(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び液体噴射ヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230925BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 303
B41J2/14 603
B41J2/14 607
B41J2/16 517
(21)【出願番号】P 2019148764
(22)【出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-188882(JP,A)
【文献】特開2018-103557(JP,A)
【文献】特開2008-284739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され
、
前記連通流路の前記開口部の断面積を流路開口面積とし、前記アクチュエータプレートの前記流路プレートの側の面における前記複数のチャネルの断面積の総和をチャネル開口総面積としたとき、
前記流路開口面積は、前記チャネル開口総面積以上であることを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
【請求項2】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され
、
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、
前記流体供給路は、前記第3方向において前記開口部と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口していることを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
【請求項3】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され
、
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、
前記流路プレートは、前記第1方向において前記連通流路と並ぶとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有し、
前記カバープレートは、前記第3方向において前記第2連通流路と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する凹部を有することを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
【請求項4】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され
、
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、
前記流路プレートは、
前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路と、
前記カバープレートと前記第2連通流路とを前記第3方向に離すように前記カバープレートにおいて前記アクチュエータプレートとは反対側の面に設けられた壁部と、を有することを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
【請求項5】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され
、
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記流路プレートは、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記連通流路と間隔をあけて設けられるとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有することを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
【請求項6】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され
、
前記第1方向は、鉛直方向であり、
前記連通流路は、前記流路プレートの上面に開口していることを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
【請求項7】
前記連通流路の前記開口部の断面積を流路開口面積とし、前記アクチュエータプレートの前記流路プレートの側の面における前記複数のチャネルの断面積の総和をチャネル開口総面積としたとき、
前記流路開口面積は、前記チャネル開口総面積以上であることを特徴とする請求項
2から6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項8】
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、
前記流体供給路は、前記第3方向において前記開口部と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口していることを特徴とする請求項
1、3から7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項9】
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、
前記流路プレートは、前記第1方向において前記連通流路と並ぶとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有し、
前記カバープレートは、前記第3方向において前記第2連通流路と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する凹部を有することを特徴とする請求項
1、2、5から8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項10】
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、
前記流路プレートは、
前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路と、
前記カバープレートと前記第2連通流路とを前記第3方向に離すように前記カバープレートにおいて前記アクチュエータプレートとは反対側の面に設けられた壁部と、を有することを特徴とする請求項
1、2、5から8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項11】
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記流路プレートは、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記連通流路と間隔をあけて設けられるとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有することを特徴とする請求項
1から4、6から10のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項12】
前記第2連通流路を前記第1方向と直交する面で切断したときの断面積を断面開口面積としたとき、
前記流路プレートは、前記断面開口面積が前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面から前記第1方向の一方の面に向かうに従って漸次小さくなる縮幅部を有することを特徴とする請求項
5または11に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項13】
前記流路プレートは、前記連通流路を前記第2方向の両端で閉塞するように前記流路プレートの前記第2方向の両端面に設けられた保持面を有することを特徴とする請求項1から
12のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項14】
前記第1方向は、鉛直方向であり、
前記連通流路は、前記流路プレートの上面に開口していることを特徴とする請求項
1から5、7から13のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項15】
前記複数のチャネルと前記開口部との距離をLx、前記複数のチャネルと前記開口部との最短距離をLdmi、前記開口部の開口面積をAx、前記アクチュエータプレートの前記流路プレートの側の面における前記複数のチャネルの断面積の総和をAchとし、
X=Ax/Ach、Y=Lx/Ldmiとしたとき、
以下の式(A)を満たすことを特徴とする請求項1から
14のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
1≦Y<0.33X+0.70 ・・・(A)
【請求項16】
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、それぞれ略同じであることを特徴とする請求項1から
15のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項17】
請求項1から
16のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップを備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項18】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、
前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、
前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、
前記アクチュエータプレートは、前記流路プレートを挟んで前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に対向するように一対設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項19】
請求項
17または
18に記載の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項20】
第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、
前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定されている液体噴射ヘッドチップの製造方法であって、
前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとを接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給する保護膜形成工程と、を含
み、
前記保護膜形成工程の後、前記流路プレートの外面に前記開口部を通じてインクを流入可能なインク流路を有するカバーを取り付けるカバー取付工程を更に含むことを特徴とする液体噴射ヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、液体噴射ヘッドチップの製造方法および流路プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙等の被記録媒体に液滴状のインクを吐出して、被記録媒体に画像や文字を記録する装置として、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)を備えたインクジェットプリンタ(液体噴射装置)がある。
例えば、インクジェットヘッドには、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電体に電圧をかけて変形させることでインクを吐出させる方式がある。より精細な印刷のためには、インクの吐出部であるノズルの密度を上げる方法が採用される。このときに、密度を向上させるため、アクチュエータプレートの複数のチャネル等(ヘッドチップの構造)も微細化される。
例えば、インクジェットヘッドにおいてインクに接液する部分には、ポリパラキシリレン(パリレン:登録商標)膜等の保護膜を形成して耐久性を担保している。例えば、チャネルにポリパラキシリレン膜を形成することで、チャネル内に形成された電極がインクによって腐食されることを抑制している。例えば、特開2004-74469号公報には、ポリパラキシリレン膜からなる有機絶縁膜の製造方法が開示されている。ポリパラキシリレン膜は、複雑な構造への付きまわりを利点とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複雑な構造への付きまわりを利点とするポリパラキシリレン膜であっても、成膜には構造の影響を受ける。ポリパラキシリレン膜等の保護膜の材料(流体)は、微細化した構造へ入りにくい。そのため、微細化した複数のチャネルに保護膜を成膜するときに、複数のチャネルにおいて保護膜の膜厚バラツキが生じる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、液体噴射ヘッドチップの製造方法および流路プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記連通流路の前記開口部の断面積を流路開口面積とし、前記アクチュエータプレートの前記流路プレートの側の面における前記複数のチャネルの断面積の総和をチャネル開口総面積としたとき、前記流路開口面積は、前記チャネル開口総面積以上であることを特徴とする。
(2)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、前記流体供給路は、前記第3方向において前記開口部と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口していることを特徴とする。
(3)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、前記流路プレートは、前記第1方向において前記連通流路と並ぶとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有し、前記カバープレートは、前記第3方向において前記第2連通流路と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する凹部を有することを特徴とする。
(4)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、前記流路プレートは、前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路と、前記カバープレートと前記第2連通流路とを前記第3方向に離すように前記カバープレートにおいて前記アクチュエータプレートとは反対側の面に設けられた壁部と、を有することを特徴とする。
(5)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記流路プレートは、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記連通流路と間隔をあけて設けられるとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有することを特徴とする。
(6)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記第1方向は、鉛直方向であり、前記連通流路は、前記流路プレートの上面に開口していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ポリパラキシリレン等の保護膜を形成するための流体(以下単に「流体」ともいう。)を流路プレートの外面の開口部を通じて複数のチャネルに供給したとき、複数のチャネルにおける保護膜の厚さをそれぞれ同等にすることができる。したがって、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
開口部は、流路プレートにおいて第1方向の一方の面、または、第1方向及び第2方向に直交する第3方向の一方の面に開口しているとよい。
この構成によれば、流路プレートの第2方向の端面に開口部がある場合と比較して、複数のチャネルに流体を均等に供給することができる。したがって、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキをより効果的に抑制することができる。
加えて、流路プレートの第2方向の端面に開口部がある場合と比較して、開口部とチャネルとの最大距離が短くなるため、流体を各チャネルに早く供給することができる。
【0008】
(7)上記(2)から(6)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記連通流路の前記開口部の断面積を流路開口面積とし、前記アクチュエータプレートの前記流路プレートの側の面における前記複数のチャネルの断面積の総和をチャネル開口総面積としたとき、前記流路開口面積は、前記チャネル開口総面積以上であってもよい。
【0009】
この構成によれば、流路開口面積がチャネル開口総面積未満の場合と比較して、複数のチャネルのそれぞれへの必要な流体の流入量を確保することができるため、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚低下を抑制することができる。
【0010】
(8)上記(1)、(3)から(7)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、前記流体供給路は、前記第3方向において前記開口部と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口していてもよい。
【0011】
この構成によれば、流体供給路がカバープレートにおいて第1方向の一方の面で閉塞されている場合と比較して、開口部側における流体の供給開口が大きくなるため、流体の供給量を増加させることができる。したがって、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚低下をより効果的に抑制することができる。
【0012】
(9)上記(1)、(2)、(5)から(8)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、前記流路プレートは、前記第1方向において前記連通流路と並ぶとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有し、前記カバープレートは、前記第3方向において前記第2連通流路と連なるように前記カバープレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する凹部を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、カバープレートにおいて第1方向の他方の面に凹部を有しない場合と比較して、第2連通流路側における流体の供給開口が大きくなるため、流体の供給量(循環量)を増加させることができる。
【0014】
(10)上記(1)、(2)、(5)から(8)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に配置され、前記複数のチャネルおよび前記連通流路に連通する流体供給路を有するカバープレートを更に備え、前記流路プレートは、前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路と、前記カバープレートと前記第2連通流路とを前記第3方向に離すように前記カバープレートにおいて前記アクチュエータプレートとは反対側の面に設けられた壁部と、を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、第2連通流路がカバープレートに接する場合と比較して、第2連通流路が各チャネルの駆動による影響(クロストーク)を受けにくい。
【0016】
(11)上記(1)から(4)、(6)から(10)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記流路プレートは、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において前記連通流路と間隔をあけて設けられるとともに前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面に開口する第2連通流路を有してもよい。
【0017】
この構成によれば、第2連通流路が第1方向において連通流路と並ぶ場合と比較して、第2連通流路を通じて流体を第1方向へスムーズに流すことができる。したがって、流体の循環性が向上する。
【0018】
(12)上記(5)または(11)に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記第2連通流路を前記第1方向と直交する面で切断したときの断面積を断面開口面積としたとき、前記流路プレートは、前記断面開口面積が前記流路プレートにおいて前記第1方向の他方の面から前記第1方向の一方の面に向かうに従って漸次小さくなる縮幅部を有してもよい。
【0019】
この構成によれば、流路プレート内において流体を第1方向へスムーズに流すことができる。したがって、流体の循環性が向上する。例えば、インク吐出時にインク供給を逆転させたときに、インクをスムーズに流すことができる。例えば、インクを下方に吐出するときに、インク供給を逆転させた場合は、チャネル内の気泡が浮力および循環で流れやすいため、チャネル内に気泡が溜まりにくい。
【0020】
(13)上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記流路プレートは、前記連通流路を前記第2方向の両端で閉塞するように前記流路プレートの前記第2方向の両端面に設けられた保持面を有してもよい。
【0021】
この構成によれば、保持面により液体噴射ヘッドチップの第2方向の両端を保持可能となるため、作業性が向上する。
【0022】
(14)上記(1)から(5)、(7)から(13)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記第1方向は、鉛直方向であり、前記連通流路は、前記流路プレートの上面に開口していてもよい。
【0023】
この構成によれば、流体の自重により流体を連通流路へスムーズに流すことができる。
【0024】
(15)上記(1)から(14)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記複数のチャネルと前記開口部との距離をLx、前記複数のチャネルと前記開口部との最短距離をLdmi、前記開口部の開口面積をAx、前記アクチュエータプレートの前記流路プレートの側の面における前記複数のチャネルの断面積の総和をAchとし、X=Ax/Ach、Y=Lx/Ldmiとしたとき、以下の式(A)を満たしてもよい。
1≦Y<0.33X+0.70 ・・・(A)
【0025】
この構成によれば、複数のチャネルにおける保護膜の厚さをそれぞれ同等にすることができるため、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0026】
(16)上記(1)から(15)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップでは、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、それぞれ略同じであってもよい。
【0027】
この構成によれば、複数のチャネルに流体を均等に供給することができるため、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0028】
(17)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(16)のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドチップを備えることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる液体噴射ヘッドを提供することができる。
【0030】
(18)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドは、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定され、前記開口部は、前記流路プレートにおいて前記第1方向の一方の面に開口し、前記アクチュエータプレートは、前記流路プレートを挟んで前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に対向するように一対設けられていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、二列タイプの液体噴射ヘッドにおいて複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0032】
(19)本開示の態様に係る液体噴射装置は、上記(17)または(18)に記載の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる液体噴射装置を提供することができる。
【0034】
(20)本開示の態様に係る液体噴射ヘッドチップの製造方法は、第1方向に沿って延びる複数のチャネルが前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートに接合され、前記複数のチャネルに連通する連通流路を有する流路プレートと、を備え、前記連通流路は、前記複数の前記チャネルに跨るように前記第2方向に沿って延びるとともに、前記流路プレートの外面に開口する開口部を有し、前記複数のチャネルと前記開口部との距離は、前記複数のチャネルに保護膜を形成するための流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給したとき、前記複数のチャネルにおける前記保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定されている液体噴射ヘッドチップの製造方法であって、前記アクチュエータプレートと前記流路プレートとを接合する接合工程と、前記接合工程の後、前記流体を前記流路プレートの前記開口部を通じて前記複数のチャネルに供給する保護膜形成工程と、を含み、前記保護膜形成工程の後、前記流路プレートの外面に前記開口部を通じてインクを流入可能なインク流路を有するカバーを取り付けるカバー取付工程を更に含むことを特徴とする。
【0035】
この方法によれば、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0037】
この方法によれば、カバー取付工程の前に、流体を流路プレートの外面の開口部を通じて複数のチャネルに供給することができる。カバー取付工程の前は開口部を遮る部材が無いため、カバー取付工程の後に流体を供給する場合と比較して、複数のチャネルに流体をスムーズに供給することができる。
【発明の効果】
【0040】
本開示によれば、複数のチャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、液体噴射ヘッドチップの製造方法および流路プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図。
【
図2】実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図。
【
図3】実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図。
【
図4】実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図5】実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図7】実施形態に係るヘッドチップの部分拡大斜視図。
【
図9】実施形態に係る流路開口面積とチャネル開口総面積との関係を示す図。
【
図11】
図10のXI-XI断面図であって、実施形態に係る保護膜形成工程の説明図。
【
図12】
図11に続く、実施形態に係るカバー取付工程の説明図。
【
図13】実施形態の第1変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図14】実施形態の第2変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図15】実施形態の第3変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図16】実施形態の第4変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図18】実施形態の第5変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図20】
図9に相当する、実施形態の第6変形例に係る流路プレートの説明図。
【
図21】
図9に相当する、実施形態の第7変形例に係る流路プレートの説明図。
【
図22】実施形態の第8変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図23】実施形態の第9変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図24】実施形態の第10変形例に係るインクジェットヘッドの断面図。
【
図25】実施例に係る保護膜の厚みの評価の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。実施形態では、本開示の液体噴射ヘッドチップ(以下、単に「ヘッドチップ」という。)を備えた液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0043】
<プリンタ>
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド5(液体噴射ヘッド)と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備える。なお、以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。X方向は、被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向である。Y方向は、走査機構7の走査方向である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する上下方向である。
【0044】
搬送機構2,3(第1搬送機構2および第2搬送機構3)は、被記録媒体PをX方向に搬送する。具体的に、第1搬送機構2は、Y方向に延びる第1グリットローラ11と、第1グリットローラ11と平行に延びる第1ピンチローラ12と、第1グリットローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備える。第2搬送機構3は、第1グリットローラ11と平行に延びる第2グリットローラ13と、第2グリットローラ13と平行に延びる第2ピンチローラ14と、第2グリットローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備える。
【0045】
インクタンク4は、X方向に並んで複数設けられている。実施形態において、複数のインクタンク4は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクをそれぞれ収容するインクタンク4Y,4M,4C,4Kである。
【0046】
図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備える。例えば、インク供給管21及びインク排出管22は、インクジェットヘッド5を支持する走査機構7の動作に追従可能な程度に可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0047】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
【0048】
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0049】
図1に示すように、走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。具体的に、走査機構7は、Y方向に延びる一対のガイドレール31,32と、一対のガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、キャリッジ33をY方向に移動させる駆動機構34と、を備える。なお、搬送機構2,3及び走査機構7は、インクジェットヘッド5と被記録媒体Pとを相対的に移動させる移動機構として機能する。
【0050】
駆動機構34は、X方向におけるガイドレール31,32の間に配置されている。駆動機構34は、Y方向に間隔をあけて配置された一対のプーリ35,36と、一対のプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、一方のプーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を備える。
【0051】
キャリッジ33は、無端ベルト37に連結されている。キャリッジ33には、Y方向に並んで複数のインクジェットヘッド5が搭載されている。実施形態において、複数のインクジェットヘッド5は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクをそれぞれ吐出するインクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Kである。
【0052】
<インクジェットヘッド5>
図3に示すように、インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ40と、カバー41(
図12参照)と、入口ジョイント42と、出口ジョイント(不図示)と、帰還プレート43と、ノズルプレート44(噴射プレート)と、を備える。インクジェットヘッド5は、吐出チャネル51におけるチャネル延在方向の先端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのうち、インクタンク4(
図1参照)との間でインクを循環させる循環式(エッジシュート循環式)のものである。
図示はしないが、ヘッドチップ40の表面(内部の表面を含む)には、ポリパラキシリレン膜などの保護膜が形成されている。
【0053】
<ヘッドチップ40>
ヘッドチップ40は、一対のアクチュエータプレート50A,50Bと、一対のカバープレート60A,60Bと、一対の封止プレート70A,70Bと、単一の流路プレート80と、を備える。
【0054】
一対のアクチュエータプレート50A,50B、一対のカバープレート60A,60B、一対の封止プレート70A,70Bは、それぞれ互いに実質的に同一の構成を有する。一対のアクチュエータプレート50A,50B、一対のカバープレート60A,60B、一対の封止プレート70A,70Bは、それぞれY方向において流路プレート80を挟んで実質的に対称の姿勢をなすように実質的に対称の位置に配置されている。
【0055】
以下、特に区別する必要がない場合は、一対のアクチュエータプレート50A,50B、一対のカバープレート60A,60B、一対の封止プレート70A,70Bを、それぞれアクチュエータプレート50、カバープレート60、封止プレート70と称して説明する。アクチュエータプレート50、カバープレート60、封止プレート70は、流路プレート80に近い位置からカバープレート60、アクチュエータプレート50、封止プレート70の順に配置されている。
【0056】
<アクチュエータプレート50>
アクチュエータプレート50の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。実施形態において、アクチュエータプレート50は、分極方向が厚さ方向(Y方向)で異なる2枚の圧電基板を積層した、いわゆるシェブロンタイプの積層基板である。例えば、圧電基板は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなるセラミックス基板が好適に用いられる。
【0057】
アクチュエータプレート50は、カバープレート60と対向するAP第1面50f1と、封止プレート70と対向するAP第2面50f2と、を有する。
図7に示すように、AP第2面50f2は、端部領域50f21と、チャネル形成領域50f22と、を含んでいる。端部領域50f21は、封止プレート70(
図3参照)と重なることなく外部に露出する部分である。チャネル形成領域50f22は、複数のチャネル51,52が形成されるとともに封止プレート70(
図3参照)と重なる部分である。
【0058】
各チャネル51,52は、Z方向(第1方向)に延びる直線状に形成されている。各チャネル51,52は、X方向(第2方向)に間隔をあけて交互に形成されている。各チャネル51,52間は、アクチュエータプレート50からなる駆動壁53によってそれぞれ画成されている。一方のチャネル51は、インクが充填される吐出チャネル51(噴射チャネル)である。他方のチャネル52は、インクが充填されない非吐出チャネル52(非噴射チャネル)である。
【0059】
吐出チャネル51の上端部は、アクチュエータプレート50内で終端している。吐出チャネル51の下端部は、アクチュエータプレート50の下端面で開口している。
図7中符号51eは、吐出チャネル51において帰還プレート43(
図3参照)と対向する開口(インクが吐出される吐出端)を示す。
【0060】
図4は、第1アクチュエータプレート50Aにおける吐出チャネル51の断面を含む図である。
図5は、第2アクチュエータプレート50Bにおける吐出チャネル51の断面を含む図である。
図4に示すように、吐出チャネル51は、下端部に位置する延在部51aと、延在部51aから上方に連なる切り上がり部51bと、を有している。
延在部51aは、Z方向の全体に亘って溝深さが一様とされている。切り上がり部51bは、上方に向かうに従い溝深さが漸次浅くなっている。
【0061】
非吐出チャネル52は、Z方向の全体に亘って溝深さが一様とされている。
図3に示すように、非吐出チャネル52の上端部は、アクチュエータプレート50の上端面で開口している。非吐出チャネル52の下端部は、アクチュエータプレート50の下端面で開口している。
【0062】
図7に示すように、吐出チャネル51の内面には、共通電極55が形成されている。共通電極55は、吐出チャネル51の内面全体に形成されている。すなわち、共通電極55は、延在部51aの内面全体、及び切り上がり部51bの内面全体に形成されている。
【0063】
共通電極55は、共通パッド56と接続されている。共通パッド56は、AP第2面50f2のうち吐出チャネル51の上端部の周辺部分の一部を覆うように形成されている。共通パッド56は、AP第2面50f2のうち吐出チャネル51の上端部から端部領域50f21に至るまで延びている。
【0064】
非吐出チャネル52の内面には、個別電極57が形成されている。
図6に示すように、個別電極57は、非吐出チャネル52の内面のうち、X方向で対向する内側面に各別に形成されている。したがって、各個別電極57のうち、同一の非吐出チャネル52内で対向する個別電極57同士は、非吐出チャネル52の底面において電気的に分離されている。個別電極57は、非吐出チャネル52の内側面全体(Y方向及びZ方向の全体)に亘って形成されている。
【0065】
図7に示すように、個別電極57は、個別パッド58と接続されている。個別パッド58は、AP第2面50f2のうち端部領域50f21の一部を覆うように形成されている。個別パッド58は、AP第2面50f2のうち共通パッド56よりも上方に位置する部分をX方向に延びている。個別パッド58は、吐出チャネル51を間に挟んで隣り合う一対の個別電極57同士を接続している。個別電極57および個別パッド58は、共通電極55および共通パッド56と電気的に絶縁されている。
共通パッド56および個別パッド58は、フレキシブルプリント基板などの外部配線基板59(
図4参照)と接続されている。
【0066】
<カバープレート60>
図3に示すように、カバープレート60の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。カバープレート60の長手方向および短手方向の長さは、アクチュエータプレート50の長手方向および短手方向の長さとそれぞれ実質的に同じである。
【0067】
カバープレート60は、Y方向(第3方向)においてアクチュエータプレート50と流路プレート80との間に配置されている。カバープレート60は、流路プレート80と対向するCP第1面60f1と、アクチュエータプレート50(AP第1面50f1)と対向するCP第2面60f2と、を有する。
【0068】
カバープレート60は、カバープレート60をY方向(厚さ方向)に貫通するとともに、吐出チャネル51に連通する液体供給路61を有する。液体供給路61は、カバープレート60をY方向の流路プレート80側に開口するマニホールド62と、マニホールド62にそれぞれ連通するとともにY方向のアクチュエータプレート50側に開口する複数のスリット63と、を含んでいる(
図8参照)。
【0069】
複数のスリット63は、複数の吐出チャネル51に対応するようにX方向に間隔をあけて配置されている。複数のスリット63は、それぞれZ方向に長手を有する。マニホールド62は、複数のスリット63に対して共通に設けられている。マニホールド62は、各スリット63を通して各吐出チャネル51と連通している(
図4参照)。一方、マニホールド62は、非吐出チャネル52には連通していない。
【0070】
図4に示すように、マニホールド62は、CP第1面60f1に形成されている。マニホールド62は、Z方向において、吐出チャネル51の切り上がり部51bと実質的に同じ位置に配置されている。マニホールド62は、CP第2面60f2に向けて窪むとともにX方向に延在する溝状に形成されている。マニホールド62には、流路プレート80を通してインクが流入する。
【0071】
複数のスリット63は、CP第2面60f2に形成されている。複数のスリット63は、Y方向においてマニホールド62の一部とそれぞれ重なる位置に配置されている。複数のスリット63は、マニホールド62と吐出チャネル51とに連通している。複数のスリット63のX方向の幅は、吐出チャネル51のX方向の幅と実質的に同じである。
【0072】
なお、カバープレート60は、絶縁性を有し、かつアクチュエータプレート50の形成材料の熱伝導率と同等以上の熱伝導率を有する材料により形成されているとよい。例えば、アクチュエータプレート50をPZTにより形成した場合、カバープレート60は、PZTまたはシリコンにより形成することが好ましい。これにより、アクチュエータプレート50での温度ばらつきを緩和し、インク温度の均一化を図ることができる。これにより、インクの吐出速度の均一化を図り、印字安定性を向上させることができる。
【0073】
<封止プレート70>
図3に示すように、封止プレート70(ボトムプレート)の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。封止プレート70の長手方向の長さは、アクチュエータプレート50の長手方向と実質的に同じである。封止プレート70の短手方向の長さは、アクチュエータプレート50の短手方向の長さよりも短い。
【0074】
封止プレート70は、アクチュエータプレート50と対向するBP第1面70f1と、Y方向においてヘッドチップ40の最外面に位置するBP第2面70f2と、アクチュエータプレート50の上端よりも下方に位置するBP上端面70f3と、アクチュエータプレート50の下端とZ方向において実質的に一致するBP下端面70f4と、を有する。
【0075】
BP第1面70f1は、AP第2面50f2のうちのチャネル形成領域50f22(
図7参照)と対向している。複数のチャネル51,52は、封止プレート70とカバープレート60とによって閉塞されている。封止プレート70は、開口や切り欠き、溝などを有しなくてもよい。すなわち、封止プレート70は、単純な矩形板状を有しているとよい。これにより、封止プレート70の形成材料として、加工の困難な機能性材料や、高い加工精度が得にくい低価格材料を用いることもできるため、材料の選択の自由度が向上する。
【0076】
<一対のアクチュエータプレート50A,50Bの配置関係>
図3に示すように、一対のアクチュエータプレート50A,50Bは、それぞれのAP第1面50f1同士をY方向で対向させた状態で、Y方向に一対のカバープレート60A,60Bおよび単一の流路プレート80を挟んで配置されている。
【0077】
第2アクチュエータプレート50Bの吐出チャネル51及び非吐出チャネル52は、第1アクチュエータプレート50Aの吐出チャネル51及び非吐出チャネル52の配列ピッチに対してX方向に半ピッチずれて配列されている。すなわち、各アクチュエータプレート50A,50Bの吐出チャネル51及び非吐出チャネル52同士は、千鳥状に配列されている。
【0078】
図4に示すように、第1アクチュエータプレート50Aの吐出チャネル51と、第2アクチュエータプレート50Bの非吐出チャネル52とは、Y方向で対向している。
図5に示すように、第1アクチュエータプレート50Aの非吐出チャネル52と、第2アクチュエータプレート50Bの吐出チャネル51とは、Y方向で対向している。なお、各アクチュエータプレート50A,50Bのチャネル51,52のピッチは、必要に応じて変更可能である。
【0079】
<流路プレート80>
図3に示すように、流路プレート80は、Y方向において第1カバープレート60Aと第2カバープレート60Bとの間に配置されている。流路プレート80は、同一の部材により一体に形成されている。流路プレート80の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。Y方向から見て、流路プレート80の外形は、カバープレート60の外形と実質的に同じである。
【0080】
流路プレート80は、第1カバープレート60Aと対向するFP第1面80f1と、第2カバープレート60Bと対向するFP第2面80f2と、各カバープレート60A,60Bの上端とZ方向において実質的に一致するFP上端面80f3と、各カバープレート60A,60Bの下端とZ方向において実質的に一致するFP下端面80f4と、を有する。
【0081】
FP第1面80f1は、第1カバープレート60AのCP第1面60f1と接合されている。
FP第2面80f2は、第2カバープレート60BのCP第1面60f1と接合されている。
FP上端面80f3は、ヘッドチップ40の最上面に位置している。
FP下端面80f4は、ヘッドチップ40の最下面に位置している。
【0082】
図4に示すように、流路プレート80は、FP上端面80f3(第1方向の一方の面)に開口する開口部85を有する一対の入口流路81A,81B(連通流路)と、Z方向において入口流路81A,81Bと並ぶとともにFP下端面80f4(第2方向の他方の面)に開口する一対の出口流路82A,82B(第2連通流路)と、を有する。以下、特に区別する必要がない場合は、一対の入口流路81A,81B、一対の出口流路82A,82Bを、それぞれ入口流路81、出口流路82と称して説明する。
【0083】
入口流路81は、液体供給路61を通じて複数の吐出チャネル51に連通している。入口流路81は、複数の吐出チャネル51に跨るようにX方向に延びている(
図9参照)。入口流路81は、マニホールド62に格別に連通するようにFP第1面80f1およびFP第2面80f2のそれぞれに形成されている。
【0084】
各入口流路81A,81Bは、FP第1面80f1およびFP第2面80f2からそれぞれY方向の内側に向けて窪んでいる。各入口流路81A,81BのX方向の両端部および下端部は、流路プレート80内で閉塞されている(
図3参照)。すなわち、入口流路81は、FP上端面80f3のみで開口する開口部85を有する。
【0085】
図9は、実施形態に係る流路開口面積とチャネル開口総面積との関係を示す図である。
図10は、
図9のX-X断面図である。
図9においては、流路プレート80における開口部85等を実線で示し、アクチュエータプレート50における複数の吐出チャネル51を破線で示している。
【0086】
開口部85は、複数の吐出チャネル51との距離が、複数の吐出チャネル51に保護膜を形成するための流体を流路プレート80の開口部85を通じて複数の吐出チャネル51に供給したとき、複数の吐出チャネル51における保護膜の厚さがそれぞれ同等(例えば均一)になるように設定されている。
【0087】
本発明者は、鋭意検討の結果、複数の吐出チャネル51において保護膜の厚さをそれぞれ同等にするための、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離、および複数の吐出チャネル51と開口部85との開口広さ(開口面積)の関係性を見出した。流路プレート80の開口部85が複数の吐出チャネル51よりも広く開いている場合、最大で80%程度、少なくとも40%程度の距離の範囲で、複数の吐出チャネル51において保護膜の厚さをそれぞれ同等にすることができる。現在の設計を基礎に考えた場合、80%は理論上取りうる設計上の最大値であり、40%は実際に行った場合を推定した最小値である。
【0088】
本実施形態では、開口部85は、複数の吐出チャネル51との距離がそれぞれ略同じになるようにFP上端面80f3に開口している。言い換えると、複数の吐出チャネル51のそれぞれをチャネルのX方向の幅中心位置を通る面で切断したときの断面視で、開口部85と吐出チャネル51との距離は各断面において略同じである。
【0089】
ここで、「距離」とは、
図10の断面視で開口部85のY方向の中心位置G1と吐出チャネル51の開口中心位置G2とを結ぶ仮想線の長さLを意味する。
流路プレート80とカバープレート60との接合面としてFP第1面80f1を例示したとき、「距離」は、断面視でFP第1面80f1側に位置する開口部85のY方向の中心位置G1と、第1カバープレート60Aの液体供給路61のZ方向の中心位置G3と、第1アクチュエータプレート50Aと第1カバープレート60Aとの接合面(第1カバープレート60AのAP第1面50f1)における吐出チャネル51の開口面のZ方向の中心位置G2と、を結ぶ第1仮想線の長さである。
流路プレート80とカバープレート60との接合面としてFP第2面80f2を例示したとき、「距離」は、断面視でFP第2面80f2側に位置する開口部85のY方向の中心位置と、第2カバープレート60Bの液体供給路61のZ方向の中心位置と、第2アクチュエータプレート50Bと第2カバープレート60Bとの接合面(第2カバープレート60BのAP第1面50f1)におけるチャネルの開口面のZ方向の中心位置と、を結ぶ第2仮想線の長さである。
【0090】
「略同じ」とは、ヘッドチップ40の構成要素の設計誤差(寸法誤差)の許容範囲内において、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離がそれぞれ実質的に同じであることを意味する。
「実質的に同じ」とは、複数の吐出チャネル51と開口部85との間のうち、最長距離をLmax、最短距離をLmin、平均距離をLaveとしたとき、以下の式(1)、(2)を満たすことを意味する。
Lmax≦Lave×1.05 ・・・(1)
Lmin≧Lave×0.95 ・・・(2)
【0091】
なお、「略同じ」には、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離がそれぞれ完全同一である場合が含まれる。
また、「略同じ」には、複数の吐出チャネル51に保護膜が均等に成膜可能な範囲内において、複数の吐出チャネル51の開口部85との距離が目標値に対して一部異なる場合が含まれる。
例えば、「一部異なる場合」には、複数の吐出チャネル51の一部(X方向の端部にある1つのチャネル)のみが目標値(他のチャネルの平均値)よりも長い場合、および短い場合が含まれる。
【0092】
開口部85をXY面(Z方向と直交する面)で切断したときの断面積を流路開口面積Af1とし、アクチュエータプレート50とカバープレート60との接合面(アクチュエータプレート50の流路プレート80側の面)における複数の吐出チャネル51の断面積の総和をチャネル開口総面積Achとする。流路開口面積Af1は、チャネル開口総面積Ach以上である。複数の吐出チャネル51において保護膜の膜厚低下を抑制する観点では、流路開口面積Af1は、チャネル開口総面積Achに対して大きければ大きいほど好ましい。例えば、開口部85は、以下の式(3)を満たすように設定されている。
Ach≦Afl ・・・(3)
【0093】
図3に示すように、出口流路82は、入口流路81の外形に沿うようにX方向およびZ方向に延びている。出口流路82は、帰還プレート43の循環路43a,43bに各別に連通するようにFP第1面80f1およびFP第2面80f2のそれぞれに形成されている。
【0094】
図4に示すように、各出口流路82A,82Bは、FP第1面80f1およびFP第2面80f2からそれぞれY方向の内側に向けて窪んでいる。各出口流路82A,82BのX方向の両端部は、流路プレート80内で閉塞されている(
図3参照)。
図3に示すように、出口流路82は、X方向の一端部から他端部に向けて直線状に延びる第1延在部83と、第1延在部83の他端部から上方に延びる第2延在部84と、を有する。
第1延在部83は、第1延在部83の長手方向全体にわたってFP下端面80f4で開口している。第2延在部84の上端部は、FP上端面80f3で開口している。
【0095】
第2延在部84の上端部は、流路プレート80のX方向の他端面において図示しない出口ジョイントに接続されている。出口ジョイントは、インク排出管22(
図1参照)に接続されている。
【0096】
図4に示すように、各入口流路81A,81Bおよび各出口流路82A,82Bは、第1カバープレート60Aと第2カバープレート60Bとの間において、Y方向に間隔をあけて配置されている。流路プレート80は、入口流路81A,81Bおよび出口流路82A,82BをY方向における第1カバープレート60A側と第2カバープレート60B側とに仕切る仕切り壁86を有する。これにより、インク吐出時等に発生するチャネル内の圧力変動が仕切り壁86で遮られるため、各アクチュエータプレート50A,50B間において、前記圧力変動が流路を介して他のチャネル等に圧力波となって伝播される、いわゆるクロストークを抑制することができる。したがって、優れた吐出性能(印字安定性)を得ることができる。
【0097】
図5に示すように、流路プレート80は、入口流路81A,81Bおよび出口流路82A,82BをX方向の両端で閉塞するように流路プレート80のX方向の両端面に設けられた保持面87を有する。保持面87は、ヘッドチップ40のX方向の最外面に位置している。例えば、保持面87は作業者の指が接触可能な大きさの面積を有する。
【0098】
流路プレート80は、絶縁性を有し、かつカバープレート60の形成材料の熱伝導率と同等以上の熱伝導率を有する材料により形成されているとよい。例えば、カバープレート60をシリコンにより形成した場合、流路プレート80は、シリコンまたはカーボンにより形成することが好ましい。これにより、各カバープレート60A,60Bでの温度ばらつきを緩和することができる。このため、各アクチュエータプレート50A,50Bでの温度ばらつきを緩和し、インク温度の均一化を図ることができる。これにより、インクの吐出速度の均一化を図り、印字安定性を向上させることができる。
【0099】
<入口ジョイント42>
図3に示すように、入口ジョイント42は、ヘッドチップ40及びカバー41(
図12参照)のX方向の一端面にまとめて接合されている。入口ジョイント42は、各入口流路81A,81Bに連通する供給路42aを有する。供給路42aは、入口ジョイント42のX方向内端面からX方向外側に向けて窪んでいる。入口ジョイント42は、インク供給管21(
図1参照)に接続されている。
【0100】
<帰還プレート43>
図3に示すように、帰還プレート43の外形は、X方向に長手を有しかつY方向に短手を有する矩形板状をなしている。帰還プレート43は、流路プレート80、各カバープレート60A,60B、各アクチュエータプレート50A,50Bおよび各封止プレート70A,70Bの下端面にまとめて接合されている。帰還プレート43は、ヘッドチップ40における吐出チャネル51の開口端側に配置されている。帰還プレート43は、各アクチュエータプレート50A,50Bにおける吐出チャネル51の開口(吐出端51e、
図7参照)と、ノズルプレート44の上面との間に介在するスペーサプレートである。
【0101】
帰還プレート43は、各アクチュエータプレート50A,50Bの吐出チャネル51と出口流路82A,82Bとの間を接続する複数の循環路43a,43bを有する。複数の循環路43a,43bは、第1アクチュエータプレート50Aの吐出チャネル51に対応する第1循環路43aと、第2アクチュエータプレート50Bの吐出チャネル51に対応する第2循環路43bと、を含む。複数の循環路43a,43bは、帰還プレート43をZ方向に貫通している。
【0102】
図4に示すように、第1循環路43aは、第1アクチュエータプレート50Aの吐出チャネル51とX方向において実質的に同じ位置に配置されている。第1循環路43aは、第1アクチュエータプレート50Aの吐出チャネル51の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0103】
第1循環路43aは、Y方向に延びている。第1循環路43aにおけるY方向の内側端は、第1カバープレート60AにおけるCP第1面60f1よりもY方向の内側に位置している。第1循環路43aにおけるY方向の内側端部は、一方の出口流路82A内に連通している。第1循環路43aにおけるY方向の外側端部は、第1アクチュエータプレート50Aの吐出チャネル51内に各別に連通している。
【0104】
図5に示すように、第2循環路43bは、第2アクチュエータプレート50Bの吐出チャネル51とX方向において実質的に同じ位置に形成されている。第2循環路43bは、第2アクチュエータプレート50Bの吐出チャネル51の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0105】
第2循環路43bは、Y方向に延びている。第2循環路43bにおけるY方向の内側端は、第2カバープレート60BにおけるCP第1面60f1よりもY方向の内側に位置している。第2循環路43bにおけるY方向の内側端部は、他方の出口流路82B内に連通している。第2循環路43bにおけるY方向の外側端部は、第2アクチュエータプレート50Bの吐出チャネル51内に各別に連通している。
【0106】
<ノズルプレート44>
図3に示すように、ノズルプレート44の外形は、X方向に長手を有しかつY方向に短手を有する矩形板状をなしている。ノズルプレート44の外形は、帰還プレート43の外形と実質的に同じである。ノズルプレート44は、帰還プレート43の下面に接合されている。ノズルプレート44は、ノズルプレート44をZ方向に貫通する複数のノズル孔44a,44b(噴射孔)を有する。複数のノズル孔44a,44bは、第1循環路43aに対応する第1ノズル孔44aと、第2循環路43bに対応する第2ノズル孔44bと、を含む。
【0107】
図4に示すように、第1ノズル孔44aは、ノズルプレート44のうち、帰還プレート43の各第1循環路43aとZ方向で対向する部分にそれぞれ形成されている。すなわち、第1ノズル孔44aは、第1循環路43aと同ピッチで、X方向に間隔をあけて一直線上に配列されている。第1ノズル孔44aは、第1循環路43aにおけるY方向の外端部で第1循環路43a内に連通している。これにより、各第1ノズル孔44aは、第1循環路43aを介して第1アクチュエータプレート50Aの対応する吐出チャネル51にそれぞれ連通している。
【0108】
図5に示すように、第2ノズル孔44bは、ノズルプレート44のうち、帰還プレート43の各第2循環路43bとZ方向で対向する部分にそれぞれ形成されている。すなわち、第2ノズル孔44bは、第2循環路43bと同ピッチで、X方向に間隔をあけて一直線上に配列されている。第2ノズル孔44bは、第2循環路43bにおけるY方向の外端部で第2循環路43b内に連通している。これにより、各第2ノズル孔44bは、第2循環路43bを介して第2アクチュエータプレート50Bの対応する吐出チャネル51にそれぞれ連通している。
【0109】
各非吐出チャネル52は、第1ノズル孔44aおよび第2ノズル孔44bには連通していない。各非吐出チャネル52は、帰還プレート43によって下方から覆われている。
【0110】
<プリンタの動作方法>
次に、プリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合のプリンタ1の動作方法について説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0111】
図1に示すように、初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送機構2,3のグリットローラ11,13が回転する。これにより、被記録媒体Pがグリットローラ11,13とピンチローラ12,14との間に挟まれつつ搬送方向(X方向)に向けて搬送される。また、被記録媒体Pの搬送と同時に、駆動モータ38がプーリ35,36を回転させて無端ベルト37を動かす。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながらY方向に往復移動する。
そして、キャリッジ33の往復移動の間に、各インクジェットヘッド5より4色のインクを被記録媒体Pに吐出させることで、被記録媒体Pに文字や画像等の記録を行うことができる。
【0112】
ここで、各インクジェットヘッド5の動作について説明する。
本実施形態のようなエッジシュートタイプのうち、縦循環式のインクジェットヘッド5では、まず
図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、
図3に示す入口ジョイント42の供給路42aを通り、流路プレート80の各入口流路81A,81B内に流入する。各入口流路81A,81B内に流入したインクは、マニホールド62を通過した後、スリット63を通って各吐出チャネル51内に供給される。各吐出チャネル51内に流入したインクは、帰還プレート43の循環路43a,43bを通して出口流路82A,82B内で集合した後、図示しない出口ジョイントの内部流路を通して
図2に示すインク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクが循環する。
【0113】
そして、キャリッジ33(
図1参照)によって往復移動が開始されると、外部配線基板59を介して各電極55,57に駆動電圧を印加する。この際、個別電極57を駆動電位Vddとし、共通電極55を基準電位GNDとして各電極55,57間に駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル51を画成する2つの駆動壁53に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁53が非吐出チャネル52側へ突出するように変形する。すなわち、アクチュエータプレート50は、厚さ方向(Y方向)に分極処理された2枚の圧電基板が積層されているため、上記の駆動電圧を印加することで、駆動壁53におけるY方向の中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル51があたかも膨らむように変形する。
【0114】
吐出チャネル51を画成する2つの駆動壁53の変形によって吐出チャネル51の容積が増大すると、マニホールド62内のインクがスリット63を通って吐出チャネル51内に誘導される。そして、吐出チャネル51の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル51の内部に伝搬し、この圧力波がノズル孔44a,44bに到達したタイミングで、各電極55,57間に印加した駆動電圧をゼロにする。
【0115】
これにより、2つの駆動壁53の形状が復元し、一旦増大した吐出チャネル51の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル51の内部の圧力が増加し、吐出チャネル51内のインクが加圧される。その結果、インクをノズル孔44a,44bから吐出させることができる。この際、インクはノズル孔44a,44bを通過する際に液滴状のインク滴となって吐出される。これにより、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0116】
なお、インクジェットヘッド5の動作方法は上述した内容に限らない。例えば、通常状態の駆動壁53が吐出チャネル51の内側に変形し、吐出チャネル51があたかも内側に凹むように構成しても構わない。この場合は、各電極55,57間に印可する電圧を上述した電圧とは正負逆の電圧にするか、電圧の正負は変えずにアクチュエータプレート50の分極方向を逆にすることで実現可能である。また、吐出チャネル51が外側に膨らむように変形させた後で、吐出チャネル51が内側に凹むように変形させ、吐出時のインクの加圧力を高めても構わない。
【0117】
<インクジェットヘッド5の製造方法>
次に、インクジェットヘッド5の製造方法について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド5の製造方法は、準備工程、接合工程、保護膜形成工程、帰還プレート取付工程、アッシング工程、ノズルプレート取付工程、カバー取付工程、および外部配線基板取付工程を含む。
【0118】
準備工程では、インクジェットヘッド5の構成要素を得るためのウエハ等を予め準備する。準備工程の後、接合工程に移る。以下、アクチュエータプレート50用のウエハを「アクチュエータウエハ」、カバープレート60用のウエハを「カバーウエハ」、封止プレート70用のウエハを「封止ウエハ」、流路プレート80用のウエハを「流路ウエハ」という。接合工程の前、アクチュエータウエハには複数のチャネル51,52を含む溝、カバーウエハには流体供給路61、流路ウエハには入口流路81および出口流路82、をそれぞれ形成しておく。
【0119】
接合工程では、インクジェットヘッド5の構成要素を接合する。例えば、先ず、アクチュエータウエハの一方の面(AP第1面50f1を含む面)にカバーウエハを接合する。次に、アクチュエータウエハにおいてカバーウエハの接合面とは反対側の面(AP第2面50f2を含む面)に封止ウエハを接合する。次に、カバーウエハにおいてアクチュエータウエハの接合面とは反対側の面(CP第1面60f1を含む面)に流路ウエハを接合する。次に、流路ウエハにおいて前記カバーウエハの接合面とは反対側の他方の面(FP第2面80f2を含む面)に、既に接合したウエハとは別のウエハ(別のカバーウエハ、アクチュエータウエハ、封止ウエハ)を接合する。これにより、各ウエハを接合した接合ウエハを得る。
【0120】
次に、接合ウエハをカバーウエハの溝の中央部分で切り分けて個片化する。これにより、複数のヘッドチップ40を得る。
接合工程の後、保護膜形成工程に移る。
【0121】
図11に示すように、保護膜形成工程では、複数の吐出チャネル51(
図10参照)に保護膜を形成するための流体を流路プレート80の開口部85を通じて複数の吐出チャネル51に供給する。例えば、パラキシリレン系ダイマーを加熱してモノマー蒸気にし、モノマーを対象物であるヘッドチップ40の表面(内部の表面を含む)で反応させることにより保護膜を形成する。
保護膜形成工程の後、帰還プレート取付工程に移る。
【0122】
帰還プレート取付工程では、ヘッドチップ40の下面に帰還プレート43を接合する。なお、保護膜形成工程の前に、ヘッドチップ40に帰還プレート43を接合してもよい。
帰還プレート取付工程の後、アッシング工程に移る。
【0123】
アッシング工程では、アクチュエータプレート50において外部配線基板59を取り付ける部分(AP第2面50f2)の保護膜を除去する。
アッシング工程の後、ノズルプレート取付工程に移る。
【0124】
ノズルプレート取付工程では、帰還プレート43の下面にノズルプレート44を接合する。
ノズルプレート取付工程の後、カバー取付工程に移る。
【0125】
図12に示すように、カバー取付工程では、ヘッドチップ40の上面(FP上端面80f3)に開口部85を通じてインクを流入可能なインク流路41a,41bを有するカバー41を取り付ける。カバー41は下方に凸をなすハット断面形状を有する。インク流路41a,41bは、入口ジョイント42の供給路42a(
図3参照)と流路プレート80の入口流路81とに連通する第1インク流路41aと、出口ジョイントの内部流路(不図示)と流路プレート80の出口流路82とに連通する第2インク流路41bと、である。
カバー取付工程の後、外部配線基板取付工程に移る。
【0126】
外部配線基板取付工程では、アクチュエータプレート50のAP第2面50f2(共通パッド56および個別パッド58)に外部配線基板59を接続する。
以上により、本実施形態のインクジェットヘッド5が完成する。
【0127】
ところで、複数の吐出チャネルにおける保護膜の膜厚バラツキを抑制する観点では、封止ウエハの接合前(カバーウエハとアクチュエータウエハとを接合した接合ウエハ)に保護膜を形成することも考えられる。しかしこの場合、接合ウエハを個片化する際に保護膜をきれいに切断することができない可能性がある。保護膜が切断されると、保護性が損なわれる。
これに対し本実施形態では、各ウエハを接合した接合ウエハを個片化することによりヘッドチップを得た後、保護膜を形成している。すなわち、ヘッドチップの状態まで組み立て、ヘッドチップ内部への保護膜形成が難しい状態で、保護膜を形成している。このようにして保護膜形成を行うと、保護膜の材料(流体)は、微細化した構造へ入りにくいため、複数のチャネルにおいて保護膜の膜厚バラツキが生じる可能性がある。上記の課題を解決するために、本実施形態では流路プレートの形状を工夫している。
【0128】
以上説明したように、本実施形態に係るヘッドチップ40は、Z方向に沿って延びる複数のチャネル51,52がX方向に間隔をあけて設けられたアクチュエータプレート50と、アクチュエータプレート50に接合され、複数の吐出チャネル51に連通する入口流路81を有する流路プレート80と、を備え、入口流路81は、複数の吐出チャネル51に跨るようにX方向に沿って延びるとともに、流路プレート80の外面に開口する開口部85を有し、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離は、複数の吐出チャネル51に保護膜を形成するための流体を流路プレート80の開口部85を通じて複数の吐出チャネル51に供給したとき、複数の吐出チャネル51における保護膜の厚さがそれぞれ同等になるように設定されている。
【0129】
この構成によれば、保護膜を形成するための流体を流路プレート80の外面の開口部85を通じて複数の吐出チャネル51に供給したとき、複数の吐出チャネル51における保護膜の厚さをそれぞれ同等にすることができる。したがって、複数の吐出チャネル51における保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
開口部は、流路プレート80においてZ方向の一方の面に開口している。
この構成によれば、Z方向の一方の面の開口部85を通じて複数の吐出チャネル51に供給することができる。流路プレート80のX方向の端面に開口部がある場合と比較して、複数の吐出チャネル51に流体を均等に供給することができる。したがって、複数の吐出チャネル51における保護膜の膜厚バラツキをより効果的に抑制することができる。
加えて、流路プレート80のX方向の端面に開口部がある場合と比較して、開口部85と吐出チャネル51との最大距離が短くなるため、流体を各吐出チャネル51に早く供給することができる。
【0130】
本実施形態では、入口流路81の開口部85の断面積を流路開口面積Af1とし、アクチュエータプレート50の流路プレート80側の面における複数の吐出チャネル51の断面積の総和をチャネル開口総面積Achとしたとき、流路開口面積Af1は、チャネル開口総面積Ach以上である。
【0131】
この構成によれば、流路開口面積Af1がチャネル開口総面積Ach未満の場合と比較して、複数の吐出チャネル51のそれぞれへの必要な流体の流入量を確保することができるため、複数の吐出チャネル51における保護膜の膜厚低下を抑制することができる。
【0132】
本実施形態では、流路プレート80は、入口流路81をX方向の両端で閉塞するように流路プレート80のX方向の両端面に設けられた保持面87を有する。
【0133】
この構成によれば、保持面87によりヘッドチップ40のX方向の両端を保持可能となるため、作業性が向上する。
【0134】
本実施形態では、Z方向は、鉛直方向であり、入口流路81は、流路プレート80の上面(FP上端面80f3)に開口している。
【0135】
この構成によれば、流体の自重により流体を入口流路81へスムーズに流すことができる。
【0136】
本実施形態では、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離は、それぞれ略同じである。
【0137】
この構成によれば、複数の吐出チャネル51に流体を均等に供給することができるため、複数の吐出チャネル51における保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0138】
本実施形態では、アクチュエータプレート50A,50Bは、流路プレート80を挟んでY方向に対向するように一対設けられている。
【0139】
この構成によれば、二列タイプのインクジェットヘッド5において複数の吐出チャネル51における保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0140】
本実施形態では、保護膜形成工程の後、流路プレート80の外面に開口部85を通じてインクを流入可能なインク流路41a,41bを有するカバー41を取り付けるカバー取付工程を含む。
【0141】
この方法によれば、カバー取付工程の前に、流体を流路プレート80の外面の開口部85を通じて複数の吐出チャネル51に供給することができる。カバー取付工程の前は開口部85を遮る部材が無いため、カバー取付工程の後に流体を供給する場合と比較して、複数の吐出チャネル51に流体をスムーズに供給することができる。
【0142】
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0143】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限らない。例えば、液体噴射装置は、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0144】
上述した実施形態では、吐出チャネル51におけるチャネル延在方向の先端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッド5を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、アクチュエータプレート50の厚さ方向、すなわち吐出チャネル51の深さ方向にインクが通過する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットであってもよい。
【0145】
上述した実施形態では、ノズル孔44a,44bが二列並んだ二列タイプのインクジェットヘッド5について説明したが、これに限らない。例えば、ノズル孔が三列以上のインクジェットヘッドとしてもよく、ノズル孔が一列のインクジェットヘッドとしてもよい。
【0146】
上述した実施形態では、吐出チャネル51と非吐出チャネル52とが交互に配列された構成について説明したが、これに限らない。例えば、全チャネルから順次インクを吐出する、いわゆる3サイクル方式のインクジェットヘッドに本開示を適用しても構わない。
【0147】
上述した実施形態では、アクチュエータプレート50としてシェブロンタイプを用いた構成について説明したが、これに限らない。すなわち、モノポールタイプ(分極方向が厚さ方向で一方向)のアクチュエータプレートを用いても構わない。
【0148】
上述した実施形態では、入口流路81が流路プレート80のZ方向の一方の面のみで開口している構成について説明したが、これに限らない。例えば、入口流路81を流路プレート80のX方向の少なくとも一方の面で開口させてもよい。
【0149】
上述した実施形態では、出口流路82(第2延在部84の一端部)が流路プレート80のZ方向の一方の面で開口している構成について説明したが、これに限らない。例えば、出口流路82を流路プレート80のX方向の少なくとも一方の面で開口させてもよい。
【0150】
上述した実施形態では、流路プレート80が同一の部材により一体に形成された構成について説明したが、これに限らない。例えば、流路プレート80が複数の部材の組合せで形成されていてもよい。
【0151】
上述した実施形態では、Y方向においてアクチュエータプレート50と流路プレート80との間に配置されたカバープレート60を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ヘッドチップ40は、カバープレート60を有しなくてもよい。例えば、流路プレート80は、アクチュエータプレート50に直接的に接合されていてもよい。例えば、流路プレート80は、複数の吐出チャネル51および入口流路81に連通する液体供給路を有していてもよい。例えば、流路プレート80は、カバープレート60の機能を有していてもよい。
【0152】
上述した実施形態では、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離は、それぞれ略同じである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の吐出チャネル51と開口部85との距離をLx、複数の吐出チャネル51と開口部85との最短距離をLdmi、開口部85の開口面積をAx、チャネル開口総面積をAchとし、X=Ax/Ach、Y=Lx/Ldmiとしたとき、以下の式(A)を満たしてもよい。
1≦Y<0.33X+0.70 ・・・(A)
または、上記の式(A)を満たすことに限らず、以下の式(B)を満たしてもよい。
0.33X+0.70≦Y<0.33X+1.10 ・・・(B)
【0153】
以下の変形例において、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0154】
[第1変形例]
図13は、実施形態の第1変形例に係るインクジェットヘッド105の断面図である。
図13は、
図10に相当する断面図である。
上述した実施形態では、流体供給路61がカバープレート60においてZ方向の一方の面で閉塞されている例(
図10参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図13に示すように、流体供給路161は、Z方向において開口部85と連なるようにカバープレート60においてZ方向の一方の面(FP上端面80f3に隣接する面)に開口していてもよい。
【0155】
この構成によれば、流体供給路61がカバープレート60においてZ方向の一方の面で閉塞されている場合と比較して、開口部85側における流体の供給開口が大きくなるため、流体の供給量を増加させることができる。したがって、複数の吐出チャネル51における保護膜の膜厚低下をより効果的に抑制することができる。
【0156】
[第2変形例]
図14は、実施形態の第2変形例に係るインクジェットヘッド205の断面図である。
図14は、
図10に相当する断面図である。
上述した実施形態では、カバープレート60においてZ方向の他方の面に凹部を有しない例(
図10参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図14に示すように、カバープレート60は、Y方向において出口流路82と連なるようにカバープレート60においてZ方向の他方の面(FP下端面80f4に隣接する面)に開口する凹部245を有してもよい。
【0157】
この構成によれば、カバープレート60においてZ方向の他方の面に凹部245を有しない場合と比較して、出口流路82側における流体の供給開口が大きくなるため、流体の供給量(循環量)を増加させることができる。
【0158】
[第3変形例]
図15は、実施形態の第3変形例に係るインクジェットヘッド305の断面図である。
図15は、
図10に相当する断面図である。
上述した実施形態では、出口流路82がカバープレート60(CP第1面60f1)に接する例(
図10参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図15に示すように、流路プレート80は、カバープレート60と出口流路82とをY方向に離すようにCP第1面60f1(カバープレート60においてアクチュエータプレート50とは反対側の面)に設けられた壁部388を有してもよい。
【0159】
この構成によれば、出口流路82がカバープレート60に接する場合と比較して、吐出チャネル51と出口流路82との間の距離が大きくなるため、各吐出チャネル51間の駆動による影響(クロストーク)を受けにくい。
【0160】
[第4変形例]
図16は、実施形態の第4変形例に係るインクジェットヘッド405の断面図である。
図16は、
図10に相当する断面図である。
図17は、
図16のXVII-XVII断面図である。
上述した実施形態では、出口流路82がZ方向において入口流路81と並ぶ例(
図10参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図16に示すように、流路プレート80は、Y方向において入口流路481(
図17参照)と間隔をあけて設けられるとともに流路プレート80においてZ方向の他方の面(FP下端面80f4)に開口する出口流路482を有してもよい。
図17においては、Y方向において出口流路482とオフセットして配置された入口流路481を二点鎖線で示す。
【0161】
この構成によれば、出口流路82がZ方向において入口流路81と並ぶ場合と比較して、出口流路482を通じて流体をZ方向へスムーズに流すことができる。したがって、流体の循環性が向上する。
【0162】
[第5変形例]
図18は、実施形態の第5変形例に係るインクジェットヘッド505の断面図である。
図18は、
図10に相当する断面図である。
図19は、
図18のXIX-XIX断面図である。
上述した実施形態では、出口流路82をXY面で切断したときの断面積を断面開口面積としたとき、出口流路82(第2延在部84)の断面開口面積はZ方向において一様である例(
図10参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図19に示すように、流路プレート80は、断面開口面積が流路プレート80においてZ方向の他方の面(FP下端面80f4)からZ方向の一方の面(FP上端面80f3)に向かうに従って漸次小さくなる縮幅部582sを有してもよい。
【0163】
この構成によれば、流路プレート80内において流体をZ方向へスムーズに流すことができる。したがって、流体の循環性が向上する。例えば、インク吐出時にインク供給を逆転させたときに、インクをスムーズに流すことができる。例えば、インクを下方に吐出するときに、インク供給を逆転させた場合は、チャネル内の気泡が浮力および循環で流れやすいため、チャネル内に気泡が溜まりにくい。
【0164】
図19の例では、縮幅部582sがFP下端面80f4からFP上端面80f3に向かうに従ってX方向の中央に位置するように傾斜する傾斜部を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、縮幅部は、FP下端面80f4からFP上端面80f3に向かうに従ってX方向の一端部に位置するように傾斜する傾斜部を有していてもよい。また、傾斜部は、断面視で直線形状を有することに限らず、断面視で湾曲形状を有していてもよい。
【0165】
[第6変形例]
図20は、
図9に相当する、実施形態の第6変形例に係る流路プレート680の説明図である。
上述した実施形態では、FP上端面80f3に開口部85が1つのみ設けられている例(
図9参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図20に示すように、開口部685は、複数設けられていてもよい。
図20において符号689は、複数の開口部685をそれぞれX方向に仕切る開口仕切り部を示す。なお、本変形例において、流路開口面積Af1は、複数の開口部685をXY面で切断したときの断面積の総和となる。
【0166】
この構成によれば、
図9の例よりも流路開口面積Af1を小さくすることができるため、流路プレート680の強度が向上する。したがって、ヘッドチップ40の強度向上に寄与する。
【0167】
[第7変形例]
図21は、
図9に相当する、実施形態の第7変形例に係る流路プレート780の説明図である。
図20の例では、開口仕切り部689がZ方向において一様の幅(X方向の幅)を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図21に示すように、開口仕切り部789は、FP下端面80f4の側からFP上端面80f3に向かうに従って漸次大きくなる拡幅部789wを有してもよい。拡幅部789wの上端の幅(X方向の幅)は、
図20の例における開口仕切り部689の幅(X方向の幅)よりも大きい。すなわち、本変形例は、第6変形例よりも開口部785の幅(X方向の幅)が小さい。なお、本変形例において、流路開口面積Af1は、複数の開口部785をXY面で切断したときの断面積の総和となる。
【0168】
この構成によれば、
図20の例よりも流路開口面積Af1を小さくすることができるため、流路プレート780の強度が向上する。したがって、ヘッドチップ40の更なる強度向上に寄与する。
【0169】
[第8変形例]
図22は、実施形態の第8変形例に係るインクジェットヘッド805の断面図である。
図22は、
図4に相当する断面図である。
上述した実施形態では、ヘッドチップ40とノズルプレート44との間に帰還プレート43が配置された例(
図4参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図22に示すように、インクジェットヘッド805は、帰還プレート43を有しなくてもよい。すなわち、ヘッドチップ40の下面は、ノズルプレート44の上面に直接的に接合されていてもよい。
【0170】
上述した実施形態では、流路プレート80は、FP下端面80f4に開口する出口流路82を有する例(
図4参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図22に示すように、流路プレート80は、出口流路82を有しなくてもよい。この場合、インクジェットヘッド805では、その内部におけるインク循環が行われない。すなわち、本変形例では、吐出チャネル51の開口から吐出されるインクがノズルプレート44へ向かい、ノズル孔44a,44bから吐出される。
【0171】
[第9変形例]
図23は、実施形態の第9変形例に係るインクジェットヘッド905の断面図である。
図23は、
図4に相当する断面図である。
上述した実施形態では、アクチュエータプレート50A,50B等が流路プレート80を挟んでY方向に対向するように一対設けられている例(
図4参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図23に示すように、流路プレート80の片側のみ(FP第1面80f1のみ)にアクチュエータプレート50等が設けられていてもよい。
【0172】
[第10変形例]
図24は、実施形態の第10変形例に係るインクジェットヘッド1005の断面図である。
図24は、
図4に相当する断面図である。
上述した実施形態では、流路プレート80のFP上端面80f3に開口部85が設けられている例(
図4参照)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図24に示すように、流路プレート1080の片側のみ(FP第1面80f1のみ)にアクチュエータプレート50等が設けられている場合、流路プレート1080のFP第1面80f1とは反対側の面(+Y方向を向く面)に開口部1085が設けられていてもよい。
この場合、流路プレート1080は、帰還プレート1043の取付精度の確保、およびインク流路の取り回しを目的に使用される。
帰還プレート1043の循環路1043aにおけるY方向の内側端部位置は、出口流路82AのY方向位置と揃っていてもよい。
【0173】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【実施例】
【0174】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0175】
本発明者は、複数の吐出チャネルと開口部との距離、および開口部の開口面積を所定の関係とすることによって、複数の吐出チャネルにおいて保護膜の厚さをそれぞれ同等にすることができることを以下の評価により確認した。
【0176】
(評価内容)
開口部の開口面積として以下の開口面積の比X(1、2、3.4)を設定し、以下の距離の比Y(1、1.4、1.8、2.2)を変え、目標厚みに対する保護膜の厚みをそれぞれ評価した。ここで、複数の吐出チャネルと開口部との距離をLx、複数の吐出チャネルと開口部との最短距離をLdmi、開口部の開口面積をAx、チャネル開口総面積をAchとし、開口面積の比をX=Ax/Ach、距離の比をY=Lx/Ldmiとする。
【0177】
(評価結果)
保護膜の厚みの評価は、Ax=AchかつLx=Ldmi(すなわちAx/Ach=1かつLx/Ldmi=1)での膜厚を基準(以下「基準膜厚」という。)とした場合、基準膜厚の90%以上(基準膜厚と同等)を「○」、基準膜厚の60%以上かつ90%未満(流体の種類によっては(非水性のインクの場合は)基準膜厚と同等の効果を発揮する範囲)を「△」、基準膜厚の60%未満を「×」とした。
【0178】
【0179】
図25は、実施例に係る保護膜の厚みの評価の説明図である。
図25の横軸は開口面積の比X(Ax/Ach)、縦軸は距離の比Y(Lx/Ldmi)をそれぞれ示す。
図25において、実線のグラフは評価「○」を満たすYの上限値、二点鎖線のグラフは評価「△」を満たすYの上限値、濃いドット領域は評価「○」を満たす領域、薄いドット領域は評価「△」を満たす領域をそれぞれ示す。
なお、実線のグラフは、評価「○」を満たす3点(3つの◇)を通る近似直線である。実線のグラフは、Y=0.33X+0.70を満たす直線である。
二点鎖線のグラフは、評価「△」を満たす3点(3つの□)を通る近似直線である。二点鎖線のグラフは、Y=0.33X+1.10を満たす直線である。
濃いドット領域は、上記の式(A)を満たす範囲である。
薄いドット領域は、上記の式(B)を満たす範囲である。
【0180】
上述の通り、複数の吐出チャネルと開口部との距離がそれぞれ略同じであると、複数の吐出チャネルに流体を均等に供給することができる。
この場合、距離Lxが長すぎると、吐出チャネル内に入る流体の量が不足するため好ましくない。
開口部の開口面積Axがチャネル開口総面積Achより大きい場合(Ax>Achの場合)は、距離Lxが最短距離Ldmiより大きくても(Lx>Ldmi)、吐出チャネル内に入る流体の量を確保できる可能性がある。
開口部の開口面積Axをある値としたとき、上記の式(A)でY=0.33X+0.70となるまでの距離Lxの範囲まで(Yの上限値)、保護膜の膜厚バラツキを抑制することができる。
【0181】
以上より、複数の吐出チャネルと開口部との距離、および開口部の開口面積を所定の関係とする(上記の式(A)を満たす)ことによって、複数の吐出チャネルにおいて保護膜の厚さをそれぞれ同等にすることができることが分かった。
【符号の説明】
【0182】
1…インクジェットプリンタ(液体噴射装置)
5,5K,5C,5M,5Y,105,205,305,405,505,805,905,1005…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
40…ヘッドチップ
41…カバー
41a…第1インク流路(インク流路)
41b…第2インク流路(インク流路)
50,50A,50B…アクチュエータプレート
51…吐出チャネル(チャネル)
52…非吐出チャネル(チャネル)
60,60A,60B…カバープレート
61,161…液体供給路
80,680,780…流路プレート
81,81A,81B,481…入口流路(連通流路)
82,82A,82B,482,582…出口流路(第2連通流路)
85,685,785…開口部
87…保持面
245…凹部
388…壁部
582s…縮幅部
L…開口部とチャネルとの距離