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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230925BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
B60H1/34 651B
F24F13/15 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019147995
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028212
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】望月 浩志
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-065534(JP,A)
【文献】特開2015-218913(JP,A)
【文献】特開2016-032958(JP,A)
【文献】特開2016-078493(JP,A)
【文献】特開2019-130991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0157618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風が通過する通風路を内部に備えるとともに、前記通風路を通過した風が吹き出される吹出口を備えるケース体と、
前記通風路に回動可能に配置され、回動により風向を調整する第一フィンと、
前記通風路の前記第一フィンの上流側に前記第一フィンの回動方向と交差する方向に回動可能に配置され、回動により風向を調整する第二フィンと、
前記第一フィンに沿って移動可能であるとともに、前記第一フィンとともに回動可能な、前記第一フィン及び前記第二フィンの操作用の被操作部と、
前記被操作部に対し前記第二フィン側に配置され、前記被操作部及び前記第一フィンの回動に連動してその反対方向に回動するリンク部と、
このリンク部と前記第二フィンとの間に配置され、前記リンク部と連結されて、前記被操作部の前記第一フィンに沿う方向への移動に連動して同方向に移動し、かつ、前記被操作部の回動には非連動の連結部と、
前記連結部と連結され、前記連結部の移動に連動して前記第二フィンを回動させる被連結部とを具備し
前記リンク部は、前記被連結部による前記連結部の規制方向に対して交差する方向から前記連結部を支持する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
第二フィンは、複数設けられ、所定の回動位置で互いに重なることで通風路を閉塞可能である
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
連結部及び被連結部は、互いに歯合するギヤである
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに交差する方向に回動可能な第一フィン及び第二フィンを被操作部によって操作する風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置され、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置として、吹出口に近い位置に配置された上下回動可能な下流側フィンと、この下流側フィンの上流側に配置された左右回動可能な複数の上流側フィンとを備えるものが知られている。下流側フィンには、操作用のノブが取り付けられており、このノブの左右の操作がリンク機構を介して伝達されることで、上流側フィンが左右に回動される。
【0004】
リンク機構の一例としては、ノブの後部に形成されたラックギヤと、上流側フィンの一部に形成されたピニオンギヤとを歯合させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、リンク機構の他の例としては、ノブの後部が回動可能に連結される上下非可動のギヤと、上流側フィンに形成されたギヤとを歯合させるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-121259号公報 (第5-8頁、図4
【文献】特開2013-112256号公報 (第9-11頁、図4-5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下流側フィンに取り付けられたノブは、下流側フィンの回動の操作用としても利用されるので、下流側フィンを上下方向に回動させた位置でも上流側フィンを操作できるようにリンク機構とノブとの連結が保たれる必要がある。そのため、特許文献1及び2に記載された構成の場合、互いに歯合するギヤの少なくともいずれか一方を上下に大きくする必要があり、風向調整装置が大型化するおそれがある。また、このように風向調整装置を大型化させないためには、ノブの上下動の可動域、つまり下流側フィンの可動域が制限される。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、第一フィンの可動域を確保しつつ、大型化を抑制できるとともに、第一フィンを回動させた位置でも被操作部によって第二フィンを操作できる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の風向調整装置は、風が通過する通風路を内部に備えるとともに、前記通風路を通過した風が吹き出される吹出口を備えるケース体と、前記通風路に回動可能に配置され、回動により風向を調整する第一フィンと、前記通風路の前記第一フィンの上流側に前記第一フィンの回動方向と交差する方向に回動可能に配置され、回動により風向を調整する第二フィンと、前記第一フィンに沿って移動可能であるとともに、前記第一フィンとともに回動可能な、前記第一フィン及び前記第二フィンの操作用の被操作部と、前記被操作部に対し前記第二フィン側に配置され、前記被操作部及び前記第一フィンの回動に連動してその反対方向に回動するリンク部と、このリンク部と前記第二フィンとの間に配置され、前記リンク部と連結されて、前記被操作部の前記第一フィンに沿う方向への移動に連動して同方向に移動し、かつ、前記被操作部の回動には非連動の連結部と、前記連結部と連結され、前記連結部の移動に連動して前記第二フィンを回動させる被連結部とを具備し、前記リンク部は、前記被連結部による前記連結部の規制方向に対して交差する方向から前記連結部を支持するものである。
【0010】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、第二フィンは、複数設けられ、所定の回動位置で互いに重なることで通風路を閉塞可能であるものである。
【0011】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、連結部及び被連結部は、互いに歯合するギヤであるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の風向調整装置によれば、第一フィンとともに被操作部を回動させるように操作したときに、被操作部、第一フィン、及び、リンク部のみが回動するので、通風路をこれらの可動域に応じた大きさに設定すればよいから、第一フィンの回動方向に必要以上に大きくする必要がなく、風向調整装置の大きさを抑制しつつ、第一フィンの可動域を確保できる。また、第一フィンとともに被操作部を回動させた状態でも、被操作部、リンク部、連結部、及び被連結部の連結が維持されるので、第一フィンを回動させた位置でも被操作部によって第二フィンを操作できる。
【0013】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、被操作部を第一フィンに沿って移動させることによって第二フィンにより通風路を閉塞可能となる。
【0014】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、被操作部を第一フィンに沿って移動させたときに、連結部及び被連結部の歯合によって第二フィンを確実に回動させることが可能であるとともに、第二フィンによる風向制御をきめ細かく調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の風向調整装置を第二方向に見た断面図である。
図2】同上風向調整装置を第三方向に見た断面図である。
図3】同上風向調整装置の分解斜視図である。
図4】同上風向調整装置の一部を示す斜視図である。
図5】同上風向調整装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態の構成について、図面を参照して説明する。
【0017】
図5において、10は風向調整装置である。風向調整装置10は、例えば自動車などの車両に備えられた空調装置などからの風の向き、すなわち風向を調整する空調用のものである。風向調整装置10は、図示しないが、自動車の内装部材、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール、オーバーヘッドコンソール部、センタピラーあるいはドアトリムなどの被設置部に設置されている。
【0018】
そして、図1ないし図3に示すように、風向調整装置10は、ケース体11を備えている。ケース体11は、筒状に形成され、空調風が通過する通風路12を内部に形成するとともに通風路12の下流端となる吹出口13を備えている。以下、風向調整装置10は、説明を明確にするために、ケース体11の軸方向を第一方向、この第一方向と交差(直交)する方向を第二方向、及び、第一方向及び第二方向と交差(直交)する方向を第三方向と定義する。つまり、第一方向とは、通風路12を通過する風の上流下流方向である。例えば、本実施の形態において、風向調整装置10は、第一方向の一方側(矢印D1a方向)である通風路12を通過する風の下流側、つまり乗員側を前側、第一方向の他方側(矢印D1b方向)である風の上流側、つまり乗員から見て通風路12の奥側を後側とし、第二方向の一方側(矢印D2a方向)を左側、第二方向の他方側(矢印D2b方向)を右側とし、第三方向の一方側(矢印D3a)を上側、第三方向の他方側(矢印D3b方向)を下側とするように配置されるが、これら第二方向及び第三方向は、風向調整装置10の設置位置や設置向きに応じて適宜変更されるものとする。
【0019】
本実施の形態において、ケース体11は、第二方向に対し第三方向が短く形成されている。すなわち、ケース体11は、第二方向を長手方向とし、第三方向を短手方向とする扁平状に形成されている。したがって、風向調整装置10は、薄型に形成されている。そのため、吹出口13は、第二方向に長手状に形成されている。ケース体11の後端部は、空調風をダクトなどの風路から通風路12に受け入れる受入口となっている。本実施の形態において、ケース体11は、一体に形成されているが、複数のケース部材を組み合わせて形成されていてもよいし、吹出口13が開口されたフィニッシャを別体で備えていてもよい。
【0020】
ケース体11には、第一フィンである下流側フィン15が取り付けられている。下流側フィン15は、横ルーバ、フロントフィンなどとも呼ばれるものである。下流側フィン15は、長手板状に形成されている。下流側フィン15は、吹出口13に臨んで配置されている。また、下流側フィン15は、第二方向に沿って長手方向及び軸方向を有し、第三方向に板厚方向を有して配置され、両端部がケース体11に回動可能に支持されている。そのため、下流側フィン15は、ケース体11に対し、回動軸を中心として第三方向の一方側及び他方側に回動可能となっている。そして、下流側フィン15は、通風路12を通過して吹出口13から吹き出される風の向きを、回動により調整するようになっている。つまり、下流側フィン15は、風向を第三方向に調整可能となっている。下流側フィン15は、単数でも複数でもよい。本実施の形態では、下流側フィン15は、三つ配置されており、第三方向に互いに離れて位置している。複数の下流側フィン15は、図示しない第一リンクにより互いに連動されて同方向に回動するようになっている。
【0021】
また、ケース体11には、第二フィンである上流側フィン17が取り付けられている。上流側フィン17は、縦ルーバ、リアフィンなどとも呼ばれるものである。上流側フィン17は、下流側フィン15に対し、第一方向の他方側、つまり通風路12を通過する風の上流側に配置されている。上流側フィン17は、板状に形成され、第三方向に沿って軸方向を有し、第二方向に板厚を有して配置されている。上流側フィン17は、単数でも複数でもよい。本実施の形態において、上流側フィン17は、複数配置されている。複数の上流側フィン17は、第二方向に等間隔または略等間隔に離れて配置されている。また、複数の上流側フィン17は、両端部がケース体11に回動可能に支持されている。そのため、上流側フィン17は、ケース体11に対し、回動軸を中心として第二方向の一方側及び他方側に回動可能となっている。つまり、上流側フィン17は、下流側フィン15の回動方向と交差(直交)する方向に回動可能となっている。複数の上流側フィン17は、図示しない第二リンクにより互いに連動されて同方向に回動するようになっている。そして、上流側フィン17は、通風路12を通過して吹出口13から吹き出される風の向きを、回動により調整するようになっている。つまり、上流側フィン17は、風向を第二方向に調整可能となっている。また、複数の上流側フィン17は、第二方向の一方側及び/または他方側に最大に回動した位置で、互いに重なりあうことで通風路12を閉塞可能な、いわゆるフィンシャット構造となっている。つまり、複数の上流側フィン17は、通風路12に対し、第二方向全体に亘り配置され、それぞれの面積の総和が通風路12の第一方向から見た断面積より大きく設定されている。
【0022】
下流側フィン15、及び、上流側フィン17は、被操作部であるノブ20により回動操作される。ノブ20は、下流側フィン15に対し、下流側フィン15の回動方向と交差する方向である第二方向に移動可能に取り付けられている。すなわち、ノブ20は、下流側フィン15に沿って、この下流側フィン15の長手方向に移動可能となっている。本実施の形態において、ノブ20は、複数の下流側フィン15のうち、第三方向の中央に位置する下流側フィン15に取り付けられている。そして、ノブ20を下流側フィン15とともに第三方向に移動させることにより、ノブ20と下流側フィン15とが一体的に第三方向に回動するようになっている。また、ノブ20を下流側フィン15に対し第二方向にスライドさせることで、上流側フィン17が第二方向に回動するようになっている。
【0023】
ノブ20は、下流側フィン15が挿通されるノブ本体部22と、このノブ本体部22に取り付けられたカバー部23と、ノブ本体部22に取り付けられた保持部24とを備えている。これらは互いに別体でもよいし、いずれか複数が一体的に設けられていてもよい。
【0024】
ノブ本体部22は、下流側フィン15に沿って扁平に形成されている。
【0025】
カバー部23は、ノブ本体部22に対し、第一方向の一方側に配置されて、ノブ本体部22の第一方向の一方側を覆う保護部材である。すなわち、カバー部23は、ノブ20において、最も乗員側に位置する。カバー部23は、ノブ20の操作時の滑り止めの機能を有する。また、カバー部23は、加飾の機能を有する。
【0026】
保持部24は、ノブ本体部22に対し、第一方向の他方側に配置されている。すなわち、保持部24は、ノブ本体部22を挟み、カバー部23とは反対側に配置されている。保持部24とカバー部23とは、下流側フィン15の回動軸を基準として互いに反対側にある。保持部24は、ノブ20において、上流側フィン17側に配置されている。保持部24は、第二方向に互いに離れた位置に、軸支部24a,24aを備えている。各軸支部24aには、ノブ20が下流側フィン15と一体的に回動したときの軸となる軸穴24bが形成されている。軸穴24bは、丸穴状に形成され、軸支部24aを第二方向に貫通して形成されている。
【0027】
そして、上流側フィン17を回動させるノブ20の操作は、リンク機構26により上流側フィン17に伝達される。リンク機構26は、リンク部30と、連結部31と、被連結部32とにより構成される。
【0028】
リンク部30は、ギヤリンクなどとも呼ばれるもので、ノブ20に対し上流側フィン17側に配置されている。リンク部30は、ノブ20に対し第三方向に回動可能に連結されている。本実施の形態において、リンク部30は、ノブ20の保持部24に対し第三方向に回動可能に支持されている。リンク部30は、リンク軸部30aを備えている。リンク軸部30aは、円柱状に形成され、軸方向の両端部が保持部24の軸支部24aの軸穴24bに回動可能に支持される。そのため、リンク部30は、ノブ20に対して第二方向側の位置が規制されているので、下流側フィン15に対するノブ20の第二方向の一方側及び他方側へのスライドに連動してこのノブ20と同方向に移動するようになっている。また、リンク部30は、ノブ20及び下流側フィン15の回動に連動して軸支部24aが移動すると、軸穴24bに回動可能に支持されているリンク軸部30aが軸支部24aとともに移動することにより、ノブ20及び下流側フィン15の回動方向とは反対方向に回動するようになっている。すなわち、回動軸方向に見て、ノブ20及び下流側フィン15の回動方向と、リンク部30の回動方向とは、互いに逆となっている。
【0029】
また、リンク部30は、連結部31と連結される連結腕部30bを備えている。本実施の形態において、連結腕部30bは、リンク軸部30aの両端部近傍の位置にそれぞれ形成されている。連結腕部30bは、リンク軸部30aの軸方向に対して交差(直交)する方向に延びている。連結腕部30bは、リンク軸部30aに対し、第一方向の他方側に延びている。連結腕部30bは、互いに平行または略平行となっている。連結腕部30bには、スリット30cが形成されている。スリット30cは、連結腕部30bを第二方向に貫通して形成されている。また、スリット30cは、連結腕部30bに長手方向に沿って長穴状に形成されている。すなわち、スリット30cは、リンク軸部30aの軸方向に対して交差(直交)する方向に長手状に延びている。
【0030】
連結部31は、リンク部30と上流側フィン17との間に配置されている。連結部31は、リンク部30と連結されている。本実施の形態において、連結部31は、リンク部30に対し第三方向に回動可能に支持されている。すなわち、連結部31は、リンク部30の連結腕部30bのスリット30cに上下方向に回動可能に両端部が支持されている連結軸部31aを備えている。連結軸部31aは、連結部31の両側部からそれぞれ円柱状に同軸または略同軸に突設され、軸方向が第二方向に沿って配置されている。そのため、連結部31は、リンク部30に対して第二方向側の位置が規制されているので、下流側フィン15に対するノブ20の第二方向の一方側及び他方側へのスライドに連動してリンク部30と一体的にノブ20と同方向に移動するようになっている。また、連結軸部31aは、スリット30cに沿ってスリット30c内を移動(スライド)可能となっている。そのため、ノブ20の回動に連動してリンク部30が回動したときにリンク部30のスリット30cに対し連結軸部31aが相対的にスライドすることで、連結軸部31aがリンク部30に追従しない。つまり、連結部31は、ノブ20の回動とは非連動となっている。
【0031】
また、連結部31は、被連結部32と連結される連結受け部31bを備えている。連結受け部31bは、連結部31の第二方向への移動を被連結部32に対し伝達できれば任意の構成とすることが可能である。本実施の形態において、連結部31は、連結受け部31bが第二方向に複数のギヤ歯を有するラック状のギヤとなっている。
【0032】
被連結部32は、連結部31と連結され、連結部31の移動に連動して上流側フィン17を回動させるものである。被連結部32は、上流側フィン17に設けられている。本実施の形態において、被連結部32は、複数の上流側フィン17のうち、第二方向の中央に位置する上流側フィン17に一体的に設けられている。被連結部32は、上流側フィン17の回動軸に対し、第一方向の一方側に位置している。すなわち、被連結部32は、上流側フィン17に対し下流側フィン15またはノブ20側に位置している。また、被連結部32は、リンク部30の回動に伴う連結部31の第三方向への回動を阻止する機能を有している。被連結部32は、連結部31の回動を阻止し、かつ、連結部31の第二方向への移動を被連結部32に対し伝達できれば任意の構成とすることが可能である。本実施の形態において、被連結部32は、連結部31の第三方向の一方側及び他方側の位置を規制する規制部32aを備えている。規制部32aは、例えば第一方向の一方側、つまり連結部31側に向かい突出する突起部である。規制部32aは、連結部31の第三方向の一方及び他方側の位置にそれぞれ形成されている。また、被連結部32は、連結部31の連結受け部31bと連結される被連結受け部32bを備えている。被連結受け部32bは凹凸状に形成されている。本実施の形態において、連結部32は、被連結受け部32bが連結受け部31bと歯合されるギヤである。
【0033】
次に、一実施の形態の作用を説明する。
【0034】
風向調整装置10は、組み立てた状態で、下流側フィン15に取り付けられたノブ20の軸支部24a,24aの軸穴24b,24bに対し、リンク機構26のリンク部30のリンク軸部30aの両端部が回動可能に支持される。また、リンク部30の連結腕部30b,30bのスリット30c,30cに連結部31の連結軸部31a,31aが回動可能、かつ、スリット30c,30cに沿ってスライド可能に支持される。さらに、連結部31が被連結部32の規制部32a,32a間に保持され、図4に示すように、連結部31の連結受け部31bに対し被連結部32の被連結受け部32bが連結される。
【0035】
そして、図2に示すように、乗員がノブ20を第二方向、つまり下流側フィン15に沿って操作すると、ノブ20が下流側フィン15に対して第二方向の一方側または他方側にスライドする。このとき、ノブ20の軸支部24a,24aによりノブ20に対しリンク部30の第二方向の位置が規制され、リンク部30の連結腕部30b,30bによりリンク部30に対し連結部31の第二方向の位置が規制されているため、ノブ20のスライドに連動して、リンク部30及び連結部31がノブ20と同方向にスライドする。そこで、連結部31の連結受け部31bに対し被連結受け部32bで連結されている被連結部32が上流側フィン17とともに第二方向に押されることで、上流側フィン17が回動軸に対し下流側フィン15側、つまり通風路12を通過する風の下流側が第二方向に振られる。そのため、上流側フィン17が第二方向に回動し、風向を第二方向に調整可能となる。また、第二方向の一方側または他方側に最大に振った位置では、複数の上流側フィン17が互いに重なることで、通風路12を閉塞する。図2の二点鎖線では、例えば上流側フィン17を第二方向の他方側に最大に振った位置を示すが、第二方向の一方側に最大に振った位置でも同様に作用してもよい。
【0036】
また、図1に示すように、乗員がノブ20を第三方向、つまり下流側フィン15を回動させる方向に操作すると、ノブ20と下流側フィン15とが一体的に回動する。このとき、ノブ20の軸支部24a,24a(軸穴24b,24b)にリンク軸部30aが回動可能に支持されたリンク部30は、ノブ20の回動に連動してリンク軸部30a側が移動するものの、連結腕部30b,30b側は、スリット30c,30cに連結部31の連結軸部31a,31aが挿入され、連結部31が被連結部32の規制部32a,32aにより第三方向の移動が規制されていることで、連結部31の連結軸部31a,31aに対して相対的にスライドする。そのため、リンク部30は、ノブ20及び下流側フィン15の回動方向とは反対方向に回動する(第二方向に見て、一方が時計回り方向に回動するときに他方が反時計回り方向に回動する)こととなるとともに、連結部31は、リンク部30の回動に連動することなく位置を維持する。すなわち、この状態において通風路12内で第三方向に回動されるのはノブ20、下流側フィン15、及び、リンク部30のみであるから、ケース体11または通風路12は、これらの第三方向への可動域が確保できる第三方向の寸法があれば十分である。図1の二点鎖線では、例えばノブ20を第三方向の他方側に振った位置を示すが、第三方向の一方側に振った位置でも同様である。また、連結軸部31a,31aと、連結腕部30b,30b(スリット30c,30c)とによって、リンク部30と連結部31との連結は維持されるため、ノブ20を第二方向にスライド操作したときには、ノブ20と一体的にリンク部30及び連結部31が第二方向にスライドし、上流側フィン17を回動させる操作には影響を与えない。
【0037】
このように、一実施の形態によれば、ノブ20及び下流側フィン15の回動に連動してその反対方向に回動するリンク部30に対して連結部31を連結し、連結部31をノブ20の下流側フィン15に沿う方向への移動に連動して同方向に移動し、かつ、ノブ20の回動には非連動とするとともに、この連結部31に対し、上流側フィン17に設けた被連結部32を連結することで、下流側フィン15とともにノブ20を回動させるように操作したときに、ノブ20、下流側フィン15、及び、リンク部30のみが回動するので、通風路12をこれらの可動域に応じた大きさに設定すればよいから、下流側フィン15の回動方向に必要以上に大きくする必要がない。すなわち、風向調整装置10の第三方向の大きさを最低限に設定でき、風向調整装置10の大きさを抑制しつつ、下流側フィン15の可動域を確保できる。また、下流側フィン15とともにノブ20を回動させた状態でも、ノブ20、リンク部30、連結部31、及び被連結部32の連結が維持されるので、下流側フィン15を回動させた位置でもノブ20を下流側フィン15に沿って移動させるように操作することによって上流側フィン17を操作できる。したがって、薄型の風向調整装置10にも対応可能となる。しかも、連結部31及び被連結部32の可動範囲に影響なく下流側フィン15の振り角を設定可能であるため、下流側フィン15の振り角を自由に設定することで風の指向性を効果的に制御でき、空調性能を向上させることができる。
【0038】
また、上流側フィン17を複数設け、これら上流側フィン17が所定の回動位置で互いに重なることで通風路12を閉塞可能とすることで、ノブ20を下流側フィン15に沿って移動させるように操作することによって上流側フィン17により通風路12を閉塞可能となる。
【0039】
さらに、連結部31及び被連結部32を互いに歯合するギヤとすることで、ノブ20を下流側フィン15に沿って第二方向に移動させるように操作したときに、連結部31及び被連結部32の歯合によって上流側フィン17を確実に回動させることが可能であるとともに、上流側フィン17の回動角度、すなわち上流側フィン17による風向制御をきめ細かく調整可能となる。
【0040】
なお、上記の一実施の形態において、下流側フィン15は、複数枚に限られず、一枚でもよいし、板状に限られず、環状などに形成されていてもよい。
【0041】
また、連結部31と被連結部32とは、一方が軸状部、他方が軸状部を第二方向に挟む挟み部などとしてもよい。
【0042】
さらに、風向調整装置10は、例えばコンソールボックスの後端部に設けられる後部座席の乗員用としても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 風向調整装置
11 ケース体
12 通風路
13 吹出口
15 第一フィンである下流側フィン
17 第二フィンである上流側フィン
20 被操作部であるノブ
30 リンク部
31 連結部
32 被連結部
図1
図2
図3
図4
図5