(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体回路
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20230925BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230925BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230925BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20230925BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 655D
H01L29/78 652K
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
(21)【出願番号】P 2019171101
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135255(JP,A)
【文献】特開2016-029710(JP,A)
【文献】特開2016-134568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8234、
27/06、27/088、
29/739、29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、
を有する半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、
を備え、
前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、
前記第3の領域の前記半導体層に設けられた前記第2のゲート絶縁膜の中の
、前記第2の領域の側の端部の前記第2のゲート絶縁膜は、前記第5の半導体領域に接しない、半導体装置。
【請求項2】
前記第2の領域の前記半導体層は、前記第1の面の側に、前記第6の半導体領域に接して設けられた第3のトレンチを、更に有し、
前記第3のトレンチの中に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記第3の半導体領域との間、前記第1の導電層と前記第6の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、
を、更に備える請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の導電層は、前記第1の電極に電気的に接続される請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の導電層と電気的に接続された第3の電極パッドを、更に備える請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、
を有する半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、
を備え、
前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、
前記第3の領域の前記半導体層に設けられた前記第2のゲート絶縁膜は、前記第5の半導体領域に接しない、半導体装置。
【請求項6】
前記第3の領域の前記半導体層に設けられた前記第2のゲート絶縁膜の中の
、前記第1の領域の側の端部の前記第2のゲート絶縁膜は、前記第5の半導体領域に接する請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、
を有する半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、
を備え、
前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、
前記第3の領域の前記半導体層は、前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第4のトレンチを、更に有し、
前記第4のトレンチの中に設けられ、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極と電気的に分離された第2の導電層と、
前記第2の導電層と前記第3の半導体領域との間、前記第2の導電層と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2の絶縁膜と、
を、更に備える、半導体装置。
【請求項8】
前記第2の導電層は、前記第1の電極に電気的に接続される請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の領域の前記半導体層に前記第2のトレンチが設けられる請求項1ないし請求項8いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、
を有する半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、
を備え、
前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、
前記半導体層は、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に設けられ、前記第2の面に接し、前記第2の半導体領域よりも第2導電形不純物濃度の低い第2導電形の第7の半導体領域を、更に有し、
前記第7の半導体領域と前記第1の面との間に前記第4の半導体領域が設けられる、半導体装置。
【請求項11】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、
を有する半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、
を備え、
前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、
前記半導体層は、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に設けられ、前記第2の面に接し、前記第1の半導体領域よりも第1導電形不純物濃度の低い第1導電形の第8の半導体領域を、更に有し、
前記第8の半導体領域と前記第1の面との間に前記第4の半導体領域が設けられる、半導体装置。
【請求項12】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、
を有する半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、
を備え、
前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、
前記半導体層は、前記第6の半導体領域に最も近い前記第2のトレンチと前記第3の半導体領域との間に、前記第4の半導体領域及び前記第6の半導体領域よりも深い第1導電形の第9の半導体領域を、更に有する、半導体装置。
【請求項13】
前記第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、前記第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、前記第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である請求項1ないし請求項12いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項12いずれか一項記載の半導体装置と、
前記半導体装置を駆動し、前記第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、前記第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、前記第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である制御回路と、
を備える半導体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体装置の一例として、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)がある。IGBTは、例えば、コレクタ電極上に、p形のコレクタ領域、n形のドリフト領域、p形のベース領域が設けられる。そして、p形のベース領域を貫通し、n形のドリフト領域に達するトレンチ内に、ゲート絶縁膜を間に挟んでゲート電極が設けられる。さらに、p形のベース領域表面のトレンチに隣接する領域に、エミッタ電極に接続されるn形のエミッタ領域が設けられる。
【0003】
近年、IGBTと還流ダイオード(Freewheeling Diode)を同一の半導体チップに形成したReverse-Conducting IGBT(RC-IGBT)が広く開発及び製品化されている。RC-IGBTは、例えば、インバータ回路のスイッチング素子として使用される。還流ダイオードはIGBTのオン電流と逆方向に電流を流す機能を有する。IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成することには、終端領域の共有化によるチップサイズの縮小や、発熱箇所の分散など、多くの利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、IGBTとダイオードを有し、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、前記第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、前記第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域と前記第1の面との間、及び、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、前記第4の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の半導体領域との間に前記第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、前記第1の面の側に、前記第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、を有する半導体層と、前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域、前記第5の半導体領域、及び、前記第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、を備え、前記第1の半導体領域を含む第1の領域と、前記第2の半導体領域を含む第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記第2のトレンチの密度が前記第1の領域よりも高い第3の領域を有し、前記第3の領域の前記半導体層に設けられた前記第2のゲート絶縁膜の中、前記第2の領域の側の端部の前記第2のゲート絶縁膜は、前記第5の半導体領域に接しない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図3】第1の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図。
【
図4】第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図。
【
図6】第2の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図7】第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図8】第4の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図9】第5の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図10】第6の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図11】第7の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図13】第8の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図14】第9の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0009】
本明細書中、n+形、n形、n-形との表記がある場合、n+形、n形、n-形の順でn形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p+形、p形、p-形の表記がある場合、p+形、p形、p-形の順で、p形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0010】
本明細書中、半導体領域の不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)を用いて測定することが可能である。また、2つの半導体領域の不純物濃度の相対的な大小関係は、例えば、走査型静電容量顕微鏡法(Scanning Capacitance Microscopy:SCM)を用いて判定することが可能である。また、不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、拡がり抵抗測定法(Spreading Resistance Analysis:SRA)を用いて測定することが可能である。SCM及びSRAでは、半導体領域のキャリア濃度の相対的な大小関係や絶対値が求まる。不純物の活性化率を仮定することで、SCM及びSRAの測定結果から、2つの半導体領域の不純物濃度の間の相対的な大小関係、不純物濃度の分布、及び、不純物濃度の絶対値を求めることが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、第2の面に接する第2導電形の第2の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間、及び、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第3の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられ、第1の半導体領域との間に第3の半導体領域を挟む第1導電形の第4の半導体領域と、第4の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域と、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられ、第2の半導体領域との間に第3の半導体領域を挟む第1導電形の第6の半導体領域と、第1の面の側に、第4の半導体領域に接して設けられた第1のトレンチと、第1の面の側に、第4の半導体領域に接して設けられた第2のトレンチと、を有する半導体層と、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第1のゲート電極と第3の半導体領域との間、第1のゲート電極と第4の半導体領域との間に設けられ、第5の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第2のゲート電極と第3の半導体領域との間、第2のゲート電極と第4の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第4の半導体領域、第5の半導体領域、及び、第6の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、半導体層の第2の面の側に設けられ、第1の半導体領域及び第2の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1の電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられ、第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2の電極パッドと、を備え、第1の半導体領域を含む第1の領域と、第2の半導体領域を含む第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間に設けられ、第2のトレンチの密度が第1の領域よりも高い第3の領域を有する。
【0012】
第1の実施形態の半導体回路は、上記半導体装置と、上記半導体装置を駆動し、第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である制御回路と、を備える。
【0013】
第1の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT100である。RC-IGBT100は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBTを有する。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0014】
第1の実施形態の制御回路は、ゲートドライバ回路150である。第1の実施形態の半導体回路は、半導体装置と、半導体装置を制御する制御回路で構成される。半導体回路は、例えば、RC-IGBT100とゲートドライバ回路150が実装された半導体モジュールである。
【0015】
図1は、第1の実施形態の半導体回路の模式図である。
図2は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図2は、
図1のAA’断面である。
図3は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図である。
図3は、第1の面P1における上面図である。
【0016】
第1の実施形態の半導体回路は、RC-IGBT100とゲートドライバ回路150とを有する。RC-IGBT100は、IGBT領域101(第1の領域)、ダイオード領域102(第2の領域)、境界領域103(第3の領域)、を有する。境界領域103は、IGBT領域101とダイオード領域102の間に設けられる。
【0017】
IGBT領域101は、IGBTとして動作する。ダイオード領域102は、還流ダイオードとして動作する。還流ダイオードは、例えば、Fast Recovery Diode(FRD)である。
【0018】
第1の実施形態のRC-IGBT100は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1の絶縁膜43、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、ダイオード導電層53(第1の導電層)、第1の層間絶縁層61、第2の層間絶縁層62、第3の層間絶縁層63、第1のゲート電極パッド104(第1の電極パッド)、第2のゲート電極パッド105(第2の電極パッド)を備える。
【0019】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、ダイオードトレンチ23(第3のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、カソード領域30(第2の半導体領域)、ドリフト領域32(第3の半導体領域)、ベース領域34(第4の半導体領域)、エミッタ領域36(第5の半導体領域)、アノード領域38(第6の半導体領域)、コンタクト領域40が設けられる。
【0020】
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
【0021】
本明細書中、第1の面P1に平行な一方向を第1の方向と称する。また、第1の面P1に平行で第1の方向に直交する方向を第2の方向と称する。また、本明細書中、「深さ」とは、第1の面P1を基準とする第2の面P2に向かう方向の距離と定義する。
【0022】
上部電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。上部電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。
【0023】
上部電極12は、IGBT領域101では、IGBTのエミッタ電極として機能する。上部電極12は、ダイオード領域102では、ダイオードのアノード電極として機能する。上部電極12は、例えば、金属である。
【0024】
上部電極12は、IGBT領域101において、エミッタ領域36に電気的に接続される。上部電極12は、IGBT領域101において、コンタクト領域40を介してベース領域34に電気的に接続される。
【0025】
上部電極12は、ダイオード領域102において、コンタクト領域40を介してアノード領域38に電気的に接続される。
【0026】
上部電極12は、境界領域103において、コンタクト領域40を介してベース領域34に接続される。
【0027】
下部電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。下部電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。
【0028】
下部電極14は、IGBT領域101では、IGBTのコレクタ電極として機能する。下部電極14は、ダイオード領域102では、ダイオードのカソード電極として機能する。下部電極14は、例えば、金属である。
【0029】
下部電極14は、IGBT領域101において、コレクタ領域28に電気的に接続される。
【0030】
下部電極14は、ダイオード領域102において、カソード領域30に電気的に接続される。
【0031】
下部電極14は、境界領域103において、コレクタ領域28に電気的に接続される。
【0032】
コレクタ領域28は、p+形の半導体領域である。コレクタ領域28は、第2の面P2に接する。コレクタ領域28は、下部電極14に電気的に接続される。コレクタ領域28は、下部電極14に接する。コレクタ領域28は、IGBTのオン状態の際にホールの供給源となる。
【0033】
カソード領域30は、n+形の半導体領域である。カソード領域30は、第2の面P2に接する。カソード領域30は、ダイオードのオン状態の際に電子の供給源となる。
【0034】
ドリフト領域32は、n-形の半導体領域である。ドリフト領域32は、IGBT領域101において、コレクタ領域28と第1の面P1との間に設けられる。ドリフト領域32は、ダイオード領域102において、カソード領域30と第1の面P1との間に設けられる。
【0035】
ドリフト領域32のn形不純物濃度は、カソード領域30のn形不純物濃度より低い。
【0036】
ドリフト領域32は、IGBTのオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域32は、IGBT100のオフ状態の際に空乏化し、IGBTの耐圧を維持する機能を有する。
【0037】
ドリフト領域32は、ダイオードのオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域32は、ダイオードのオフ状態の際に空乏化し、ダイオードの耐圧を維持する機能を有する。
【0038】
ベース領域34は、p形の半導体領域である。ベース領域34は、IGBT領域101において、ドリフト領域32と第1の面P1との間に設けられる。IGBT領域101において、ベース領域34は、コレクタ領域28との間にドリフト領域32を挟む。
【0039】
ベース領域34は、境界領域103において、ドリフト領域32と第1の面P1との間に設けられる。
【0040】
ベース領域34の深さは、例えば、5μm以下である。ベース領域34の第1のゲート電極51と対向する領域には、IGBTのオン状態の際にn形反転層が形成される。ベース領域34はトランジスタのチャネル領域として機能する。
【0041】
エミッタ領域36は、n+形の半導体領域である。エミッタ領域36は、IGBT領域101において、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域36は、第1の面P1において、第1の方向に延伸する。
【0042】
エミッタ領域36は、IGBT領域101において、第1のゲート絶縁膜41に接する。
【0043】
境界領域103にエミッタ領域36は設けられない。エミッタ領域36は、第2のゲート絶縁膜42と離間する。エミッタ領域36は、第2のゲート絶縁膜42と接していない。
【0044】
ダイオード領域102にエミッタ領域36は設けられない。エミッタ領域36は、第1の絶縁膜43と離間する。エミッタ領域36は、第1の絶縁膜43と接していない。
【0045】
エミッタ領域36のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。
【0046】
エミッタ領域36は、上部電極12に電気的に接続される。エミッタ領域36は、上部電極12に接する。エミッタ領域36は、第1のゲート電極51を有するトランジスタのオン状態の際に電子の供給源となる。
【0047】
アノード領域38は、p形の半導体領域である。アノード領域38は、ダイオード領域102において、ドリフト領域32と第1の面P1との間に設けられる。ダイオード領域102において、アノード領域38は、カソード領域30との間にドリフト領域32を挟む。
【0048】
アノード領域38は、ダイオードがオン状態の際にホールの供給源となる。
【0049】
アノード領域38のp形不純物濃度は、例えば、ベース領域34のp形不純物濃度よりも低い。アノード領域38のp形不純物濃度は、例えば、ベース領域34のp形不純物濃度と同一でも高くても構わない。
【0050】
アノード領域38の深さは、例えば、ベース領域34の深さよりも浅い。アノード領域38の深さは、例えば、ベース領域34の深さと同一でも深くても構わない。
【0051】
コンタクト領域40は、p+形の半導体領域である。コンタクト領域40は、IGBT領域101及び境界領域103において、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられる。
【0052】
コンタクト領域40は、ダイオード領域102において、アノード領域38と第1の面P1との間に設けられる。
【0053】
コンタクト領域40は、第1の面P1において、第1の方向に延伸する。コンタクト領域40は、上部電極12に電気的に接続される。
【0054】
コンタクト領域40のp形不純物濃度は、ベース領域34のp形不純物濃度及びアノード領域38のp形不純物濃度よりも高い。
【0055】
第1のゲートトレンチ21は、IGBT領域101に設けられる。第1のゲートトレンチ21は、半導体層10の第1の面P1の側に、ベース領域34に接して設けられる。
【0056】
第1のゲートトレンチ21は、半導体層10に設けられた溝である。第1のゲートトレンチ21は、半導体層10の一部である。
【0057】
第1のゲートトレンチ21は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。第1のゲートトレンチ21は、ストライプ形状を有する。複数の第1のゲートトレンチ21は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0058】
第1のゲートトレンチ21は、ベース領域34を貫通し、ドリフト領域32に達する。第1のゲートトレンチ21の深さは、例えば、8μm以下である。
【0059】
第1のゲート電極51は、第1のゲートトレンチ21の中に設けられる。第1のゲート電極51は、例えば、半導体又は金属である。第1のゲート電極51は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。第1のゲート電極51は、第1のゲート電極パッド104に電気的に接続される。
【0060】
第1のゲート絶縁膜41は、第1のゲート電極51と半導体層10との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜41は、第1のゲート電極51とドリフト領域32との間、第1のゲート電極51とベース領域34との間、及び、第1のゲート電極51とエミッタ領域36との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜41は、ドリフト領域32、ベース領域34、及び、エミッタ領域36に接する。第1のゲート絶縁膜41は、例えば、酸化シリコンである。
【0061】
第2のゲートトレンチ22は、境界領域103に設けられる。第2のゲートトレンチ22は、半導体層10の第1の面P1の側に、ベース領域34に接して設けられる。
【0062】
第2のゲートトレンチ22は、半導体層10に設けられた溝である。第2のゲートトレンチ22は、半導体層10の一部である。
【0063】
第2のゲートトレンチ22は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。第2のゲートトレンチ22は、ストライプ形状を有する。第2のゲートトレンチ22は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0064】
第2のゲートトレンチ22は、ベース領域34を貫通し、ドリフト領域32に達する。第2のゲートトレンチ22の深さは、例えば、8μm以下である。
【0065】
第2のゲート電極52は、第2のゲートトレンチ22の中に設けられる。第2のゲート電極52は、例えば、半導体又は金属である。第2のゲート電極52は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。第2のゲート電極52は、第2のゲート電極パッド105に電気的に接続される。
【0066】
第2のゲート絶縁膜42は、第2のゲート電極52と半導体層10との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜42は、第2のゲート電極52とドリフト領域32との間、第2のゲート電極52とベース領域34との間、及び、第2のゲート電極52とコンタクト領域40との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜42は、ドリフト領域32、及び、ベース領域34に接する。第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36に接しない。第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36と離間する。第2のゲート絶縁膜42は、例えば、酸化シリコンである。
【0067】
境界領域103の第2のゲートトレンチ22の密度は、IGBT領域101の第2のゲートトレンチ22の密度よりも高い。RC-IGBT100では、IGBT領域101には第2のゲートトレンチ22が設けられないため、当然に、境界領域103の第2のゲートトレンチ22の密度は、IGBT領域101の第2のゲートトレンチ22の密度よりも高くなっている。
【0068】
第2のゲートトレンチ22の密度とは、例えば、第1の面P1の所定の面積内に、第2のゲートトレンチ22が占める割合である。
【0069】
ダイオードトレンチ23は、ダイオード領域102に設けられる。ダイオードトレンチ23は、半導体層10の第1の面P1の側に、アノード領域38に接して設けられる。
【0070】
ダイオードトレンチ23は、半導体層10に設けられた溝である。ダイオードトレンチ23は、半導体層10の一部である。
【0071】
ダイオードトレンチ23は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。ダイオードトレンチ23は、ストライプ形状を有する。ダイオードトレンチ23は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0072】
ダイオードトレンチ23は、アノード領域38を貫通し、ドリフト領域32に達する。ダイオードトレンチ23の深さは、例えば、8μm以下である。
【0073】
ダイオード導電層53は、ダイオードトレンチ23の中に設けられる。ダイオード導電層53は、例えば、半導体又は金属である。ダイオード導電層53は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。ダイオード導電層53は、上部電極12に電気的に接続される。
【0074】
第1の絶縁膜43は、ダイオード導電層53と半導体層10との間に設けられる。第1の絶縁膜43は、ダイオード導電層53とドリフト領域32との間、ダイオード導電層53とアノード領域38との間、及び、ダイオード導電層53とコンタクト領域40との間に設けられる。第1の絶縁膜43は、ドリフト領域32、及び、アノード領域38に接する。第1の絶縁膜43は、エミッタ領域36に接しない。第1の絶縁膜43は、エミッタ領域36と離間する。第1の絶縁膜43は、例えば、酸化シリコンである。
【0075】
第1の層間絶縁層61は、第1のゲート電極51と上部電極12との間に設けられる。第1の層間絶縁層61は、第1のゲート電極51と上部電極12との間を電気的に分離する。第1の層間絶縁層61は、例えば、酸化シリコンである。
【0076】
第2の層間絶縁層62は、第2のゲート電極52と上部電極12との間に設けられる。第2の層間絶縁層62は、第2のゲート電極52と上部電極12との間を電気的に分離する。第2の層間絶縁層62は、例えば、酸化シリコンである。
【0077】
第3の層間絶縁層63は、ダイオード導電層53と上部電極12との間に設けられる。第3の層間絶縁層63の一部に開口部が設けられる。上部電極12は開口部を介してダイオード導電層53に接する。ダイオード導電層53と上部電極12は電気的に接続される。第3の層間絶縁層63は、例えば、酸化シリコンである。
【0078】
なお、ダイオード導電層53を特定の電位に固定しないフローティング状態とすることも可能である。この場合、第3の層間絶縁層63に開口部は設けられない。
【0079】
第1のゲート電極パッド104は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1のゲート電極パッド104は、第1のゲート電極51に電気的に接続される。第1のゲート電極パッド104と第1のゲート電極51は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第1のゲート電極パッド104には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。
【0080】
第2のゲート電極パッド105は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第2のゲート電極パッド105は、第2のゲート電極52に電気的に接続される。第2のゲート電極パッド105と第2のゲート電極52は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第2のゲート電極パッド105には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。
【0081】
ゲートドライバ回路150は、例えば、RC-IGBT100と同一の回路基板上又は別の回路基板上に設けられる。ゲートドライバ回路150は、RC-IGBT100を駆動する機能を有する。
【0082】
ゲートドライバ回路150は、第1のゲート電極パッド104及び第2のゲート電極パッド105に、所望の第1のゲート電圧(Vg1)及び所望の第2のゲート電圧(Vg2)を、所望のタイミングで印加する機能を有する。
【0083】
ゲートドライバ回路150は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧から第2の電圧に変化させる機能を有する。第2の電圧は負電圧である。
【0084】
次に、RC-IGBT100の駆動方法、特にIGBT領域101のIGBTの駆動方法について説明する。
【0085】
図4は、第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図である。
図4は、第1のゲート電極パッド104に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極パッド105に印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
【0086】
以下、動作説明の便宜上、第1のゲート電極51を有するトランジスタという記述をする。
【0087】
IGBTのオフ状態では、例えば、上部電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。下部電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0088】
IGBTのオフ状態では、第1のゲート電極パッド104には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第1のゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0089】
ターンオフ電圧(Voff)は、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0090】
オフ状態では、第1のゲート電極51と対向し、第1のゲート絶縁膜41に接するベース領域34には、n形反転層は形成されない。
【0091】
IGBTのオフ状態では、第2のゲート電極パッド105には、初期電圧(V0)が印加されている。初期電圧(V0)は、例えば、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成されない電圧である。初期電圧(V0)は、例えば、0V又は正電圧である。
【0092】
IGBTをオン状態にする際(
図4の時刻t1)に、第1のゲート電極パッド104にターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧(Von)となる。第1のゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0093】
ターンオン電圧(Von)とは、第1のゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。第1のゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0094】
IGBTがオン状態の際、第2のゲート電極パッド105には、第1の電圧(V1)が印加されている。第1の電圧(V1)は、初期電圧(V0)である。
【0095】
IGBTをオフ状態にする際(
図4の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド104にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0096】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド105に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0097】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド105に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成される。
【0098】
時刻t2と時刻t3との間は、例えば、0.1マイクロ秒以上20マイクロ秒以下である。時刻t2と時刻t3との間は、例えば、1マイクロ秒である。
【0099】
次に、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路の作用及び効果について説明する。
【0100】
図5は、比較例の半導体装置の一部の模式断面図である。
図5は、
図2に相当する断面である。
【0101】
比較例の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT1000である。比較例のRC-IGBT1000は、第2のゲート電極52が上部電極12に電気的に接続される点で、第1の実施形態のRC-IGBT100と異なっている。
【0102】
RC-IGBT1000では、
図5に示すように、第2の層間絶縁層62の一部に開口部が設けられる。上部電極12は開口部を介して第2のゲート電極52に接する。これにより、第2のゲート電極52と上部電極12は電気的に接続される。
【0103】
例えば、インバータ回路のスイッチング素子にRC-IGBT1000が用いられる場合を考える。RC-IGBT1000のIGBTがオン状態の際には、下部電極14に上部電極12に対して高い電圧が印加され、下部電極14から上部電極12に向かって電流が流れる。
【0104】
IGBTがオン状態の際には、第1のゲート電圧(Vg1)にターンオン電圧(Von)が印加されている。
【0105】
RC-IGBT1000のIGBTをオフ状態にする際、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる。IGBTがオフ状態になることで、下部電極14から上部電極12に向かって電流は遮断される。
【0106】
例えば、インバータ回路の負荷にインダクタを備える場合、IGBT領域101のIGBTがオフ状態となった後に、ダイオード領域102のダイオードがオン状態になり、上部電極12から下部電極14に向かって還流電流が流れる。
【0107】
IGBT領域101とダイオード領域102の境界では、IGBTがオフ状態となった後に、ドリフト領域32にキャリアが残存する。残存するキャリアの排出が遅れると、残存するキャリアの存在がダイオード領域102のダイオードの動作に影響を与え、RC-IGBT1000の動作が不安定になるおそれがある。
【0108】
ドリフト領域32に残存するキャリアの影響を低減するため、IGBT領域101とダイオード領域102の間に、IGBT及びダイオードのいずれも存在しない境界領域103が設けられる。境界領域103を設けることで、RC-IGBT1000の動作は安定する。しかし、境界領域103はIGBT及びダイオードのいずれの動作もしない無効領域となる。したがって、境界領域103が大きくなると、RC-IGBT1000のチップサイズが大きくなるという問題が生ずる。
【0109】
第1の実施形態のRC-IGBT100は、第2のゲート電極52を第2のゲート電極パッド105に接続し、第2のゲート電圧(Vg2)を変化させることを可能にする。第2のゲート電圧(Vg2)は、第1のゲート電極51に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、独立して変化させることが可能である。
【0110】
第1の実施形態のRC-IGBT100では、IGBTをオフ状態にする際に、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から負電圧である第2の電圧(V2)に変化させる。
【0111】
第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にすることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成される。したがって、ドリフト領域32から上部電極12へのホールの排出が促進される。
【0112】
このため、ドリフト領域32に残存するキャリアがダイオードの動作に与える影響が、比較例のRC-IGBT1000に対して低減できる。したがって、大きい境界領域103を設ける必要が無くなり、境界領域103の大きさを小さくできる。よって、第1の実施形態のRC-IGBT100は、比較例のRC-IGBT1000に対してチップサイズが縮小できる。
【0113】
なお、
図3では、第1の面P1において、IGBT領域101のエミッタ領域36及びコンタクト領域40は、第1の方向に延伸する場合を例に説明した。しかし、例えば、エミッタ領域36とコンタクト領域40とが、2つの第1のゲートトレンチ21の間で、第1の方向に交互に配置されても構わない。
【0114】
以上、第1の実施形態によれば、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0115】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第3の領域の半導体層は、第4の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第5の半導体領域を有し、第3の領域の半導体層に設けられた第2のゲート絶縁膜は、第5の半導体領域に接する点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0116】
第2の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT200である。
【0117】
図6は、第2の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図6は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0118】
境界領域103の半導体層10は、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられたエミッタ領域36を有する。エミッタ領域36は、境界領域103において、第2のゲート絶縁膜42に接する。
【0119】
境界領域103にエミッタ領域36が設けられることで、第2のゲート電極52を有するトランジスタが境界領域103に存在することになる。IGBTのオン状態では、第2のゲート電極52に第1の電圧(V1)としてターンオン電圧(Von)を印加することで、境界領域103の第2のゲート電極52を有するトランジスタもオン電流を流すことに寄与する。したがって、RC-IGBT200のオン電流が増大する。
【0120】
なお、第1の実施形態と同様、IGBTをオフ状態にする際は、第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にすることにより、ドリフト領域32から上部電極12へのホールの排出が促進される。
【0121】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。また、オン電流の増大する半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0122】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第3の領域の半導体層は、第1の面の側に、第4の半導体領域に接して設けられた第4のトレンチを、更に有し、第4のトレンチの中に設けられ、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と電気的に分離された第2の導電層と、第2の導電層と第3の半導体領域との間、第2の導電層と第4の半導体領域との間に設けられた第2の絶縁膜と、を、更に備える点で、第2の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態又は第2の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0123】
第3の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT300である。
【0124】
図7は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図7は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0125】
境界領域103の半導体層10は、ダミートレンチ24(第4のトレンチ)、第2の絶縁膜44、ダミー導電層54(第2の導電層)、第4の層間絶縁層64を有する。
【0126】
ダミートレンチ24は、境界領域103に設けられる。ダミートレンチ24は、半導体層10の第1の面P1の側に、ベース領域34に接して設けられる。
【0127】
ダミートレンチ24は、境界領域103のダイオード領域102の側の端部に設けられる。ダミートレンチ24は、第2のゲートトレンチ22とダイオードトレンチ23との間に設けられる。ダミートレンチ24は、ダイオードトレンチ23と隣り合う。
【0128】
ダミートレンチ24は、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。ダミートレンチ24は、ストライプ形状を有する。
【0129】
ダミートレンチ24は、ベース領域34を貫通し、ドリフト領域32に達する。ダミートレンチ24の深さは、例えば、8μm以下である。
【0130】
ダミー導電層54は、ダミートレンチ24の中に設けられる。ダミー導電層54は、例えば、半導体又は金属である。ダミー導電層54は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。ダミー導電層54は、上部電極12に電気的に接続される。
【0131】
第2の絶縁膜44は、ダミー導電層54と半導体層10との間に設けられる。第2の絶縁膜44は、ダミー導電層54とドリフト領域32との間、ダミー導電層54とベース領域34との間、及び、ダミー導電層54とコンタクト領域40との間に設けられる。第2の絶縁膜44は、ドリフト領域32、及び、ベース領域34に接する。第2の絶縁膜44は、エミッタ領域36に接しない。第2の絶縁膜44は、エミッタ領域36と離間する。第2の絶縁膜44は、例えば、酸化シリコンである。
【0132】
第4の層間絶縁層64は、ダミー導電層54と上部電極12との間に設けられる。第4の層間絶縁層64の一部に開口部が設けられる。上部電極12は開口部を介してダミー導電層54に接する。ダミー導電層54と上部電極12は電気的に接続される。第4の層間絶縁層64は、例えば、酸化シリコンである。
【0133】
境界領域103のダミートレンチ24が存在する領域は、IGBTのオン状態の際もトランジスタとしては機能しない。このため、境界領域103のダイオード領域102の側の端部ではIGBTのオン電流は流れない。したがって、IGBTがターンオフした後の境界領域103のキャリア量は減少する。よって、例えば、第2の実施形態のRC-IGBT200と比較して、境界領域103の大きさを小さくでき、チップサイズが縮小できる。
【0134】
なお、ダミー導電層54を特定の電位に固定しないフローティング状態とすることも可能である。この場合、第4の層間絶縁層64に開口部は設けられない。
【0135】
また、
図7では、第2のゲート絶縁膜42がエミッタ領域36に接する場合を例に説明したが、第2のゲート絶縁膜42はエミッタ領域36に接しなくても構わない。
【0136】
以上、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。また、第2の実施形態と同様、オン電流の増大する半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0137】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第3の領域の半導体層に設けられた、第2の領域の側の端部の第2のゲート絶縁膜が第5の半導体領域に接しない点で、第2の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態又は第2の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0138】
第4の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT400である。
【0139】
図8は、第4の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図8は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0140】
境界領域103の半導体層10に設けられた、ダイオード領域102の側の端部の第2のゲート絶縁膜42が、エミッタ領域36に接しない。
【0141】
第2のゲート絶縁膜42がエミッタ領域36に接しないため、境界領域103のダイオード領域102の側の端部は、IGBTのオン状態の際もトランジスタとしては機能しない。このため、境界領域103のダイオード領域102の側の端部ではIGBTのオン電流は流れない。したがって、IGBTがターンオフした後に境界領域103に残存するキャリアの量は減少する。よって、例えば、第2の実施形態のRC-IGBT200と比較して、境界領域103の大きさを小さくでき、チップサイズが縮小できる。
【0142】
以上、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。また、第2の実施形態と同様、オン電流の増大する半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0143】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第1の領域の半導体層に第2のトレンチが設けられる点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0144】
第5の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT500である。
【0145】
図9は、第5の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図9は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0146】
IGBT領域101の半導体層10は、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)を有する。IGBT領域101の半導体層10は、第1のゲートトレンチ21と第2のゲートトレンチ22が交互に設けられる。
【0147】
IGBT領域101に第2のゲートトレンチ22を設けることで、IGBTのターンオフ時に、IGBTのターンオフに先行してドリフト領域32にp形反転層を形成することが可能となる。したがって、ドリフト領域32からのホールの排出が促進され、ターンオフ時間を短くすることが可能となる。よって、スイッチング損失を低減することが可能となる。
【0148】
また、
図9では、境界領域103の第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36に接しない場合を例に説明したが境界領域103の第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36に接しても構わない。また、
図9では、IGBT領域101の第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36に接する場合を例に説明したが、IGBT領域101の第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36に接しなくても構わない。
【0149】
以上、第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。また、スイッチング損失を低減することが可能な半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0150】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、半導体層は、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に設けられ、第2の面に接し、第2の半導体領域よりも第2導電形不純物濃度の低い第2導電形の第7の半導体領域を、更に有する点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0151】
第6の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT600である。
【0152】
図10は、第6の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図10は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0153】
半導体層10は、n形領域31(第7の半導体領域)を有する。n形領域31は、コレクタ領域28とカソード領域30との間に設けられる。n形領域31は、第2の面P2に接する。
【0154】
n形領域31は、n-形の半導体領域である。n形領域31のn形不純物濃度は、カソード領域30のn形不純物濃度よりも低い。
【0155】
n形領域31が設けられることで、IGBTのターンオン時のドリフト領域32へのホールの注入が抑制される。このため、境界領域103において、IGBTのターンオフ時にドリフト領域32に残存するキャリアの量が減少する。したがって、ドリフト領域32から上部電極12へのホールの排出が速くなる。
【0156】
したがって、ドリフト領域32に残存するキャリアがダイオードの動作に与える影響が低減できる。よって、境界領域103の大きさを小さくでき、チップサイズが縮小できる。
【0157】
以上、第6の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、更なるチップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0158】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、半導体層は、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に設けられ、第2の面に接し、第1の半導体領域よりも第1導電形不純物濃度の低い第1導電形の第8の半導体領域を、更に有する点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0159】
第7の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT700である。
【0160】
図11は、第7の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図11は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0161】
半導体層10は、p形領域29(第8の半導体領域)を有する。p形領域29は、コレクタ領域28とカソード領域30との間に設けられる。p形領域29は、第2の面P2に接する。
【0162】
p形領域29は、p-形の半導体領域である。p形領域29のp形不純物濃度は、コレクタ領域28のp形不純物濃度よりも低い。
【0163】
p形不純物濃度がコレクタ領域28よりも低いp形領域29が設けられることで、IGBTのターンオン時のドリフト領域32へのホールの注入が抑制される。このため、境界領域103において、IGBTのターンオフ時にドリフト領域32に残存するキャリアの量が減少する。したがって、ドリフト領域32から上部電極12へのホールの排出が速くなる。
【0164】
したがって、ドリフト領域32に残存するキャリアがダイオードの動作に与える影響が低減できる。よって、境界領域103の大きさを小さくでき、チップサイズが縮小できる。
【0165】
以上、第7の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、更なるチップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0166】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1の導電層と電気的に接続された第3の電極パッドを、更に備える点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0167】
第8の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT800である。
【0168】
図12は、第8の実施形態の半導体回路の模式図である。
図13は、第8の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図13は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0169】
第8の実施形態の半導体回路は、RC-IGBT800とゲートドライバ回路150とを有する。RC-IGBT800は、IGBT領域101(第1の領域)、ダイオード領域102(第2の領域)、境界領域103(第3の領域)、を有する。境界領域103は、IGBT領域101とダイオード領域102の間に設けられる。
【0170】
第8の実施形態のRC-IGBT800は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1の絶縁膜43、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、ダイオード導電層53(第1の導電層)、第1の層間絶縁層61、第2の層間絶縁層62、第3の層間絶縁層63、第1のゲート電極パッド104(第1の電極パッド)、第2のゲート電極パッド105(第2の電極パッド)、ダイオード電極パッド106(第3の電極パッド)を備える。
【0171】
ダイオード電極パッド106は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。ダイオード電極パッド106は、ダイオード導電層53に電気的に接続される。ダイオード電極パッド106とダイオード導電層53は、例えば、図示しない金属配線で接続される。ダイオード電極パッド106には、電圧(Vx)が印加される。
【0172】
例えば、ダイオード領域102のダイオードがオン状態からオフ状態に移行する際に、ダイオード領域102のドリフト領域32にキャリアが残存する。残存するキャリアの排出が遅れると、IGBT領域101のIGBTの動作に影響を与え、RC-IGBTの動作が不安定になるおそれがある。
【0173】
第8の実施形態のRC-IGBT800は、ダイオード導電層53に電気的に接続されるダイオード電極パッド106を備える。このため、ダイオード導電層53に、第1のゲート電極51や第2のゲート電極52と独立して電圧を印加することが可能になる。すなわち、ダイオード導電層53に、第1のゲート電極51や第2のゲート電極52と異なる電圧を異なるタイミングで印加することが可能になる。
【0174】
例えば、ダイオード領域102のダイオードがオン状態からオフ状態に移行する際に、ダイオード電極パッド106に負電圧を印加すると、第1の絶縁膜43に接するドリフト領域32にp形反転層が形成される。したがって、ドリフト領域32から上部電極12へのホールの排出が促進される。
【0175】
よって、ドリフト領域32に残存するキャリアがIGBTの動作に与える影響が、第1の実施形態のRC-IGBT100に対して低減できる。
【0176】
以上、第8の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。また、ダイオードの動作がIGBTの動作に与える影響を低減することが可能となる。
【0177】
(第9の実施形態)
第9の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第2の領域の半導体層が、第3のトレンチを有しない点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0178】
第9の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT900である。
【0179】
図14は、第9の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図14は、第1の実施形態の
図2に相当する断面である。
【0180】
第9の実施形態のRC-IGBT900は、ダイオード領域102の半導体層10にダイオードトレンチ23を有しない。また、半導体層10は電界緩和領域39(第9の半導領域)を有する。
【0181】
電界緩和領域39は、p形の半導体領域である。電界緩和領域39は、境界領域103の端部の第2のゲートトレンチ22とドリフト領域32との間に設けられる。
電界緩和領域39は、ベース領域34及びアノード領域38よりも深い。電界緩和領域39は、境界領域103の端部の第2のゲートトレンチ22の近傍の電界集中を緩和し、RC-IGBT900の耐圧を向上させる機能を有する。
【0182】
以上、第9の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、チップサイズの縮小を可能とする半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0183】
第1ないし第9の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素など、その他の単結晶半導体であっても構わない。
【0184】
第1ないし第9の実施形態においては、トレンチが平行に配置されているストライプ形状の場合を例に説明したが、トレンチが交差するメッシュ形状のトレンチ、又は、ドット形状のトレンチにも本発明を適用することは可能である。
【0185】
第1ないし第9の実施形態においては、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明したが、第1導電形をn形、第2導電形をp形とすることも可能である。第1導電形をn形、第2導電形をp形とする場合、例えば、第2の電圧(V2)は正電圧となる。
【0186】
第1ないし第9の実施形態においては、境界領域103には第1のゲートトレンチ21を設けない場合を例に説明した。しかし、境界領域103の第2のゲートトレンチ22の密度が、IGBT領域101の第2のゲートトレンチ22の密度よりも高い限りにおいて、境界領域103に第1のゲートトレンチ21を設ける構成とすることも可能である。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0188】
10 半導体層
12 上部電極(第1の電極)
14 下部電極(第2の電極)
21 第1のゲートトレンチ(第1のトレンチ)
22 第2のゲートトレンチ(第2のトレンチ)
23 ダイオードトレンチ(第3のトレンチ)
24 ダミートレンチ(第4のトレンチ)
28 コレクタ領域(第1の半導体領域)
29 p形領域(第8の半導体領域)
30 カソード領域(第2の半導体領域)
31 n形領域(第7の半導体領域)
32 ドリフト領域(第3の半導体領域)
34 ベース領域(第4の半導体領域)
36 エミッタ領域(第5の半導体領域)
38 アノード領域(第6の半導体領域)
39 電界緩和領域(第9の半導領域)
41 第1のゲート絶縁膜
42 第2のゲート絶縁膜
43 第1の絶縁膜
44 第2の絶縁膜
51 第1のゲート電極
52 第2のゲート電極
53 ダイオード導電層(第1の導電層)
54 ダミー導電層(第2の導電層)
100 RC-IGBT(半導体装置)
101 IGBT領域(第1の領域)
102 ダイオード領域(第2の領域)
103 境界領域(第3の領域)
104 第1のゲート電極パッド(第1の電極パッド)
105 第2のゲート電極パッド(第2の電極パッド)
106 ダイオード電極パッド(第3の電極パッド)
150 ゲートドライバ回路(制御回路)
200 RC-IGBT(半導体装置)
300 RC-IGBT(半導体装置)
400 RC-IGBT(半導体装置)
500 RC-IGBT(半導体装置)
600 RC-IGBT(半導体装置)
700 RC-IGBT(半導体装置)
800 RC-IGBT(半導体装置)
900 RC-IGBT(半導体装置)
P1 第1の面
P2 第2の面