バイオストリップの分野で一般的に用いられている材料及び構造によって構成されていてもよい。
【0053】
本発明に係る標準ストリップに含まれる発光線200は、上記の標準材料組成物で形成されており、ストリップ本体部100上に、1つ又は複数が備えられていてもよい。前記発光線200は、上記の量子ドット含有ナノ粒子を含んでおり、光源からの光によって発光しうる。
【0054】
特に、
図5に示すように、発光線200は、第一の発光線201、第二の発光線202、及び第三の発光線203という複数の形で備わっていてもよく、この場合、各発光線間で量子ドットの濃度が互いに異なっていてもよい。すなわち、各発光線が形成される際に、量子ドット(量子ドット含有ナノ粒子)の含有量が異なった標準材料組成物がそれぞれ適用されて、量子ドットの濃度が異なる発光線が形成される。例えば、第一の発光線201における量子ドット濃度が低く(C
low)、第二の発光線202における量子ドット濃度が第一の発光線201に含まれる量子ドット濃度よりも高く(C
low<C
medium)、第三の発光線203における量子ドット濃度が第二の発光線202に含まれる量子ドット濃度よりも高く(C
low<C
medium<C
high)なるように、各標準材料組成物の量子ドットの濃度(含有量)を設定する(調整する)ことによって、複数の発光線201、202、203が形成されてもよい。
【0055】
さらに、発光線200は複数備わっていてもよく、発光線201、202、及び203それぞれの間で蛍光信号強度が異なっていてもよい。すなわち、異なった蛍光信号強度を示す複数の発光線201、202、及び203が、発光線201、202、及び203のそれぞれから発せられる蛍光信号の透過プロセス(透過率)を制御することによって形成されてもよい。
【0056】
ここで、発光線200の数は、
図5に示された数に限定されるものではなく、分析条件に応じて適切に調整されてもよい。
【0057】
このように、本発明に係る標準ストリップは量子ドット濃度の勾配を有するか、又は、異なった蛍光信号強度を有する複数の発光線201、202、及び203を備えており、そのため、バイオ分析装置の検証プロセスにおいて、分析装置の誤差(偏差)がより正確に校正され得、このことによって前記バイオ分析装置の分析精度が向上しうる。
【0058】
本発明に係るこの標準ストリップは、
図6又は
図7に示すプロセスで作製されてもよい。
【0059】
具体的には、
図6に示すように、異なる含有量の量子ドット(又は量子ドット含有ナノ粒子)を有する標準材料組成物の各々を、従来の光学フィルム(Optics film)上に付与し(コートし)、カバーフィルムで覆い、そして硬化プロセスを経ることで量子ドット濃度の勾配を有する複数のQDフィルム(例えば、C
low、C
medium、及びC
highという濃度を有する3つのQDフィルム)を作製し、作製した各QDフィルムを、PVCバッキングカードの線位置に合わせてPVCバッキングカードに取り付け、次に、パターン入りのブラックテープ(又はフィルム)をPVCバッキングカード上にQDフィルムの線を露出するように配置し及び取り付けることで未切断の標準カードを作製し、前記標準カードを必要なサイズに切断することで本発明に係る標準ストリップを作製する。
【0060】
さらに、
図7に示すように、標準材料組成物で形成されるQDシートを作製し、光学フィルムの片面を印刷法によってパターン化することで異なる光透過率を有する複数の線が形成されたマスキングフィルムを作製し、作製したQDシートを作製したマスキングフィルムで覆い、硬化することで未切断の標準カードを作製し、前記標準カードを必要なサイズに切断することで本発明に係る標準ストリップを作製する。
【0061】
本発明に係る標準ストリップは上記の標準材料組成物で形成された発光線200を含むので、バイオ分析装置の検証(校正)に都合よく用いられ得、バイオ分析装置の分析精度が向上しうる。さらに、標準ストリップの作製中の品質管理プロセスにおいて光退色現象は大きくは起きず、たとえ貯蔵環境(遮光、温度、湿度、その他の項目)が変化した場合でも安定した性能が実現される。さらに、前記標準ストリップは光学フィルムを用いて作製されるため、UV露光及び外部汚染が防止され、それゆえ長い耐用年数を確保しうる。
【0062】
本発明は、上記標準材料組成物で形成された発光部を含む標準トレイを提供する。具体的には、
図8を参照すると、本発明に係る標準トレイは、トレイ本体部300、参照部400、及び発光部500を含んでいてもよい。ここで、本発明に係る前記標準トレイは、バイオストリップを備えたバイオキットをマウントするよう働くトレイであってもよい。
【0063】
本発明に係る標準トレイに含まれるトレイ本体部300は、バイオトレイの分野で通常用いられる材料及び構造で形成されていてもよい。
【0064】
本発明に係る標準トレイに含まれる参照部400は、発光部500の蛍光信号の分析における参照点を提供するよう働き、通常用いられる材料で形成されていてもよい。
【0065】
本発明に係る標準トレイに含まれる発光部500は、上記の標準材料組成物で形成されて、光源によって発光してもよい。この発光部500は、上記の標準材料組成物を硬化してペースト状にするプロセスを経て形成されてもよい。
【0066】
本発明に係る標準トレイが上記標準材料組成物で形成された発光部500を含むので、標準トレイは、バイオ分析装置の検証(校正)に都合よく用いられ得、バイオ分析装置の分析精度が向上しうる。
【0067】
本発明は、上記標準ストリップ及び標準トレイが組み合わさった標準アセンブリを提供する。すなわち、
図9を参照すると、本発明は、上記標準ストリップを備えた標準キット、及び前記標準キットが据え付けられた標準トレイを含む標準アセンブリを提供してもよい。この標準アセンブリは、後述するバイオ分析装置の第一及び第二の校正に効率よく使用されうる。
【0068】
一方で、本発明は、上記の標準ストリップ及び/又は標準トレイを使用してバイオ分析装置を検証する方法を提供するものであり、その詳細を以下に説明する。ここで、本発明に係るバイオ分析装置の検証とは、バイオ試料(例えば、抗原、受容体、ウイルス、酵素、感染性免疫グロブリン、サイトカイン、又は他の感染性因子)を前記バイオ分析装置によって分析する前に行われるものであってもよい。さらに、標準トレイの発光部500又は標準ストリップの発光線200以外の部分の蛍光強度は、バックグラウンド値として定義され、検証と分析は、定量的/定性的な分析において、発光部500又は発光線200の蛍光強度からバックグラウンド値を引いて得られた値を用いて行われてもよい。
【0069】
最初に、光源を、上記標準材料組成物で形成された発光部500を含む前記標準トレイに照射する。この場合、光源は、外部光源でも分析装置内に備えられた光源でもよく、その波長は、紫外線(ブルーライト、420nm未満)でもよい。
【0070】
次に、照射光源により発光部500が発する蛍光強度値が、前記バイオ分析装置の光学部に入力された標準蛍光強度値の範囲内に入るか否かが判定される。すなわち、前記標準トレイに備えられた発光部500から発せられる蛍光信号は、前記バイオ分析装置の光学部に受光され、受光された前記信号の強度が、光学部へ入力(セット)された標準蛍光強度値の範囲内に入るか否かが、光学部のソフトウエアによって判定される。ここで、前記光学部に入力される標準蛍光強度値の範囲は、分析対象の生物サンプルを表しうる、量子収率又はフォトルミネッセンスによる数値を基に決定されてもよい。
【0071】
次に、前記判定により、前記蛍光強度値が標準蛍光強度値の範囲内となるように、前記光学部へ入力された標準蛍光強度値の範囲に対して第一の校正を行うプロセスによって、前記バイオ分析装置の検証が実行されてもよい。ここで、発光部500の蛍光強度値が前記光学部に入力された標準発光強度値の範囲内となることが判定プロセスにおいて確認されれば、第一の校正は省略してもよい。さらに、前記第一の校正は、発光部500を含む標準トレイに代わって発光線200を含む標準ストリップを使って行ってもよい。
【0072】
本発明に係るバイオ分析装置の検証方法は、上記標準材料組成物で形成された1つ又は複数の発光線200を含む標準ストリップによって、光学部に入力された標準発光強度値の値に対して第二の校正を行うプロセスをさらに行ってもよい。すなわち、1つ又は複数の発光線200を含む標準ストリップに光源が照射され、照射光源により発光線200から発せられる蛍光強度値が、バイオ分析装置の光学部に設定された前記第一の校正済みの標準蛍光強度値の範囲内に入るか否かが判定される。前記値が前記標準蛍光強度値(第一の校正済みの標準蛍光強度値)の範囲内でない場合、バイオ分析装置の光学部に設定された前記標準蛍光強度値に対して第二の校正が行われる。
【0073】
一例として、発光線200を含む標準ストリップによる前記バイオ分析装置の光学部の校正は、
図10に示すように相関係数(c)を適用することによって、実行されてもよい。すなわち、式Y
0=a
0X+b
0で表される蛍光強度値を有するように作製された標準ストリップにより、前記バイオ分析装置の光学部に入力された標準蛍光強度値を分析及び数式化した場合、式Y
1=a
1X+b
1を得ることができる。ここで、Y
0とY
1との相関係数(c)を得て、それをY
1に適用した場合、校正された式Y
1‘=c(a
1X+b
1)を得ることができる。校正式Y
1‘=c(a
1X+b
1)によって光学部の誤差(偏差)を校正することで、本発明は、各バイオ分析装置が前記標準ストリップの蛍光強度として同じ値を有することを保証しうる。
【0074】
本発明における前記第一の校正及び/又は第二の校正は、所定の期間(1か月から6か月)ごとに行われ、それにより、バイオ分析装置の検証プロセスが更新されうる。
【0075】
このように、本発明は、前記第一の校正プロセス及び/又は第二の校正プロセスによってバイオ分析装置の検証(校正)を行うものであるので、バイオ分析装置の分析誤差(偏差)をさらに最小化し得、このことによって、バイオ分析装置の分析精度が向上しうる。
【0076】
本発明における前記バイオ分析装置は、光学部を有し蛍光強度値の分析が可能なソフトウエアがプログラムされるバイオ分析装置である限りは、特に限定されず、携帯電話、バイオリーダー、等々を含みうる。さらに、本発明におけるバイオ分析装置の光学部の誤差とは、各バイオ分析装置の光学部(CCD、CMOS)自体同士の間に起因する誤差、光学部の動作環境(周辺環境の照度)に起因する誤差、光源(UV)に起因する誤差、等々を意味し、本発明は、これらの誤差を検証(校正)することによって、バイオ分析装置の分析精度を向上させてもよい。
【0077】
以下において、本発明を実施例によってより詳細に示す。しかしながら、以下の実施例は本発明を例示するためだけのものであり、本発明の分野及び技術的精神の範囲の中において、様々な変形や改変がなされてもよいことは、当業者にとって明らかであり、本発明の範囲がそれに限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
ポリエステル樹脂、芳香族炭化水素系溶剤、及び添加剤(消泡剤、分散安定剤)に、オレイン酸でコーティングされた量子ドット粒子(CdSe/ZnS、10nm)を加えて混合し、それから硬化剤を添加するプロセスを行って、標準材料組成物を調製した。このとき、量子ドット粒子は、組成物100重量部に対して5重量部となるように加えた。
【0079】
[実施例2]
量子ドット粒子を、組成物100重量部に対して10重量部となるように加えたこと以外は、実施例1と同じプロセスで標準材料組成物を調製した。
【0080】
[実施例3]
量子ドット粒子を、組成物100重量部に対して20重量部となるように加えたこと以外は、実施例1と同じプロセスで標準材料組成物を調製した。
【0081】
[実施例4]
1)量子ドット含有ナノ粒子の調製
直径120nmのシリカ粒子で形成されるコア部(10mg/ml)に、1%(体積/体積)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)100μlを加え、25℃で12時間攪拌して、シリカ粒子の表面にチオール基を導入した。
【0082】
次に、前記チオール基が導入されたシリカ粒子に対して、オレイン酸(疎水性)によりコーティングするプロセスを施した量子ドット粒子(CdSe/ZnS、100mg/ml)4mgを添加し、ボルテックスで激しく攪拌することによって、前記量子ドット粒子をシリカ粒子のチオール基に結合させた。そして、疎水性溶剤であるジクロロメタン8mlをさらに加えて10分間攪拌して、未結合の量子ドット粒子をさらに結合させた。そして、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)100μlを加えて15分間攪拌し、そして、塩基として25%のアンモニア水(NH4OH(aq))100μlを加えて3時間攪拌し、3層の量子ドット埋め込み層が積層した構造を有する量子ドット部を得た。
【0083】
次に、コア部と量子ドット部が形成された前記ナノ粒子を、エタノールで3回洗浄し、そして100μlテトラエチルオルソシリケートと25%のアンモニア水を加えて、400rpmで20時間攪拌し、シェル部を形成した。その後、エタノールでの3回洗浄プロセスを行って、シリカのコア部、3層の量子ドット埋め込み層が積層した量子ドット部、及びシリカのシェル部を含む量子ドット含有ナノ粒子1を製造した。
【0084】
2)標準材料組成物の調製
上記プロセスで得られる量子ドット含有ナノ粒子1を、前記量子ドット粒子に代わって用いたことを除いて、実施例1と同じプロセスで標準材料組成物を作製した。
【0085】
[実施例5]
1)量子ドット含有ナノ粒子の調製
直径120nmのシリカ粒子で形成されるコア部(10mg/ml)に、1%(体積/体積)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)100μlを加え、25℃で12時間攪拌して、シリカ粒子の表面にチオール基を導入した。
【0086】
次に、前記チオール基が導入されたシリカ粒子に対して、オレイン酸(疎水性)でコーティングするプロセスを施した量子ドット粒子(CdSe/ZnS、100mg/ml)4mgを添加し、ボルテックスで激しく攪拌することによって、前記量子ドット粒子をシリカ粒子のチオール基と結合させた。そして、疎水性溶剤であるジクロロメタン8mlをさらに加えて10分間攪拌して、未結合の量子ドット粒子をさらに結合させた。
【0087】
次に、両端にそれぞれ結合したマレイミド基及びトリエトキシシラン基を有し、ポリエチレングリコールの主鎖を有する炭素支持体(carbon supporter)(分子量1000g/mol)150μlを加えて15分間攪拌し、続いて、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)100μlを加えて15分間攪拌し、そして、塩基として25%のアンモニア水(NH4OH(aq))100μlを加えて3時間攪拌し、3層の量子ドット埋め込み層が積層した構造を有する量子ドット部を形成しつつ、炭素支持体(carbon supporter)をコア部の表面に結合させた。
【0088】
次に、コア部、量子ドット部、及び炭素支持体(carbon supporter)が結合した前記ナノ粒子を、エタノールで3回洗浄し、そして100μlのテトラエチルオルソシリケートと25%のアンモニア水を加えて、400rpmで20時間攪拌し、支持部とシェル部を形成した。その後、エタノールでの3回洗浄プロセスを行って、シリカのコア部、3層の量子ドット埋め込み層が積層した量子ドット部、炭素の支持部、及びシリカのシェル部を含む量子ドット含有ナノ粒子2を製造した。
【0089】
2)標準材料組成物の調製
上記プロセスで作製された量子ドット含有ナノ粒子2を、前記量子ドット粒子に代わって用いたことを除いて、実施例1と同じプロセスで標準材料組成物を作製した。
【0090】
[調製例1]
実施例1~3で調製した各標準材料組成物から、標準ストリップを作製した(
図6のプロセスを適用)。具体的には、実施例1~3で調製した標準材料組成物のそれぞれを光学フィルム(Optics film)上に付与し、カバーフィルムで覆い、その後硬化プロセスに供して、それぞれ量子ドット濃度の異なる3つのQDフィルム(8×300nm)を作製した。そして、作製されたそれぞれのQDフィルムを、PVCバッキングカード(60×300nm)の線位置に合わせてPVCバッキングカードに取り付け、パターン入りのブラックテープ(60×300nm)をPVCバッキングカード上に3つのQDフィルムの線が露出するように配置して取り付け、それにより未切断の標準カードを作製した。そして、作製した標準カードを切断して、標準ストリップを作製した。
【0091】
[実験例1]
調整例1で得られた標準ストリップをバイオキット中に取り付けた後、UV光を照射して量子ドット発光線の色を目視でチェックし、バイオオンリー(bio-only)リーダーで分析した。目視確認及びリーダーによる分析の結果を
図11に示す。
【0092】
図11を見ると、第一の線Aの信号のみが目視で確認されたが、リーダーで分析すると、線Aとともに、線B及び線Cの両方とも確認できたことが分かった。このようにして確認された3つの線の蛍光強度値を用いて、本発明に係るバイオ分析装置の検証プロセスによって(
図10の式校正プロセスによって)バイオ分析装置の光学部及び光源の校正が実行できた。