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  • 特許-瞼用疑似肌モデル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】瞼用疑似肌モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 25/00 20060101AFI20230925BHJP
   G09B 19/24 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G09B25/00 Z
G09B19/24 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019112761
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020204725
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 梨奈
(72)【発明者】
【氏名】萩野 亮
(72)【発明者】
【氏名】今出 楓子
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-078603(JP,A)
【文献】特開2017-107189(JP,A)
【文献】特開2017-124987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56
17/00-19/26
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工皮膚からなる部分球殻状の外殻と、前記外殻に内包される部分球状の眼球模型とを備え、前記外殻が前記眼球模型を露出可能に開閉自在とする切れ込みを有し、前記眼球模型の球面表面または前記外殻の内表面の一部または全部に潤滑剤を塗布したことを特徴とする瞼用疑似肌モデル。
【請求項2】
前記外殻を構成する人工皮膚が、弾性材料からなる表面被膜層及び基層を含むものである請求項1記載の瞼用疑似肌モデル。
【請求項3】
前記表面被膜層を構成する第1の弾性材料がポリウレタン樹脂であり、前記基層を構成する第2の弾性材料が、前記第1の弾性材料であるポリウレタン樹脂よりも軟質なポリウレタン樹脂である請求項2記載の瞼用疑似肌モデル。
【請求項4】
前記第2の弾性材料であるポリウレタン樹脂がポリウレタンゲルである請求項記載の瞼用疑似肌モデル。
【請求項5】
前記表面被膜層の厚みが5~120μmである請求項~4のいずれかの項記載の瞼用疑似肌モデル。
【請求項6】
前記基層の厚みが0.5~3mmである請求項~5のいずれかの項記載の瞼用疑似肌モデル。
【請求項7】
前記人工皮膚がJISK6253Eに準拠して測定される硬度がE0~E11である請求項1~6のいずれかの項記載の瞼用疑似肌モデル。
【請求項8】
人工皮膚からなる部分球殻状の外殻と、前記外殻に内包される部分球状の眼球模型とを備え、前記外殻が前記眼球模型を露出可能に開閉自在とする切れ込みを有する瞼用疑似肌モデルに、アイメイクアップ化粧料を所定距離塗布した際の荷重変化量を指標とするアイメイクアップ化粧料の使用性評価方法。
【請求項9】
人工皮膚からなる部分球殻状の外殻と、前記外殻に内包される部分球状の眼球模型とを備え、前記外殻が前記眼球模型を露出可能に開閉自在とする切れ込みを有する瞼用疑似肌モデルに、アイメイクアップ化粧料を所定距離塗布して形成される塗布膜の均一性を指標とするアイメイクアップ化粧料の化粧効果評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞼用疑似肌モデルに関し、より詳細には、アイメイクアップ化粧料の使用性や化粧効果等を正確かつ客観的に評価し得る瞼用疑似肌モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションなどメイクアップ化粧料の使用性や化粧効果等を評価するにあたっては、実際に被験者の皮膚に化粧料を適用し、官能評価する方法によって行われることが一般的である。しかし、皮膚の状態は同一の被験者であっても健康状態等によって変化するものであり、また年代の異なる被験者間では加齢に伴って皮膚の構造が変化することから、その評価結果のばらつきや再現性が問題となる場合がある。
【0003】
そこで、化粧料をより客観的に評価することを目的として、ポリウレタン樹脂などを材料として皮膚の物性に近づけた人工皮膚を用いた評価方法が試みられている(特許文献1及び2)。しかし、瞼は顔の皮膚と連続しているものの、眼球を上下から覆う開閉式の器官であることから、皮膚の厚みが薄く、曲面を形成しており、まばたきなど動きが大きく繊細であるという特徴があるところ、従来の人工皮膚はこのような瞼の特徴がほとんど考慮されていないため、これを用いてアイシャドウやアイライナー等のアイメイクアップ化粧料の使用性等を正確に評価することは困難であった。
【0004】
さらに、皮膚は一般に加齢に伴って皮膚の菲薄化、角層の肥厚化、弾性繊維の消失や劣化などの複合的な要因に基づき物性変化が起こると予測されるため、使用者の年代さらには個人の瞼の物性状態が異なれば、同一の化粧料であっても、皮膚に塗布する際の使用性等の評価も異なってくるものであり、特に瞼の際に沿って細いラインを描くアイライナーなど繊細な技術を要する化粧料ではその傾向が顕著であるが、このような使用者の年代や個人差も反映したアイメイクアップ化粧料の評価方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-314080号公報
【文献】特開平11-169390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、アイメイクアップ化粧料の使用性や化粧効果等を正確かつ客観的に評価することが可能な瞼用疑似肌モデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明の瞼用疑似肌モデルは、人工皮膚からなる部分球殻状の外殻と、外殻に内包される部分球状の眼球模型とを備え、外殻が眼球模型を露出可能に開閉自在とする切れ込みを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の瞼用疑似肌モデルは、実際の瞼の触感、弾力感に近い物性や動きなどを備えたモデルであり、これを用いることにより、アイメイクアップ化粧料の使用性や化粧効果等について、正確かつ客観的な評価が可能となる。さらに、表面被膜層及び基層の厚みを特定の範囲とすることにより、年齢による瞼の肌状態を反映した年代別瞼用疑似肌モデルとして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の瞼用疑似肌モデルの一実施形態を示す平面図である。
図2】本発明の瞼用疑似肌モデルの一実施形態において、切れ込みを開いて眼球模型を露出した状態の図である。
図3】本発明の瞼用疑似肌モデルの一実施形態を示す断面図である。
図4】試験例3における上瞼の伸び値の測定方法を示す図である。
図5】試験例4において形成された塗布膜の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の瞼用疑似肌モデルを構成する部分球殻状の外殻は人工皮膚により形成されるものであり、人工皮膚はエラストマーやゴムなどの弾性材料から構成される。人工皮膚は、単層でもよいが、それぞれ異なる弾性材料から形成される複数の層から構成されるものであることが好ましい。例えば、基層の上に表面被膜層を積層した構造とした場合、基層を形成する弾性材料(第2の弾性材料)として、表面被膜層を形成する弾性材料(第1の弾性材料)よりも軟質なものを用いることが好ましい。外殻は、基層上に表面被覆層が積層された構造だけでなく、基層全体を表面皮膜層が被覆する構造であってもよい。
【0011】
表面被膜層を形成する第1の弾性材料としては、熱可塑性エラストマーやゴムなどの弾性樹脂を用いることができるが、瞼の触感、動き等に近い物性が得られることからポリウレタン樹脂が好ましい。第1の弾性材料であるポリウレタン樹脂は、公知のイソシアネート化合物とポリオール成分とから公知の方法によって得られるものである。
【0012】
表面被膜層の厚みは、瞼の触感や動き等に近い物性が得られることから5~120μmの範囲が好ましい。その中でも20~60μmの範囲が、20代などの若年層モデルとして好適であり、30~90μmの範囲は50代など中高年層モデルとして適する。
【0013】
基層を形成する第2の弾性材料は、瞼の触感、弾力、動き等に近い物性となることから第1の弾性材料よりも軟質なものであることが好ましい。そのような弾性材料としては、ポリウレタン樹脂が好ましく、特にポリウレタンゲルが好適である。ポリウレタンゲルは、公知の方法に従ってポリオール成分とイソシアネート化合物の混合物(2液性ポリウレタン液状エラストマー)を加熱硬化することにより得られる。
【0014】
基層の厚みは、瞼の触感や動き等に近い物性が得られることから0.5~3mmの範囲が好ましく、0.5~2.5mmの範囲がより好ましい。その中でも1.5~2.5mmの範囲が、20代などの若年層モデルとして好適であり、0.5~1mmの範囲は50代など中高年層モデルとして好適である。
【0015】
人工皮膚は、瞼の触感、弾力、動き等に近い物性が得られることから硬度がE0~E11であることが好ましく、E1~E5がより好ましい。人工皮膚の硬度は下記条件によるJIS K 6253Eに準拠して測定される値である。
デュロメータ:テクロック社製GS-721N(タイプE)
定圧荷重器:テクロック社製GS-710
計測時間:15秒
厚み:10mm
【0016】
外殻は中空の部分球殻状であり、瞼の感触や動き等に近い物性が得られることから、底面部の直径は20~100mmであることが好ましく、50~60mmがより好ましい。また外殻の高さは22~100mmが好ましく、50~60mmがより好ましい。
【0017】
眼球模型は、上記弾性材料1よりも硬質な弾性材料から形成されることが好ましく、このような弾性材料として、例えばイソプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが例示される。
【0018】
眼球模型は瞼の触感や弾力に近い物性が得られることから、中実の部分球状であることが好ましく、半球状であることがより好ましい。眼球模型は表面被膜層よりも硬いものであり、一般的な眼球の硬度である14mm/Hgよりも硬いことが好ましい。眼球模型の底面の直径は20~26mmであることが好ましい。また眼球模型の高さは22~24mmが好ましい。
【0019】
本発明の瞼用疑似肌モデルでは、眼球模型が外殻で内包されるように配置する。例えば、樹脂製の支持体上に、眼球模型をその平面部が支持体と接するように載置、固定し、その上から、支持体から立ち上げた眼球模型の頂点を通る垂線上に、おおむね外殻の頂点が位置するようにして外殻を被せる。外殻には、その曲面に沿って、頂点を通り頂点からそれぞれの端部までの長さがほぼ同じになるように直線状の切れ込みを設け、切れ込みの両端部の延長線上にある外殻の端縁部を支持体に固定する。切れ込みの両端縁は開閉可能であり、開いた状態では内部の眼球模型が露出する。瞼に近い動きとなることから、切れ込みの長さは20~40mmが好ましく、30~40mmがより好ましい。
【0020】
本発明の瞼用疑似肌モデルでは、眼球模型と外殻とが接触する面に潤滑剤を介在させることにより、さらに瞼の触感や動きに近い物性が得られる。潤滑剤としては、架橋型シリコーン・網状シリコーンブロック共重合体、無水ケイ酸、(ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸アルキル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリスチレン、ポリエチレン、ウレタン、シルク、セルロースなどの粉体、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ステアリルジメチコン、ミネラルオイル、ワセリン、パラフィン、ジリノール酸ジエステル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラウロイルグルタミン酸ジエステル、アミノ酸フィトステロール、ステアリン酸硬化ヒマシ油、シア脂等の多価アルコール脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル、(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)トリグリセリルなどの油剤などが挙げられる。このような潤滑剤を眼球模型表面または外殻の内表面の一部または全部に適宜の量均一に塗布すればよい。
【0021】
本発明の瞼用疑似肌モデルの好ましい実施態様の一つについて図1~3に基づき説明する。本実施形態(右目)において、眼球模型1は、直径22mm、イソプレンゴム製の半球体である。外殻2は、直径50mmの半球殻体であり、基層2b全体が表面被膜層2aで被覆された構成となっている。表面被膜層2aを形成する弾性材料1は、ポリウレタン樹脂、基層2bを形成する弾性材料2は、ポリウレタンゲルであり、基層2bのポリウレタンゲルが、ポリウレタン樹脂からなる表面被膜層2aに封入された状態である。
【0022】
眼球模型1は、支持体3上に、その平面部が支持体3と接するように載置され、接着剤で固定されている。外殻2は眼球模型1上に凸面状に被せた状態にある。外殻2は、支持体3から立ち上げた垂線上に、おおむね眼球模型1の頂点と外殻2の頂点が位置するように配置される。眼球模型1と外殻2の間には空洞部分が存在する。眼球模型1と外殻2には、頂点を通る長さ34mmの切れ込み4が設けられており、切れ込み4の対向する両端縁を開くと眼球模型1が露出する。外殻2は、切れ込み4の両端部4a(目頭部)及び4b(目尻部)の延長線上にあるそれぞれの外殻2の端縁部2c,2d部分において、10mmの長さで接着剤により支持体3に固定されている。
【0023】
本発明の瞼用疑似肌モデルは、実際の瞼に近い触感、弾力、動きなどを備えたものであるため、このモデルにアイメイクアップ化粧料を塗布し、塗布動作時にかかる荷重を測定したり、形成された塗布膜の均一性や描写された線の形状を観察することなどによって、当該化粧料の使用性や化粧効果の定量的な評価や客観的な評価が可能となる。
【実施例
【0024】
次に実施例等を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【0025】
試験例1
瞼用疑似肌モデルの構成の検討:
製造例においては、眼球模型として半球状のゴムボール(直径22mm、イソプレンゴム製)及び半球殻状の外殻(直径50mm)を用いることを共通の構成とし、以下の各構成を組合わせてモデルを作製し、下記方法によって瞼用疑似肌モデルとしての妥当性を評価した(図1~3参照)。参考例として、従来のシート状人工皮革(参考例1;弾力モデルNo.15,ビューラックス社製)、ドーム状弾力モデル(参考例2;No.15,ビューラックス社製)を用いた。結果を表1及び2に示す。
【0026】
(構成)
空洞の有無:外殻の内部が空洞になっているか、第2の弾性材料で中実としているか
切れ込みの有無:外殻表面に34mmの切れ込みを設けるか否か
人工皮膚の層数:人工皮膚として、1層のポリウレタン樹脂層から形成される人工皮膚(一層)またはポリウレタン樹脂層(膜厚2mm)及びポリウレタンゲル層(膜厚30μm)から構成される人工皮膚(二層、硬度E3)
潤滑剤の有無:潤滑剤(KSP-100(信越化学工業社製;架橋型シリコーン・網状シリコーンブロック共重合体))を眼球模型内面に塗布するか否か
【0027】
(評価方法)
専門評価者5名による指での触診評価を行った。各専門評価者が下記7段階の絶対評価基準にて、瞼の触感、弾力性、動きについて評点を付け、評定平均を取り、下記4段階判定基準に基づき総合評価した。
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点):(評価)
◎:5点を越える :非常に良好
〇:3.5点を超え5点以下:良好
△:1点を超え3.5点以下:やや不良
×:1点以下 :不良
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
空洞、切れ込み、潤滑剤の各構成をいずれも備え、人工皮膚が2層であった製造例1が最もモデルとして妥当であると判断された。
【0031】
試験例2
年代別瞼用疑似肌モデルの検討:
上記製造例1の構成において、外殻の基層(ポリウレタンゲル層)の厚さを1~3mm、外殻の表面被膜層の厚さを30μm~90μm、外殻の硬度をE1~5にそれぞれ調整して瞼用疑似肌モデルを作製した。専門評価者5名により、20代の被験者5名と50代の被験者5名の右瞼を触診し、これを瞼用疑似肌モデルと対比して、20代または50代としての瞼の触感、瞼の弾力性、瞼の動きを評価して、20代および50代それぞれの瞼用疑似肌モデルとしての妥当性を評価した。評価方法は試験例1と同様にして行った。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
この結果からポリウレタンゲルの厚さが表面被膜層の厚さよりも年齢との相関が高いことが示唆された。実施例1は50代のモデルとして最も適しており、実施例4は20代のモデルとして適していることが示された。
【0034】
試験例3
瞼用疑似肌モデルを用いた化粧料塗布動作時の上瞼の伸び値の測定:
ハイスピードカメラ(HIGH SPEED MICROSCOPE VW-9000(KEYENCE社製))を用いて、専門評価者がアイシャドウ用のチップで一定方向に塗布動作を行った際の目頭側の点が動いた最大距離を瞼の伸び値とし、その平均値(n=3)を求めた。塗布対象は、実施例1及び4の瞼用疑似肌モデル、参考例1の人工皮革、参考例2のドーム状弾力モデル、20代および50代の被験者(各5名)とした。目頭から目尻方向に6mm、眉毛方向に10mmの位置(目頭側の点)及び目尻から眉毛方向に10mmの位置(目尻側の点)にマジックで点を打ち、チップで目頭側の点から目尻側の点に向って塗布動作を行い、目頭側の点が動いた最大距離を測定し、それぞれの瞼の伸び値とした(図4参照)。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
参考例1、2では、被験者の瞼の伸びと比べて、わずかな伸びしか示さず、瞼の動きがほとんど反映されていない。一方、実施例1及び4のモデルでは、実際の被験者の瞼の伸び値よりはやや低いものの、50代(中高年層)モデルの実施例1の方が、20代(若年層)モデルである実施例4よりも伸び値が大きくなり、実際の20代、50代の被験者の瞼の伸びと同じ傾向を示したことから、定性的な動きの変化を示すモデルといえる。
【0037】
試験例4
瞼用擬似肌モデルを用いた化粧料塗布動作時の抵抗値測定:
塗布装置(エー・ビーエム社製)を用いてペンシルアイライナーの塗布動作(筆圧2g,塗布速度11mm/s)を行い、始点からx軸塗布距離0~10mmの間の荷重変化量(g)を算出し、平均荷重変化量を抵抗値として用いて、実施例1及び4に適用した場合の抵抗値を算出した。結果を下記表5に示す。また形成された塗布膜を図5に示す((a):実施例1、(b):実施例4)。
【0038】
【表5】
【0039】
50代モデルである実施例1の方が20代モデルである実施例4よりも抵抗値が有意に高くなった。図5にも示されるように、抵抗値が高く瞼の伸び値の大きい実施例1のアイライナー塗布膜は線ががたつき不均一になったのに対し、実施例4の方は滑らかで均一な塗布膜が形成され、一般的な年代別の官能評価や意識調査の傾向と合致した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の瞼用疑似肌モデルは、アイメイクアップ化粧料の使用性や化粧効果等を正確かつ客観的に評価可能なモデルとして有用である。

図1
図2
図3
図4
図5