(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】クレセント錠
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20230925BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20230925BHJP
E05B 13/00 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
E05B65/08 Q
E05C3/04 C
E05B13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019178663
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕示
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 勝
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-16443(JP,A)
【文献】特開2013-83054(JP,A)
【文献】特開2008-231811(JP,A)
【文献】特開2007-100377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
E05C 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内障子に固定される取付ベースと、
前記取付ベースに回動自在に設けられたクレセントと、
前記クレセントを回動させるために操作される操作レバーと、を有し、室外障子に設けられた受け具に前記クレセントが回動によって係脱することで、前記室内障子、及び前記室外障子を施錠、及び解錠するクレセント錠において、
解錠状態において前記操作レバーに対する施錠操作を阻止する施錠操作阻止機構と、
前記施錠操作阻止機構による施錠操作の阻止の機能を、ユーザ操作によってオン/オフする施錠操作阻止オン/オフ機構と、
を備え
、
前記施錠操作阻止機構は、
前記操作レバー、又は前記取付ベースの一方に設けられた係止部と、前記操作レバー、又は前記取付ベースの他方に設けられ、解錠状態において前記係止部に係止されるとともに、前記係止部と係合しない非係止位置に移動自在な突出片と、前記突出片を前記非係止位置に移動させ前記係止を解除するために操作される係止解除操作子と、を備え、前記係止解除操作子に対して操作が成されている間、前記突出片が前記非係止位置に移動した状態を保持する
ことを特徴とするクレセント錠。
【請求項2】
前記突出片は、
前記係止部と係合する係止位置に突出した状態に、弾性体の弾性力によって保持されており、
施錠状態の前記操作レバーに対する解錠操作に伴って前記係止部に接触する箇所が、前記係止部との接触によって前記突出片を前記非係止位置に移動させる方向に力を生じさせる傾斜面に形成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載のクレセント錠。
【請求項3】
前記施錠操作阻止オン/オフ機構は、
前記係止解除操作子に対して所定のユーザ操作が成された場合、当該所定のユーザ操作後も、前記突出片が前記非係止位置に移動した状態を維持する
ことを特徴とする請求項
1または
2に記載のクレセント錠。
【請求項4】
前記突出片は、前記係止解除操作子に対する操作に伴い、
自身が設けられた前記操作レバー、又は前記取付ベースの中に没入し、或いは、自身が設けられた前記操作レバー、又は前記取付ベースの面内をスライド移動することで、前記非係止位置に移動する、
ことを特徴とする請求項
1から
3のいずれかに記載のクレセント錠。
【請求項5】
前記係止部は、前記突出片を係止する凸状の係止片を有することを特徴とする請求項
1から
4のいずれかに記載のクレセント錠。
【請求項6】
前記室内障子、及び前記室外障子の少なくともいずれか一方が閉鎖位置に位置せず、前記クレセントが回動した場合に前記受け具に係合しない状態のときに、前記操作レバーの回動を阻止する空掛け防止機構を備える
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載のクレセント錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレセント錠に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの多くの集合住宅では、バルコニーに面した引き違い窓に、当該窓を閉鎖位置に施錠するクレセント錠が設けられている。住人などは室内からバルコニーに出る間、クレセント錠を解錠状態とし、いつでも室内に戻れるようにしている。しかしながら、幼児や子供などがクレセント錠を弄った際にクレセント錠が施錠されてしてしまい、住人などがバルコニーに締め出される事故(締め出し事故)が発生することがある。
【0003】
締め出し事故を防止する手法としては各種の手法がある。
例えば、室外側から解錠可能にクレセント錠を構成し(例えば、特許文献1参照)、住人などがバルコニーに締め出されても室内側のクレセント錠を解錠できるようにする第1の手法である。また例えば、窓の閉鎖を阻止し開放状態を維持する器具(例えば、特許文献2、及び特許文献3参照)を引き違い窓に設置し、住人などがバルコニーに出ている間、窓の閉鎖を阻止することでクレセント錠による施錠を防止する第2の手法である。また例えば、施錠操作を阻止する着脱自在な部材をクレセント錠に設け、住人などがバルコニーに出る際に、当該部材をクレセント錠に装着しておくことで、クレセント錠の施錠操作を防止する第3の手法である(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7参照)。また例えば、クレセント錠の操作レバーとの同時操作が成されない限りクレセント錠を施錠不能にする装置を設けることで、幼児や子供などによって誤って施錠操作が行われることを防止する第4の手法である(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5004466号公報
【文献】特許第5441155号公報
【文献】特開2003-314140号公報
【文献】特開2015-3114号公報
【文献】特開2011-85000号公報
【文献】特開2002-367036号公報
【文献】実用新案登録第3100084号公報
【文献】特開平10-184119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、それぞれの手法には、次のような課題がある。
すなわち、第1の手法にあっては、室外側からクレセント錠を解錠可能なため防犯上の対策が必要になる。第2の手法にあっては、クレセント錠とは別途の器具を引き違い窓に設置する必要が生じる。第3の手法にあっては、施錠操作を阻止するための部材を紛失してしまう虞がある。また第4の手法にあっては、幼児や子供が成長しクレセント錠を誤操作する虞がなくなった場合でも常に同時操作が必要とされるので煩わしい。
【0006】
本発明は、締め出しを防止することができ、なおかつ、より高い利便性を備えるクレセント錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、室内障子に固定される取付ベースと、前記取付ベースに回動自在に設けられたクレセントと、前記クレセントを回動させるために操作される操作レバーと、を有し、室外障子に設けられた受け具に前記クレセントが回動によって係脱することで、前記室内障子、及び前記室外障子を施錠、及び解錠するクレセント錠において、解錠状態において前記操作レバーに対する施錠操作を阻止する施錠操作阻止機構と、前記施錠操作阻止機構による施錠操作の阻止の機能を、ユーザ操作によってオン/オフする施錠操作阻止オン/オフ機構と、を備え、前記施錠操作阻止機構は、前記操作レバー、又は前記取付ベースの一方に設けられた係止部と、前記操作レバー、又は前記取付ベースの他方に設けられ、解錠状態において前記係止部に係止されるとともに、前記係止部と係合しない非係止位置に移動自在な突出片と、前記突出片を前記非係止位置に移動させ前記係止を解除するために操作される係止解除操作子と、を備え、前記係止解除操作子に対して操作が成されている間、前記突出片が前記非係止位置に移動した状態を保持することを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記クレセント錠において、前記突出片は、前記係止部と係合する係止位置に突出した状態に、弾性体の弾性力によって保持されており、施錠状態の前記操作レバーに対する解錠操作に伴って前記係止部に接触する箇所が、前記係止部との接触によって前記突出片を前記非係止位置に移動させる方向に力を生じさせる傾斜面に形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記クレセント錠において、前記施錠操作阻止オン/オフ機構は、前記係止解除操作子に対して所定のユーザ操作が成された場合、当該所定のユーザ操作後も、前記突出片が前記非係止位置に移動した状態を維持することを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記クレセント錠において、前記突出片は、前記係止解除操作子に対する操作に伴い、自身が設けられた前記操作レバー、又は前記取付ベースの中に没入し、或いは、自身が設けられた前記操作レバー、又は前記取付ベースの面内をスライド移動することで、前記非係止位置に移動する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記クレセント錠において、前記係止部は、前記突出片を係止する凸状の係止片を有することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記クレセント錠において、前記室内障子、及び前記室外障子の少なくともいずれか一方が閉鎖位置に位置せず、前記クレセントが回動した場合に前記受け具に係合しない状態のときに、前記操作レバーの回動を阻止する空掛け防止機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、締め出しを防止することができ、なおかつ、より高い利便性を備えるクレセント錠が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態のクレセント錠が設置された引き違いサッシを室内側からみた斜視図である。
【
図2】解錠状態にあるクレセント錠の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図3】クレセント錠の施錠操作状態を示す正面図である。
【
図4】施錠操作阻止機構の構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図4のV-V線における断面構成を模式的に示す図である。
【
図6】操作レバーの裏面の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図7】突出片と係止部との係合を解除するためのユーザ操作の説明図である。
【
図8】解錠操作に伴う突出片の没入動作を示す図である。
【
図9】本発明の変形例に係る操作レバーの裏面の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図10】本発明の他の変形例に係るクレセント錠の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のクレセント錠20が設置された引き違いサッシ1を室内側からみた斜視図である。
引き違いサッシ1は、2枚のガラス障子2、4を有し、これらガラス障子2、4によって建物の開口部を開閉する装置(「開口部装置」とも称される)である。そして、引き違いサッシ1には、ガラス障子2、4を施錠、及び解錠する施錠装置であるクレセント錠20が設けられている。
【0018】
より具体的には、引き違いサッシ1は、上枠6A、下枠6B、及び左右の縦枠6C、6Dを矩形状に組んで成る枠体6を備え、上記ガラス障子2、4は、この枠体6内に左右方向に開閉移動自在に設けられている。ガラス障子2、4は、上框8A、下框8B、縦框8C、及び召合わせ框8Dを矩形状に組んで成る框体8と、この框体8内にパッキンを介して嵌め込まれたガラスパネル10とを備えて構成されている。枠体6、及び框体8が備える框材には、例えばアルミニウム合金の押出形材が用いられる。
【0019】
クレセント錠20は、内障子に相当するガラス障子2が備える召合わせ框8Dに設けられており、外障子に相当するガラス障子4に取り付けられたクレセント受け具12に係脱されることで、これらガラス障子2、4を施錠、及び解錠する。
【0020】
図2は、解錠状態にあるクレセント錠20の構成を示す図であり、
図2(A)は正面図、
図2(B)は側面図である。また
図3は、クレセント錠20の施錠操作状態を示す正面図である。
これらの図に示すように、クレセント錠20は、召合わせ框8Dに取り付けられる取付ベース22と、クレセント24と、操作レバー26と、を備えている。
取付ベース22は、召合わせ框8Dに沿って延びる直方体の樹脂材等から成る部材であり、召合わせ框8Dにビスなどで固定される。
図2(A)に示すように、クレセント24は、取付ベース22の正面22Fで、クレセント軸27に回動自在に取り付けら、当該回動によって上記クレセント受け具12(
図1)に係脱す金属製の部材である。操作レバー26は、クレセント24の回動操作のために操作子であり、クレセント軸27に一端が連結された棒状の樹脂材等から成る部材である。
図3に示すように、この操作レバー26の操作によってクレセント24がクレセント軸27を中心に略180度の範囲で回動させられることにより、当該クレセント24がクレセント受け具12に係脱する。すなわち、
図2(A)、及び
図2(B)に示すように、操作レバー26が下方(下框8Bの側)に延びた状態のときにはクレセント24がクレセント受け具12から脱し、クレセント錠20が解錠状態となる。一方、この解錠状態において、操作レバー26が上方(上框8Aの側)に延びる姿勢となるように回動されると、クレセント24がクレセント受け具12に係合し、クレセント錠20が施錠状態となる。
【0021】
さらに本実施形態のクレセント錠20は、補助ロック機構30(
図2(B))、空掛け防止機構32(
図2(A))、及び締め出し防止機構34を備えている。
【0022】
補助ロック機構30は、施錠状態においてクレセント24の回動を阻止する機構であり、
図2(B)に示すように、補助ロック用ストッパー片36を備えている。この補助ロック用ストッパー片36は、取付ベース22の側面22Sに直線的にスライド移動自在に設けられた部材であり、取付ベース22の内部において、自身のスライド位置に応じてクレセント軸27に係脱可能に構成されている。補助ロック用ストッパー片36は、ロック位置とロック解除位置との間をスライド移動し、施錠状態においてロック位置に移動したときにクレセント軸27に係合し当該クレセント軸27の回動を阻止する。これにより、施錠状態におけるクレセント24(操作レバー26)の回動が阻止される。また施錠状態において補助ロック用ストッパー片36がロック解除位置に移動すると、補助ロック用ストッパー片36とクレセント軸27の係合が解かれ、クレセント24(操作レバー26)が回動可能となり、操作レバー26を操作して解錠できるようになる。
【0023】
空掛け防止機構32は、2枚のガラス障子2、4の少なくともいずれか一方が建物の開口部を全閉する閉鎖位置に位置せず、クレセント24が回動してもクレセント受け具12に係合しない状態のとき、クレセント錠20に対する施錠操作を阻止する機構であり、トリガー38(
図2(A)参照)と、回動阻止機構(図示せず)と、解除機構(図示せず)と、を有している。トリガー38は、外障子であるガラス障子4の側に取付ベース22の側から突出するとともに、ガラス障子2、4がともに閉鎖位置にあるときは、ガラス障子4の召合わせ框8D、又はクレセント受け具12と接触することで取付ベース22の側に没入可能に構成された部材である。回動阻止機構、及び解除機構は、取付ベース22に設けられた機構であり、回動阻止機構は、所定角度以上の操作レバー26の回動を阻止する機構である。また解除機構は、回動阻止機構による操作レバー26の回動の阻止を、トリガー38の没入に伴って解除する機構である。
【0024】
トリガー38が突出状態にあるとき、すなわち2枚のガラス障子2、4の少なくともいずれか一方が閉鎖位置に位置しない状態では、回動阻止機構によって操作レバー26の回動が阻止され、これにより、クレセント錠20に対する施錠操作が不能になる。一方、トリガー38が没入状態にあるとき、すなわちガラス障子2、4がともに閉鎖位置にあるときは、解除機構が作動し、回動阻止機構による回動阻止が解除される。これにより、クレセント錠20に対する施錠操作が可能になる。なお、これら回動阻止機構、及び解除機構には、クレセント錠20の技術分野において、公知又は周知の適宜の機構を用いることができる。
【0025】
締め出し防止機構34は、空掛け防止機構32とは異なり、ガラス障子2、4の開閉状態にかかわらず、解錠状態においてクレセント錠20の施錠操作を阻止する施錠操作阻止機構40(
図2(B))と、さらに、この施錠操作阻止機構40による施錠操作の阻止機能を、ユーザ操作によってオン/オフする施錠操作阻止オン/オフ機構44(
図2(B))と、を備えた機構である。
【0026】
より具体的には、施錠操作阻止機構40は、解錠状態にあるクレセント錠20の操作レバー26を当該クレセント錠20が備える部材(本実施形態では取付ベース22)に係止させることで、解錠状態にある操作レバー26の回動を阻止するとともに、後述するスライド操作子46に対して、居住者などのユーザによる操作が成されている間、かかる係止を解除し操作レバー26を回動可能にする機構を有する。
この施錠操作阻止機構40によって解錠状態における操作レバー26の回動が阻止されることで、クレセント錠20の施錠操作が阻止される。また操作レバー26を回動させるためにはスライド操作子46に対するユーザ操作を要するので、幼児や子供などがクレセント錠20を弄った際に、クレセント錠20が施錠され難くなり、締め出し事故を防止できる。
【0027】
施錠操作阻止オン/オフ機構44は、スライド操作子46に対する所定のユーザ操作が成された場合、当該所定のユーザ操作の後も、施錠操作阻止機構40による係止を解除した状態を維持することで、施錠操作阻止機構40を常時、オフにする機構を有する。
この施錠操作阻止オン/オフ機構44が設けられることで、例えば幼児や子供が成長する等して、解錠状態のクレセント錠20が誤って施錠操作されることがなくなった場合には、ユーザは、スライド操作子46に対して所定の操作をすることで、施錠操作阻止機構40による施錠操作阻止機能を常時、封じた(オフにした)状態にできる。これにより、施錠操作の度に、スライド操作子46を同時操作する必要がなくなり、クレセント錠20の利便性が高められる。
【0028】
次いで、施錠操作阻止機構40、及び施錠操作阻止オン/オフ機構44について、より詳細に説明する。
【0029】
図4は施錠操作阻止機構40の構成を模式的に示す側面図であり、
図5は
図4のV-V線における断面構成を模式的に示す図である。
図6は操作レバー26の裏面26Rの構成を模式的に示す斜視図である。
施錠操作阻止機構40は、
図4に示すように、操作レバー26に設けられた突出片50と、取付ベース22に設けられた係止部52と、上述したスライド操作子46と、を備えている。突出片50、及び係止部52のそれぞれは、解錠状態において互いに係合する位置に設けられている。具体的には、解錠状態においては、前掲
図2(B)に示すように、操作レバー26がクレセント軸27から下方に延びることで、
図4に示すように、操作レバー26の裏面26Rと、取付ベース22の下端側の正面22Fとが対面する。そして、この操作レバー26の裏面26Rには突出片50が設けられ、取付ベース22の正面22Fの下端側には係止部52が設けられる。
【0030】
突出片50は、解錠状態において取付ベース22に向けて突出した部材であり、係止部52は、当該突出片50を係止する凸状の係止片53を備える。
図5に示すように、施錠操作による操作レバー26の回動時には、突出片50が係止片53に当接して係止されることで、操作レバー26の操作が阻止される。この突出片50は、操作レバー26に内設されたスプリング54の弾性力(ばね力)によって、常時、突出方向に付勢され、係止片53に係止される位置(係止位置)に保持される。なお、スプリング54に代えて適宜の弾性部材を用いてもよい。
【0031】
スライド操作子46は、係止片53による係止が解除される非係止位置に突出片50を移動させるために操作される係止解除操作子の一例である。スライド操作子46は、
図4に示すように、操作レバー26の側面26Sに形成された左右方向(突出片50が突出、及び没入する方向)に延びるスライド溝60にスライド移動可能に設けられ、
図5に示すように、操作レバー26の内部において、連結片55を介して突出片50に連結されている。突出片50は、上述したスプリング54によって突出方向に常時、付勢されているため、スライド操作子46の非スライド操作時には、当該スライド操作子46も、スライド溝60の右端60Rの側に配置される。そして、
図7に示すように、スライド操作子46が解除方向である左方向DLにユーザによってスライド操作されると、連結片55を介して突出片50もスプリング54の弾性力に抗して左方向DLに移動する。そして、操作レバー26がスライド溝60の左端60Lに位置した際には、突出片50が操作レバー26の中に没入し収納され、非係合位置に移動した状態となり、当該突出片50と係止片53の係合が解除される。これにより、ユーザがスプリング54の弾性力に抗してスライド操作子46を左端60Lにスライド操作している間は、操作レバー26が回動可能になり、解錠状態のクレセント錠20に対して施錠操作ができるようになる。
【0032】
かかる突出片50は、扉の空締めなどに用いられる、いわゆるラッチボルトと同様の形状を成し、前掲
図5、
図6に示すように、取付ベース22の側に向けて先細りする三角形状に形成されている。より具体的には、
図5に示すように、施錠操作時に係止片53に当接する面50Aが当該係止片53に引っ掛かる平面状に形成されている。一方、解錠操作時に係止片53に当接する面50Bは、傾斜面に形成されている。したがって、
図8に示すように、操作レバー26を解錠操作時の回動方向DRに回動させた時には、突出片50の傾斜した面50Bと係止片53との接触によって、突出片50を非係止位置に移動させる方向(左方向)に力が生じる。したがって、施錠操作の際には、突出片50と係止片53との接触によって突出片50が自ずと操作レバー26の側に没入し、突出片50が非係止位置に移動するので、ユーザは、突出片50が係止片53に係止されないようにスライド操作子46を、態々、スライド操作する必要がなく、使い勝手が高められる。
【0033】
施錠操作阻止オン/オフ機構44は、
図4に示すように、上記スライド溝60の左端60Lから下方(上方でも良い)に延びる縦溝であるロック溝70を有する。スライド操作子46をスライド移動により左端60Lに位置させることで突出片50を非係止位置に移動させた状態とし、この状態で、前掲
図6に示す縦方向DTに、ユーザがスライド操作子46を縦スライド操作(上述した所定のユーザ操作)すると、ロック溝70にスライド操作子46が進入し、左右方向へのスライド移動が規制(ロック)される。スライド操作子46の連結片55は、突出片50との係合箇所に遊び(隙間)を有する等して、スライド操作子46がスライド溝60からロック溝70に進入しても、突出片50との係合を維持するように構成されている。これにより、スライド操作子46がロック溝70に位置するときは、突出片50と係止片53との係合が、常時、解除された状態(施錠操作阻止機構40の機能がオフの状態)となる。また、この状態において、ユーザがスライド操作子46をロック溝70からスライド溝60に戻す操作をすることで、突出片50と係止片53とが係合し、施錠操作阻止機能がオンの状態に復帰させることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0035】
本実施形態に係るクレセント錠20は、解錠状態において操作レバー26に対する施錠操作を阻止する施錠操作阻止機構40と、この施錠操作阻止機構40による施錠操作の阻止の機能を、スライド操作子46に対するスライド操作によってオン/オフする施錠操作阻止オン/オフ機構44と、を備える。
かかるクレセント錠20によれば、例えば幼児や子供が成長する等して、解錠状態のクレセント錠20が誤って施錠操作されることがなくなった場合、ユーザは、スライド操作子46に対して所定の操作(縦スライド操作)をすることで、施錠操作阻止機構40による施錠操作阻止機能を常時、封じた(オフにした)状態にできる。これにより、施錠操作の度に、態々、スライド操作子46を操作する必要がなくなり、クレセント錠20の利便性が高められる。
【0036】
本実施形態のクレセント錠20では、施錠操作阻止機構40がスライド操作子46に対してスライド操作が成されている間、突出片50が非係止位置に移動した状態を保持する。
これにより、スライド操作が成されていない限りは、突出片50と係止片53の係合が解除されることがないため、幼児や子供などがクレセント錠20を弄った際に、クレセント錠20が施錠され難くなり、より確実に締め出し事故を防止できる。
【0037】
本実施形態のクレセント錠20では、突出片50は、係止片53と係合する係止位置に突出した状態に弾性力によって保持されており、施錠状態の操作レバー26に対する解錠操作に伴って係止片53に接触する面50Bが、係止片53との接触によって突出片50を非係止位置に移動させる方向に力を生じさせる傾斜面に形成されている。
これにより、施錠操作の際には、突出片50と係止片53との接触によって突出片50が自ずと非係止位置に移動するので、ユーザは、突出片50が係止片53に係止されないようにスライド操作子46を、態々、スライド操作する必要がなく、使い勝手が高められる。
【0038】
本実施形態のクレセント錠20では、施錠操作阻止オン/オフ機構44は、スライド操作子46に対して縦スライド操作(所定のユーザ操作)が成された場合、当該縦スライド操作後も、突出片50が非係止位置に移動した状態を維持する。
この構成によれば、係止を解除するためのスライド操作子46を用いて、施錠操作阻止機構40による施錠操作阻止機能をオフするための操作が行われることとなり、操作容易性を向上させ、また部品点数を削減できる。
【0039】
本実施形態のクレセント錠20では、突出片50がスライド操作子46に対するスライド操作に伴い、自身が設けられた操作レバー26の中に没入することで非係止位置に移動する。
これにより、施錠操作阻止オン/オフ機構44によって、突出片50が非係止位置に移動した状態に維持している間、当該突出片50が操作レバー26の中に収納され、当該突出片50への接触や破損を防止し、耐久性が高められる。
【0040】
本実施形態のクレセント錠20では、突出片50に係止する係止部52が凸状の係止片53であるため、簡単に係止部52を構成できる。
【0041】
本実施形態のクレセント錠20では、室内障子であるガラス障子2、及び室外障子であるガラス障子4のいずれかが閉鎖位置に位置せず、クレセント24が回動した場合にクレセント受け具12に係合しない状態のときに、操作レバー26の回動を阻止する空掛け防止機構32を備える。これにより、ガラス障子2、4の不完全な閉鎖状態での施錠操作を阻止できる。
【0042】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0043】
上述した実施形態において、スライド操作子46のスライド操作に伴って突出片50が操作レバー26の中に没入することで、非係止位置に移動する構成を例示した。しかしながら、これに限らず、
図9に示すように、自身が設けられた操作レバー26の裏面26R内を、突出片50がスライド操作子46のスライド操作に伴って、操作レバー26の延在方向DKにスライド移動し、係止片53と係止しない非係止位置まで移動する構成としてもよい。この場合、操作レバー26の側面26Sには、スライド溝60に代えて、延在方向DKに延びるスライド溝160が設けられる。また、このスライド溝160の端部160Tには、スライド操作子46の延在方向DKへのスライド移動を規制する横溝であるロック溝170が設けられる。そして、ユーザは、スライド溝160の端部160Tでスライド操作子46を左方向DLに移動させる操作(所定のユーザ操作)を行い、ロック溝170に進入させることで、突出片50と係止片53との係合が、常時、解除された状態(施錠操作阻止機構40の機能がオフの状態)となる。
【0044】
上述した実施形態において、突出片50を操作レバー26に設け、係止部52を取付ベース22に設けた構成を例示したが、これに限らず、突出片50を取付ベース22に設け、係止部52を操作レバー26に設けてもよい。
【0045】
上述した実施形態において、係止部52が係止片53を備えたが、これに限らず、操作レバー26、又は、取付ベース22の表面を係止部52として突出片50を係止させてもよい。具体的には、
図10(A)、及び
図10(B)に示すように、取付ベース22の正面22Fに、操作レバー26の側に突出する略直方体形状の突出片250を設け、この突出片250が操作レバー26の側面26Sに係止される構成としてもよい。この場合、操作レバー26の側面26Sが係止部に相当する。
【0046】
また
図10(A)、及び
図10(B)に示す構成においては、操作レバー26の裏面26Rに、操作レバー26の回動操作時に突出片250を通すための凹部280が形成されている。そして、取付ベース22の側面22Sには、凹部280に入り込む位置まで突出片50をスライド移動するスライド操作子246が設けられており、このスライド操作子246がスライド移動するスライド溝260の端部260Tには、スライド操作子246のスライド移動を規制するロック溝270が形成されている。
したがって、ユーザがスライド溝260の端部260Tでスライド操作子246をロック溝270に移動させる操作(所定のユーザ操作)を行いことで、突出片250と係止部との係合が、常時、解除された状態(施錠操作阻止機構40の機能がオフの状態)となる。
【0047】
上述した実施形態では、係止部52が凸状の係止片53を備える構成を例示し、また、
図10(A)、及び
図10(B)には、操作レバー26、又は、取付ベース22の表面を係止部52として用いる構成を例示した。しかしながら、これらの構成に限らず、係止部52は、突出状態の突出片50が挿入されて当該突出片50を係止する凹状の穴部を備える構成でもよい。さらに、この構成においては、係止部52の穴部を塞ぐ閉塞機構と、当該閉塞機構による穴部の開閉を操作するための開閉操作子とを、施錠操作阻止オン/オフ機構44として、係止部52を備える操作レバー26、又は取付ベース22に設けてもよい。この構成によれば、ユーザが開閉操作子を操作して係止部52の穴部を塞ぐことで、突出片50が係止部52に係止されることがなく、当該係止部52による係止を、常時、オフにすることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態において、水平や垂直、左右、上下等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それらの方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0049】
1 引き違いサッシ
2 ガラス障子(室内障子)
4 ガラス障子(室外障子)
8 框体
8D 召合わせ框
12 クレセント受け具(受け具)
20 クレセント錠
22 取付ベース
24 クレセント
26 操作レバー
27 クレセント軸
32 空掛け防止機構
34 締め出し防止機構
40 施錠操作阻止機構
44 施錠操作阻止オン/オフ機構
46、246 スライド操作子
52 係止部
53 係止片
54 スプリング(弾性体)
60、160、260 スライド溝
70、170、270 ロック溝
260 スライド溝