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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】交換自在な金型部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/70 20060101AFI20230925BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20230925BHJP
   B29C 33/32 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B29C33/70
B29C33/10
B29C33/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022503064
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008558
(87)【国際公開番号】W WO2021171632
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390015624
【氏名又は名称】浦谷商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 直斗
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138490(JP,A)
【文献】特開2005-88372(JP,A)
【文献】特開平9-207173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/70
B29C 33/10
B29C 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用金型基盤のキャビティー側に存在する凹みに装着される交換自在な金型部品であって、
前記交換自在な金型部品は、前記凹みに設けられて前記キャビティーに留まる受け皿部と、前記受け皿部に前記キャビティー側から挿入され前記受け皿部に対して固定状態と解除状態になる着脱部と、を含み、
前記受け皿部は、前記受け皿部の深さ方向に摺動するとともに受け皿側磁石又は磁性体片を支持する磁石支持部を含み、
前記受け皿部は、前記着脱部を前記受け皿部に係止することで前記着脱部を前記固定状態とするとともに、係止を解除することで前記解除状態にする係止機構を更に含み、
前記受け皿部は、前記着脱部の固定位置から解除位置の移動を抑制する力を付勢する第1付勢手段を有しており、
前記磁石支持部には前記係止機構の固定位置と解除位置が設けられ、
前記着脱部は所定機能を実現する機能部を含み、
外部の磁界発生手段によって発生した磁界によって、前記第1付勢手段の抑制する力に打ち勝って、前記磁石支持部を前記固定位置から前記解除位置に変化させることを特徴とする交換自在な金型部品。
【請求項2】
前記機能部は、成形品に刻印する刻印部及び、前記キャビティー内部に滞留したガスを外部に排出するガス抜き部を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の交換自在な金型部品。
【請求項3】
前記受け皿部に固定された前記着脱部に前記キャビティー側から操作用磁石を近接させたとき、
前記受け皿側磁石と前記操作用磁石の反発力により、前記固定状態から前記解除位置に前記磁石支持部を移動させるように構成されること特徴とする請求項1又は2に記載の交換自在な金型部品。
【請求項4】
前記受け皿部に固定された前記着脱部に前記キャビティー側から操作用磁石を近接させたとき、
前記受け皿側磁石又は前記磁性体片と、前記操作用磁石の吸引力により、前記固定状態から前記解除位置に前記磁石支持部を移動させるように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の交換自在な金型部品。
【請求項5】
前記受け皿部の開口側の位置に前記磁石支持部の前記固定位置が設けられ、前記受け皿部の底側の位置に前記磁石支持部の前記解除位置が設けられてなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項6】
前記受け皿部の開口側の位置に前記磁石支持部の前記解除位置が設けられ、前記受け皿部の底側の位置に前記磁石支持部の前記固定位置が設けられたことを特徴とする請求項1,2又は4のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項7】
前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、前記受け皿側磁石を有し、
前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、
前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、
前記磁石支持部は、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、
前記延出部の側面外側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部開口側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、
前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって筒形に延出されるスカート部を有し、
前記スカート部側面内側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、
前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部の下部との間に介在しており、
前記ボールが前記当接面に位置することで前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、
前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする、請求項1,2,3又は5のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項8】
前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を有し、
前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、
前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、
前記磁石支持部は、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、
前記延出部の側面外側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部底側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、
前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって筒形に延出されるスカート部を有し、
前記スカート部側面内側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、
前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部との間に介在しており、
前記ボールが前記当接面に位置することで前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、
前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする、請求項1,2,4又は6のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項9】
前記外殻体の内側に挿入され且つ、前記内側管部を取り囲んで外側に位置づけられる筒型の外側管部を有し、
前記外側管部底部と前記外殻体の底部との間に介装された第二付勢手段によって、前記外側管部は前記受け皿部開口方向に付勢されていることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項10】
前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、リング状の前記受け皿側磁石を有し、
前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、
前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、
前記磁石支持部はリング形状を呈し、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、
前記延出部の側面内側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部開口面側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、
前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって軸形に延出される軸部を有し、
前記軸部側面外側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、
前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部の間に介在しており、
前記ボールが前記当接面に位置することで、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、
前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする、請求項1,2,3又は5のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項11】
前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、リング状の前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を有し、
前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、
前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、
前記磁石支持部はリング形状を呈し、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、
前記延出部の側面内側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部底側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、
前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって軸形に延出される軸部を有し、
前記軸部側面外側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、
前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部の間に介在しており、
前記ボールが前記当接面に位置することで、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、
前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする、請求項1,2,4又は6のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項12】
前記内側管部の内側に摺動可能に挿入され、前記受け皿部底面と対面する押動部を有し、
前記押動部底部と前記受け皿部の底部との間に介装された第二付勢手段によって、前記押動部は前記受け皿部開口方向に付勢されていることを特徴とする、請求項1,2,3,4,5,6,10又は11のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項13】
前記着脱部及び前記受け皿部を貫く貫通孔が設けられ、
予め前記受け皿部の前記貫通孔と連通するベント穴を前記金型基盤に設け、
前記貫通孔の配設位置を避けて前記受け皿側磁石又は前記磁性体片が配設されたことを特徴とする、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項14】
前記着脱部側面には、前記外殻体に対し横方向に突出する少なくとも一つの位置決め突条が設けられ、
前記外殻体内壁には、前記位置決め突条が嵌入するとともに、深さ方向に延びる少なくとも一つの位置決め溝が存在することを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項15】
前記着脱部側面には、前記外殻体に対し横方向に突出する少なくとも一つの位置決め突起が設けられ、
前記位置決め突起は、前記着脱部側面に埋設される位置決めスプリングと前記位置決めスプリングに配設される嵌入部からなり、
前記外殻体内壁に、前記嵌入部が嵌入する少なくとも一つの位置決め凹みが形成されることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の交換自在な金型部品。
【請求項16】
前記操作用磁石を、前記成形用金型基盤の前記交換自在な金型部品直上に位置させるための磁石位置決め手段と、
前記操作用磁石と前記交換自在な金型部品の距離を変化させる距離変化手段と、を備えることを特徴とする、操作用磁石取り扱い治具を使用する、請求項1乃至15のいずれかに一つに記載の、交換自在な金型部品。
【請求項17】
前記操作用磁石取り扱い治具は、磁石保持用容器、位置決め用台座、第三付勢手段、前記操作用磁石、緩衝用シートを含み、
前記磁石保持用容器内部には、前記操作用磁石が収納され、
前記操作用磁石の下面には、前記緩衝用シートが貼設され、
前記位置決め用台座には、前記操作用磁石を伴った前記磁石保持用容器が摺動可能に嵌入され、
前記位置決め用台座と、前記磁石保持用容器との間に介装された前記第三付勢手段の押勢による反発力によって、前記位置決め用台座下端と、前記操作用磁石の下端との距離が保持されることを特徴とする、請求項16に記載の操作用磁石取り扱い治具を使用する、交換自在な金型部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型成形時に成形品表面に刻印を行う刻印用金型部品又は、金型内部で発生するガスを排気するガス抜き用金型部品に係る交換自在な金型部品に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、可動金型基盤が固定金型基盤に近接・隔離する方向に駆動されて、金型基盤の型締めと型開きが行われる。型締めされた金型内のキャビティーに溶融状の合成樹脂が供給され、その溶融状の合成樹脂が硬化して成形品が形成され、金型の型開き後、成形品が金型からエジェクトされる。
【0003】
成形品の表面に情報の刻印を行う場合、固定又は可動金型基盤に貫通孔を作製し、表面に情報が凹凸となって刻まれた刻印用金型部品を貫通孔に装着する。該金型部品において、情報が刻印された表面は、キャビティー表面と同一面になるように設置される。型締めを行い、溶融状の合成樹脂を流し込むことにより、刻印用金型部品の表面に刻印された凹凸情報は、成形品に転写される。
【0004】
刻印情報更新に伴い刻印用金型部品を交換する場合、前述のように刻印用金型部品の表面は、キャビティー表面と同一面となるように存在しているので、型開きした状態でキャビティー側から刻印用金型部品を掴み、引き抜き交換することはできない。従来においては、一旦、金型基盤自体を射出成形機から外し、金型基盤の裏面を露出させ、裏面から棒状の治具を貫通孔に挿入し、ハンマーなどで金型部品をキャビティー側に押し出して、刻印金型部品を金型基盤より脱離させる作業が必要となっていた。
【0005】
金型基盤自体は重量物であるため、これを射出成形装置から外すためには多大な作業量と労力が必要であり、また、金型を組みなおして射出成形装置にセットする場合にも同様である。
【0006】
一方、ガス抜き用金型部品においても、刻印用金型部品と同じ状況が存在している。射出成形では、高温の溶融状合成樹脂よりガスが発生する場合がある。ガスは、キャビティー内部に滞留し、その部分は局所的に合成樹脂の充填を妨げるため成形品に不良を生じさせる。ガスをキャビティー外部に排出するため、ガス抜き用の金型部品が取り付けられる場合がある。本部品においては、微細な多数の貫通孔が設けられている表側はキャビティー表面と同一面に位置するように、裏側はキャビティー外部の大気と接するように形成されている。
【0007】
貫通孔は微細であるため、キャビティー内で発生したゴミやチリが孔を塞ぎ、ガス抜きの機能が不全となることがある。このとき、ガス抜き用金型部品を金型基盤より脱離させ、クリーニングを施したうえで再装着する。ガス抜き用金型部品においても、貫通孔の存在する金型表面はキャビティー表面と同一面となるように存在しているので、その交換においては刻印用金型部品と同様に、一旦、金型基盤自体を射出成形機から外して行う必要がある。
【従来技術】
【0008】
金型基盤型開き時に、キャビティー側から容易に金型部品を交換できれば、上記の手間を省き、金型成形作業の効率を高めることができる。現在までに、キャビティー側から刻印用金型部品を交換することにより、上記状況を改善できる機構の開発に関し、いくつかの試みが報告されている。特許文献1には、刻印用金型部品の刻印面の一部である指標体をキャビティー側から脱離させる方法が開示されている。図11に示すように、刻印装置Aは、金型内に嵌入される外殻体73と、金型内面に臨む指標部741とねじ部742からなり外殻体73内に嵌入される指標体74とナット76から構成される。外殻体73の底部にはナット76が存在し、このねじ溝に前記指標体74のねじ部742が螺合されている。そして、指標部741の下面と外殻体73の上段部の間にばね77が介装されており、指標体74をドライバー等により回転させてナット76との螺合を外すことにより、指標体74のみを、キャビティー側から外すことができるようになっている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、指標体にマイナスドライバーを係合させる溝を刻印面に刻むことが必要であり、且つ指標体の刻印面は円形であることが必須条件となり四角形など自由な形の刻印面を脱離させることはできない。キャビティー側から刻印用金型部品を交換できるものの、その機能は限定的である。
【0010】
特許文献2には、図12に示すように、磁気吸引力を利用して刻印用金型を所定位置に保持する第一の状態と、前記磁気吸引力を解除する第二の状態を切り替え、刻印用金型部品全体をキャビティー側から脱離させる方法が開示されている。しかし、金型基盤内部に組み込まれた磁石一式を横方向に移動させるために、金型基盤の内部に特別な磁石移動のための構造を形成する必要があり、金型基盤自体を大幅に改良せねばならない。キャビティー側から刻印用金型部品を交換できるものの、その実現はシステムの大きな改造を伴うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第2963397号公報
【文献】特開2006-231577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、重量物である金型基盤自体を射出成形機から取り外すことなく、そして金型を分解することなく、刻印面取り外しのためマイナスドライバーなどを係合させる溝を刻印面に刻むことが必要なく、金型基盤の内部に磁石移動など特別な構造を形成する必要がなく、金型基盤自体の大幅な改良を行うことなく、更には金型基盤の型開きの状態から、キャビティー側より、四角形など自由な形の刻印面又は、ガス抜き用部品、それに限らず、所定の機能を有する金型部品を、簡単に交換できる交換自在な金型部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1による発明は、成形用金型基盤のキャビティー側に存在する凹みに装着される交換自在な金型部品であって、前記交換自在な金型部品は、前記凹みに設けられて前記キャビティーに留まる受け皿部と、前記受け皿部に前記キャビティー側から挿入され前記受け皿部に対して固定状態と解除状態になる着脱部と、を含み、前記受け皿部は、前記受け皿部の深さ方向に摺動するとともに受け皿側磁石又は磁性体片を支持する磁石支持部を含み、前記受け皿部は、前記着脱部を前記受け皿部に係止することで前記着脱部を前記固定状態とするとともに、係止を解除することで前記解除状態にする係止機構を更に含み、前記受け皿部は、前記着脱部の固定位置から解除位置の移動を抑制する力を付勢する第1付勢手段を有しており、前記磁石支持部には前記係止機構の固定位置と解除位置が設けられ、前記着脱部は所定機能を実現する機能部を含み、外部の磁界発生手段によって発生した磁界によって、前記第1付勢手段の抑制する力に打ち勝って、前記磁石支持部を前記固定位置から前記解除位置に変化させることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0014】
請求項2による発明は、前記機能部は、成形品に刻印する刻印部及び、前記キャビティー内部に滞留したガスを外部に排出するガス抜き部を含んでなることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0015】
請求項3による発明は、前記受け皿部に固定された前記着脱部に前記キャビティー側から操作用磁石を近接させたとき、前記受け皿側磁石と前記操作用磁石の反発力により、前記固定状態から前記解除位置に前記磁石支持部を移動させるように構成されること特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0016】
請求項4による発明は、前記受け皿部に固定された前記着脱部に前記キャビティー側から操作用磁石を近接させたとき、前記受け皿側磁石又は前記磁性体片と、前記操作用磁石の吸引力により、前記固定状態から前記解除位置に前記磁石支持部を移動させるように構成されることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0017】
請求項5による発明は、前記受け皿部の開口側の位置に前記磁石支持部の前記固定位置が設けられ、前記受け皿部の底側の位置に前記磁石支持部の前記解除位置が設けられてなることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0018】
請求項6による発明は、前記受け皿部の開口側の位置に前記磁石支持部の前記解除位置が設けられ、前記受け皿部の底側の位置に前記磁石支持部の前記固定位置が設けられたことを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0019】
請求項7による発明は、前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、前記受け皿側磁石を有し、前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、前記磁石支持部は、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、前記延出部の側面外側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部開口側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって筒形に延出されるスカート部を有し、前記スカート部側面内側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部の下部との間に介在しており、前記ボールが前記当接面に位置することで前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0020】
請求項8による発明は、前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を有し、前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、前記磁石支持部は、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、前記延出部の側面外側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部底側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって筒形に延出されるスカート部を有し、前記スカート部側面内側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部との間に介在しており、前記ボールが前記当接面に位置することで前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0021】
請求項9による発明は、前記外殻体の内側に挿入され且つ、前記内側管部を取り囲んで外側に位置づけられる筒型の外側管部を有し、前記外側管部底部と前記外殻体の底部との間に介装された第二付勢手段によって、前記外側管部は前記受け皿部開口方向に付勢されていることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0022】
請求項10による発明は、前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、リング状の前記受け皿側磁石を有し、前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、前記磁石支持部はリング形状を呈し、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、前記延出部の側面内側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部開口面側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって軸形に延出される軸部を有し、前記軸部側面外側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部の間に介在しており、前記ボールが前記当接面に位置することで、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0023】
請求項11による発明は、前記受け皿部は、前記凹みに収容される筒形の外殻体と、前記外殻体より内側に設けられた内側管部と、リング状の前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を有し、前記係止機構は少なくとも一個のボールを含み、前記内側管部の側面には少なくとも1個のボール口が設けられており、前記磁石支持部はリング形状を呈し、前記受け皿部開口側に前記受け皿側磁石又は前記磁性体片を支持する支持面と、前記受け皿部底側に向かって延出した延出部とを有し、前記延出部の側面内側には、前記固定位置に対応する当接面と、前記当接面よりも前記受け皿部底側に設けられた、前記解除位置に対応する少なくとも一つのボール逃げ部が設けてあり、前記着脱部は、上壁部と前記受け皿部底側に向かって軸形に延出される軸部を有し、前記軸部側面外側に、少なくとも1個のボール嵌合凹みが設けられ、前記第一付勢手段は、前記受け皿部の底部と前記延出部の間に介在しており、前記ボールが前記当接面に位置することで、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール嵌合凹みに突出して係止した状態になることで前記固定状態になり、前記ボールが前記ボール口位置から前記ボール逃げ部寄りに位置して、前記ボール嵌合凹みとの係止を外れた状態になることで前記解除状態になることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0024】
請求項12による発明は、前記内側管部の内側に摺動可能に挿入され、前記受け皿部底面と対面する押動部を有し、前記押動部底部と前記受け皿部の底部との間に介装された第二付勢手段によって、前記押動部は前記受け皿部開口方向に付勢されていることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0025】
請求項13による発明は、前記着脱部及び前記受け皿部を貫く貫通孔が設けられ、予め前記受け皿部の前記貫通孔と連通するベント穴を前記金型基盤に設け、前記貫通孔の配設位置を避けて前記受け皿側磁石又は前記磁性体片が配設されたことを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0026】
請求項14による発明は、前記着脱部側面には、前記外殻体に対し横方向に突出する少なくとも一つの位置決め突条が設けられ、前記外殻体内壁には、前記位置決め突条が嵌入するとともに、深さ方向に延びる少なくとも一つの位置決め溝が存在することを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0027】
請求項15による発明は、前記着脱部側面には、前記外殻体に対し横方向に突出する少なくとも一つの位置決め突起が設けられ、前記位置決め突起は、前記着脱部側面に埋設される位置決めスプリングと前記位置決めスプリングに配設される嵌入部からなり、前記外殻体内壁に、前記嵌入部が嵌入する少なくとも一つの位置決め凹みが形成されることを特徴とする交換自在な金型部品とした。
【0028】
請求項16による発明は、前記操作用磁石を、前記成形用金型基盤の前記交換自在な金型部品直上に位置させるための磁石位置決め手段と、
前記操作用磁石と前記交換自在な金型部品の距離を変化させる距離変化手段と、を備えることを特徴とする、操作用磁石取り扱い治具を使用する、請求項1乃至15のいずれかに一つに記載の、交換自在な金型部品交換自在な金型部品とした。
【0029】
請求項17による発明は、前記操作用磁石取り扱い治具は、磁石保持用容器、位置決め用台座、第三付勢手段、前記操作用磁石、緩衝用シートを含み、前記磁石保持用容器内部には、前記操作用磁石が収納され、前記操作用磁石の下面には、前記緩衝用シートが貼設され、前記位置決め用台座には、前記操作用磁石を伴った前記磁石保持用容器が摺動可能に嵌入され、前記位置決め用台座と、前記磁石保持用容器との間に介装された前記第三付勢手段の押勢による反発力によって、前記位置決め用台座下端と、前記操作用磁石の下端との距離が保持されることを特徴とする、請求項16に記載の操作用磁石取り扱い治具を使用する、交換自在な金型部品した。
【発明の効果】
【0030】
本発明の請求項1による発明によれば、交換自在な金型部品はキャビティー側に留まる受け皿部と着脱部から構成され、着脱部は受け皿部内の係止機構により係止されている。外部磁界の印加によって、磁石支持部を固定位置から解除位置に変化させることで、着脱部の受け皿部に対する係止機構を固定状態から解除状態に変化させ、着脱部を受け皿部よりキャビティー側から取り外すことができる。重量物である金型基盤自体を射出成形機から取り外すことなく、そして金型を分解することなく、金型基盤の型開きの状態において、外部磁界を印加することで、容易に金型部品の一部である着脱部を交換できる。
【0031】
本発明の請求項2による発明によれば、交換自在な金型部品は、成形品の表面に刻印を行う機能及び、成形時に発生するガスのガス抜き機能を実現することが出来る。ここで、刻印を行う機能とは、バーコード、QRコード(登録商標)、各種マーク、製造年月日、製造番号などの各種情報を成形品表面に形成する機能を言う。
【0032】
本発明の請求項3による発明によれば、キャビティー側からの着脱部取り外しは、本発明に係る交換自在な金型部品に操作用磁石を近接させたときの両磁石の反発力により実現することができる。これは、両磁石の反発力が、磁石支持部を固定状態から解除位置に移動させ、受け皿部と係止機構との係止を解除することにより可能になる。
【0033】
本発明の請求項4による発明によれば、キャビティー側からの着脱部取り外しは、本発明に係る交換自在な金型部品に操作用磁石を近接させたときの両磁石の吸引力により実現することができる。これは、両磁石の吸引力が、磁石支持部を固定状態から解除位置に移動させ、受け皿部と係止機構との係止を解除することにより可能になる。
【0034】
本発明の請求項5による発明によれば、磁石支持部の固定位置を受け皿部の開口側に設定し、解除位置を受け皿部の底側に設定する。外部から印加した磁界により、磁石支持部を受け皿部の底側に移動させることにより、係止機構の解除を行うことができる。
【0035】
本発明の請求項6による発明によれば、磁石支持部の固定位置を受け皿部の底側に設定し、解除位置を受け皿部の開口側に設定する。外部から印加した磁界により、磁石支持部を受け皿部の開口側に移動させることにより、係止機構の解除を行うことができる。
【0036】
本発明の請求項7による発明によれば、ボールとボール嵌合凹み間の係止状態と非係止状態に対応して、着脱部の受け皿部への固定と解除が実現される。本機構は構成が簡単であるため、信頼性が高く確実な動作を提供することが出来る。
【0037】
本発明の請求項8による発明によれば、ボールとボール嵌合凹み間の係止状態と非係止状態に対応して、着脱部の受け皿部への固定と解除が実現される。本機構は構成が簡単であるため、信頼性が高く確実な動作を提供することが出来る。受け皿側磁石の代わりに磁性体片を用いた場合、磁力により機能部に鉄粉などを引き寄せることが無くなり、成形品に不良を発生させることは無くなる。
【0038】
本発明の請求項9による発明によれば、外部から印加した磁界により着脱部の係止機構による係止が解除されたとき、外側管部との接触を通じ常時付勢がなされているので、着脱部は受け皿部開口面側に移動する。この結果、着脱部の一部はキャビティー表面より突出するので、キャビティー側から着脱部を掴んで取り外すことができる。
【0039】
本発明の請求項10による発明によれば、ボールとボール嵌合凹み間の係止状態と非係止状態に対応して、着脱部の受け皿部への固定と解除が実現される。本機構は構成が簡単であるため、信頼性が高く確実な動作を提供することが出来る。
【0040】
本発明の請求項11による発明によれば、ボールとボール嵌合凹み間の係止状態と非係止状態に対応して、着脱部の受け皿部への固定と解除が実現される。本機構は構成が簡単であるため、信頼性が高く確実な動作を提供することが出来る。受け皿側磁石の代わりに磁性体片を用いた場合、磁力により機能部に鉄粉などを引き寄せることが無くなり、成形品に不良を発生させることは無くなる。
【0041】
本発明の請求項12による発明によれば、外部から印加した磁界により着脱部の係止機構による係止が解除されたとき、着脱部は、押動部との接触を通じ常時付勢がなされているので、受け皿部開口面側に移動する。この結果、着脱部の一部はキャビティー表面より突出するので、キャビティー側から着脱部を掴んで取り外すことができる。
【0042】
本発明の請求項13による発明によれば、着脱部及び受け皿部を、深さ方向に貫く貫通孔を有した構造を実現できる。これにより、金型基盤型締め状態において内部空間に存在するガスを外部に排出することができる。本発明によれば、貫通孔を含む着脱部を、金型基盤型開き状態においてキャビティー側から取り外し及び、再装着することができるので、貫通孔に詰まりが生じた場合でも、金型を分解することなく、容易に、貫通孔のクリーニングが可能になる。
【0043】
本発明の請求項14による発明によれば、機能部のキャビティー内面における方向を規定することができる。特に、着脱部が円筒形であった場合、円筒形を深さ方向に貫く中心軸を中心とした回転を防止でき効果が高い。
【0044】
本発明の請求項15による発明によれば、機能部のキャビティー内面における方向を固定することができる。特に、着脱部が円筒形であった場合、外的擾乱によって外力が加わったときには、円筒形を深さ方向に貫く中心軸を中心とした回転が生じうるが、これを防止できる。一方、機能部表面に溝を刻印しドライバーで着脱部を回転させるなど意図的に強い力を着脱部に加えた場合には、嵌合部が位置決めスプリングの収縮により着脱部の側面内部に埋入されることで、回転に際し障害物が無くなり着脱部を回転させることができる。すなわち弱い外乱の力では回転は生じず、意図的に強い力で着脱部を回転させたときには、操作用磁石によって着脱部を外すことなく同部分を回転させることができる。もちろん、必要が生じた場合には、着脱部自体も操作用磁石によって取り外しが可能となる。
【0045】
本発明の請求項16による発明によれば、着脱部の受け皿部からの取り外しにおいて、操作用磁石の正確な位置決めが可能になる。
【0046】
本発明の請求項17による発明によれば、着脱部の受け皿部からの取り外しにおいて、操作用磁石の正確な位置決めと、金型基盤のキャビティー表面の、操作用磁石の急激な接触に対する保護が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明に係る交換自在な金型部品の金型基盤型締め時において、金型基盤との関係を示す縦断面図である。
図2】本発明に係る交換自在な金型部品の金型基盤型開き時において、金型基盤との関係を示す縦断面図である。
図3】本発明に係る交換自在な金型部品Pushタイプ円柱型の深さ方向にカットした縦断面図である。(a)は着脱部が受け皿部に固定されている状態であり、(b)は解除されている状態を示す。
図4】本発明に係る交換自在な金型部品Pullタイプ円柱型の深さ方向にカットした縦断面図である。(a)は着脱部が受け皿部に固定されている状態であり、(b)は解除されている状態を示す。
図5】本発明に係る交換自在な金型部品Pullタイプ円柱型において、磁性体支持部の体積最大化を試みた例の図である。着脱部が受け皿部に固定されている状態で、(a)はA-A’に沿って横方向にカットした横断面図であり、(b)はA-A’に沿って深さ方向にカットした縦断面図であり、(c)はB-B’に沿って深さ方向にカットした縦断面図であり、(d)は着脱部の斜視図である。
図6】本発明に係る交換自在な刻印用金型部品Pullタイプリング型の断面図である。(a)は着脱部が受け皿部に固定されている状態であり、(b)は解除されている状態を示す。
図7】本発明に係る交換自在なガス抜き用金型部品Pushタイプの断面図である。(a)は着脱部が受け皿部に固定されている状態であり、(b)は解除されている状態を示す。
図8】本発明に係る交換自在な金型部品に設けられた、突条とスリットの関係を示す図である。(a)は(b)においてC-C’線に沿って横方向にカットした横断面図であり、(b)は(a)においてC-C’線に沿って深さ方向にカットした縦断面図である。
図9】本発明に係る交換自在な金型部品に設けられた、位置決め用突起と凹みの関係を示す図である。(a)は(b)においてD-D’線に沿って横方向にカットした横断面図であり、(b)は(a)においてD-D’線に沿って深さ方向にカットした縦断面図である。
図10】本発明に係る操作用磁石取り扱い治具の断面図である。(a)は、操作用磁石がキャビティーから離れている状態を示し、(b)は近接している場合を示している。
図11】従来の金型部品を示す図である。
図12】従来の金型部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係る交換自在な金型部品の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0049】
図1は射出成形装置内における、本発明に係る交換自在な金型部品の位置を示す図である。成形品の表面に情報の刻印を行う場合、図1に示すように、固定又は可動金型基盤1に凹み2を作製し、表面に情報が凹凸となって刻まれた刻印面がつけられた本発明に係る刻印用金型部品4を凹み2に装着する。該金型部品4において、情報が刻印された表面はキャビティー表面と同一面になるように調整される。型締めを行い、溶融状の合成樹脂を流し込むことにより、刻印用金型部品の表面に刻印された凹凸情報は、成形品に転写される。本発明の実施例においては、合成樹脂成形用のみならず、アルミ等の成形用金型においても適用される。
【0050】
本発明に係る交換自在な金型部品の刻印面を交換しようとするときには、図2に示すように金型基盤を型開きし、キャビティー側から操作用磁石5を近づける。金型部品内での着脱部6と受け皿部の係合が解除されるとともに、着脱部6はキャビティー表面より突出するので、突出部を掴んで着脱部6をキャビティー側から取り外すことができる。
【0051】
凹みには貫通孔も含まれる。貫通孔は、金型基盤のキャビティー表面においてみた場合、凹みとして認識されるからである。
【0052】
図1,2には、ガス抜き用金型部品3も示されている。ガス抜き用金型部品3に関しても、上記で述べた刻印用金型部品と同様に、着脱部の装着及び取り外しがなされる。
【0053】
[第一実施形態]
第一に、刻印用金型部品について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る交換自在な金型部品は、その構造に依存して、金型部品に内包される受け皿側磁石と操作用磁石の反発力により着脱部と受け皿部の固定を解除するPushタイプと、吸引力により同固定を解除するPullタイプの2つに分類される。
【0054】
[Pushタイプの構成]
図3(a)は、Pushタイプの刻印用金型部品における着脱部において、何も磁界が作用せず、着脱部24が受け皿部11に固定された状態の断面図を示している。図3(b)は、着脱部24が受け皿部11から解除された状態の断面図を示している。
【0055】
受け皿部11は、外殻体12と、蓋体13と、外側管部14と、磁石支持部15と、受け皿側磁石16及び、第一付勢手段18、第二付勢手段17より構成される。
【0056】
外殻体12は、最外殻に位置する筒形状をなしている。
【0057】
蓋体13は、外殻体12の一端に係合されて筒の底面を形成し、底部31と、底部31より受け皿部開口側に向かって筒状に延出される内側管部19からなり、内側管部19の側面には少なくとも1個のボール口20と、該開口に対応するボール21が設けられている。
【0058】
外側管部14は、外殻体12の内側に嵌入され且つ、内側管部19を取り囲んで外側に位置する筒形状をなし、外側管部側面外側は外殻体12の内面と、外側管部側面内側は蓋体13の内側管部側面外側と、それぞれ摺動可能に接している。
【0059】
外側管部14の底部は、外殻体12の底部との間に介装された第二付勢手段17により上方に付勢されている。付勢手段として、一般的には弾性手段が採用される。弾性手段としては、スプリング板バネなどが使用できるが、本構成においては、コイルスプリングが用いられている。
【0060】
磁石支持部15は、受け皿部開口側に受け皿側磁石16を支持する支持面29と、底面側に延出した延出部22よりなる。受け皿側磁石16は、支持面29上に受け皿部開口側にN極が向くよう配置されている。延出部22は、前記蓋体の内側管部19の更に内側に、受け皿部開口側より挿入され、延出部側面外側は、前記内側管部側面内側と摺動可能に接する。
【0061】
延出部22の側面外側であって、深さ方向においては受け皿部開口側に近い箇所に、少なくとも一か所のボール逃げ部23が存在する。磁石支持部15は、蓋体上面との間に介装された第一付勢手段18により上方に付勢され、受け皿部開口側寄りのポジションに位置している。
【0062】
着脱部24は、外殻体12に受け皿部開口33から挿入される。着脱部24は、外殻体12の端部を形成する上壁部25と、上壁部25から底部方向に筒状に延出されるスカート部26より構成される。スカート部26は、外殻体12の内側に摺動可能に嵌合され、スカート部26側面内側は、内側管部19側面外側と摺動可能に接している。機能部32は上壁部25にあって、刻印、ガス抜きなどの機能を付与する部分である。
【0063】
スカート部26下面には、外側管部14上面が接触しており、外側管部14を通じて第二付勢手段17により、受け皿部開口方向に付勢されており、スカート部26側面内側には、少なくとも1個のボール嵌合凹み27が設けられている。
【0064】
[Pushタイプの動作]
本発明に係る交換自在な金型部品に何も磁界が作用しないときには、磁石支持部15は第一付勢手段18のみによって支えられて、第一付勢手段18はほぼ自然長を保っている。この位置においては、ボール21は磁石支持部の延出部22の当接面30に当接し、その一部はボール口20からスカート部26に設けられたボール嵌合凹み27に突出して係止されることで、着脱部24を受け皿部11内に固定した状態になっている。
【0065】
本構造を維持させる力は、第二付勢手段17により上方に付勢された外側管部14が、スカート部26の下端を押す力である。これにより、ボール嵌合凹み27を通じてボール21に応力がかかり、ボール21を、当接面30、ボール口20及び、ボール嵌合凹み27に囲まれた空間に強固に留めると同時に、着脱部24を受け皿部11に強固に固定せしめている。
【0066】
図2に示すように、金型基盤のキャビティー側から、交換自在な金型部品に対しN極が指向するように操作用磁石5を近接させると、図3(a)の状態から反発力により受け皿側磁石16が受け皿部底面側に向かって押される。第一付勢手段18が圧縮され、磁石支持部15が底面側のポジションに移動する。移動後の様子を図3(b)に示す。
【0067】
ボール21は、スカート部ボール嵌合凹み27から、磁石支持部側面に設けられたボール逃げ部23に向かい横方向に移動する。ボール21がボール口20からボール逃げ部23寄りに位置しボール嵌合凹み27との係止を外れた状態になり、着脱部24の受け皿部11からの固定が解除される。
【0068】
スカート部26は受け皿部開口側に常時付勢されているので、ボール21とボール嵌合凹み27との係止が外れると、スカート部を受け皿部開口側に押し上げるよう移動する。その結果、着脱部24の上部が、金型基盤のキャビティー表面より突出した状態になるので、突出した部分を掴んで着脱部24を取り外すことができる。
【0069】
着脱部24を受け皿部に装着するときには、図3(b)の状態において、着脱部24を受け皿部開口面側から挿入し、第二付勢手段の効力に反して押し下げることによって、再度ボール嵌合凹み27にボール21を嵌合させて、ボール逃げ部23からボール21を排除する。この局面では、第二付勢手段と連携して、第一付勢手段の付勢力もまた以下二つの役割を果たしている。第一に、第一付勢手段の付勢力は、ボール逃げ部23に存在するテーパー状の斜面により、ボール21に横方向の分力を与え、ボール21をボール嵌合凹み27から横方向に排除する。第二に、第一付勢手段の付勢力は、係止の外れた磁石支持部を押し上げ、当初位置に戻す。以上により、着脱部を図3(a)に示す当初の係止状態に戻すことができる。
【0070】
[Pullタイプの構成]
次に、Pullタイプ、すなわち受け皿部11に内包される受け皿側磁石16と、操作用磁石5との吸引力により着脱部24と受け皿部11の係合を解除するタイプについて、図4を用いて述べる。図3に示すPushタイプで説明した構成要素と同様の機能又は作用を有する部材には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図4(a)は、何も磁界が作用せず、着脱部24が受け皿部11に係止された状態の断面図を示している。Pushタイプと異なる二つの点がある。第一に、延出部22の側面外側において、Pushタイプでは受け皿部開口側寄りの場所にボール逃げ部23があったのに対し、Pullタイプでは受け皿部底側寄りの場所にボール逃げ部23がある点である。第二に、磁界が作用しないとき、Pushタイプでは、磁石支持部15は、蓋体上面との間に介装された第一付勢手段18により上方に付勢され、受け皿部開口側寄りに位置していたのに対し、Pullタイプでは、磁石支持部15は、下方に付勢され、受け皿部底側寄りに位置している点である。
【0072】
Pullタイプに関しては、受け皿部11に内包される受け皿側磁石16は、磁石である必要がない。操作用磁石5との間に吸引力が生じればよいため、上記受け皿側磁石16の位置には、磁石ではなく、磁性体片28が存在していてもよい。磁性体とは、外部からの印加した磁界により、磁石支持部15を動かすことができる程度の磁力を生じさせる物体を意味する。
【0073】
そもそも、磁石を受け皿部11に内包することには以下の問題がある。第一に構造が複雑になり量産性が低下すること、第二に金型部品機能部32の表面に金属粉などを磁力によって集めてしまい、樹脂成形品に不良を発生させるおそれがあることである。必ずしも受け皿部に磁石を用いなくてもよいPullタイプは、Pushタイプに対して大きな優位点を所有する。
【0074】
[Pullタイプの動作]
操作用磁石5を近接させると、吸引力により受け皿側磁石16が受け皿部開口側に向かって引かれる。第一付勢手段18が伸長され、磁石支持部15が受け皿部開口側寄りのポジションに移動する。移動後の様子を図4(b)に示す。金型部品に対し指向する操作用磁石5の極性は、受け皿部11に磁石を内包させた場合、S極である必要があるが、磁性体であった場合には、S極でもN極でもよい。
【0075】
ボール21は、スカート部ボール嵌合凹み27から、磁石支持部側面に設けられたボール逃げ部23に向かって、横方向に移動する。ボール21がボール口20の位置からボール逃げ部23寄りに位置してボール嵌合凹み27との係止を外れた状態になることで、着脱部24の受け皿部11からの固定が解除される。
【0076】
スカート部26は受け皿部開口側に付勢されているので同方向に移動する。結果、着脱部24の上部が、金型基盤のキャビティー表面より突出した状態になり、突出した部分を掴んで着脱部24を取り外すことができる。
【0077】
着脱部24を受け皿部11に装着するには、図4(b)の状態において、着脱部24を受け皿部開口側から挿入し、再度ボール嵌合凹み27にボール21を嵌合させることにより、ボール逃げ部23からボール21を排除する。これにより、図4(a)に示す着脱部の係止状態に戻すことができる。
【0078】
[Pullタイプにおける磁性体体積最大化]
Pullタイプに関しては、受け皿部11に内包される受け皿側磁石16は、磁石である必要がないことはすでに述べた。しかし、磁性体を用いた場合、同じ体積の磁石を用いた場合に比べると、操作用磁石5との間に生じる吸引力は弱くなる。よって、磁性体の体積をできるだけ増加させ、弱くなった吸引力を補う必要がある。磁性体の体積を増加させるためには、受け皿側磁石16と磁石支持部15を一体の部品とし、これ自体を磁性体で作製することが考えられる。
【0079】
上記試みの一例を図5によって説明する。受け皿側磁石16と磁石支持部15を一体とした部品を磁性体支持部40と定義する。図5(d)は新しい試みによって製作された着脱部24の斜視図である。着脱部スカート部26には深さ方向に開口48が入っているのが分かる。スカート部26にはボール嵌合凹み27が存在し、着脱部24を受け皿部11に係止する機能を有するが、本機能を果たす最小限の部分を残し、その他の部分は深さ方向の開口48によって取り去られた形になっている。こうすることにより、着脱部24が受け皿部11に挿入されたとき、開口48の部分だけ受け皿部内部に新しい空間が創出される。該創出された空間に磁性体支持部40の周辺部を拡張すれば、磁性体支持部40の直径を外殻体の内面一杯まで大きくして磁性体の体積を増やすことができる。
【0080】
上記を断面図で説明する。図5(a),(b)及び(c)は、何も磁界が作用せず、着脱部24が受け皿部11に係止された状態の着脱部及び受け皿部の断面を示している。(b)はスカート部26において開口48が入っていないA-A’線(図5(a)及び(d)参照)で切られた深さ方向の縦断面である。この断面では、着脱部24のスカート部断面が見えている。本部分において、スカート部内側側面に作られたボール嵌合凹み27へボール21が嵌合し、着脱部24の受け皿部11への係合機能が果たされているのが判る。図5(c)は、着脱部スカート部26における開口48部分であるB-B’線(図5(a)及び(d)参照)で切られた深さ方向の縦断面を示す。この部分ではスカート部26は開口48のために見えておらず、その代わり開口48で生じた空間には、磁性体支持部40が、外殻体12の内面一杯まで拡張されている。このような構成上の工夫により、磁性体支持部40の体積を増やすことができ、吸引力の増加を実現することができる。交換自在な金型部品の動作の安定に寄与できる。
【0081】
本実施例において、スカート部の形は大幅に変更されているものの、着脱部の受け皿部への固定メカニズムの本質的な点については、図4を用いた説明と変わるところはなく、同様に解除メカニズムも変わることはないので、図4の説明を持って代用し、これを省略する。
【0082】
[第二実施形態]
着脱部24の受け皿部11への係止を実現する機械的構造の違いにより、二種類のデザインが示される。前述の第一実施形態では、第一付勢手段18が第二付勢手段17の内側に存在するタイプの交換自在な金型部品について述べたが、これは、磁石支持部15又は磁性体支持部40が受け皿部11の中心に円柱状に存在することから以後「円柱型」と定義する。本第二実施形態においては、第一付勢手段18が第二付勢手段17の外側に存在するタイプの交換自在な金型部品について説明する。本第二実施形態では、磁石支持部15又は磁性体支持部40が受け皿部11の中心にリング状に存在することから以後「リング型」と定義して区別する。
【0083】
[リング型(Pullタイプ)刻印金具の構造]
リング型に対しても、PushタイプとPullタイプがそれぞれ存在するが、説明を単純にするため、ここでは、Pullタイプに焦点を絞り、説明する。図6(a)は、リング型でありPullタイプの刻印用金型部品における着脱部24において、何も磁界が作用せず、着脱部24が受け皿部11に固定された状態の断面図を示している。図6(b)は、着脱部24が受け皿部11から解除された状態の断面図を示している。
【0084】
受け皿部11は、外殻体12と、環状蓋体35と、中心蓋体36と、押動部37と、磁石支持部15と、受け皿側磁石16又は磁性体片28及び、第一付勢手段18、第二付勢手段17より構成される。
【0085】
外殻体12は、最外殻に位置する筒形状をなしている。
【0086】
環状蓋体35は、外殻体12の一端に係合されて筒の底面の一部を形成し、底部と、底部より受け皿部開口側に向かって筒状に延出される内側管部19からなり、内側管部19の側面には少なくとも1個のボール口20と、該開口に対応するボール21が設けられている。
【0087】
中心蓋体36は、環状蓋体35の開放された中心部を塞ぐように係合されて、外殻体12の底部を封止している。中心蓋体36の直上に接して、第二付勢手段17が介するように設けられ、該第二付勢手段17の直上には、押動部37が戴置され、第二付勢手段17により受け皿部開口側に向かって弾装されている。
【0088】
磁石支持部15は環状を呈している。磁石支持部15は、外殻体12の内側に挿入され、磁石支持部15の穴部に着脱部24の軸部38(後述)を挿入している。三つの部品は深さ方向にそれぞれ摺動可能に接している。
【0089】
磁石支持部15は、受け皿部開口側に受け皿側磁石16又は磁性体片28を支持する支持面29と、底面側に延出した延出部22よりなる。受け皿側磁石16又は磁性体片28は磁石支持部15上に配置されている。延出部22は、前記蓋体の内側管部19の外郭に受け皿部開口側より挿入され、延出部側面内側は、前記内側管部側面外側と摺動可能に接している。
【0090】
延出部22の側面内側であって、深さ方向においては受け皿部底側に近い箇所に、少なくとも一か所のボール逃げ部23が存在する。磁石支持部15の外側には、環状蓋体35との間に第一付勢手段18が介装され、該第一付勢手段18は、磁石支持部15を下方向すなわち受け皿部底側に向かって付勢している。
【0091】
着脱部24は、外殻体12に受け皿部開口33から挿入される。着脱部24は、外殻体12の端部を形成する上壁部25と、上壁部25から底部方向に軸状に延出される軸部38より構成される。軸部上部は、磁石支持部15のリング内側に摺動可能に接し、下部は、環状蓋体35から延出した内側管部内側に摺動可能に接している。
【0092】
軸部下面には、押動部37上面が接触しており、押動部37を通じて第二付勢手段17により、受け皿部開口方向に付勢されており、軸部下部側面には、少なくとも1個のボール嵌合凹み27が設けられている。機能部32は上壁部25にあって、刻印などの機能を付与する部分である。
【0093】
[リング型(Pullタイプ)刻印金具の動作]
本発明に係る交換自在な金型部品に何も磁界が作用しないときには、磁石支持部15は第一付勢手段18で受け皿部底側に引かれている。この位置においては、ボール21は磁石支持部の延出部22の当接面30に当接し、その一部はボール口20からスカート部26に設けられたボール嵌合凹み27に突出して係止されることで、着脱部24を受け皿部11内に固定した状態になっている。
【0094】
本構造を維持させる力は、第二付勢手段17により上方に付勢された押動部37が、軸部38の下端を押す力である。これにより、ボール嵌合凹み27を通じてボール21に応力がかかり、ボール21を、当接面30、ボール口20及び、ボール嵌合凹み27に囲まれた空間に強固に留めると同時に、着脱部24を受け皿部11に強固に固定せしめている。
【0095】
操作用磁石5を近接させると、吸引力により磁石支持部15が受け皿部開口側に向かって引かれる。第一付勢手段18が伸長され、磁石支持部15が受け皿部開口側寄りのポジションに移動する。交換自在な金型部品に対し指向する操作用磁石の極性は、受け皿側磁石16が存在するときにはS極であり、磁性体片であるときにはS極でもN極でもよい。
【0096】
移動後の様子を図6(b)に示す。ボール21は、軸部ボール嵌合凹み27から、磁性体支持部側面に設けられたボール逃げ部23に向かって、横方向に移動する。ボール21がボール口20の位置からボール逃げ部23寄りに位置してボール嵌合凹み27との係止を外れた状態になることで、着脱部24の受け皿部11からの固定が解除される。
【0097】
軸部26は受け皿部開口側に常時付勢されているので同方向に移動する。結果、着脱部24の上部が、金型基盤のキャビティー表面より突出した状態になるので、突出した部分を掴んで着脱部24を取り外すことができる。
【0098】
着脱部24を受け皿部11に装着するときには、図6(b)の状態において、着脱部24を受け皿部開口側から挿入し、再度ボール嵌合凹み27にボール21を嵌合させることによって、ボール逃げ部23からボールを排除する。これにより、図6(a)に示す着脱部の係止状態に戻すことができる。
【0099】
リング型の円柱型に対する長所は、Pullタイプにおいて作製が容易いことである。Pullタイプを作製するときに問題となるのは、磁石支持部の側面に第一付勢手段であるコイルスプリングを固定するための固定片39を作製する工程である。リング型では、固定片39は磁石支持部15の筒状側面外側に旋盤加工によって作製されるが、筒の外側であるため、加工に際して外側から刃物を当てることにより容易に切削加工できる。一方、円柱型において固定片39は筒形状の内面に存在するので、これを作製するには、一旦穿った穴の内部に刃物を入れ、同刃物を内部壁に当てることによる切削加工をしなければならない。本加工は特殊形状の刃物を使用せねばならず、筒の径が小さくなるほど加工の難易度が増す。以上のような理由で、リング型は円柱型に比べて作製に容易く量産性も高い。
【0100】
逆に円柱型の利点も存在する。円柱型は、リング型のように磁石支持部15の中央に穴を設ける必要がないので、大きな容積の受け皿側磁石16又は磁性体片28を使用することができる。したがって磁石を動かすために強い相互作用力を利用することができ、動作が安定する。
【0101】
このような視点で考えた場合、今まで説明を行ってきた、Pushタイプ/Pullタイプ及び、リング型/円柱型の四つの型の中で、内包磁石が無くても動作が保障され、よって内包磁石の問題を避けることができ、製作が容易なのは、磁石の代わりに磁性体を用いたPullタイプのリング型であることが分かる。今まで述べたそれぞれの特徴を表にまとめる。
【0102】
【表1】
【0103】
[第三実施形態]
第三に、ガス抜き用金型部品について、図面を参照しつつ同様に説明する。図7には、Pushタイプのガス抜き用金型部品の縦断面を示す。図3に示すPushタイプで説明した構成要素と同様の機能又は作用を有する部材には、同一の符号を付して説明を省略する。また、着脱部の受け皿部への固定メカニズムについては、刻印用金型部品のそれと変わるところはなく、同様に解除メカニズムも変わることはないので、固定・解除動作に関しては、前述の刻印用金型部品の記述をそのまま適用できる。
【0104】
刻印用金型部品との相違点は、着脱部機能部から受け皿部底面において、深さ方向に気体を流すことができるような貫通孔が設けられている点である。具体的な相違点は以下の四点である。第一に、磁石支持部15に、深さ方向に貫く貫通孔34を設けた点、第二に、受け皿側磁石16を貫通孔を取り囲むように環状に配した点、第三に、蓋体13の底部に貫通孔を設けた点、第四に、上壁部25に貫通孔を設けて機能部32を構成した点である。
【0105】
機能部32である上壁部25において、貫通孔の径は、溶融した樹脂から発生したガスは通過できるが、樹脂はその粘性のために通過できない程度に微細である。ガスのコンダクタンスを確保するため、貫通孔は多数開けられている。このような微細な貫通孔が何らかの理由で詰まってしまっても、本発明によるガス抜き金型部品であれば、貫通孔を含む着脱部を、金型基盤型開き状態においてキャビティー側から取り外し及び、再装着することができるので、金型を分解することなく、容易に、微細なガス抜き用挿通穴のクリーニングが可能になる。
【0106】
[第四実施形態]
第四に、着脱部側面に横方向に突出する位置決め突条について、図8を用いて説明する。本金型部品では、図8(a)横断面図に示すように、着脱部24が円筒形であるとき、円筒形を深さ方向に貫く中心軸を中心として、着脱部24が回転してしまう可能性がある。位置決め突条41を設けることにより、この回転を防止でき、機能部32のキャビティー内面における方向を固定することができる。
【0107】
図8(a)に示す例では、位置決め突条41は三時の方向に存在する。金型部品をC-C’に沿ってカットした縦断面を図8(b)に示す。位置決め突条41は、深さ方向に延びて形成されており、位置決め突条41に対応する外殻体内壁には、位置決め溝42が位置決め突条41に嵌合するように設けられている。位置決め溝42は外殻体円周上30°刻みで設けられているので、着脱部24は所望の角度で固定できる。
【0108】
図9には、同様な思想で形成された位置決め突起43を示す。図9(b)D-D’断面図に示すように、位置決め突起43は三時の方向に存在する。位置決め突起43は、着脱部側面に横方向に突出し、着脱部側面に埋設される位置決め用スプリング44と、位置決め用スプリング44に配設される嵌入部45からなっている。金型部品をD-D’に沿ってカットした断面を図9(c)に示す。位置決め突起43に対応する位置決め用凹み46が外殻体内壁に設けられて、嵌入部45が嵌入している。
【0109】
本構成においては、嵌入部45は位置決め用スプリング44によって着脱部24の側面より外方へ突出しているが、位置決め用スプリング44の収縮により本突出は着脱部24の側面内部に埋入されることも可能である。金型部品の上面図である図9(a)に示すように、着脱部24の上壁部25に矢印刻印47を刻みドライバーなどでこれを回転させることで、着脱部24の円筒を深さ方向に貫く回転軸に、強い回転力を加えた場合、嵌入部45は同回転力により着脱部側面内部に埋入するため、回転に際し障害物が無くなり着脱部24は回転する。着脱部24の回転は、嵌入部45が外殻体12の側面内周に設けられた次の位置決め用凹み46に嵌入するとき、そのポジションで止まり、且つ固定され外的擾乱の弱い力では動くことが無くなる。すなわち、図9に示した位置決め突起の構成では、円筒形の着脱部を磁石によって外すことなく、円筒形を深さ方向に貫く中心軸対称に回転させることができ、尚且つ、必要に応じて、着脱部自体も交換可能である特徴を有する。
【0110】
[第五実施形態]
第五に、操作用磁石取り扱い治具50について、図10を用いて詳細に説明する。本治具50は、操作用磁石54を金型部品に近接させるための治具である。本治具50は、磁石保持用容器51、位置決め用台座57、第三付勢手段53、操作用磁石54、緩衝用シート56からなる。この実施形態において、操作用磁石54は永久磁石、電磁石のいずれもが使用できる。
【0111】
磁石保持用容器51は、上面に鍔状平面部52と、前記鍔状平面部52より下方に延出された磁石収容筒部55からなり、磁石収容筒部55内部には、操作用磁石54が収納されており、操作用磁石54の下面には、緩衝用シート56が貼設されている。
【0112】
前記位置決め用台座57は、上面及び下面に開口を有した筒形状を有している。位置決め用台座上面に存在する開口より、操作用磁石54を伴った磁石保持用容器51が摺動可能に嵌入される。位置決め用台座57上面と、磁石保持用容器51の鍔状平面部52との間には第三付勢手段53が介装され、第三付勢手段53の押勢による反発力によって、位置決め用台座57下端と、操作用磁石54の下端との距離が保持され且つ調節される。
【0113】
緩衝用シート56は、万が一、操作用磁石54がキャビティー表面に対し強い力で接触してしまったとき、キャビティー表面に傷がつくのを防止するためのものである。図10(a)のような状態で、金型基盤のキャビティー表面に本治具50を静置し、操作用磁石54を交換自在な金型部品直上に位置させる位置決めを行った上で、図10(b)に示すように、操作用磁石54と交換自在な金型部品の距離を近づけて、交換自在な金型部品内部の受け皿側磁石16を動かし着脱部24を取り外す。
【0114】
本治具50を用いることにより、操作用磁石54を金型部品直上に正確に位置させる位置決めが可能になり、万が一のときにも、キャビティー表面に傷がつくのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る交換自在な金型部品は、重量物である金型基盤自体を射出成形機から取り外すことなく、そして金型を分解することなく、刻印面取り外しのためマイナスドライバーなどを係合させる溝を刻印面に刻むことが必要なく、金型基盤の内部に磁石移動など特別な構造を形成する必要がなく、金型基盤自体の大幅な改良を行うことなく、更には金型基盤の型開きの状態から、キャビティー側より、四角形など自由な形の刻印面又は、ガス抜き用部品、それに限らず、所定の機能を有する金型部品を、簡単に交換できる交換自在な金型部品を提供する。金型を用いた樹脂成形作業の効率を高めることに寄与できる。
【0116】
本発明に係る交換自在な金型部品は、金型を用いた樹脂成形時に成形品表面に刻印を行う刻印用金型部品又は、金型内部で発生するガスを排気するガス抜き用金型部品に好適に利用される。
【符号の説明】
【0117】
2 凹み
3 ガス抜き用金型部品
4 刻印用金型部品
5 操作用磁石
6 着脱部
7 ベント穴
11 受け皿部
12 外殻体
14 外側管部
15 磁石支持部
16 受け皿側磁石
17 第二付勢手段
18 第一付勢手段
19 内側管部
20 ボール口
21 ボール
22 延出部
23 ボール逃げ部
24 着脱部
25 上壁部
26 スカート部
27 ボール嵌合凹み
28 磁性体片
29 支持面
30 当接面
31 底部
32 機能部
34 貫通孔
37 押動部
38 軸部
41 位置決め突条
42 位置決め溝
43 位置決め突起
44 位置決めスプリング
45 嵌入部
46 位置決め凹み
50 操作用磁石取り扱い治具
51 磁石保持用容器
53 第三付勢手段
54 操作用磁石
56 緩衝用シート
57 位置決め用台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12