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特許7353880デジタル放送送信装置およびデジタル放送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】デジタル放送送信装置およびデジタル放送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/74 20060101AFI20230925BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20230925BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20230925BHJP
   H04B 7/10 20170101ALI20230925BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20230925BHJP
【FI】
H04B1/74
H04B1/04 D
H04B7/06 040
H04B7/10 B
H04B7/0413 320
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165223
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021044691
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大朏 俊弥
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225117(JP,A)
【文献】特開2009-124361(JP,A)
【文献】特開平08-293831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020835(US,A1)
【文献】特開2015-231122(JP,A)
【文献】特開2002-112123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/74
H04B 1/04
H04B 7/06
H04B 7/10
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1偏波の電波を送信する第1アンテナと、
第2偏波の電波を送信する第2アンテナと、
放送帯域の信号の経路を前記第1アンテナまたは前記第2アンテナのいずれかに切替える第1切替器と、
主信号で変調された第1変調信号と、前記主信号の副信号で変調された第2変調信号とを生成する変調部と、
入力された信号を放送帯域に変換する第1送信機と、
入力された信号を放送帯域に変換する第2送信機と、
通常時において、前記第1変調信号を前記第1送信機に入力し前記第2変調信号を前記第2送信機に入力する第2切替器と、
前記第1送信機の障害を検知する検知部と、
前記第1送信機の障害を検知した場合に、前記第2切替器を制御して前記第1変調信号を前記第2送信機に入力し、前記第1切替器を制御して前記第2送信機からの放送帯域の信号を前記第1アンテナに接続する切替制御部と
を具備する、デジタル放送送信装置。
【請求項2】
前記第1偏波の偏波面と前記第2偏波の偏波面は、互いに直交する、請求項1に記載のデジタル放送送信装置。
【請求項3】
前記主信号は、放送コンテンツデータを含む、請求項1に記載のデジタル放送送信装置。
【請求項4】
前記副信号は、前記主信号への付加的データを含む、請求項3に記載のデジタル放送送信装置。
【請求項5】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは、偏波MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)に適合する、請求項1に記載のデジタル放送送信装置。
【請求項6】
第1偏波の電波を送信する第1アンテナと第2偏波の電波を送信する第2アンテナとを備えるデジタル放送送信装置と、前記第1偏波の電波と前記第2偏波の電波とを受信するデジタル放送受信装置とを具備するデジタル放送システムであって、
前記デジタル放送送信装置は、
放送帯域の信号の経路を前記第1アンテナまたは前記第2アンテナのいずれかに切替える第1切替器と、
主信号で変調された第1変調信号と、前記主信号の副信号で変調された第2変調信号とを生成する変調部と、
入力された信号を放送帯域に変換する第1送信機と、
入力された信号を放送帯域に変換する第2送信機と、
通常時において、前記第1変調信号を前記第1送信機に入力し前記第2変調信号を前記第2送信機に入力する第2切替器と、
前記第1送信機の障害を検知する検知部と、
前記第1送信機の障害を検知した場合に、前記第2切替器を制御して前記第1変調信号を前記第2送信機に入力し、前記第1切替器を制御して前記第2送信機からの放送帯域の信号を前記第1アンテナに接続する切替制御部と
を備える、デジタル放送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、デジタル放送送信装置およびデジタル放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代地上波デジタル放送では、偏波MIMO(Multi Input Multi Output)により伝送容量を拡大することが検討されている。偏波MIMOとは、水平(H)偏波信号と垂直(V)偏波信号とを用いて、各偏波に異なる情報を載せることで伝送容量を2倍に拡大する技術である。
【0003】
偏波MIMOを適用したデジタル放送送信装置は、主信号を例えばH偏波で送信し、副信号をV偏波で送信する。これを受ける受信装置は、主信号と副信号をそれぞれ復調し、情報を合成して、放送コンテンツを再生する。技術的には検討段階ではあるものの、例えば主信号で2K信号と4K信号の一部とを伝送し、副信号で4K信号の一部を伝送して、そして受信側で2K映像、または4K映像を再生するといったアプリケーションを期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-124361号公報
【文献】特開平11-27181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の技術では、V偏波、すなわち副信号だけでは映像コンテンツそのものを送信することができない。このため送信装置においてH偏波用の送信機が故障すると、受信側で映像を再生することができなくなり、最悪の場合、停波に至ってしまう。
【0006】
目的は、耐障害性を高めたデジタル放送送信装置およびデジタル放送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、デジタル放送送信装置は、第1アンテナと、第2アンテナと、変調部と、第1送信機と、第2送信機と、切替部と、検知部と、切替制御部とを具備する。変調部は、主信号で変調された第1変調信号と、主信号の副信号で変調された第2変調信号とを生成する。第1送信機は、入力された信号を放送帯域に変換して第1アンテナから第1偏波で送信する。第2送信機は、入力された信号を放送帯域に変換して第2アンテナから第2偏波で送信する。切替部は、通常時において、第1変調信号を第1送信機に入力し第2変調信号を第2送信機に入力する。検知部は、第1送信機の障害を検知する。切替制御部は、第1送信機の障害を検知した場合に、切替部を制御して、第1変調信号を第2送信機に入力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係わるデジタル放送送信装置の一例を示す機能ブロック図である。
図2図2は、図1に示されるH偏波送信機13の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、実施形態に係わるデジタル放送送信装置の定常時における運用の一例を示す図である。
図4図4は、図1に示されるH偏波送信機13が故障した状態を示す模式図である。
図5図5は、実施形態に係わるデジタル放送送信装置の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、この発明の実施の形態について説明する。以下では、MIMO伝送技術を用いる次世代の地上波デジタル放送システムを想定し、この種のシステムに適用可能な送信装置について説明する。特に、主信号を水平偏波(H)で送信し、主信号に対する副信号を垂直偏波(V)で送信する装置について説明する。主信号で2K精細の放送コンテンツを送信することで、主信号さえ受信できれば、受信側で2K放送を復調できる。主信号に対する付加的データを含む副信号も合わせて受信できれば、受信側で4K放送を復調できる。8K放送についても同様である。
【0010】
図1は、実施形態に係わるデジタル放送送信装置の一例を示す機能ブロック図である。図1において、変調器11は、主信号で変調された主IF信号(第1変調信号)と、副信号で変調された副IF信号(第2変調信号)とを生成する。主IF信号、副IF信号はいずれも中間周波数帯域(Intermediate Frequency)であり、IF切替器12に入力される。IF切替器12は、通常時において、主IF信号をH偏波送信機13に入力し、副IF信号をV偏波送信機15に入力する。
【0011】
H偏波送信機13は、入力された信号をRF(Radio Frequency:無線周波数)の放送帯域にアップコンバートし、送信レベルにまで増幅する。これにより得られた送信RF信号(H)は、RF切替器14を介して、アンテナ20からH偏波で送信される。
【0012】
V偏波送信機15は、入力された信号をRFの放送帯域にアップコンバートし、送信レベルにまで増幅する。これにより得られた送信RF信号(V)は、RF切替器14を介して、アンテナ20からV偏波で送信される。
【0013】
さらに、デジタル放送送信装置10は、制御部16を備える。制御部16は、メモリに記憶されたプログラムに基づいて、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサが計算処理を実行することでその機能を実現する。
【0014】
制御部16は、実施形態に係わる処理機能として、検知部16a、および切替制御部16bを備える。検知部16aは、第1送信機としてのH偏波送信機13の障害を検知する。切替制御部16bは、H偏波送信機13の障害が検知された場合に、IF切替器12を制御して、主IF信号を、第2送信機としてのV偏波送信機15に入力する。さらに、切替制御部16bは、H偏波送信機13の障害が検知された状態では、V偏波送信機15の出力をアンテナ20に接続し、H偏波で送信する。つまり、H偏波送信機13に障害が発生すると、主信号はV偏波送信機15を経由してアンテナ20から送信されることになる。
【0015】
図2は、図1に示されるH偏波送信機13の一例を示す機能ブロック図である。V偏波送信機15の構成も同様である。図2において、H偏波送信機13に入力されたIF信号は励振器31で送信帯域にまでアップコンバートされたのち、分配器32で複数の系統に分割される。各系統のRF信号は、それぞれ送信電力増幅器(PA:パワーアンプ)33-1~33-nで個別に増幅されたのち、合成器34で合成される。合成器34の出力はフィルタ35で帯域を制限されて出力される。
【0016】
H偏波送信機13、およびV偏波送信機15の状態は、図1の制御部16により常時、モニタされる(ヘルスチェック)。また、図1に示されるように、H偏波送信機13,V偏波送信機15の各々の出力をモニタすることによっても、各送信機13,15の状態を知ることができる。次に、上記構成における作用を説明する。
【0017】
図3に示されるように、定常時においては、主信号はH偏波送信機13により増幅され、アンテナ20からH偏波で送信される。副信号はV偏波送信機15で増幅され、アンテナ17からV偏波で送信される。
【0018】
この状態から、H偏波送信機13に障害が発生し機能停止すると、図4に示されるように、受信側に映像を届けることができなくなる。これは、放送コンテンツの主たる内容を主信号に格納し、副信号には、主信号に対する付加的なデータを格納するという仕様による。つまり、主信号だけを受信できれば放送コンテンツを(解像度は低くなるにせよ)復元することができるが、副信号しか受信できない状態では、そもそも放送自体を受信復調することができない。
【0019】
そこで実施形態では、主信号を増幅するH偏波送信機13の状態を、制御部16により監視する。そして、H偏波送信機13の故障が検知されると、制御部16によりIF切替器12,RF切替器14を制御して、図5に示されるように主信号の経路を切り替える。つまり主信号をV偏波送信機15に入力し、定常時に副信号を増幅する経路で増幅して、H偏波用のアンテナ20から送信する。
【0020】
このように、主信号と副信号で構成されたMIMO伝送用の送信装置にあって、主信号を増幅する送信機が故障した場合、副信号を増幅している送信機を使用して、主信号を増幅し、H偏波用のアンテナから電波を出力するようにした。これにより、映像は本来の解像度より劣るものの(例えば4K放送が2K放送に)、停波せずに情報を伝えることができる。従って実施形態によれば、耐障害性を高めたデジタル放送送信装置およびデジタル放送システムを提供することが可能となる。
【0021】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば上記の説明において、水平偏波を垂直偏波と読み替え、垂直偏波を水平偏波に読み替えても全く同じ議論が成り立つ。要するに、主信号の送信波の偏波面と副信号の送信波の偏波面とが互いに直交していればよい。さらに、例えば右回転偏波で主信号を送信し、左回転偏波で副信号を送信することも考え得る。さらに、実施形態に係わるデジタル放送送信装置10は、中継局に転用することも可能である。
【0022】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
10…デジタル放送送信装置、11…変調器、12…IF切替器、13…H偏波送信機、14…RF切替器、15…V偏波送信機、16…制御部、16a…検知部、16b…切替制御部、17…アンテナ、20…アンテナ、31…励振器、32…分配器、33-1~33-n…送信電力増幅器、34…合成器、35…フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5