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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
E03D11/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019106677
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020200605
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 彩音
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓真
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123551(JP,A)
【文献】特開2018-111949(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143029(WO,A1)
【文献】特開2015-196959(JP,A)
【文献】特開2007-308912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉢面と、前記鉢面の下方に形成された凹部と、前記鉢面に洗浄水を供給する吐水口と、を有する便鉢部を備え、
前記便鉢部は、前記吐水口における前記便鉢部内を旋回する洗浄水が流れてくる側の近傍に、前記便鉢部内を旋回して流れてきた洗浄水を前記凹部に導入するガイド部が設けられ、
前記便鉢部は、前記便鉢部内を旋回する洗浄水が流れる導水路を更に有し、
前記ガイド部は、前記導水路から前記便鉢部の中央側に向けて突出する第1突出部と、前記第1突出部の上方に連続して設けられ、前記導水路から前記便鉢部の中央側に向けて突出する第2突出部とを有し、
前記第2突出部は、前記第1突出部より突出量が小さい水洗式便器。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記便鉢部内を旋回して流れてきた洗浄水に衝突され、衝突した洗浄水の流れの方向を変更する請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記凹部における後方領域に向けて突出する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記便鉢部は、前記ガイド部に対して前記便鉢部内を旋回する洗浄水の流れの上流側に、前記便鉢部内を旋回する洗浄水を前記便鉢部の中央側に向けて誘導する誘導面を更に有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記便鉢部は、前記便鉢部内を旋回する洗浄水を案内する立ち面を有し、
前記立ち面は、前記便鉢部の前方領域において、平面視における曲率半径が略一定な構成である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記便鉢部は、左右方向における一方に位置する第1吐水口と、他方に位置する第2吐水口と、を有し、
前記第1吐水口は、前側に向けて前記便鉢部内を旋回する洗浄水を吐水する構成であり、
前記第2吐水口は、前記便鉢部内を旋回して流れてきた洗浄水と同じ方向に向けて洗浄水を吐水する構成であり、
前記吐水口は、前記第2吐水口であり、
前記ガイド部は、前記第2吐水口における前記便鉢部内を旋回する洗浄水が流れてくる側の縁部に設けられている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は水洗式便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器本体を開示している。この便器本体は、便鉢部、便器排水路、第1吐水口、及び第2吐水口を備えている。第1吐水口から吐水した洗浄水は、平面視において便鉢部内を反時計方向に旋回する旋回流を形成する。第2吐水口から吐水した洗浄水は、第1吐水口から吐水した洗浄水と合流して溜水部に流入する。このため、この便器本体は溜水部へ流入する束の洗浄水の流量が多くなり、便器排水路への汚物の押し込みを良好に行うことができ、汚物等を便器本体から良好に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-037723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の便器本体は、第1吐水口から吐水した洗浄水が第2吐水口を超えた位置まで旋回して流れるから、便鉢部内を反時計方向に旋回する旋回流の勢いによっては、溜水部の所望の位置に洗浄水を流入させることが難しい。このため、溜水部において便鉢部内を旋回する洗浄水が流入する位置を適宜設定して、排出性能を高くするという観点において改善の余地がある。
【0005】
本開示は、水洗式便器の排出性能を向上することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水洗式便器は、鉢面と、前記鉢面の下方に形成された凹部と、前記鉢面に洗浄水を供給する吐水口と、を有する便鉢部を備え、前記吐水口における前記便鉢部内を旋回する洗浄水が流れてくる側の近傍に、前記便鉢部内を旋回して流れてきた洗浄水を前記凹部に導入するガイド部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の便座装置が取り付けられた状態の水洗式便器の斜視図である。
図2】実施形態1の水洗式便器の上面図である。
図3図2の矢視III-III断面図である。
図4図2の矢視IV-IV断面図である。
図5図4の矢視V-V断面図である。
図6図5の矢視VI-VI断面を斜め上方から視た図である。
図7】他の実施形態のガイド部付近を斜め上方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の水洗式便器を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、水洗式便器を正面から視て、手前側が前方、奥側が後方である。左右方向及び上下方向は、水洗式便器を正面から視た左右方向及び上下方向である。図2の左側が左側、右側が右側である。図3の右側が前方、左側が後方であり、図3の上方が上方、下方が下方である。
【0009】
<実施形態1>
実施形態1の水洗式便器10は、図1に示すように、壁面100に取り付けられる。水洗式便器10は、上方に便座装置90が取り付けられている。便座装置90は、機能部品であり、機能部91及び便座部93を備えている。機能部91は内部に図示しない局部洗浄機構や脱臭機構等が収納されている。機能部91は便座部93を起立状態と倒伏状態に回動自在に軸支している。図1においては、便座部93の倒伏状態を示す。便座部93は倒伏状態で便鉢部20の上方に位置する。
【0010】
水洗式便器10は、図2及び図3に示すように、便鉢部20、給水路50、排水路60、上面部70、及び側壁部80を備えている。便鉢部20は上方に開口している。便鉢部20の開口は、上方から見た平面視において、前後方向に長い長円形状である。以下の説明では、便鉢部20の前後方向において、後述する立ち面25A下端における前端位置と後端位置の間を4等分した場合に前側の1/4の領域を便鉢部20の前方領域20Aと称する。
【0011】
便鉢部20は、鉢面21、凹部23、導水路25、オーバーハング部27、第1吐水口29、第2吐水口(吐水口)30、及びガイド部40を有している。鉢面21は、すり鉢状に形成されている。鉢面21は、便鉢部20の後方において前方領域20Aより凹部23に向かう傾斜角度が大きくなっている。鉢面21で受け止められた汚物は、鉢面21に沿って旋回しつつ流下する洗浄水とともに、凹部23と排水路60を通って排出される。
【0012】
凹部23は、鉢面21の下方に形成されている。凹部23は、便鉢部20の後方寄りに配され、排水路60に連なっている。凹部23は洗浄水を貯留する溜水部24を有している。凹部23は、鉢面21から連続して設けられている。凹部23の前壁は、鉢面21の下端から下方に向けて屈曲する形で垂下する。凹部23の後壁は、鉢面21から傾斜角度が徐々に大きくなる形で垂下する。
【0013】
導水路25は、図3及び図4に示すように、便鉢部20内を旋回する洗浄水が流れるように構成される。導水路25は、便鉢部20の内周縁部に、略全周に亘って形成されている。導水路25は、立ち面25Aと、立ち面25Aの下端から溜水部24に向けて下り傾斜した傾斜面25Bと、を有している。立ち面25Aは、導水路25の外周側において上下方向に立ち上がる面である。立ち面25Aは、便鉢部20内を旋回する洗浄水を案内する。立ち面25Aの一部は後述する誘導面25Cによって構成される。立ち面25Aは、便鉢部20の前方領域20Aにおいて、平面視における曲率半径が略一定な構成である(図2参照)。本願において、「曲率半径が略一定」とは、例えば便鉢部20の前方領域20A全体における曲率半径の変化が20%以内であるものとする。傾斜面25Bは、便鉢部20の左右及び後方では棚面26によって構成され、便鉢部20の前方では鉢面21によって構成される。棚面26は、鉢面21より溜水部24側に向かう傾斜角度が小さく、溜水部24側に向かうにつれて緩やかに下方に傾斜して延びている。なお、傾斜面25Bにおいて、棚面26と鉢面21とは溜水部24側に向かう傾斜角度が徐々に変化する形で連続的に形成されている。
【0014】
オーバーハング部27は、便鉢部20の開口縁に、略全周に亘って形成されている。オーバーハング部27は、便鉢部20の中央側に向けて突出し、導水路25の上方を覆う。オーバーハング部27は、洗浄水等が便鉢部20の外側に向かうことを抑制する。オーバーハング部27は、便鉢部20の左右及び後方における突出量が便鉢部20の前方における突出量より大きくなっている。本実施形態において、「便鉢部20の中央」は、便鉢部20の開口の中心である。
【0015】
第1吐水口29及び第2吐水口30は、図2に示すように、それぞれ立ち面25Aに開口する。第1吐水口29は、便鉢部20の左側に位置し、第2吐水口30は、便鉢部20の右側に位置する。第1吐水口29は、便鉢部20の前後方向の中間部において、左側の上部に形成されている。第1吐水口29は、給水路50の第1吐水流路55の下流端に位置し、前方に向けて開口する。第1吐水口29は、前側に向けて便鉢部20内を旋回する洗浄水を吐水する。第2吐水口30は、便鉢部20の後方において、右側の上部に形成されている。第2吐水口30は、給水路50の第2吐水流路57の下流端に位置し、左方向に向けて開口する。第2吐水口30は、左後方及び左側に向けて洗浄水を吐水する。この洗浄水の一部は、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水と同じ方向に向けて吐水される。第2吐水口30は、便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れの下流端部に位置している。本願において、「便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れの下流端部」とは、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水の少なくとも一部について、流れる方向が変更されて、旋回方向に向けて流れなくなる位置を意味する。
【0016】
第2吐水口30は、図5及び図6に示すように、前側縁部31、後側縁部33、上側縁部35、及び棚面26によって囲まれている。前側縁部31は第1壁部31Aと第2壁部31Bの間の角部によって形成されている。図5においては、第1壁部31Aと第2壁部31Bの裏面側を破線で描いている。第1壁部31Aは、左後方、つまり、第2吐水口30から多くの洗浄水が吐出される方向に対して平行に延びる形をなす。第1壁部31Aの後面は第2吐水流路57の壁面を構成する。第2壁部31Bは、第1壁部31Aの左側端部から前方に向けて屈曲して延びる形をなし、左側の面が誘導面25Cを構成する。第2吐水口30の後側縁部33は、第3壁部33Aによって形成されている。第3壁部33Aは、第2吐水口30から洗浄水が吐出される方向に沿って延びる形をなし、前面が便鉢部20の後方において立ち面25Aを構成する。この第3壁部33Aの後面は第2吐水流路57の壁面を構成する。前側縁部31は、第2吐水口30における便鉢部20内を旋回する洗浄水が流れてくる側の縁部である。
【0017】
ガイド部40は、第2吐水口30における便鉢部20内を旋回する洗浄水が流れてくる側の近傍に設けられている。具体的には、ガイド部40は、第2吐水口30の前側縁部31に設けられている。ガイド部40、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水を凹部23に導入する。ガイド部40は、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水に衝突され、衝突した洗浄水の流れの方向を変更する。具体的には、ガイド部40は、衝突した洗浄水の流れる方向を案内する案内面41を有する。案内面41は、前後方向に沿って延びる誘導面25Cの後端から左側に向けて屈曲して、左側に向かって延びている。一方、第2吐水口30から洗浄水が吐出される方向を規定する第1壁部31Aの後面及び第3壁部33Aの前面は、左側やや後方に向かって延びている。案内面41は、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水の流れの方向を、第2吐水口30から洗浄水が吐出される方向よりやや前側に向けて案内するように構成されている。
【0018】
ガイド部40は、導水路25から突出する形をなす。ガイド部40は、立ち面25Aから突出するとともに、下端が棚面26に連なる。ガイド部40は、棚面26から突出しているとも言える。ガイド部40は、凹部23における後方領域23Bに向けて突出している。凹部23における後方領域23Bは、凹部23の後壁とその近傍領域を含む領域である。ガイド部40の突出端面43は、平面視にてオーバーハング部27と重なる範囲内に位置する(図2参照)。このような構成により、ガイド部40に洗浄水が当たることにより飛沫が生じた場合であっても、オーバーハング部27により飛沫が便鉢部20の外部に向かうことが抑制される。
【0019】
ガイド部40において、下側の部分を第1突出部40Aと称し、第1突出部40Aの上方に連続して設けられた部分を第2突出部40Bと称する。第1突出部40Aと第2突出部40Bは、共に導水路25から便鉢部20の中央側に向けて突出する部分である。第1突出部40Aは、棚面26に接続する部分である。第2突出部40Bは、立ち面25Aの上下方向における中間部付近に位置する部分である。第2突出部40Bは、第1突出部40Aより突出量が小さい。ガイド部40は、第1突出部40Aから第2突出部40Bに向かって徐々に突出量が小さくなっている。言い換えれば、ガイド部40の突出端面43は傾斜形状(バンク形状)を有している。ガイド部40において第2突出部40Bより上側の部分は、第2突出部40Bより突出量が大きい。
【0020】
誘導面25Cは、ガイド部40に対して便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れの上流側に設けられている。誘導面25Cは、便鉢部20内を旋回する洗浄水を便鉢部20の中央側に向けて誘導するように構成されている。具体的には、誘導面25Cは、立ち面25Aの一部が後方に向かうにつれて左側に向けて傾斜する形で設けられている。誘導面25Cの前端は、便鉢部20の前後方向中央部に位置する。誘導面25Cの前端は、立ち面25Aの曲率半径が局所的に変化する部位として特定できる。この誘導面25Cの前端は、便鉢部20においてオーバーハング部27の突出量が最も大きい部位近傍に位置している(図2及び図4参照)。誘導面25Cはガイド部40まで延びている。誘導面25Cは、棚面26に立設された第2壁部31Bの左側の面によって構成される。便鉢部20は、誘導面25Cが左側に向けて傾斜するのに伴って、棚面26の左右方向における寸法が後方に向かうにつれて小さくなる。
【0021】
給水路50は、図2及び図3に示すように、水洗式便器10の左右中央の後方上部に配され、上流端の流入口51が後方に向けて開口している。給水路50の流入口51は、図示しない連結部材によって、壁面100に引き出された洗浄水の供給管101に洗浄水が漏出しないように水密状に連結される。この給水路50は、上流端から前方に延びた導入流路53と、導入流路53の下流端で分岐された第1吐水流路55と第2吐水流路57とを有している。第1吐水流路55は、便鉢部20の後方から左方に向かって前方向に延びている。第1吐水流路55の下流端は第1吐水口29に連通している。第2吐水流路57は、便鉢部20の後方から右方に向かって、右端部で折り返されている。第2吐水流路57の下流端は第2吐水口30に連通している。
【0022】
排水路60は、上流端が凹部23の底面に開口する流入口61に連通する。また、排水路60は、後側下方に向けて延びる導入流路63と、導入流路63の下流端に連続して後側上方に向けて延びる上昇流路65と、上昇流路65の下流端に連続して後側下方に向けて延びるとともに排水管103に連結される下降流路67を有している。下降流路67の下流端は後方に開口しており、図示しない接続部材等を介して、壁面100に引き出された排水管103に排水が漏出しないように水密状に連結される。
【0023】
上面部70は、図2に示すように、便鉢部20の上端縁部から前方、両側方に広がるリム部71と、便鉢部20の上端縁部から後方に広がる後面部73とを有している。リム部71は、平面視U字型をなし、倒伏状態の便座部93が載置される。後面部73は、平面視矩形状をなし、上方に機能部91が載置される。
【0024】
側壁部80は、図3及び図4に示すように、便鉢部20と排水路60とを囲むように、上面部70の外周縁から垂下し前端部から左右側方に連続している。排水路60の下端部が僅かに側壁部80の下端縁より下方に位置している。つまり、この水洗式便器10は、側壁部80が前面から左右側面にかけて連続的に湾曲した曲面によって形成されているため、便鉢部20と排水路60のほとんどが外側から視認することができない。
【0025】
次に、このような構成を有する水洗式便器10の便器洗浄を実行した際の洗浄水の流れ方を説明する。
【0026】
この水洗式便器10は、図示しないリモートコントローラに設けた便器洗浄スイッチを操作すると、給水路50を介して第1吐水口29及び第2吐水口30から吐水する。これによって、この水洗式便器10は便器洗浄を実行する。
【0027】
第1吐水口29から吐水した洗浄水は、図2に示すように、便鉢部20の導水路25に沿って便鉢部20内を反時計回りに旋回して流れる。この際、洗浄水の一部は、傾斜面25Bの傾斜によって凹部23へ向けて流下する。立ち面25Aは、便鉢部20の前方領域20Aにおいて、平面視における曲率半径が略一定な構成である。このため、立ち面25Aに案内されつつ旋回する洗浄水は、例えば、便鉢部の前端に向かって曲率半径が小さくなる立ち面を有する場合に比して、便鉢部20の前方領域20Aで流速が低下しにくくなっている。立ち面25Aに沿って旋回して便鉢部20の前方領域20Aを通過した洗浄水は、便鉢部20の右側領域において誘導面25Cに沿って便鉢部20の左側に向けて誘導される。つまり、誘導面25Cによって、便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れる方向が、後方に向かう方向から、左後方に向かう方向に変化する。
【0028】
図5に示すように、誘導面25Cを通過して、左後方に向けて流れる洗浄水は、ガイド部40の案内面41に衝突する。すると、洗浄水の主流の流れる方向が、衝突により左側に向かう方向に変化する。ガイド部40は上側が下側に比して突出量が小さくなっており、導水路25の上部を流れる一部の洗浄水は、ガイド部40を超えて後方に向けて旋回する。このため、ガイド部40に衝突した際の飛沫の発生が抑制される。ガイド部40に衝突した洗浄水の主流は、ガイド部40の突出方向に沿って左側に向けて案内される。ガイド部40の突出端面43まで案内された洗浄水は、棚面26及び鉢面21の傾斜によって凹部23の後方領域23Bに向けて流下して、凹部23に導入される。つまり、ガイド部40は、第1吐水口29から吐水され、便鉢部20内を旋回する洗浄水の下流端において、凹部23の後方領域23Bに向かう洗浄水の流れを形成する。言い換えれば、ガイド部40によって、便鉢部20内を旋回する洗浄水の下流端が規定される。
【0029】
第2吐水口30から左側やや後方に向かって吐出された洗浄水の一部は、棚面26に沿って旋回して、凹部23の前方領域に流下する。第2吐水口30から左側やや後方に向かって吐出された洗浄水の一部は、棚面26及び鉢面21の傾斜によって凹部23の後方領域23Bに向けて流下する。第1吐水口29から吐出された洗浄水のうちガイド部40によって案内された洗浄水は、凹部23の後方領域23Bを旋回し、凹部23の左側の壁面に沿って流れ、凹部23の前方領域に向かう。凹部23の前方領域に向かった洗浄水は、便鉢部20の前方領域20Aから流下した洗浄水と合流する。このガイド部40によって案内された洗浄水は、第2吐水口30から凹部23に流れる洗浄水を補助する流れとなる。凹部23に流入した洗浄水は、排水路60の流入口61に向けた流れを形成し、排水路60の流入口61に向けて汚物等を押し込むような洗浄水の流れを形成する。つまり、この水洗式便器10は第1吐水口29及び第2吐水口30から吐水する洗浄水の水量を少なくしても、汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の水洗式便器10は、鉢面21と、鉢面21の下方に形成された凹部23と、鉢面21に洗浄水を供給する第2吐水口30と、を有する便鉢部20を備える。便鉢部20は、第2吐水口30における便鉢部20内を旋回する洗浄水が流れてくる側の近傍に、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水を凹部23に導入するガイド部40が設けられている。
【0031】
この水洗式便器10は、ガイド部40により便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水を凹部23に導入することにより、便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れの下流端において、汚物等を押し込むような洗浄水の流れを形成することができる。したがって、水洗式便器10の排出性能を向上することができる。
【0032】
本実施形態の水洗式便器10において、ガイド部40は、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水に衝突され、衝突した洗浄水の流れの方向を変更する。この構成によれば、洗浄水がガイド部40に衝突することにより、洗浄水の流れを確実に変更することができる。このため、洗浄水を凹部23に導入しやすくなる。
【0033】
本実施形態の水洗式便器10において、便鉢部20は、便鉢部20内を旋回する洗浄水が流れる導水路25を更に有し、ガイド部40は、導水路25から突出する。この構成によれば、導水路25を流れる洗浄水をガイド部40によって導水路25から凹部23に向けて案内し、凹部23に導入することができる。
【0034】
本実施形態の水洗式便器10において、ガイド部40は、導水路25から便鉢部20の中央側に向けて突出する第1突出部40Aと、第1突出部40Aの上方に連続して設けられ、導水路25から便鉢部20の中央側に向けて突出する第2突出部40Bとを有する。第2突出部40Bは、第1突出部40Aより突出量が小さい。この構成によれば、突出量が大きい第1突出部40Aにより、導水路25の下側を流れる洗浄水を導水路25から凹部23に向けて案内することができる。そのうえで、第2突出部40Bは、第1突出部40Aより突出量が小さい構成とされることにより、洗浄水の飛沫の飛散を抑制することができる。
【0035】
本実施形態の水洗式便器10において、ガイド部40は、凹部23における後方領域23Bに向けて突出する。この構成によれば、導水路25を流れる洗浄水をガイド部40によって導水路25から凹部23の後方領域23Bに向けて案内し、凹部23の後方領域23Bに導入することができる。
【0036】
本実施形態の水洗式便器10において、便鉢部20は、ガイド部40に対して便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れの上流側に、便鉢部20内を旋回する洗浄水を便鉢部20の中央側に向けて誘導する誘導面25Cを更に有する。この構成によれば、ガイド部40の上流側において、誘導面25Cにより便鉢部20内を旋回する洗浄水が便鉢部20の中央側に向けて誘導されるから、誘導面25Cとガイド部40とにより洗浄水を確実に凹部23に導入することができる。便鉢部20が誘導面25Cを有するから、誘導面25Cがない場合に比べてガイド部40によって洗浄水の流れる方向が急に変更されることがなく、ガイド部40を設けたことに起因して洗浄水の勢いが弱まりにくい。
【0037】
本実施形態の水洗式便器10において、便鉢部20は、便鉢部20内を旋回する洗浄水を案内する立ち面25Aを有し、立ち面25Aは、便鉢部20の前方領域20Aにおいて、平面視における曲率半径が略一定な構成である。この構成によれば、便鉢部20の前方領域20Aにおいては便鉢部20内を旋回する洗浄水の勢いが弱まりにくく、洗浄水を下流端まで十分に行き渡らせることができる。そのうえで、便鉢部20内を旋回する洗浄水の流れの下流端では、勢いよく旋回してくる洗浄水をガイド部40により確実に凹部23に導入することができる。
【0038】
本実施形態の水洗式便器10において、便鉢部20は、左右方向における一方に位置する第1吐水口29と、他方に位置する第2吐水口30と、を有する。第1吐水口29は、前側に向けて便鉢部内を旋回する洗浄水を吐水する構成である。第2吐水口30は、便鉢部20内を旋回して流れてきた洗浄水と同じ方向に向けて洗浄水を吐水する構成である。ガイド部40は、第2吐水口30における便鉢部20内を旋回する洗浄水が流れてくる側の前側縁部31に設けられている。この構成によれば、第1吐水口29から吐水された洗浄水を、第2吐水口30から吐水された洗浄水と合流する前に、ガイド部40によって、凹部23における第2吐水口30から吐水された洗浄水が流入しにくい位置に導入することができる。このため、第1吐水口29及び第2吐水口30から吐水する洗浄水の水量を少なくしても、汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0039】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されない。
【0040】
(1)実施形態1とは異なり、便鉢部は第2吐水口を備えなくてもよい。便鉢部は更に別の吐水口を備えていてもよい。
【0041】
(2)第1吐水口及び第2吐水口は、実施形態1とは異なる場所であって、便鉢部内に良好な洗浄水の流れを形成できる場所に形成してもよい。
【0042】
(3)実施形態1とは異なり、ガイド部は、立ち面から曲率半径が徐々に変化する案内面を有し、案内面に沿って洗浄水の流れる方向を徐々に変化させる構成であってもよい。
【0043】
(4)ガイド部の突出方向は、凹部の排水路の流入口の位置や、便鉢部内を旋回する洗浄水の流速等を加味して適宜、実施形態1とは異なるものとしてもよい。
【0044】
(5)実施形態1では、便鉢部がガイド部の前側に傾斜する形の誘導面を有する構成を例示したが、便鉢部は誘導面を有していなくてもよい。誘導面は傾斜する形をなしていなくてもよく、立ち面から曲率半径が徐々に変化する湾曲面でもよい。
【0045】
(6)実施形態1とは異なり、棚面は便鉢部の前方に設けられていてもよい。その他にも、導水路の構成は適宜変更可能である。
【0046】
(7)上記実施形態以外にも、第2突出部が第1突出部より突出量が小さい態様は適宜変更可能である。例えば、図7に示すガイド部140のように、第1突出部から第2突出部に向かって急激に突出量が小さくなっていてもよい。言い換えれば、ガイド部140の突出端面143は凹面形状を有していてもよい。
【0047】
(8)上記実施形態以外にも、便鉢部においてガイド部が設けられる部位は適宜変更可能である。例えば、ガイド部は第1吐出口の縁部に設けられてもよい。
【0048】
(9)上記実施形態以外にも、便鉢部においてガイド部が設けられる位置は適宜変更可能である。例えば、ガイド部は第2吐出口の前側縁部より少し前側であり、第2吐出口に対して便鉢部内を旋回する洗浄水の少し上流側の位置に配されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…水洗式便器、20…便鉢部、20A…前方領域、21…鉢面、23…凹部、23B…後方領域、25…導水路、25B…立ち面、25C…誘導面、29…第1吐水口、30…第2吐水口(吐水口)、31…前側縁部(縁部)、40,140…ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7