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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】スピーカースタンド
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
H04R1/00 318A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023082276
(22)【出願日】2023-05-18
【審査請求日】2023-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310016175
【氏名又は名称】ティグロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】沖野 賢太郎
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-136852(JP,A)
【文献】実開平3-34387(JP,U)
【文献】特開平8-237781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
G10K 11/16-11/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーを設置する天板と、内部に空洞を有する筒状に形成され前記天板を下方側から支持する支柱と、前記支柱を立設する底板を備えるスピーカースタンドにおいて、
前記支柱内部に配置した吸音部材と、
前記支柱内部に充填した砂状材と、
前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、
前記支柱内部において、前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備え、ルームチューニング機能を付加したことを特徴とするスピーカースタンド。
【請求項2】
スピーカーを設置する天板と、内部に空洞を有する筒状に形成され前記天板を下方側から支持する支柱と、前記支柱を立設する底板を備えるスピーカースタンドにおいて、
前記支柱内部の底部側に配置した吸音部材と、
前記支柱内部の前記吸音部材よりも上方に充填した砂状材と、
前記支柱の上部側に設けた前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、
前記支柱内部において、該支柱の内壁に沿って前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備え、ルームチューニング機能を付加したことを特徴とするスピーカースタンド。
【請求項3】
前記砂状材は、フレキシブルな袋又は容器に入れられた状態で前記支柱内部に充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカースタンド。
【請求項4】
前記支柱の内壁にリブを設け、該リブによって前記支柱の内壁と前記砂状材を入れた袋又は容器との間に、前記支柱の内壁に沿って前記吸音部材まで連通する空間を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカースタンド。
【請求項5】
前記支柱内部において、前記砂状材よりも上方側に配置し、前記砂状材に内圧をかけるストッパー部材をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカースタンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーを設置するスピーカースタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカースタンドは、スピーカーを設置するオーディオ器具の一つである。但し、スピーカースタンドは、単にスピーカーを載せるためのものではなく、スピーカーを床などの設置面から離すことで共振によるノイズなどの発生を抑制する制振機器として機能する。また、ユーザー(聴取者/視聴者)の例えば耳の位置に適した聴取ポイントにスピーカーを配置する高さ調整の役割も有する。制振機能はスピーカーのグレードによって優劣があるものの、スピーカースタンドは、この制振機能と高さ調整によって音質を整えることが可能である。
【0003】
スピーカースタンドの種類としては、スピーカーを載せる天板,支柱及び底板を主要な構成とするものが知られている。このタイプのスピーカースタンドに更なる音質調整効果を付与するために、支柱内部に砂などを充填し、重心の調整及び支柱内部での共鳴を抑制することも行われている(例えば、特許文献1~5)。
【0004】
このようにスピーカースタンドは、音質を整えることに関して従来においても完成された技術と言える。しかしながら本願発明者は、更なる改良の余地があると考え、鋭意研究を行ってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7261455号公報
【文献】特開2008-211751号公報
【文献】公開実用昭54-137339号公報
【文献】公開実用昭51-11039号公報
【文献】特開平08-79867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、これまでにない新たな機能を付加したスピーカースタンドを提供することにある。特に、スピーカースタンドにルームチューニングを融合させた新規なスピーカースタンド(ルームチューニングスタンド)を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)本発明のスピーカースタンドは、スピーカーを設置する天板と、内部に空洞を有する筒状に形成され前記天板を下方側から支持する支柱と、前記支柱を立設する底板を備えるスピーカースタンドにおいて、前記支柱内部に配置した吸音部材と、前記支柱内部に充填した砂状材と、前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、前記支柱内部において、前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備え、ルームチューニング機能を付加したことを特徴とする。
(2)本発明のスピーカースタンドは、スピーカーを設置する天板と、内部に空洞を有する筒状に形成され前記天板を下方側から支持する支柱と、前記支柱を立設する底板を備えるスピーカースタンドにおいて、前記支柱内部の底部側に配置した吸音部材と、前記支柱内部の前記吸音部材よりも上方に充填した砂状材と、前記支柱の上部側に設けた前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、前記支柱内部において、該支柱の内壁に沿って前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備え、ルームチューニング機能を付加したことを特徴とする。
(3)前記砂状材は、フレキシブルな袋又は容器に入れられた状態で前記支柱内部に充填されている。
(4)前記支柱の内壁にリブを設け、該リブによって前記支柱の内壁と前記砂状材を入れた袋又は容器との間に、前記支柱の内壁に沿って前記吸音部材まで連通する空間を形成している。
(5)前記支柱内部において、前記砂状材よりも上方側に配置し、前記砂状材に内圧をかけるストッパー部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スピーカーを設置する天板、支柱及び底板を備えるスピーカースタンドにおいて、支柱内部に吸音部材を配置すると共に砂状材を充填し、更に開口部から吸音部材まで連通する空間を有する構成としたことにより、スピーカースタンドにルームチューニング機能を付加することを実現した。その結果、スピーカースタンドにルームチューニングを融合させた、これまでにない新規なスピーカースタンド(ルームチューニングスタンド)を提供することを可能にした。
【0009】
本発明者は、スピーカーを「仮想的に宙に浮かす」ことをコンセプトに鋭意研究を行い、そして本発明を完成するに至った。スピーカースタンドにルームチューニングを融合させた、これまでにない新規なスピーカースタンド(ルームチューニングスタンド)は、物理的にはスピーカースタンドの上に載っているものの、音質的にはスピーカーだけが宙に浮いているような理想の状態を実現でき、その効果を確認する試聴において有識者にも作用・効果を認めて頂いている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に従うスピーカースタンドの斜視図である。
図2】上記スピーカースタンドの上部側に設けた開口部を示す斜視図である。
図3】上記スピーカースタンドの内部構成図である。
図4】上記スピーカースタンドの支柱の各部位の断面図である。
図5】上記スピーカースタンドの支柱に充填する砂状材の説明図である。
図6】上記スピーカースタンドの使用状態を示す斜視図である。
図7】上記スピーカースタンドをルームチューニングアクセサリーとした実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うスピーカースタンドについて、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態によって何ら限定解釈されることはない。
【0012】
本実施形態のスピーカースタンド1は、図1に示すように、天板部材である天板2、支柱3、底板部材である底板4を主要な構成として備える。このタイプのスピーカースタンド1が適用されるスピーカーの種類は、特に制限はなく、脚部を有しないスピーカー全般に適用可能である。その中でも、ブックシェルフスピーカーなどに適している。
【0013】
天板2は、スピーカースタンド1の上部に配置され、スピーカーSは、その上面に設置する(図6参照)。天板2は一例として、平面形状が四角形の板状部材で形成している。勿論、天板2の平面形状は、四角形以外でもよい。天板2は、好ましくは材質が異なる複数の板状部材を積層した構成とすることができる。一例として、上層側の厚み6mmの鉄板(スチール板)と下層側の厚み3mmのアルミニウム板を張り合わせた構成とする。厚みは適宜変更してもよい。平面形状のサイズもスピーカーSに合うように適宜決めてよい。スピーカーSは、天板2の上面に直接設置してもよく、間に他の部材を介在させてもよい。他の部材は、インシュレーター,すべり止めのスペーサー,スパイクなどである。さらに、スピーカーSと天板2を固定する手段を追加してもよい。
【0014】
天板2は、固定手段によって着脱自在に支柱3と接続する。但し、特に図2に示すように、天板2と支柱3の間にスペーサー21を介在させて開口部22を設ける。支柱3は、スペーサー21を介して天板2の裏面中央部に接続し、天板2を下方から支持する。開口部22は、天板2と支柱3との隙間が、例えば10mmとなるようにスペーサー22の長さを設定する。この開口部22は、詳しくは後述する支柱内部の空洞32と連通する。
【0015】
天板2と支柱3を固定する固定手段の一例は、ネジ23である。皿ネジを用いて、ネジ23の頭部が天板2の表面よりも高くならないようにすると好ましい。スペーサー21の一例は、一端が雌ネジで他端が雄ネジとなっているタップである。外形が六角形状であればスパナなどで取り付け易い。この例の場合、天板2に形成した開口穴にネジ23を嵌入し、天板2の裏面側に配置したスペーサー21としてのタップの雌ネジに螺合する。そして、タップの雄ネジを支柱3に形成したネジ穴31(図4(a)参照)に螺合することによって、天板2と支柱3を接続する。スペーサー21とネジ23の材質は、金属が好ましい。
【0016】
支柱3は、内部が空洞32の筒状部材で形成する。図1図4には一例として、四角柱の筒状部材で形成した支柱3を示しているが、四角柱以外の形状であってよい。他の形状の一例は、円柱,楕円柱,三角柱,多角柱,流線形柱などである。また、四角柱の向きを例えば45度回転させて角の部分が前方を向くようにしてもよい。上述したように天板2と支柱3の間には開口部22を設けている。従って、支柱内部の空洞32は、開口部22と連通し、さらに開口部22を介して外部空間と連通している。
【0017】
支柱3の材質は、マグネシウム合金が好ましい。より好ましくは、マグネシウムにマンガンを混ぜて強度を向上させた合金、或いは、アルミニウム3%と亜鉛1%を含むマグネシウム合金(AZ31)などである。マグネシウム合金で形成した支柱3は、振動吸収性能に優れている。但し、支柱3の材質が限定されることはなく、他の材質であってよい。例えば、アルミニウム,鉄,木材などである。四角柱の支柱3の場合、断面サイズの一例は、60mm×60mmであり、厚みは2~3mmである。支柱3の長さの一例は、280mm~1100mmである。例えば700mm,800mmm,900mmといった長さの異なる支柱3のバリエーションを用意しておき、スピーカーSを設置する空間(室内等)に応じて長さを選択するようにしてよい。
【0018】
支柱内部の壁面(内壁)には、特に図4(a)~(d)に示すように、定在波を抑制するリブ33を設けている。定在波は、スピーカーSから音を出力した際に室内空間等に発生し、音がこもる原因となる。また、支柱内部の定在波は、支柱内部に共鳴が起きる原因ともなる。定在波を抑制するリブ33は、好ましくは、内側に向けて起立するフィン状のリブ33を、例えば支柱3の上端から下端にまで形成する。さらに、複数のリブ23が、支柱3の内壁に間隔をおいて並ぶように配置する。図4(a)~(d)の例では、四角状の内壁の各辺に、4本のリブ33を好ましくは等間隔に配置している。一方、支柱3の外側表面に溝34を形成し、例えばスピーカースタンド1の意匠性を高めるようにしてよい。支柱3は、筒状の支柱本体、リブ33,スペーサー21を接続するためのネジ穴31を形成する部位、表面の溝34などを含めて一体成型によって形成する。一体成形は、例えば押出成型である。
【0019】
底板4は、図1に示すように、支柱3の下端側に配置され、支柱3を立設するベースとなる。底板4は、一例として、平面形状が四角形の板状部材で形成している。勿論、底板4の平面形状は、四角形以外でもよい。底板4は、好ましくは材質が異なる複数の板状部材を積層した構成とすることができる。一例として、上層側の厚み9mmの鉄板(スチール板)と下層側の厚み2mmのアルミニウム板を張り合わせた構成とする。厚み及び平面形状のサイズは適宜変更できるが、天板2よりも重くなるようにすると、安定性が確保できて良い。天板2と底板4は、支柱3とは異なる材質としている。底板4は、例えば四隅にスパイク41を配置して、床などの設置面から浮かすのが好ましい。これにより、振動を抑制すると共に、スピーカースタンド1を安定して設置することができる。
【0020】
底板4は、固定手段によって着脱自在に支柱3と接続する。底板4と支柱3の間には開口部を設けず、底板4と支柱3とを直接接続する。但し、密閉性を確保するシール材等を挟んでもよい。底板4と支柱3を固定する固定手段の一例は、天板2と同様、皿ネジなどのネジ23である。そして底板4に形成した開口穴にネジ23を嵌入し、支柱3の下端に形成したネジ穴31(形状は図4(a)参照)に螺合することによって、底板4と支柱3を接続する(不図示)。
【0021】
支柱内部の空洞32には、特に図3に示すように、底部側から上部側に向かって順に、吸音部材35、砂状材36、ストッパー部材37を配置する。図には一例として、吸音部材35、砂状材36及びストッパー部材37の層が接するように配置しているが、その間に別の部材を介在させた構成が除外されることはない。
【0022】
吸音部材35は、吸音特性を有する素材で形成する。素材の一例は、フェルトである。特に、ルームチューニング材としても採用されているものが好ましい。具体的な一例を挙げると、エスカート社製のルームチューニング材に採用されているフェルト材が好適である。吸音部材35は、一例として扁平の立方形状に形成する。特に図4(d)に示すように、支柱内部のリブ33の先端部と接する輪郭であることが好ましい。これによりリブ33同士の間に空間38を確保することができる。この空間38は、後述するように音伝播空間として作用し、吸音部材35の吸音特性と相まってルームチューニング機能が発現する。吸音部材35は、同様の形状のものを上下に複数積層してもよく、或いは厚みを調整した単独であってもよい。図3の例では2枚の吸音部材35を配置しているが、数を変えてルームチューニング特性を調整してもよい。支柱3が四角柱の場合、好ましい形状は立方形状であるが、円柱形,三角柱形,多角柱形など例えば支柱3の形状に応じて他の形状にしてもよい。
【0023】
砂状材36は、直接充填するのではなく、袋に入れた状態で支柱内部に充填する。これにより、特に図4(c)に示すように、リブ33同士の間の空間38が砂状材36で埋まらず、上下に連通する空間38を確保することができる。この空間38は、前述したようにルームチューニング機能を発現するのに寄与する。また、袋に入れた状態で充填することによって、砂状材36をこぼさずにスピーカースタンド1を組み立て/分解できるという利点もある。
【0024】
砂状材36の好ましい一例は、珪砂であり、より好ましくは7号珪砂である。勿論、砂状であれば珪砂以外の微粒子であってもよい。砂状材36を入れる袋は、フレキシブルな素材で形成した袋である。内部の砂状材36が視認できる透明性/半透明性を有しているのが好ましい。具体的には、ビニールなどの樹脂で形成した袋である。図5に一例を示すように、砂状材36を入れた袋36aは、容量の異なるものを用意してよい。図5(a)の大サイズのものは、袋36aを長尺形状にし、砂状材36を入れた後、開口部を例えば熱融着するなどして密閉にしている。但し、砂状材36の量が多すぎると袋36aが変形できず支柱内部に入れるのが難しくなる。そのため、袋36aの最大容量の半分くらい砂状材36を入れて袋36aの中で砂状材36が流動可能なようにしておくと、支柱内部に袋36aのまま充填し易くなる。大サイズのものは、支柱内部に例えば2袋充填し、重心の調整及び支柱内部での共鳴を抑制する。図5(b)の平面形状を概ね四角形状とした小サイズのものは、砂状材36の充填量を微調整するのに用いる。但し、例えば大サイズの砂状材36の量を支柱3のサイズに適した量にして充填するようにすれば、小サイズのものは必ずしも必要ではない。また袋36aに代えて容器としてもよい。
【0025】
ストッパー部材37は、図3に示すように、砂状材36を入れた袋36aを支柱内部で押えて、砂状材36および袋36aが動くのを抑制する。砂状材36と袋36aが支柱内部で動くと音質に影響することが懸念される。また、袋36aの表面がリブ33等と擦れて破けてしまうことが懸念される。そのため、ストッパー部材37で上から押えて内圧をかけるようにしている。ストッパー部材37は、弾性を有する部材で形成するのが好ましい。具体的にはゴムである。ストッパー部材37は、一例として立方形状に形成する。特に図4(b)に示すように、支柱内部のリブ33の先端部と接する輪郭であることが好ましい。これによりリブ33同士の間に空間38を確保することができる。さらにリブ33先端部との摩擦抵抗によってストッパー部材37が固定され、砂状材36を押えた状態を保持できる。また、弾性を有することで砂状材36の量を変えるなどするときに支柱内部から取り出し易い。図3の例では単独のストッパー部材37を配置しているが、同様の形状のものを上下に積層してもよい。支柱3が四角柱の場合、好ましい形状は立方形状であるが、円柱形,三角柱形,多角柱形など例えば支柱3の形状に応じて他の形状にしてもよい。ストッパー部材37の向きも例えば吸音部材35と同じ向きにしてよい。反対に、吸音部材35の向きをストッパー部材37と同じ向きにしてもよい。
【0026】
上述のスピーカースタンド1は、組み立てられた完成品を販売等してもよく、ユーザーが組み立てられるように各パーツを分解した状態で販売等してもよい。この場合、ユーザーは、支柱3の底部側から支柱内部に吸音部材35を嵌め込み、底板4を支柱3に接合する。その後、支柱3の上部側から袋36aに入れたまま砂状材36を充填し、さらにストッパー部材37を嵌め込んで棒等で押し込む。砂状材36の充填量は、支柱内部に入れる袋36aの数によって調整することができる。その後、スペーサー21を介して天板2を接合する。砂状材36の量を変えたり、スピーカースタンド1を分解したりする場合は、逆の手順で行われるが、砂状材36が袋36aに入っているので砂状材36がこぼれることがなく、作業が容易である。
【0027】
このような構成のスピーカースタンド1は、(1)スピーカーSを床などの設置面から離すことで共振によるノイズなどの発生を抑制する制振機能、(2)ユーザーの例えば耳の位置に適した聴取ポイントにスピーカーSを配置する高さ調整機能、(3)支柱内部に砂状材36を充填したことによる重心の調整及び支柱内部での共鳴を抑制する音質調整機能に加え、見た目はスピーカースタンド1のままでも新たにルームチューニング機能を発揮することが可能である。すなわち、開口部22から支柱3の内壁に沿って吸音部材35まで連通する空間38(音伝播空間)を、支柱3の上部から底部にまで、安定的に確保したことにより、新たにルームチューニング機能を発揮することが可能となったのである。吸音部材35を支柱3の底部側に配置したことにも、スピーカーSから出力された音まで吸収してしまうことを抑える効果がある。その結果、物理的にはスピーカースタンド1の上に載っているものの、音質的にはスピーカーSだけが宙に浮いているような理想の状態を実現でき、その効果を確認する試聴において有識者にも作用・効果を認めて頂けたのである。
【0028】
スピーカーSから出力される音は、スピーカーSを設置する空間(室内等)のあらゆる所に定在波として残っており、これを吸収するために別途ルームチューニング材を設置して余計な残響音を吸い取るのが現状である。しかしながら、効果のあるルームチューニング材はサイズが大きく場所をとってしまう、価格が高価になってしまう、デザイン的に置きたくない等、様々な理由で、音質改善効果があっても導入しないことが多い。本実施形態のスピーカースタンド1は、係る現状の問題点を解決することのできるスタンドとして極めて有効である。
【0029】
以上、本発明の実施形態に従うスピーカースタンド1の好ましい一例を説明したが、支柱内部に配置する吸音部材35、砂状材36、ストッパー部材37の順、開口部22の位置は、必ずしも上述した構成(順番、位置)でなくてもよい。また、スピーカーを設置する部材を“天板”と称しているが、スピーカーを設置する面を有していればよく、例えば裏面側を立体的形状にしたものも天板に含まれる。同様に、支柱を立設する部材を“底板”と称しているが、支柱を立設するベース部材であればよく、立体的形状にしたものも底板に含まれる。また、好ましい一例として定在波を抑制するリブ33を利用しているが、空間38を確保するために別の部材を追加等してもよい。また、好ましい一例としてスペーサー21を用いて開口部22を形成しているが、音が伝播する開口部を確保できれば、必ずしもスペーサー21でなくともよい。
【0030】
このように良好なルームチューニング機能を発揮するスピーカースタンド1は、スピーカーSを設置せずにルームチューニングアクセサリーとして使用してよい。すなわち、本実施形態のスピーカースタンド1は、スピーカースタンドとルームチューニングのどちらでも使用できるオーディオアクセサリーである。この場合、例えばスピーカースタンド1を4台(2セット)用意し、スピーカーSを設置してスタンドとして使用するセットと、スピーカーSを設置しないでルームチューニングアクセサリーとして使用するセットなどとしてもよい。
【0031】
さらには、例えば図7に一例を示すように、天板2を蓋状に形成などし、ルームチューニングアクセサリー5として販売等するようにしてもよい。例えば蓋状にした天板2の表面に網目状等の開口部22を形成してスペーサー21を省略するなどしてもよい。この実施形態に従うルームチューニングアクセサリー5は、以下の様に表すことができる。
(1)内部に空洞を有する筒状に形成された支柱と、前記支柱を立設するベース部材を備えるルームチューニングアクセサリーにおいて、
前記支柱内部に配置した吸音部材と、
前記支柱内部に充填した砂状材と、
前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、
前記支柱内部において、前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備えることを特徴とするルームチューニングアクセサリー。
(2)内部に空洞を有する筒状に形成された支柱と、前記支柱を立設するベース部材を備えるルームチューニングアクセサリーにおいて、
前記支柱内部の底部側に配置した吸音部材と、
前記支柱内部の前記吸音部材よりも上方に充填した砂状材と、
前記支柱の上部側に設けた前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、
前記支柱内部において、該支柱の内壁に沿って前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備えることを特徴とするルームチューニングアクセサリー。
【0032】
本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1 スピーカースタンド
2 天板
21 スペーサー
33 開口部
3 支柱
32 空洞
33 リブ
35 吸音部材
36 砂状材
37 ストッパー部材
38 空間(音伝播空間)
4 底板
41 スパイク
S スピーカー

【要約】
【課題】これまでにない新たな機能を付加したスピーカースタンドを提供することにある。特に、スピーカースタンドにルームチューニングを融合させた新規なスピーカースタンド(ルームチューニングスタンド)を実現する。
【解決手段】本発明のスピーカースタンドは、スピーカーを設置する天板と、内部に空洞を有する筒状に形成され前記天板を下方側から支持する支柱と、前記支柱を立設する底板を備えるスピーカースタンドにおいて、前記支柱内部に配置した吸音部材と、前記支柱内部に充填した砂状材と、前記支柱内部の空洞と連通する開口部と、前記支柱内部において、前記開口部から前記吸音部材にまで連通する空間と、をさらに備え、ルームチューニング機能を付加したことを特徴とする。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7