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特許7353692ガス混合装置と、ガス混合装置を用いた放電処理装置
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  • 特許-ガス混合装置と、ガス混合装置を用いた放電処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ガス混合装置と、ガス混合装置を用いた放電処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/435 20220101AFI20230925BHJP
   B01F 23/10 20220101ALI20230925BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230925BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230925BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B01F25/435
B01F23/10
C23C16/455
H01L21/31 B
H05H1/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023015185
(22)【出願日】2023-02-03
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀切 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 智
(72)【発明者】
【氏名】杉村 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 慶
(72)【発明者】
【氏名】田村 豊
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-507513(JP,A)
【文献】米国特許第04043539(US,A)
【文献】米国特許第01698432(US,A)
【文献】特公昭34-005346(JP,B1)
【文献】実公昭33-020274(JP,Y1)
【文献】特開昭61-234915(JP,A)
【文献】特開平09-131524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 25/435
B01F 23/10
B01F 25/44 - 25/452
C23C 16/455
F17D 1/00 - 17/075
H01L 21/31 - 21/32
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種のガスを混合するためのガス混合装置であって、
直径がそれぞれ異なり、混合すべきガス種の数より多い数のパイプを多重に配置し、それらパイプが端部において他のパイプとの連通が遮断された多重構造と、
上記各パイプの側面に形成された複数のガス噴出孔と、
上記複数のパイプのうち最外層を構成する最外パイプ以外であって上記複数種の混合すべきガスをそれぞれ供給するためのパイプに設けられ、上記複数種の混合すべきガスを当該パイプにそれぞれ供給するガス供給口とを備え、
上記複数のパイプのうち最内層を構成する最内パイプ以外のパイプにおける上記ガス噴出孔のそれぞれは、当該ガス噴出孔が形成されたパイプの1つ内側のパイプに形成されたガス噴出孔におけるガスの噴出方向の延長線上以外の位置に形成され、
上記ガス供給口から供給されたガスの混合ガスが、上記最外パイプの内側空間で均一化されて上記最外パイプのガス噴出孔から外部へ噴出する構成にしたガス混合装置。
【請求項2】
上記多重構造を構成するパイプの数は、
混合すべきガスの数より1多い請求項1に記載のガス混合装置。
【請求項3】
上記ガス噴出孔が形成されたパイプごとの開口面積の総和は、上記最外パイプにおける開口面積の総和が最大となるように設定された請求項1又は2に記載のガス混合装置。
【請求項4】
上記ガス噴出孔は、各パイプの側面に当該パイプの長さ方向に沿った直線状のエリア内に形成され、
直径方向で隣り合うパイプ同士で上記ガス噴出孔が形成された直線状のエリア同士は、上記パイプの円周方向に180°位相をずらした位置に設けられた請求項1又は2に記載のガス混合装置。
【請求項5】
高電圧が印加される放電電極を備えた処理チャンバー内に、上記請求項1又は2に記載のガス混合装置を設け、上記ガス混合装置から噴出される混合ガスを、上記放電電極近傍の放電空間に噴出させる放電処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数種のガスを混合するガス混合装置と、それを用いた放電処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料の表面改質や帯電又は除電処理などの放電処理装置では、放電の強さや安定性が、処理品質に大きく影響する。放電状況は、放電電流値を測定することで評価できるが、放電が生成される放電空間の雰囲気ガスの種類や濃度が放電電流値の大きさや安定性に影響を与えることは知られている。例えば、放電空間における空気中の酸素濃度が高ければ、放電電流値は下がる。そのため、大気下の放電空間に窒素ガスを供給して、窒素ガスが混合された放電空間の酸素濃度を目的の値に調整することなどが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6792786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、目的の放電状態を安定して維持するためには、放電空間に一定に調整されたガスを供給しなければならない。
しかし、放電空間に向かって異なる種類のガスを直接供給して、その場で目的の混合ガスを生成するようにした場合、上記空間内の混合状態を均一にすることは難しい。
一方、予め濃度が調整された混合ガスを供給するためのガス混合装置もあったが、均一混合のための空間と、混合状態を維持したまま混合ガスを輸送する手段などが必要になり、装置が大型化してしまったり、ガスの混合撹拌空間の形状が複雑になってしまったりするという問題があった。
この発明の目的は、複数種のガスからなる混合ガスを、均一に精度よく生成でき、しかもコンパクトなガス混合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、複数種のガスを混合するためのガス混合装置であって、直径がそれぞれ異なり、混合すべきガス種の数より多い数のパイプを多重に配置し、それらパイプが端部において他のパイプとの連通が遮断された多重構造と、上記各パイプの側面に形成された複数のガス噴出孔と、上記複数のパイプのうち最外層を構成する最外パイプ以外であって上記複数種の混合すべきガスをそれぞれ供給するためのパイプに設けられ、上記複数種の混合すべきガスを当該パイプにそれぞれ供給するガス供給口とを備え、上記複数のパイプのうち最内層を構成する最内パイプ以外のパイプにおける上記ガス噴出孔のそれぞれは、当該ガス噴出孔が形成されたパイプの1つ内側のパイプに形成されたガス噴出孔におけるガスの噴出方向の延長線上以外の位置に形成され、上記ガス供給口から供給されたガスの混合ガスが、上記最外パイプの内側空間で均一化されて上記最外パイプのガス噴出孔から外部へ噴出する構成にしている。
【0006】
第2の発明は、上記多重構造を構成するパイプの数が、混合すべきガスの数より1多い。
【0007】
第3の発明は、上記ガス噴出孔が形成されたパイプごとの開口面積の総和は、上記最外パイプにおける開口面積の総和が最大となるように設定されている。
【0008】
第4の発明は、上記ガス噴出孔が、各パイプの側面に当該パイプの長さ方向に沿った直線状のエリア内に形成され、直径方向で隣り合うパイプ同士で上記ガス噴出孔が形成された直線状のエリア同士は、上記パイプの円周方向に180°位相をずらした位置に設けられている。
【0009】
第5の発明の放電処理装置は、高電圧が印加される放電電極を備えた処理チャンバー内に、上記請求項1又は2に記載のガス混合装置を設け、上記ガス混合装置から噴出される混合ガスを、上記放電電極近傍の放電空間に噴出させる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、パイプに供給されたガスが、そのパイプのガス噴出孔からひとつ外側のパイプ内に噴出し、さらにその外側のパイプに噴出することを繰り返し、最外パイプに達した均一な混合ガスを、最外パイプのガス噴出孔から外部へ噴出させることができる。
【0011】
特に、直径方向で隣り合うパイプに形成されたガス噴出孔の位置がガスの噴出方向の延長線上に並ばないようにしているので、内側のパイプのガス噴出孔から噴出したガス流が、そのまま外側のパイプのガス噴出孔を通過するようなことがなく、外側のパイプ内でガスが撹拌されることになる。
また、多重構造を構成するパイプの数が、混合すべきガスの数より多いので、ガスが供給されるパイプ以外のパイプでは、新たなガスが供給されることない。そのため、ガスが供給されないパイプ内ではガスの撹拌が行なわれ、混合ガスの均一化がより促進される。
さらに、ガスの供給及び混合を多重構造のパイプで実現できるため、装置をコンパクトにすることができる。
【0012】
第2の発明によれば、パイプの数を、混合すべきガスの数より1だけ多くしているので、ガスの均一化を実現しながら、装置の大型化を防止できる。
【0013】
第3の発明によれば、最内パイプから最外パイプに至る過程で、パイプ内のガス量が多くなるが、最外パイプのガス噴出孔の開口面積を大きくしているため、外部へのスムーズな混合ガス噴出が可能になる。
【0014】
第4の発明によれば、各パイプには、一定の方向にガス噴出孔を形成するだけで足り、その製造が容易になる。しかも、直径方向で隣り合うパイプに形成されるガス噴出孔の位置が円周方向に180°位相をずらしたエリアであり、最も遠い位置関係を維持している。したがって、内側のパイプのガス噴出孔から噴出したガスが、その一つ外側のパイプのガス噴出孔に直接達することはないし、外側のガス噴出孔に達するまでに長い流路を通過するので、混合ガスが均一混合されやすい。
【0015】
第5の発明によれば、精度よく均一化された目的の混合ガスを、放電空間に供給することで、安定した放電による均一な処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態の軸方向の断面図である。
図2図2は、第1実施形態の直径方向の拡大断面図である。
図3図3は、第2実施形態の直径方向の拡大断面図である。
図4図4は、第3実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
この発明の第1実施形態のガス混合装置を、図1,2を用いて説明する。図1は、装置を構成するパイプの軸方向断面図であり、図2は、パイプの直径方向の断面図である。
第1実施形態のガス混合装置Aは、2種類のガスを混合する想定で、図1,2に示すように、ガス種の数より1多い数の、直径の異なる3本の第1~第3パイプ1,2,3の軸心を一致させた多重構造を備えている。
【0018】
直径が最小の最内層を構成する最内パイプとなる第1パイプ1と、最外層を構成する直径が最大の最外パイプとなる第3パイプ3との間に、第2パイプ2が設けられ、各パイプの間隔が略均等になるようにし、各パイプの容量が、直径方向で外側になるにしたがって大きくなるように構成されている。
第1~第3パイプ1~3の一端側は、それぞれキャップ1a,2a,3aで塞がれている。
【0019】
また、第2,第3パイプ2,3の他端側は、それぞれ、第1,第2パイプ1,2を貫通させるキャップ2b,3bで閉鎖されている。
このように第1~第3パイプ1~3は、それらパイプの両端部において他のパイプとの連通が遮断されている。
【0020】
さらに、第1パイプ1の他端には、第1のガスGaを供給するためのガス供給口6が設けられ、第2パイプ2の他端側側面には、第2のガスGbを供給するためのガス供給口7が設けられている。これらガス供給口6,7には、図示しない各ガス供給源がそれぞれ接続され、第1,2のガスGa,Gbが、供給されるようにしている。
なお、第1,2パイプ1,2のうち、容量が大きい外側の第2パイプ2に供給する第2のガスGbの供給流量を、第1のガスGaの供給流量よりも多くなるようにしている。
【0021】
さらに、第1,2,3パイプ1,2,3の側面には、それぞれ複数のガス噴出孔8,9,10がパイプの長さ方向に一列に形成されている。
これらのガス噴出孔8,9,10は、図1,2に示すように、上記パイプ1,2,3の円周方向に180°位相をずらした位置に設けられている。
【0022】
また、各パイプ1,2,3に一列に形成された上記ガス噴出孔8,9,10は、その数は等しいが、各ガス噴出孔の開口面積がガス噴出孔8,9,10の順に大きくなるようにしている。
したがって、ガス噴出孔8,9,10の開口面積のそれぞれの総和は、最内パイプである第1パイプ1から最外パイプである第3パイプ3の順に大きくなるように設定されている。
【0023】
[作用・効果等]
第1実施形態のガス混合装置では、ガス供給口6から第1のガスGaを供給するとともに、ガス供給口7から第2のガスGbを供給することによって、2種類のガスGa及びGbの混合ガスを生成することができる。
第1パイプ1に供給された第1のガスGaは、図2に示す細線の矢印のように、第1パイプ1のガス噴出孔8から第2パイプ2内へ噴出する。第2パイプ2には、点線の矢印で示した第2のガスGbが供給され、上記ガス噴出孔8から噴出した第1のガスGaと第2パイプ2内で混合され、第2パイプ2のガス噴出孔9から第3パイプ3内へ噴出する。さらに、混合ガスは、第3パイプ3に形成されたガス噴出孔10から装置外へ供給される。
【0024】
なお、第1パイプ1に形成されたガス噴出孔8と第2パイプ2に形成されたガス噴出孔9とは円周方向で180°位相をずらして、すなわちガス噴出孔9が、1つ内側のパイプである第1パイプ1に形成されたガス噴出孔8からのガス噴出方向の延長線上に位置していない。そのため、ガス噴出孔8から噴出したガスが直接ガス噴出孔9から第3パイプ3へ噴出するようなことが起こらない。したがって、第2パイプ2内で、第1のガスGaと第2のガスGbとが十分に混ざり合うことになる。
【0025】
また、第2パイプ2に形成されたガス噴出孔9に対し、第3パイプ3に形成されたガス噴出孔10も、1つ内側のパイプである第2パイプ2に形成されたガス噴出孔9と円周方向で180°位相をずらしている。そのため、第2パイプ2内で混ざり合ったガスが、第3パイプ3内を通過する過程でさらに混合される。このように、最外パイプである第3パイプ内に混合ガスを通過させることで、第3パイプ3の内側空間で混合ガスを十分に混ぜ合わせることができる。その結果、ガス噴出孔10から噴出する混合ガスは、2種類のガスGa及びGbが均一混合されたものとなる。
【0026】
また、第1実施形態では、パイプの多重構造が、ガスの供給路と混合容器との機能を同時に実現でき、装置のコンパクト化を実現できる。例えば、外径34〔mm〕の第3パイプ3内に第1,2パイプ1,2を組み込んだガス混合装置Aで、流量が100〔L/min〕の混合ガスを噴射させることができる。
【0027】
さらに、この第1実施形態では、パイプの多重構造において、各パイプにおける一つのガス噴出孔8,9,10の開口面積を、ガス噴出孔8,9,10の順に大きくし、各パイプにおけるガス噴出孔の開口面積の総和が、最内パイプから最外パイプの順に大きくなるように設定しているため、ガスが、内側のパイプに向かって逆流することがなく、最外の第3パイプ3から混合ガスをスムーズに噴出させることができる。
【0028】
なお、各パイプ1,2,3におけるガス噴出孔8,9,10の開口面積の総和を、第1パイプ1から第3パイプ3の順に大きくなるようにするためには、一つのガス噴出孔の開口面積を調整するほか、ガス噴出孔の個数を変化させることによって調整することもできる。
ただし、少なくとも、最外パイプの開口面積の総和を、他の各パイプの開口面積の総和よりも大きくすれば、最内パイプから最外パイプの順に開口面積の総和を大きくしなくても、最外パイプからの混合ガスの噴出をスムーズにすることはできる。
【0029】
また、この第1実施形態では、ガス供給口6,7を備えた第1パイプ1及び第2パイプ2のうち、容量の大きい第2パイプ2に供給流量の多い第2のガスGbを供給し、容量の小さい第1パイプ1に供給流量の少ない第1のガスGaを供給するようにしている。このように、容量の大きい第2パイプ2に、供給流量の多い第2のガスGbが供給されるので、ガスの逆流などが起こらず、スムーズなガス流によってより効率的なガス混合ができる。
【0030】
[第2実施形態]
第2実施形態を、図3を用いて説明する。図3は、第2実施形態の直径方向の断面図である。
第2実施形態は、3種類のガスの混合ガスを生成するガス混合装置Bである。
図3に示すガス混合装置Bは、上記第1実施形態と同様の第1~第3パイプ1~3の外側に、さらに第4パイプ4及び第5パイプ5を備えた多重構造からなる。
したがって、この第2実施形態では、第5パイプ5が最外パイプである。
【0031】
第4,第5パイプ4,5の一端側は、図1に示す第1~第3パイプ1~3と同様に、図示しないキャップで塞がれ、第2~第5パイプ2~5の他端側は、図1に示すキャップ2b,3bのように中央に貫通孔を有するキャップで塞がれている。
また、この第2実施形態では、第4パイプ4に図示しないガス供給口が設けられ、第3のガスGcを供給するようにしている。
【0032】
第1~第5パイプ1~5にはそれぞれ、各パイプ1~5の長さ方向に一列にガス噴出孔8,9,10,11,12が形成されている。これらのガス噴出孔8,9,10,11,12も、第1実施形態と同様に直径方向で隣り合うパイプ同士で、円周方向に180°位相をずらした位置関係を保っている。また、パイプごとの開口面積の総和は、最内パイプである第1パイプ1から最外パイプである第5パイプ5の順に大きくなるように設定されている。
【0033】
[作用・効果等]
第2実施形態では、図3に示すように、第1パイプ1に第1のガスGaを、第2パイプ2に第2のガスGbを、第4パイプ4に第3のガスGcを供給すると、これら3種のガスの混合ガスが第5パイプ5のガス噴出孔12から噴出される。
この第2実施形態では、第1パイプ1に供給されたガスGaがガス噴出孔8から第2パイプ2内へ噴出し、第2パイプ2のガス噴出孔9に到達する過程で、第2パイプ2に供給された第2のガスGbと混ざり合う。
【0034】
第1のガスGaと第2のガスGbとの混合ガスは、第2パイプ2のガス噴出孔9から第3パイプ3内へ噴出する。この第3パイプ3には、ガス供給口を設けず新たなガスが供給されないため、2種類のガスの混合ガスは、第3パイプ3内を通過してガス噴出孔10から噴出するが、その間にガスGaとGbとが均一に混合される。
この混合ガスは、第4パイプ4内に噴出し、第4パイプ4に波線の矢印のように供給された第3のガスGcと合流し、ガス噴出孔11から第5パイプ5へ噴出する。
【0035】
この第2実施形態においても、パイプの多重構造が、ガスの供給路と混合容器との機能を同時に実現でき、装置のコンパクト化を実現できる。
なお、第2実施形態では、混合するガス種の数よりパイプの数を2多くして、最外パイプである第5パイプ5だけでなく、第3パイプ3にもガス供給口を設けずに、これらパイプの内側空間で混合ガスを撹拌してより均一な混合ガスが生成されるようにしている。
ただし、多重構造を形成するパイプの数が多くなれば、装置が大型化するので、装置をよりコンパクト化するためには、供給するガス種の数より1だけ多いパイプで多重構造を形成し、ガス供給口を設けていない最外パイプを備えることが好ましい。
【0036】
第1,2実施形態において、各パイプの直径方向の間隔が小さいほどその間を流れるガス流を撹拌でき、均一性を上げることができる。しかし、その分、流路抵抗が大きくなるため、必要な混合ガス量に応じて、各パイプの直径やパイプ間距離を選択することが好ましい。
【0037】
また、直径方向で隣り合うパイプのガス噴出孔の位置関係は、一つ内側のパイプのガス噴出孔におけるガスの噴出方向の延長線上に位置しなければよく、上記のように円周方向に180°位相をずらすものに限らない。例えば、円周方向の位相をずらさずに、内側のパイプのガス噴出孔の位置と外側のパイプのガス噴出孔の位置をパイプの長さ方向でずらして、内側のパイプのガス噴出孔と外側のパイプのガス噴出孔とが対向しないようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、各パイプに形成するガス噴出孔を一列に配置しているが、ガス噴出孔の配置は一列に限らない。パイプの側面全体に不規則に配置されていてもかまわない。
【0038】
ただし、各パイプの長さ方向に沿った直線状のエリア内にガス噴出孔を形成するようにすれば、加工性が上がる。そして、直線状のエリア内には、一列だけでなく、例えばガス噴出孔を二列に配置したり、千鳥に配置したりしてもよい。さらに、上記のように、直線状のエリア内に一列にガス噴出孔を配置すれば、より加工性を上げることができる。
【0039】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の放電処理装置の概略構成図である。この第3実施形態は、上記第1実施形態のガス混合装置Aを利用した放電処理装置である。
この第3実施形態の放電処理装置は、処理チャンバー13内に、処理対象物wを支持する支持部材14と、その上方で処理対象物wと対向する放電電極15とが設けられている。上記放電電極15には電源16が接続され、この電源16から放電電極15に高電圧を印加することによって、放電空間S内に放電を発生させる。この放電エネルギーによって、処理対象物wの表面が改質されるようにしている。なお、上記電源16は、処理チャンバー13の外部に設けられていてもよい。
【0040】
また、放電空間Sの近傍、すなわち放電電極近傍には、図1,2に示したガス混合装置Aが設けられている。このガス混合装置Aは、第1パイプ1及び第2パイプ2にガス供給口6,7を備えている(図1,2参照)。そして、ガス供給口6には第1のガスGaとして空気を供給し、ガス供給口7には第2のガスGbとして窒素ガスを供給する。そして、空気、窒素ガスの供給流量を調整し、第3パイプ3のガス噴出孔10からは、大気より低い所定の酸素濃度に調整された混合ガスを噴出させるようにしている。
なお、この第3実施形態では、第1パイプ1に供給する空気の供給流量に対して、第2パイプ2に供給される窒素ガスの供給流量を多くしている。
【0041】
[作用・効果等]
この第3実施形態では、第1パイプ1に供給された空気が、ガス噴出孔8から第2パイプ2に噴出し、第2パイプ2に供給された窒素ガスと第2パイプ2内で混合し、第3パイプ3内で均一混合されてから放電空間Sに向かって噴射する。
ガス混合装置Aから噴射される混合ガスの酸素濃度は、ガス混合装置Aに供給された空気と窒素ガスの供給流量の比率で設定される。空気と窒素ガスとは均一混合されているため、放電空間S内の酸素濃度は、時間的及び空間的なばらつきを小さくできる。実際に、酸素濃度のばらつきを5%以内に制御できることを確認している。
【0042】
このように、放電空間の酸素濃度を正確に制御できるので、放電電流値も正確に制御することができる。
放電電流値を制御するためには、放電電極15の位置や、放電電極15への印加電圧を制御することも考えられる。しかし、放電電極15の位置を変更する機構を設ければ処理チャンバー内が複雑になるし、電源16によって印加電圧を微妙に制御することは難しい。
【0043】
これに対し、放電空間Sの酸素濃度を制御するためには、ガス混合装置Aに供給するガス量を、ガス供給源側で制御すればよい。ガス混合装置Aは、上記したようにコンパクトな装置であり、このガス混合装置Aによって、放電空間Sの酸素濃度を制御するために、処理チャンバー13が、大型化したり、内部構造が複雑になったりすることはない。
【0044】
なお、処理チャンバー13内に設置されるガス混合装置は、上記第1実施形態のガス混合装置Aに限らず、必要な混合ガスの数に応じた多重構造を備えたものを設けることができる。また、放電電極の構造も、特に限定されない。
さらに、処理対象物やその支持部材も、この実施形態に限定されず、放電処理には、表面改質、除電、帯電などの処理が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明のガス混合装置は、均一な混合ガスを必要とする、様々な場面で有用である。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3,4,5 第1~5パイプ
8,9,10,11,12 ガス噴出孔
13 処理チャンバー
15 放電電極
16 電源
【要約】
【課題】 複数種のガスからなる混合ガスを、均一に精度よく生成でき、しかもコンパクトなガス混合装置を提供することである。
【解決手段】 直径がそれぞれ異なり、混合すべきガス種の数より多い数のパイプ1~3を多重に配置し、端部において他のパイプとの連通が遮断された多重構造と、各パイプ1~3の側面に形成された複数のガス噴出孔8,9,10と、最外パイプ3以外であって混合すべきガスを供給するためのパイプ1,2に設けられたガス供給口6,7とを備え、最内パイプ1以外のパイプ2,3におけるガス噴出孔9,10のそれぞれは、当該ガス噴出孔が形成されたパイプ2,3の1つ内側のパイプ1,2に形成されたガス噴出孔8,9におけるガスの噴出方向の延長線上以外の位置に形成され、ガス供給口6,7から供給されたガスGa及びGbの混合ガスが、最外パイプ3の内側空間で均一化されてガス噴出孔10ら外部へ噴出する構成にした。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4